平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 四番鈴木あきまさ君。
   〔四番鈴木あきまさ君登壇〕

○四番(鈴木あきまさ君) 首都東京から新しい政治の進路、つまり日本再浮上の道筋である二十一世紀への橋を強固に築く石原都政の進展を目指し、ドリーム・シャル・ネバー・ダイの思いを込めて、順次、質問いたします。
 まず、ナノテクノロジーを生かした地域産業の再生について伺います。
 バブル経済崩壊以降、我が国の産業が低迷化する一方で、中国を初めとするアジア諸国の技術台頭が顕著となっており、今やそれらの国々は、世界の工場から世界の市場へと大きな発展を遂げています。その市場の規模は、二○一○年には、二十兆円から二十六兆円に達するものと予測されております。
 ジャパン・アズ・ナンバーワンを誇った我が国は、バイオテクノロジーでアメリカに大きく水をあけられ、理論研究では先頭を行くナノテクノロジーの分野においても、アメリカや韓国の追従が激しく、産業化の面で逆転されかねない状況にあります。
 再び東京の、日本の産業全体が生産力も開発力も取り戻し、国際競争に競り勝っていくためには、我が国の持つ産業の特徴でもある高度な加工技術を維持発展させ、世界の最先端開発を可能にする環境を構築していくことが強く求められているのであります。
 自治体も企業も、次世代の育成、研究、開発に向けて全力で取り組むこと、これが産業再生のかぎであり、このかぎを握っているのが、大田区を中心とする東京の持つ世界最先端の高度加工技術であります。そして、その技術をこれから生かしていくことのできる重要な分野が、ナノテクノロジー、一メートルの十億分の一の世界であります。
 平成十六年度の重点事業であるものづくり産業支援拠点整備事業では、ナノテクノロジーセンターと産業技術大学院を中心とした企業研究開発支援、高度技術者の養成、技術移転、新製品開発の活性化などを目的として、城南地区での施設整備を予定しております。私も、その重要性を十分理解し、早急に実現すべきと考えます。
 そこで、私は、この施設を大田区にこそ設けるべきであると考えております。なぜならば、大田区には、日本を代表する高い工業技術と機械金属加工業を中心として、研究開発から製造までの多様な要求にこたえられるフルセット型の工場が集積しているからであります。
 大田区は、ナノテク技術の研究開発に積極的であり、例えば大田区産学連携研究施設では、企業と東京大学、東京工業大学と、産学連携によるナノテクの研究開発が始まります。
 また、一昨年、カーボンナノチューブの量産化実証プラントを完成させた大手企業から、大田区中小企業との応用品共同研究開発提案がありました。提案セミナーには、区内企業を初め百社近くの中小企業が参加し、三十数社、秘密保持維持契約を締結して共同研究へと進んでいくなど、新たな技術、製品開発へ向けたチャレンジ精神旺盛な企業が多数存在することがわかりました。
 ナノテクは、広範な研究分野の研究者が連携して研究を進めておりますが、決して大学や研究機関のみで研究されるものではありません。ナノテクは、最先端の技術といわれがちでありますが、ものづくりの延長線上にあり、ナノを研究開発する段階や試作品をつくる段階で、最先端の加工技術を持つ町工場の技術力を結集する必要があるなど、中小企業を含めた企業と研究機関、研究者が広く連携して研究開発、製品化を進め、人々の生活に役立つ技術とする必要があります。
 したがって、ナノテク研究開発には、広範な分野の研究者、企業が一堂に会することができ、情報交換と相互に受けることができる場、大田区のような、最先端の技術を持つ中小企業の強いネットワークと養われてきた技術力が必要となります。
 さらには、産業情報、産業支援、産業交流の拠点として、大田区産業プラザ、pioが蒲田にあり、日本国内はもとより、世界へ情報発信する機能が備わっています。
 また、地域のものづくり産業、東工大、六郷工科高校、テクノWING、創業支援施設など、産業の高度化や新産業の創出を図る施策を展開しており、産業の競争力を将来にわたって維持向上させる基盤があるからこそ、世界を相手にできる技術の研究開発ができるのであります。
 そこで、研究開発環境が整っており、工場の移転した跡地の活用や、区施設の有効活用も考えられる大田区に、ぜひともナノテクノロジーセンターを整備すべきと考えますが、いかがでしょうか。今後、施設の設置場所はどのように決定するのか、伺います。
 東京にはいまだないナノテクセンターを一刻も早く立ち上げ、都立の大学や研究機関と研究開発型企業が共同研究することで、その成果をもとに中小企業が新製品を製造し、新しいマーケットを創造するべきです。
 ナノテクノロジーを生かした地域産業の再生について、東京都としてどのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。
 次に、海上公園の活用について伺います。
 東京港の海辺エリアでは、外国航路の巨大コンテナ船や林立するクレーン、一方で、我が国の開国の歴史を物語る台場、さらに緑豊かな海上公園など、さまざまな景観を見ることができます。
 知事は、千客万来の観光都市東京を目指し、観光振興に大変力を入れておられますが、東京港はこのような豊富な観光資源を有しており、現在、海上公園を通して都民に親しまれております。
 そこで、海上公園を国際都市東京の観光資源としてさらに活用していくことについて、知事の見解を伺います。
 海上公園は、現在、四十二の公園が開園し、七百八十五ヘクタールにも上る広大な面積を有し、臨海部の水域を含む埋立地の自然を回復するとともに、レジャーやスポーツに親しむ場を提供しています。私の地元である大田区にも、大井ふ頭中央海浜公園や東京港野鳥公園などの大規模公園があり、地元の方々を初め、都民の憩いの場となっています。
 特に城南島海浜公園は、二十三区内では唯一オートキャンプ場を備えています。また、平成十四年に人工の砂浜が開園したことにより、潮干狩りや砂遊びなど、住民の身近な場所で水と親しむことができるようになり、昨年のゴールデンウイークには五万人を超える来園者が訪れ、大変好評でした。また、地元の方々を初めとするボランティアにより砂浜の清掃を行っており、文字どおり地元と密着した公園であるといえます。
 この公園の隣には、まだまだ土地があいています。都民にとって貴重な財産である公園をさらに拡張するとともに、あわせて大規模な駐車場の整備を進め、よりよいものにしていっていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
 一方で、整備を進めていくだけではなく、多くの都民に利用してもらうことが重要です。そうした観点から見ると、現在の交通手段がバスを含む自動車に限られており、少々問題です。
 また、観光資源を開発するという点も見逃してはいけません。隣には羽田空港があり、空と海と公園を一体として楽しむことのできるロケーションにあるわけですから、こうした資源を有効に活用することが大事だと考えます。
 例えば大田区では、大森ふるさとの浜辺公園を整備していますが、城南島海浜公園を初めとする南部地区の海上公園と、臨海地域に近い区立公園を有機的に結べば、一段と魅力が増し、にぎわいをつくり出すことにもつながります。
 さらには、羽田空港まで視野に入れ、今までの陸から海を見るだけでなく、海から陸にある公園を見られるよう、海上バスなどによる人の輸送とともに、観光を視野に入れた遊覧を考えるべきです。
 三月下旬から、東京都観光汽船が、漫画家の松本零士さんデザインによる水上バス「ヒミコ」を運航させるとのことです。宇宙戦艦ヤマトを思わせる未来的流線形の船が海上公園を遊覧すれば、子どもたちの利用がますますふえることでしょう。
 そこでまず、城南島海浜公園に船着き場を設けるべきだと考えますが、見解を伺います。
 さらに、こうした交通の便が余りよくない公園については、新たな活用策を講ずるべきだと考えます。例えば、この公園は近隣に住宅がありませんから、羽田空港の離発着終了後の夜間に、公園内の広場を活用して若手ミュージシャンの育成の場とする、あるいはイルミネーションやシンボルタワーなどを設置すれば、多くの集客を見込めることでしょう。
 このように、方法はいろいろあると思います。海上公園の魅力をより高めていくことが、この地域を含めた城南地区全体の活性化にもつながるものと考えます。
 そこで、海上公園のさらなる活用策について見解を伺います。
 次に、下水道事業における今後の課題について、我が党の大西幹事長の代表質問で伺いましたが、さらに掘り下げて質問します。
 下水道は、都市環境の向上や浸水防除など、都民が安全で快適に暮らすために欠くことのできない都市基盤施設であります。私の地元である大田区も、かつては豪雨のたびに浸水被害が出ていましたが、昭和四十年代初めに平和島ポンプ所ができ、管渠の整備が進んだおかげで安心して暮らせるようになりました。
 平成十六年度予算を見ると、建設して三十五年経過した平和島ポンプ所では、設備の老朽化に対応した再構築が行われることになっています。ぜひとも、下水道が担っている機能を確保するために、老朽化した施設の更新、再構築を適切に行ってもらいたいものです。
 このような施設の老朽化は、ポンプ場だけではなく、ほとんどすべての道路に埋設され、都民と最も身近にある管渠においても同様です。区部では、下水道管渠が原因の道路陥没が、毎年千件を超えていると伺っています。昨年五月、港区芝公園三丁目の東京タワー前交差点で、深さ三メートルの穴があることが見つかったことは、まだ記憶に新しいところです。
 下水道局では、平成七年度から再構築事業をスタートさせるとともに、平成十二年度からは、都民が実感できる効果を短期間のうちに実現することを目指した再構築クイックプランに取り組んでいますが、まず、下水道管渠の再構築の実施状況と、クイックプランの展開による事業効果について伺います。
 また、下水道管渠は、高度経済成長期以降に集中的に整備した関係から、あと十年もすると、膨大な量が更新時期を迎えることになります。しかし、一方で、下水道財政を取り巻く環境は大変厳しいものがあり、今までと同じ対策では、とても都民生活の安全性と快適性を確保していけるとは思えません。
 先日公表された経営計画二○○四では、主要政策の一つとしてクイックプランを充実させるとありますが、これまでの成果を踏まえ、取り組むべきと考えます。
 そこで、再構築クイックプランの充実について、具体的にどのような内容で、いつごろまでに行うのか伺い、私の全質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木あきまさ議員の一般質問にお答えいたします。
 ナノテクノロジーを生かした地域産業の再生についてでありますが、ナノテクノロジーは、IT、バイオ、素材など、広範な産業の基盤にかかわる二十一世紀の最重要技術の一つだと思われます。世界的に激しい開発競争が展開されておりますが、ナノテクで世界をリードできるかどうかが、日本の将来を左右もする重要な技術的なポイントだと思います。
 また、これは、技術が幾ら開発されても、それがうまく商品化されませんと意味がありませんが、そういう点では、東京には、大田区を初め独創的で高度な技術力を持った中小企業がたくさんございます。そういうものを活用し、ナノテクによってこれらの中小企業の飛躍的なパワーアップを図りまして、日本全体のものづくりの産業の再生を東京からでも牽引していきたいと思っております。
 次いで、海上公園を観光資源として活用することでありますが、これはいうに易しいんですけれども、どうも日本の海浜の施設というのは、陸路からは行けますけれども、非常に水の上からはアプローチがしにくくて、典型的なものは、東京の河川、運河でありますけれども、全部三枚張りで、どこからも船で行って上れない。
 また、その船の係留地のマリーナも非常に不備でありまして、そういった点で、そういう基盤整備というものが、海上公園の活用のためにも必要だと思われますけれども、例えば、世界じゅうから非常に多くの観光客が訪れておりますサンフランシスコやモナコ、特にサンフランシスコのサウサリートなどは、海辺の魅力を生かして、実に潤いのあるグレードの高いまちづくりを展開しております。
 東京にも、葛西沖からお台場、城南島まで広がる海上公園がありまして、人々が海辺の自然に触れ合える広大で貴重な空間はありますが、いま一つ、その活用というものに拍車がかかりません。
 海上公園の充実は、臨海地域の風格を高めて、国際観光都市東京の発展に寄与するためにも、今後とも、海上公園の魅力を向上させるように、発想と知恵を出し合って、実を上げていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) ナノテクノロジーセンターの設置場所のお尋ねでございますが、ナノテクノロジーセンターでは、都立の大学、研究機関、企業が共同で研究を行い、技術革新を図り、その成果を製品化につなげてまいります。
 そのため、高度な技術力を持った中小企業が数多く集積している城南地域に設置する予定であり、お話の大田区も候補地であります。
 具体的な設置場所につきましては、現在検討中でございますが、共同研究のための設備、施設が確保できること、各機関と企業等が連携しやすい立地であること、試作品の製作など研究開発を支援する企業が近くにあることなどを条件で、できるだけこの条件を満たす場所にしたいと考えております。
 さらに、地元区からの協力も重要な要素でございまして、これらを踏まえて設置場所を選定してまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 東京港の海上公園についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、城南島海浜公園の拡張整備についてでございますが、多くの都民が、快適に遊び、憩えるよう、広場や砂浜の整備を進めているところでございます。
 現在、約十六ヘクタールを開園しておりますが、十六年度以降も、引き続き第一航路に面した約十一ヘクタールの計画地に、駐車場を初め多目的スポーツ広場やドッグラン施設などを整備する予定でございます。
 今後とも、地元を初めとする都民の方々に親しまれる公園を目指し、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、船着き場の整備についてでございますが、お話のように、海上バスは、交通手段であると同時に、躍動する東京港に彩りを添える景観資源の一つでもございます。
 現行港湾計画では、当該公園の第一航路側の水域に、海上バスなどが離発着できるよう、小型桟橋を位置づけております。その整備につきましては、地元区の意向や事業者の動向などを勘案し、今後、関係者と協議を進めてまいります。
 城南島海浜公園の持つ魅力を、より多くの都民に楽しんでもらえるよう、交通アクセスの充実に努めてまいります。
 最後に、海上公園のさらなる活用策についてでございます。
 ご指摘のように、さまざまな創意工夫により新たな活用を図ることは、重要であると認識しております。現在、海上公園では、海釣りや潮干狩りの解禁など、利用者ニーズを踏まえた規制の緩和や、ボランティアによる砂浜清掃など、都民と協働で育てる公園へ方向転換するなど、新たな取り組みを行っております。
 今後とも、利用者や関係機関等とも連携しながら、それぞれの地区の特性を生かした利用策について、鋭意検討してまいります。
   〔下水道局長二村保宏君登壇〕

○下水道局長(二村保宏君) 下水道事業に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道管渠の再構築の実施状況及びクイックプランの展開による事業効果についてでありますが、老朽化対策とあわせて、能力不足の解消を図る管渠の再構築は、平成十四年度末までに、計画面積一万六千三百ヘクタールに対し、六%の進捗率にとどまっております。
 一方、施設や地区を重点化した再構築クイックプランは、道路陥没対策を例にとりますと、同じく平成十四年度末までに、クイックプランの対象面積二百七十三ヘクタールの約三〇%に当たる八十五ヘクタールが完了し、既に道路陥没が半減するなどの効果があらわれております。
 次に、クイックプランの充実と改定時期についてでございますが、再構築が必要な地域の管渠について、最新のデジタル技術などを利用した老朽度調査により、破損状況を的確に把握し、早期に対策が必要な箇所を優先的にクイックプランに盛り込んでおります。
 また、各家庭と下水道管渠をつなぐ取りつけ管に起因する道路陥没の発生比率が高いことから、集中的に対策を実施するなど効果的な整備手法を取り入れまして、内容の充実を図ってまいります。
 改定の時期につきましては、現行計画期間の最終年度であります平成十六年度を含めた新たな五カ年計画として、本年の秋までに策定する予定でございます。

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