平成十六年東京都議会会議録第四号

○副議長(中山秀雄君) 六十八番川井しげお君。
   〔六十八番川井しげお君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○六十八番(川井しげお君) 平成十六年度の都税収入見込み額は、約三兆九千二百億円で、前年度に引き続き四兆円を下回る水準となっている。このような中、都民の安全・安心を確保し、都市再生など新しい財政需要にこたえていくためには、歳入の大半を占める都税収入の確保が極めて重要であります。都はこれまでも、徴税努力に努め、徴収率を向上させてきております。とりわけ自動車税については、全国順位を下位から上位まで引き上げたと聞いております。
 そこでまず、都は徴収率向上に向けてこれまでどのような取り組みを行ってきたのか、お伺いをします。
 また、経済が低迷する中、近年、全国の各自治体でも、財政状況は厳しさを増しており、税収確保に向けて取り組みを強化し始めたと聞いております。
 都としてもこれまで以上に徴収努力を強化し、成果を上げる必要があるわけでありますが、今回都において、第二次財政再建推進プランの中で、初めて個人都民税を含む都税の徴収率をさらに引き上げることが示されています。
 個人都民税は、区市町村が区市町村税とともに課税、徴収することになっているが、徴収率が他の税目と異なり低いと聞いております。都としても区市町村に対する支援を強化することが必要であると考えるが、都はこれまでどのような取り組みを行い、さらに今後どのような取り組みを展開していくのか、お伺いをします。
 地方税は、地方自治の根幹であり、国が進めている三位一体改革を踏まえると、今後ますます自主財源である税収の確保が全国の自治体の重要な課題になる。このような状況の中で都は、区市町村への支援はもとより、全国の自治体との連携強化、徴税への新しい取り組みなど、積極的な役割を果たすべきだと考えます。
 先日、新聞等で、文京区にある朝鮮総連施設の土地、建物についても、都が公売手続を開始することが大きく報道され、例外なく迅速で適正、公平な処理がされていると、私なりに評価しております。
 今後とも、全国の自治体との連携強化を進め、さらに徴税率の向上に取り組むこととともに、公売等の新しい手法の開発にも力を注ぐベきであると考えますが、ご所見をお聞かせ願います。
 次に、河川の整備についてお伺いをします。
 知事は、前回の議会において、水は政の根幹、水を治め、治水する、水を安定的に供給することは、国や自治体の重要な責務と答弁されています。
 都民を大雨による浸水災害から守り、安心して暮らせるための取り組みは、都政の重要な課題であります。
 昨年も世界各地で、異常気象によると思われる洪水が発生しております。お隣の韓国や中国でも多くのとうとい人命が水害により失われております。
 平成五年、台風で、新宿、中野を中心に三千戸を超える住宅で浸水被害が発生し、また十一年にも、集中豪雨により、区部を中心に水害が発生したことは、記憶に新しいところであります。
 東京の都心部では、地下鉄や地下商店街などの地下空間利用が高度に発達しており、一度洪水はんらんが起きれば、その被害は甚大なものになると容易に想像されます。
 こうした大都市特有の水害への対策として、都では、浸水予想区域図の作成公表などソフト対策のほか、治水設備の整備などハードの対策を実施しております。中でも典型的な都市河川である神田川で、水害解消に即効性のある環七地下河川調整池の整備を実施しており、既に完成した区域では一定の効果を上げております。
 しかし、大雨に対する備えは、川幅を広げ、洪水を完全に下流に流す護岸整備が最も効果的であり、その着実な進捗こそが抜本的な水害対策であると考えます。
 私の地元、中野区においても、既に護岸の拡幅整備を終えた中野新橋から下流の神田川では、整備前に比べ、水害に対して劇的に安全度が増しており、大雨の都度に増水を知らせるサイレンの音におびえていたことが、今ではまるで夢のようであります。
 また、護岸整備に伴い設置された川沿いの遊歩道は、多くの区民に自然との触れ合いの場として親しまれており、新しくかけかえられた橋とともに、地域のシンボルになっております。財政厳しい折ではありますが、将来に禍根を残さぬよう、水害対策の本来の姿である護岸整備のより一層の推進に向けたたゆまぬ努力が必要であります。
 そこで、まず、区部中小河川の現在の整備状祝についてお伺いをします。
 また、代表的な中小河川である神田川及び石神井川などの護岸整備に、今後、どのように取り組んでいくのか、その決意をあわせてお伺いをいたします。
 次に、学校施設の開放についてお伺いいたします。
 近年、都民のスポーツに関する関心は高まり、さまざまな形でスポーツにかかわるようになってきました。しかし、都内で都民が気軽に運動できる場所を確保することは、容易なことではありません。
 このような状況下で、都立高校では、グラウンドや体育館などの体育施設を土曜日や日曜日などに都民に開放しており、その実績は、九五%以上の高校で開放が実施されています。私も好ましく受けとめておりました。
 しかし、実情を調査した結果、グラウンドの開放実績は、開放日ゼロ日の七十四校を含め、開放日十日以内が何と百二十四校もあります。グラウンドも体育館も格技棟も一切開放せず、片隅のテニスコートを半日だけ提供しただけでも、開放校としてカウントされているというのが実態であります。
 単なる数字合わせではなく、都立高校の施設は都民共有の財産であるという認識と、二百校以上ある都立高校がその体育施設を開放していくということが、予算をかけずして都民に多くの施設を同時に提供していくことになり、都民に大変大きな効果をもたらし、スポーツ施設に飢えている都民にとって大きな喜びと潤いをもたらすということを、真剣に考えていただきたいものであります。
 そこで、お伺いをいたします。
 教育庁においては、都立高校のスポーツ施設の開放について、その重要性、必要性、そしてその方法論などを、校長連絡会などで真剣に議論、指導したことがあるのか、お聞かせを願いたい。
 また、今後、校長連絡会などにおいて、学校開放の必要性などをどのように訴えていくのか、お聞かせを願いたい。
 また、一校ごとに計画するのではなく、例えば五つの都立高校が連携し、グラウンドを十日ずつ開放すれば、年間五十日になり、ほぼ一年間を通していずれかのグラウンドをその地域に提供することになります。このように地区ごとにグループをつくり、地区内の高校で連携協力の体制を築き、都民の方々にスポーツ施設を開放すると同時に、都立高校そのものを深く理解していただくにも、よい方法、手段だと考えます。
 教育庁に、そのような制度、体制を構築していくようお願いを申し上げ、教育長のご所見をあわせてお聞きをいたします。
 次に、警察病院建設計画についてお伺いをいたします。
 平成四年一月、警視庁から、警察大学移転に伴い発生する跡地に警察病院を移転したい旨、中野区に打診があり、同年八月二十六日、中野区の中野駅周辺整備・警察大学移転促進特別委員会に警視庁厚生課が提出した、警察病院立地に係る警視庁の考え方によると、数カ所において、高度医療、三次救急を行う病院とうたっております。
 この資料の中から一、二抜粋してみますと、例えば、区西部保健医療圏における大規模病院の設置場所は、新宿区に偏っている。特に三次救急──生死にかかわる救急を行う病院については、中野区、杉並区には存在しない。したがって、当該地区に一刻も早い治療を要する患者に対する治療を行う病院の設置の必要性が認められる。
 厚生省は二十一世紀医療について、高度医療を実施する病院として、特定機能病院の制度を打ち出している。新病院は、ここにいう特定機能病院またはこれに準ずる病院として完成させることを基本として、一つ、最新医療機器の導入、一つ、医師などの陣容強化、一つ、三次救急体制の確立などを図り、地元医師会などとの医療機能分担、病病連携、病診連携を図り、二十一世紀の医療に貢献するものであるとあります。
 このように、この新病院を理解していただくために中野区に提出された資料によると、新病院は、まさに高度医療、三次医療体制を擁した病院となっているわけであります。
 しかし、現在警視庁が考えている構想は、当時とは医療環境も異なっているとはいえ、四百五十床規模の大病院でありながら、救急については一般的な二次救急が中心であるといった声も聞くところであり、当初、住民に説明されていたような、高度医療を目指し、三次救急にも対応できるような医療体制が、本当に整備されるのかどうか、大変心配であります。
 警察病院が、地域の医療機関では対応できないような高度医療、専門医療を提供しないで、町の開業医と風邪引きの患者や目にごみが入った患者をとり合い、奪い合うようでは、余りにも情けない話ではないでしょうか。
 警察病院は、三百六十五日二十四時間、首都東京の治安を命がけで守る警察職員のための職域病院であるとともに、石原知事や総理大臣を初め、東京に集中する我が国のVIP、あるいは数多くお見えになる各国の要人の方々が、万が一テロ等の襲撃に遭ってけがをされたとき、身辺の警護を含めて、率先して対応すべき病院として位置づけられるべきであります。
また、災害時やこうした警察業務の特殊性に対応した医療を提供するためにも、高度な施設、技術を備えた病院でなければなりません。
 そして、地元の医療機関や医師会ばかりでなく、大規模病院のない中野、杉並の都民が、警察病院に、東洋一の命を守るやかたをと求めるのは、かなわぬ夢なのだろうか。
 そこで、知事にお伺いします。
 警察病院は高い医療水準を背景に、首都の警備面でも重要な役割を果たすべきと考えますが、知事の感想をお伺いいたします。
 次に、警視総監にお伺いします。
 新しい警察病院についてどのようなイメージをお持ちなのでしょうか、ご所見をお伺いします。
 また、健康局は、警察病院が地域医療体制の中で大きな役割を果たせるよう、進んで関与すべきと考えますが、局長の所見をお伺いいたします。
 以上で、私の質問をすべて終了させていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 川井しげお議員の一般質問にお答えいたします。
 警察病院の役割についてでありますが、都民の安全・安心と首都の治安基盤の確保は、都政の重要な課題であります。
 都はこれまで、三百六十五日二十四時間、都民の救急医療に対応するために、東京ERの開設を何カ所かでしました。都民の安全確保を図る新しい医療の提供に、積極的に取り組んでまいりました。
 その中で、都民の安全を守る警察職員や国内外の要人の不測の事態に対応して、迅速かつ的確な医療を提供する上で、警察病院は重要な役割を持つと思います。そうした役割を果たせるよう、医療機能を整備する必要があると思っております。
 他の質問については、警視総監、教育長、東京都技監、関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 新しい警察病院のイメージ等についてお答えをいたします。
 中野の警察大学校等の跡地への新病院の建設計画につきましては、都議会を初め各方面のご理解、ご協力によりまして、このたび用地の取得にめどが立ったところであり、現在、建物の基本設計を実施している段階にございます。
 この新病院のイメージですが、危険な職務執行に当たっております警視庁職員の職域医療を担うことが一つの目的としてあるわけですが、同時にまた、地域医療機関との緊密な連携によりまして地域医療に貢献するほか、ヘリポートや医師、看護師の宿舎も併設をいたしまして、災害発生時や国公賓の来日時等には緊急的な医療体制をとる、そうしたものをイメージしております。
 救急医療体制につきましては、当初、三次救急医療を実施したいという考えを持っておりましたが、その後、経済情勢が大きく変わり、また、近年の診療報酬引き下げなど、医療制度改革に伴う病院経営条件も変化するなどの理由によりまして、現時点では、その実施は難しい状況となっておりまして、新しい警察病院は二次救急医療体制で開院をいたしたいと考えております。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校施設開放に関する二点の質問にお答えします。
 まず、都立学校施設開放の必要性の徹底についてでございますが、都教育委員会では、都民のスポーツ活動の振興に資するとともに、地域、社会に開かれた学校づくりを促進するため、学校教育に支障のない限り、学校のグラウンドや体育館などの施設を地域へ開放することに努めてまいりました。
 しかしながら、お話のように、学校に施設開放の意義が十分浸透せず、依然として開放日数が少ない学校もありますことから、学校に対して、開放日数の増加に努めるよう、これまでも校長連絡会などを通じ指導してきたところでございます。
 今後とも、さまざまな機会をとらえまして、施設開放の意義が十分徹底され、実績が上がるよう努めてまいります。
 次に、地域内の複数校によるグループ対応についてですが、地域内の都立学校が連携をして、開放施設や開放日程等を調整しますことは、各校の年間教育活動がほぼ同時期、同内容で行われている現状を踏まえますと、課題はございますが、施設開放事業を進めていく上で意義のあることと考えておりますので、ご指摘の地域内での調整の仕組みづくりにつきましては、これから具体化を図ります都立学校経営支援センター構想も踏まえまして、今後の課題として検討してまいります。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 河川整備に関する二点の質問にお答えいたします。
 まず、区部中小河川の整備状況についてでございますが、洪水による水害から都民の生命と財産を守るため、一時間五○ミリの降雨に対処する河川の整備を進めております。
 整備の対象となる十四河川、延長百七キロのうち、浸水被害が著しく、緊急性の高い河川から事業を実施しております。平成十五年度末において、延長六十九キロの護岸が完成し、整備率は六五%になっております。
 今後とも、水害のない、安全で活力のある東京の再生に向け、重点的かつ効率的に事業を推進してまいります。
 次に、護岸整備の今後の取り組みについてでございますが、現在、神田川や石神井川など六河川、延長十二キロで重点的に事業を進めており、地元区や地域の方々の協力を得ながら、早期の水害軽減に努めております。
 新たに平成十六年度からは、神田川では中野通りの寿橋下流、石神井川では新青梅街道の扇橋下流において事業認可を得て、用地取得に着手いたします。
 なお、整備に当たりましては、川沿いの公園や緑地と連携を図り、緑豊かな散策路を設置するなど、地域環境の向上にも努めてまいります。
 今後とも、国費等の財源確保に努め、安全で地域に親しまれる川づくりを進めてまいります。
   〔主税局長川崎裕康君登壇〕

○主税局長(川崎裕康君) 徴税努力についてのご質問にお答えいたします。
 初めに、徴収率向上に向けてのこれまでの取り組みについてでございます。
 歳入の約七割を占めます都税収入の確保は、都の財政基盤の根幹をなすものであります。このため、これまでも迅速、的確な課税に努めるとともに、職員個々に至るまでの目標管理を徹底した滞納整理などに取り組んできました。その結果、平成七年度の徴収率九○・四%を、平成十四年度には九六・二%にまで引き上げることができました。
 また、お尋ねの自動車税につきましては、自動車税専担組織を設置いたしまして早期に着手するとともに、納税に誠意のない場合には、差し押さえも辞さないという攻めの滞納整理を行ってきた結果、平成十一年度の徴収率九二・六%、全国四十五位から、平成十四年度には九六・七%、全国十一位にまで引き上げることができました。
 今後、さらなる徴収率向上に向けた努力をしてまいります。
 次に、区市町村に対する徴収率向上のための支援についてでございます。
 都はこれまでも、滞納案件の処理に係る相談の実施や、区市町村職員を研修生として受け入れるなど、個人都民税の徴収率向上のための支援を行ってきました。
 また、平成十四年度からは、区市町村の滞納案件困難事案を東京都が引き受けるという新たな取り組みも実行してまいりました。
 これらに加え、来年度からは、区市町村から引き継ぐ案件を拡大するとともに、全国で初めて、区市町村に職員を一定期間派遣することにいたしました。これにより支援を強化し、徴収率の向上を図ってまいります。
 次に、全国自治体との連携強化と、公売等の新しい手法の開発についてでございます。
 昨年、都が実施しました、徴収部門で初めての全国会議、徴収サミットで提案し、既に百の自治体により活発に運営されていますメーリングリストの活用などにより、全国自治体との連携をさらに強化してまいります。
 また、行政がみずから差し押さえた不動産等を換価する公売では、入札者の拡大のため、一定の期間、入札を受け付ける方式や、都区市合同の公売実施など、新たな手法の導入にも取り組んでおります。
 今後とも、徴収率の向上に向け、全国自治体の先頭に立って積極的な役割を果たしてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 警察病院建設計画に関しまして、警察病院が地域医療での役割を果たすための関与についてのお尋ねでございます。
 警察病院が中野区に移転するに当たりましては、その役割や医療機能を、地域の医療機関との連携体制の中で発揮することが期待されております。
 このため、健康局といたしましても、警察病院が地元自治体や医療機関と緊密な連携を図ることができるよう努めてまいります。

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