平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 十三番山下太郎君。
   〔十三番山下太郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十三番(山下太郎君) まず初めに、危機管理についてお伺いいたします。
 昨年二月の韓国地下鉄火災から約一年が経過し、また、平成七年の地下鉄サリン事件の首謀者である松本智津夫被告に対する一審判決が先月ありました。そして、営団地下鉄がこの四月に民営化されます。節目であるこの時期に、地下鉄の災害対策について、質問及び要望を述べたいと思います。
 ご案内のとおり、韓国の地下鉄火災は、心ない者による放火が原因でした。日本の駅構造物や車両は、韓国のものと比べ燃えにくいものとはいえ、日本でも何が起こるかわからない時代であり、一〇〇%安心とはいえません。
 そんな中、都営地下鉄には九十八の地下駅があります。交通局はこれまでも駅の改修工事を順次進めておりますが、まだ二十駅程度で排煙設備が未整備であるということです。
 国は、火災対策に対する新しい補助制度を創設し、五年間で基準に適応させることを義務化しようとしています。確かに、既存の駅を国の火災対策基準に合わせるように改良するためには、スペースや地上用地の確保、さらに多額の工事費を要するなど、さまざまな課題があります。しかしながら、補助制度ができたことにより、費用の面については事業者の負担は軽減されることとなり、課題の一つは多少なりともめどがついたと考えられます。乗客の生命に直接かかわる排煙設備問題をできるだけ早期に国の基準に合わせるように改良することが望まれます。
 実際の改良工事を行う際には、乗客に迷惑がかかります。したがって、バリアフリー工事など、できるだけセットで行い、乗客の不便を少しでも軽減できるように工夫していただくよう強く要望いたします。
 また、大規模工事とならなくても安全性が向上するものもあります。ぜひ知恵を出していただき、早急に取り組むこともあわせて要望いたします。
 私もよく地下鉄を利用いたしておりますが、時折ふと大きな不安に襲われることがあります。
 例えば、日本の地下鉄車両は、火災が起きても隣の車両に燃え広がらないとのことですが、同時に複数の車両に火を放つ犯人がいたらどうなるのだろうか。あるいは、実際に乗客がパニックに陥った際、平常時でも、深いところではホームから地上まで七分から九分程度かかる道のりを、少ない駅員の誘導で安全に避難できるのか。また、障害をお持ちの方が万が一ホームに取り残されたとき、その方は大丈夫なのか。さらに、サリン、天然痘、炭疽菌などを使ったテロが起きた際にはどうなるのかなど、素人の私が考えただけでもさまざまな不安要素があります。
 知事は、先日、我々都議会民主党の代表質問に対し、昨年、同時に二カ所でテロが起こったと想定された訓練を行ったことについて触れられ、わかったことがあるとご発言されました。
 知事や交通局などが危機管理について最大限努力されていることは大いに評価をさせていただいておりますが、韓国の地下鉄火災、サリンなどのテロなど、何が起きるかわからない時代の中で、障害をお持ちの方の避難やパニック対策など、さらに踏み込み、想定されていない状況についても検討すべきと私は考えますが、ご所見を伺います。
 次に、都立の新しい大学、首都大学東京についてであります。
 平成十四年度の都立の四大学の決算では、歳出に対する一般財源の割合は七二%となっています。つまり、都立の大学の財源の約七割が都民の税金から支出されているわけです。首都大学東京では、独立行政法人として、徹底した経営の視点から大学運営を行っていくということではありますが、かなりの部分が運営費交付金という税負担で賄われるという構図は変わらないわけであります。
 そこで強く求められるのが、大学の教育研究成果の都民への還元や、社会人にも魅力的な大学づくりということであります。高校を卒業したばかりの若者にとって魅力的な大学をつくることは基本でありますが、都立の新しい大学は、税金を実際に納めている都民にとっても納得できるものであってほしいと思います。
 知事は、本定例会の施政方針表明の中で「ゴーマンレポート」を取り上げ、ランキングの上位が欧米の大学で占められ、日本の大学は一校も入っていないことについて触れられました。私は、IMD国際競争力レポートという報告を取り上げたいと思います。
 昨年のこのレポートによりますと、日本は、市場主義経済に合った大学教育という項目では、四十九カ国中最下位の四十九位となっています。調査の仕方などの問題もあるとは思いますが、一つの見方ではあります。首都大学東京では、断固としてこのような現状を打破しなければなりません。
 知事は、これまで、社会に貢献できる大学ということを強調され、大学改革を進めてこられました。私は、現在のこの改革の方向性を高く評価するものであります。そこで改めて、社会との接点を持った、社会に貢献できる大学づくりにかける知事のご所見を伺います。
 私はアメリカの大学で学んだ経験があります。そこでは、さまざまな年齢層の社会経験豊かなクラスメートと席を並べ、意見交換もいたしました。多様な年齢層との議論、交流はお互いに刺激になるものであり、専攻の国際政治学の学習においても、議論や教科書からは十分に得ることのない実際の話が聞け、随分と理解が深まったような気がしております。大学は、十八歳から二十二歳を中心とした狭い年齢層だけのものではないと考えます。
 現在、高度で専門的な職業能力の向上を目指す人、体系立った専門的な学習を身につけたいと希望する人、心豊かで潤いのある人生を実現するため自己啓発を図る人などがふえております。来年四月に開学する首都大学東京は、そのような多様な学習需要を持つ都民に広く開かれたものであるべきと考えますが、ご見解を伺います。
 次に、私の地元の北多摩北部地域について何点か伺います。
 まず初めに、北多摩北部地域の将来像について伺います。
 ご承知のとおり、東京都が進めている重要施策や重点事業の中で、多摩地域に直接関連する施策はごくわずかであります。さらに、四百万多摩都民の約二〇%を占める都民が住む北多摩北部地域に至っては、多摩の将来像二〇〇一や多摩アクションプランを拝見しても、多摩の他地域と比べさらに少ないことがわかり、非常に残念であります。
 そんな中、この地域に大きく欠けているのは、都がこの地域を今後どのように振興するかということを示すビジョンだと私は考えます。例えば同じ多摩地域でも、南に目を向ければ、シリコンバレーのように、都立大と地域経済の産学公連携を進めるといったビジョンがあります。また、西では、森林を守り、ドイツのロマンチック街道のように、点在する観光資源を地図でつなぎ、地域に観光客を呼び込むというビジョンも持っています。
 しかしながら、この北多摩北部地域に至っては、そういったビジョンは皆無に等しいのであります。こういったことは地域との連携が不可欠であることは、十分認識しております。私は、北多摩北部地域にも、地域と連携しながら、しっかりとしたビジョンを示すことが今後の振興に不可欠であると考えますが、東京都としてこの地域の特性や魅力をどのようにとらえ、どのように振興していかれるのかお伺いいたします。
 次に、東村山三・四・一三号線の整備について伺います。
 北多摩北部地域に欠けているのは将来像だけではありません。この地域の都市計画道路の整備率も、多摩地域の中で特に低く、交通環境の改善や地域のまちづくりに向け整備が急がれております。また、まちづくりを進めるためには、幹線道路の整備とあわせ、駅へのアクセスとなる道路の整備も非常に重要だと考えます。
 現在、清瀬駅付近では、多摩の南北幹線道路の一つである府中清瀬線の整備に合わせて、駅へのアクセスが可能となる東村山三・四・一三号線の整備も行われています。しかしながら、仮に府中清瀬線だけが先に完成してしまえば、この道路はただの通過道路となってしまうと地元市では危惧する声が上がっております。これらの路線が時期を同じくして完成することが地域にとって大きなメリットであり、地元の期待もそこにあります。
 そこで、清瀬駅前に通じる東村山三・四・一三号線の整備については、府中清瀬線と同時期の完成を目指し進めるべきと考えますが、これまでの整備状況と今後の予定について伺います。
 次に、治安対策について伺います。
 私の地元の清瀬、東久留米両市を管轄する警察は、東村山警察署と田無警察署であり、この両市にはいずれも警察署がありません。ご案内のとおり、同地域では人口増加が続いており、それに比例するかのように、警察の取り扱いも多方面にわたり、増加の一途にあると伺っております。
 また、犯罪認知件数を見れば、両市合わせて三千件を超えており、清瀬市においては五年前と比べ約二倍、東久留米市においてもほぼ毎年増加の傾向にあります。こうした状況も、今後増加の一途となることが懸念されます。
 さらに、この両市で発生した過去の凶悪犯罪を見ますと、旭が丘交番警察官殺人事件、大門町ファミコンショップ内殺人事件、下里団地路上タクシー運転手強盗殺人事件など大変痛ましい事件が、残念ながら未解決であります。そして、これらの事件はいずれも警察署所在地ではなく、管轄がまたがっているこの両市で発生しています。
 現在の警察署、交番などの配置については、犯罪発生状況など、その地域のさまざまな状況を踏まえながら設置されており、さらに現状の見直しも行われていることは私も十分に承知をいたしております。
 しかしながら、犯罪の増加や凶悪事件の発生に対し、地域住民が、地元市に警察署がないことが、すべてではないが大きな要因ではないかという不安を訴える声を上げている現状を踏まえますと、一市一署とは申し上げませんが、せめて警察署のない清瀬市と東久留米市の二市を管轄する警察署を設置することを強く要望いたします。ご所見を伺って、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山下太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 社会に貢献できる大学づくりについてでありますが、「ゴーマンレポート」の報告によって、大学の実質的な水準の低下が指摘されているのは日本だけでもございません。ドイツなども、かつてはハイデルベルク、ゲッティンゲン、ベルリンというすばらしい大学を持っていたようですけれども、これが非常に実力を失って、聞くところ、ドイツ版のハーバード大学をつくろうという意欲が予算にも組み込まれたようでありますけれども、いずれにしろ、日本の場合には独自の研究を実らせているような大学も幾つかありますし、企業もございますけれども、ドイツの場合にはノーベル賞を受賞した学者が五年前に一人だけだそうで、これもアメリカで研究をしていた人だそうでありますけれども、そういった危機感というものがやはりあるんだと思います。
 いずれにしろ、都立大学も含めて、現行日本の大学が、何も「ゴーマンレポート」の指摘を受けるまでもなく、日本という国家社会の要請にこたえているかといえば、極めて疑問でありまして、大学は根本的につくり直していかなければならないと思います。
 そういう意味でも、行政法人という方法がとられることは許されるようでありますけれども、いずれにしろ、国に比べて少しは早く動ける東京としては、かねてから都立大学の立て直しを考えておりました。
 首都大学東京では、大都市の複合的な課題の解決に向けて、従来系列化され過ぎていた学問の壁を壊して、総合的に、学際的に──学際的という言葉は非常にわかりにくいですけれども、法律、経済、そういったカテゴリーを超えた教育研究に取り組みたいと思っております。
 また、ご指摘のように、社会と人、ノウハウ、知識の交換を積極的に行っていくつもりでありますし、その一つの試みとしても、ボランティアなどの社会貢献を全学生に体験させるほか、弾力的なカリキュラムを設定できる単位バンクの導入によりまして、創造力と幅の広い視野を持つ人材を育成していきたいと思っております。それこそが結果として、おっしゃった都民の納得のできる成果をもたらすすべだと思っております。
 学長には西澤先生をお迎えして──西澤先生はかつての東北大学を見事に立て直されましたが、社会からの要請に的確にこたえていくことのできる、旧弊に陥ることのないダイナミックな大学にしていきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監、技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 清瀬と東久留米の両市を管轄する警察署の新設についてお答えいたします。
 警察署を設置するかどうかにつきましては、お話のとおり、管轄する面積、人口を初め警察負担や地域の特殊性等、さまざまな条件を勘案して総合的な見地から検討しているところであります。
 清瀬市と東久留米市の治安状況は把握をしておりますが、ただいま申し上げた観点から見まして、現在のところ、この両市を管轄する警察署を新設する計画はございません。
 今後とも警察署の新設につきましては、今申し上げたさまざまな条件を総合的に考えて検討してまいります。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 東村山三・四・一三号線の整備についての質問にお答えいたします。
 本路線は、多摩南北道路である府中清瀬線と相まって、清瀬駅周辺における交通利便性の向上や地域のまちづくりに寄与する道路でございます。現在、小金井街道から府中清瀬線までの二百九十メートルの区間で、都と市が協力して道路を整備する、みちづくり・まちづくりパートナー事業を実施しております。今年度末までに用地の約五割を取得する見込みであり、平成十六年度には一層の用地取得の推進を図ってまいります。
 今後とも、府中清瀬線の進捗に合わせ、地元清瀬市と連携し、早期完成に努めてまいります。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 地下鉄火災やテロなどにおける対策の検討についてでございますが、交通局では、昨年二月の韓国大邱市の地下鉄火災を踏まえ、この事件後、消防、警察と連携し、地下鉄各線で車内へのガソリン持ち込みを想定した連絡通報、避難誘導、消火等の訓練を実施いたしました。
 さらに、大規模停電時や駅構内からの出火時の訓練も実施しております。また、これらの訓練の中で、障害をお持ちのお客様の避難誘導訓練もあわせて実施しております。
 今後とも、地下鉄火災やテロなど、さまざまな災害に対応できるよう、関係機関と連携を図りながら、お客様の安全・安心のため、より一層安全対策に取り組んでまいります。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) 都民に開かれた大学についてのお尋ねでございますが、首都大学東京では、単位バンク制度の導入、エクステンションセンターの設置などにより、都民の多様な学習ニーズにこたえていくことができる大学づくりを行ってまいります。
 単位バンク制度は、学生一人一人に応じたカリキュラム設計を実現する仕組みでございまして、他の大学の科目や有用な経験を単位として認めるほか、仕事を持ちながらの長期的学習、入学後、一度社会に出た後、学習を開始することも可能であります。
 エクステンションセンターは、大学の知識、教育資源を広く社会に還元するために設置するものでございまして、社会人のキャリアアップ教育や上位の学位取得を目的とした継続教育、さらには教養講座のレベルを超えた高度で多彩な公開講座を提供していきます。
 このような取り組みによりまして、社会に開かれた大学づくりを推進し、都民の多様な需要にこたえていきたいと考えております。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 北多摩北部地域の振興についての質問にお答え申し上げます。
 多摩の将来像二〇〇一では、本地域を含みます多摩東部エリアを、都心への良好なアクセスと武蔵野の緑に恵まれ、活力あるまちが魅力と文化を発信する地域と位置づけ、都や市などが相互に連携、協働してその実現に取り組んでいくこととしております。
 とりわけ本地域におきまして、その魅力を生かし、まちづくりを進めていくためには、地域内の自治体が主体的に課題に取り組み、相互の連携を一層強めていくことが必要でございます。今後、こうした取り組みが進展するよう、広域的立場から働きかけ、支援してまいります。

○副議長(中山秀雄君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時三十八分休憩

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