平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 二十九番山口文江さん。
   〔二十九番山口文江君登壇〕

○二十九番(山口文江君) 初めに、介護保険制度について伺います。
 厚生労働省は、二〇〇五年の介護保険制度見直しに向けて、本格的な検討を行っています。
 昨年六月、厚生労働省老健局長の私的研究会は、「高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて」において、二〇一五年の高齢者介護のキーワードを「尊厳」とし、報告書の基本的理念としています。また、介護を必要とする高齢者の五〇%近くが痴呆の問題を抱えていることから、介護の問題は、痴呆のケアをあわせて考える必要があることも提言しています。
 痴呆になっても地域で生活できる痴呆性高齢者グループホームが、老いの住まいとして介護保険サービスに位置づけられ、東京都は重点事業として取り組んでいます。整備目標を高齢者人口の〇・一八%、約四千三百人とし、おおむね順調に推移していると聞いています。
 課題としては、都内の設置状況に偏在が見られること、入居者の経済的な負担が大きいこと、また、要介護度が重くなると退所しなければならないことなどが挙げられています。住みなれた地域で尊厳ある自立を支えるという理想の裏で、通過施設になることが危惧されています。
 在宅に最も近い住まい方であるにもかかわらず、現行制度では、在宅サービスが併用できないため、住みなれたグループホームで終末期を迎えることが厳しい状況にあります。痴呆性高齢者グループホームのターミナルケアについて、都としての認識と課題、及び対応策について伺います。
 介護保険施設には、昨年四月から、ケアマネジャーの配置が義務づけられ、来年度から、痴呆性高齢者グループホームの計画作成担当者はケアマネジャーとなります。今後、こうした施設のターミナルケアの課題にも、その調整能力が問われることになります。一般的に、施設におけるケアマネジメントは取り組みがおくれているといえますが、資質向上に向けた今後の取り組みの推進について伺います。
 一方、居宅においても、ケアプランに対する利用者の苦情や不満も多く、ケアマネジャーの資質向上は急務の課題です。都では、ケアマネジメントリーダーの養成も進み、今年度、リーダーを活用してケアプランの評価を行う、ケアプラン指導チームの運営をモデル的に実施しました。今後、さらにリーダーを積極的に活用して、地域のケアマネジャー全体の資質向上に役立てる必要があると思われますが、考えを伺います。
 次に、福祉サービス第三者評価制度について伺います。
 福祉サービスの質を向上させる仕組みとして、都は、国に先駆けて第三者評価の導入に取り組み、昨年七月に本格的にスタートしました。NPOを初めとする多様な評価機関の活用など、独自性が注目されますが、利用者がみずからサービスを選択していく上で、その選択に資する情報とするには、評価のばらつきや受審費用が高いこと、事業者の経営部分の評価に比重が偏りがちであることなど、解決すべき課題が多いといえます。利用者本位の評価手法が求められる中、利用者や事業者など、関係者の意見を聞きながら改善すべきと考えますが、見解を伺います。
 痴呆性高齢者グループホームの第三者評価については、国の制度として受審が義務づけられていますが、その他の福祉サービスについては事業者の任意となっています。第三者評価の意義を十分に理解し、積極的に受審することが求められますが、一方で、事業者にさらにインセンティブをもたらすことが必要です。都としても、受審促進を図っていく必要があると考えますが、具体的な取り組みについて伺います。
 また、評価の対象についても、現行の施設系の福祉サービス中心から、在宅系のサービスにも広げる必要があるかと思いますが、見解を伺います。
 次に、都立公園における市民との協働について伺います。
 昨年六月、東京都公園審議会から、都立公園の整備と管理のあり方についてが答申されました。この答申の中には、都民、NPOなどとの協働と連携が提言されており、現在、NPOや市民団体を対象に、都立公園の維持管理に関する都民協働アンケートが行われています。指定管理者制度の流れもあり、地域住民のパートナーシップが期待される地域資源の活用として、都立公園の新たな方向が模索されていると考えます。
 都立公園は、規模が大きいゆえに、保護者の目が行き届かないなどの理由で、子どもだけで遊びに行かせるには安全面に不安があるという声をよく聞きます。二〇〇四年度は、次世代育成支援対策推進法の行動計画策定の年に当たり、中高生を含め子どもの居場所が地域で求められている中で、都立公園の役割として、どのような見解をお持ちか、知事に伺います。
 今の子どもたちの遊びの環境は、空間も、時間も、仲間も乏しく、子ども時代に子どもらしい遊びを十分に体験できないことも、心身の発達や発育にゆがみをもたらしていると思われます。また、子どもを対象とした犯罪が多発する中、親が安心して外遊びをさせることができないため、屋内での遊びや習い事を余儀なくされ、子ども時代ならではの創造的で自由な遊びの体験から培われる集中力、忍耐力、協調性などを体得する機会が妨げられているのではないでしょうか。
 こうした現状を変えていくために、世田谷の羽根木プレイパークを初め全国で展開されている冒険遊び場を都立公園に設けることは、問題解消の一つの有効手段であると思われます。
 冒険遊び場は、プレーリーダーが常駐していても、自分の責任で遊ぶ遊び場であり、禁止事項がないため、中高生や大人にも魅力があります。
 冒険遊び場に類似した活動は、既に都立戸山公園でも実施されています。昨年、市民団体が、都立光が丘公園を利用して一日冒険遊び場を開催したところ、千三百人もの親子連れが集まったと聞いています。
 区立公園とは規模も違い、敷地の利用の工夫では、他の利用者とすみ分けられる点でも、都立公園は適切かと思われます。また、プレーリーダーや地域住民が中心となった遊び場の運営が可能であれば、大人の目が行き届き、公園内の犯罪、非行などの抑止力に地域の力が生かせます。
 市民との協働については、管理運営だけではなく、子どもの居場所づくりへの取り組みが期待されますが、今後、冒険遊び場としての都立公園の活用についての考えを伺います。
 次に、男女平等施策について伺います。
 ドメスチックバイオレンス防止法が二〇〇一年に制定され、配偶者暴力相談支援センターや警視庁で受けたDV相談は、二〇〇二年で八千二百四件、市区町村では八千百十三件、DV被害者の一時保護件数はDV相談支援センター開設前の一・四倍となり、被害の掘り起こしが進んできたといえます。
 二月には、DV法改正案骨子がまとまり、地方公共団体の責務として、暴力防止とともに、被害者の自立支援を含め、適切な保護を図ることを規定しています。また、防止と保護のために、都道府県は基本計画を定めることとし、DV相談支援センターは、DV被害者支援などの活動を行う民間団体との連携に努めるべきことを規定しています。今回の法改正作業における最大の特徴は、NGOとの連携、当事者参画であり、実効がいかに求められているかがわかります。
 都が一九九七年に実行したDV調査は、画期的であり、DVを表面化させた取り組みとして評価するものです。さらに、昨年三月から、東京都男女平等参画審議会では、配偶者からの暴力対策の状況についての取り組みを進め、実態調査と暴力加害者の対策について意見聴取を重ねたとも聞いています。
 被害者支援の一環として重要な加害者対策については、二〇〇二年から国も検討を重ねてきた経緯がありますが、都の加害者対策に向けた現在の取り組みと方向性について伺います。
 DV防止と被害者の生活再建、自立に向けた取り組みには、一貫したコーディネートと支援活動を行うNGOなど民間団体との連携が不可欠です。都の責務として、被害者支援策の体系化の必要性と民間団体との協働について、考え方を伺います。
 DV防止については、抜本的な解決として、若い世代からの教育が重要です。アメリカでは、若い人の間のDVをデートDVといい、防止プログラムが実施され、効果を上げています。
 各局間連携として、全庁的な家庭等における暴力問題対策連絡会議が開設されていますが、教育長のDV防止に対する認識及び子どもたちを将来のDV加害者、被害者にしないため、学校教育や社会教育における積極的な取り組みを求めて考えを伺い、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山口文江議員の一般質問にお答えいたします。
 都立公園の子どもたちにとっての役割でありますけれども、今、東京では、子どもが自然に触れ合う機会が少なくなるとともに、身近な遊び場も減少しまして、子どもがみんなで集まって遊ぶという姿がほとんど見られなくなりました。かわりに、それぞれが家でテレビゲームをしているというていたらくであります。
 都立公園は、子どもが自然に触れ、自然を学び、心身を鍛え、仲間との遊びを通じて社会性を身につける場所としても極めて重要であると思います。しかし一方、現況を見ますと、都心の公園の中には、一部が事実上ホームレスに占拠されているものがありまして、例えば代々木公園などは、今までそこでスポーツの練習をしていた企業の若い女性たちが、敬遠していて近づかなくなって、利用しなくなったというような事実もございます。こうした現状を是正しないと、子どもの遊び場として機能するはずはないと思います。
 都は、区とも協力しながら、ホームレス自身の自立への努力を支援し、同時に都立公園の適正利用を実現する取り組みに、条例の改正も含めて既に検討着手しております。
 子どもが元気に安心して遊べる魅力のある公園づくりに努めていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長、技監及び関係局長から答弁します。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) ドメスチックバイオレンス防止に関します教育についてのお尋ねでございますが、都教育委員会としましては、人権尊重の理念を広く社会に定着させ、あらゆる偏見や差別をなくすためには、教育の果たす役割が極めて重要であるとの認識に立ちまして、人権教育を推進しております。
 学校教育におきましては、教育活動全体を通して、人権尊重の理念についての正しい理解や実践する態度を育て、男女が互いの人格を尊重し、望ましい人間関係を築く教育を推進しております。
 そのために、公立学校の全教員に、人権課題にかかわる指導事例を掲載しました「人権教育プログラム」を配布したり、男女平等教育推進のための研修会等を開催しております。
 また、社会教育におきましては、都、区市町村の社会教育関係職員及びPTAを初めとする社会教育関係団体指導者が、さまざまな人権課題についての理解と認識を深めるために、人権啓発資料の作成や研修を実施しておりますし、ドメスチックバイオレンスにつきましては、学習資料や教材ビデオ、社会教育関係職員研修で取り上げております。
 都教育委員会としましては、今後とも、人間尊重の精神を基調としました人権教育を推進してまいります。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 都立公園での冒険遊び場についてお答えいたします。
 冒険遊び場は、通常、公園ではできない木登りや泥遊びなど、子どもが自分の責任で自由に遊ぶことのできる場所でございます。
 その運営に当たっては、子どもの遊びをサポートするプレーリーダーの配置や、多くのボランティアの協力が不可欠であり、地元からの発意と十分な態勢づくりが重要であります。
 また、先ほども知事の答弁にもございました公園を占拠しているホームレス対策により、公園の適正利用が実現されるということが必要でございます。
 今後、冒険遊び場を実験的に設置している戸山公園や光が丘公園の運営状況を踏まえ、地元区市と連携しながら、都立公園での導入を検討してまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 介護保険、福祉サービス第三者評価制度に関します六点のご質問にお答えいたします。
 まず、痴呆性高齢者グループホームにおけるターミナルケアについてでございますが、住みなれたグループホームでいかに人生の終末を迎えるかということは、高齢者の尊厳を支えるケアという観点から考えるべき課題と認識しております。
 しかしながら、ターミナルケアを行う場合には、家族や他の利用者との十分な調整とともに、医療との密接な連携が重要でありますが、グループホームでは、介護保険での訪問看護など医療系サービスの利用は認められておりません。このことから、グループホーム利用者に対し介護保険による医療系サービスが併給できるよう、都は国に対し提案しております。
 次に、施設の介護支援専門員の資質向上についてでございますが、施設は集団生活の場であることから、ともすると画一的な援助に陥りがちであるため、施設の介護支援専門員は、利用者個々人の状態に応じたケアプランを作成できる力量を身につけることが必要であります。
 このため都は、介護支援専門員現任研修の中に、施設におけるケアプラン作成のためのカリキュラムを設けるなど、研修の充実を図ってまいりました。
 さらに、今年度中に、施設におけるケアプランの作成から、サービス実施状況の把握、評価に至るまでの手順などを記載した手引書を作成し、施設の介護支援専門員の資質向上に努めてまいります。
 次に、ケアマネジメントリーダーの活用についてでございますが、ケアマネジメントリーダーは、地域の介護支援専門員の技術向上を図る指導者として、平成十四年度から養成を開始し、今年度末までに百七十三名を養成する予定であります。
 養成したリーダーは、現在、在宅介護支援センターなどで、地域の介護支援専門員に対する相談、援助や、研修の講師などの活動を行うとともに、福祉、保健、医療の連携の推進にも努めております。
 さらに来年度からは、ケアマネジメントリーダーを中心にケアプランの評価、指導を行うケアプラン指導チーム運営事業を本格実施していくこととしております。
 次に、第三者評価制度の改善についてでございますが、第三者評価制度は、利用者のサービス選択を助け、サービスの質の向上に向けた事業者の取り組みを促すものとして極めて有効であります。
 こうした仕組みを普及、定着させていくためには、内容を常に検証し、改善を図りながら、より信頼されるものとしていくことが重要であります。
 こうした観点から、既に都は、第三者評価を受審した事業者や利用者から意見を幅広く聴取しながら、現在、東京都福祉サービス評価推進機構内に外部委員から成る六つのワーキンググループを設置し、評価手法などの検討を行っております。
 今後とも、より信頼度の高い制度となるよう努めてまいります。
 次に、第三者評価の受審促進に向けた取り組みについてでございますが、都は、今年度、第三者評価制度の本格実施に当たりましては、より多くの事業者が制度の意義を理解し、積極的に受審するよう、事業者向け説明会を四十回以上にわたり開催をし、第三者評価を受審した事業者に対しては、評価費用の一部を補助しております。
 今後は、評価結果の活用事例などの紹介を通じて、第三者評価制度の意義を啓発するシンポジウムの開催や、補助制度の拡充などにより、受審促進に努めてまいります。
 最後に、第三者評価制度の対象サービスの拡大についてでございますが、都は、今年度から、特別養護老人ホームなど三十五の福祉サービスを対象に、第三者評価制度を実施しております。
 来年度は、乳児院や精神障害者ホームヘルプサービスなど新たに十のサービスを加え、四十五のサービスまで対象を拡大するとともに、訪問看護など在宅系を中心とする十のサービスについても、評価項目などの検討を行うこととしております。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 配偶者暴力に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、配偶者暴力の加害者対策についてでございますが、被害者の支援のためには、加害者対策も大切であると認識し、これまでも東京ウィメンズプラザで、加害者からの相談にも応ずるとともに、配偶者暴力防止に向けた普及啓発に取り組んでおります。
 お話のとおり、男女平等参画審議会で、配偶者暴力対策について現在審議中でございますが、被害者の安全確保とともに、さらなる被害の発生を防止する視点から、加害者対策も重要な課題の一つとして、今後のあり方を検討してまいります。
 次に、被害者支援施策の体系化の必要性と民間団体との協働についてでございますが、配偶者暴力の被害者の支援に当たりましては、被害の早期発見から、被害者や子どもの心のケアなどを含め、自立に向けた総合的な支援を継続的に実施していくことが必要であると認識しておりまして、このため、福祉事務所を初めとする関係機関だけでなく、一時保護や付き添いなど、さまざまな活動を行っております民間団体との連携を進めてまいります。

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