平成十六年東京都議会会議録第四号

○議長(内田茂君) 十七番小磯善彦君。
   〔十七番小磯善彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(小磯善彦君) 初めに、地球温暖化対策について伺います。
 国際稲研究所の農作物生態学者は、摂氏三十四度で一〇〇%に達する米の受粉が、四十度ではゼロに下がると発表しました。これは、植物と気温の微妙な関係を示し、地球温暖化が食糧危機に及ぼす影響を端的にあらわしております。
 また、雪や氷は、太陽光線を八〇%反射して宇宙空間に戻しますが、水面は、逆に八〇%を吸収して熱に変換します。つまり、北極や南極の氷が解け出すと、温暖化が加速度的に進むことになります。
 地球温暖化が急速に進行する二十一世紀初頭にあって、カナダに匹敵する経済規模を有する東京が環境に責任を持ち、未来世代に地球を引き継ぐために、温暖化にストップをかけなくてはなりません。
 去る二月二十三日、東京都環境審議会において、東京都における実効性ある温暖化対策の中間報告がまとめられました。都は、具体策を条例化などの手段で実行に移し、一日も早く成果を示すべきであります。
 また昨年、東京電力は、電力不足を招かないよう、電気予報をテレビ等で行い、世間の関心を集めました。
 東京都は、ディーゼル車規制において空気がきれいになったデータを発表しましたが、同様に、都は、大規模事業者でのCO2削減、都民の環境家計簿による削減、屋上緑化や自然エネルギーによる削減など、都民の取り組みによるCO2削減の現況をビジュアル情報として提供し、世論を盛り上げる努力を行うべきです。温暖化防止に対する知事の所見を伺います。
 大規模事業者のCO2削減について、自主的な地球温暖化対策計画書制度の集計結果では、二%という低い削減目標にとどまっています。二〇一〇年度の東京のCO2削減目標は、九〇年度比でマイナス六%となっていますが、業務部門では、逆に、二〇〇一年度で一六%も増加しています。したがって、二%という削減では目標は達成できず、さらに高い削減へ誘導していく必要があります。
 中間まとめでは、ガイドラインや評価基準を設けて、都が指導、助言し、より高い目標に誘導していくとのことですが、事業者の個々の取り組みが非常に異なる中で、どのように評価し、指導、誘導しようとしているのか、伺います。
 家庭部門の対策として、家電製品の省エネラベル制度は、個別の製品についてどれぐらい電気料金が安くなるかがわかるもので、画期的な制度であります。
 都が行った普及キャンペーンでは、テレビ、エアコン、冷蔵庫を対象にしていましたが、そのほかにも、電力を多消費する電子レンジや、待機電力の多いウォシュレット、照明器具などの電気製品、またガス機器の省エネ性能の高い製品にまで省エネラベル制度を拡大すべきでありますが、都の所見を伺います。
 次に、税金のむだ遣いをなくす施策の推進について伺います。
 私は、昨年の予算特別委員会で、都職員の通勤手当を割安な六カ月定期券による支給に改めれば、相当の財政削減になると指摘し、総務局長から、単純計算で年間二十八億円の削減効果があるとの答弁を得ました。この提案を受けて、この四月から通勤手当が六カ月支給に改められます。
 これに呼応し、国会でも我が党の議員が、国家公務員も東京都職員と同様、六カ月定期支給に改めるべきだと小泉首相に質問し、国もこの四月から改正されます。その結果、年間約五十五億円の節減が実現し、まさに石原都知事がよく口にする、東京から国を変えた実例がまた一つ新たに生まれました。
 このように、東京都が国や他府県に比べて、税金の節減に努力していることは間違いないことでありますが、都はこれに甘んじることなく、他府県の節減努力をも参考にし、一層の努力を行うべきであります。
 そのため、今後、庁内にむだ遣い一掃検討会を設けるなど、一元的な体制を構築して、コスト削減への取り組みを推進していくべきだと考えますが、都の所見を伺います。
 次に、都県域を越えた、非常時における水融通の実施について伺います。
 石原知事は、平成十三年第三回定例会の所信表明で、水は、管轄を超えた相互融通がほとんどなく、近隣の自治体間で送水管等の整備ができれば、災害など非常時において、水への安心感を格段に高められると指摘しています。全くそのとおりであり、東京都と近接各県においては、災害時における水道の相互補完体制、バックアップシステムを整備することが急務です。
 このシステムの整備に向けては、相互融通効果の大きい地域や隣接県を明らかにするとともに、実現までのスケジュールを明らかにすべきであります。所見を伺います。
 これまで既に、東京|埼玉間の朝霞連絡管と、東京|川崎間の登戸連絡管を設置する基本協定が締結され、近い将来、日量十万トン、約三十万人分の水を融通できることになります。これを高く評価するものであります。
 翻って、都県境に位置する町田市は、朝霞浄水場から六万トンが送水され、その送水管の延長距離は四十五キロメートル。また、東村山浄水場から五万トンで、送水管距離二十五キロ。小作浄水場からは二万トンで、送水管は三十五キロになります。つまり、町田市は、給水区域の末端といえます。そこで、大規模な地震があった場合、給水再開が他地域よりもおくれることが懸念されます。
 一方、隣接する川崎市の潮見台浄水場とは、わずか二・七キロの距離であり、都と市の配水管が一本の道路の下で交差している場所まであります。ここで相互の配水管を連絡すれば、災害時の給水の安定性が格段と高まります。早急に町田市内と川崎市において水を相互融通できる体制を整備すべきであります。今後の取り組みを伺います。
 次に、都立養護学校の教室不足について伺います。
 養護学校の肢体不自由の生徒は、平成六年の千八百人から、現在千九百二十二人にふえています。また、平成八年に三千六百八十三人だった知的障害の生徒は、四千八百八十人に増加しております。それに伴い、養護学校における教室が不足しており、関係者から教室の充実、確保が強く要望されています。
 先日、中野養護学校と町田養護学校を見てまいりました。中野養護では、普通教室の真ん中をカーテンで仕切り、二クラスで使っている教室が八カ所で、都合十六クラスが教室を半分ずつ分けて使っております。それでも足りずに、視聴覚室、技術室、相談室などが普通教室に転用されておりました。
 相談室などは八人で使っていますが、狭い上に日が当たりません。グラウンドに臨時のプレハブ教室が建っておりますが、既に二十年近く使用しているとのことです。当然、グラウンドも狭くなっています。給食室も、一度に配ぜんできないため、小中高生が三段階に時間をずらしながら給食をとっています。
 また、私の地元、町田養護学校では、大規模改修した平成十一年では四十二学級であったのが、わずか四年で、十二学級増の五十四学級になっております。当然、普通教室が不足し、今年度は、更衣室、教材室など七つの特別教室や管理教室を普通教室に転用して、六教室を半分に仕切って使用しています。
 そこでまず、都立養護学校全体における普通教室の数を明らかにし、そのうち転用教室は何室で、半分に仕切っている教室は何室あるのか、実態を明らかにしていただきたいと思います。あわせて、今後の生徒数の増加傾向についてどのように把握しているのか、所見を伺います。
 厳しい財政状況ではありますが、都は、教室不足の解消に最大限努めるべきであります。私の視察した中野養護と町田養護を含め、今後どのように対応するのか、具体的方針を明らかにされたいと思います。
 さらに、最も重要な都立盲・ろう・養護学校の再編整備計画の策定時期を明らかにし、これによって教室不足がどう解消されるのか、教育長の見解を伺います。
 次に、小児救急医療について伺います。
 私の地元である町田市においては、昨年初頭に、都の支援を得ながら、町田市健康福祉会館において町田市準夜急患こどもクリニックを開設しました。三多摩で先陣を切ってスタートしたわけでありますが、最近では、それまで二次救急医療機関である町田市民病院に集中していた小児の患者のうち、軽い症状の子どもがクリニックを利用することが多くなっています。小児初期救急の充実により、入院を必要とする患者を中心とした二次救急医療機関本来の医療に力を注ぐことができております。
 都は、区市町村が実施する小児救急医療に、これまで以上に積極的に支援を行っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 また、国は来年度から、医師による小児救急電話相談事業を全国一律の電話番号♯八〇〇〇番で展開しようとしております。
 一方、東京都は、既に昭和六十二年から、夜間電話相談、母と子の健康相談室を設置し、平日の午後五時から十時まで、保健師、助産師が相談に応じております。昨年度の相談件数は一万五千件を超え、子どもの病気や事故の相談が四割を超えております。東京都の電話相談も、だれにでもわかりやすい♯八〇〇〇番を使って実施すべきと考えます。
 今後の都の取り組みを伺って、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 小磯善彦議員の一般質問にお答えいたします。
 温暖化防止の世論喚起についてでありますが、地球温暖化は、人類の存続にかかわる世界的な問題でありまして、すべての人間が危機意識を持って取り組むべき喫緊の課題であると思いますが、しかし、事が事といいましょうか、非常に大きな問題過ぎて、いまだに強い危機感、強い実感というものが持たれずにいることは残念であります。
 そのうちに、そう遠くない将来、例えばヒマラヤの氷河湖が決壊して大惨事が起こる、あるいは、前の質問にも答えましたが、標高、せいぜい高くて六、七メートルしかない南太平洋の砂州でできている国が、水位が上がって埋没して、予定されているように、国民がオーストラリアに全部移住するなどということが起こったら、初めて強い実感として受け取られる問題だと思いますけど、それでは実は遅いわけでありまして、これは、本来、国が確かなビジョンを示して国民に訴えるべきことであると思いますけども、どうも国の動きは、余りにも緩慢なような気がいたします。
 都は、独自に先駆的な温暖化対策に取り組み、明確なメッセージを発して、何とかこれを、微力でも重ねて食いとめようという志を持つ人の輪を広げて、国を動かす大きなうねりとしていきたいと思っております。
 その過程において、ご提案の都民にわかりやすい情報発信について声かけていきたいと思っております。
 なお、他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 都立養護学校に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都立養護学校の普通教室数と今後の児童生徒数の傾向についてでございますが、平成十五年度の都立養護学校における普通教室数は千二百十七教室、そのうち転用教室数は二百三十四教室でございます。また、カーテンなどで間仕切っている普通教室数は二百五十教室でございます。
 全体的な児童生徒数が減少している中で、お話のように、特に平成八年度から知的障害養護学校の児童生徒数は増加しておりまして、当面はその傾向が続くものと見込んでおります。
 この大きな要因としましては、心身障害教育への理解が進んだことや、個別指導計画など教育内容の充実が図られてきたことにあると考えております。
 次に、都立養護学校の教室不足への対応についてでございますが、現在、学校の状況によりまして、教室の間仕切りや管理諸室などの転用を行いますとともに、教室の増改築を計画的に実施しているところでございます。
 今後、東京都心身障害教育改善検討委員会の最終報告を踏まえまして、都立盲・ろう・養護学校の教育条件の整備を図るために、お話の中野養護学校や町田養護学校を初め、都立盲・ろう・養護学校全体の再編整備について検討してまいります。
 なお、検討に当たりましては、ご指摘の都立高校改革で閉校となります都立高校の活用など、創意工夫を図りながら都立養護学校の教育環境の改善に努めてまいります。
 最後に、都立盲・ろう・養護学校における行政計画の策定時期についてでございますが、都立盲・ろう・養護学校の再編整備に関します計画につきましては、今後、学校関係者を初め、広く都民の意見を聞きながら、平成十七年度の予算編成に反映できるよう、平成十六年秋を目途に策定していく予定でございます。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 地球温暖化対策についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、新たな地球温暖化対策計画書制度についてでございますが、環境審議会の中間のまとめで提言されました制度は、都が作成する評価基準等に基づきまして、事業者がみずから計画を作成し、自己評価して公表することを特徴としております。
 事業者は、評価基準によって、自己の取り組み水準のレベルを知ることができ、このことで高い水準を目指す努力が促されるものと考えております。あわせて都が指導、助言することで、より高い削減目標に誘導してまいります。
 評価基準の作成に当たりましては、事業者のこれまでの削減努力や業務形態などの個別状況を適切に反映した評価方法となるよう、今後、実態調査を踏まえ、検討してまいります。
 次に、省エネラベル制度の対象品目の拡大についてでありますが、この制度は、販売店が家電製品等の省エネ情報をわかりやすく示したラベルを店頭表示し、都民に省エネ製品の選択を促して、その普及を図ることをねらいとしております。
 家庭部門のCO2排出量の削減を効果的に進めるため、当面、家庭での電力消費の多いエアコン、冷蔵庫、テレビの三品目を対象に制度化を図り、その定着を目指してまいります。
 また、そのほかの電子レンジ等の家電製品やガス機器などにつきましても、今後、省エネ製品の開発の進展や国の省エネ基準の動向等を見ながら、対象品目の拡大を鋭意検討してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 税金のむだ遣いをなくす取り組みについての質問にお答え申し上げます。
 東京都はこれまで、行政改革に積極的に取り組んでまいりましたが、第二次都庁改革アクションプランにおいても、コスト意識の徹底を改革の視点として位置づけ、コスト削減に向けたさまざまな取り組みを実施施策に掲げております。今後も、職場の風土改革によりまして、身近な仕事の改善に取り組むこととしております。
 さらに、他府県等の先進事例や都議会、都民の皆さんの声を踏まえまして、仕事の進め方を不断に見直し、徹底したコスト削減を進めてまいります。
 そのため、行政改革推進委員会や公共施設等コスト管理委員会など、全庁的な仕組みを積極的に活用いたしますとともに、各局の自主的な風土改革を促し、その成果や取り組みの情報を共有できるような方策を講じてまいります。
   〔水道局長飯嶋宣雄君登壇〕

○水道局長(飯嶋宣雄君) 水の相互融通についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、水の相互融通の対象地域などについてでございますが、水の相互融通を効果的に行うためには、双方の事業体の水道管が近接し、一定程度以上の融通水量が確保できる箇所を選定することが重要であると考えております。
 こうした考え方に立ちまして、平成十四年度以降、八都県市の水道事業体で検討を進めております。このうち、埼玉県との間で朝霞連絡管、川崎市との間で登戸連絡管の整備について協議が調ったところでございます。
 現在、その他の候補地の選定に必要な調査を行っておりまして、平成十六年度の早い時期までに、その結果をまとめる予定でございます。
 次に、町田市内における川崎市との水の相互融通についてでございますが、多摩地区の南部に位置している町田市には、ご指摘のとおり、北部にある主要浄水場から送水されておりまして、しかも多摩川を横断していることから、災害時の給水安定性を高めるためにも、水の相互融通の必要性が高い地域であると認識しております。
 ご提案の町田市内における川崎市との相互融通に関しましては、今後、連絡箇所や技術的な課題などにつきまして具体的な検討を行い、早期実現に向けて川崎市と協議してまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 小児救急医療につきまして二つの質問にお答え申し上げます。
 まず、区市町村が行う小児初期救急医療事業に対する都の支援についてでございますが、区市町村が地域の小児科医の協力を得て初期救急医療体制を整備していくことは、ご指摘のとおり、都全体の小児医療水準を向上させるものと考えております。
 このため、平成十六年度から新たに、地域の実情に応じて複数の自治体が共同して実施する場合や、小児の二次救急医療を担う病院の施設を利用した方式にも支援するなど、積極的に事業拡大を図ってまいります。
 次に、小児救急電話相談についてですが、都は、子どもの健康に関する不安を身近なところで解消し、小児初期救急の前の段階で安心を確保するため、現在行っている平日の夜間電話相談を、本年四月から、休日の昼間にも拡大し、三百六十五日事業を実施することといたしました。
 国が予定しております#八〇〇〇番につきましては、現時点で事業内容が具体的に示されておりませんが、今後、その詳細が明らかになり次第、導入の可能性について検討してまいります。

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