平成十六年東京都議会会議録第三号

   午後五時四十一分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十八番高島なおき君。
   〔四十八番高島なおき君登壇〕

○四十八番(高島なおき君) 東京都のディーゼル規制については高く評価されているところですが、さらに環境問題を考えるとき、土壌汚染は避けて通れない問題となっています。
 外国企業では、土地取得に際して土壌汚染調査を行うことは常識化しており、日本でも工場跡地などの再開発に当たり、土壌汚染が顕在化するケースが増加してまいりました。しかし、以前は汚染処理の負担の原則等について法的な枠組みが存在しなかったため、汚染地が放置され、汚染の周辺環境への拡散のおそれはもとより、円滑な土地取引を妨げ、地域の衰退の原因にもなり得る大きな社会問題となっていました。
 そこで、東京都は、平成十三年に環境確保条例に基づき土壌汚染の規制を開始し、また、土壌汚染対策法も昨年の二月から施行されております。これらの制度では、工場の廃止時に土壌汚染の調査が義務づけられております。
 環境確保条例施行後の二年間で、条例の手続を開始したもののうち、工場等の廃止に伴うものは四百二十五件あり、そのうちの約三割に当たる百三十四件もの多数の土地で土壌汚染が明らかになっております。
 土壌汚染があった場合には、地価が下落し、土地の流動性を低下させ、都市の活力を阻害することになります。このため、土壌汚染を確実に処理することは、汚染の環境への拡散を防ぎ、都民の健康被害を未然に防止することはもとより、地域社会の発展を図る上でも重要な課題となっております。
 土壌汚染を処理しようとする場合、その費用は汚染者が負担することが原則となっています。しかし、現状では、汚染処理に要する費用は高く、特に資金力に乏しい中小零細企業者は対策に苦慮しているのが現状であります。また、企業者が土壌汚染対策を行うにしても、土壌汚染に関する知識が乏しく、法令制度や処理技術の面で、身近に相談相手もないことなどから、適切にその責任を果たしていくことができない問題もあります。
 このため、都は、中小零細企業者に対し、親身になって土壌汚染の相談を受ける体制をつくるとともに、情報提供をより一層充実していくことが重要であると思うが、東京都の考え方を伺いたい。
 さらに、土壌汚染のかぎを握る処理技術はまだまだ開発の途上であり、処理コストは高く、特に中小零細企業者にとっては負担が大きい現状にあります。このため、都は、国や土壌汚染処理の関連業界に対して、低コストで安全な処理技術の開発を促進するよう働きかけを行う必要があると思うが、都の考え方を伺いたい。
 次に、都民の安全を確保するという視点から、地下鉄の火災対策について質問します。
 百九十八名の犠牲者を出した昨年二月の韓国大邱市の地下鉄火災、また、先月六日にモスクワで地下鉄の爆破事件がありました。これを考えると、同じ地下鉄事業者として、都営地下鉄もさまざまな調査や対策をとってきたと思います。
 そこでまず、都営地下鉄の火災対策についてどのようなことを行ってきたか、伺いたい。
 さらに、地下鉄火災対策に関する構造上の基準としては、昭和五十年に国が定めた基準があり、排煙設備や避難路の規定がありますが、昨年、韓国の地下鉄火災を受け、国土交通省が全国の地下鉄駅における火災対策設備の基準適合の現況について調査したところ、昨年の二月時点で、都営が九十三駅中五十七駅と、基準をすべて満たしている駅はわずか六割と出ております。営団に至っては、百四十四駅中六十五駅と、基準に適合する駅は半分以下であったということであります。
 都営地下鉄については、浅草線や三田線などは、この基準が制定される以前に建設されており、これら基準制定以前に建設された地下鉄については、改築工事などに合わせて整備するようにという、いわば猶予がついていたわけですが、今回、国土交通省では、この経過措置を定めた省令を改正し、所要の火災対策設備を整備することを義務づけることとしました。いわば、設備整備が待ったなしの状況になったのであります。
 都営地下鉄については、平成十六年度末においても、排煙設備の未整備が十九駅も残るとのことであります。待ったなしの状況にありながら、設備改良のペースが遅いように思いますが、どのようなことが障害になっているのか、伺いたい。
 さらに、高速電車事業会計が厳しい財政状況にあることは承知しておりますが、利用者の安全は何にも増して優先されるべきであります。国土交通省では、省令改正の方針決定とともに、基準を達成していない地下駅に排煙施設や避難路を設置する事業者に対して、国と都道府県が三分の一ずつ補助する新たな補助制度を創設したところであり、平成十六年度予算においても三十億円を計上してあります。当然、都営地下鉄も対象になるのでありますが、このような補助制度を活用し、できるだけ早期に、火災対策にかかわる施設整備を完了すべきと考えます。
 そこで、最近の動向を踏まえ、今後、都営地下鉄が、未然に防止し得る火災対策にどのように具体的に取り組んでいくのか、決意を伺いたい。
 次に、日暮里・舎人新線について質問いたします。
 平成九年の事業着手以来、現在までの工事の進捗状況と今後の見通しを伺いたい。
 さらに、工事は平成十九年度開業に向け進められておりますが、開業もさることながら、経営的な側面からすれば、開業後の乗客数の確保も大きな問題と考えられます。
 ご案内と思いますが、新交通が走る足立区西部地域は、鉄道の最寄りの駅まで三十分から一時間もかかるなど、交通不便な地域です。日暮里・舎人新線の開通を契機として、計画的にまちづくりを進め、新交通ともども、一日を通じてにぎわいのある地域にしていきたいと願っております。
 現在、足立区において、日暮里・舎人新線の開通を前提に、地域の代表者と関係者で日暮里・舎人沿線開発協議会を設け、地域の声を取り入れながら、きめ細かいまちづくりの検討を進めています。
 このように、地元ではまちづくりに積極的に取り組んでおりますが、そこで、この乗客増加に寄与する沿線のまちづくりについて、現在の取り組み状況を伺いたい。
 さらに、都県境が終点になるわけであり、広域的な考え方をすれば、埼玉県南部の乗客を確保し、経営の安定化を図るべきと考えられますが、その方策等についての認識を伺いたい。
 さらには、沿線のにぎわいの面からは、舎人公園の魅力を高め、都民を初め多くの人が憩い、楽しめるように、公園の利用拡大や活用を進め、利用客の増加を図ることも大事な課題と考えています。
 舎人公園は、スポーツ施設や子どもたちが自由に走り回れる広い場所があり、新交通が開通すれば、交通の便が格段によくなり、非常に将来性のある都立公園だと考えます。
 例えば、今話題になっている新東京タワー構想や、日比谷公園百年記念行事で行った結婚式、イベントの開催などを参考にし、文化的な視点を含め、利用価値の創設を高め、明るくにぎわいのある公園にするため、今後どのように取り組むかを伺いたい。
 次に、観光振興について伺います。
 昨年、都議会調査団として、ミラノ、ロンドンへ訪問し、議会関係者や行政担当者に対しシティーセールスを実施してまいりました。この調査を通じて、東京の魅力が海外では意外なほど知られていないことを実感するとともに、東京へ旅行者を誘致するために、シティーセールスが重要であるかを再認識いたしました。
 実際、東京は、最先端の産業、伝統産業、独特な歴史と文化、大都市の近くにある豊かな自然、アミューズメント施設など、さまざまな観光資源に恵まれています。しかし、観光資源が多様だということは、裏を返せば、東京の魅力を一言で強力にアピールするものがないということになります。むしろ、シティーセールスの戦略としては、切り口を特化することが得策と考えます。
 こうした視点に立つと、シティーセールスとして重点的に売り込むべき東京の魅力は、世界に誇る東京の最先端技術や、そうした技術に裏打ちされたものづくり産業であるべきと考えますが、所見をお伺いしたい。
 さらに、この東京の魅力を伝えるものづくり産業を業界や一般消費者に紹介する場として見本市があります。こうした見本市に参加するために来日した外国人旅行者は、その後の滞在時間を利用し、東京の観光や新たな東京の魅力を発見してくれるものと信じます。
 そのためには、東京の観光情報を十分に提供することも必要ですし、そのことにより、一度でも東京を体験してもらえれば、将来、口コミ等を通じても、東京への外国人旅行者の増加につながり、さらには世界に誇れる東京のものづくり産業のビジネスチャンスにもつながるのではないでしょうか。
 そこで伺いますが、民間事業者と協力して、都が強力にバックアップする東京の産業の見本市を定期的に開催すべきと考えるがいかがか、所見をお伺いさせていただきたい。
 また、外国人旅行者の利便性向上を図るためには、何としてでも羽田空港の国際化を推進することが重要であります。都としてその取り組みについて、知事の所見を伺いたい。
 以上で私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高島なおき議員の一般質問にお答えいたします。
 海外からのお客様の吸引力としての羽田空港の国際化についてでありますが、羽田の国際化については、これは我が国全体の経済活性化、国際競争力の向上のみならず、首都東京のシティーセールスの観点からも非常に重要なプロジェクトであると思います。
 かねてから、羽田の空港を再拡張し、国際化を図ることを国に働きかけてきまして、ようやく予算も組まれましたが、おかしなことに、まだ工法が決まらないという妙な現象が起こっていますけれども、いずれにしろ、再拡張の事業化は、予算の上で決定されましたし、これによって、再拡張とともに本格的な国際化が図られるめどがつきました。
 ただ、滑走路の距離などからいいましても、国際化は、やはり成田との兼ね合いで、アジア近隣の諸国への国際線がメーンになると思われておりますが、いずれにしろ、これが実現しますと、羽田ほど世界の首都の国際空港の中でダウンタウン、つまり中心地に近い便利な空港はございませんから、しかも成田と違って、二十四時間あいている空港でありまして、仮に深夜に到着しようと、バスやタクシーでわずかな時間で都心に出られます。ホテルは十分機能しておりますし、そういう点では非常に大きな吸引力になると思っております。
 羽田空港が世界に向けて、我が国の玄関口としてその機能を十分に発揮できるよう、引き続き、東京からいい出したことでありますから、その国際化の充実を国に、強くだけではなしに、一刻も早く実現するよう働きかけてまいるつもりであります。
 他の質問については、技監及び関係局長から答弁します。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 日暮里・舎人線の二点の質問にお答えいたします。
 まず、日暮里・舎人線の進捗状況と今後の見通しについてでございますが、現在、荒川区内で最後の支柱工事に着手し、橋げたは、五二%が完成または施工中でございます。また、足立区内で最初の駅舎工事を開始したほか、舎人公園内の車両基地工事にも先月着手いたしました。
 平成十六年度には、荒川横断部の首都高を越える橋梁を架設するほか、全区間で橋げたの工事に着手いたします。
 引き続き、駅舎や走行路などの工事を順次進め、インフラ部は十八年度の完了を目指してまいります。
 今後とも、沿線住民や関係機関の理解と協力を得ながら、十九年度の開業へ向け事業を推進してまいります。
 次に、舎人公園の活性化についてでございますが、舎人公園は、森林公園と運動公園を兼ね備えた、計画面積七十ヘクタールの区部北部における基幹的総合公園でございます。
 日暮里・舎人線の開通により、公園に多くの利用者が訪れることは、新交通の利用客の増加はもとより、地域の活性化にも寄与いたします。
 昨年六月から民間活力の導入を図りながら実施している、日比谷公園百年記念事業などでの成果を生かして、今後、駅周辺のにぎわいの創出、スポーツ施設の利用促進、アウトドアレクリエーションの充実など、地元区とも連携して、公園の魅力を高めるとともに、活性化に取り組んでまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 土壌汚染対策についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小零細企業者の土壌汚染対策に係る相談体制の充実についてでございますが、土壌汚染処理に当たりましては、的確な情報のもとに、低コストで確実な対策を行うことが重要でございます。
 このため、都はこれまで、事業者が適切に対応できるよう、手引書の配布や技術的な助言などの支援を行ってまいりましたが、今後、都に総合相談窓口を設置するとともに、区市の担当職員に対し、これまでの指導実績を踏まえた事例研修を実施するなど、相談体制の充実を図ってまいります。
 さらに、土壌汚染の調査方法や処理技術をわかりやすく紹介する説明会を開催するなど、中小零細企業者が土壌汚染対策を円滑に進められるよう努めてまいります。
 次に、国や関連業界に対する処理技術の開発の働きかけについてでございますが、土壌汚染対策には高額の費用がかかる場合が多く、中小零細企業者にとっては、その資金確保が大きな負担となっており、低コストな処理技術の開発を促進し、事業者の負担軽減を図る必要があると認識しております。
 このため、都は、汚染土壌処理の関連事業者や業界の参加を得て、最新の汚染処理技術を紹介するフォーラムを開催するなどにより、中小零細企業者にも導入しやすい技術の開発を促してまいります。
 あわせて、国に対し、狭い敷地でも実施可能で、安全かつ低廉な処理技術の開発を引き続き強く要望してまいります。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 都営地下鉄の火災対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、韓国大邱市での地下鉄火災以後、この一年間の都営地下鉄の火災対策についてでございますが、ハード面では、三駅で防災改良工事を実施し、二駅で排煙設備等を設置いたしました。また、煙の拡散を防ぐための防煙たれ壁や消防用の無線通信補助設備の設置工事を、未設置駅の約半数の駅で緊急に実施いたしました。
 一方、ソフト面では、消防、警察との連携を強化した訓練を実施するとともに、避難経路図や非常口表示などの案内表示を拡充し、よりわかりやすくするなど、鋭意、火災対策の強化に努めてまいりました。
 次に、火災対策設備を改良する際の課題についてでございますが、火災対策基準上、今後整備を要する主なものは、排煙設備と二方向避難通路でございます。
 これらの整備に当たりましては、限られた駅構内で、排煙機を置くための機械室や避難通路の空間の確保が難しいこと、排煙口や避難通路の出口の用地を新たに確保する必要があること、そして、駅の大規模な改良となるため多額の工事費を要することなどが課題でございます。
 最後に、今後の火災対策の具体的取り組みについてでございますが、平成十六年度には五駅で排煙設備等の新設工事を実施いたします。また、防煙たれ壁や無線通信補助設備は、平成十七年度末までに全駅に設置する予定でございます。
 今後とも、避難訓練の一層の充実を図るとともに、国の火災対策に対する補助制度や火災対策基準の改定を踏まえ、厳しい財政状況の中ではございますが、優先すべき課題として積極的に取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 日暮里・舎人線に関連いたします二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、日暮里・舎人線沿線のまちづくりの取り組み状況でございますが、沿線地域の活性化や新線の経営安定化のため、軌道建設と歩調を合わせ、現在、都区が連携し、日暮里・舎人線沿線開発都区協議会を設置いたしまして検討を進めております。
 乗客増加を図るまちづくりとして、具体的には、良好な住宅市街地を形成するための地区計画とあわせた用途地域の見直し、地域に多数立地する公共住宅の建てかえに際しての商業・業務機能の導入、公共施設の一般開放や、魅力、特色のある学校づくりなどについて取り組んでおります。
 次に、日暮里・舎人線の広域的な乗客増加対策についてでございますが、本路線の利用促進を図るため、埼玉方面からの需要確保は、経営安定化の面からも不可欠でございます。
 そのためには、埼玉方面からのバス交通網の再編や利用しやすい駅前広場の整備など、駅へのアクセスの利便性を高めることが重要でございます。
 これまで日暮里・舎人線沿線開発都区協議会の中において、駅勢圏を拡大するために、バス交通網のあり方や駅前広場の形態等について検討してきています。
 今後、さらに検討を進めるとともに、関係機関へ働きかけていくなど、乗客増加のために積極的に取り組んでまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) シティーセールスに関する二点のご質問にお答えいたします。
 初めに、シティーセールスで売り込む東京の魅力についてでございます。
 お話がありましたように、東京の魅力の一つとして、高品質で世界的な競争力があり、海外の人々も注目する東京の技術やものづくり産業があると認識しております。
 シティーセールスでは、これまで、海外の旅行業者、メディアや一般市民に対して、東京の四季折々の風物、歴史と文化、豊かな自然、伝統工芸などを、映像を通して、また展示や実演などさまざまな手法を通して紹介してきたところでございます。
 今後は、ご指摘のように、東京のすぐれたものづくり産業を、東京の魅力として、シティーセールスで積極的に売り込んでまいります。
 次に、産業見本市の開催についてでありますが、国際的見本市の開催は、東京の製品を広く海外に発信するという点で、産業振興上、効果が高く、観光振興の上でも非常に有用であると認識しております。
 都といたしましては、株式会社東京ビッグサイトを通じ、日本国際工作機械見本市を開催するほか、経済の活性化に資するさまざまな展示会への後援や共催を実施しております。
 今後、ご指摘を踏まえ、ジェトロの海外事務所なども活用し、観光情報や展示に関する情報を提供し、海外からの見本市への来場誘致に努めるとともに、開催内容やPRなどの工夫を凝らし、国際的展示会の開催がふえるよう、民間事業者に働きかけてまいります。

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