平成十六年東京都議会会議録第三号

○副議長(中山秀雄君) 四十二番野島善司君。
   〔四十二番野島善司君登壇〕
   〔副議長退席、議長着席〕

○四十二番(野島善司君) 最初に、多摩施策について伺います。
 申すまでもなく、都は、都区制度を核とする大都市行政としての機能と、一方、多摩の市町村とは自治法上は対等で、ここでは府県行政としての機能を担っています。今日まで、都は、市町村との間で委託、受託事業やさまざまな行政課題に対する人的、技術的援助、補助金や調整・振興交付金などの財政支援を行い、その行政水準の向上に努め、広域行政としての成果を上げてまいりました。
 こうして見るとき、市町村政と都政は、自立と連携が基本でありますが、多摩都民として、都の広域行政に寄せる期待は大なるものがあります。今後とも、大都市首都東京の一翼を担う多摩の振興に力を振り絞っていただきたいと思います。
 さて、真に自立した地方自治には、自治体みずからの財源とその責任において行財政運営を行う地方主権の確立が求められ、その税財政の側面が三位一体の改革です。こうした中、三位一体改革に伴う国の十六年度予算、地方財政計画が示され、都道府県、各自治体に大きな影響を与えております。当初から赤字予算を組もうとした市、非常事態を宣言した市もあります。
 谷垣財務大臣は、二月二十五日の衆議院予算委員会で、地方交付税は借金が五十兆円、財源保障機能を抑制し、地方への権限移譲とあわせて交付税全体を圧縮していく旨述べています。三位一体改革をめぐっては、地方向け補助金の削減に対応して必要額を地方に税源移譲することになっていますが、所得譲与税の創設にとどまりました。
 一方、地方交付税の削減をされますと、自治体は歳出削減で対応するしかありません。今回の地方交付税改革が、償還財源補てんを当てにした公共事業のモラルハザードの抑制や地方行政の高コスト体質の是正にもあるととらえますと、今後、この方向はなお加速すると思います。
 地方交付税交付団体、とりわけ経常経費充当率の高い団体は、さまざまな制約の中で歳出構造の改革に取り組んでいますが、その効果としての歳出減のスピードよりも、地方財政計画上の歳入減のスピードの方が速いのではないか、こんなふうに私は思っております。
 各市町村の予算も出そろったようであります。そこで、平成十六年度の市町村予算の動向と今後の行財政の課題について概括的にお伺いいたします。
 二十六万三千余円と十三万七千余円、前者は地方交付税不交付の武蔵野市、後者は交付団体、私の住む東久留米市の、それぞれ十四年度決算における市民一人当たりの市税の額であります。これは市民の所得水準や商業・業務系の集積度合い等、自治体の持つ歳入構造の差異によるものであり、多摩の各自治体間にも跛行性があります。私は、税財源の移譲後もこの傾向は続くものと推測いたしております。
 こうした財政の制約下、東久留米市は、昨年八月に財政危機を宣言、歳出構造の徹底した見直しによる行政事務の高コスト化の是正、いわば身の丈に合った行財政構造に転換しようと汗をかいています。
 また、ある市の市長は、税収の二割減を前提とした行財政改革に取り組んでいます。
 この改革を進めていこうとする場合、その効果を見据えて、ハード、ソフト両面にわたる行政環境整備のための投資が必要でありますけれども、財政の効率化を急がなければならない団体ほど経常収支比率が高く、事前投資財源に事欠くというジレンマに陥ってしまいます。各市町村それぞれ違いがありますが、私の述べた実態は、多摩北部に顕著でございます。
 多摩地域は、全体でも財政規模一兆三千億円弱、都に比較すれば、非常に小さなものです。そして、重ねて申し上げますが、この限られた財政の枠の中で税収の減少や三位一体の改革の影響に対し、自助努力で何とかしよう、こういうことで行財政改革を進めております。
 こうした観点から、我が党は、平成十六年度予算案において調整交付金の復活要望を行い、極めて厳しい中、知事にもこれに増額という形でこたえていただき、市町村調整・振興の両交付金の総額が維持されました。
 そこで伺います。市町村が真の地方主権を目指し、自助努力を前提とする不断の行財政改革を進めるため、市町村調整・振興交付金の維持、充実と一層の活用が重要と考えますが、総務局長のご見解をお伺いいたします。
 次に、環境行政施策についてお伺いいたします。
 東京の環境は、自動車公害、温暖化問題、自然環境の再生など、多くの課題に直面しております。都は、ディーゼル車規制で発揮した先進性、指導性をもって今後とも都民の期待にこたえ、国をリードし、ほかの自治体の模範となる環境施策を積極的に展開されることを要望いたします。
 特に温暖化問題は、一九九七年に京都議定書が採択されたにもかかわらず、まだ発効のめどが立たない状況にあり、加えて、国の温暖化対策も十分な効果がなく、我が国全体のCO2排出量は、今もなお増加傾向にあります。
 東京では、この冬、都心においては真冬日がなかったとのことであります。地球温暖化の影響に加え、熱汚染ともいうべき都市の温暖化も進行しています。
 私は、温暖化問題とは、文明のあり方、我々のライフスタイルそのものが問われており、都市生活を営む私たち一人一人の取り組みも重要と思います。
 その意味から、日常生活において、省エネに取り組む家庭部門対策も重要です。家庭部門のCO2排出量は都内の総排出量の約二割を占めており、世帯数の増加、家電製品の大型化や多機能化により、近年増加し続けています。この削減のためには、今申し上げました意識啓発に加え、消費者をCO2削減に結びつく行動に誘導する具体的な仕組みづくりも必要です。
 ところで、この二月二十三日に都環境審議会から、東京都における実効性ある温暖化対策の中間の取りまとめの答申があり、家庭部門対策として、新たに家電製品の省エネラベル制度が提言されました。
 そこで、今回提言のあったこの新制度のねらいは何か、あわせて国が既に制度化しているJIS規格の省エネラベルではどのような点で不十分なのか、お伺いいたします。
 環境問題の解決には、地球環境というグローバルな視点と私たちの経済活動や日常活動を見詰め直し、行動していくというドメスチックな視点が必要です。そのためには、都民や事業者、NPOなど多くの主体と連携、協働し、実効性のある対策を進めていくことが重要です。
 今回の省エネラベル制度についても、みずからのライフスタイルを見直し、日常生活における省エネの取り組みに向けて、一人でも多くの都民に活用してもらえるよう、多くの主体と連携を図りながら、社会全体に広めていくことが必要と考えます。
 そこで、都は、今回の中間まとめを踏まえ、今後、省エネラベル制度の施策展開についてどのように進めていくのか、お伺いいたします。
 私は、平成十四年第二回定例会において、都立病院改革マスタープランの目指す限られた医療資源を市区町村、都の公と民間が適切に配分し、それぞれが役割を発揮し、協働して住民の医療ニーズにこたえていく必要については理解する旨発言しました。
 そのことを思い起こしながら、次に、地域医療施策についてお伺いいたします。
 都は、昨年九月の多摩地域における小児医療体制に関する報告の中で、小児医療の充実を図るための施策の方向性を示すとともに、平成十六年度の都の重点事業として、小児医療ネットワークシステムの構築を掲げました。今後は、この報告に基づき、多摩の各地域の実情を踏まえながら、小児医療確保に向けて、施策の充実が求められます。
 さて、私は、昨年の第二回定例会の一般質問では、北多摩北部医療圏の五つの医師会の先生方が小児医療の充実に向けて協議を重ねているというお話を申し上げました。
 その後、この五つの医師会で構成する北多摩北部医療圏医療機能連携協議会において、小平市にある公立昭和病院と再編整備される多摩老人医療センターを拠点とし、地域の医師会がともに協力しながら、小児初期救急体制を確保していこうという方針を決定したと聞いております。
 私は、こうした地域の医療関係者の真摯な姿勢に敬意を表しますとともに、今こそ、こうした地域からの動きを行政が前向きに受けとめまして、小児初期救急体制の確保に取り組んでいくことが求められていると思います。
 そこで、都は、このような地域医療関係者の取り組みをどう評価し、北多摩北部医療圏における小児医療の充実に向けてどのように取り組んでいかれるのか、伺います。
 次に、その協議会の方針によりますれば、地域の小児医療の拠点として、多摩老人医療センターへの小児科の設置が極めて重要な意味を持つと思います。このことにつきましては、昨年十二月の第四回定例会におきまして、我が党の倉林議員の質問に対し、都から、多摩老人医療センターについては、できるだけ早期の小児科設置について実務的に検討しているとの答弁をいただいたところでありますが、協議会の今申し上げましたような方針も示されたこの機会に、改めて小児科設置を含めた多摩老人医療センターの地域病院としての整備について、その進捗状況をお伺いいたします。
 これまで私が何度も申し上げてまいりましたけれども、多摩北部医療圏は、多摩のほかの地域と比較しても小児の医療資源に乏しく、小児医療の充実には各地域の医師会や自治体間の協力は不可欠です。
 また、再編整備後の多摩老人医療センターが、地域の小児医療の中核としての役割を果たしていくことも求められております。
 地域の医療関係者、自治体、そして、都が協力しながら、地域の小児医療を確保するためのさまざまな施策を一歩一歩着実に積み重ねていくことが求められています。
 都は、開設を予定している小児総合医療センターにおいて、地域医療活動に対する支援、医療スタッフの育成などにも積極的に取り組むとしております。こうした取り組みと地域における小児医療体制の整備を結びつけ、地域の小児医療の充実に向けた総合的な施策を強力に推し進めていくことが必要でございます。
 最後に、都として、地域の小児医療の充実に向けてどのように取り組んでいかれるのか、知事の決意を伺って、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 野島善司議員の一般質問にお答えいたします。
 地域の小児医療の充実についてでありますが、次の世代を担う子どもたちを健康、健全に育成することは、親だけでなく社会全体の責務であると思います。子育て世代の不安を解消し、安心して子どもを育てていくためにも、小児医療の充実は重要な課題であると心得ております。小児医療水準の向上を図るため、相談体制の充実、救急医療体制の整備、小児科医師の確保などに、今後も積極的に取り組んでいくつもりでございます。
 他の質問につきましては関係局長から答弁いたします。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 都内三十九市町村の財政に関する二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、予算の動向等についてでございますが、平成十六年度一般会計当初予算案の規模は、国が過去に実施いたしました特別減税等に伴います減税補てん債の借りかえ分を除いた実質ベースで見ますと、全市町村合計で一兆二千三百億円程度、前年度と比べ微減となる見込みでございます。
 生活保護費などの義務的経費が増嵩する一方、個人住民税や地方交付税が大幅に減少する中にありまして、基金を取り崩して予算編成に対応している団体も少なくございません。今後も扶助費の累増が予想されますとともに、退職者の急増期を迎えることなどから、お話にございましたように、歳入歳出の徹底した見直しを行うなど、従来にも増して厳しい行財政運営が求められる状況にあると認識しております。
 次に、市町村調整交付金、振興交付金についてでございますが、両交付金は、都内市町村に対する包括的な財政補完制度として、市町村の行政水準の向上に一定の役割を果たしていると考えております。
 都といたしましては、この制度によりまして、各市町村の自助努力を前提といたしまして、行財政運営の自主性、自立性の向上に資するという観点から支援を行ってまいりました。
 今後とも、お話の点も踏まえながら、必要な経費の確保に努めますとともに、努力した団体が報われるという制度の趣旨を生かした活用を進めてまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 家電製品等の省エネラベル制度についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、省エネラベル制度のねらいについてでございますが、省エネラベル制度は、家庭部門における温暖化対策の有力な施策として位置づけておりまして、消費者が家電製品を購入する際に省エネ情報をわかりやすく伝えて、省エネ家電製品の選択を促し、その普及を図ることをねらいとしております。
 しかし、国が制度化しております現行のJIS規格の省エネラベルでは、省エネ基準の達成率と年間消費電力量の表示のみで、消費者が知りたい省エネ情報が十分には示されておりません。
 そこで、都独自の省エネラベル制度におきましては、家電製品の比較ができるように、省エネ性能や販売価格と電気代を合わせた総費用などをラベル表示するとともに、販売店に店頭での表示、説明を求める制度を検討してまいります。
 次に、省エネラベル制度の施策展開についてでございますが、効果的な制度を構築するためには、消費者にわかりやすい表示方法の検討と販売店の協力が不可欠でございます。このため、都は、消費者団体や業界団体等が参加する家電で省エネ実行委員会を設置いたしまして、実効性ある実施方法を現在検討しております。
 都は、その検討結果を得て、省エネ家電製品の早期普及を図るため、制度化に先立ち、本年の夏にも八都県市を初め他の自治体や事業者等に幅広く呼びかけ、省エネラベルキャンペーンを試行してまいりたいと思います。
 さらに、省エネ家電製品の全国的な普及を促進するため、全国共通の省エネラベル制度への発展を目指し、国に対して強く働きかけてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 北多摩北部保健医療圏におけます小児医療の充実に向けての取り組みについてでございますが、この医療圏では、小児科医師が少ないことから、各市が単独で初期救急体制を確保するのは困難であると考えております。
 このような状況の中、地域の医療関係者が、各医師会の枠を超えて協力し、救急体制を確保しようとする取り組みは高く評価できるものでございます。
 関係五市は、こうした地区医師会の動きを受け、実施に向けて協議を開始したところでございまして、今後、都としても積極的に支援してまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 多摩老人医療センターの再編整備の進捗状況についてのご質問にお答えいたします。
 平成十七年度の東京都保健医療公社への移管に向けまして、現在、都は、運営協議会準備会や、本年一月に同準備会に設置されました小委員会におきまして、地元自治体を初め、地域の医師会などのご意見を伺いながら、小児科設置を含め、地域の医療ニーズを踏まえた医療機能や診療科構成などについて検討を進めております。
 なお、来年度の取り組みとして、できるだけ円滑な小児科開設に向けた準備としての外来診療ブースの整備や病棟の改修を行うほか、救急診療室の拡張工事を実施していく予定でございます。

○議長(内田茂君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後五時二十八分休憩

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