平成十六年東京都議会会議録第三号

○議長(内田茂君) 三十四番かち佳代子さん。
   〔三十四番かち佳代子君登壇〕

○三十四番(かち佳代子君) まず、青年の雇用対策について伺います。
 東京の十五歳から二十四歳の青年男子の失業率は、この数年、九から一一%台という高い水準を続けており、大学を卒業しながら働く場のない大卒無業者は三万人で、大学卒業者の二割、高卒無業者は約一四%で、全国平均を上回っています。さらに、働く場を得たとしても、東京の青年の六人に一人、六十五万人はフリーターという不安定雇用を余儀なくされ、その多くが低賃金と長時間労働を強いられているのが実態です。
 大田区のある青年たちが、毎月、弁護士とともに街角労働相談を行っています。その中では、大学四年生、百十六回面接したが、結局決まらず、四月からフリーターとなる、自分が否定されている思いだとか、二十九歳の契約社員の男性は、一日、一日の契約で、あすの予定は前日に自分で会社に電話をして聞かなければならないなど、その実態は胸の痛くなるものばかりです。
 また、私の聞いた二十代の女性は、学生時代、就職の面接をしたら、即戦力にならないからだめといわれ、その夫は、朝八時に出勤し、帰ってくるのは夜中の一時が通常で、三時、五時になることもある。会社から電話が来れば土日の出勤もあり、これでは過労死してしまうと訴えています。
 青年の雇用をめぐるこうした事態は、一人一人の若者の人生に暗い影を投げかけるとともに、東京と日本の未来に直結する重大問題です。
 我が党は、これまでも、東京都が青年の雇用問題解決のために全庁を挙げた対策をとることなど提案してきましたが、改めて、今日の深刻な事態打開のために、以下の三点に絞って提案するものです。
 その第一は、大企業がその社会的責任を果たし、青年の正規雇用を拡大するよう求めることです。
 青年雇用をめぐる最大の問題は、青年の就労意欲の低下ではありません。大企業が青年の採用を長期にわたって抑制する一方で、徹底したリストラと、パート、アルバイトなど、低賃金の非正規雇用にシフトしてきたことにあります。
 東京の大企業における青年の比率は、十年間で三七%から二五%と一二ポイントも後退しています。大企業は、リストラによって史上空前の利潤を上げており、その一部を取り崩すだけで、青年雇用を拡大することは十分可能です。リストラと新規採用抑制をやめ、青年雇用を確保することは、経済界とそれをリードする大企業の社会的役割ではないでしょうか。今なお広く横行しているサービス残業を一掃するだけでも、東京で二十三万人の雇用拡大をすることができるのです。
 都として、大企業に対して、青年雇用の抑制策をやめ、青年の雇用拡大に努力するなど、その社会的責任を果たすよう強く働きかけるべきです。知事の答弁を求めます。
 都の公共工事、物品納入には多様な企業が出入りしています。都の公共事業の発注、物品購入先に青年の雇用を求めること、指名業者選定に当たって、青年の雇用状況を配慮するなどのインセンティブを与えることは、実効性を高めることになります。それぞれお聞きします。
 第二は、中小企業が青年の雇用を促進できるよう支援策をとることです。
 今、青年労働者、青年技能者を確保することは、後継者不足、青年労働者不足に悩む中小企業にとっても切実な要望であり、地域経済の活性化にとっても重要な課題です。
 既に、全国では、地域経済の振興と結び、取り組みが始まっています。滋賀県の高卒未就職者雇用促進奨励金事業など中小企業に対する支援策や、鳥取県では、二年間で千七百人もの雇用創出の成果を上げています。富山市では、製造業創業希望者に一定期間、工場、建物を安く貸し出し、独立開業を支援しています。空き店舗利用の商業についても同様、経営指導から販路の拡大まで、総合的なサポート体制に取り組んでいます。
 都内でも、世田谷区では、区内企業による合同説明会を区が開くとともに、国の若者トライアル雇用促進奨励金に区独自に一人月額二万五千円の加算を行い、区内中小業者による雇用促進を図ろうとしています。
 大田区でも、昨年七月から、週一回、区役所にハローワークの出張窓口を設置し、就職相談や就職紹介等を行っています。これまでに九百五十人が利用しています。
 中小企業が青年の採用を促進できるよう支援策を図るとともに、青年が起業する場合の場所の確保、専門家によるサポート支援、金融支援など、総合的支援の仕組みが必要です。答弁を求めます。
 第三は、深刻な事態打開のために、自治体がみずから職員の採用を拡大する努力を強く求めるものです。
 都が公立小中学校全体で三十人学級に踏み出すなら、新たに七千人の雇用創出となり、消防士などの配置基準未達成を解消すれば千七百二十一人、保育所の待機児解消を行うなら千八百人の雇用を生み出すことができます。
 また、都の職員構成は、定数削減、退職不補充を続けてきた結果、五十歳代が三五%に比し、二十歳代が一二・六%と、先細りにゆがんでおり、新規採用状況は、十年前の二五%まで落ち込んでいます。
 この点でも、既に、鳥取県では、三十人学級と図書館司書の配置、保育分野での低年齢児加配など、三百二十二人の就労を確保してきました。大都市でも、大阪府では、職員の時間外勤務を削減し、青年百名の就業体験雇用を創出するワークシェアリングを実施するなどの努力が始まっているのです。
 都としても、教育や福祉施策の拡充を図り、青年の直接雇用拡大を推進することを求めるものです。お答えください。
 次に、鳥インフルエンザ対策について質問します。
 京都の養鶏場で、大量の感染死が隠されたまま、一部が出荷され、兵庫、香川などに被害が拡大し、厚木市にまで卵が入荷されていたことは、大きな衝撃を与えています。毒性の強い高病原性鳥インフルエンザは、養鶏業者等に大きな被害を及ぼすだけでなく、食の安全への不安を広げています。人に感染する力は強いものではないとされていますが、世界保健機関、WHOは、流行が拡大する中で、人から人にうつる強毒性のウイルスに変異し、世界全体に大流行する可能性があると警鐘を鳴らしています。そんな事態を招かないために、万全の対策が求められています。
 今必要なことは、感染防止と早期発見対策の強化です。都は、一月末から、国の防疫マニュアルに基づくモニター検査を開始しましたが、これは他県に比べても遅い対応でした。東京の養鶏業者は二百四十二戸、十五万羽と決して多くありませんが、大分では、個人のペット用の鳥に感染したことを見ても、東京に感染が広がる可能性は十分にあります。しかも、近県の茨城県は養鶏数が全国一位、千葉県は第四位という地域です。東京しゃもや東京うこっけい卵など、貴重な特産品に被害を出さないためにも、緊急の対策を求めるものです。
 国の防疫マニュアルは、多いところでは百万羽以上に上る各都道府県の養鶏場でわずか一カ所、十羽の定点監視、月一回というものであり、不十分です。都は、一月の調査では、全養鶏農家の巡回調査を行いましたが、今後も継続的な全戸調査が必要です。
 防疫対策の実施状況や防鳥網の設置状況、異常な鳥の早期発見など、巡回指導、相談支援の強化を求めるものです。見解をお聞きします。
 養鶏農家の調査、指導やウイルス検査を行っているのは、都の家畜保健衛生所ですが、ここは、O157やBSE対策など、次々出てくる新しい感染症への対応で業務がふえ続けています。それに加えて、鳥インフルエンザへの万全の対応が求められており、職員の増員を初め、検査、調査体制の強化が急務です。お答えください。
 東京は、鳥肉、卵などが全国から集まってくる大消費地です。その多くは卸売市場を通らないなど、流通経路は複雑で、都の検査対象外の小規模な鳥肉処理業者もあります。また、ペット用の鶏などを扱うペットショップも集中しています。
 私は、全庁的な体制を確立して、あらゆる経路の感染防止と早期発見を確実に行うとともに、都のホームページの改善、充実を初め、都民への情報公開を進める必要があると考えています。知事の答弁を求めます。
 感染が発生した地域で問題になっているのは、家畜伝染病予防法に基づき、鳥や卵の移動制限が義務づけられているにもかかわらず、それによる養鶏業者等の損失や防疫対策費用に対し、国の責任で全面的に補てんする恒久対策が確立していないことです。都として国に要望すべきではないでしょうか、お答えください。
 人から人にうつる新型ウイルスが出現すれば、国内で三千二百万人が感染し、三万から四万人が死亡すると推計されています。国は、既に、インフルエンザ治療薬の備蓄など検討を開始しましたが、私が特に強調したいのは、医療体制の確保です。五年前の通常のインフルエンザの流行でさえ、入院ベッドが足りないことが大問題になりました。
 感染症予防法により、感染症病床は二次医療圏に一カ所ずつ整備するとされていますが、都内区部においては、七医療圏中、荏原、豊島、墨東、駒込の四つの都立病院で確保されているものの、三つの医療圏は空白です。都は、二十三区全体でベッドの総数は満たしており、国の了解を得ているとしていますが、昼間人口を考慮しないこと自体が問題です。感染者との接触を広げないために、感染症病床は身近な地域に必要です。
 ところが、都は逆に、都立病院の統廃合で、荏原病院と豊島病院の感染症病床を駒込に移してしまう計画です。そのことによって、人口五百万人を超える医療圏が感染症病床空白地域になってしまいます。感染力の強い新型インフルエンザなどが流行したようなとき、それでは現実に対応できないではありませんか。荏原病院も豊島病院も、百年を超える感染症医療の歴史のある病院です。荏原病院は、昨年のSARSのときは、都内で発生した疑い例の実に六割を受け入れてきました。
 この二つの病院は、都立のまま存続し、行政的医療であり、同時に不採算医療でもある感染症指定病院としての役割を継続すべきです。そして、二十三区のすべての医療圏ごとに必要な感染症病床を早急に整備することを求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) かち佳代子議員の一般質問にお答えいたします。
 青年の雇用拡大についてでありますが、都内企業の若年者に対する求人ニーズはかなりありますが、雇用ミスマッチが大きな原因となって、就職に結びついておりません。働く意欲のある若者が仕事につけないということは、本人にとっても大変不幸であると同時に、社会にとっても大きな損失であります。
 こうした若者に対して、都独自の取り組みであるしごとセンターを新設、開設するとともに、安定した就業機会の確保が図られるよう、経営者団体などを通じて幅広く要請しております。
 なお、他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 青年の雇用などに関する六点のご質問にお答えいたします。
 まず、都の公共事業などの発注先に青年の雇用を求めることについてでございますが、ただいま知事からご答弁があったように、若者の雇用確保につきまして、東京商工会議所など経営者団体百団体を通じて、幅広く求人要請を行っております。
 このほか、都内八万社を個別に訪問する求人開拓調査なども実施しているところでございます。
 これらの中には、お話の発注先企業も多く含まれておりますので、発注先企業に限定して雇用の確保を求める考えはございません。
 次に、中小企業に対する青年の雇用促進の支援策等についてであります。
 中小企業の人材確保を支援するために、求人企業及び若年求職者が一堂に会する就職面接会の開催や、若年者向けの職業訓練など、さまざまな施策を実施しております。
 また、創業の支援につきましては、創業を目指す人に対する相談指導やセミナーの開催、空き庁舎を活用した創業施設の提供、技術開発資金の助成や創業資金の融資などを行い、意欲的な若手の起業者の創業と育成を図っているところでございます。
 次に、養鶏農家への巡回指導等についてでございます。
 都は、昨年十二月末に海外発生情報を養鶏農家に周知し、通報等の協力要請をいたしました。また、山口県での発生直後の本年一月十五日から二十二日にかけまして、都内養鶏農家などを緊急に巡回指導、調査し、衛生管理状態や感染の疑いがないことを確認するとともに、注意喚起を行いました。
 さらに、京都府での発生を踏まえ、直ちに都内養鶏農家などを再調査し、異常のないことを確認するとともに、改めて予防対策などを指導したところでございます。
 次に、検査、調査体制についてでございます。
 これまでも局の本庁、事業所組織を挙げて調査指導の協力実施体制を構築し、対応してまいりました。今後とも、十分な連携のもとに的確に対応してまいります。
 次に、全庁的な連携体制についてであります。
 都は、山口県での発生の翌日、一月十三日には、全国に先駆け相談窓口を開設するとともに、養鶏農家及び都民へ適時的確な情報提供をしております。また、関係局との連携協力により、養鶏農家等へのインフルエンザ予防接種など、迅速に予防措置を講じてまいりました。
 さらに、京都府での発生を受け、昨日、ホームぺージを都民にわかりやすく改善充実するとともに、全庁的な対策会議を立ち上げました。
 最後に、国に対する損失補てん等への要望についてでありますが、都は、これまでも既に移動制限に基づく損失補てん等について、各県ともども国に要望しているところでございます。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 都の指名業者選定に、青年の雇用状況を配慮するなどの取り組みについてのご質問にお答えします。
 地方公共団体の契約は、地方自治法の趣旨に基づき、最少の経費で最大の効果を上げることが求められていることから、公正な競争により、受注者が決定されるものであります。
 このため、都の指名業者選定に青年の雇用状況を配慮するなどの取り組みを行うことにつきましては、契約の本旨である良質な履行に直接結びつくものでないこと、また、中小企業の受注機会の増大を目的としました、いわゆる官公需法のように、政策的な根拠となる客観的基準が確立されていないことから、現実においては困難と考えております。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 都におきます職員採用の拡大についての質問にお答え申し上げます。
 採用につきましては、これまで事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案し、行ってきております。
 しかしながら、現在、第二次財政再建推進プランにおける内部努力の大きな柱といたしまして、職員定数の削減に取り組んでおりますことから、職員の採用につきましては、引き続き抑制が必要であると考えております。
 今後とも事業動向などに留意し、都政の円滑な運営のため、適切に対応してまいります。
   〔病院経営本部長碇山幸夫君登壇〕

○病院経営本部長(碇山幸夫君) 都立荏原病院、都立豊島病院における感染症医療についてでありますが、都立病院改革マスタープランに基づきまして、荏原病院は医療資源の有効活用を図りまして、地域の中核病院としての機能を充実させていくため、財団法人東京都保健医療公社に運営を移管してまいります。
 また、豊島病院につきましては、地域医療の一層の充実を図る観点から、板橋区の意向を十分に受けとめ、板橋区との間で移管に向けた協議を行ってまいります。
 なお、両病院が担っております感染症医療につきましては、都におきます感染症医療体制確保の観点から、関係局間で検討し、適切に対応してまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 感染症医療につきまして、特別区の区域内における感染症病床の整備についてですが、昼間人口を含め、人口の集中や交通アクセスが良好なことなどの地域特性を考慮しまして、特別区全域を対象として、必要病床数を確保しているところでございます。
 したがいまして、二次保健医療圏ごとの整備は考えておりません。

○議長(内田茂君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時二十六分休憩

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