平成十六年東京都議会会議録第二号

   午後七時三十一分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十七番木村陽治君。
   〔百二十七番木村陽治君登壇〕

○百二十七番(木村陽治君) 日本共産党都議団を代表して質問します。
 今、企業によるリストラのしわ寄せで、勤労者世帯の収入は三年連続して後退しています。これは戦後初めての事態です。高齢者を中心に貯蓄の取り崩しが続き、日本の貯蓄率はわずか三年で九・八%から六%台まで急落し、世界で最低水準にまでなりました。
 これに追い打ちをかけるように、小泉内閣は、年金、医療改悪で七兆円もの負担増を押しつけようとしています。暮らしの状態がこのように厳しさを増しているもとで、住民の福祉の増進を図るべき自治体の使命は、いよいよ重大なものとなっているのであります。そのためにも、石原知事が進めてきた福祉の見直しを現時点に立って検証し、必要な対策を講じることが重要だと考えます。
 第一次財政再建推進プランによるシルバーパス、マル福、老人福祉手当、障害者医療費助成などの切り下げや廃止は、その後の国の社会保障改悪の影響が加わり、都民の痛みを拡大しています。
 一例だけ紹介しますと、肺機能障害がある六十六歳の男性ですが、在宅酸素の医療費が一昨年十月の国の改悪ではね上がり、年金暮らしの中、国保の三割負担で年間二十二万円に及びます。マル福があれば三分の一の負担で抑えることができたんです。
 また、都の障害者医療費助成の改悪で、高齢者の新規適用が停止されたために、障害者の医療費助成で救うこともできません。体内の酸素濃度が下がったときの苦しみは、経験した者しかわからない耐えがたいものだといわれています。ところが、医療費の負担に耐えられず、生きるために必要な酸素を減らしたり中止するケースが相次ぐ事態となっており、緊急の支援策が求められています。
 知事は、社会保障の充実を経済的給付の見直しの理由といたしましたが、充実どころか、ますますひどい事態になっています。生活保護基準以下の給付額にすぎない国民年金まで一律一五%の切り下げが計画され、社会保障の最後のとりでといわれる生活保護の給付の削減まで手をつけられるに至りました。
 また、今国会で提出された税制改悪案が通れば、所得税、住民税の課税所得ラインが大きく下がります。その結果、例えばシルバーパスにも連動して、今まで住民税非課税で千円の人が新たに課税対象となり、一気に二万五百十円にはね上がる場合が少なからず生まれることになります。介護保険の負担もふえています。
 そこで、まず伺いたい。知事は、憲法二十五条の健康で文化的な最低限度の生活さえ保障されないような現状が広がり、都民生活の状態がますます深刻なものとなっていることをどう認識しているんですか。
 状況の大きな変化が生まれているもとで、都民の暮らしの実態、そして、医療費助成や福祉手当など経済給付的事業の切り下げが都民に及ぼしている影響を検証し、改めて所得の低い人に対する支援の強化に取り組む必要があると考えますが、知事の見解を問うものであります。
 石原都政がこれから進めようとしている第二次の財政再建推進プラン、都庁改革アクションプランの方向はどうでしょうか。
 財政プランでは、長期にわたり継続している補助、補助率の高いもの、年間一千万未満の少額補助など、あらゆる都民施策が削減や廃止の対象になり、これによって一千二百億円の財源を浮かそうとしています。名指しをされた私学助成がこれ以上減らされたら、授業料の値上げや奨学金の制度の後退につながり、進学をあきらめたり、退学を余儀なくされる事態が拡大します。
 長期継続補助だという理由で、赤ちゃんの予防接種の補助まで削ろうとしていることも、批判が上がっています。年間わずか二十八万円の吃音者の発声訓練事業の補助金まで廃止が打ち出されていますが、当事者の皆さんにとっては、この補助金だけが唯一の公的支援であり、存続を切実に求めています。
 都庁改革プランは、既に実施されている多摩の五カ所の保健所廃止や都立病院の削減、廃止計画に加えて、百三十年の歴史がある養育院の板橋老人ホームを初め、都立福祉施設の廃止、看護専門学校、青少年センター、労政事務所など、都民のための都立施設の廃止や縮小を次々に進めるものです。営利企業に施設の運営を任せることや施設の民間移譲も盛り込まれています。
 世界的レベルのオーケストラに成長した東京都交響楽団の人件費削減のため、一たん全員を解雇して、二年ごとの有期雇用に切りかえようとしていることに、そんなことをしたらオーケストラは育たない、都響の灯を消さないでという声が広がっています。
 山田洋次監督の映画「学校」で描かれた中国や韓国からの帰国者や在日外国人の貴重な教育の場となっている夜間中学の日本語学校の先生まで減らされようとしていることも、強い批判の声が上がっています。
 知事は、こうした都民の批判をどう受けとめているんですか。都民のための仕事は、お金も人も施設もでき得る限り少なくし、また撤退するという、この二つのプランが実行されたら、都民の暮らし、福祉、教育、さらには文化、芸術まで重大な打撃を受けることは明らかです。それは自治体の変質を進めるものといわなければなりません。
 以下、二つの問題に絞って質問します。
 まず、保育です。第二次財政プランの中で大きな焦点の一つが、私立保育園のサービス推進費補助の改悪と大幅削減であります。今回の改悪で、経験年数に応じた加算が廃止され、骨抜きにされた上、毎年五百万円、三年間で千五百万円もの大幅削減となる保育園が続出することになります。
 子どもの定員六十人、職員の数が十九人のある保育園では、経験年数の長い保育士は年収で九十万円から百三十万円の削減、中堅の人は五十万円から七十万円の削減、賃金の低い若手の人はわずかな昇給という案が示されました。それでも来年度の五百万円の削減には届かず、二年目、三年目の削減に対応するには職員を減らすしか考えられないという事態になっています。
 このような園は、一つや二つではありません。少子化対策が重要となっているときに、子どもの命を預かり、子どもを育てる専門職である保育士の確保や働く条件の大後退が東京都の手で行われようとしているんです。東京の保育の質の、取り返しのつかない低下を招くことは明白であります。
 ゼロ歳のときから卒園するまで一人一人の子どもに愛情を注ぎ、職員と子どもたちの信頼関係をつくり上げていきたい、そして、卒園してからも顔なじみの保育士がいて、遊びに来られるような保育園にしたい、そういう努力を重ね、つくり上げてきたものが、今回の見直しで音を立てて崩れていく、そういう声が園長や保育士から一斉に上がっています。
 一月二十五日には、私立保育園の関係者八百四十人が千代田公会堂を満杯にした集会を開き、サービス推進費補助の削減を行わないよう求めるアピールを採択しました。父母会からも厳しい批判の声が上がっており、都は利用者本位ということを強調しているが、それなら利用者である保護者にきちんと説明してほしいと申し入れを行いました。しかし、福祉局はこたえようとしていません。利用者の合意は不可欠です。直ちに説明会を開催し、意見を聞くべきであります。所見を伺います。
 これだけの反対があり、制度の根本にかかわる変更であるだけに、もう決めたことだといって突き進むようなことは許されません。
 東京都はこれまで、職員の定着率の高い保育園はよい保育園だと認めてきました。この考えを変えていないなら、職員の経験年数に応じた加算を存続する、このことを守るべきではありませんか。お答えください。
 公立保育園も危機に直面しています。国のいわゆる三位一体改革で公立保育園の運営費補助が一般財源化され、都はそれまで負担していた九十二億円をそっくり来年度予算から削除しました。このため、都補助金の分が丸々不足することとなる多摩地域の地方交付税不交付団体十一市からは、補助の継続を求める要望が出されています。
 また、残りの多摩地域の交付団体や財調扱いとなった二十三区についても、財源が不足し、持ち出しとなる危険があります。このままでは公立保育園の民営化や統廃合の流れが一層加速されることになりかねません。
 多摩地域の不交付団体はもちろん、区市町村がこれまでどおり公立保育園運営費の財源を確保できるよう、都として特別の支援策を講じるべきであります。
 今まで保育に使っていた九十二億円は、この特別措置とあわせて、公立、私立の認可保育園の大幅増設や産休明け保育、延長保育の拡充、保育料の負担軽減を進めることなどに活用することを求めるものです。見解を伺います。
 知事は、私立保育園の補助の削減、公立保育園運営費の予算を削除する一方、さきの施政方針表明で認証保育所への民間事業者の参入の促進を強調しました。全国紙でも、認証保育所の利用者のうち六割が、料金の高さなどから認可保育所への転園を希望している実態がある、経験が少なく未熟な保育士が子どもを預かると報道されたように、認可保育所を後退させて認証中心にしていくという方向は、都民の願いにこたえるものではありません。保育士が次々と入れかわる、保護者会が全く開かれない、保育士は紙芝居をめくるだけで音はカセットテープなどという認証保育所をめぐる問題が数多く指摘されています。
 知事が進めるこれらの方向は、財界と軌を一にするものです。日本経団連が昨年七月にまとめた報告では、認可保育所制度をゼロベースから見直し、大胆に競争原理を導入すること、認可制度自体の廃止を検討することを提言しています。そして、低コストで多様な事業者の参入が容易であることなどを挙げて、都の認証保育所の推進を訴えています。そこにあるのは、いかに安上がりの保育で済ませるのか、保育を市場原理の民間企業に投げ出していくのかという発想だけであり、子どもをいかに豊かに育てるのかという視点は見当たりません。私は、何よりも子どもをどのように豊かに育てるのかという視点を据えて保育行政を進めることが必要であると考えるものですが、知事の答弁を求めます。
 次に、都立大学の問題です。都庁改革プランに基づいて独立行政法人化と都立四大学の統合による新大学を設立するという知事のやり方は、極めて異常なものです。とりわけ知事が昨年八月一日、それまでの大学との協議に基づく新大学設立の準備の蓄積と体制を一方的に破棄して、知事と少数のメンバーで秘密裏に作成した新大学構想を発表し、以後は知事のトップダウンで具体化を進め、構想を了承するものだけを新大学に受け入れるという強硬姿勢をとってきたことです。
 これに対し、都立大学総長を初め、助手を含む四大学教職員の過半数、学生、院生の圧倒的多数、都立大のOBや全国の大学関係者、研究者、文化人、マスコミも含めた、開かれた民主的な改革を求める大きな世論が広がりつつあります。
 地方独立行政法人法の国会附帯決議でも、定款の作成や認可に際して、憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性、自立性を最大限発揮し得るための措置を講じることを求めています。
 ところが、大学管理本部は、新しい大学での自治や学問の自由は保障するが、廃止される現大学は違うと驚くべき発言をし、教職員には新大学での非公務員化と任期雇用制を押しつけ、拒否すれば昇格昇給は一切なくなるという不当な選択を迫っています。これでは国会決議に聞く耳を持たずということではありませんか。
 最近、大学管理本部は、早急に意思の確認を求める強い意見があったとして、全教員に、数日内に、新大学構想を認めて移行を希望するか、拒否して採用を断念するかの意思確認書なるものを送りつけましたが、文部科学省から事実誤認を指摘されて訂正を求められるありさまです。
 大学を構成する教職員や学生、院生はもちろん、都民の意向も全く聞こうとせず、反対者は強権的に排除するという余りに非民主的な準備作業が推し進められていることは、だれの目にも明らかです。
 知事、大学自治と学問の自由の保障を求めた国会決議を尊重すべきではありませんか。
 また、法的根拠も文科省の了解もない教員に対する同意書、意思確認書などは撤回し、最低限のルールとして都民参加の開かれた協議の場をつくるべきですが、あわせて見解を伺います。
 こうしてまで知事は、都立の四大学を一体どんな大学につくり変えようとしているのか、その中身も重大です。
 都市教養など学問的根拠の不明確な学部構成、新大学のカリキュラムづくりは、受験予備校の河合塾に発注され、英語教育はNOVAのような英会話専門学校に委託するようですが、それによって、現都立四大学の最大の特徴である少人数による極めて高い水準の専門教育と学問的蓄積をすべてご破算にしてよいでしょうか。
 現在の都立大学は、国の科学研究費採択の伸びがトップであり、少人数指導の手厚い教育体制、司法試験合格者数でも有数の大学の一つであり、実業界からも高い評価を得ています。また、人文学部の語学、文学専攻を初め、各学部の研究活動でも国際的評価が高く、だからこそ受験倍率も高いし、入学した学生のアンケートでも、専門の学問を学びたいという要望がトップを占めているではありませんか。国際的にも評価が高い、この都民の誇るべき学問的蓄積をより充実させる改革こそ必要ではありませんか。お答えください。
 このような施策の切り捨てが進められた結果、東京都の予算はどうなったでしょうか。
 まず、自治体の最も大切な仕事である福祉について見ると、福祉局の予算は三年連続で後退させられ、三年前と比べて五百八十八億円も減らされました。
 石原知事が就任した一九九九年度以来五年間で見ると、政令市のある宮城、埼玉、千葉、神奈川、京都、兵庫、広島及び東京の八都府県のうち、福祉予算を減らしたのは東京都だけという異常ぶりです。しかも、都民施策への大なたは福祉にとどまらず、中小企業予算は九年連続で後退させられ、教育予算、環境予算、住宅予算など、軒並み後退をさせられています。
 しかし、今、たとえ財政が苦しくても、不況の中で住民生活を守ろうと、雇用対策や住宅対策、福祉などを少しでも前進させようとする自治体がふえています。
 例えば、千葉県も、いろいろな問題はありますが、都が廃止した成東児童保健院の施設を引き取り、子どもの医療と養護の総合施設として活用する計画も進めています。カナダ並みの巨大な財政力を持ちながら、冷たく福祉を初め都民施策を切り捨てる東京都とは対照的です。
 一方、石原都政五年の間、事実上の聖域とされ、温存、拡大されてきたのが超高層ビルと大型幹線道路中心の都市再生です。住宅や公園、中小河川、生活道路整備など都民の生活にとって必要な投資は大きく減らしながら、臨海副都心開発を初め虎ノ門の環状二号線地区開発など大規模再開発と、それを支えるための首都高速中央環状新宿線などの幹線道路につぎ込まれる投資はふえ続け、いまだにバブル前の二倍の一兆円規模に高どまりして、都財政を大きく圧迫しているんです。このために、都債、すなわち借金の残高は、石原知事のもとで積み増しされ、都政史上最悪の六兆九千六百八十二億円に達するに至りました。
 加えて、来年度予算案は、都市再生を本格的に進めるための大型公共事業のレールが大きく引かれていることも特徴です。多国籍企業のための国際都市のインフラとしての羽田空港再拡張の一千億円の無利子貸し付けに踏み出すことや、首都高速道路中央環状品川線大橋ジャンクション部分の四百億円の再開発、臨海道路第二期工事など、まさに大盤振る舞いです。
 知事は、来年度予算について財政再建の新たな一歩を踏み出したと評価していますが、過去最高に借金を膨らませておいて、財政再建に踏み出した予算などといえるのですか。見解を伺います。
 もう一つ改められるべきは、来年度予算で新銀行に一千億円もつぎ込もうとしていることです。そもそも新銀行は、都民が期待している、貸し渋り、貸しはがしに遭っている中小業者に役立つものでないことは、これまでの知事の八百屋や魚屋には貸さないという発言や、新銀行の財政計画で、当然破綻処理のために積んでおかなければならない個別貸倒引当金を一円も積んでいないことでも明らかです。
 とりわけ重大なことは、新銀行が融資をした中小企業の経営が悪化したら、すぐさま債権回収機構送りにするなど、新銀行から切り離してしまおうとしていることです。これは、たとえ財務内容が思わしくなくても、地域の金融機関として業者を励ましたり経営相談に乗ったり、時には販路拡大に努めたりと、その企業を育てる視点で融資を行っている信用金庫や信用組合とは対極にあるものといわざるを得ません。
 知事、新銀行への一千億円の投資はやめて、九年連続で後退させられている中小企業対策予算、福祉や環境、住宅、教育など、都民のためになぜ使おうとしないのですか。答弁を求めます。
 石原知事が進める都市再生には、財政のみならず都市づくりのあり方からも重大な問題があります。知事は、東京構想二〇〇〇でその都市像を示すに当たり、都心への一極集中是正という立場すら覆して、都心を中心にセンター・コア・エリア、すなわち中央環状線の内側全体という広大な地域の巨大開発に踏み出したのです。既に都内は、二〇〇三年問題といわれる超高層ビルラッシュが続いていますが、その規模は、大手不動産会社森ビルの評価によれば、バブルの最盛期の倍だそうです。今後、緊急整備地域の開発など、都市再生が本格化しますが、その結果、東京の環境と都民生活に何がもたらされるでしょうか。
 まず、環境の問題です。例えば、知事は、五年前につくった危機突破・戦略プランで、自動車公害の政策指標として、都内で自動車走行によって発生する窒素酸化物を二〇〇五年度までに二万八千トン減らすと掲げていました。しかし、既にこの目標が実現不可能であることが明らかになり、都は昨年十二月、達成期間を五年間先延ばししました。窒素酸化物の排出の七割近くが自動車によるものです。この間、自動車の排ガス規制は進んでいるのに、なぜこんなことになったのか。それは、都市再開発によって自動車交通量がふえ続けてきたからにほかなりません。
 今後、センター・コア内の開発でふえる自動車交通量は、都の資料によっても新たに二十五万台、このうち、将来、三環状道路が完成したとしても、センター・コア内に入ってくることを排除できると見込まれる交通量は十万台ですから、差し引きで十五万台の車がふえるんです。
 地球温暖化の要因となるCO2、二酸化炭素についても同様、超高層ビルと自動車交通の増大により、削減目標を達成できる見通しは全く立たない状況です。
 したがって、今一番大事なことは、NOχ 対策にせよ二酸化炭素対策にせよ、考えられる削減策を進めつつも新たな発生を極力抑制していく、とにかくふやさないということを対策の中心にしっかり据える、そういうことではないでしょうか。この視点からの都市再生の抜本的な見直しこそ求められると思いますが、見解を伺います。
 都市再生と住宅問題の関係はどうでしょうか。石原都政の住宅政策の戦略は、都心居住の推進と都営住宅制度の改革でした。石原知事が東京にふさわしい居住像を実現するためといって進めている都心居住の実態はどうでしょうか。六本木の再開発によって生み出された保留床による賃貸住宅の家賃は、一番安い住宅で月六十六万円、最も高い住宅は月四百三十五万円です。汐留地区開発による住宅は、公団賃貸住宅で月十四万円から三十四万円の家賃、住友不動産の賃貸住宅では月六十九万円から月二百十六万円となっています。これでは、ごく一部の高額所得者のための住宅ではあっても、圧倒的多数の都民にはとても入れません。これでいいでしょうか。見解を求めます。
 一方、都営住宅制度はどうなっているか。石原都政は、この間、都営住宅の新規建設は全く行ってきませんでした。新築は建てかえによる戸数増だけです。その結果、都営住宅への申し込み倍率は、二〇〇三年は空き家が三十四倍、若年ファミリーに至っては七十九倍となりました。
 東京は、最低居住水準未満の世帯が全国平均の二倍です。都民の消費支出を全国と比べると、住居支出が特に大きいのが特徴です。そのような中で、今、都営住宅申し込みに殺到している人々は、不況やリストラで家賃が払えないなど、切迫した事情を抱えている人も多いんです。
 今日、低所得者のための住宅政策拡充の必要性がますます強まっていることは明らかです。ところが、そのようなときに、都は住宅局そのものをなくすんです。そして、都営住宅の管理戸数まで減らし、家賃減免制度を終わらせます。公社住宅家賃を値上げして、先行まちづくりと称して都営住宅用地にわざわざ定期借家権を導入して戸建て住宅を建てるなどという、都民が置かれている住宅事情とは全く相反することが進んでいるんです。
 知事、公的住宅からの撤退路線は改めるべきじゃありませんか。また、住まいは福祉の立場に立って、すべての都民が最低居住水準以上の住まいを確保できるように目標を据え、都営住宅新規建設を再開するとともに、公営住宅の入所基準を超える世帯も無理のない負担で入居できる公的住宅の供給を積極的に進めることが必要です。答弁を求めます。
 私は、知事の都政運営は、財界のねらいと意図をあからさまに進めるものといってもいい過ぎではないと思います。例えば、石原知事と親しい牛尾治朗氏が代表幹事を務める経済同友会が九七年に発表した市場主義宣言は、公的部門にも市場原理を導入し、小さな政府を実現するとか、社会保障の分野にも市場原理を導入するなどを打ち出したものですが、これは石原知事の東京構想二〇〇〇と二つのプランそのものの世界です。都市再生の考え方も、九九年六月に経団連が発表した都市再生への提言などを受けて、専ら多国籍企業のための都市づくりを進めているといわざるを得ません。
 私はこの際、財界の戦略に沿った都市再生と二つのプランの方向は、都民との矛盾を拡大し、都民の怒りを激しくせざるを得ないものであることを指摘しておくものであります。
 次に、都政が直面している課題の幾つかについて提案を行います。
 初めに、子どもたちを豊かに成長させる上で緊急課題となっている三十人学級についてです。
 この数年来、全国で三十人学級を初めとする少人数学級が広がっています。それは、社会の激変が子どもたちの心と生活に大きく影響し、心の不安定な子どもや学校の授業に集中できず動き回る多動性の子どもなどがふえ、これまでの四十人の学級編制では、子どもたちに十分目配りをし、行き届いた教育を行うことが困難になっているからです。
 実際に都内でも小中学校の不登校は毎年九千人を超え、十年前と比べて、出現率は、小学校で一・五倍、中学校では二倍に上ります。いじめや学級崩壊も深刻です。都内のある小学校一年生は、四十人ちょうどのクラスですけれども、授業中でも動き回る、いわゆる多動性の子が多く、授業中に寝そべる子、廊下に飛び出す子など、まるで授業にならないという話です。何とかクラスを分けてほしいと悲鳴を上げるのも当然です。このような四十人の学級は、学年途中で四十人を超えてしまった学級も含めて、都内で百六十もあります。
 この子どもたちの状況を打開するためにも、我が党は繰り返し三十人学級の実施を求めてきました。既に少人数学級に踏み出している山形県では、これまでの成果の報告をまとめた文書の中で、学校が楽しい、勉強がわかるなど子どもたちが喜んでいることや、欠席日数が平均で二割改善された、不登校、保健室登校が減少したなど、だれの目にも見える変化が生まれているとしています。山形県はこの成果を確信にして、来年度、三十三人以下の学級を小学校の全学年で実施する予定です。
 ところが、都教委は、この当然の提案を拒否し続けてきました。その上、今度は、文部科学省が来年度から、少人数指導のための加配教員を少人数学級に振り向けることを認める弾力化に踏み出し、その要望把握のためのアンケートを東京都にもおろしてきたのに、区市町村の意向を聞くこともなく、該当なしとの回答をしたのです。このような理不尽な都のやり方に、少人数学級を願う父母、関係者から怒りの声が上げられるのは当然です。
 こんなかたくなな異常なやり方を押しつけているのは東京ぐらいです。全国には、この弾力化で初めて少人数学級に踏み出す県が十一県に及び、少人数学級実施県は、来年度は少なくとも四十一県となる見込みです。関東甲信越で東京だけが未実施県として取り残されることになります。
 少人数学級が子どもたちの学習にも集団生活にも大きな効果があることは、実践に踏み出したあちこちの県で実証されています。少なくとも希望する自治体、学校については、少人数学級への移行を認め、文部科学省に申請すること、また、都として三十人学級に計画的に踏み出すことを求めるものです。所見を伺います。
 小学生の医療費無料化について、我が党は、昨年、第四回定例会で提案しました。その後、北区は小中学生の入院医療費の無料化、港区は小学生の入院医療費無料化、品川区は小学生の通院、入院の医療費無料化を表明しました。これは新しい流れとなりつつあります。神奈川県は、県の事業として中学卒業まで入院医療費を無料化にしており、全国では九十を超える自治体が小学生以上の医療費助成に踏み出しています。
 ある小児科の医師は、ある程度体力がついてこそ可能になる手術や治療があるとして、小学生の医療費助成の必要性を訴えています。乳歯から大人の歯にかわる小学生の時期の重要性も指摘されています。ふえ続けるアトピーの治療継続のためにも欠かすことができません。加えて、子育ての経済的負担の軽減は、少子化対策の最重要課題の一つであります。
 都として小学生の医療費無料化に踏み出すことを求めるものですが、見解を伺います。
 次に、痴呆高齢者のケアについて提案します。
 介護保険の五年目の見直しに向けて、痴呆高齢者ケアの充実は最重要課題の一つです。一人一人の生活と個性を尊重し、ゆったりとしたペースで、残された心身の力を最大限に発揮できるようにする痴呆高齢者に有効なケアの仕組みが、グループホーム以外はほとんど確立していないからであります。そのため、せっかくサービスを利用しても不安や混乱を来してしまう、あるいは徘回など行動障害のためサービスの提供を断られるケースもあり、介護を担う家族の悩みは深刻なものがあります。要介護高齢者のほぼ半数、施設に入所している人の八割は痴呆があるとされており、痴呆高齢者のケアの充実は避けて通れない課題となっている。
 とりわけ東京は、痴呆性高齢者グループホームの整備率は全国最低水準です。この深刻なおくれを取り戻す緊急整備をさらに進めると同時に、月十八万から二十万という場合も多い利用者負担の軽減と従事者研修など質の充実を推進し、だれでも安心して利用できるようにすることが重要であります。見解を伺います。
 介護保険制度にはない新しいケアの仕組みづくりも必要です。
 その第一は、通えて、泊まれて、必要なら住むこともできる小規模・多機能型施設を、例えば小学校区に一カ所という身近な地域に整備することです。生活の場や環境が変わる、いわゆるリロケーションダメージが痴呆高齢者に悪影響を与えるんですが、介護保険のサービスは、ヘルパー派遣もデイサービスもショートステイも、個々ばらばらに提供されます。これを打開する一つの方向が、同じスタッフ、同じ場所で継続したケアを行う小規模多機能型施設です。
 第二に、特別養護老人ホームによる地域サテライトケアの推進です。私たちが訪ねた仙台市のせんだんの杜では、特別養護老人ホームが町中の民家を借りて、日中はそこへ出かけてグループホームと同じように過ごす、逆デイサービスに取り組んでいます。痴呆の方は非常に落ち着いて効果が高い。問題は、家賃や必要な改修費、職員加配の人件費がどこからも出ていないことです。広げるには公的補助が必要です。政府は、来年度予算に改修費を補助する地域サテライト推進事業を盛り込みましたが、都は予算計上していません。千葉県では、国に先駆けて既に、改修費だけでなくて家賃と人件費の補助制度をスタートさせています。
 以上のような小規模多機能型施設や特別養護老人ホームによる地域サテライトケアなど新しい取り組みに踏み出し、痴呆高齢者のケアの抜本的な前進を図る必要があると考えますが、認識を伺います。
 重度の痴呆高齢者の受け入れと症状の改善に役立っているのが、都や民間病院で確保している老人性痴呆疾患専門病棟です。要望の高い事業ですが、希望してから入院できるまで三十日待ちという事態です。確保病床を大幅にふやすのは急務です。答弁を求めます。
 痴呆の予防、早期発見も都民の願いです。都の老人総合研究所は、介護予防のお達者検診で痴呆も含めた判定を行い、パソコン、ウオーキングなど知的活動と運動を組み合わせた介護予防プログラムを独自に開発して普及に取り組んでいます。しかし、実施しているのはまだ五区市です。
 老人総合研究所が取り組む介護予防プログラムの効果を広く都民に知らせるとともに、実施自治体を広げる支援の強化を求めるものです。お答えください。
 提案の最後は、地域商業の支援についてです。
 地域商業の生き残りと発展には、商店街への支援と、商店街を構成する個々のお店への支援と、さらに商店街の振興の核となる人材育成、この三つを一体的に取り組む必要があります。また、その支援に当たっては、商店関係者のニーズに合ったものでなくてはならないということであります。
 商店街の支援については、東京都は新・元気を出せ商店街事業を進めていますが、これの拡充が必要です。イベント支援は好評ですが、単年度で、補助額も十分ではありません。杉並区は、イベント支援について、千客万来・アクティブ商店街事業と名づけて、商店街ごとに三年間の事業として一千万円を補助しています。これを活用している阿佐ヶ谷の商店街は、空き店舗を使って、商店街として高齢者のための宅配事業に着手、喜ばれています。また、イベントの際には産地直送の物品販売を行うなど、多くの人を集めることに成功しているとのことです。
 品川区では、各商店街が取り組んでいる個店対策を交流する事業に取り組んでいますが、個別商店街の支援の仕組みである新・元気を出せ商店街支援事業に適用されないで困っているとのことでありました。
 そこで、イベント支援について、複数年の利用を認め、補助限度額も大幅に引き上げること、複数の商店街にまたがる事業などについても活用を認めることなど、改善を求めるものです。
 商店街の街路灯は、地域の安全面でも大きな役割を果たしていますが、その財政負担はどこの商店街も頭を悩ませています。各区市町村は、電気代、修理代など、街路灯の維持管理に対する何らかの支援を実施していますけれども、それでも、不況や会員減に苦しむ商店街にとっては、まだまだ重い負担となっています。都としても、街路灯の電気代について支援を行うこと、また、高額の負担を強いられる撤去、改修費などについて、補助率の引き上げを行うことなどを求めるものですが、それぞれ答弁を求めます。
 二つ目は、一つ一つのお店を支援することで商店街の活性化を図ることです。
 都が今年度実施した輝け店舗支援事業を活用した品川区のある店舗では、私のところではオリジナルの商品の開発、広告、宣伝に使った、一つ一つのお店が特徴ある店として輝くことが商店街に来るお客をふやすことになる、大変いい制度だと思っていると喜んでいました。
 問題は、この事業の来年度予算が査定でばっさり切られてしまったということです。しかし、この事業を受けた商店街関係者は、事業の必要性を訴えています。葛飾区の商店関係者は、新しい事業を始めるには、認定のための要項や組織づくりで一年目は終わってしまう、これからというときにやめてしまうのはおかしいといい、都のやり方のひどさを指摘しています。
 都自身、その事業の効果を認めてスタートさせた輝け店舗支援事業については、来年度も継続することを約束すべきじゃありませんか。答弁を求めます。
 区市町村の自主的な振興策を都が包括的に支援することは、懸案の課題です。
 この問題では、都の方針を受けて各区市町村が振興プランを策定した経過があります。その内容は、それぞれの地域や商店街のアンケートや分析から始まって、個々の店舗への支援、アーケードやカラー舗装などハード対策、高齢者のための施策など、どこも総合的なものであり、これが実現すれば商店街の活性化に役立つことは間違いありません。
 そもそも新・元気を出せ商店街事業は、区市町村が都の要綱に沿って手を挙げる方式であり、区市町村のプランに沿って自由に、自主的に使える包括的な支援制度ではありません。区市町村がせっかく策定をした商店街振興プランを宝の持ちぐされにしないためにも、区市町村の商店街支援事業に対する包括的な補助制度を立ち上げることを求めるものですが、知事の見解を伺います。
 以上述べてきたように、都民の暮らしと福祉を守るために力を尽くすことは、都政の最重要の課題です。不要不急の投資を抑えれば、財政を立て直しながら都民施策を充実できます。日本共産党は、必要もない新銀行づくりや大型開発に偏った税金の使い方を改めて、切実な都民要求を実現する予算への組み替えを提案することを述べて、再質問を留保して質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 木村陽治議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、社会保障制度についてでありますが、現在、我が国は、世界的にもまれな豊かで平等な社会を実現し、総体的に高い生活水準を維持しております。これは、基本的に国民が自助、自立を前提として努力を積み重ねてきた結果であると思います。
 同時に、国民皆保険、皆年金制度や生活保護制度など、社会連帯の仕組みとセーフティーネットの機能を有する社会保障制度をつくり上げ、社会的リスクにはきちんと対応してきたからであると思います。
 人口減少社会の到来を目前にして、真に安全・安心な社会を実現するためには、これらの制度を将来世代に信頼されるものへと改革することが必要だと思います。
 いずれにしろ、結果として日本は今、世界一の平均寿命を誇っているわけでありまして、これは何よりもこの社会保障制度の成果ではないかと思います。
 次いで、福祉施策の見直しについてでありますが、国の社会保障制度が充実した今日、都が果たすべき役割は、福祉サービスのインフラ整備など福祉水準全体の向上を図ること。しかし、これまでの国の画一的な福祉システムは、都民の福祉ニーズの多様化にこたえることができずに、もはや制度疲労を来しております。
 こうした状況を打破するために、都は、長期的、歴史的視野に立って、見直すべき事業は見直し、必要な施策には財源を集中投入し、福祉改革を進めております。
 一連のばらまき、経済給付的な事業の見直しは、利用者本位の福祉の実現を目指す福祉改革の一環をなすものとして実施したものであり、既に都民の理解を十分に得ていると確信いたします。
 次いで、財政再建推進プランや都庁改革アクションプランについてでありますが、都政や都民生活を取り巻く状況が依然として厳しい中で、東京の再生と都民サービスのさらなる充実という都民からの負託にこたえるためには、都庁全体で危機意識を共有し、政策と内部改革の両面から横断的、総合的に構造改革を推進していく必要があります。
 こうした考えに基づき、財政体質をより強固で弾力的なものとし、都民ニーズに的確にこたえられる都庁づくりを推進するため両プランを作成したものでありまして、その目指すところは、ご指摘とは全く異なります。
 現在進めている都政改革は、その本質を正しくご理解いただいた都民の広範な支持を得ております。木を見て森を見ない、批判のための批判でなく、建設的で前向きなご議論をぜひ願いたいと思います。
 保育行政の基本的な考え方についてでありますが、都民の多様な保育ニーズに的確にこたえていくことが重要でありまして、認可保育所は全国画一的な制度であり、ゼロ歳児保育や延長保育など大都市に特有の保育ニーズに的確に対応してこなかった。認証保育所は、こうした都民の切実なニーズにこたえるとともに、インターネットを通じて子どもの様子をリアルタイムの動画で配信するなど、特色のあるサービスを実施し、都民の広範な支持を得て大幅にふえてきてまいりました。
 今後とも福祉改革を強力に推進し、利用者本位のサービスのあり方を都から全国に発信していきたいと思います。
 次いで、学問の自由についてでありますが、学問の自由が憲法に規定されていることは十分承知しております。しかし、講座制の弊害、海外への頭脳流出など、状況を見れば、現実的には自由が保障されているとはいいがたい。自由には責任が伴います。従来の教授会自治による運営にはだれもが疑問を持っているところでありまして、ここから大学の本質的改革のための具体的な案が一向に出てこないところがその証左だと思います。それは、世界の大学評価ランキングの中でも、日本の大学が上位に入らないという結果にもあらわれております。
 首都大学東京では、学長のほかに理事長を置いて、経営の視点を導入し、創意工夫を行うことによって、真の意味での学問の自由を確保し、世界的にも評価される大学にしていきたいと思っております。
 十六年度予算は、財政再建に踏み出した予算とはいえないとのご指摘でありますが、借金の量というのは、過去からずっと何かっていうのは累積でありまして、それはぜひご承知いただきたい。共産党も、私が就任する前の過去には責任があるんじゃないですか。
 私の進める財政再建は、都民ニーズの変化にこたえ、東京の活力を呼び戻す先進的な取り組みを推進するため、財源不足を解消し、強固で弾力的な財政体質の確立を目指すものであります。
 十六年度予算においても、この考え方に基づき、現下の緊急課題に対しては思い切った財源の重点配分を行い、都民の安全と安心を確保するとともに、財源不足額の大幅な圧縮も実現いたしました。
 さらに、この予算では、将来に向けて持続可能な財政基盤を構築するため、基金残高の確保や都債の発行抑制にも努めております。
 私は、就任以来、将来の財政負担に配慮して都債の発行を抑制しておりまして、私の財政運営に対する借金拡大の批判が全く的外れであることは、既に再三明らかにしているとおりであります。
 十六年度予算は、まさに財政再建に新たな一歩を踏み出し、東京の再生を確実に進める予算であります。
 新銀行への出資と他の施策との関係についてでありますが、十六年度予算の編成に当たっては、財政再建に向けた取り組みを進める一方、都民の安全・安心の確保とともに、東京の活力を再生するため、治安の回復、中小企業の支援と雇用対策、都市と環境の再生、福祉、医療の充実など、現下の緊急かつ重要な課題に積極的に取り組んでおります。
 新銀行の設立もこうした取り組みの一環として行ったものでありまして、新銀行は、貸し渋りや貸しはがしに苦しむ中小企業に対しても、地域金融機関と連携し、生きた資金を迅速に、かつ円滑に供給するため、これまでにない新たな金融商品を積極的に提供していくものであります。
 私は、この十六年度予算は、限られた財源の中で都民にとって役立つ、これしかないというものを盛り込んだものであると確信をしております。
 今回出資する一千億円が、やがては数兆の値になると信じております。
 最後に、区市町村への商店街支援事業への包括補助制度の立ち上げについてでありますが、本年度、これまでの商店街振興施策を新・元気を出せ商店街事業などに再構築し、事業規模を大幅に拡大します。
 既に、新・元気を出せ商店街事業において区市町村が自主的に策定した振興プランに基づく、商店街の意欲的な多種多様な取り組みを支援しております。区市町村に対する包括補助制度の立ち上げは考えておりません。
 その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、少人数学級に関する文部科学省への申請についてですが、文部科学省は平成十六年度において、都道府県教育委員会が定める少人数学級に関する研究指定校に対し、現在行っております少人数指導等の改善定数の範囲内で、この範囲内で定数加配措置を講じることを検討しておりまして、その対象とする学校の状況に関する資料提出の依頼がございました。
 都教育委員会としましては、国の第七次教職員定数改善計画を踏まえまして、義務教育における基礎的、基本的な内容の確実な定着を図り、個に応じた多様な教育を推進するため、この数少ない加配定数については、これまで少人数指導の充実に充てておりまして、今後とも充実する必要がありますことから、今回の依頼による少人数学級の研究指定は行わないこととし、その旨回答したところでございます。
 このため、新たに区市町村に対し調査を行うことや、改めて文部科学省に回答する考えはございません。
 次に、三十人学級についてですが、他の道府県の学級編制の弾力化への取り組みについては承知しておりますが、この問題は画一的に考えるのではなくて、社会性の涵養や義務教育における基礎、基本の定着の観点から、それぞれの自治体が地域の実情に応じ創意工夫することが重要であると考えております。
 都教育委員会は、児童生徒が集団活動の中で社会性を養うための教育効果の観点から、生活集団としての学級には一定の規模が必要であると考えておりますが、一方で、基礎学力などの向上に配慮しまして、きめ細やかな指導を行っていくには、学級とは異なる多様な学習集団を編成していくことがより効果的であると考え、国の第七次教職員定数改善計画を活用しまして、少人数指導の充実を図ってきたところでございます。着実に効果を上げてきたものと考えております。
 そのため、今後とも、学級編制基準は、国の標準法で定める現行の四十人とし、教科等の特性に応じた少人数による習熟度別指導などの拡充に努めていく所存でございます。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 保育行政、痴呆性高齢者ケアなど、福祉施策に関する八点のご質問にお答えいたします。
 まず、民間社会福祉施設サービス推進費補助に関する保護者への説明についてでございますが、本補助金は事業者に対するものであり、その再構築に当たっては、当事者である施設代表者との意見交換を重ね、既に昨年十二月、最終合意を得ているところでございます。
 また、去る二月九日には、すべての保育事業者を対象として、今回の再構築の目的や内容を周知するための説明会を実施しました。
 今後、都議会のご審議をいただいた上で、都民への具体的な情報提供の方法につきましても、パンフレットを作成するなど、施設の方々と連携しながら検討してまいります。
 次に、職員の経験年数に応じた加算についてでございますが、お話の職員の定着率については、指導検査の講評の中で一つの例として掲げたものにすぎず、経験年数が長い職員がすべて資質が高いといっているものではございません。
 また、現行の補助制度は、職員の平均経験年数のみに着目した仕組みとなっており、施設における実際のサービス内容などに連動するものとなっておりません。
 こうしたことから、福祉サービスの質の向上を目的に、補助の仕組みを、都として望ましい福祉サービス水準を確保し、施設のさまざまな努力が真に報われるものへと再構築したものでございまして、職員の経験年数のみに着目した加算を存続するつもりはありません。
 次に、公立保育所に関する特別な支援についてでございますが、このたびの三位一体の改革においては、今まで国及び都が交付してきた公立保育所の運営費負担金の全額が、所得譲与税及び地方交付税として区市町村に対して財源措置がなされると承知しております。
 このようなことから、都として特別な支援を行う必要があると考えておりません。
 次に、保育施策についてでございますが、都は、これまでも、さまざまな保育ニーズにこたえるため、ゼロ歳児保育や延長保育などへの補助を行い、サービスの充実に努めるとともに、認可保育所の設置についても、区市町村の意向を踏まえて的確に対応しております。
 また、大都市特有の保育ニーズにこたえるため創設した認証保育所を来年度も大幅に増設するなど、公立保育所運営費の一般財源化の問題にかかわらず、必要な事業については所要の財政措置を行っております。
 なお、保育料は、保育費用を支弁した区市町村の長が、条例または規則により定めるものでございます。
 次に、小学生の医療費の無料化についてでございますが、これまでも都は、子育て家庭への経済的支援を目的として、乳幼児医療費助成制度の充実を図ってまいりました。
 対象年齢については、平成十三年十月に小学校就学前までに拡大しており、さらに拡大する考えはございません。
 次に、痴呆性高齢者グループホームについてでございますが、都は、これまでも、独自の補助制度により民間企業の参入を図るなど、積極的に整備を進めるとともに、痴呆介護実務者研修の実施など質の向上にも努めてまいりました。
 また、現行の介護保険事業支援計画を前倒しし、平成十八年度には定員四千人分の実現を目指すことを、昨年十一月に発表した重点事業の中で明らかにしております。
 なお、グループホームの利用に伴う家賃、食費、光熱水費などは、自己負担が原則であり、都として軽減を図るつもりはございません。
 次に、痴呆性高齢者のケアについてでございますが、ご指摘の、在宅の痴呆性高齢者などに関する、いわゆる小規模多機能サービス拠点などの考え方は、昨年六月に公表されました国の高齢者介護研究会報告の内容に含まれていたものでありますが、大都市における施策としての有効性などについて十分な検証が必要と考えております。
 なお、痴呆性高齢者ケアの新たな試みに要する予算が計上されていないとのご指摘でございましたが、都においては、区市町村や事業者の先駆的な取り組みを、包括補助である福祉改革推進事業の中で支援できる仕組みが既に用意されております。
 最後に、痴呆予防プログラムの普及拡大についてでございますが、都は既に介護予防開発普及事業を開始しており、区市町村の介護予防指導者養成などの技術支援や都民向け講演会などの普及啓発を実施しております。
 この中で、老人総合研究所が開発した痴呆予防プログラムについても、区市町村の職員などを対象として、今年度は既に八回にわたる研修を実施するとともに、プログラム実施のためのマニュアルの作成など、すべての区市町村が取り組めるよう支援を行っております。
 また、都民に対しましても、わかりやすいパンフレットの作成や講演会の開催などにより、痴呆予防についての普及啓発を行っております。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) 大学に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、首都大学東京開学に向けた手続についてでございますが、現在、新大学設立本部のもとに、外部の専門家や都立の大学の学長、学部長を委員とする教学準備委員会を置きまして、そのもとで作業チームには現大学の教員が広く参加し、具体的な教育課程の編成を行っております。
 言及されました同意書や意思確認書は、東京都として新しい大学を設置する上で必要と判断したため求めたものでありまして、これを撤回するつもりはありません。
 なお、文部科学省は、大学の改廃は設置者である東京都が責任を持って進めるべきものとしており、理解をいただいているものと考えております。
 次に、都立の大学の学問的蓄積を生かすべきというご主張でございますが、少子高齢化のもとで十八歳人口が減少する中、平成十五年度には私立大学の二八%が定員割れを起こしており、魅力ある大学づくりを果断に進めなければ、大学間競争には勝ち抜いていくことはできないと考えております。
 首都大学東京では、東京ならではの大学の使命を明確にし、大都市の複合的課題の解決に向け、旧来の学問分野にとらわれない学際的な教育研究を行っていきます。このため、都立のこれまでの教育研究の蓄積を単に生かすだけでなく、社会からの要請、また、経営の視点から、都立の四大学を再構築していくことが必要であると考えております。
 来年四月の開学に向け、東京都が設置する意義のある大学づくりに着実に取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 都市再生に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、環境の視点からの都市再生の抜本的見直しについてでございますが、センターコア内で二十数万台の車がふえるとのご指摘でございますが、開発区域内には従前から存在する交通量もあったことなどから、個々の開発による交通量を積み上げたものが、そのまま純増となるものではございません。
 また、大江戸線など近年整備が進んだ公共交通機関への交通量の移転や、職住近接の複合開発の推進などによりましても、自動車交通の発生抑制が期待されます。
 実際に、平成二年から十一年までに二十三区の建物床面積が約二五%増加したのに対しまして、区部の自動車の発生集中交通量は約六%の増加にとどまっております。
 今後とも、自動車からの排ガス対策などの発生源対策を進めることはもとより、広域的な都市基盤の整備と良質な都市開発とをあわせ進めることによりまして、東京の都市再生を進めてまいります。
 次に、都市の再生と住宅供給についてでございますが、六本木及び汐留地区は、市街地再開発事業及び土地区画整理事業によりまして、都心部の活力ある複合市街地の形成を図るものでございまして、業務、商業、文化機能などの整備とあわせて住宅の供給が行われたものでございます。
 また、区部では、近年、ファミリー世帯向けの集合住宅の新築が相次ぐなど、区部の人口は増加傾向にございまして、都心居住が進んでおります。
 このように都においては、都市再生が進展する中で、地域の特性に応じた多様な住宅が供給されております。今後とも都といたしましては、市街地再開発事業や土地区画整理事業等による都市再生に積極的に取り組むとともに、民間活力による多様な住宅供給に対しましても引き続き支援してまいります。
   〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 最初に、公的住宅政策についてでございますが、住宅が量的に充足されました現在、市場を活用して、多様化した都民の住宅ニーズに的確に対応していくことが必要でございます。
 今後、中長期的には人口や世帯数が減少に転ずると見込まれておりますことから、都営住宅につきましては、現在あるストックの維持、活用に重点を移しまして、真に住宅に困窮する都民のセーフティーネットとして一層有効に機能させることが重要であると考えております。
 都は、都営住宅の建てかえや改修を進めますとともに、都民共有の財産といたしまして都営住宅を有効に活用してまいります。
 次に、都営住宅の新規建設や、入居基準を超える世帯への公的住宅の供給についてでございますが、現在、住宅数が世帯数を一割強上回っておりまして、さらに今後、世帯数の減少が見込まれますことを踏まえまして、都は、これまでの公的住宅の新規建設を中心とした政策から、住宅市場を活用したストック重視の政策に転換をいたしました。
 都民が、多様な選択肢の中から、みずからのニーズにかなう住宅を適切に選択できる市場の整備が重要でございまして、その一つといたしまして、安心して貸し借りできる賃貸住宅市場の構築に向けまして、条例を提案したところでございます。
 今後とも、市場の機能を活用いたしまして、多くの都民に効果の及ぶ広がりのある住宅政策を展開してまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 老人性痴呆疾患専門病棟の整備については、痴呆性高齢者のうち、顕著な精神症状と行動障害を有する患者への適切な医療の確保のため行っております。
 東京都江東高齢者医療センターの開設に際しまして、平成十四年度から十五年度にかけて新たに百二十床を増床し、全体で五百二十床の整備を行いました。都では、東京都保健医療計画に基づき、五百七十床を目標に専門病床の整備に努めております。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 地域商業に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街のイベントなどへの支援についてでございますが、都は、新・元気を出せ商店街事業におきまして、商店街が実施するイベントを幅広く補助しており、商店街が毎年定期的に開催するイベントについても、各年度ごとに補助対象としております。
 新・元気を出せ商店街事業は、本年度再構築して、事業規模を大幅に拡大しましたので、補助限度額を引き上げるつもりはございません。
 また、複数の商店街にまたがる事業につきましては、補助の対象としているところでございます。
 次に、商店街の街路灯についてのご質問でございますが、新・元気を出せ商店街事業におきましては、街路灯の改修、撤去に係る費用につきましては、本年度から新たに補助対象としたところであります。補助率の引き上げにつきましては、考えておりません。
 また、街路灯の電気代など通常必要となる経常的経費につきましては、補助対象としておりません。
 最後に、輝け店舗支援事業についてでございますが、商店街は地域経済の活性化やコミュニティの維持等に重要な役割を果たしております。このため、都は本年度、商店街振興施策を再構築し、パイロット事業として、個々の店舗に着目した本事業を行うことといたしました。しかし、予想したほどの反応がなく、継続しないことといたしたものでございます。
   〔百二十七番木村陽治君登壇〕

○百二十七番(木村陽治君) いいたいことはいっぱいありますが、ごく絞って知事に再質問いたします。
 まず、社会保障と都民生活の現状についてですけれども、私は、知事が行った四年前の福祉切り下げの後の状況が変わっているじゃないかと、そういうことを指摘して、少なくともそのことを検証すべきじゃないかと提起したんです。そのことについては全く答えがありません。
 現在、我が国は、世界的にもまれな豊かな平等な社会が実現し、高い生活水準を維持しているという答弁でしたが、こんな現実認識で都政を進められたんでは、都民はたまったものじゃない。
 「サンデー毎日」の最新号に、ちまたでは所得格差が広がっているという記事が特集になっていますが、その中で、厚生省の研究費補助を受けた専門家グループがまとめた報告書として、年間わずか四十八万円の所得しかない高齢者が全体の二七%いるということが指摘されています。
 問題は、こういう人たちにも今後、年金が実額で削減されるという事態が生まれていることなんです。ですから、このどこに、豊かな社会で、高い生活水準ということがいえるのか。私は、問われているのは、知事のこういう現実認識そのものじゃないかというふうに思います。お答えいただきたいと思います。
 次に、都立大学の改革について伺います。
 知事は、学問の自由が憲法に規定されていることは承知していると、こういう答弁がありました。問題は、知事が今実際にやっていることが、学問の自由に干渉し、大学の自治に干渉しているんじゃないかという疑問や声が広がっているということなんです。(発言する者あり)
 だから、私は、国会での附帯決議について聞いたわけであります。決議は政府に対するものでありますけれども、当然地方自治体も尊重を求められているものであることは明白だと思う。
 改めて伺いますけれども、学問の自由と大学の自治を侵すことのないように求める附帯決議を尊重するかどうか、明確に答えていただきたいと思います。
 なお、財政運営について、知事は私の質問に、借金拡大の批判は全く的外れだという反論がございました。一般会計の都債残高は、いいですか、昨年が六兆九千三百三十五億円です。ことしは、今度の予算は六兆九千六百八十二億円です。差し引き三百四十七億円積み増しです。これが、現在と同じ条件で計算をすれば、都債残高としては過去最高であることは事実なんです。借金拡大をしたときの予算を、財政再建に踏み出した予算という方が的外れだといわなければならない。
 知事は、借金ノーを公約して知事になられたんですから、この点をはっきり答えていただきたい。
 以上。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 言及された事実について私も承知しておりますけれども、しかし、それに対する価値観といいましょうか、判断といいましょうか、それはおのおの異なっているわけでございます。
 そのディテールについては、担当の局長から答弁いたします。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) お尋ねにお答えいたします。
 東京都の高齢者の状況につきましてちょっと考えてみますと、東京都の六十五歳以上の高齢者の総人口に占める割合というのは一七%、七十五歳以上では七%、高齢者の収入等を見てみますと、高齢者世帯の貯蓄額は一般世帯の約一・五倍、負債はその約三割、資産形成が大変進んでいるというふうに、データ上明らかでございます。
 こうしたことから、ただいまのお話の点につきましては、当たらないというふうに理解しております。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) 衆参両議院の地方独立行政法人の採決に当たりました附帯決議のご質問でございますが、国会の附帯決議でいう学問の自由、大学の自治は、現大学の教授会等の自治により法人化の準備が行われるべきという趣旨ではございません。法人化の新しい大学における学問の自由、大学の自治が保障されるべきである趣旨であると考えております。
 ちなみに、文部科学省が平成十五年十二月十五日に発表しました、世界に活躍する日本人研究者百八人の意見によりますと、階層社会的な講座制の見直し、教授、助教授、講師、助手のフラット化などを強く求めております。
 こうしたことも真摯に受けとめまして、法人化後の新しい大学における学問の自由、大学の自治は当然に保障される大学運営を行ってまいります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 都債の残高についてのお話でございますけれども、都は、財政再建推進プランの初年度となります平成十二年度以降、将来の財政負担にも十分配慮して都債発行の抑制に努めてきたところでございます。この結果、起債依存度は、十二年度以降五%台から八%台へと、都道府県の中でも最も低い水準で推移しており、平成十六年度予算における起債依存度も八・五%と地方財政計画の半分程度であり、引き続き抑制基調を保っております。
 都債残高がこの間もふえたのは、都債の償還方法の変更に伴うものであり、過去における都債発行の状況や、こうした制度変更などについて理解を欠いたまま、形式的な都債残高の増減について議論しても、意味がないと思っております。

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