平成十六年東京都議会会議録第二号

○副議長(中山秀雄君) 百七番石井義修君。
   〔百七番石井義修君登壇〕

○百七番(石井義修君) 公明党を代表して質問いたします。
 知事の盟友でありますマレーシアのマハティール前首相は、混迷する日本がもがき苦しみながら必死になって新しい方向を見出そうとしている現状を見て、日本は行き詰まっていると思うなら、成功の原点に戻れと述べています。すなわち、日本は第二次世界大戦後、すばらしい出発を飾った、東京は廃墟からすさまじい勢いで立ち直った、戦後最大の経済不況において、なお世界第二位のGDPを維持するやり方が全く誤りと考えてはならない、日本にとって最大の危機は外国からの脅威ではない、日本人が自信をなくすことであると述べ、日本は日本らしく信念を持って進むべきであると強調しております。
 冬来たりなば春遠からじ、朝の来ない夜はない、ピンチこそチャンスであります。
 知事は、東京から日本を変える信念の活躍をしております。私たち公明党も、三千五百人の地方議員が、主権者である地方住民の息遣いで地方から中央を包囲し、岩盤のように金属疲労した国の政策、制度を変えるべく戦っております。
 昨年は、国の概算要求段階で都民要望を行い、十六年度予算案に数多く反映させてまいりました。個人保証を求めない融資制度の創設、防災対策として、耐震診断の対象地域の拡大と補助額の引き上げなど、枚挙にいとまがありません。また、ことしに入り、国土交通省、環境庁、厚生労働省、文部科学省など、各省庁を相次いで訪れ、大臣あてに、東京問題解決の要望を行ってきたところであります。知事と連携し、二元制の一方の議会の役割を果たすべく奮闘しているところであります。
 難局に立ち向かう知事の決意をまず伺います。
 財政問題についてであります。
 都の十六年度予算は、厳しい財政状況の中にあっても、活力ある東京の再生のために、治安の回復、景気対策としての中小企業支援と雇用対策、福祉、医療の充実、都市再生、環境対策など、都政の緊急かつ重要な課題に取り組む予算となっております。また、職員定数の削減、退職手当の見直し、公明党が一貫して主張してきた通勤手当の見直しなど、内部努力のさらなる徹底を初め、臨時的な財源対策の圧縮、都債の発行抑制など、第二次財政再建プランのスタートの年にふさわしく、財政再建への取り組みを強化しております。財源はないが政策課題は山積している、まさにこの二律背反の難しい連立方程式を解く予算として、高く評価するものであります。
 ところで、昨年十月から十二月の実質経済成長率が年率換算で七%に達したとする発表がありました。持続力になお不安はあるものの、この状況が今後も続くとすれば、都の税収にも相当の影響があり、財政再建にもつながるものと考えられます。知事の見解を伺います。
 投資的経費についてであります。
 十六年度の当初予算と十五年度補正予算を合わせ、実質的には十五カ月予算として六千三百三十二億円を計上しております。その内容は、区部環状道路及び多摩南北道路の整備、常磐新線、日暮里・舎人線の整備、集中的な渋滞対策としての鉄道連続立体化の推進、優良な民間住宅の供給を促進するまちづくり、民間活力を導入した都市再生など、多彩な事業を展開しております。そして、東京の重点課題にこたえつつ、かつ中小企業への波及の大きい生活関連事業の実施となっているのであります。この投資的経費の投入による景気への波及効果と都民生活への影響について伺います。
 財政に関連して、国の三位一体の改革における補助金の削減について伺います。
 先ほど、大西幹事長、名取幹事長からも話がありました。国は、平成十六年度における社会福祉施設整備費の補助基準単価や協議基準の見直しを行う方針を示しました。
 その内容は、特養ホームの整備においては事業者の負担増をもたらし、老人保健施設の整備では協議対象を単年度事業に限るなど、現場の実態を無視したものになっております。特養ホームや老健施設は、工期だけで一年以上を要し、そのほか入札などの手続を加えれば、単年度での整備は困難であります。そのために、区市の指導に基づき、特養ホームや老健施設を計画していた社会福祉法人が頭を痛めております。
 公明党は、早速厚労省に赴き、従来どおりの財源を確保し、施設整備を円滑に推進させ、年度を越えた整備を可能とするよう強く申し入れてまいりました。
 都が先頭に立ち、八都県市で申し入れたと仄聞します。所見を伺います。
 次に、新銀行について伺います。
 私は、連日、中小企業経営者や商店の人たちに会っております。景気に薄明かりが見えてきたといわれているが、全く実感がない、政治は私たちのために何をやってくれているのかと、毎日いわれております。
 日本経済を支え、GDP世界第二位の地位を築いてきたのは、紛れもなく中小企業の皆様の汗と涙の努力であります。中小企業を徹底的に支援し、元気にしていくことが景気対策であり、東京の財政再建につながるのであります。
 知事は就任以来、中小企業の持つ世界的な技術力、先見性を評価し、さまざまな支援策を展開してまいりました。従来の制度融資についても、十六年度では、中小企業が活用しやすい制度に再構築しております。
 また、中小企業の資金需要にきめ細かく対応するため、直接金融として、国に先駆けてCLOやCBOの独自の取り組みに加え、新年度には、ベンチャー企業に対応する中小企業向け投資法人の設立や中小企業の再生ファンドの創設を目指しております。
 これに加えて、今回、間接融資として新銀行の設立を提案してきておりますが、次から次へと中小企業対策を打ち出す知事の姿勢を高く評価するものであります。
 さて、資金提供を受ける中小企業でありますが、リスクのない正常な企業、リスクはあるが平均的企業、リスクはあるが許容範囲の要注意企業、そして破綻懸念企業などに格付されますが、直接金融、間接金融の対象にならない、また保証協会の保証も受けられない、いわゆる空白地帯に位置する中小企業も数多く存在しております。新銀行はそうした中小企業に資金提供できるのか、知事に率直に伺います。
 また、昨年のこの本会議で、私は、すぐれた知的財産を持ちながら、それを評価するシステムがないために融資を受けられないベンチャー企業の経営者のお話をいたしました。知事も積極的に研究したいと述べておりましたが、これはその後の話であります。
 平成十一年十二月、国の創造法に基づき、知事の認定を受け、三千万円の融資を受けたベンチャー企業が、三年がかりで新製品を完成し、いよいよ事業化に乗り出そうといたしました。そのために、さらに四千万円の借り入れを金融機関に申し入れをいたしましたが、三年間の黒字決算がないと融資できないと断られました。開発期間に黒字になる道理はなく、全く理不尽な話であります。
 別の金融機関にも行きましたが、今度は保証協会から、黒字決算が一期もないことを理由に断られたのであります。私は、この経営者と商工中金の神田支店にも行きましたが、全くわけのわからない理由で受け付けてくれませんでした。この社長は、きょうも懸命に金策に走り回っております。まことに申しわけない気持ちでいっぱいであります。
 国の創造法は、ベンチャー支援のための知的財産や特許を評価するシステムがセットされていないからであります。
 知事もよく引き合いに出しますが、こうしたすぐれた技術を持ちながら、日本では事業化できない中小企業がたくさんあります。新銀行では救済できるのか、都の融資制度、保証協会のあり方も含め、知事に伺います。
 なお、これに関連して、産業労働局長に伺います。
 今述べましたように、都は、ベンチャー企業や中小企業支援にさまざまな努力を行っております。知的財産総合センターを秋葉原に設置し、また各種の制度融資を再構築し、さらに、中小企業再生ファンドやベンチャーファンドなど新たな支援策を打ち出しました。これらの環境整備ができた今、本当に苦しんでいる中小企業やベンチャー企業に支援の手を差し伸べることができるかどうかであります。
 産業労働局長は、今こそあらゆる英知を結集して、そしてすべての支援策を駆使して、私がただいま申し上げました、真に必要とする中小企業、そしてベンチャー企業に希望の光が当たるよう頑張るべきであります。所見を伺います。
 次に、新銀行の収支基盤の健全性について伺います。
 新銀行は、既存金融機関がこれまで対応してこなかったリスクの高い中小企業に対する融資に取り組むことから、他の銀行と比較して安定した収支基盤を構築できるのか、一部に不安を感じる向きがあります。その対策を伺います。
 また、新銀行の内部監査機能についてであります。内部監査機能は、銀行の業務運営が適切かつ健全に行われているかを確認するためのもので、銀行が信用を維持しながら円滑な資金供給を行う上で重要であります。新銀行の内部監査の充実について所見を伺います。
 次に、商店街振興対策についてであります。
 現在、経営者の高齢化や後継者難など、空き店舗が増加し、その一方で、コンビニやチェーン店が進出し、商店街の様相が大きく変化しております。しかも、こうしたチェーン店は、商店街活動に参加しないケースが多く、また、利益につながらない地域活動には関心を持たないという問題が指摘されております。
 こうした中で、過日、商店街とチェーン店の団体が互いに協力のあり方などを話し合うために、初めて協議会が開かれました。商店街とチェーン店の代表者が同じテーブルに着き、相互の立場の認識や意見交換を行ったこと自体、大変に画期的なことであります。初の協議会に対する都の評価と今後の支援策について伺います。
 商店街をめぐるさまざまな新しい課題に商店街自身が適切に対処していくためには、商店街やまちづくりの活動に力を発揮する人材の育成が急務であります。
 昨年からスタートした進め若手商人育成事業における若手商人研究会では、これからの商店街を支える三十代、四十代の後継者を中心に意欲ある人たちが参加し、二月には研究成果の発表会を行ったと伺いました。
 若手商人たちのこうした熱意とエネルギー、そして、地域や業種、業態を超えて築かれるネットワークが、東京の商店街の発展の原動力であります。若い世代の人材育成に、さらに都は支援策を講ずるべきであります。所見を伺います。
 次に、治安対策について伺います。
 安全・安心のまちづくりに向けて、警察官の増員、子どもを犯罪に巻き込まない取り組み、外国人犯罪を抑止する取り組みなど、具体的な施策が盛り込まれており、東京の治安回復に並々ならぬ決意で臨む知事の姿勢を高く評価するものであります。
 しかしながら、こうした対策の強化に取り組む間にも、長引く不況の中、犯罪件数は増加傾向にあり、防犯、治安対策の一層の強化を求める都民の要望が高まっております。公明党が住民要望を聞いたところ、第一に、警察官の増員による空き交番の解消と地域パトロールの強化。第二に、小中学生、女子高校生及び高齢者への防犯ブザーの貸与。第三に、学校、公園など公共施設周辺や、団地、住宅街の交差点などにスーパー防犯灯、防犯カメラの設置。第四に、繁華街における強引な客引きや薬物販売など、路上での勧誘行為の取り締まり強化。第五に、暗い夜道を解消するための街灯設置、並びに既存の街灯の明るさを倍増させることなどでありました。
 都としても、約一千人規模の警察官等の増員、百地区の防犯カメラの設置、防犯設備に対する区市町村への補助など、総合的に取り組むこととなっております。地域住民のきめ細かな治安、防犯ニーズにこたえるために、区市町村とも連携し、対応すべきであります。
 また、今からいうべき話ではありませんが、関係予算が不足した場合は、補正予算の編成をも視野に入れて、思い切って治安対策に取り組むべきであります。知事の所見を伺います。
 次に、東京港の国際競争力の強化についてであります。
 知事は、一昨年、IT化の進展が著しいシンガポール港を視察し、日本の港湾のおくれを強く指摘するとともに、東京港のIT化を精力的に進めてきたところであります。
 しかし、アジア諸港の一・五倍といわれる港湾コストの改善は、必ずしも進展しておりません。中でも、国が政令で定める水先案内料の高さは世界的に有名であります。例えば、五万トンのコンテナ船が東京港を出入港する場合、水先案内料は、進路警戒船の利用料を含め二百万円にも達し、これは釜山港の六倍ともいわれております。こうした国際水準から乖離した水先案内料の引き下げは、国際競争力の確保のために不可欠であります。
 水先制度そのものも、水先法制定後、はや五十年が経過し、GPSなど航行安全技術の長足の進歩があったにもかかわらず、抜本的な見直しは全く行われておりません。特に東京港への出入港の場合、水先区が東京と横須賀に分かれているため、二人の水先案内人の乗船が必要になるなど、制度上からも割高な料金となってしまう問題もあります。
 水先案内料に象徴されるように、制度疲労した仕組みにしがみつく国の姿勢は直ちに改めるべきであります。知事の所見を伺います。
 こうした状況を受け、海外のみならず、日本の船主協会など国内各方面からも、水先案内料、水先制度の大胆な見直しを求める声が上がっております。都としても、構造改革特区のさらなる活用や、横浜港など他港とも連携し、水先案内料と水先制度の改革に積極的に取り組んでいくべきだと考えますが、所見を伺います。
 次に、東京港への客船誘致についてであります。
 東京港は、外貿コンテナ貨物取扱量日本一であり、世界のさまざまな国から多数のコンテナ貨物船が寄港しております。しかし、クルーズ客船を見ると、平成十五年の東京港への入港数は七十六隻、しかも、外国籍のクルーズ船はわずか九隻にすぎません。
 海の女王に例えられる優美な国際クルーズ客船がたびたび東京港に入港するようになれば、東京港のイメージアップはもちろん、東京の観光政策としても大きな成果が期待できます。また、経済的な波及効果も少なくありません。東京港には、レインボーブリッジや斬新なデザインの晴海客船ターミナルなど、客船を迎え入れる舞台装置は整っておりますが、肝心の客船の姿が見えないのはまことに残念であります。
 神戸港には、先月、誘致活動の努力が実り、我が国では初めて、最新鋭の豪華クルーズ客船「クリスタルセレニティー号」が入港いたしました。東京港においても、「クイーンエリザベス二世号」や「ぱしふぃっくびいなす号」など、内外の客船誘致に全力を注ぐべきと考えますが、所見を伺います。
 さらに、都内には、上野、浅草など江戸情緒あふれる歴史的な町並みや、それとは対照的な臨海副都心など、新旧さまざまな観光地があります。例えば、クルーズ客船で東京港に寄港し、昼は都内を観光し、夜は船上からライトアップされたレインボーブリッジや臨海副都心の夜景を楽しむというプログラムなどは、外国人観光客の人気を集めるに違いありません。
 東京港への客船誘致は、東京の観光振興、シティーセールスと一体で取り組めば極めて効果的であります。所見を伺います。
 次に、鳥インフルエンザ対策について伺います。
 京都の養鶏場で、鳥インフルエンザによる鶏の大量死が発生しました。山口県、大分県に次いで三例目であります。次第に東京に近づいてくることが心配であります。けさの新聞報道によると、神奈川県にも卵を買った業者がいたということであります。東京は大丈夫でありましょうか。
 公明党は、そのような状況にかんがみ、二月三日、鳥インフルエンザ対策に関する申し入れを行ったところであります。
 昨年の春先から大流行したSARSについては、都は速やかにSARS対策本部を設置いたしました。そこで、鳥インフルエンザについても、SARSと同様に迅速な対応が必要であると考えます。幸いに、都内での感染は今のところ発生しておりませんが、具体策を講ずるべきであります。所見を伺います。
 また、今後、万一、都内で鳥インフルエンザが人へ感染した場合に備え、感染拡大を防ぐための健康危機管理体制の整備が必要であります。見解を伺います。
 今後、今までにない感染症が発生することも十分考えられます。新たな感染症に対する医療提供体制を整備するため、公的医療機関、中でも都立病院がその中心的役割を果たして対策に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、COPD対策について伺います。
 COPD、すなわち慢性閉塞性肺疾患は、世界銀行の予想によると、二〇二〇年には、死亡率において、心臓病、脳卒中に次いで第三位となり、今後の動向が世界的に注目されております。
 これは、たばこや粉じんで起きる呼吸器の炎症のことで、生活習慣病であり文明病であると位置づけられております。軽いせきやたんから始まる症状は、運動時の息切れや体重減少へと進展し、じっとしていても呼吸が困難となり、常時、酸素吸入器に頼らざるを得なくなり、やがて最悪のケースは死に至る恐ろしい病であります。
 厚生労働省の人口動態統計では、二〇〇二年のCOPDによる死亡者は一万三千二十一人で、喫煙率の高い日本では、今後、COPDの患者が急増すると予測しているのであります。
 日本呼吸器学会では、抜本的防止対策は禁煙しかないところから、禁煙対策の徹底を求めております。ヨーロッパ、EU加盟十五カ国は、COPD対策として、昨年度、たばこの箱に厳しい警告文を掲載することを義務づけました。都におけるCOPDの現状と対策を伺います。
 今定例会に脱法ドラッグの規制が提案されておりますが、青少年の心身をむしばむ禁煙対策も重要であります。小中高生向けのパンフレットの配布の継続と、防煙、禁煙指導のできる教師の育成、また、都立高校での禁煙化に続き、実施状況が半分程度である小中学校においても、区市町村と連携して禁煙化を実現すべきであります。
 最近、顕著に見られる女性の喫煙による健康被害についても、その知識の普及を、東京の広報メディアを駆使して実施すべきであります。
 厚生労働省の乳幼児身体発育全国調査では、妊娠中の女性の喫煙調査をしたところ、平成二年に五・六%であった妊娠中の喫煙が、平成十二年になると、ほぼ倍の一〇%に上昇しております。喫煙妊婦から生まれる子どもは、さまざまな健康上の影響が出てくる調査結果も報告されております。中学、高校の家庭科での知識の普及、母親学級、育児学級での禁煙指導を徹底すべきであります。
 さて、特別区の新規事業として、路上禁煙対策を強化する傾向が見られます。千代田区を筆頭に中央区、港区、品川区、大田区、杉並区、板橋区と七区に上り、既に制定している区を合わせますと十七区に上ります。大田区では、一万円の過料を科す条例案まで今議会に提案しているのであります。
 路上喫煙は、まちの美観や歩行者への危険だけでなく、さきに述べましたように、COPDの増加につながります。歩きたばこのように、軽い運動をしながら喫煙することが原因であります。都としても、区市町村と連携し、路上禁煙対策を進めるべきであります。
 なお、都庁内での分煙施設ですが、受動喫煙を防止する構造になっておらず、明らかに健康増進法違反であると指摘されております。直ちに改めるべきであります。
 たばこは有効な財源でありますが、それを超える社会的損害もあります。喫煙する人の気持ちも十分に理解しつつ、都における一層の禁煙対策を求めるものであります。
 次に、震災対策について伺います。
 政府の中央防災会議は、昨年末、東海地震に関する東海地震応急対策活動要領を決定し、同時に、東南海、南海地震に対する対策大綱を決定いたしました。
 東南海地震と南海地震は、今後三十年以内に起こる確率がそれぞれ五〇%、四〇%と予測され、東海地震については、いつ発生してもおかしくない状況にあります。三地震同時発生の最悪のケースでは、建物全壊約九十万棟、死者二万五千人、経済的被害八十兆円に上ると想定され、広域防災体制、津波対策、建物耐震化が急務となっているのであります。そこで伺います。
 第一に、津波対策についてであります。
 中央防災会議は、この地震で甚大な被害が予想される二十一都府県六百五十二市町村を防災対策推進地域に指定し、津波対策を各自治体に求めております。都では、八丈町と小笠原村がこの指定地域に入ります。
 先日、私は、知事とともに小笠原返還三十五周年記念式典で小笠原村を訪問した際、島の地震対策について、島の方々と話し合ってまいりました。現地では、津波対策が最も心配だといっておりました。
 南海トラフで地震が発生した場合、五メートル以上の津波が時速八百キロでやってきます。伊豆諸島を経て、およそ一時間で小笠原まで到達します。昭和三十五年、チリ地震の際は、五メートルから十メートルの津波が襲ってきたそうであります。
 最も心配なのは、二見湾の奥にある小笠原村の発電施設、浄水場、防災の指令センターとなる小笠原村役場が真っ先に水没の危機にさらされることであります。発電施設と村役場の自家発電が停止すると、島じゅうの電気が消え、観光客を含め、島民への情報伝達手段はすべて遮断されます。
 また、避難対策にしても、地元住民は避難場所を知っておりますが、観光客には全くわかりません。観光案内にも、避難経路、避難場所は記入されておりません。また、小笠原村の備蓄は、ペットボトル三千本と食糧一週間分のみであります。この点も心配されるところであります。
 知事は、小笠原村をユネスコの世界遺産に登録したいと、さきの施政方針で述べられました。また、来年には、最新鋭高速船テクノスーパーライナーも就航します。今こそ、津波防潮堤の整備、避難路、避難場所の計画的整備、津波警報の迅速化、観光客対策など、小笠原村、八丈町、伊豆諸島を含め、津波対策とそのための総点検を早急に実施すべきであります。
 第二に、長周期地震動対策についてであります。
 昨年九月、十勝沖地震で出光興産の石油タンク群が炎上した原因は、これまで解明されていなかった巨大地震によるゆっくりとした地震動、すなわち長周期地震動が原因であったとされております。
 東南海地震が発生すると、一分四十秒で長周期地震動が首都圏に到達します。日本土木学会のシミュレーションによると、軟弱地盤の関東平野では、千葉、川崎、横浜の石油タンク群と、東京都心の超高層ビルが大きな被害を受けると予測しております。岐阜大学の村松教授によれば、東京の超高層ビルは長周期地震動の洗礼を受けておらず、対策が急務であるといいます。また、京都大学防災研究所でも、巨大地震を経験していない東京は、そのための準備を急ぐべきだと話しております。長周期地震動から東京を守る対策を早急に確立すべきであります。
 第三に、東京の耐震対策についてであります。
 建築物の耐震化が喫緊の課題となっている現在、国土交通省は、新年度の木造住宅の耐震補修工事の補助制度の拡充を予算化しました。
 しかし、これまでの国の補助制度は、使い勝手が悪いために、各自治体が手を挙げない状況が続いてまいりました。都として、耐震対策を促進するために、国の制度拡充の機会をとらえ、区市町村とも連携した、耐震診断から補強工事への助成に至る一連の耐震化のためのシステムを構築すべきであります。
 さらに、都内の避難場所に指定されている小中学校の五四%、災害弱者が入所する福祉施設の三三%、災害拠点病院を含む医療施設の四四%が耐震性に疑問があると指摘されております。一般の公共施設を含め、これらの施設の耐震診断と改修を急ぐべきであります。
 第四に、墨田区白鬚東の防災拠点についてであります。
 東京の広域避難場所として整備されて二十五年、四万人が避難する防災拠点となっておりますが、有事の際に防災ボランティアとして協力していただく地元の団地役員の皆さんは、防災拠点として本当に機能するのかどうかと心配しております。
 例えば、非常用トイレの便槽が二百三十二基でありますが、この数は緊急時に十分なのかどうか。また、くみ取り式で囲いもなく、最近整備されている非常用トイレに比べ、余りにも貧弱で時代おくれであると指摘しております。また、非常用電気設備が二十分しかもたず、避難民を安全に誘導できるのか、疑問が持たれております。
 さらに、災害時に医療救護活動の拠点病院となる、隣接地の東京都リハビリテーション病院における医師の配置は大丈夫なのかどうか。さらに、防災拠点における非常時の行動マニュアルもありません。
 現在、都は、防災拠点の見直し作業に入っておりますが、私がただいま指摘した設備等の更新を含め、早急な対応を望むものであります。
 以上、四点、所見を伺います。
 次に、夜間中学校について伺います。
 都教委が本年一月、夜間中学校の日本語教諭の配置基準の見直しを発表したことから、その撤回を求める声が相次いでおります。
 東京の夜間中学校は、戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった人を初め、いじめの被害者や登校拒否生徒に普通教育を提供し、さらに、韓国や中国からの引き揚げ家族の日本語教育、また今日では、ブラジル、フィリピン、ベトナム、タイから来日した人たち、さらに、タリバンから逃れてきたアフガニスタンの人など、さまざまな国の人々の日本語教育の場となっているのであります。
 私は先日、木内政調会長、学校の教頭先生をしておりました野上議員と、墨田区の文花中学校の夜間中学校を参観し、一緒に給食をいただいてまいりました。また、世田谷区立新星中学校では教壇にも立たせていただき、外国人生徒の皆さんと懇談をしてまいりました。ともとし議員、鈴木貫太郎議員も、足立四中、荒川九中の現地調査をしてきたところであります。そこには、つらい経験に傷ついた生徒が、熱心な教師に励まされて蘇生する、まさに教育の原点がありました。
 私は、昭和六十年十二月、都議会の本会議で、夜間中学校に養護教諭の配置を求める質問を行い、実現に結びつけてまいりました。今再び十八年の歳月を超えて、情熱を持って頑張る教職員や生徒の皆さんを支援する立場から質問するものであります。
 第一に、夜間中学校の教諭の配置についてであります。
 夜間中学校の日本語学級ですが、現状は三クラス認可であっても、年齢、国籍など生徒の実態に合わせた六クラス編制を行い、きめ細かな教育を行っております。その上、担当教諭は、生徒に日本語を教えるだけでなく、就職や住宅の世話など生活面の支援を行い、精神的な支えにもなっております。
 都教委も、従来、こうした現状をよく認識し、国にかわって夜間中学校を懸命に支援し、大きな教育効果を上げてきたところであります。したがって、今ここで、単なる財政論だけで担当教諭を削減すべきではありません。力ある教諭を配置するなど、夜間中学校の一層の充実を目指すべきであります。
 本日の傍聴席には、夜間中学校の卒業生の皆さん、そして、あのMXテレビを通して、五つの夜間中学校の先生や生徒の皆さんが、日本語教育の一環として、この質問を聞いているところであります。横山教育長の心温まる答弁を求めるものであります。
 第二に、夜間中学校での日本語教育の法整備についてであります。
 戦後、韓国や中国からの引き揚げ家族に対する日本語教育の場がない中で、都内の夜間中学校は国に先駆けて、現場の教職員の血のにじむ試行錯誤の上に、日本語教育を築き上げてきたのであります。これは本来、国が果たすべき戦後補償を都の夜間中学校が担ってきたといっても過言ではありません。
 しかも、今日に至ってもなお、これらの外国人に対する日本語教育について、文部科学省に明確な教育方針がありません。私は先日、文部科学省の金森大臣官房審議官に面談し、法整備を強く要請してまいりました。都教委としても、日本語学級の設置、特別な人的加配措置など、国に対し法整備を求めるべきであります。
 第三に、石原知事に伺います。
 夜間中学校問題を通し、時代認識を欠いた国の外国人対策が透けて見えてまいります。日本経団連は、日本は東アジアの中でも外国人受け入れ問題の取り組みがおくれていると指摘しております。墨田区と提携している早稲田大学では、夜間中学校にとどまらず、子育てセンターにも学生ボランティアを派遣し、子どもとその親に対して、日本語と日本文化、社会に溶け込むための生活習慣を教えております。担当の助教授は、外国人への日本語教育は日本の務めであると話しておりました。法政大学や東洋大学でも同様の支援活動をしております。
 実は、夜間中学校での日本語教育は、増加しつつある外国人犯罪を抑止する効果も指摘されております。外国人の青年が、言葉もわからず、学校へも行かず、働く場所がなければ、犯罪に引き込まれる可能性が高くなるのは必然の成り行きであります。
 アメリカやオーストラリアなど欧米諸国では、法律で外国人に対して言語、文化を教えることが義務づけられております。都として夜間中学校、定時制高校、民間機関を含め、外国人に対する日本語教育システムを構築することは、千客万来の国際都市東京の務めでもあると考えます。知事の所見を伺います。
 次に、青少年健全育成条例の改正について伺います。
 青少年が健やかに成長することは、都民すべての願いであるにもかかわらず、青少年を取り巻く環境は悪化の一途をたどっております。今回の条例改正で、不健全図書の販売やビデオの自動販売機に対する規制が強化されることは時宜を得たものと思うものであります。ただし、青少年の深夜の規制に関連して、夜遅くまで塾で勉強している子どもたちや、深夜まで働く青年が過度に規制されることがないようにすべきであります。
 ところで、情報化社会の急速な進展に伴い、携帯電話がもたらす危機や、インターネット上の有害情報が新たな青少年健全育成上の問題として出現しております。青少年問題協議会の答申にもあるように、規制の面では国の施策の進展をまつ必要がありますが、インターネットトラブルから子どもを守る対策をNPOやお母さん方が求めております。都として検討すべきであります。
 また、電車の中で読まれている一部のメディアについてでありますが、その写真や記事内容にまゆをひそめるものがあると多くの都民が指摘をしております。子どもたちや嫌がる女性の目に触れざるを得ない状況にあることは問題であります。メディアの中には、青少年への影響を考慮し、自主規制しているところや、宅配と駅売りの新聞の紙面構成を変えたり、配慮するメディアもあります。これを規制するとなると、言論、表現の自由との関係もあり、直ちに規制すべきとはいえませんが、率直な都民の声として申し上げたいと思います。竹花副知事の感想をお伺いいたします。
 次に、ディーゼル車対策について伺います。
 昨年十月にスタートした都条例によるディーゼル車規制により、粒子状物質の排出が抑制され、大気汚染が大きく改善されました。その結果、子どもたちのアレルギー病や花粉症被害も大きく軽減されており、都民からも高く評価されております。
 これは、厳しい経営環境の中、血のにじむような努力を行い、新車への代替やPM減少装置の着装を行った中小企業の経営者やトラック事業者の皆様の協力のおかげであります。
 ところが、次は国のNOχ・PM法によって、平成十七年度の後半から十八年度の前半にかけて、再びディーゼル車の大量の車両買いかえが必要となるのであります。私は、ディーゼル車を持っている経営者の方々と懇談をいたしましたが、やっとの思いで都のディーゼル車規制に対応したと思ったら、今度は国のNOχ・PM法だ、不況の中、とてもではないけれども、これ以上車の買いかえはできないと慨嘆しておりました。
 そこでまず、今後のNOχ・PM法による新車切りかえをしなければならない車両数は東京都内で何台に上るのか、明らかにしていただきたいと思います。
 ディーゼル車に関しては、一都三県の条例や国のNOχ・PM法を初め、新車規制、使用過程車規制など複雑な上、排出ガスに関する技術革新が日進月歩なため、これまでも事業者は対応に苦慮してまいりました。都条例は施行されましたが、今後も事業者が適切に各種規制に対応し、安心して仕事ができるよう、親身になって相談体制をする必要があると思いますが、都の見解を伺います。
 都条例によるディーゼル車規制では、DPFや酸化触媒といったPM減少装置を八都県市が指定し、十万台以上普及したと聞いております。しかし、国のNOχ・PM法関係では、NOχとPM両方を低減する装置が一つしか指定されておらず、このままではほとんどが新車への代替を余儀なくされることになります。
 昨今の厳しい金融情勢の中では、新車購入のための融資がなかなか受けられません。公明党は国に対して、NOχ・PM法に対応するため、中小事業者が利用しやすい融資制度の創設や税制上の優遇措置を求め、その結果、国の十六年度予算で、担保を軽減したり、車を担保にした利用しやすい融資制度が新たに創設されております。しかし、事業者の人たちからは、額面どおり融資が受けられるのか、業種を問わず融資が実行された、かつての安定化資金のような制度はないのかとの声が寄せられております。
 都としても、条例対応を促進してきた経験を踏まえ、国に事業者の状況を訴え、利用しやすい融資制度となるよう、積極的に働きかけていくべきだと思います。見解を伺います。
 最後に、知事に伺います。
 現在、日本の自衛隊が人道復興支援のためにイラクに派遣されております。ご存じのとおり、これはイラクの本格的な復興への道筋をつけるため、極めて重要な任務であります。しかし今後、イラクの復興が進み、治安状況が大幅に改善され、民間やNPO、そして行政機関による本格的な支援が要請されることは間違いありません。
 そこにおいて最も重要視されるのは、上下水道を初めとする社会基盤の整備、教育の支援、さらには百万人の雇用創出につながるといわれておりますメソポタミア湿原など、復興、整備であります。東京都には、上下水道や道路、橋梁の整備、環境対策、あるいは教育の充実、選挙管理に関するノウハウのストックと人材の蓄積があります。
 国際社会の総意であるイラク人道復興支援に、東京都の持つ能力を生かすべきであります。近い将来の要請にこたえ、都が行える国際貢献として、イラクへの人道支援について今から準備に当たるべきと考えます。
 石原知事の見解を伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 石井義修議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、現代のこの危機を乗り切るに際しての、知事としての私の決意についてでありますが、ご指摘のように、私たちはやはり、みずからの近代化の中でなし遂げてきた成功の原点に戻るべきだと思います。
 その原点とは何かといえば、これは、人によっていろんな表現もあるし、見方もあるでしょうが、私、トインビーの「歴史について」という有名な本がありますけど、あの中で彼が、いかなる強大な繁栄した国家も民族も、場合によっては衰退し、場合によっては滅びもする、国家、民族の衰弱の原因はいろいろあるけども、それを冷静にとらえれば、決して不可逆的なものではないと。つまり、もう一回やり直しもきくし、もとへ戻ることもできる、ただ、一番厄介な、場合によっては滅亡にもつながりかねない衰弱の要因とは、自分で自分のことを決められなくなることだと。そのいい例がローマであって、国民の生命、財産を守るという国防を外国人の傭兵に任せた瞬間、あの国は滅びたわけでありますけれども、私もやはり、日本は余りにも他力本願というんでしょうか、情報にかき回されてか、あるいは力の関係か何か知りませんが、特にアメリカのいうことを聞き過ぎて、実は、任せたつもりで、例えば今日の日本の金融のごときは、完全にアメリカの術中に陥って搾取されている。
 私も数年前にある本を書きましたが、それは「『NO』と言える日本経済」という本で、サブタイトルは、日本はアメリカの金融奴隷になったと。私は今でもそう思っていますけれども、これも、昔のことはいいたくありませんが、私の僚友の、余り財政がわかっていると思えない二人ほどの人物が大蔵大臣になりまして、ビッグバン、ビッグバンとはしゃいで、本当に大丈夫なのかなと。情報をとってみると、ドイツなどは決してやるべきではないという意見もありまして、あるいはもう一つ、銀行のBIS規制もそうでありますけど、結局、ああいったものでアメリカのルールにのっとって、自分で自分の首を絞める、そのざまになってしまったわけであります。
 要するに大事なことは、自分で自分のことを考えて決める。そのためには、自分の何が取り柄であり、何が足りないかということをみずからが知る、そして努力をするということ以外ないと思います。人間の歴史の原理として、天はみずから助くる者をのみ助くとありますが、まさに私たち、その原点にこそ、今、戻るべきではないかと思っております。
 次いで、景気動向と財政再建についてでありますが、最近になって何とか景気に薄日が差したような気もいたしますが、ご指摘のように、今後の推移はまだまだ不透明であります。
 仮にこの状況がなおしばらく続くとすれば、都税収入の増加や、ひいては財源不足の解消にも追い風が吹くのかもしれませんが、今、都が目指しているのは、持続可能な財政基盤を確立するための構造改革であります。
 このため、短期的な景気動向や税収の増減に一喜一憂して、財政再建の取り組みの手を緩めることなく、新たな施策展開を可能とする強固で弾力的な財政体質の確立に向けて、今後も議会のご理解、協力をいただきながら、全力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、新銀行の中小企業に対する資金提供についてでありますが、東京の産業基盤を支えている中小企業に対して、生きた資金を供給し、その潜在的な力を発揮できる環境を整え、経済再生を実現することは、新しく出発する銀行にとって最も重要な役割の一つだと心得ております。
 経済環境の激変などによりまして、既存の金融システムはほとんど機能不全に陥っておりまして、中小企業融資のマーケットではデフォルトを前提としないリスク回避の貸出姿勢が一般的であるために、赤字企業などに対する優良な資金供給主体が存在せずに、おっしゃるとおりの空白地帯となっております。
 新しい銀行は、低コスト体質と手厚い自己資本を背景として、既存金融のシステムでは空白地帯となっているリスクの高い部分に対して積極的に融資を行い、苦境にあえぐ中小企業を支援して、地域経済の再生を図っていきたいと思います。
 しかし、これは決して慈善事業ではございませんから、やはり他の金融機関ができないことをすべてやるわけにもいきません。そこら辺の兼ね合いが非常に難しいと心得ております。ケース・バイ・ケースで専門家の力を合わせ、知恵を合わせて判断を重ねていきたいと思っております。
 それから、まさにご指摘のとおり、すぐれた技術を持つ中小企業に対する新銀行及び制度融資の役割についてであります。
 これは本当に難しい問題でありまして、例えば私の親友でありました西村君は、日本興業銀行の最後の頭取でありました。彼が専務のころから私は、日本興業銀行は日本の工業化に非常に役には立ってきたが、もうその歴史的使命は果たしただろう、ならば、これから新しいシビルバンキングを考えなくちゃなるまいが、それはやっぱり一番の眼目は、技術というものの可能性についての評価のできる専門家を育てることではないかということを申していましたが、それは非常に難しい問題でありまして、結局、興銀なども非常にイージーなシビルバンキングに走って、関西では尾上縫さんの事件のようなものを起こしたりしておりました。
 いずれにしろ、東京にはすぐれた技術を有する有望な中小企業はたくさんございます。しかし、その将来性のある企業も、ご指摘のように創業期は開発費などがかさんで、黒字の転換は容易ではありません。東京の産業の発展のためには、こうした中小企業に資金を供給し、育成していくことが重要であります。
 新銀行は、債務超過や借入過多など、財務内容には問題があっても、一定の基準に該当する技術力を有し、将来の成長が見込める中小企業に対しては、必要な融資を行っていきたいと思っておりますし、ご指摘のような会社の場合、有識者などで構成する審査会で、マーケット評価を含む技術力、将来性などを審査して、融資の可否を判断したいと思います。
 また、これまでは、都は保証協会を活用した制度融資において、創業期の中小企業や技術力の高い中小企業に対して低利の資金を供給するなど、積極的にかなりの支援をしてまいりました。しかし、返済が滞っている企業などへの融資は困難でありまして、来年度、新たにベンチャーファンドを創設し、リスクが高い企業に対する資金供給を推進いたします。
 新銀行、制度融資、ベンチャーファンドなど、多様な手法により、将来性のある中小企業の資金調達を支援していきたいと思っております。
 前にも申しましたが、金融庁なるものができまして、初代の担当大臣の、あえて名前を挙げますけど、柳沢君がテレビで話すのを見ておりましたが、自分たちが決めた金融基準に該当しない、つまり、いい製品をつくろう、そのために新しい機械を買った、会社は親子でやっているような小さな有限会社でありまして、資本金はせいぜい二千二、三百万、その数千万する機械のローンを払うだけで、その時点で字面では債務超過になるわけですけども、それをすべて、金融庁の決めた基準の債務超過というものが帳面にあらわれたような会社には一切金を貸すなと。貸す方も借りる方も違反であって、この世界から消えていってもらうということを冷然と担当の大臣がいうのに私は驚いて、むしろ憤りを感じましたが、そういう穴を、やはり現場を知る東京が埋めていくためにも、新しい銀行を含めて制度は必要であると思っております。
 いずれにしろ、新銀行、制度融資、ベンチャーファンドなど、幾つかの手法を重ねて、将来性のある中小企業の資金調達を支援していきたいと思っております。
 次いで、治安対策についてでありますが、治安回復を図るためには、警察官の増員や都民などの協力に加えて、区市町村との連携が不可欠であります。
 安全・安心まちづくり協議会や繁華街対策での共同の取り組みなどに見られるように、各市町村が自助、共助という形で治安対策に積極的に取り組む姿勢を見せていることは、大変心強い思いがしております。
 平成十六年度の予算案においても、治安関係の施策に財源を重点的に配分いたしましたが、一刻も早く、目に見え肌に感じられる形で都内の犯罪が減り、安心感が増幅していくことを、都民生活のためにも取り戻していきたいと思っております。
 次いで、港湾の国際競争力の向上についてでありますが、私も実は海が好きでありまして、東京湾にもいろいろ知己もおりますし、また大きな船に乗ったりすることもありますけども、これは日本だけではなしに、外国にもいろいろ非常に不合理な水先案内の制度がありまして、例えばシチリアと本土に近い、狭いメッシーナの海峡なども、私、たまたまそこを通る客船の船長室におりまして、彼と話をしていたら、船が一たんとまって、要りもしないパイロットを乗せなくちゃいけない。船長は横を向きながら、これは結局、一種の失業対策事業だというような皮肉をいっていましたけども、東京湾も、それほど非常に高い案内料、しかも二区域に分けて取るということはいかにも非合理でありまして、競争力が本当に阻害されるのは自明のことであります。
 アジア諸港の躍進と我が国の港湾の地位の低下という厳しい現実を踏まえるならば、これも含めて港湾の改革は待ったなしの段階にありまして、危機感を持った迅速な対応が必要だと思います。
 そういう意味でも、東京湾は非常に代表的な閉鎖水域でありまして、先ほど申しましたように、治安ということに関していえば、埼玉県の海でもあるわけですから、首都圏というものはこれを大切にする。東京湾でもいろいろ線引きがありまして、ここから向こうは千葉の海とか、こっちは神奈川の海とか、わけのわからぬ軛がありますが、そういうものを超えて、東京湾そのもののポートオーソリティーというものをつくって、これを首都圏が管理し、運用していくということが私は必要じゃないかと思っております。
 これまでは、都は特区提案などを通じまして、腰の重い国を動かし、土日開庁など税関業務の改善を実現してきましたが、水先制度の見直しへの国の対応はまだ極めて遅い感じがいたします。今後も都が率先して、国際港湾を管理する自治体や関係団体とも連携し、国に対して港湾の規制緩和を強く要求して、制度の合理化を図っていきたいと思っております。
 次いで、外国人に対する日本語教育についてでありますが、さまざまな事情で日本に来て働いている外国人や日系人とその子弟に対して日本語の教育を行うことは、人道的な見地だけではなく、長い目で見て治安の確保を図り、外国人の受け入れを進める上でも、また、ひいては日本の社会の繁栄のためにも重要な課題であると思います。
 本来、国が責任を持って対応すべき問題でありますけども、これまで有効な対策がとられていないならば、都は独自に中学校の夜間学級を活用して日本語教育を実施してもまいりました。それがまだ足りないならば、もっと徹底する必要があると思いますが、日本語教育を必要とする外国人の実態についてはまだ不明な点が多うございます。
 今後、実情の把握に努めるとともに、日本語教育の充実に向けて有効な方策の検討を進めて、必要に応じ、国に対しても積極的に提言をしていきたいと思っております。
 次いで、イラク支援についてでありますが、我が国がイラクの復興に向けて主体的かつ積極的にできる限りの支援を行うことは、国際社会の一員として当然の責務であると思います。
 そのため、国の計画では、医療、給水などのほか、学校などの公共施設の復旧、整備を実施することとしております。現在、自衛隊の部隊による支援活動が行われておりますが、治安状況を十分見きわめた上で、政府、地方自治体や民間などの協力による支援活動を実施することも想定されております。
 東京都が持つ技術、経験などを生かす機会があれば、国のイラク復興支援活動に対し、都も積極的に協力していくつもりはございます。もう既に、先般、台中の大地震の後、李登輝前総統から依頼されて、専門家を連れて視察にも行き、協力もいたしました。また、先般やってきたハノイの知事は、新しくつくる交通システム、これは多分モノレールになると思いますけど、ぜひそのためにも東京のノウハウをかしてほしいということをいっておられました。また、ラオス、カンボジアといった国は、昔の宗主国であるフランスが、かなりずさんな水道の工事を指導しておりますが、これに比べればはるかに日本の、特に東京の技術は高うございますから、こういったものについても協力の約束をしております。イラクについても同じことがいえるんではないかと思っております。
 他の質問につきましては、副知事、出納長、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔副知事竹花豊君登壇〕

○副知事(竹花豊君) インターネットトラブルから子どもを守る対策についてでございますが、ご指摘のとおり、インターネットや携帯電話が急速に普及し、便利さの反面、青少年にとって有害情報や犯罪に巻き込まれる危険といった問題が大きな問題となっております。
 さきの東京都青少年問題協議会の答申でも指摘されたところでございますけれども、この問題の深刻さ、あるいは対策の緊急性を考慮すると、都としても関係機関や事業者と協力して、フィルタリングソフトの活用など、青少年の健全育成を図る上で有効な対策を検討する必要があると考えており、現在、関係情報の収集等を進めているところであります。
 次に、電車内での卑わいな情報に関してでございますけれども、電車の中で卑わいな写真や記事の載った出版物が読まれていることにつきまして、何とかならないかとの声を私自身もしばしば聞くところでございます。多様な価値観が認められるべきではありますが、セクシュアルハラスメントの防止や青少年の健全な育成という観点からも、遠慮があってしかるべき状況もあると思います。
 過般、ある国で企業ぐるみの売春旅行を非難されたり、留学中の大学生の出し物が問題になったケースや、我が国において女性専用車両をつくることを検討するといった話を聞くところでありますが、そうした状況を聞くにつけ、我が国のわいせつにかかわる風潮は、同じ国民としてざんきにたえません。自由の中にも節度があるべきであり、一部のメディアも含め、十分心すべきものと思います。
 この問題を法令で規制するべきかどうかについては、難しい問題もあると思いますが、都民の皆様のご意見も踏まえつつ、我が国の社会の品位を保つために、可能な対策を考えていきたいと考えております。
   〔出納長大塚俊郎君登壇〕

○出納長(大塚俊郎君) 新銀行についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、新銀行の健全な収支基盤の確保についてであります。
 新銀行の経営に当たりましては、リスクの高い中小企業融資の推進と経営の健全性確保という二つの課題を同時に達成することが必要であります。そのための仕組みを、ハード、ソフトの両面から構築をしてまいります。
 融資につきましては、十分な引き当てに加え、フローとして、地域金融機関の六倍を超える高い償却を想定した与信費用を計上する一方、リスクに見合った適正な金利設定を行い、必要な収益を確保するほか、適切な資金運用を行うことなどによりまして、安定的な収益を確保いたします。
 また、経費につきましては、地域金融機関との連携や業務のアウトソーシングの積極的な導入を図るなど、店舗、人員を極限まで絞り込み、効率的な運用を徹底することによって、コスト面でもリスクの負担能力を高め、健全な収支基盤を確立してまいります。
 次に、新銀行の内部監査の充実についてでありますが、内部監査は、銀行の経営目標や計画を確実に達成するための業務全般にわたる運用と、それに伴うリスク管理を総合的にチェックするとともに、不正を未然に防止する重要な役割を担っており、すぐれた内部監査体制を構築することは、新銀行の健全な業務運営にとって不可欠な要件であります。
 具体的に新銀行は、統合リスク管理部門の設置など、リスク管理体制を整備するとともに、運営面におきましても、経営陣が日常的にリスクをモニタリングし、これをコントロールすることによりまして、さまざまなリスクに対して統合的な一元管理を行います。
 あわせて、新銀行の内部監査におきましては、リスク管理を的確に行うため、とりわけ専門性の高い分野に、監査実務に精通した外部の専門家を活用することで、監査の中立性、実効性を高めてまいります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、青少年の喫煙防止についてでございますが、学校における喫煙防止に関する指導は、生涯にわたり健康を保持、増進できる態度、あるいは能力を養うことをねらいとしまして、学校の教育活動全体を通じて計画的に行うことが必要でありますことから、都教育委員会としましても、健康局と連携しまして、喫煙防止に関する小中高校生用リーフレットを作成、配布するとともに、教員、保護者、地域の関係者等を対象とした指導者研修会を開催しているところでございます。
 こうした喫煙防止教育の場でございます小中学校の禁煙化につきましては、設置者である区市町村において対応しているところでございますが、今後とも、ご指摘の点を踏まえまして、小中学校における児童生徒への喫煙防止に関する指導を確実に実施するとともに、一層の禁煙化の実現に向けまして、都教育委員会としましても、継続してリーフレットの配布や研修の充実に努めるなど、区市町村教育委員会と連携しながら対応してまいります。
 次に、夜間中学校の一層の充実についてでございますが、中学校夜間学級は、学齢を超過した義務教育未修了者に対する教育の場として設置してきたものでございます。特に日本語学級におきましては、中国からの引揚者や外国人などに対し、日本語の習熟の程度に応じた指導を行うなど、成果を上げてきたものと考えております。
 また、夜間学級につきましては、ご指摘の点を踏まえまして、今後、日本語指導の専門性を有する力ある優秀な人材を非常勤講師として活用するなど、生徒の実態に応じまして学校が創意工夫できるよう、設置者でございます区市とも協力をし、指導体制の充実に努めてまいります。
 最後に、日本語学級に関する国への法的整備の要望についてですが、日本語学級は、日本語能力が不十分な生徒に対し、日本語教育を行う特別な学級としまして、東京都独自で設置してきたものでございます。中国残留邦人など、日本語を勉学する意思のある人々に対し、学習の場を提供しますことは、義務教育を保障し、また、日本社会への定着と自立を促進する観点からも、今後とも必要であると考えております。
 このため、都教育委員会としまして、日本語学級の法的位置づけや特別な人的加配につきまして、国へ要望してまいります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、投資的経費の景気への波及効果、都民生活への影響についてであります。
 国や地方自治体が行う公共事業は、次世代に引き継ぐ社会資本を整備するとともに、地域の景気を下支えする重要な役割を担っているものと認識しております。
 都は十六年度予算におきまして、お話にありましたように、骨格幹線道路や鉄道の連続立体交差化など、広域的に効果の及ぶ事業から、道路補修や保育所の整備など、より地域に密着した事業まで、投資効果の高い、多彩な事業展開を図っております。
 また、十五年度最終補正予算とあわせて、いわゆる十五カ月予算として、東京の社会資本整備に必要な事業量の確保と、年度初めの端境期における事業執行の平準化にも努めてございます。
 これらの事業を着実に執行することが、今後の景気回復や雇用の促進につながるとともに、渋滞の解消、生活環境の改善や地域福祉の充実など、都民生活の安定と向上にも資するものと考えております。
 一例を申し上げますと、環状八号線、六号線の整備により、明治通りと環状七号線の交通量がそれぞれ約一割減少し、慢性的な交通渋滞の解消につながると見込まれております。
 また、小田急小田原線連続立体交差事業では、成城学園駅登戸駅間の十三カ所の踏切の除却に伴い、平均旅行速度が時速八キロメートルから十九キロメートルに向上すると試算されており、都民生活への大きな効果が期待できるところであります。
 次に、都庁舎への受動喫煙対策でありますが、これまでも都庁舎では、空気清浄機などを設置し、庁舎内の環境改善と分煙水準の向上に努めてまいりました。
 しかしながら、昨年五月に施行されました健康増進法では、受動喫煙防止に関しての努力義務が定められ、原則として喫煙場所の完全な分離を求めるなど、厳しい内容となっております。
 都庁舎は高層ビルのため、構造上や使用上の制約など、完全分煙の実現には課題が多いことから、今般、都庁舎の完全分煙化に向けた基礎的データを収集する目的で、庁内二カ所で試行的に喫煙コーナーの個室化や排煙ダクトの切りかえ工事を三月末完成目途に着手したところでございます。
 今後とも、税源にも十分配慮した上で、この試行結果や財政状況等を勘案し、法の趣旨も踏まえた都庁舎の受動喫煙防止の実現に向けて努力してまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 社会福祉施設整備にかかわる国庫補助についてのご質問にお答えいたします。
 ご指摘のように、一方的な国庫補助基準の見直しは、施設整備事業者の負担増をもたらすとともに、施設整備が二カ年事業として行われているという実態を無視した、極めて遺憾な措置であり、都における福祉行政の推進に重大な支障を及ぼすことが懸念されます。
 このような認識から、都は、見直しの撤回を求めて、国に対して緊急要求を行いましたが、一方、大都市民生主管局長会議においても、十七年度への継続を前提とした事業については、進捗率が五割を下回るものについても協議対象とし、後年度分の予算確保を図ること、また、協議額の上限設定を行わないことなど、要望を取りまとめ、国へ要求したところでございます。
 今後とも引き続き、他の自治体とも連携を図りながら、国へ強く働きかけてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、中小企業及びベンチャー企業支援についてでございます。
 都内の中小企業、九九%ということで、都内企業の大半を占めております。日本の産業構造が激変する中で、東京の中小企業はこの五年間で五万企業が減少するなど、大変な時代の転換期を迎え、もがき苦しんでおります。
 こういう中にありましても、独創的で高い技術力を武器に、オンリーワン企業など、元気な中小企業も多数存在しております。
 お話のように、このようなピンチをチャンスととらえ、新しい対応が望まれております。二十一世紀はアジアの時代といわれております。新しい、世界をリードするアジアのものづくりのハブとして、東京の中小企業をよみがえらせたい、こういう願望を持っているわけでございます。
 来年度は、ベンチャーファンド、企業再生ファンドの創設、制度融資の抜本的改善、知的財産戦略の充実、産学公連携の促進など、総合的な中小企業支援策を強化して対応してまいりたいと考えております。こうした施策を十分に活用し、また、現場によく出かけて、本当に苦しんでいる企業に、今こそ必要な資金や支援の手を差し伸べることができるように、全力で取り組んでまいります。
 次に、商店街とチェーン店等との話し合いについてでございますが、商店街とチェーン店等とは、地域経済を支えるほか、まちのにぎわいや安全の確保、住民生活の場の提供などの役割をともに担っております。
 このたび、関係団体による協議会が設立され、こうした役割について率直な話し合いが始められましたことは、極めて意義深いと認識しております。都は、協議が始まったばかりでございますけれども、今後、関係団体の取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、商店街の人材育成についてでございます。
 これからの商店主には、顧客ニーズにきめ細かくこたえる専門性や時代の変化に即応する豊かな経営感覚とともに、地域社会の課題に貢献するという高い理念などが期待されております。
 このため、都は、今年度より、進め若手商人育成事業を開始し、商人大学校や若手商人研究会などを設け、商店街の次代を担う人材を育成してまいりました。これらの事業において、若手商人による熱意あふれる研究が行われ、さまざまなアイデアや示唆に富む分析が提示されております。
 今後、都は、研究会などの成果を冊子やホームページで広く周知するとともに、相互の連携を図り、若手商人の地域での取り組みには専門家チームを派遣するなど、継続的に支援してまいります。
 最後に、鳥インフルエンザの対応についてでございます。
 都は、七十九年ぶりの山口県での発生を受けまして、直ちに都民、都内養鶏農家、小売業者などへ迅速な情報提供を行うとともに、相談窓口を設置いたしました。また、あわせて、都内養鶏農家などへの緊急巡回指導調査などを実施し、異常がないことを確認しました。
 さらに、先週末の京都府での発生を受けまして、直ちに都内養鶏農家など二百四十二カ所へ改めて調査を開始し、指導をするともに注意喚起を行い、そこで飼われている約十五万羽の鶏に異常のないことを確認いたしました。
 都としては、都民の不安に対処するため、本日、全庁的な対策会議を立ち上げたところでございます。
 今後とも、国、関係機関及び養鶏農家などと連携し、情報の収集に努め、発生防止のため、迅速かつ的確な対応を図ってまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 三点のご質問にお答えいたします。
 まず、水先制度の改革についてでありますが、水先料金及び水先制度は、我が国港湾の高コスト構造の要因の一つであり、その改善は、喫緊の課題であると認識しております。
 例えば、東京港への入出港には、水先区が分かれているため、それぞれに水先人が必要となり、また、外国籍船の場合、東京港を熟知した船長であっても、強制水先の免除を受けられないなど、多くの課題がございます。都の特区提案等による規制緩和の要請を受け、国は、ようやく水先制度に関する懇談会を設け、強制水先制度等の見直しに着手することになりました。
 引き続き、国内主要港と連携を図り、国際競争力強化に向け、国に対し水先制度の改革の実現を求めてまいります。
 次に、客船誘致についてであります。
 客船は港の華ともいわれ、港の景観に彩りを添えるとともに、乗客の寄港地観光などにより、ご指摘のとおり、地域への経済効果も期待できるところでございます。
 このため、国内外のより多くの客船に東京港を利用していただけるよう、これまでも毎年実施しているポートセールスにおきまして、各国のクルーズ会社を訪問し、客船についても誘致活動を実施してきたところでございます。
 今後は、東京港が、日本のみならず東アジアクルーズの玄関口となるよう、これまで以上の積極的な取り組みにより、客船誘致を図ってまいります。
 最後に、客船誘致とシティーセールスとの一体的な取り組みについてでありますが、客船を対象としたポートセールスは、東京の魅力をアピールしてクルーズ客を誘致するという面では、千客万来の世界都市東京を目指すシティーセールスの一翼を担うものでもございます。
 客船の誘致は、クルーズの盛んなアメリカやヨーロッパを主な対象としており、これらの地域へのシティーセールスの機会を活用し、一体的に取り組むことは、大変効果的であると考えております。
 今後、新たな関係局によるシティーセールスでの取り組みを初め、あらゆる機会をとらえ、客船誘致を精力的に進めてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) いわゆる鳥インフルエンザ対策など、五つの質問にお答えいたします。
 まず、鳥インフルエンザの人への感染対策の具体策についてでございます。
 都は、山口県内での発生を受けまして、直ちにホームページなどにより都民への情報提供を行うとともに、保健所などに相談窓口を設置いたしました。
 また、鳥から人への感染について早期に把握できますように、疑い患者がある場合、都内の全医療機関から報告を受けまして、ウイルス検査を実施する体制を整備するとともに、患者が発生した際には速やかに治療が行えるよう、治療薬の供給ルートを確保いたしました。
 さらに、人の間で感染が広まるおそれのある新型インフルエンザの発生を防止するため、養鶏業関係者などにワクチンの予防接種を行ったところでございます。
 次に、感染拡大を防ぐための健康危機管理体制の整備についてでございます。
 万一、都内で人への鳥インフルエンザ感染が発生した場合につきましては、これまでSARS対策において整備してまいりました相談、医療体制等を十分に活用いたしまして、的確に対応を図ってまいります。
 また、感染患者の拡大など発生状況に応じまして、関係局、関係機関とも密接に連携しながら、さらなる体制強化を図るなど、都民の健康と安全の確保に万全を期してまいります。
 次に、都におけるCOPDの現状と対策についてでございます。
 COPD、これは慢性閉塞性肺疾患でございます。平成十四年の人口動態統計によりますと、都内のCOPDの死亡者数は一千六十八人、死亡率は人口十万人当たり八・七でございます。腎不全、糖尿病に続き、死亡順位は十一位となっております。過去五年間の推移を見ますと、死亡者数、死亡率とも横ばい状態にございます。
 また、COPDは、喫煙との関係が深いといわれていることから、健康局のたばこに関するホームページにCOPDの項目を設けまして、都民に対する普及啓発を行っておるところでございます。
 次に、母親学級などの禁煙指導の徹底についてでございます。
 これまで、都は、小中高等学校に対しまして、児童生徒の各年代に応じた喫煙防止の指導を行うためのリーフレットの作成、配布や、指導者向け研修を実施してまいりました。
 また、区市町村に対しては、母親学級で使用するテキストに喫煙による影響の項目を加えるなど、禁煙指導と知識の普及に努めてまいりました。
 今後、ご指摘を踏まえまして、喫煙に関する新しい知見の収集や、効果的な普及啓発、研修などにより、関係機関の取り組みを支援してまいります。
 最後に、区市町村の路上禁煙対策への支援についてでございます。
 路上禁煙対策は、住民の健康保持や喫煙マナーの向上だけでなく、火災予防あるいは景観保持など、総合的な観点から取り組まれているものと理解しております。
 東京は、地域によって人口や交通事情、自然環境などが大きく異なっているため、都内全域を一律に規制するのではなく、区市町村が地域の特性を踏まえまして、独自に対策を進めることが重要でございます。
 このため、区市町村が効果的に取り組むことができますように、引き続き、関係情報の提供や研修の実施に努めてまいります。
   〔病院経営本部長碇山幸夫君登壇〕

○病院経営本部長(碇山幸夫君) 都立病院におきます感染症への取り組みについてでございます。
 都は、感染症医療を行政的医療と位置づけまして、感染症指定医療機関であります都立四病院を中心に、SARSを初めといたします各種の感染症に対します対策の充実にこれまで努めてきたところでございます。
 平成十六年度は、ご指摘の新たな感染症への対応能力を高めますために、都立墨東病院におきまして、感染症外来の改修を行いますほか、感染症対策用資器材を整備するなど、感染症医療の一層の充実に取り組んでいく考えでございます。
 今後とも、健康局や地域の医療機関、保健所など、関係機関との密接な連携のもとに、新たな感染症への対応など、感染症の治療に万全を期してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 島しょ地域におけます津波対策についてお答え申し上げます。
 都はこれまで、地域防災計画に基づきまして、島しょの町村と連携し、津波防災意識の普及啓発や避難訓練を実施いたしますとともに、避難誘導標識の設置などに努めてまいりました。
 東南海・南海地震の防災対策推進地域として指定されました八丈町、小笠原村につきましては、本年六月を目途に防災推進計画を策定する予定でございます。ご指摘の住民、観光客の安全確保対策やライフラインの応急対策などについても検討してまいります。
 さらに、津波による浸水予測図を、伊豆諸島地域につきましては今年度中に、小笠原諸島につきましては平成十六年度中に作成してまいります。
 今後、地域防災計画を見直すなど、島しょの町村と連携し、津波対策を強化してまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 震災対策に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、超高層ビルの長周期地震動に対する安全対策についてでございますが、都におきましては、これまで防災都市づくり推進計画に基づきまして震災対策に取り組んでまいりました。超高層ビルにつきましては、国土交通大臣の認定に基づき、構造強度の審査をした上、工事中の施工状況についても中間検査を実施するなどしまして、より高い安全性の確保に努めてきました。
 昨年十月、内閣府・中央防災会議におきまして、新たな問題として、巨大地震による長周期地震動の超高層建築物等への影響について、検討の必要性が確認されました。
 また、十一月には、土木学会が巨大地震災害への対応検討特別委員会を設置いたしまして、日本建築学会と共同して、さまざまな未解明な点について調査研究を進めることといたしました。
 都といたしましては、今後、これまでの震災対策に加えまして、長周期地震動対策について、国や学会等における動向を注目しつつ検討し、超高層ビルのなお一層の安全確保に努めてまいります。
 次に、建築物の耐震化を進めるシステムについてでございますが、都といたしましては、既存建築物の耐震化の必要性は認識しておりまして、これまでも都民に対して、木造住宅の簡易診断法の周知や耐震診断機関の紹介を行うとともに、耐震診断技術者の育成を図るため、工務店などを対象といたしました研修会を開催してまいりました。
 今後は、ご指摘のとおり相談体制や情報提供をさらに充実するとともに、国の制度改正の動向を踏まえまして、区市町との耐震改修促進のための連絡協議会を設置するなど、連携を図り、その促進に努めてまいります。
 次に、小中学校、福祉施設、医療施設等の耐震診断と改修についてでございますが、東京都では、東京都既存建築物耐震改修促進実施計画に基づきまして、公共建築物を所管する部署に対しまして、それぞれ実施計画を策定し、耐震診断や耐震改修を計画的に進めるよう指導しております。
 その結果、都や区市町村においては、耐震改修が必要であるとされたものにつきまして、優先度の高いものから順次改修を進めております。
 また、民間建築物のうち不特定多数の都民が利用する公共性の高い建築物には、特定行政庁が耐震改修促進法に基づきまして、耐震診断や耐震改修の実施を働きかけております。
 今後とも、区市町村と協力して耐震診断や耐震改修の指導、助言等を積極的に行ってまいります。
 最後に、白鬚東の防災拠点についてでございますが、本防災拠点は、昭和四十八年に東京都震災予防計画に定められました六拠点のうちの一つでございまして、東京都地域防災計画に位置づけられております。
 この拠点は、昭和五十七年に完成し、これまで墨田地区の防災拠点として機能してまいりましたが、それぞれの施設については、施設管理者ごとに維持管理してまいりました。しかし、ご指摘の非常用のトイレが時代おくれであること、非常電気設備の稼働時間が短いこと、また一方で、不燃化の進展や避難人口の大幅な減少という周辺環境の変化もあることなどから、現在、施設整備の見直しを検討しております。
 今後、非常用トイレの改善や電気容量のアップなど、ご指摘の設備につきましては、本地区の防災機能を確保するため、地元墨田区と都区役割分担に基づいて協議をし、鋭意取り組んでまいります。
 なお、災害の行動マニュアルにつきましては地元区が整備し、また、病院につきましては地元医師会と協定を締結し、都リハビリテーション病院に医師を派遣することとしております。
 都といたしましても、関係機関と連携を密にし、取り組んでまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 青少年健全育成条例における子どもたちの深夜外出の規制についてお答えいたします。
 深夜の外出規制は、青少年が犯罪等に巻き込まれることを防ぐためのものでございます。
 条例案で規制されますのは、保護者の同意などの正当な理由なしに、深夜に青少年を連れ歩くなどする大人でございます。したがって、塾の帰りや働く青少年の通勤などの正当な理由のある深夜外出には適用されないものでございます。
 青少年の生活時間が従来とは変化してきております。条例の運用に当たりましては、青少年の正当な行動が過度に規制され、普通の生活が不便となることのないよう配慮すべきであると考えております。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) ディーゼル車対策についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず、自動車NOχ・PM法の規制対象となる車両数についてでございますが、法の規制では、都条例の規制対象であるディーゼル貨物車に加え、ガソリン貨物車やディーゼル乗用車等も対象としております。
 法の規制を受ける車両は、今後、順次買いかえ等を行う必要があり、都内の対象車両数は、自動車登録データをもとに推計いたしますと、十年間で約三十五万台となります。そのうちディーゼル貨物車については、条例対応で買いかえが促進されているため、平成十六年度は、登録車両の約五%に当たる一万三千台になるものと推計しております。
 次に、事業者に対する相談体制についてでございますが、都のディーゼル車規制の実施に当たりましては、さまざまな媒体による広報活動、事業者団体への説明会、総合相談窓口での相談等を行い、国の自動車NOχ ・PM法の内容も含め、周知徹底と対応促進に努めてまいりました。
 都は、事業者が依然として厳しい経営環境にあることを踏まえ、今後とも、総合相談窓口の活用や自動車整備事業者等との連携により、法規制の内容や国の融資制度をわかりやすく紹介するとともに、事業者個々の状況に即した助言を行うなど、法規制にも適切に対応できるよう、きめ細かく相談に応じてまいります。
 最後に、国の新たな融資制度についてでございますが、自動車NOχ・PM法により車両を買いかえなければならない事業者への支援は、規制を実施する国の責務であると考えております。
 都はこれまでも、国に対して、中小零細企業向けの新たな融資制度を創設し、使用過程車の代替促進を図るよう、国への提案要求等の機会をとらえて働きかけてまいりました。
 今回、新たに創設された国の融資制度は、購入車両のみを担保とした融資への道を開くなど、厳しい経営環境にある事業者に対する支援策として大変重要であると認識しております。
 都としては、この制度が事業者にとって利用しやすいものとなるよう、今後とも国に強く求めてまいります。

○副議長(中山秀雄君) この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後七時一分休憩

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