平成十六年東京都議会会議録第二号

   午後三時四十一分開議

○副議長(中山秀雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十四番名取憲彦君。
   〔百二十四番名取憲彦君登壇〕

○百二十四番(名取憲彦君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について、知事並びに関係局長にお伺いします。
 まず、平成十六年度東京都予算案について伺います。
 本予算案は、景気の緩やかな回復が見られる中での編成となりましたが、一般会計で前年度比〇・四%減の五兆七千八十億円、一般歳出で前年度比一・二%減の四兆二千二百十四億円となっています。都債の発行は四千八百二十九億円ですが、起債依存度は八・五%とかなり低い水準にあり、将来の財政負担を考慮しても、なお活用の余地があると考えます。
 東京都は、平成四年度予算での七兆二千三百十四億円をピークに、この間、財政構造改革に取り組んで、歳出を削減し、都債も抑制してきました。
 一方、国は、平成十二年度予算の約八十五兆円をピークに、十六年度でも八十二兆円と高どまりするなど、税収の落ち込みを国債で穴埋めする放漫財政に陥っています。小泉構造改革も一向に進まず、ただ混迷の度を深めるだけで、国債依存度四五%では、到底持続可能とは思えません。
 自治体を見ても、地方財政計画規模は、平成四年度の約七十四兆円から、十六年度には十兆円以上増加しており、右肩上がりの幻想から覚めていないかのようであります。
 その結果が、国、自治体を通じた長期債務残高七百十九兆円であります。
 後世に負担のみ残すような国の予算編成を横で見て、知事は東京都の予算編成をされたわけですが、東京都と国の予算案について知事はどのようなお考えか、お伺いをいたします。
 この予算案では、景気の緩やかな回復基調を反映して、IT関連等の企業収益に改善が見られるとしながらも、都税は、前年度に比べて百二十億円の増しか見込んでいません。従来であれば、企業収益の改善が直接都税収入の増に結びつき、高い税収増を見込めたのでありますが、本予算案では低目の税収見込みとなっています。
 法人の会計制度変更の影響もあるのでしょうが、このような税収見込みとなったのはなぜか、伺います。
 また、この予算案における第二次財政再建推進プランに基づく財源確保額は、目標額の三千七百億円に対して九百六十五億円、二六・一%の確保率となっています。第二次プランでは、第一次プランに引き続き、内部努力、施策の見直し、歳入確保、地方税財政制度の改善にそれぞれ確保目標額を示すとともに、今後、各局が財政構造改革、都政の構造改革に向けた検討を行っていく際の素材として、三十項目を付表に掲げました。
 各局の自主的、主体的な取り組みにゆだねているわけですが、今後どのようなスケジュールでこの取り組みを進めようとお考えか、見解を伺います。
 この第二次プランでも、地方税財政制度の改善によって一千百億円の財源を確保するとしていますが、現政権のもとでは、その可能性は極めて薄いといわざるを得ません。
 石原知事も国の改革の現状を批判されておりますが、とりわけ自治体に大きな影響を及ぼす三位一体改革においては、自治体に裁量の余地のない義務的経費にかかわる国庫補助負担金を削減し、その財源は国に配分権を残し、地方交付税も総額を減らすだけで、制度の抜本的な見直しには全く手がつけられていません。
 それだけでなく、戦略なき場当たり的補助金削減は個々の補助金にも及び、とりわけ、さきに示された、厚生労働省の社会福祉施設等施設整備の国庫補助にかかわる補助協議基準の見直しは、社会福祉施設整備の実態を全く無視したものであります。
 今この時期に、国及び東京都の補助制度を前提に自己資金の調達を行うなどのぎりぎりの資金計画を立ててきた社会福祉法人などに、さらに五千万円あるいは一億二千万円の自己資金を確保しろ、あるいは入札手続や建設工事等の期間を無視して、単年度で施設整備が終了する事業のみを国庫補助協議の対象とするなどということは、事業をあきらめろというに等しいものであります。
 既に福祉局として、厚生労働省に対して緊急要求を行っていますが、他の自治体とも連携を図りながら、国に対して強く働きかける必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、新銀行の設立について伺います。
 知事は、昨年の第二回定例会において、新しい銀行の設立により、従来の担保主義に縛られない新しい融資モデルを構築し、日本経済の抱える負の連鎖を断ち切るための突破口とするとされました。その後、昨年十一月に新銀行基本スキームが、本年二月には新銀行マスタープランが発表され、新銀行の具体的な姿が明らかになってきています。
 その一方で、都市銀行は、不良債権処理に一定のめどをつけ、ビジネスローンを初めとした中小企業融資に積極的な参入を開始しています。
 また、これまで中小企業融資の桎梏となっていた「金融検査マニュアル別冊・中小企業融資編」が改訂され、中小零細企業の成長等について金融機関の評価を尊重することや、キャッシュフローの重視の明確化などが図られています。
 こうしたことから、中小企業、とりわけ新銀行の主要融資商品であるポートフォリオ型融資のターゲットとなる中小企業群に対する融資は、都市銀行のみならず、地方銀行、第二地方銀行をも含んだ金融機関の主戦場になることが予想されます。
 こうした状況の変化を踏まえてもなお、新銀行の設立の意義は変わらないとお考えか、伺います。
 二十一世紀を迎え、経済のグローバル化の進展と人々のニーズの多様化の中で、世界は、新技術の開発や新産業の育成を目指して激しく競争する時代になっております。こうした競争に立ち向かい、東京の経済を発展させるためには、ITやバイオテクノロジーなど新たな産業の担い手を中心として、技術力を持った幅広い中小企業の育成、支援が重要な課題であります。
 新たな分野に意欲的に挑戦しようとする中小企業は、一般的には、事業実績に基づく信用力が不足し、担保に供し得る資産も少ないことから、資金調達という壁に常に直面をしております。二〇〇三年版中小企業白書においても、創業希望者の六割が、資金調達を最大の問題点と指摘しております。
 東京の経済を担い得る新産業をはぐくむ中小企業に対して、新銀行はどのような役割を果たせるとお考えか、見解を伺います。
 次に、地域金融機関との連携について伺います。
 中小企業に生きた資金を供給するためには、地域の実情に最も精通した信用金庫等の地域金融機関との連携が不可欠であると考えます。一部には、新銀行の開業により、大量の預金移動が起こり、既存の金融機関の経営圧迫を心配する声もありますが、マスタープランでは、新銀行は地域金融機関のリスク負担能力を補い、両者が協力をして中小企業融資を進めていくことが強調されております。
 しかし、それは同時に、高いリスクを抱える融資であり、かつモラルハザードを惹起しかねない融資でもあります。さきに述べたように、ポートフォリオ型融資の分野での激しい企業間競争を抱えつつ、このようなハイリスクな分野での融資も実行するということは、生半可な事業ではありません。
 このような難題を抱えてもなお、地域金融機関と新銀行の連携が確実に実現されるのか、見解を伺います。
 最後に、東京都と新銀行の関係について伺いたい。
 私は、新銀行は、既存の金融機関が避けているリスクの高い案件に対しても融資を行おうという銀行で、これまでの日本にはなかった銀行だと受けとめています。
 また、この新銀行に対して、東京都は出資し、大株主としての意向を反映させるだけで、経営は民間人に任せる純民間銀行であると考えていますが、例えば全国銀行協会は、官としての信用力や影響力を背景に銀行業務に乗り出す都立銀行だと受けとめているようであります。
 このプランでも、中小企業振興公社や産業技術研究所などと連携、都施設のキャッシュレス決済化、金融と行政サービスの融合等々、行政の公共財を一般企業である新銀行に独占的に使用させるかのような表現が見られます。
 また、新銀行は、資産の健全性や低い経費率、厚い資本などを背景とした高い信用力を有しているとする一方で、説明の際には、都の信用力という言葉が安易に使われていることがあり、混乱を深めているようであります。
 東京都と新銀行の関係を明確にすることが、今後の議論を正常化することにつながると考えますが、見解を伺います。
 次に、中小企業金融について伺います。
 東京都は、平成十六年度予算において、中小企業向け投資法人の設立、中小企業再生ファンドの創設に、合わせて百二十五億円を計上しています。
 ファンドとは、中小企業に対して、融資ではなく投資を行うものです。融資と投資の大きな違いは、融資がもともと返済を前提に資金供給するものであるのに対し、投資は、返済されないリスクが高い企業に対しても、将来性を見込んで資金を供給する点です。
 このように、融資などの間接金融と、投資などの直接金融はそれぞれ役割を異にするものであります。日本では、これまで間接金融に偏重しており、まだまだ直接金融の分野はおくれています。
 そうした中で、東京都も、新たにファンドの創設に乗り出すわけです。ベンチャー企業の育成や中小企業の再生により、東京の経済を活性化するという趣旨は理解いたしますが、昨今、全国の民間ファンドが設立されている中で、百二十五億円もの多額な資金を投入するわけですから、その必要性について十分検証する必要があります。
 そこで、民間ではなく、東京都が今なぜ多額の出資をし、ファンドを設立する必要があるのか、見解を伺います。
 また、ファンドは、先ほど述べたように、ハイリターンを期待して資金を提供するものです。しかしながら、東京都が多額の公金を投入する以上、極力損失を回避することも必要です。ファンドへの出資金を毀損することなく、施策の効果を上げるため、東京都はどのように取り組んでいくのか、伺います。
 次に、産業振興について伺います。
 二月二十日、東京都は、産業科学技術振興指針を策定し、中小企業等が新技術の開発などを進めていきやすい環境を整備するための総合的な施策を提言しております。
 この指針では、東京都の大学や試験研究機関がこれまで十分に連携できていなかったこと、あるいは企業ニーズの反映や技術移転の推進などに取り組んでいなかったことなどを率直に反省し、その上で、具体的な施策の実施を求めています。私も、この指針に盛り込まれたそれぞれの施策が、東京都の中小企業に活力をもたらすものとして期待をするものです。
 この指針は、平成十六年度から平成二十年度までの五年間に、東京都が実施または取り組むことが望まれる施策推進の指針となっています。また、都政の重要施策及び重点事業との連携や、施策の実施に当たっての近隣自治体との連携も求めています。
 こうしたことを踏まえて、産業振興に視点を置いた産業科学技術振興の取り組みについて、石原知事の見解を伺います。
 指針で掲げる三つの基本目標に関して、大学管理本部にお伺いいたします。
 まず第一に、産業技術力の強化と産業の活性化についてです。
 東京都には現在、四つの都立大学と十四の公設試験研究機関がありますが、これらが持っている知的財産が眠ったまま生かされていないことが、議会でもたびたび論議になってきました。私は、大学などが持っている知的財産を中小企業の技術力と結合させ、新製品、新技術の開発や製品の高付加価値化を進め、新産業の創出に結びつけていくことは極めて重要であると考えています。
 指針では、新大学に産学公連携センターを開設し、東京都の公設試験研究機関に限定せず、国立の研究機関、企業の研究所、他大学との連携した研究を推進していくことなどを掲げていますが、私は、このセンターでの産学公連携の取り組みをさらに推進し、新産業の創出や地域経済の活性化に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 第二に、研究開発の推進についてです。
 研究機関及びそれに関連する企業などを集積させることは、人的な交流や設備の共同利用、研究情報ネットワーク構築などの面からも大変有効であり、私は、それぞれの地域における地域の特性に応じた産業の集積化について、積極的に取り組むべきと考えています。
 平成十六年度の重点事業では、城南地域におけるものづくり産業支援拠点の整備が打ち出され、ナノテクノロジーセンターの平成十七年一月開設が示されています。
 ナノテクとは、十億分の一メートルの精度を扱う技術の総称ですが、機械、電気、電子産業が集中する城南地域においてナノテクセンターが開設されることにより、地域はもとより、東京のナノテク産業が、日本あるいは世界を牽引する産業として成長することを期待するものであります。
 ナノテクセンターにおいては、新技術の移転、新製品開発の活性化などに加えて、地域の中小企業のニーズに沿った研究開発テーマを取り上げるなど、地域の産業振興の観点からも積極的に取り組んでもらいたいと考えますが、見解を伺います。
 第三に、産業科学技術を担う人材の育成についてです。
 人材育成については、ナノテクノロジーセンターの開設とともに、城南地域ものづくり産業支援拠点の一つとして産業技術大学院が打ち出されています。産業技術大学院については、中小企業のものづくり技術の実践的研究や高度な専門技術者の育成などを掲げています。
 また、産業界からも、こうした高度専門技術を持った人材育成を求める声が強くあり、私も、ものづくりの現場における企業の課題を解決するための東京都の取り組みに大いに期待をするものです。
 そこで、産業技術大学院における人材育成の基本的な考え方について見解を伺います。
 次に、労働行政について伺います。
 都内の雇用情勢は、一部に改善の兆しが見られるものの、雇用のミスマッチなどから、完全失業率が五%前後の高水準が常態化しており、また、失業期間一年以上の長期失業者も年々増加傾向にあります。
 さらに、正規労働者からパートタイム、アルバイト、派遣労働等の非正規労働者への振りかえが急激に進んでいます。また、労使間のトラブルから労政事務所に寄せられる相談は、実に年間五万件を超え、内容も複雑、多様化しています。
 都内の雇用・就業環境は、いわば構造的に変化してきており、こうした状況に対応していくことが東京都の労働行政の大きな課題となっています。
 こうした中で、東京都は来年度、しごとセンターを立ち上げる考えを打ち出しており、雇用、失業状況を改善する施策として大いに期待をするものです。
 その一方で、労働対策の柱である労働相談については、新宿労政事務所を廃止するとともに、大幅な見直しを行おうとしていることから、一部には東京都の労働行政の後退を懸念する声があるのも事実です。
 そこでまず、労働者をめぐる雇用環境の変化を踏まえ、東京都は、今後、労働行政をどのように進めようとしているのか、基本的な考え方について伺います。
 また、労使間のトラブルが頻発し、労働相談が増加する中で、新宿労政事務所の廃止などを含む労政事務所の再編が考えられていますが、その目的と考え方について見解を伺います。
 次に、環境政策について伺います。
 まず、温暖化対策についてですが、昨年中にも発効すると見られていた京都議定書は、ロシアが批准を先送りしたことにより、その見通しが不透明になっています。また、国の対応もはっきりと定まっていません。
 こうした中で、石原知事は施政方針において、年内を目途に、CO2削減のための新たな仕組みづくりなど、東京独自の具体策を取りまとめると述べられたことは力強い限りです。もちろん、このような取り組みは、都民や事業者などの理解と協力を得ながら推進されることはいうまでもありませんが、石原知事がいわれたように、あす地球が滅びるとも、東京はきょうリンゴを植えるという視点から、私たちも積極的に温暖化対策を推進していくべきだと考えています。
 そこで、東京都独自の制度化を含めた温暖化対策の取り組みについて、石原知事の決意を伺います。
 二月二十三日、東京都環境審議会から、東京都における実効性のある温暖化対策についての中間のまとめが示されました。
 温暖化対策を検討するに当たっては、削減義務の導入が視野に入っていたと思いますが、審議会の中では、これまで温暖化対策に積極的に取り組んできた事業者とそうでない事業者、あるいは建物の竣工時期や業務形態など、さまざまな違いをどう公平公正に扱うのかなど、大きな議論があったようです。
 中間のまとめの結論では、事業者に自主的な削減目標を設定させ、それを管理するという手法をとっており、一部には、当初の削減義務からは後退したのではないかといった声も聞かれています。
 この制度によって、総量でどのくらいCO2が削減できるかはこれからの具体化にかかっていますが、一律の目標を設定することに比べて、より高い水準の省エネに誘導することも可能になったのではないでしょうか。
 中間のまとめに当たっては、削減義務と事業者の自主性尊重という議論があった中で、今回の結論に至った基本的な考え方についてお伺いします。
 中間のまとめで示された制度の対象となる大規模事業所は、産業、業務部門のCO2排出量の約三割にすぎず、残りの約七割を占める対象外の事業所に対しても、削減を誘導するような施策を講じていく必要があります。
 十六年度予算案では、中小テナントへの省エネ資材導入補助を新たに盛り込んでいますが、対象とならない事業者、特に中小事業者については、省エネに関する情報がなく、規模も小さいため、十分な取り組みが難しい状況にあります。
 こうした点も踏まえて、制度の対象とならない事業者に対するCO2削減に向けた取り組みを支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、建築物環境計画書制度は、省エネや緑化の評価基準をレベルアップさせるとともに、新たにヒートアイランド現象の緩和を追加するなど、これまでの制度を充実させる内容となっています。
 しかし、この制度の評価基準は、あくまでも敷地単位を想定しており、今後の都市再生において、より環境に配慮したまちづくりが進むよう、街区単位での取り組みを評価することについても視野に入れるべきと考えます。例えば、汐留や六本木のような大規模開発では、地域で地域冷暖房を入れた、あるいは風の道に配慮したことなども考慮されていいはずです。街区単位での取り組みなど、建築物の温暖化対策に向けた取り組みについて見解を伺います。
 最後に、環境産業の発展について伺います。
 環境審議会の中間のまとめでは、環境と経済の両立の重要性を基本理念として述べ、温暖化対策の推進が、新技術の開発やESCO事業などの新産業発展の契機ともなるとしています。そして、例えば、ラベリング制度が、消費者行動を通じて、企業の環境配慮型製品の開発、生産、販売を支援する上でも有効であると、新たな制度の方向を示しています。
 また、東京都の産業科学技術振興指針の中でも、環境産業の創出として、公設試験研究機関が新たな科学的知見の集積や技術開発のための調査研究を推進することにより、都市型産業の活性化を推進すると、その方向性を示しています。
 温暖化対策や廃棄物のリサイクルなど、東京の環境問題の解決を図る上で、環境産業の発展が重要であると考えますが、見解を伺います。
 次に、住宅政策について伺います。
 今議会に提案されている組織改編条例が成立すれば、東京都住宅局は四月一日付をもって都市計画局や建設局の一部と再編統合されることになります。昭和三十五年七月に設置された住宅局は、今や二十六万戸近い都営住宅を管理するとともに、バブル期には、国の特優賃制度に先駆けて都民住宅制度を打ち出すなど、都民の居住環境の向上に大きな役割を果たしてきました。
 しかし私は、これからの住宅政策は、ストックの活用、公共住宅中心から、住宅市場の活用、ハード、ソフト両面からの住宅政策の総合化に視点を置いて展開されるべきと考えており、組織改編によって、まちづくりと一体となった住宅政策の推進が期待されます。
 その上で、私は、福祉施策と一体となった取り組みはもとより、固定資産税などの税制をも活用しながら、住宅市場の整備、誘導、補完のために、より積極的かつ総合的に施策を展開すべきと考えます。これらの住宅政策について、知事の見解を伺います。
 石原知事は、住宅市場への関与として、今議会に、東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例を提案しています。
 賃貸借に関する相談件数がこの五年間で倍増していますが、相談の最も多い退去時の敷金精算や維持、修繕の問題については、宅建業法の対象外となっています。そのため、東京都は、都民の相談に対して、一般的な相談業務としての対応にとどまっていました。
 今回の条例では、原状回復に関する基本的な考え方や維持、修繕に関する連絡先などについて、宅建業者に説明義務を課すとしており、適正な賃貸住宅市場を形成する上からも有効な施策であると評価するものです。
 条例案では、特に違反者に対する罰則規定は設けられていませんが、これらの制度を市場のルールとして定着させていくためには、実際に地域において事業を営む経営者や宅建業者といった人たちの理解と協力が不可欠です。
 私は、こうした事業者との連携を通じながら、新規契約だけでなく、既存の契約の更新も含めて、こうしたルールの適用がなされることを期待するものですが、制度の定着に向けた東京都の取り組みについて伺います。
 また、石原知事は、今回の条例提案とあわせて、礼金・更新料ゼロ運動を打ち出しています。私も、この運動が大きな成果を上げることを期待するものですが、そのためには、賃貸住宅の経営者、特に小規模なアパート経営者の理解を得ることが不可欠です。
 現在、小規模なアパート経営者の多くは高齢化が進んでいます。今回の運動によって賃貸住宅に対する経営意欲が減退することは、供給サイドにもよい影響を与えません。
 そこで、賃貸住宅の経営者などに対する取り組みも含め、礼金・更新料ゼロ運動の進め方について見解を伺います。
 最後に、東京都住宅供給公社について伺います。
 昨年八月、東京都住宅供給公社は、住宅関連業界の中でもトップクラスといわれるダブルAマイナスという格付を取得したと発表しました。私は、このこと自体、率直に評価をするものです。
 一方、先ごろ、地方自治法が改正され、地方公共団体が設置する公の施設の管理について、指定管理者として民間企業に代行させることが可能になったことで、都営住宅についても、その管理をだれがどのように行うことが最も適切か、検討を進めていると聞いています。
 東京都が住宅市場を活用して住宅政策を展開しようという中にあって、住宅供給公社のあり方が今改めて問われているように思われます。
 私は、こうした新たな状況を踏まえた東京都住宅供給公社のあり方について、改めて見解を伺います。
 次に、東京都の福祉改革推進について伺います。
 ここ数年、東京都が、福祉改革に取り組み、国が全国画一の設置規制や補助のあり方を容易に変えようとしない中で、次々と設置促進のための施策を展開してきたことは高く評価されてよいと考えています。また、設置促進の取り組みの一環として、私たち都議会民主党の提案を受け、東京都は昨年、痴呆性高齢者グループホーム及び知的障害者生活寮の整備のため、都有地を市価の二分の一という低廉な価格で貸し付けることとしました。
 これは、多くの事業者の競い合いによって、全国のモデルとなるような質の高いグループホームの整備がなされ、かつ、グループホーム大増設の呼び水になるものと期待をしております。
 そこで、こうした都有地活用によるグループホームの整備促進策について、今年度のみでなく、来年度も引き続き行っていくべきと考えますが、所見を伺います。
 加えて、東京都は、平成十六年度重点事業として、グループホーム設置促進のための推進本部を立ち上げるとのことです。
 私は、この推進本部は、従来、どちらかというと補助金の申請、審査等を行う待ちの組織であった東京都において、事業者や土地建物オーナーに対する積極的アプローチなど、攻めの組織とするとともに、単にグループホームの設置促進のみでなく、ニーズの掘り起こしができるような、戦略的広報などを担い得る、局を挙げての推進本部とすべきではないかと思っております。この推進本部の基本的な考え方について伺います。
 このように、東京都の積極的、画期的な取り組みが進む中で、国からは信じがたいような通達が立て続けに出されています。
 施設整備にかかわる補助金については先ほど述べましたが、もう一つ、支援費制度のもとで昨年実施されたホームヘルプについて、国の負担分である二分の一を下回る補助金額を提示するものです。支援費制度の発足に伴い、ニーズが顕在化し、当初の予算では賄えなくなったことによるものですが、これはあくまでも厚生労働省の見込み違いが原因であって、自治体には何ら落ち度はなく、足りなかったからで済まされるものではありません。私たちは、この借金の踏み倒しのようなやり方に怒りすら覚え、国は当初約束した額を支払うことが当然と考えています。
 この補助金カットは、何ら政策上の根拠を持たないものであり、単なる数字合わせにすぎないばかりか、来年度以降、福祉インフラの整備やサービス支給の抑制につながりかねない危険をはらんだものです。この措置の妥当性について福祉局長はどのようにお考えか、伺います。
 また、これらのことは、霞が関が紙の上だけで物事を考えており、東京都がどれだけ緻密に計画を立て、予算を組んで事業を行っているかを全く理解していないことの証左であります。
 事は福祉だけの問題ではとどまりません。小泉政権による見せかけの三位一体改革の名のもと、各省庁が、ビジョンなき数字合わせで、何の前ぶれもなく既存事業に大なたを振るうことが横行しており、国の財政破綻のツケを自治体と国民に押しつけるものにほかなりません。現場を持つ地方自治体の長としてはどのようにお考えか、知事の見解を伺います。
 次に、教育について伺います。
 教育において、生きる力、問題が生じても解決できる力を涵養することが必要とされ、詰め込み式の教育だけではなく、可能性、創造性を伸ばすことが求められていることは、障害のあるなしにかかわりません。
 しかし、従来の障害児教育は、いわば障害の否定から入っていたという印象が否めません。ノーマライゼーション、障害は個性という言葉を真に現実のものとするためには、障害児教育の目的は、障害児を健常児に近づけることではないということを改めて確認し、その上で、教育内容、その教授法についても考えていかなければなりません。
 例えば、日本のろう学校の授業では、一部日本語対応手話は使われているものの、ろう者の日常語である手話は用いられていません。私どもが先般、海外調査で訪れたスウェーデンにおいては、手話をスウェーデン語と並ぶ公用語として位置づけております。教育の現場も手話を基本としております。
 そこで、特殊教育から特別支援教育へということの大きな節目に、一人一人の能力や可能性を最大限に伸長するための多様な教育内容の展開とともに、その伝達手段であるコミュニケーションの方法についても検討すべきと考えますが、見解を伺います。
 また、特別支援教育の実施に必要となるサポート体制の整備に当たっては、多様な形態での多様な人材登用を積極的に推進することが必要であると考えます。同じ障害を持つ先輩や、これから教育者を目指そうとする人、また、地域の人、多種多様な人に、その場限りのお客様としてではなく、学校にかかわりを持ってもらうことで、生徒、保護者、教員が、いろいろな人に触れ、刺激を受けて、学校として育つことができるようになるのではないでしょうか。多様な人材の活用についていかがお考えか、伺います。
 特別支援教育では、新たにLD、ADHD、アスペルガー症候群などの高機能自閉症の子どもに対しても特別な教育支援を行うことになっています。また、普通学級に在籍している子どもの約四%が何らかの特別な支援を必要とするとの調査結果が出ており、単純に見積もれば、東京都内で約三万人の特別な教育ニーズが新たに発生することになり、抜本的な対応が必要となります。
 しかしながら、従来、東京都内の区市町村が行ってきた、四から五校区に一つ心身障害学級を置くという拠点方式による既存資源との関係上、この新たに発生するニーズにどのように対応するのか、平たくいえば、対象となる子どもがいれば、すべての小中学校に特別支援教室が設置されるのかどうかがいま一つ明らかでなく、不安要因にもなっています。この点についていかがお考えか、伺います。
 次に、青少年問題について伺います。
 今般、石原知事は、青少年問題協議会の答申を受けて、健全育成条例の改正案を提案しました。有害な情報のはんらんなど、青少年を取り巻く環境がますます悪化しているという判断のもと、規制を強化しようとするものですが、不可逆的に進む情報化社会の中で、対処療法的に規制を強めたところで、どの程度の実効性があるのか、疑問なしとはしません。
 一部の際立った事件の印象に基づいて、規制を厳しくすれば犯罪がなくなるかのような議論で終わってはならないのであります。青少年の置かれている現状について多面的に分析し、非行や犯罪に手を染めるその動機づけを減らすようなプログラムを用意すべきです。まず、青少年を取り巻く環境が悪化してきたという原因について、どのような社会の状況があると認識しているか、知事の見解を伺います。
 非行や犯罪に走る子どもには、幼児期に虐待を受けるなど、家庭的に問題を抱えている場合が多く、家族の機能が崩壊している家庭の子どもに対して居場所をどう提供していくかは、地域社会の深刻な課題となっています。青少年が深夜までカラオケボックスや漫画喫茶などで過ごすことは、もちろん望ましいことではありませんが、単にそこから締め出せば問題が解決するというものではありません。青少年が犯罪に手を染めないよう、常に社会の目の届く範囲にとどめておくことがむしろ重要と考えます。規制をするばかりでなく、青少年の居場所についてどのように考えるかなど、根本的な解決策が必要だと考えますが、都の見解を伺います。
 都がこれまで、不健全図書指定に関して、個別指定制度を採用し、業界の自主規制を尊重しながら、規制について抑制的に対応してきたことは評価するところであります。確かに、性的な情報などに関しては、だれでも、見たくないものを見ない権利、子どもに見せたくないものを見せない権利を人権の観点から主張することは認められるべきです。他方で、多様なメディア表現の可能性を確保するという自由社会の権利を守る観点から、両者の調整はあくまでゾーニングの徹底により図られるべきものであると考えます。現に不健全と認められている図書が青少年の容易な閲覧にさらされているという事実があるのであれば、それはあくまでも区分陳列と青少年に対する販売禁止の徹底を図ることにより改善されるべきです。インターネットの普及なども考え合わせ、実効性のあるゾーニングについてどのように考えているか、都の見解を伺います。
 特に低学年の子どもが非行や犯罪に巻き込まれる背景には、みずからの行動がもたらす危険性についての認識が余りに低いことが挙げられているのではないでしょうか。子どもの間では、成功談は広まりますが、不用意な行為のためにひどい目に遭った失敗談は、人にいうのが恥ずかしく、広まりにくいという傾向があると考えます。非行を誘う大人に対しては規制で臨むことも必要ですが、子どもに対しては、みずから非行に走らない動機づけを与えることが最も重要であると考えています。青少年の犯罪防止に取り組む人たち等とのコミュニケーションを通じて犯罪の恐ろしさを学ぶなど、教育の場においても、学校の関係機関やボランティア団体との協力で、青少年がみずから考え、学習する機会を緊急に拡大すべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、今や、情報化社会の進展により、かつてあった共通の価値観というものが明らかでなくなりつつあります。むしろ、これからの未来を生きる子どもたちには、多様な価値観を持つ他者と共存しなければならないことを教え、多様な価値観の中から自己の幸福を追求する自己決定権を尊重し、同時に、他者の幸せを侵害する犯罪行為に対して自己抑制できる能力をはぐくむことが重要だと考えます。青少年が、非行や犯罪の誘惑に負けず、健全に育つためには、規制を強めて、見えないところに追いやるのではなく、社会とのコミュニケーションのパイプをより多く持たせ、青少年自身の判断能力、責任感を養うことこそが必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、治安対策及び総合危機管理について伺います。
 第一に、東京港の水際対策についてであります。
 今回の港湾管理条例では、欠陥船や無保険船についての港湾施設の使用規制が盛り込まれるとともに、犯罪などに関与しているおそれが強い船舶についての港湾の利用規制が盛り込まれました。都民の安全を守るという条例化の趣旨については評価するものですが、特に、後段の条文については、規制対象が必ずしも明確でなく、その運用によっては、東京港に入港できなくなる船が広く解釈されるおそれがあると危惧する声もあります。
 実際の入港規制に当たっては、洋上で対応した方が効果的な場合や、着岸させて取り締まった方がよい場合など、さまざまなケースが考えられます。また、手続的にも、海上保安庁など関係機関とそごを来さないよう綿密な調整を踏まえて実施する必要があります。
 私は、条例の適用に当たっては、関係機関との十分な連携による適正な手続を踏まえるとともに、乱用がなされないような慎重な運用を求めるものですが、実際の運用面について東京都はどのように考えているか、見解を伺います。
 第二に、都民と協働して防犯に取り組むための対策についてであります。
 都民の体感治安を改善させるためには、社会全体の決意として、犯罪行為に対して決して無関心ではないということを目に見える形で示すことが重要であると考えます。安心感のあるまちづくりを推進するには、地域住民や民間団体が行う巡回活動や啓発活動を支援し、それぞれの活動のネットワーク化を進めていく必要があります。
 また、地域の犯罪情報については、現在、警視庁においても、犯罪発生マップなどを公表し、注意を喚起しているところですが、さらに防犯の実効性を上げるには、より詳細な犯行手口の公開と、その対策の指導が必要と考えます。これまでどおり、ホームページや広報誌での公表に加え、犯罪が発生した地域近辺の各家庭に注意を喚起する方法を考えるなど、より積極的な情報の共有化が必要と考えます。防犯活動のネットワーク化及び情報の共有化を今後も積極的に推進すべきと考えますが、警視総監の見解を伺います。
 第三に、こうした行政や都民における取り組みの進展にとどまらず、さらに取り組みの輪を広げる必要があるのではないかということであります。
 昨年十二月に、在日中国人有志が、「違法犯罪に反対し、華僑華人の良きイメージ樹立を目指す共同宣言」を発表し、都はそれを受ける形で、在日中国人の方々との対話の会を呼びかけられました。今回の対話の会では、在日中国人の置かれている現状や問題点、留学生、就学生をめぐる問題、犯罪防止のための方策などが話し合われ、対策を進めていくために連携していくことなどが確認されたと聞いております。犯罪行為に対しては、もちろん厳しい姿勢で臨むことが必要ですが、一方では、犯罪を誘発する原因があれば、それを取り除く努力も必要です。今回のような対話は、それぞれの視点に立って現状を理解する上で非常に有効であり、さらに、外国人犯罪の増加とともにあらわれつつある外国人全体への偏見をなくすことにつながるのではと大いに期待をするところです。
 そこで、竹花副知事は今回の対話についてどのような感想を持たれたか、また、今後もさまざまな在日外国人コミュニティの方々との同様な試みを行うべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、都民の安全・安心を確保するには、治安対策にとどまらず、地震などの自然災害やSARSのような感染症、あるいはテロ行為等に対する総合的な危機管理体制の構築が重要です。先般、二月十三日に行われた総合防災訓練、図上訓練においては、知事も参加され、みずから判断する場面もあったと聞いています。こうした訓練の積み重ねは非常に大切であり、今後も、対象をテロ行為等にも広げ、さまざまな事態を想定して行うべきと考えますが、このような訓練をどのように評価され、今後、その成果をどのように生かしていかれるのか、知事の見解を伺います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意ある答弁を求め、ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 名取憲彦議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、都と国の予算案についてでありますが、都はこの五年間、第一次、第二次財政再建推進プランに基づきまして、歯を食いしばって財政構造改革に取り組み、何とか破綻を食いとめてまいりました。
 十六年度予算では、財政再建への取り組みを強化、向上しまして、現下の緊急かつ重要な課題に財源を重点的に配分するとともに、財源不足額を圧縮することができました。
 さらに、持続可能な財政基盤の確立に向けて、基金残高の確保や都債の発行抑制に努めるなど、都財政の将来を見据えた取り組みを行ってまいりました。
 これとはどうも対照的に、私も長くいたところですから、余り口幅ったいことはいえません、私自身も責任があったといえますけれども、国の財政は一種の垂れ流しでありまして、収入の約半分を国債発行に頼るなど、巨額の債務残高を抱えて、将来に大きな不安を残す、極度にゆがんだ状況となっております。
 しかしながら、どうも国の改革はほとんど動いておりません。余り危機感が感じられません。国は、当面の糊塗策に終始することなく、直ちに財政再建の方途を含め長期的な国家戦略を明確にすべきであると思います。
 例えば、小泉内閣は、特殊法人を含めた構造改革というものを強く主張して登場してまいりましたが、私はやはり、中曽根内閣時代に成功した三つの事例をさらに踏まえて、かつてのソビエトや今の中国で、既にもう効率が悪いということで彼ら自身も反省した上で、ほとんど棄却している、国営企業に等しい日本の特殊法人というものの合理化というものを抜本的にすべきだと思います。
 そのためには、一つ一つをいじるのではなくて、まずやはりどんとした経済人を責任者に据え、立派な公認会計士を集め、そして最後は会計検査院から役人を連れてきて、ともかくそういう公的な機関できちっとした会計基準で監査をしませんと、例えば宇宙開発公団のような特殊法人は、今まで、新しく上げるロケットの原価計算を示したことがない、こういうふうな他国にあり得ない状況がたくさん見られるわけであります。
 都は、内部監査に加えて外部監査を行ってきました。非常に参考になるところがございまして、多くのむだが指摘され、それを鋭意改良しておりますが、私はやはり、そういう努力こそ国が範として率先して行うべきことではないかと思っております。
 次いで、新銀行の設立の意義についてでありますが、昨年五月に新銀行構想を発表いたしました。その後の金融環境を俯瞰しても、既存の銀行のリスク回避姿勢には、その体力低下とも相まって、大きな変化は本質的には見られず、中小企業に生きた資金を安定的に供給する仕組みを構築することの重要性を一層認識しております。
 確かに、メガバンクを初め、中小企業向けの無担保融資への取り組みは、巷間いろいろいわれるものですから、重い腰を上げた形で始めてはいますが、その規模はいかにも総計で小さく、一兆円程度といったものでありまして、さらにその融資対象も、主として、あくまでも優良な企業が中心になっております。
 既存の金融機関の未充足分野に、生きた資金を積極的に供給する新銀行の設立の意義は、依然として大きいと思っております。
 次いで、新産業をはぐくむ中小企業に対する新銀行の役割についてでありますが、東京には世界に誇り得る、すぐれた技術を持つ有望な中小企業がたくさんございます。こうした新たな分野に積極的に果敢に取り組む中小企業に資金を供給し、育成していくことは、新銀行の重要な役割の一つだと思います。
 先般も、実はバイオ関係のあるすぐれた開発をしている企業が、どうしても資金が足りない。都が動く努力をする前に、どういうルートでか韓国から資金を仰いで、たちまちその企業は発展しまして、もう一年のうちに変貌を遂げて、多額の売り上げをするような企業に成長もいたしました。こういった事例は、まだまだあちこちにあると思います。
 そういったものをにらみながら、新銀行は提携金融機関などと連携し、技術力などにすぐれた企業を幅広く掘り起こすとともに、専門家を含めた審査の体制や、代表者の個人保証を解除する仕組みなどによりまして、技術力や将来性を有する企業を支援する融資姿勢を貫いていきたいと思っております。
 また、融資先企業に対しては、多様な企業や団体との連携を生かしながら、経営面、財務面のほか、技術力・将来性認定証の発行による信用力の付与や、実効性の高い企業交流の機会の提供など、総合的な支援を行っていきたいと思っております。
 次いで、産業科学技術振興の取り組みについてでありますが、日本経済の長期的な低迷を打破し、国際競争力を強化するには、新技術を開発し、それを担う技術者を育成して、産業の活性化を図ることが極めて重要であります。
 その視点に立って、科学技術を振興していくことが不可欠でありまして、今般、産業科学技術振興指針を策定しました。これによって、国の研究開発予算の導入にも道が開けたわけであります。
 今後、産業界のニーズに対応した産学公連携を強化し、研究成果を産業界へ還元させるなど、産業振興策を積極的に展開していきたいと思っております。
 次いで、温暖化対策の制度化でありますが、地球温暖化問題は、人類の存在そのものが問われる喫緊の課題でありまして、この二十一世紀は、地球と人類の存続をかけた百年になると認識をしております。
 地球温暖化対策は、国の役割が決定的に重要でありますが、どうも政府は緩慢な動きにしか見られません。実効性のある対策を打ち出せない状況にあります。
 都は、国の対策をまつことなく、年内を目途に、事業者の自主的な二酸化炭素削減策をさらに促す新たな仕組みづくりなど、大都市の特性を踏まえた独自の具体策をまとめていきたいと思っております。
 首都の東京が率先してそういう行動をとり、行政を通じて、一種の文明論としてのメッセージを発することで、国民的なレベルで機運を盛り上げて、国を動かしていきたいと思っております。
 次いで、これからの住宅政策についてでありますが、住宅は生活の基盤でありまして、良質な住宅の確保は、都市の活力を創出する上でも重要なものであります。
 住宅の戸数が世帯数を上回り、居住形態が多様化した現況では、既存ストックの適切な管理、更新を含め、市場を活用した幅広い住宅政策へと転換することが必要だと思われます。
 今後、総合的なマンション対策や不動産取引の適正化など、市場の機能を十分に発揮させるよう、市場の整備、誘導を図り、総合的な住宅政策を一層強力に推進していきたいと思っております。
 まだ、案がまとまり切れておりませんが、あるスペースも利用しまして、戸建ての住宅に関しては、途中の中間搾取を排するメカニズムをつくりまして、まあいわば都が工務店のような形で、すぐれた職人さんをコントロールしながら、やっぱり三〇%は安いような住宅を提供していくような、そういう施策も何とか実現したいと思って研究中であります。
 次いで、国による補助負担金の削減についてでありますが、平成十六年度予算案では、障害者児の支援費など、従来から交付されてきた補助金を、理由も示さないまま、何の前触れもなくに削減してしまいました。
 需要の見込み違いなどによるものでありますが、これは明らかに、国の官僚が現場を持たず、本当におっしゃるとおり、ペーパーの上で事を図って決めているから、こういうことが起こるわけでありまして、各省の縦割りによる既得権益擁護の構図を維持したまま、財政破綻のしわ寄せを地方に押しつけることは、到底許されるものではありません。
 そういう形での国庫補助金負担の削減が横行することになれば、言葉だけの三位一体でしかありません。改革そのものについても、本来の趣旨をはるかに逸脱するものにしかなりかねないと思っております。これは、政治的なメカニズムとしても、決して民主的な運営とはいえないと私は思います。
 次いで、青少年を取り巻く環境の悪化の原因についてでありますが、今日の社会をつくってきたのは、あくまで我々大人、社会の先輩でありまして、大人の無責任な意識と行動が、実は青少年の荒廃の原因となっているといえると思います。
 特に、嫌な風俗でありますけれども、着用済みの下着だとか、排せつ物だとか、そういったものを売買するそういう実態がありまして、そういうものを愛好する変質的な大人の嗜好が風俗としても野放しにされているということは現実にあるわけで、それを規制の対象にするわけですけれども、あるいはまた不健全図書の販売方法に配慮しない事業者が問題だとも思います。
 外泊を繰り返している子どもにも、親に問うてみますと、携帯を買って与えているから、一日に何度か連絡すれば親はそれで安心して、子どもを監督というんでしょうか、掌握しているという錯覚を平気で口にしますが、それはあくまで携帯という現代的な道具に象徴される、あくまでバーチャルな親子の関係でしかないと思います。
 こうした現象はいずれも大人社会の影の部分の投影でありまして、まず我々大人の生き方を反省して正すことが、すべての出発点にならざるを得ない、なるべきであると思っております。
 次いで、総合的な危機管理体制の構築についてでありますけれども、自然災害やテロ災害など、いつ起こるかしれないさまざまな危機に対処していくためには、あくまでも日ごろの訓練が絶対に必要、大切であります。
 私も、これまで、自衛隊の陸、海、空の三軍を動員しての震災対策や、あるいは先般も天然痘のテロを想定した図上訓練に参加しましたが、そのたびに非常に新しい思いがけない発見がありまして、大変有意義でありました。
 例えて申しますと、この間、アルカイダがああいう声明をしまして、それを受けて、東京のラッシュの地下鉄で二カ所で、彼らが仮に天然痘の菌を水に溶かして散布した、そういう想定で図上訓練をいたしましたが、既存の、短絡して感染症法といいますけれども、感染症の蔓延を阻止するための法律は全く役に立ちません。
 そして、これは結局最後は、非常に過剰に解釈されている、過大に解釈されている憲法の基本的人権にも抵触してきました。つまり、個人のプライバシーであるとか、自由ということの拘束ということになれば、既存の法律ではできない。しかし、何時何分、ラッシュの地下鉄でテロが行われた、天然痘は七日間から十七日間の潜伏期間があるわけでありますけれども、その間、明らかにその電車に乗っていた人たちの身柄をどう拘束するか。これを自由に横行させれば、疫病はあっという間に蔓延するわけでありまして、それをどうやって防ぐか、防がないかということは、そういうテロが何時何分、どこの電車であったという情報の開示も含めて、これはやはり既存の法律の体系というものに、竹花副知事からも異存が出ましたけれども、まさに、かつてこういったものがつくられた時代に比べて現況は明らかに変わっている、進んでいるということであります。
 そういう反省も含めて、行政の当事者は、一たん緩急のときには、場合によったら超法規的な判断をするという決心をせざるを得ない、そういう認識を改めて持ちました。
 また、訓練を通じて、警察、消防、自衛隊など関係機関と県境もまたいで連携して行動するということが、非常に大きな効果を発揮することも再認識いたしました。
 こうした訓練を繰り返し実施することによりまして、ノウハウを蓄積し、防災対応能力の一層の向上に努めていきたいと思っております。
 なお、他の質問については、副知事、警視総監、出納長、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔副知事竹花豊君登壇〕

○副知事(竹花豊君) 在日中国人の方々との対話についてでございますけれども、在日中国人の方々からは、我が国における中国人組織犯罪の増加に大きな危機感を持っておりまして、東京都や入国管理局と、犯罪対策や不法滞在者対策に一緒に取り組みたいという意向が示されました。その真剣さに強い印象を受けるとともに、これらの対策を進めている都にとっても、極めて心強いというふうに感じた次第でございます。
 引き続き、都や入国管理局において中国の方々と協議を進めておりまして、これを治安対策を進める一つの手がかりとしていきたいと考えております。
 なお、犯罪対策を進める上で、そのことはすべての善意の人々の利益にかなうものでありまして、このような利益を通じて、国を超えてさまざまな立場の人々の理解を深めることにも資することになるものと期待をしているところでございます。
 当面は、中国関係を重点的に取り組みを進めてまいりますけれども、今後、他の外国人の方々の要望がありますれば、対話を進め、東京における外国人犯罪の減少を図ってまいりたいと考えております。
   〔警視総監奥村萬壽雄君登壇〕

○警視総監(奥村萬壽雄君) 防犯活動のネットワーク化と犯罪情報の共有化の推進についてお答えをいたします。
 まず、防犯活動のネットワーク化についてでありますが、最近の厳しい犯罪情勢、また、昨年の安全・安心まちづくり条例の成立などを背景といたしまして、地域住民や事業者の方々による自主的な防犯パトロールが、各地で今活発に展開されております。
 警視庁といたしましては、こうした自主的な防犯活動を支援するため、防犯ボランティア活動を行っている地域住民の方々に対しまして、地域の犯罪発生状況に関する情報の提供、あるいはユニフォームの貸与といった支援を行ってまいりますとともに、こうした活動のリーダーに対する講習会の開催等によりまして、防犯ボランティア団体相互の連携を図りまして、それぞれの活動のネットワーク化を進めてまいりたいと考えております。
 また、情報の共有化につきましては、当庁のホームページの犯罪発生マップ、これを来年度からさらに詳しくしてまいりますとともに、これらの情報を電子メールで都民の方々等にお知らせする、いわゆるメールマガジンを実施することを予定しておりまして、今後とも、犯罪情報の共有化につきましては一層積極的に取り組んでまいります。
   〔出納長大塚俊郎君登壇〕

○出納長(大塚俊郎君) 新銀行についての二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、地域金融機関との連携についてでありますが、新銀行がリスクの高い中小企業融資を効果的かつ適切に行うためには、新銀行自体のノウハウもさることながら、中小企業金融にさまざまな実績とノウハウを持つ信用金庫等地域金融機関との密接な連携が極めて重要であります。
 一方、地域金融機関にとりましても、負担能力に一定の限界がある中で、そのリスクを新銀行とともに負うことで、中小企業支援の実効性を一層高めることが可能になります。
 都は、これまでの準備過程におきまして、地域金融機関の参画を得て、融資手法や保証などの検討を行ってまいりましたが、今回、新たに新銀行の経営を担う執行役に信用金庫関係者を迎えることなどによりまして、中小企業のニーズにこたえた、より具体的な検討を進める体制が整いました。
 今後、新銀行は、中小企業支援の充実のため、さまざまな局面で地域金融機関と積極的に協調しながら、事業を展開してまいります。
 次に、都と新銀行との関係についてでありますが、新銀行は、中小企業への総合的な支援という政策目的の実現を図るために設立をするものでありますが、あくまでも民間銀行であります。都は、具体の執行には関与せず、経営の大枠を監視することになります。
 また、新銀行は、現行の金融システムにおいて、他の金融機関と共存し、かつ公平な競争を行うものでありまして、都の力を背景に、とりたてて優越的な地位を得ようとするものではありません。
 こうした前提のもと、新銀行は、いろいろと必要な連携を図りながら、中小企業や都民に貢献するさまざまな取り組みを積極的に展開をしてまいります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します四点の質問にお答えします。
 まず、特別支援教育におけるコミュニケーションの方法についてでございますが、障害のある児童生徒が、さまざまなコミュニケーション方法を身につけまして、多くの人と交流しますことは、社会参加、自立の基盤を形成する上で極めて重要なことでございます。
 現在、盲・ろう・養護学校におきましては、一人一人の障害の状態に応じて、点字や手話、指文字などのさまざまなコミュニケーション手段を用いた指導を行っておりますが、今後、ろう学校におけるITを活用した教育推進校での情報伝達の研究成果を生かしながら、多様なコミュニケーション方法の開発と工夫に努めるなど、個に応じた指導を一層推進してまいります。
 次に、特別支援教育の実施に向けた多様な人材の活用についてですが、お話のように、特別支援教育の実施に当たりましては、多様な人材を積極的に活用することは重要であると認識しております。
 都教育委員会としましては、昨年十二月に答申されました東京都心身障害教育改善検討委員会の最終報告を踏まえまして、現在、庁内において、外部の人材の活用も含めた民間活力の導入、連携に関する検討を進めているところでございまして、これらの検討結果に基づきまして適切に対応してまいります。
 次に、特別支援教室の小中学校への設置についてでございますが、特別支援教育体制のもとでは、通常の学級に在籍するLD等の特別な教育的支援を必要とする児童生徒の教育ニーズに適切に対応するため、原則として各学校に特別支援教室を設置することが望ましいと考えております。
 この特別支援教室につきましては、今後、国の法改正や整備指針等の動向を踏まえまして、設置者でございます区市町村において、地域の実情に基づき対応していくことになりますが、都教育委員会としましても、モデル事業の実施など必要な支援に努めてまいります。
 最後に、児童生徒が非行や犯罪防止について学習する機会を拡大することについてでございますが、児童生徒を非行や犯罪被害から守るためには、学校、家庭、地域社会が連携して取り組みを進めることが重要でございますことから、都教育委員会としましては、本年度、警視庁と連携をしまして、保護者や地域の方々の協力のもとに、セーフティー教室を試行的に行いまして、児童生徒が犯罪に巻き込まれたり、被害に遭ったりしないための具体的な取り組みをしてまいりました。
 今後は、裁判所や保護司会、医師会などの関係機関との連携を深めまして、児童生徒みずからが危険を回避する能力を高めたり、非行や犯罪から身を守る態度や判断力を培ったりすることができるよう、セーフティー教室の一層の内容の充実を図ってまいります。
   〔主税局長川崎裕康君登壇〕

○主税局長(川崎裕康君) 平成十六年度の税収見込みについてのご質問にお答えいたします。
 日本経済は、輸出、設備投資に支えられ、民需中心の緩やかな景気回復基調にあるものの、不安定な為替レートや伸び悩む個人消費などの影響により、景気回復の持続性が先行き不透明であることなどを勘案して、税収を算定いたしました。
 都税収入の約四割を占めます法人二税は、銀行外形標準課税の税率改正や、十五年度先行減税の平年度化などの税制改正によるマイナスの影響があるものの、景気回復による企業収益の改善が見込まれ、約〇・四%の増を計上いたしました。
 その結果、都税総額では、前年度同時補正後予算額に対しまして約百二十億円増の三兆九千二百六億円を見込んだものであります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 第二次財政再建推進プランの今後の取り組みに関するご質問にお答えいたします。
 このプランは、十八年度までに巨額の財源不足を解消するとともに、強固で弾力的な財政体質を確立し、持続可能な都財政の実現を目指しておりまして、引き続き目標達成に向けた取り組みを着実に進めていくことが求められております。
 これからの財政再建におきましては、中長期的な課題や構造的な課題に果敢に取り組み、内部努力を徹底するとともに、施策の見直し、再構築を行っていくことが何よりも重要でございます。そのためには、各局が現場からの発想に基づきまして、自主的、主体的に改革、見直しに取り組むことが不可欠でありまして、毎年度の予算編成、執行の各段階で各局と連携協力しながら、これまで以上に積極的に財政構造改革を進めてまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 福祉改革、福祉施策に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、社会福祉施設整備にかかわる国庫補助についてでございますが、ご指摘の一方的な国庫補助基準の見直しは、長期にわたり準備を進めてきた事業者に大きな混乱をもたらす極めて遺憾な措置であり、都における福祉行政の推進に重大な支障を及ぼすことが懸念されます。
 このような認識から、都は、見直しの撤回を求めて国に対して緊急要求を行いましたが、今後とも、他の自治体とも連携を図りながら、国へ強く働きかけてまいります。
 次に、都有地活用によるグループホーム整備についてでございますが、痴呆性高齢者や知的障害者が地域の中で安心して暮らし続けるためには、家庭的な雰囲気の中で必要なケアを受けながら生活できるグループホームの整備が急務でございます。
 そのため、都は今年度、整備促進策の一環として、都有地を低廉な価格で事業者に貸し付ける制度を創設し、四地区について公募を行ったところ、サービス内容に創意工夫を凝らした七十九件の提案が寄せられ、現在、借り受け事業者を選定中でございます。
 このように、都有地を活用した制度は、グループホームの整備促進策として極めて有効であることから、来年度も継続して実施してまいります。
 次に、グループホーム設置促進のための推進本部についてでございますが、痴呆性高齢者や知的障害者のグループホーム大増設を実現するため、福祉局では、これまでの取り組みを強化し、この四月より、局長を本部長とするグループホーム設置促進事業本部を立ち上げ、局一丸となって設置促進に取り組むこととしております。
 この事業本部では、都民の理解促進に向けた普及啓発を展開することはもとより、グループホームの運営への参画が期待できる民間企業をも含む多様な事業主体や土地建物の所有者などに対しまして、設置の具体化に向けた積極的な働きかけを行ってまいります。
 最後に、ホームヘルプサービス国庫補助金についてでございますが、先般、国が示した国庫補助金の配分予定額は、都内区市町村におけるサービス提供実績に基づく所要額を大きく下回り、現時点で約十二億円の不足が見込まれております。
 今年度の配分予定額は、支援費制度移行前である昨年三月の実績に基づいて算定されたもので、支援費制度移行後のサービス提供量の大幅な伸びが反映されておらず、ご指摘のとおり、国の対応は極めて遺憾であり、到底容認できるものではありません。
 支援費制度の財源確保は、制度の根幹にかかわる重要な問題であり、サービス提供実績に基づく必要な補助金を交付するよう、今後とも国に強く働きかけてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 中小企業金融など四点のご質問にお答えいたします。
 まず、都がファンドを設立する必要性についてでございます。
 第一に、二〇〇一年のファンド新規投資金額日米比較におきまして、USドル換算で、アメリカが五百九十七億ドル、これに対し日本が二十一億ドルと、アメリカの二十八分の一にも満たない状況であること、第二に、日本の中小企業への直接金融は、資金供給全体の一割にも満たず、アメリカに比べ圧倒的に未成熟であること、第三に、ベンチャー企業の多くが実績や担保を持たず、創業期の死の谷に苦しむ中、民間ベンチャーファンドの二〇〇二年度の新規投資実績は、二〇〇一年度に比べまして二割以上減少していること、第四に、民間再生ファンドの多くは、大企業、中堅企業が対象で、中小企業はほとんど手つかずの状態であり、民間ファンドのみでは十分な資金供給が見込めない状況にあることなどでございます。
 このため、都がファンドを設立し、中小企業への直接金融による資金供給を推進するとともに、間接金融偏重の金融システムを抜本的に改革する必要があると考えたからでございます。
 次に、ファンドへの取り組みについてでございます。
 都が出資し設立するファンドは、都の原資に民間の資金を加えて、中小企業に新しい資金が供給できるシステムをつくることを目的としております。また、このファンドが契機となりまして、ベンチャー企業の育成や中小企業の再生に役立つ民間ファンドが数多く創設されることも期待しております。
 事業化に際しましては、民間の専門家を活用いたしまして、そのノウハウなどを十二分に引き出すことにより、合理的なスキームを構築するとともに、幅広い投資家が安心して参加できるような環境を整備し、適切なファンド運営が図られるように努めてまいります。
 次に、雇用環境の変化を踏まえた労働行政の基本的考え方についてでありますが、我が国の産業構造の変化など厳しい経済情勢と国民の価値観の多様化や少子高齢化社会の進展を背景に、都民の雇用就業環境は、ご指摘のように大きく変わっております。こうした雇用情勢に対応するためには、国の施策だけでは十分ではなく、都としても主体的に雇用就業対策に取り組み、都民の仕事に対する不安を取り除くとともに、東京の産業を支える人材の確保を図っていくことが今こそ必要と考えたからでございます。
 こうした考え方に立って、従来の施策に加え、来年度は、都独自の取り組みといたしまして、しごとセンターを開設することとしたところでありまして、雇用就業対策の推進のため、今後とも、産業振興策や教育行政などと連携いたしまして、都の実情に合ったきめ細かい施策を総合的に展開してまいります。
 最後に、労政事務所の再編の目的と考え方についてでございます。
 今回の労政事務所の組織再編は、事業の効率化と労働相談機能の充実を図るために実施するものでございます。
 再編に当たりましては、労働相談情報センター及び事業所全所に労働相談専門の専管部門を新たに設置することによりまして、専門性を高めてまいります。さらに、各所における相談情報を集約し、情報の共有化を行うことにより、迅速かつ的確に労働相談を解決するシステムを構築してまいります。
 また、新宿労政事務所は、労政事務所の地域的バランスや環境上の問題から廃止するものでございます。
 いずれにいたしましても、労働相談は職業生活の安定を図る上で重要な事業であり、今後とも多くの都民の切実な労働相談に適切に対応してまいります。
   〔大学管理本部長山口一久君登壇〕

○大学管理本部長(山口一久君) 大学と産業振興についての三点の質問にお答えします。
 まず、産学公連携の取り組みについてでございますが、新しい産業を創出し、産業の活性化を図るためには、産業界のニーズに応じた産学公連携が重要であると考えております。
 そのためには、大学が産学公連携コーディネーターなどを通して企業ニーズを把握して、そのニーズにこたえる共同研究を積極的に行っていくことが必要であります。首都大学東京の学長予定者であります西澤先生も、公立大学は地場優先ということが今まで欠け落ちていた、地場優先で新しい大学づくりを私がやってみたいと述べております。大学の変革を通じまして、産学公連携をさらに強化し、地域経済の活性化を図ってまいります。
 次に、ナノテクノロジーセンターについてでございますが、今注目を浴びているナノテクノロジーは、個々の中小企業が単独で取り組むには難しい技術分野でもあります。しかし、これからの産業界では、新製品を開発する際に不可欠な最先端技術となるだけでなく、関連する分野にも大きな波及効果をもたらすなど、中小企業の成長を促す面からも期待が持てる分野でございます。
 ナノテクノロジーセンターでは、都立の大学や産業技術研究所などの研究機関と研究開発型企業が共同で、例えば撥水性や吸水性にすぐれた新素材、小型燃料電池などを実現する超微細加工など、製品化に向けた研究を行ってまいります。
 この研究成果を地域に還元しまして、ものづくり産業の新たな事業展開への道を開くことにより、地域の産業振興に寄与できるように取り組んでまいります。
 最後に、産業技術の大学院についてでございますが、今、ものづくりの現場におきましては、基礎的な技術から最先端の技術までを駆使して製品開発などができる人材や、技術や経営に精通した人材が求められております。
 東京は、独創的な企業が多く集積し、魅力的なマーケットが存在するとともに、大学、研究機関も集積する大都市であります。このような東京の特性を生かしながら、平成十八年四月に城南地域に設置をする予定の産業技術大学院では、現場に密着した実践的な技術教育と研究を通じて、ものづくり産業に貢献できる人材を育成してまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 環境政策についての四点のご質問にお答えいたします。
 まず、環境審議会の中間のまとめに至る基本的な考え方についてでありますが、事業者の温暖化対策の取り組み状況を見ますと、既にCO2削減に相当努力している事業者がいる一方、取り組みのおくれている事業者も存在するなどさまざまであること、また業務実態も、自社ビルとテナントビルの相違に加えて、営業時間やテナント入居率の変動など多種多様であり、このような実態を踏まえますと、一律の削減義務の基準を設けることは難しく、総量削減の実効性という点からも問題が多くあります。
 そこで、中間のまとめでは、より大きな削減総量を確保するためには、事業者の個別状況に応じて都が指導助言を行うとともに、取り組み結果の公表により社会的に評価される仕組みを導入し、さらに高い削減水準に誘導することが有効であるという基本的な考え方を打ち出したものでございます。
 次に、制度の対象外の事業者への支援についてでございますが、CO2の総量削減を確実に進めるためには、制度の対象とならない多くの中小事業者についても積極的な取り組みを促すことが重要であります。しかし、中小の事業者は規模が小さいため、省エネルギー対策を講じる体制が組みにくいことや、対策に関する情報が少ないなど、対応が難しい状況にあります。
 このため、都は、ガイドラインを示し、設備費用の回収期間や導入効果等がわかるように具体的な省エネルギー対策の情報を広く提供するなど、中小の事業者がCO2の排出削減に取り組みやすくするための支援を検討してまいります。
 次に、建築物環境計画書制度についてでございますが、この制度は、大規模な建築物を新築する際に環境に配慮した設計を促す仕組みとして、これまで、省エネルギー性能にすぐれた建築物の普及などの効果を上げてきております。
 中間のまとめでは、個別の建築物の評価に加えて、省エネルギー対策やヒートアイランド対策の強化を図るため、建築物と敷地を一体的にとらえて、緑化や被覆対策などについても評価することが提言されております。
 さらに、個別敷地内にとどまらず、周辺地域まで配慮する視点から、風通しや緑の連続性などを評価の対象とすることが提言されており、今後、具体化に向けて検討してまいります。
 最後に、環境産業の発展の重要性についてでございますが、環境施策の推進は、新技術の開発を誘発し、環境産業を発展させ、経済の活性化を促すとともに、新たな技術の普及が環境問題の解決に役立つと認識しております。
 ディーゼル車規制では、新たなPM減少装置の開発を促し、その普及により、多数の車両の円滑な規制対応が可能となりました。温暖化対策におきましても、省エネ技術の開発やエネルギー管理産業の発展などが、CO2排出削減を促進するものと期待されます。
 都は、今後とも、環境問題の解決に役立つ技術開発や環境産業の育成、発展を促し、温暖化対策など環境施策の推進に積極的に取り組んでまいります。
   〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 住宅施策につきまして、三点のご質問にお答えをいたします。
 最初に、今回提案しております東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例への取り組みについてでございますが、条例を有効に機能させるため、借り主に説明すべき事項を明らかにしてまいりますとともに、説明文書のひな形を作成いたしまして宅地建物取引業者に普及するなど、制度の定着を図ってまいります。また、具体的な事例を盛り込んだ東京都版のガイドラインを作成いたしまして、貸し主、借り主の負担区分に関する基本的な考え方や、トラブルへの対応などをわかりやすく示してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、既存の契約者につきましても条例の趣旨の理解が進むよう、努めてまいります。
 次に、礼金、更新料のない契約についてでございますが、礼金、更新料のない合理的な契約を普及していくに当たりましては、貸し主と宅地建物取引業者の理解と協力が必要でございます。
 都はこれまでも、家主団体、宅地建物取引業団体と意見交換を重ねてまいりましたが、今後とも引き続きこうした団体と十分連携をいたしまして、礼金、更新料のない契約の普及に取り組んでまいります。
 最後に、東京都住宅供給公社のあり方についてでございます。
 民間の住宅市場が成熟してきている中で、公社は新規の分譲事業や賃貸住宅の新規建設を取りやめ、賃貸住宅のストックの維持更新を中心に事業を推進することといたしました。現在、都の財政支援に依存しない自主自立的な経営の確立に向け、経営改革を進めております。
 地方自治法の改正によりまして、指定管理者制度が創設されましたが、公社には、既存のストックの活用による中堅所得層向けの賃貸住宅の供給や地域のまちづくりへの貢献など、引き続き担うべき役割があると認識をしております。公社が自立した主体として一層の効率化とサービスの向上に努め、住宅市場の中で適切な役割を果たすべきものと考えております。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 青少年の健全育成に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、居場所づくりなどの根本的な解決策の必要性についてでございますが、都はこれまでも、児童館やユース・プラザの整備などの居場所づくり、子どもの正義感や倫理観をはぐくむ心の東京革命など、多様な施策を進めております。しかし、現在の環境の著しい悪化を改善するためには、さまざまな有害環境への規制をより効果的に行うことが不可欠かつ喫緊の課題であると考えております。このため、条例改正を提案したものでございまして、今後、規制の実効性を高めるため、事業者等への適切な指導を行ってまいります。
 次に、不健全図書の実効性ある規制などについてでございますが、都は、昭和三十九年の青少年健全育成条例制定当初より、青少年への不健全図書の販売等を禁止してまいりました。その後、平成十三年の条例改正で、大人の世界と子どもの世界を区分するという考え方に基づきまして、不健全図書の区分陳列を義務づけてまいりました。
 しかし、今回、不健全図書のはんらん状況が目に余ることから、区分陳列と販売禁止の徹底を図るための方策として、不健全図書の包装を義務づけることといたしました。
 インターネット等につきましては、自治体の領域を超える問題でもあるため、法的規制や関係業界への指導を国に提案しております。
 最後に、青少年自身の判断能力、責任感を養うことの必要性についてでございますが、青少年を取り巻く環境は極度に悪化しているため、青少年自身の判断能力や責任感を養う施策のみでは、現在の一刻の猶予も許されない状況を改善することはできないと考えております。
 そこで、今回、条例を改正して、事業者を初めとする大人への規制の強化とあわせまして、大人や親、子どもたちに警鐘を鳴らすこととしたものでございます。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 港湾管理条例の運用についてでございますが、今回の条例改正は、水際での危機管理を強化し、都民生活の安全を守ることを目的としております。
 この目的を効果的に達成するためには、入港させずに洋上で対応すべき場合はもちろん、ケースによっては、入港後着岸させて対応することが適切な場合があることはご指摘のとおりでございます。
 このため、条例の運用に当たりましては、海上保安部、税関などの関係機関や船舶側の情報をもとに、個々具体的な事案に即して取り締まり当局と十分調整の上、都民生活の安全を守るために、他に適当な手段がないと認められる場合には、港湾を利用させない措置をとってまいります。

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