平成十五年東京都議会会議録第十八号

○副議長(中山秀雄君) 三十八番東野秀平君。
   〔三十八番東野秀平君登壇〕

○三十八番(東野秀平君) 初めに、食の安全・安心確保について伺います。
 都においては、今年度の重点事業として、食品の安全・安心確保に向けた独自の仕組みの構築を進めております。加えて、食品の安全確保対策を総合的、計画的に実施するための食品安全基本条例の制定を、今年度内を目途に検討していることを評価いたします。
 都はこれまで、生産から消費までの一貫した食の安心対策として、都民のための生産情報提供プロジェクトの実施を目指し、企業などと協働して、都民の求める生産情報の提供を行うとしていましたが、まず、このプロジェクトの進捗状況と今後の展望を明らかにしていただきたいと思います。
 さて、都内で消費される農産物の多くが他府県で生産されており、生産地においても、農産物の安全・安心への諸施策が講じられています。そこで、都は、食の安全対策について、生産地を抱える他府県との広域的な連携を図るべきと考えますが、具体的な方針について伺います。
 また、食品事故等の原因究明や生産、流通情報の消費者への提供などを目的とした、いわゆるトレーサビリティーについては、現在、多様なシステムが実用化されつつあります。これらのシステムを活用するため、本施策の都民への周知を徹底するとともに、先行事例の研究など幅広い連携を図るために、行政を初め生産者、システム開発企業などで構成する、仮称食品の情報公開システムに関する研究会の設置を提案するものであります。
 さらに、その食品がトレーサビリティーシステムに加わっていることを示す、わかりやすい登録マークをつくり、広く都民に示すべきであります。一目で信頼できる食品と判別できるマークがあれば、都民の安心感は増大します。あわせて所見を伺います。
 次に、福祉における移送サービスについてであります。
 都では、移送サービス充実のための環境整備を図るため、リフトつきタクシーの普及、リフトつき乗用車の運行への支援、さらには移送サービスを実施するNPO団体等への助成など、多様な支援事業を行っています。
 しかし、さきに国土交通省が、有料の福祉移送は、安全性を確保し、事業の適正化を図るため、事業許可を取得すべきだと表明したことから、事業者や利用者の間で、今後の事業継続や利用をめぐって不安、混乱が生じています。まず、この点についての認識を伺います。
 一方、最近のマスコミ報道では、NPOなどが行う移送サービスについて、二〇〇四年度からタクシーの事業許可や普通二種免許がなくても認められるとか、車両は普通乗用車でも認める方向などと伝えられています。これが事実だとすれば、NPOなどが行う移送サービスについての従来からの課題が、実態に即して解決されることになります。都の判断、見通しを伺います。
 もとより移送サービスにおける安全性の確保や事業の適正化は重要なことでありますが、先行導入されている輸送特区における福祉タクシーの登録条件は厳しく、移送サービスを普及拡大するための条件緩和が強く求められています。
 社会福祉法人、NPO、ボランティア団体は、介護保険導入以前から、長年、地域において、利用者の需要に応じて自家用車による移送サービスなどを提供してきた実績を持っており、また、利用者からもその利便性が評価されています。
 こうした実態を踏まえて、NPOなどが提供する移送サービスについては、輸送特区の条件を基本としつつも、より幅広い利用者へのサービスの提供範囲を広げるために、都は国に対して条件緩和を強く要請すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、進行性筋ジストロフィーを含めた難病患者の療養サービスについて伺います。
 この進行性筋ジストロフィーは、体の筋肉が徐々にやせ衰えていく病気で、筋繊維が次第に変成し、機能不全に陥っていく原因不明の遺伝性のものであります。根本的な治療方法がないという病気であり、四年前に我が党の要望により、都が単独で難病に指定しましたが、国の指定はありません。
 一方、同じような症状の病気として、筋萎縮性側索硬化症、通称ALSがあります。このALSは、国が指定する難病であります。進行性筋ジストロフィーは小児期に発症するのに対し、ALSは成人になってから発症するという違いはあるものの、病状の末期の段階では、呼吸をするための筋肉が侵され、人工呼吸器の装着が必要となるという共通点があります。ところが、ALS患者と進行性筋ジストロフィー患者との間には、訪問看護等の利用において大きな格差が生じています。
 第一に、ALS患者は、国の制度で診療報酬の範囲、一日二回を超えて訪問看護を必要とする場合、患者一人に対して、年間二百六十回、週五回を限度に、一日三回の訪問看護が行われるのに比べて、進行性筋ジストロフィー患者は、国指定の疾病でないために、一日二回を超えるサービスは受けられません。このため、在宅での介護者に与える負担が大きく、国の指定難病と同様の事業拡大が強く要望されています。
 そこで、都は、在宅で人工呼吸器を使用している進行性筋ジストロフィー患者に対し、都単独でALS患者と同様の事業を実施すべきと考えます。所見を伺います。
 第二に、東京都では、吸引器などの医療機器を難病患者に貸与すると同時に、訪問看護を希望する患者に対しては、これを週一回、都独自で実施しています。多摩地域においてはすべての地域で利用できますが、残念ながら、区部においては実施していない区が半数近くあります。
 そこで、都は、機器貸与患者の訪問看護事業を実施していない区に対して、早急に実施するよう強力に指導すべきであります。所見を伺います。
 第三に、進行性筋ジストロフィー患者やALS患者など神経難病患者は、病状が進行し、重症となるために、在宅で療養を続けるためには、患者の病状に応じたサービスの提供が必要となります。患者相互の情報交換や、患者や介護者の立場に立った相談体制など、患者団体等による支援と、行政サービスやボランティアなどが連携した体制の確立が今後望まれます。
 そうした意味で、国が示した難病相談・支援センターを都としても早期に設置し、難病患者、家族への情報や適切なサービスの提供を行い、同センターが適切な事業運営ができるよう、都が支援体制を確立すべきと考えます。
 以上三点について所見を伺います。
 次に、観光振興について伺います。
 千客万来の世界都市東京を標榜する都政にあって、知事は、常々、観光産業の重要性を語られ、かつて予算特別委員会で、機会があったらテレビコマーシャルにも出演協力したいとされ、積極的な姿勢を示されておられたのが印象的でした。そこで、改めて最近の知事の観光振興に対する抱負を伺います。
 先日、ハノイ市で、ウエルカムアジアキャンペーンの一環としてアジア観光促進協議会が開催されました。これは、北京やデリー、バンコクなどアジアの主要八都市が共同して、欧米やオセアニアから旅行者を誘致するとともに、アジア域内の交流を活発化させる活動であり、先日、新たにフィリピンのマニラが参加を表明するなど、観光ネットワークの一層の強化が進んでおります。
 現在、観光を取り巻く環境は、災害やテロ、感染症など、さまざまな不安定要因を抱えており、決して楽観できる状況ではありませんが、千客万来の世界都市東京を目指し、かつアジア各都市の相互間での観光交流も活発に進めていく上で、アジア九都市間の域内交流強化の取り組みは大変に重要であります。
 そのための具体策として、域内九都市を特別に低廉な価格で結ぶアジア九都市周遊券を開発し、各都市で発行すれば、便利さとも相まって、域内の人的交流を進める上で大変効果的であります。アジア九都市周遊券の実現を目指すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、こうした周遊券の開発、発行には、当然、旅行会社を初め航空会社やホテル等の民間事業者の協力が必要となりますが、アジア九都市周遊券の開発、発行に向けて、まず、東京として都内の民間事業者等との連絡会の設置を進めるべきと考えます。所見を伺います。
 次に、観光案内標識についてでありますが、世界の各地から東京を訪れる外国人旅行者に、心行くまで東京の観光を堪能し、もう一度東京に来たいと印象づける環境を整備する必要があります。
 そのためには、だれもが安心して気軽に歩いて観光できる環境づくりが必要でありますが、特に関係者から強い要望があるのが、外国人ビジターにわかりやすい標識等の整備であります。
 都は、昨年度、外国人旅行者の多い一部地域に、外国人旅行者にもわかりやすい観光案内標識の整備をしましたが、今後は、外国人旅行者の多い地域だけでなく、特徴ある広域的観光ポイントをも対象とすべきであります。さらに、対象を多摩地域へも拡大して、より広範にわかりやすい観光案内標識を早急に整備すべきであります。所見を伺います。
 ところで、この十一月に、東京の観光やコンベンションの振興を進める社団法人コンベンション・ビジターズビューローが解散し、新しく東京観光財団として生まれ変わりました。東京の観光を活性化させるためには、民間のノウハウを持っているこのような団体を積極的に活用する必要があります。
 都は、東京観光財団と連携を深めるとともに、積極的な事業展開ができるよう支援していくべきであります。所見を伺い、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 東野秀平議員の一般質問にお答えいたします。
 観光振興についてでありますが、観光はすそ野が広く、経済波及効果や雇用創出効果の高い重大な産業であると思います。ということを、私は運輸大臣のときからいっておりまして、何でこれを通産省が扱わないんだ、おかしいじゃないかといって、逆に運輸省の中でひんしゅくを買ったことがあるんですが、国も、やっとこのごろそういう意識を持ってきたようでありまして、たまたまそのときの秘書官の金澤君が今、国交省で観光部長になったので、いろいろ知恵の交換をしておりますが、いろいろな整備をしませんと、情報も含めて、日本というのは、いろいろ観光資源に満ちていながら、来てみると非常に観光しにくい国のような気がいたします。
 例えば、私、ドイツを友人と一緒に自動車で旅行しましたときも、ドイツの気質なんでしょうか、あそこで出ている自動車マークというのは実に精密、正確でありまして、何というか、本当に感心しました。あれを見ている限り、自動車で旅行する限り、迷うことはない。そういった努力をやはり日本もしなくちゃいけないと思います。
 いずれにしろ、現況を見ますと、日本にやってくる外国人の数は五百二十万人でして、日本から外国に出ていく、つまり日本人の海外旅行者は千六百五十万、三倍もありまして、逆に、国際旅行収支というのは、結果、二兆八千五百億円の赤字であります。世界のランキングでは三十五位ということでありますが。
 いずれにしろ、都は、観光産業振興プランを策定するなど、国に先駆けて積極的に観光振興を展開してきたつもりでございます。今後も、東京の魅力を一層高めるとともに、観光情報を世界に向けて発信したいと思います。それによって、国内外から多くの旅行者を誘致しまして、東京の経済を活性化していきたいと思っております。
 何もこれは東京だけじゃなしに、東京を発信基地にして、東京のすぐ隣の神奈川県には、例えば鎌倉のように三大古都がありまして、東京の観光案内に鎌倉を載せることも、私は大事なような試みじゃないかと思っております。
 なお、その他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 八点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、都民のための生産情報提供プロジェクトについてでございますが、都では、食品の生産、製造、流通など食品関連事業者のうち、生産情報などの提供に取り組む事業者を登録し、都民に公表していくことを検討しております。このため、本年九月に、本プロジェクトの推進方策について意見を聞くため、学識経験者、農業者、食品事業者、消費者などの代表による食の安心推進協議会を設置し、十一月末に中間報告をまとめていただきました。
 今年度内に、提供すべき情報の内容や事業者の登録の基準、消費者の参加方法など、取り組み方策をまとめ、食品関係事業者に周知し、登録を促していきたいと考えております。
 次に、広域連携の具体的な方針についてでございます。
 都の近隣九県全体で、都内入荷の農産物の五割以上を占めており、これら近県と都の連携が極めて重要でございます。このため、仮称首都圏農産物安全会議の設置に向けまして、準備会を開催しております。
 この会議では、相互協力のための連絡体制を整備するとともに、広域的な農産物の安全対策などの検討を予定してございます。また、各都県共通の課題につきまして、相互の連携による国などへの提言、要望についても検討していく所存でございます。
 次に、施策の周知と研究会の設置についてでございますが、このプロジェクトのホームページを開設するほか、食品にかかわる業界ごとに説明会を開催し、事業内容の周知、取り組みへの参画を働きかけてまいります。
 また、ご提案の研究会はよい手法と考えますので、食品関連事業者にトレーサビリティーシステム開発企業などを加えた研究会を設置し、多くの事業者が食品の生産情報の記録や提供をスムーズに行えるシステムについて検討してまいります。
 次に、登録マークの表示についてでございます。
 生産情報を提供している食品に目印がなければ、食品を消費者が購入するときに、売り場で探し出すことが難しくなることは当然でございます。そこで、お話のようなマークの表示が有効であると考えておりまして、マークや表示方法について、年度内を目途に検討してまいります。
 次に、アジアにおける周遊券についてでございます。
 さきにハノイ市で開催されました第二回観光促進協議会におきまして、ウエルカムアジアキャンペーンの主な目的である欧米やオセアニアからの旅行者誘致に加えて、アジア域内の人的交流の活性化を望む意見が多く出されました。
 都といたしましては、キャンペーンに参加の幾つかの都市が連携して低廉な周遊券を開発することは、アジア交流の有効な手段であると考えておりますが、その実現には、都市間の合意形成や民間事業者の参画など、解決すべき課題も多いと認識しております。
 次に、アジアにおける周遊券の開発についてでございます。
 周遊券の具体的な開発などにつきましては、今お答えいたしましたように、ウエルカムアジアキャンペーンに参加している都市間の合意形成が前提であり、各都市においても、それぞれ航空会社、ホテルなど民間事業者を巻き込んだ検討が不可欠であります。また、ビザ発給の課題の解決も図る必要がございます。
 都といたしましては、ご提案の趣旨も踏まえ、都内民間事業者とともに検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、観光案内標識の整備についてでございますが、国内外の旅行者が楽しく、安心して自由にまちを歩くためには、わかりやすい観光案内標識の設置が重要でございます。
 都は、昨年度、外国人旅行者が多い銀座、日本橋と上野、浅草地区の両地域をモデルにしまして、地元区とも連携して、日本語、英語、中国語、ハングルの四言語と絵文字の表記による観光案内標識を九十九基設置いたしました。また、今年度は、池袋や八王子市などの多摩地域に標識を整備してまいります。
 都としては、今後、引き続き外国人旅行者の多い地域に観光案内標識を設置するとともに、ご要請がありましたが、新たに、内外からの旅行者の多い主要な観光ポイントについても標識の設置を検討してまいりたいと考えております。
 最後に、東京観光財団に対する支援についてでございます。
 観光財団は、東京都の産業、技術及び歴史的、文化的資源を活用し、観光及びコンベンションの振興を図ることを目的に設立されました。これを機に、観光財団は、新たな発想に立って幅広く事業を展開するとともに、旅行者やコンベンションの誘致体制の構築や、独自財源の確保などによる安定的な財政基盤の確立を図ることが求められております。
 都といたしましては、観光財団を有力なパートナーとして積極的に活用し、東京の観光振興を戦略的に展開していきたいと考えております。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 福祉移送サービスに関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、福祉移送サービスへの国の対応についてでございますが、ご指摘のとおり、NPOなどが有償での移送サービスを行うには、道路運送法上のいわゆるタクシー免許が必要との認識を国が示したため、事業者や利用者の間で、事業運営上の制約などに対するさまざまな影響を懸念する声が上がっていることは承知しております。
 都としては、NPOなどが現在行っている福祉移送サービスが、高齢者や障害者などの移動手段の一つとして、都民の間に広く利用され、定着してきているという実態を踏まえて、国において適切に対応すべきものと認識しております。
 次に、福祉移送サービスに関する課題解決についてでございますが、本年四月から構造改革特区において、いわゆるタクシー免許のないNPOなどが有償での移送サービスを行うことが認められました。国においては、この試みを、安全性や利用者の利便性の確保という観点から検証し、すべての地域へと拡大していく方向で多角的な検討を行っていると聞いております。
 都としては、こうした一連の取り組みによって、利用者の立場に立った福祉移送に関する規制の見直しが図られることは、意義あることと受けとめております。
 最後に、福祉移送サービスの条件緩和に関する国への働きかけについてでございますが、高齢者や障害者などがドア・ツー・ドアで移動できる福祉移送サービスは、地域で安心して暮らしていく上で、今後ますます重要な役割を担っていくものと認識しております。
 都としては、地域での自立を支援していくという観点から、こうした福祉移送サービスに対するニーズを踏まえ、多様できめ細やかなサービス提供が可能となるよう、さらなる条件緩和について国に強く働きかけてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 難病対策について三つのご質問にお答えいたします。
 まず、在宅で人工呼吸器を使用している進行性筋ジストロフィー患者に対する訪問看護事業についてでございますが、この疾病は、筋萎縮性側索硬化症と同様の医療的ケアを必要といたしまして、家族にとっては介護が重い負担となっております。
 都は、こうした患者の方々に対する在宅療養サービスの向上を図るため、訪問看護事業の対象拡大について検討していくとともに、国指定の疾病となるよう、引き続き提案してまいります。
 次に、吸引器など医療機器の貸与を受けている患者に対する訪問看護事業の促進についてです。
 都は、現在、この事業を実施している十二区に対しまして補助を行っております。今後、各区における難病患者に対する訪問看護の取り組み状況や課題を早急に調査いたしますとともに、引き続き訪問看護事業の実施に向けて働きかけてまいります。
 最後に、難病相談・支援センターについてでございます。
 国は、本年度から三年間で、各都道府県に一カ所の難病相談・支援センターを設置することといたしております。
 都といたしましても、患者さんの視点に立った相談、支援体制の充実を図るため、難病患者団体や区市町村など関係機関との連携を深めながら、センターの早期設置に向けて具体的に検討を進めてまいります。

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