平成十五年東京都議会会議録第十八号

○議長(内田茂君) 五十八番丸茂勇夫君。
   〔五十八番丸茂勇夫君登壇〕

○五十八番(丸茂勇夫君) 最近、景気がわずかながら持ち直してきたといわれていますが、都内中小企業が置かれている現状は、かつて経験したことのない長さの不況と、国の不良債権処理などの影響で、引き続き厳しい状況に置かれていることに変わりはありません。地元の工場や商店街を訪ねて話を伺ってみても、とんでもない、親会社は海外に行ったまま、仕事は全く来ない、もうかっているのは大手企業だけ、もうこれ以上は頑張れないなど、中小業者にとって深刻な現実を訴えるものばかりです。
 昨年、都内の企業倒産は過去最高を記録しましたが、その多くは中小企業によって占められています。こうしたもとで、都内の製造業はピーク時の六割の水準まで後退し、商店街でも空き店舗のない商店街を見つける方が困難となっているほどです。知事は東京をよみがえらせるといいましたが、そうであるならば、何よりも、経済の主人公である中小業者の生き残りと活性化のために知恵を出し、予算を重点的に配分するなど、あらゆる手だてを尽くすべきではありませんか。
 そこで、まず、製造業の支援について伺います。
 製造業は、他の産業に比べて大きな付加価値を生み出す産業といわれています。その製造業を支援し、活性化することは、ひいては経済の回復と拡大に大きく寄与するものとなることは明らかです。しかも、東京には、世界の首都にはない高度な工業の集積、すなわち、城南地域の機械、金属、都心部の印刷、製本、城東地域のアパレル、さらには、多摩地域の独立系製造業などが集積しており、これらの産業の動向が東京の経済を大きく左右します。これらの集積地域の支援は、それぞれの地域特性によって異なりますが、きょうは私の地元である城南・大田地域の機械、金属の支援に絞って伺います。
 知事は、所信表明で、ナノテクノロジーの振興について触れましたが、この問題は、私が昨年の第一回定例会で取り上げたように、二十一世紀の製造業の生き残りのかぎを握っているといって過言でない、可能性を秘めた産業分野です。既に都内のある企業は超微細穴加工技術を開発して、ナノテクノロジー関連部品の開発から加工の受託、販売まで行っている例も生まれています。
 こうした中、都は、ナノテクセンターを城南地域に設置し、ナノテク産業の拠点としていくことを明らかにしましたが、その点で城南地域では既に幾つかの中小企業のグループがナノテクに取り組みを始め、ある企業グループではカーボンによるナノチューブの研究会を開催し、製品の開発に取り組む企業が生まれており、それらの取り組みを促進するものとして歓迎するものです。
 また、ナノテクを産業として定着させるには、開発された新技術を製品化する生産現場が欠かせません。その点で、城南地域は、設計図を紙飛行機にして飛ばせば、数日で製品となって帰ってくるといわれるように、高い製品開発能力と技術、それを製品として生産に上せるまで、フルセット型の工業集積があります。これこそナノテクノロジーの拠点としての優位性というべきものです。
 そこで、城南地域をナノテクノロジーの世界的拠点として発展させるために、地元区や地元工業団体、大学、試験研究機関による協議会など、一体的な取り組みを推進するための体制を確立することが急がれていると思いますが、知事の見解を伺います。
 ナノテクを産業として成長、定着させるためには、都が独自に実施している工業集積地域活性化事業が注目されます。また、同事業の指定を受けた板橋区では、その経験を生かして、地域の工業資源に着目した産学公連携、異業種交流などのネットワークづくりを集中的に支援する地域資源活用型産業活性化事業をスタートさせています。二十三区区長会は、来年度予算要望の中で、この集積活性化事業が来年度で終了することについて、事業の継続を強く要望していることを重く受けとめる必要があります。
 ナノテクノロジーを初めとする新技術や、板橋区や北区の地域資源活用型産業活性化事業など、新しい工業のあり方などを踏まえた二十一世紀型の工業集積地域活性化事業の立ち上げを提案するものですが、知事の所見を伺います。
 次に、地域商業の活性化です。
 私の地元、大田区では、この十年間に、大規模な工場跡地への郊外型大型店などが相次いで進出し、大型店が五十店舗から七十八店舗、実に一・六倍にふえ、逆に、小零細商店を中心に小売店舗は一千軒も閉店に追い込まれました。コンビニを初めフランチャイズ産業の影響も深刻です。このような無秩序な大型店や大手フランチャイズの進出を規制することとともに、このような厳しい状況のもとでも頑張っている商店街の支援が欠かせません。
 例えば、大田区商店街連合会は、商店街の生き残り対策の一環として、区の委託を受けて高齢者の紙おむつ宅配事業に取り組んでいます。これは、以前、大手デパートがやっていたものですが、要らなくなった紙おむつをなかなか回収に来てくれないなどの苦情に対応するために、小回りのきく商店街が引き受けることにしたものです。実際に、地域の商店であれば、どこに高齢者が住んでいても対応でき、紙おむつを保管できる倉庫を持っているお米屋さんや酒屋さんなどが参加しています。この事業は、高齢者や、高齢者を抱える家庭で大変喜ばれており、また、区商連としても委託事業費の収入を商店街振興に生かせることで助かっています。
 また、ある商店街では、八百屋さん、魚屋さん、肉屋さん、豆腐屋さんなどが共同して、特別養護老人ホームの食材提供を行っています。これは、これらの公の施設の場合、大抵は大手の給食業者に委託され、食材などの納入は一括して他の地域から行われることが少なくありません。その点、地域の商店が共同で参入することで、青果、食肉、鮮魚の生鮮三品の小売店が新鮮で安心できる食材を提供したり、給食サービスを行うことができるようになります。
 高齢者の紙おむつ宅配事業など商店街が自治体と連携して行う事業や、業者の共同による給食デリバリーなどの事業は、商店街と地域社会の活性化に大きく貢献するものと考えますが、どうか。また、その事業を実りあるものとするために、新・元気を出せ商店街事業を初めとする商業支援予算の大幅拡充、輝け店舗支援事業の業者負担の軽減などを提案するものですが、答弁を求めます。
 都は、一昨年から、各区市町村に商店街の振興プランを作成させました。依頼を受けた各自治体では、島の四つを除いてはすべてのところが振興プランを策定しました。それぞれ実態調査や関係団体からの聞き取りなどを行い、時間をかけてプランを策定したのです。私どもはそのすべてのプランを取り寄せ、つぶさに検討させてもらいましたが、そこには地域の特性を生かしたさまざまな振興策が盛り込まれており、まさに宝の山といってもいいほどです。
 例えば、商店街のポケットパークや、休息ベンチの設置、駐車場確保や整備、駅と商店街を結ぶコミュニティバスの運行、地域の製造業と連携した地域ブランド品の製品の開発、一点逸品商品の運動、装飾灯やアーケードの電気代補助、商店街事務所の運営費補助など、多種多様です。これらは実際の商店街の要求に基づいてプラン化されたもので、行政の施策として実現させれば、商店街に大歓迎されることは間違いありません。ところが、都は、これらの事業としての本格実施について中止してしまいました。
 これらの各区市町村が立てた商店街振興プランに基づく自主的事業を財政的に支援することは、これまでの商店街を縦から支援する新・元気を出せ商店街事業や、個店を支援する輝け店舗支援事業などの線と点との支援に、新たに面的な支援の仕組みを加えることになり、三位一体の支援が可能となります。改めて区市町村商店街総合活性化支援事業の事業化を求めるものですが、どうか。答弁を求めます。
 フランチャイズ加盟店や大型店などの商店街加盟と商店街活動への非協力の問題について、我が党は、知事に対し繰り返し対策を要望するとともに、日本チェーンストア協会、全国スーパーマーケット協会、さらには中小企業庁に対しても申し入れも行ってきました。この取り組みはあちこちの商店街で反響を呼び、大田区の商店街連合会は、大田区に対して、商店街空き店舗への大型店やコンビニなどのチェーン店が出店する場合、商店街振興のために商店街に加入し、協力する働きかけと、まちづくり条例で応分の負担と協力を義務づける方策をぜひ検討してほしいという要望を行っています。東京都商店街振興組合連合会も強く要望していると聞いています。
 フランチャイズ加盟店や大型店などの業界との話し合いの場をつくるのは当然ですが、大手フランチャイズや大型店の地域商業活動への協力の義務づけなど、共存共栄のための法制化を国に要望すべきと考えるものですが、どうか。また、都として関係業界への申し入れを直ちに行うとともに、条例とルールづくりを進めることを強く求めます。答弁を求めます。
 都の商工業の施策について、どれだけの都民、業者の方が知っているのでしょうか。その点でホームページは、どこからでもチェックできるので、情報源として重要です。しかし、産業労働局のホームページは、普通の都民や業者の皆さんが開いて見るには少し専門的過ぎて、なかなか見たい情報が得られない嫌いがあります。
 そこで、産業労働局のホームページを改善し、商店街やものづくりなどのテーマごとの、易しく、使い勝手のよいホームページを立ち上げることを提案するものですが、どうか。答弁を求めます。
 最後に、消費税についてです。
 小規模、零細業者への消費税の免税点の引き下げは、これまでの非納税者の六割から七割が該当するといわれ、ある会計事務所が試算したところでは、一業者当たり約三十七万円の負担になるということです。また、事務が煩雑になり、手がとられます。そのため公衆浴場や小さなお店屋さんなどから、お店の存亡にかかわる問題だとの声が寄せられています。
 知事、消費税の免税点の引き下げを中止するよう国に要望するとともに、都として、緊急の影響調査を行うこと、また、当面の対策として、消費税の免税点引き下げに伴い減収となるなど打撃を受ける中小業者への支援の方策を検討することを求めるものです。所見を伺います。
 最後に、東京都の中小企業対策予算は、年々減らされ、石原知事のもとでも二割を超える七百九十一億円も削減されてしまいました。知事が東京の再生をいうのであれば、こうした姿勢を改めて、必要な予算を確保し……

○議長(内田茂君) 丸茂勇夫議員に申し上げます。
 発言時間は既に終了しております。速やかにおやめください。

○五十八番(丸茂勇夫君) 経済の主人公である中小企業への思い切った支援を行うことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 丸茂勇夫議員の一般質問にお答えいたします。
 工業集積地域活性化事業についてでありますが、今、東京のものづくり産業を取り巻く環境は劇的に変化しておりまして、ある種の企業にとっては危機的な状況であると思います。私は、かつて、衆議院に移りました三十年ぐらい前のときに、選挙区でありました品川区、それから大田区の一部は、日本の中で豆電球の生産地として有名でありましたが、もっと安い製品が香港から出回るようになりまして、一年でほとんどつぶれました。ただ、やっぱりそういう方々は、その流れを察知して、転業しますか、新しい製品に切りかえて、今日なお続いていらっしゃる方もおられますけれども、いずれにしろ、製品への需要の社会的変化というものは否めないと思います。
 しかし、近年、一方では、産業集積の内容が変化しつつあるのに伴って、アニメであるとかゲームソフト制作などのソフトなものづくりの台頭や、系列取引の崩壊に対応した業種間の連携による新分野への展開、ナノテクノロジー、ITなど先端技術の応用など、新しい息吹も生じております。
 ちなみに、平成八年から十三年度にかけましての都内の事業所の中での製造業の従業員の数は二割以上減少しておりますが、逆にソフトウエア業の従業員の数は、いずれも六割以上ふえているわけでありまして、こういった流れも踏まえまして、いずれにしろ、ものづくりというのは必要でありますから、ものづくり産業の集積施策について、中小企業振興対策審議会にも諮問し、幅広く検討中でありまして、その答申を受けて、都もできるだけの努力をするつもりでございます。
 他の質問については産業労働局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、ナノテクノロジーについてでございますが、城南地域は、微細加工技術を初めとする高度な技術力を持つ中小企業が集積している地域であり、来年度の都の重点事業といたしまして、お話がありましたナノテクノロジーセンターを城南地域に設置することとしております。その研究成果を中小企業の技術革新につなげ、東京のものづくり産業の強化を図ってまいります。
 次に、商店街による高齢者向け事業などについてでございますが、商店街や個店のグループがお話のような取り組みを行う場合は、新・元気を出せ商店街事業や、輝け店舗支援事業の補助対象としているところでございます。また、地域商業の活性化に係る予算は、今年度、大幅に拡充しております。また、輝け店舗支援事業の補助率の引き上げ等につきましては、考えておりません。
 次に、区市町村の商店街振興プランに基づく財政支援についてであります。都は、これまでの商店街振興施策を、本年度から新・元気を出せ商店街事業などに再構築を図り、区市町村が策定いたしました振興プランに基づく、商店街の自主的、意欲的で多種多様な取り組みに対して積極的に支援しているところでございます。
 次に、フランチャイズ加盟店等の地域商業活動への協力についてでございますが、商店街への協力につきましては、個々のフランチャイズ加盟店などの自由な意思により決めるべきものでございまして、強制すべきものではないと思っております。したがいまして、都としては、国に法制化などを働きかけるなどの対応は考えておりません。
 次に、産業労働局のホームページについてでございますが、当局では、ホームページの内容が多岐にわたり、できるだけ利用者にとって常に新しく有益な情報提供となるように心がけております。最新の情報を提供するコーナーや、時の話題を取り上げたトピックスコーナーなどに多くのアクセスがございます。今後とも、ビジュアル化を図るなど、さらにわかりやすい、アクセスしやすいホームページを目指しまして、内容の充実に努めてまいります。
 最後に、消費税の免税点引き下げ中止の国への要望等についてでございます。平成十四年度の政府税制調査会答申におきましては、これまでの事業者免税点制度に対する国民の疑念払拭及び諸外国との均衡を図る観点から、免税事業者の割合を相当程度縮小することとされました。こうした答申の趣旨にかんがみ、十五年度に制度改正が図られたものであると認識しておりまして、新たな対応は考えてございません。

○議長(内田茂君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時四十八分休憩

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