平成十五年東京都議会会議録第十八号

○副議長(中山秀雄君) 六十番森田安孝君。
   〔六十番森田安孝君登壇〕

○六十番(森田安孝君) まず、震災対策について伺います。
 東京及び周辺の活断層は、立川断層帯が有名ですが、他に荒川断層、元荒川断層帯、東京湾北断層帯などが挙げられ、東京のまちは、まさに断層に囲まれたまちとなっております。
 活断層大地震のすさまじさは、阪神大震災が示しています。何の前ぶれもなく、突然縦揺れと横揺れが襲ってくるのが直下型です。切迫している直下型地震への対応は急務です。
 そこで伺います。
 第一に、さきに制定された東京都震災対策条例では、みずからの命はみずからが守る、自分たちのまちは自分たちで守るとなっており、自助、共助、公助の考え方が基本となっています。
 翻って、住宅街など日々の都民生活の現場に目を転ずると、高齢者や乳幼児を抱えた若い母親の姿が目立ちます。特に、都営住宅や供給公社の団地では、高齢者が圧倒的な比率を占めています。このような状況では、自助、共助とはいっても、いざ災害時には機能しないのではないのか、大変心配になります。社会環境の変化に対応しなくてはなりません。所見を伺います。
 第二に、そのためにも、最低限まちの安全確保が急務です。例えば、ブロック塀の安全性確認、窓ガラスや看板などの落下物への対応を早急に講ずるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 第三に、木造住宅密集地域の解決です。長い議論の経緯がありますが、今なお具体的解決への方途は見えていません。
 東京の地震で被害が一番多いと予測されるのは火災です。都の予測では、阪神大震災に比較して、火災の被害は五十倍になるともいわれています。住宅の不燃化、耐震性向上といっても費用がかかります。国は、耐震性に問題のある住宅の耐震改修支援事業を十四年度より実施しており、また、区市でも補助事業を行っております。都においても助成金制度の創設をすべきです。このことは、地域経済の活性化を促すとともに、まちの安全性の格段の向上に資するためです。あすに来るかもしれない地震に備えて、早急に制度を創設すべきです。所見を伺います。
 この問題の最後に、災害医療体制について伺います。
 テロ災害以外にも、近年では、多数の死傷者が発生する大規模交通事故や凶悪犯罪に関連する事件など、災害の形態も多様化してきており、いわゆる都市型災害への迅速な対応体制の整備が求められています。
 さきに発表された十六年度重点事業には、災害時救急医療体制の整備として、被災現場への派遣医療チーム東京DMATが挙げられています。このチームの具体的な活動と、実施に向けた今後の課題と進め方について伺います。
 次に、電子都庁に関連して伺います。
 あるパソコン専門誌が、全国自治体の情報化実態調査を行いました。回答のあったのは二千百三十八の市区町村です。その調査結果によると、九七%の自治体が公式のホームページを持ち、五二%が一般行政職員一人につき一台のパソコンを導入していることが明らかになりました。都もホームページを持ち、一人一台の実現を目指していますが、現在の状況と今後の取り組み方針について伺います。
 第二に、行政のIT化で一番の課題は、セキュリティーとアクセシビリティー、わかりやすさ、使いやすさであると思います。
 個人情報などさまざまな重要情報を持っている自治体のセキュリティーは、最重要の課題であります。世田谷区役所のパソコンがウイルスにやられたのは耳新しいことです。また、宇治市では、委託業者の社員が個人情報を持ち出し、名簿業者に売却するという事件が起きています。都におけるセキュリティー対策の状況と今後の方針について明らかにされたいと思います。
 また、今日まで都におけるセキュリティーにかかわる事件、事故はあったのか、伺います。
 第三に、パソコン廃棄に伴うデータの流出についてであります。四日市市では、業務に使用していたパソコンが壊れたため、自宅に持ち帰り、妻にパソコンを壊して捨てるように指示をした。妻は自宅前の道路に三度たたきつけて、ハードディスクが壊れ、データが消されたと考え、ごみ置き場に捨てました。ところが、通りがかりの男が拾い、持ち帰って操作したら、データが読み出せたそうです。
 都も、IT化初期から相当の時間が経過し、廃棄したパソコンも多くあると思います。都及び外郭団体を含めた関連機関のパソコン廃棄は慎重を期すべきです。これまでの処理の実態と今後の考え方について伺います。
 第四に、環境管理のISO一四〇〇〇と同様に、ISMS、いわゆる情報セキュリティー管理システムがあります。これは、当該組織が情報管理の有効性を維持するための体制のことで、情報の保管方法やウイルス対策、障害発生時の計画など、さまざまな要素から成っています。幾つかの自治体は、既にこの考え方に基づいて措置を講じています。先進自治体を自認する都は、都民のプライバシーを守るためにも、ぜひISMSの取得を目指すべきであります。所見を伺います。
 第五に、アクセシビリティー、いわゆる使いやすさについて伺います。
 知事は、東京都公式ホームページをごらんになったことがあるでしょうか。ホームページは都の情報発信手段として大変に重要なものです。複数の知人に聞いたところ、共通した感想は、ごちゃごちゃしていて見にくいということです。東京都の膨大な情報を落ちのないように掲載したいという意気込みは理解できますが、工夫が必要です。知事の所見を伺います。
 第六に、行政のホームページは、あらゆる年齢層、視力障害を初め障害を持った方たちが情報を得るために活用しています。そこで大切なのは使いやすさです。東京都の公式ホームページは、視力障害者のために音声変換や、高齢者などのために文字の拡大方法も表示し、文字が読みにくくならないよう、文字の色と背景の色にコントラストを持たせています。また、外国の人にとっても貴重な情報源です。せめて英語版だけでも整えるべきです。
 しかし、各局や外郭団体のホームページでは、残念ながら、このアクセシビリティーの考え方が徹底されていないようです。東京都関係のすべてのホームページで実施すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、介護保険サービスなど福祉サービスを提供している事業者が外部の第三者から評価を受ける仕組みである福祉サービス第三者評価制度が、本年度から本格的実施が始まりました。この制度により、サービス利用者は、さまざまな事業者のサービス内容を比較して施設を選択することとしています。
 具体的には、都の研修を受けた評価者が、特別養護老人ホームなどのサービス施設を評価項目ごとに五点法で毎年評価し、結果をホームページ上に発表します。それを見て入所者及び家族が施設を比較し、入所施設を選択するという制度です。そのため、第三者評価制度は大変に必要性の高い制度だと思います。この制度の健全な発展のために、以下質問をいたします。
 第一に、この評価を参考にして利用者は施設を選択することになっていますが、現状は、待機者がたくさんいる状態で、選択どころではありません。このような状況で第三者評価制度は有効に機能するのか、まず伺います。
 第二に、この評価を受ける場合、評価を実施する評価機関の会社などに評価料を支払いますが、例えば、特別養護老人ホームの評価には六十万円程度がかかりますが、都は、この評価のために上限六十万円の補助制度をつくっています。したがって、評価を受けるこれらの施設は、自己負担ゼロで受けることができるような仕組みになっています。十五年度は、それぞれの施設はどの程度評価を受ける予定なのか伺います。
 また、この補助制度は来年度以降も継続していく考えか伺います。
 第三に、評価の結果、各評価項目において低い評価が出た場合、都は改善の指導をすべきであります。また、評価者にはさまざまな経歴の方がいます。当然、評価に個人差があると思います。でき得る限り公平を期すべきであります。所見を伺います。
 最後に、都立永福高校の跡地利用について伺います。
 第二次財産活用総合計画が発表され、都有地や建物を他に転用を図るなど積極的に活用する方針が示されました。知事も、グループホームの整備促進に都有地の積極活用を打ち出しました。これに関連して伺います。
 杉並区では、都立永福高校と都立桜水商業高校が統合し、新たに杉並総合高校が誕生します。一方、比較的近くにある都立中野養護学校は、生徒の増加で手狭になっています。そこで、移転であいた、駅からも近い永福高校の跡の一部に中野養護学校の高等部を移転できないかと、関係者から強い要望が出ております。ぜひ実現に向けた検討をしていただきたい。所見を伺って、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 森田安孝議員の一般質問にお答えいたします。
 都庁におけるITの問題でありますけれども、私、就任早々、自民党の近藤議員から、質問というか、痛烈なご批判をいただきました。調べてみましたら、都庁のIT機器の装備の水準は全国でびりから二番目でありました。鋭意、それ以来努力をしてまいりましたが、鈴木さんの時代にこの都庁のITのスキームをアドバイスしてつくられた唐津一先生にお聞きしましても、あの当時としてはいいものをつくったつもりが、全然その後、改良努力しておらぬということで、その失地を回復するためにやってきたつもりでございます。
 ホームページについてでありますけれども、東京都のホームページは、インターネットの普及に伴いまして、都民にとって身近な情報源になっていると思いますが、要は内容であります。実は昨年の八月に、専門家の意見も聞きましてリニューアルをいたしましたが、ホームページに詳しい私の友人の評価によりますと、以前に比べて非常にすっきりして使いやすくなったということでございました。ウェブマガジンなどでの評価も非常に高いようで、自治体の中ではトップクラスにまで来たのではないかと自負しておりますが、全国広報コンクール都道府県部門で総務大臣賞も受賞したようで、こんな賞は余り当てになりませんけれども、ユーザーの嗜好にかなうように、今後もさらによいものにするよう、担当局に指示をしてまいります。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 都立中野養護学校の移転についてのお尋ねでございますが、現在、知的障害養護学校におきましては、児童生徒数の増加に伴いまして、普通教室の確保が大きな課題となっております。
 東京都心身障害教育改善検討委員会の中間まとめでも、改善の計画化に当たっては、現有の教育財産を最大限に活用することが必要であるとの提言がなされております。都教育委員会としましても、今後、最終報告を踏まえまして、盲・ろう・養護学校の規模と配置の適正化を図っていく必要があると考えておりまして、その具体化に当たっては、ご提案の趣旨も含めて検討してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 震災対策及び電子都庁に関します六点の質問にお答え申し上げます。
 初めに、社会環境の変化に対応しました震災時におけます自助、共助についてでございますが、震災から生命、財産を守るためには、自助、共助の考え方に基づきます住民みずからの取り組みは不可欠でございます。
 このため、都は、区市町村と連携いたしまして、正しい防災知識の普及や防災訓練の実施などを通じまして、都民自身の防災行動力の向上と、家族や地域の人々による助け合いの仕組みづくりに努めてまいりました。
 今後とも、町会、自治会などで構成されます防災市民組織の活性化や、地域、企業、ボランティアなどによります地域ぐるみの連携協力など、社会環境の変化に対応いたしました取り組みが促進されますよう、必要な働きかけを行ってまいります。
 次に、電子都庁推進に係りますTAIMSパソコンの配備状況についてでございますが、平成十三年度には九千五百台のパソコンを配備し、本庁職員一人一台体制といたしました。
 また、事業所につきましては、平成十四年度、平成十五年度の二カ年で約一万三千二百台を配備中でございまして、平成十六年度も引き続き配備を進める予定でございます。
 この結果、公営企業も含めまして、TAIMSパソコンを必要といたします職員のほぼ八割に配備される予定でございます。今後、必要な部署につきましては、速やかに配備を進めてまいります。
 次に、情報セキュリティーに係ります事件、事故及び対策についてでございますが、東京都においてこれまで発生した主な事故は、事業所のホームページの改ざん、都ホームページへの個人情報の掲載、コンピューターウイルスの感染などがございます。いずれの場合におきましても、直ちに対応し、全庁的に周知徹底を行い、再発防止に努めてまいりました。
 今後とも、平成十四年四月に策定いたしました東京都情報セキュリティーポリシーに基づきまして、情報セキュリティーの確保に万全を期してまいります。
 次に、パソコンの廃棄、処理についてでございますが、東京都では、データを削除してから廃棄することを規定上に明記しております。廃棄の際には、データを電子的に完全に消去するか、ハードディスクを物理的に破壊することによりまして、情報の漏えい防止に努めております。
 今後も、関連部署を含め、パソコンの廃棄に当たっては、情報漏えい防止を徹底してまいります。
 次に、ISMS、情報セキュリティー管理システムについてでございますが、ISMSは、情報の保管方法やウイルス対策など、情報セキュリティー対策の妥当性を第三者機関が検証する制度でございまして、セキュリティーの確保に有効と考えております。
 しかしながら、費用が非常に多くかかります。都は、情報セキュリティーポリシーを全庁に徹底させることによりまして、情報セキュリティーの確保に努めております。ISMSの活用につきましては、今後、費用対効果も含めまして検討を進めてまいります。
 最後に、ホームページのアクセシビリティーについてでございますが、ホームページは多くの都民の方が活用されるものであり、使いやすさ、いわゆるアクセシビリティーは大変重要だと認識しております。
 都はこれまでも、東京都公式ホームページガイドライン等を策定いたしまして、都民が利用しやすいホームページの指針として周知を図ってまいりました。
 今後とも、関連部署と連携いたしまして、アクセシビリティーの向上に向け、必要な指導、支援を行ってまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) ブロック塀の安全性確認、窓ガラスや看板などの落下物への対策についてでございますが、ブロック塀につきましては、過去の地震におきましても多数倒壊しておりますことから、老朽化したブロック塀を生け垣やフェンスに改修するなどの取り組みを区市と協力して進めてまいります。
 また、窓ガラスや看板などにつきましては、昭和五十七年から平成二年までに、避難道路沿いの建築物約七万三千棟の実態を調査いたしました。その結果を受けまして、約八千七百棟の建物につきまして落下物対策の指導を行いまして、平成十四年度末で約九七%が改修を終えております。
 今後とも引き続き、区市とともに改修を指導してまいります。
   〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 木造住宅密集地域におきます住宅の耐震改修支援についてでございますが、震災時に倒壊のおそれのある住宅を改修することは、市街地の安全性を高める観点からも重要なことと認識をしております。
 耐震改修に対する支援につきましては、木造住宅密集地域の整備を行っております区市におきまして独自に実施しているところでございまして、さらに、国におきましても補助制度が創設されてございます。
 都といたしましては、こうした制度の周知を十分に図るとともに、国に対しまして制度の拡充を引き続き要望するなど、区市が事業を円滑に実施できるよう積極的に働きかけてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 東京DMATの活動と今後の課題等についてのご質問にお答えいたします。
 大震災等の自然災害を初め、NBC災害、大規模交通事故等の都市型災害では、災害現場での救急医療対応が直ちに求められるケースがございます。東京DMATは、専門的なトレーニングを受けた医師と看護師が資器材を携えて災害現場に急行し、その場で救命措置などを行う、我が国初の災害医療チームでございます。
 今後、出動基準、専門スタッフの確保とその訓練方法、必要な装備などにつきまして、関係機関などと早急に検討を進めてまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 福祉サービス第三者評価に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、福祉サービス第三者評価の有効性についてでございますが、第三者評価は、都が進めている福祉改革の重要な柱の一つでございます。このため、児童養護施設などの措置施設も含め、すべてのサービスの種類で実施することを目指すとともに、第三者の目でサービスを客観的に評価し、その結果を広く都民に情報提供しております。
 このことにより、今後、基盤整備が必要なサービスにおきましても、利用者はみずからのニーズに合った施設を選択でき、事業者間の競い合いにより、サービスの質の向上が図られると考えております。
 今後とも、第三者評価の一層の受審促進に努めてまいります。
 次に、第三者評価の受審についてでございますが、都は、本年度、第三者評価の早期の普及、定着を図るため、評価受審費用の補助制度を創設いたしました。こうした制度を活用し、現在、ほとんどすべての特別養護老人ホームで受審に向けた検討を行っており、その他の施設においても、約二百施設が第三者評価を受審する見込みでございます。
 さらに、来年度に向けて、重点事業として評価対象サービスを拡大いたします。また、評価受審を一層促進するため、特別養護老人ホーム経営支援事業や民間社会福祉施設サービス推進費補助などを活用した支援を検討してまいります。
 最後に、第三者評価と都の指導との連携等についてでございますが、第三者評価は、事業者みずからがサービス向上に向けまして、評価機関と契約をし、受審するものでございます。一方、都が行う指導検査などは、法令等の基準に加え、適切にサービスを提供しているかという観点から実施しているものでございます。
 こうした指導検査等に当たりましては、第三者評価の結果も活用していくことは、福祉サービスの質の向上を図る上で有効であると考えております。
 また、評価の信頼性を確保するため、評価者に対して、共通の尺度で評価できるよう、評価者養成講習に加え、毎年度実施するフォローアップ研修の受講を全員に義務づけており、今後とも、こうした取り組みの充実に努めてまいります。

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