平成十五年東京都議会会議録第十八号

○議長(内田茂君) 七十七番河西のぶみさん。
   〔七十七番河西のぶみ君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七十七番(河西のぶみ君) それでは、私から二つのテーマについてお尋ね申し上げます。
 まず第一は、介護保険制度の充実についてです。
 介護保険の施行状況は、各市区町村の努力もあって、ほぼ順調に推移をしております。本年四月の給付状況を調べてみますと、東京都の介護保険利用状況は高齢者一人当たりで見て総給付額一万六千五十六円、これは全国平均をやや下回っていますが、在宅サービスについては八千五百五十四円と全国六位となっており、飛躍的に伸びていることは評価できると思います。
 一方、施設サービスは、七千五百二円で全国三十八位とかなり低く、特に、老人保健施設と介護療養型医療施設の数が少ないこと、特別養護老人ホームも多摩地区や都外での利用が多いことなどの問題を残しています。
 もちろん、これからの高齢者介護は、生活の継続を尊重した個別ケアを地域で支えるという方向に方向転換しなければなりません。また、要介護と認定された方々の半数は痴呆症状があり、いたずらに収容型施設をふやすのでは、高齢者の尊厳を尊重することにはなりません。施設を整備する場合も、都心での個室ユニットケアを軸とした計画が必要となります。さらに、グループホームや特定施設など、介護力を持った居住サービスについて民間セクターの力を引き出す施策も求められます。
 しかし、東京都のグループホームの利用を見ますと、高齢者一人当たりの給付額は百三十六円、これは全国最下位の数字です。全国平均の四二%にすぎません。さらに、通所系サービスについても高齢者一人当たり千八百十六円で、全国平均の六九%。やはり全国最下位となっています。東京都の地価が高いことの反映でしょうが、極めて不名誉な数字といわなければなりません。グループホームや通所サービスは痴呆ケアの切り札でもあり、都民の利用意向も高いものとなっています。このまま手をこまねいていてよいものではありません。
 痴呆性高齢者グループホームについては、平成十六年度重点事業として、地域的偏在を解消し、短期的、重点的に整備するため、緊急整備三カ年事業を実施し、大増設を図ることが示されました。
 そこで、まず伺います。まだ痴呆性高齢者グループホームが一つも整備されていない区市町村は、七区九市十二町村と聞いています。痴呆性高齢者グループホームの設置主体は実際は民間事業者でありますが、整備がおくれている地域においては、区市町村みずからがもっと積極的に関与していく必要がありますが、東京都も区市町村の取り組みへの支援を強化すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 先日発表されたインターネット福祉改革モニターアンケートの調査結果を見ますと、約四割の人が、在宅で暮らし続けるためには、緊急時など必要なときにショートステイやデイサービスが利用できることが必要と回答しています。痴呆性高齢者グループホームだけではなく、短期入所サービスや通所サービス施設の基盤整備についても、区市町村が独自に工夫を凝らし、主体的に利用者ニーズに対応できるよう東京都は支援すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 さて、介護保険制度はスタートから五年後に制度改正することになっており、平成十八年四月から、改正された介護保険制度が運営されます。制度の見直しに当たっては、障害者施策と介護保険の統合を行うこととするかどうかが大きな論点の一つであると認識しています。障害者福祉の分野には、平成十五年度に支援費制度が導入され、介護保険と同じく、利用者が事業者との契約によりサービスを利用することになりました。しかし、この二つの制度は異なる点も多く、中でも最大の相違点は、支援費制度を支える財源が税であるため、社会保険方式である介護保険と異なり、国家財政、自治体財政の影響を受けやすいということです。支援費制度導入に当たり、サービス量を決定する区市町村は、それぞれ努力をしてサービスの充実を図ったため、利用が着実に増加をしました。その結果、区市町村の中には、補正予算を組んで対応せざるを得ないところもあると聞いています。
 こうした状況ではありますが、障害者福祉のさらなる充実のためにも、介護保険制度と若年障害者の施策統合について、単に財政面だけを論議するのではなく、両制度の違いを認識し、いかに調整していくかを十分議論していく必要があります。
 そこで、障害者全体を介護保険の給付対象とすることについて、都としてのご認識を伺います。
 介護保険は、行政がすべてを決める措置制度とは異なり、住民が参加する中から地域ケアシステムをつくり上げることを目指した制度です。住民が参加するためには、情報がわかりやすく公開されていなければなりません。都民が知りたい情報は、各市区町村のサービスのレベルはどのようなものか、きちんとしたケアプランはどれだけつくられているのか、どんなサービスが使われ、どんなサービスが不足しているのか、そういった政策づくりに必要な情報です。
 この九月八日、厚生労働省の全国介護保険担当課長会議で、介護政策評価支援システムの利用の推進が提案されています。このシステムは、各都道府県及び市区町村の介護保険運営状況を分析し、今後の政策づくりを支援するシステムですが、全国との比較、他保険者との比較が容易にできるツールでもあります。公開を前提としたシステムで、全国的な状況と地域特性が把握できます。現在まで、二千七百七十四保険者のうち八七%、二千四百九保険者が参加し、情報を提供しております。
 ところが、東京都のデータはゼロです。十二月一日現在、全国都道府県の中で全く情報を出していないのは東京都だけです。東京都のみが情報を公開しないということになります。東京都が欠けていれば、平成十五年九月現在で二百十一万人、全国の九%の高齢者の利用状況が空白になるわけですから、このシステムによる全国状況の把握が困難になります。
 東京都が独自の給付分析システムを開発していることは存じ上げておりますし、そのこと自身は評価をしております。しかし、それだけでは、全国の中での東京の位置がわかりません。この介護政策評価支援システムを通して介護保険に関する情報を公開し、区市町村、住民の政策づくりに役立てていただくよう、都内各区市町村に参加を働きかけることを強く求めますが、ご所見を伺います。
 東京都は、介護保険制度の見直しに向けた東京からの試案を発表しています。都として次期制度改正に向けた積極的な提案をされることは大変結構だと思います。ただ、介護保険はほとんどの事務が自治事務とされており、上乗せ、横出しサービスも認めており、市区町村の自由度のかなり高い制度となっています。
 例えば、試案にもある痴呆高齢者への二十四時間見守りサービスなどは、岩手県の釜石市が独自給付制度をつくっていますし、宅老所についても独自給付は可能なはずです。もちろん、費用負担において第二号保険料や国費の配分がないという問題はありますから、財政的な問題は残りますが、東京都がモデルケース的な給付の実験を行い、これをもって次期改正に反映させるというような取り組みも必要ではないでしょうか。
 より望ましいサービスを自治体が積極的に支援し、これを制度に反映させていくという東京都からの情報発信についても、何ができるかということについて検討を行っていただくことを要望して、次の質問に移ります。
 第二問でございます。未利用都有地の活用と公園整備についてお尋ねをいたします。
 東京都における一人当たりの公園面積は五・四平方メートルと、世界の大都市と比べても大変低い水準にあります。また、近年のヒートアイランド現象の原因の一つとして、都市の緑の減少が挙げられているなど、大都市東京においては、今ある緑を守り、さらに都市再生にあわせて新しい緑をつくり出していくことは喫緊の課題だと認識しています。
 平成十五年十月十四日に東京都都市計画審議会から、東京らしい緑をつくる新戦略について答申がなされ、多様な主体がさまざまな方法で緑をつくり出していくことを提言しております。
 まず初めに、首都東京における公園を初めとした緑の保全と創造について、知事の基本的な考え方をお伺いいたします。
 次に、東京のような大都市においては、都市の骨格となる大規模な緑は、都立公園がその役割を担うべきだと考えます。現在の都立公園全体の整備の考え方についてお伺いをいたします。
 ところで、狛江市に計画されている和泉多摩川緑地は二十ヘクタールを超える規模があり、多摩川との一体的な整備を図ることにより、親水空間を持った市のシンボル的な緑地として、また、スポーツ・レクリエーションの場として、さらには災害時における広域避難場所としてなど、多様な機能を持った緑の拠点を形成することになります。また、和泉多摩川緑地においては、現在の広域避難場所である多摩川の河川敷及び土手が洪水などの被害に遭った場合に備えて、防災機能を有した大規模公園として整備を行い、将来的には広域避難場所として位置づけるということが、平成十三年二月に狛江市が決定した都市計画マスタープランにはうたわれています。
 さらに、和泉多摩川緑地内には、都水道局材料置き場と原水処理場など、面積にして四・四ヘクタールの都有地がありますが、このうち材料置き場と原水処理場は現在は使用目的が完了しており、平成四年以降、その活用法が、都と地元狛江市との間で協議されてきました。その協議の中で、水道局用地を核に十ヘクタール分の都立公園化について、平成六年に都市計画局、建設局、水道局との話し合いが持たれ、平成七年には、都知事もこの方向で検討を進めようとの意向が示されました。
 これを受けて狛江市は、都の協力も得て、平成八年二月に和泉多摩川緑地の整備基本構想を策定し、都にも報告をしてまいりました。この年の七月に狛江市長が現市長に交代したわけですが、その後、現在に至るまで都立公園化は遅々として進んでいません。うやむやのうちに、一たん示された都立公園化の方向性はなかったかのような状況となっておりますが、都はどのように認識されているのでしょうか。私は、進展のネックになっているのは、東京都の財政事情に加え、市からの強力な働きかけもなく、要望書提出も行っていないなどの理由が挙げられると認識しています。
 こうした中、狛江市では、水道局材料置き場の廃止の方針を受けて、平成十二年から利用計画の検討を開始し、紆余曲折の後、ようやくことし三月に、財源の手当ても立っていない中、市は購入の方針を打ち出し、現在交渉中と聞いております。しかし、現実的には、市議会が都立公園化を求める意見書を提出し、市民からも同趣旨の要望が出されるなど、さまざまな動きが見受けられます。
 このように、錯綜あるいは混沌としている現状を考えたとき、これまでの経緯も踏まえ、和泉多摩川緑地公園の早期整備に向けて都の努力が重要だと思いますが、ご所見を伺います。どうかご誠意のあるご答弁をよろしくお願い申し上げます。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 河西のぶみ議員の一般質問にお答えいたします。
 首都東京における緑の保全と創造についてでありますが、かつてこの江戸東京は、庭園都市と呼ばれるほど豊かな緑と、川も含め、運河も含めた多くの水路に囲まれた、すばらしい都市でありました。初代の商工会議所の会頭の渋沢栄一さんは、この東京を何とかベニスのようなまちにしたいといったそうでありますけれども、川も運河も今ではほとんど三枚張りになりました。緑も枯渇に近い状況であります。
 いずれにしろ、歴史的な資産でもあります残された緑を、今に残る東京の風情として積極的に継承していくことが大切だと思います。
 現代の東京の緑は、さまざまな都市活動や都民生活と深くかかわっておりまして、都市の再生にあわせて、東京らしい新たな緑の創造や東京の顔となる景観づくりを行っていかなくてはならないと思っております。
 都はこれまで、都立公園の整備や幹線道路の緑化などを通じて、緑の質と量の拡大に努めてまいりました。こうした取り組みをさらに強力に進展させるためには、都や区市町村のみならず、都民や民間事業者などの多様な力を活用することが必要だと思います。
 都では新たに緑の新戦略として、まちづくりの手法を活用した公園整備や民設公園制度の創設などを考えておりまして、こうしたことで首都東京にふさわしい緑の保全と育成を図っていきたいと思っております。
 他の質問については、東京都技監及び福祉局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 公園整備につきましての二点の質問にお答えいたします。
 まず、都立公園の整備の考え方についてでございますが、公園緑地は、都市の風格を高め、都民に安らぎとレクリエーションの場を提供し、良好な都市環境を維持する上で重要な都市基盤でございます。
 都はこれまで、広域的な利用にこたえるため、水と緑のネットワークの拠点や、丘陵地の緑の保全に役立つ大規模な公園緑地の整備に取り組んでまいりました。
 今後とも、首都東京を魅力と活力にあふれた都市にするため、緑の東京計画と、ただいま知事がお答えいたしました緑の新戦略に基づき、水と緑の骨格軸の形成、防災公園の整備、さらに東京の顔となる庭園の再生などに事業の重点化を図り、公園緑地整備を推進してまいります。
 次に、和泉多摩川緑地についてでございますが、和泉多摩川緑地は、東京の西南部、狛江市の多摩川沿いに計画された面積二十ヘクタールの緑地でございます。計画区域内には、既に開園している市立公園を初め、国の施設や水道局の用地など八ヘクタールを超える公有地がございます。市は都立公園としての整備を要望しております。
 都はこれまで、和泉多摩川緑地における市の公園計画や公有地の利用などについて話し合いを行ってまいりました。都による緑地の早期整備は、将来管理者等の問題もあり、困難な状況にありますが、公有地の取り扱いなどについて、関係局と地元市との話し合いを継続してまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 介護保険制度に関します四点のご質問にお答えいたします。
 まず、痴呆性高齢者グループホームの整備に関する区市町村への支援についてでございますが、都は、これまでも、民間企業への独自の整備費補助を行うなど、グループホームの設置の促進を図ってまいりました。
 平成十六年度には、整備のおくれている地域における取り組みを一層推進するため、重点事業として、痴呆性高齢者グループホーム緊急整備三カ年事業を創設し、指定地域における民間企業への補助率を引き上げるとともに、区市町村が独自に行う整備費補助への支援を行うことといたします。本事業により、現行の整備計画を大幅に上回る平成十八年度定員四千人の実現を目指しまして、区市町村における取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、区市町村が行う在宅サービス基盤整備への支援についてでございますが、高齢者が介護が必要になっても地域で安心して暮らしていけるよう、在宅サービスの拠点となるショートステイやデイサービスなどの基盤整備につきましては、区市町村が地域の実情に応じて主体的かつ柔軟に取り組んでいく必要がございます。このため、都としても、これらの拠点づくりについて区市町村が独自に取り組む場合にも、新たに包括補助事業の対象とすることを検討してまいります。
 次に、若年障害者への介護保険の適用についてでございますが、検討に当たっては、制度の安定的な運営の確保及び障害者福祉の充実という二つの視点を踏まえる必要がございます。
 また、具体的な課題としては、介護保険制度と本年度から導入された支援費制度とでは、支給決定の仕組みや利用者負担の考え方などにおいて大きく異なる点があるなど、多くの論点がございます。このため、若年障害者への介護保険の適用につきましては、その実施時期を含め、多角的な観点から十分な検討が必要であると認識しております。
 最後に、介護政策評価支援システムへの参加についてでございますが、ご指摘のシステムにつきましては、システム立ち上げ当初、人口規模の大きな区市町村のデータが処理できないというシステム上の課題があったことや、都として独自のシステム開発を検討していたことなどから、都内の区市町村は参加を見合わせてきた経過がございました。
 しかしながら、現在は、システム上の課題が改善され、全国の八割を超える区市町村が参加したことから、都としても、全国とのデータの比較が可能である点など、このシステムの意義を改めて区市町村に周知し、参加を働きかけてまいります。

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