平成十五年東京都議会会議録第十七号

   午後三時四十分開議

○副議長(中山秀雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 百二十三番青木英二君。
   〔百二十三番青木英二君登壇〕

○百二十三番(青木英二君) 私は、都議会民主党を代表して、当面する都政の主要課題について、知事並びに関係局長に伺います。
 まず最初に、小泉内閣の掲げる三位一体改革に関して伺います。
 第二次小泉内閣の基本方針の一つである、地方のことは地方みずから決定する地方分権の実現に向け、補助金、地方交付税、税財源移譲の三位一体改革を進めるとの方針に基づき、厚生労働、農水などの各省において来年度の補助金削減計画を策定中でありますが、各省の案は、本来国の責任で行われるべきものを、負担だけ自治体につけかえたり、国に権限を残し、補助率を引き下げるだけの案が多いものとなっております。これらは、補助金削減計画を策定する上での前提となっている整理合理化方針の中で、既に廃止以外にも、国庫補助金として存続した上での制度の見直しや、運用方式の弾力化等といったものまで、広範な内容が含まれていたからにほかなりません。
 また、税財源移譲についても、基本方針では、基幹税を基本として移譲するとしただけで具体的な税目を挙げなかったことから、たばこ税という基幹税とはいえない税目のみが取り上げられ、移譲額も不十分であるなど、廃止、縮減に見合う財源の確保も不透明なものとなっています。
 こうしたまやかしというべき事態が生じているのも、国が作業を進めるに当たって、地方自治の原則を踏まえた改革の基本的な考え方を持っていないところにその原因があるのではないでしょうか。
 知事は、三位一体改革のあり方をどのように考え、今後どのように取り組むか、お伺いをしたいと思います。
 このような各省庁官僚の動きに対しては、全国の自治体が一致して国と戦っていく必要がありますが、十一月十八日の全国知事会、三位一体の改革に関する提言に際しては、東京都の意見が取り入れられぬまま、知事会の総意として発表されてしまいました。自治体間の足並みの乱れは各省庁官僚につけ入るすきを与えることとなるものであり、極めて残念といわざるを得ません。
 なぜにこのような事態に立ち至ったか、そして、今後、全国知事会に対して東京都としてどのように対応していくかをお伺いいたします。
 また、これまで連携した取り組みを積み重ねた八都県市首脳会議では、十一月十三日、神奈川県の松沢知事が、首都圏における広域的課題の解決に向けて、八都県市の中で広域連合の制度を活用し、首都圏連合を設置するとの考えを提案されました。広域連合制度を活用した首都圏連合は、これまでの八都県市の取り組みをステップアップし、執行機関としての広域連合の長と議決機関としての議会を持つ法定の組織であり、直接国から権限移譲を受けることができる組織であります。すなわち、自治体間連携にとどまらず、国から権限移譲を受け、国の出先機関を吸収し得る受け皿となり得るのであります。もちろん一朝一夕でできるものではありませんし、広域連合の形態をとらず、一気に道州制に向かうことも選択肢の一つでありますが、東京都としても検討に値する提案であると考えます。幸い、今回の首脳会議では、八都県市の広域連携の強化に向け、新たに八都県市の今後の広域連携の強化検討会議を設置し、検討を進めることとなりました。一歩前進でありますが、東京都としても積極的に取り組まれるよう求めておきます。
 次に、今後の都政運営について伺います。
 東京都は、去る十月に第二次財政再建推進プランを発表し、第一に、三千七百億円の財源不足を解決すること、第二に、経常収支比率を九〇%以下の水準に引き下げることを目標に掲げました。しかし、平成八年度の財政健全化計画、平成十一年度の第一次プランを通じて、絞りに絞り、乾き切ったぞうきんをさらに絞ろうという今回のプランは、極めて厳しいものといわざるを得ません。
 既に各局の予算要求状況が示されていますが、シーリングを踏まえてまとめられた各局要求でありながら、五千三百二十九億円もの財源不足が見込まれています。十一月二十七日には、三十事業、事業費二百十億円の重点事業がまとめられましたが、いいかえれば、これらの重点事業以外は今後の査定を通じて削減の対象となるということであります。
 しかし、都財政の状況はここにとどまるものではありません。第二次プランでは、十六年度、十七年度は臨時的、時限的な財源対策を講じる必要があるとしていますが、一兆円といわれる隠れ借金のうち、将来の都債償還に備えるべき減債基金は、十五年度末に五千三百四億円の積み立て不足に陥る見込みです。十六年度、十七年度に臨時的、時限的な財源対策として減債基金の積み立てを先送りすると、十七年度以降の都債償還に際しては、基金が不足する分、一般財源を都債償還に充てることになってしまいます。しかも、十九年度以降には、職員の大量退職を初めとした歳出増要因が多く控えています。また、第二の目標である経常収支比率九〇%以下を達成するためには、十四年度決算ベースで見ても、さらに二千二百億円前後の財源を確保する必要があります。
 このような状況のもとで、知事はどのような姿勢で平成十六年度予算編成に当たられるお考えかを伺います。
 今述べましたように、都財政は、十八年度までに財源不足を解消したとしても、税収の大幅な伸びがなければ、それは終わりではなく、次の財政危機の始まりを告げるにすぎません。そうであるがゆえに、第二次プランでも、中長期的視点に立った見直しを求め、そのための布石の一つとして付表が付されているのだと考えます。
 そこで伺いますが、みずからが率先して各局への分権、規制緩和等の自己改革を断行するとして、意欲的な財務局改革行動計画をまとめられた財務局長は、第二次プランの目標達成とその後の都財政の健全化に向けて、どのような取り組みを進められるかをお伺いをいたします。
 また、財政再建のための歳出削減がそのまま行政サービスの低下につながってしまっては、都民の理解を得ることはできません。そうした事態を招かないためにも、財務局の行動計画があるのであり、これらの個々の行動計画を包含した第二次都庁改革アクションプランがあるのだと考えます。この第二次プランに示された施策は、二百八十九項目の多岐にわたるものであります。一部には疑義がないわけではありませんが、都民のニーズを踏まえながら、これらの施策が可及的速やかに実施されることを望むものであります。東京都として今後どのようにこれらの施策を実施されようとお考えか、進行管理も含めて所見をお伺いをいたします。
 同プランの施策の一つに、これまでにも再三伺ってきました第二次東京都地方分権推進計画の着実な推進が盛り込まれていますが、これは、平成十二年度に策定されながら、思うように進捗していない状況にあります。このような計画には事務、権限の移譲に当たっての財源措置が明記されておりますが、実際に事務、権限を移譲される市町村の側には、財源への保障が不十分であると受けとめられており、それが市町村側が事務、権限の移譲に二の足を踏む要因の一つとなっています。
 そこで、例えば本年三月にまとめられた町田市の、東京都からの事務移管に伴う包括財源移譲方式に関する研究報告書では、東京都は都と市町村の間の分権の確立のために、都補助金などという形ではなく、都、市町村の共有税の形で税源を移譲し、分権改革の先頭を走るべきとして、東京都市長会が昨年一月、国に対する緊急要望として出した「今、求められる税財源移譲」では、新たな財政調整制度を設ける必要があるとしています。
 こうした状況の中で、市町村みずからが自治能力を強化充実し、財源を確保するためにも、市町村合併の自主的推進が望まれますが、同時に、市町村に事務、権限を移譲することを目指している分権推進計画を進めていくことが必要と考えます。この計画を推進するために東京都はどのような対応をしていくのかを伺います。
 次に、新銀行構想について伺います。
 東京都は、これまでの制度融資に加えて、CLO、ローン担保証券と、CBO、社債担保証券を発行することにより、中小企業への資金供給の幅を広げてきました。しかし、都内の中小企業向け融資の総額は、平成十五年三月末で約六十五兆円、この二年間で十四兆円も減少しており、こうした取り組みにもかかわらず、本当に資金を必要とする中小企業には資金が届いていないのが現状であります。
 産業構造を底辺で支える中小企業が、不良債権処理を優先する既存金融機関の姿勢と長引くデフレの中で、存立基盤さえ脅かされている現状は、東京都の地域経済にとって危機的な状況であります。ここにキャッシュフローに着目した三つの戦略的融資モデルを掲げる新銀行に期待が集まる要因があるのでありますが、その一方で、民業圧迫を懸念する声も少なくありません。新銀行が民業を圧迫することなく、信金などとの有機的な連携のもとで共存共栄を図ることが大きなかぎとなりますが、ご所見を伺います。
 さて、さきに破産した足利銀行は、バブルの崩壊により悪化した経営を栃木県などの出資で支えられてきましたが、地域経済が長期の不振から脱却できず、今回の破産につながってしまいました。その結果、栃木県などの出資金は実質ゼロとなってしまいました。
 今回の新銀行については、知事は、税金の再投入はしない旨の発言をされていますが、一方で、東京都の信用力という表現も使われています。中小企業支援という設立目的から考えると、通常の銀行よりもリスクを多くとることになりますし、東京都の信用力も、新銀行が経営不振に陥っても都財政が支えるがゆえの信用力であります。これらのことから、いずれは税金の再投入もあり得るのではないかとも懸念されています。新銀行と東京都の関係はどうなるのか、お伺いをいたします。
 次に、パリバ信託銀行の買収について伺います。
 これまで東京都は、銀行免許の取得に向けて着実に準備を進めていると説明されましたが、このほど突然、パリバ信託銀行の買収が持ち上がってきました。なぜ買収という手法を選択したのか、その具体的なメリットについて伺います。
 その他、新銀行であるがゆえに融資判断のためのデータの蓄積がないこと、いわゆる目ききができる人材をどう確保するかといった問題もありますが、それ以上に、現在の金融庁の金融検査マニュアルをクリアできるのかという根本的な問題もあります。東京都は、十分な貸倒引当金を積むので大丈夫だというお考えですが、新銀行が融資実行後、金融庁の判断で、それらの貸出債権が要注意先あるいは要管理先に区分されると、足利銀行のように、その時点で大幅な引当金不足に陥りかねません。東京都は新銀行の設立に当たって、金融検査マニュアルの改訂を求めるのか、それとも、現行の金融検査マニュアルであっても十分であるのかをお伺いいたします。
 次に、公共事業にかかわる国と東京都との関係について伺います。
 東京都が十月に発表した第二次財政再建推進プランでは、国の仕組みを変えるとして、道路や河川の公共事業にかかわる課題について言及しています。例えば国直轄事業負担金については、計画段階からの協議が制度化されていないことなどの問題点を指摘し、また、首都高速道路公団への出資金等についても、東京都の意向を反映せずに制度変更がなされていると判断をし、その改善を求めています。
 特に首都高速道路公団への出資については、国土交通省が平成十六年度の概算要求で、出資率を三五%まで引き上げる要求をしましたが、東京都に対しては事前に協議さえなく、石原知事が定例記者会見で激怒したように、私たちも極めて問題があると考えています。都市計画局の十六年度予算要求で出資増の要求を見送っているのは当然ではないでしょうか。
 私は、これら具体的に挙げられた事項について、国に対して改善を働きかけていくことはもとより、首都高への出資増は見合わせるなど、国の仕組みを変えるために強い姿勢で臨んでいくべきと思いますが、いかがでしょうか。
 公共事業に関して、今定例会では八ッ場ダムの基本計画の変更に関する提案がなされています。八ッ場ダムのそもそもの計画は、今から五十一年前の昭和二十七年にまでさかのぼります。しかし、二十一世紀を迎えた今日、社会経済状況が大きく変化する中で、国民、都民の公共事業、とりわけダム事業に対する考え方も大きく変わっています。東京都は八ッ場ダムの必要性を水源確保に求めていますが、現時点でさえ水需要の実績と予測とに大きな乖離があり、八ッ場ダムが完成するであろうころには、人口減少や他の水源の利用転換などにより、その乖離はますます大きくなるとの指摘もあります。その上、第五次フルプランにおける水需要予測がなかなか明らかにされない中で、ダムの必要性だけが今日まで強調されています。
 十二月五日、私たち都議会民主党は、七名の議員をもって現地を視察してまいりましたが、JR吾妻線、国道一四五号線、県道林吾妻線の大規模トンネル工事を伴うつけかえ工事が急ピッチで行われている状況や、水没関係五地区連合補償交渉の結果として進められている代替地造成工事、既に完成している長野原町立第一小学校をつぶさに視察をしました。しかし、八ッ場ダムはいまだに本体工事には着手をしていません。
 また、視察後、単に反対するのではなく、真摯にダムの必要性を検討する、八ツ場ダムを考える会の方々の声も聞きました。
 石原知事は所信表明の中でいみじくも、太政官制度以来連綿と続く官僚体制は、環境の変化にもかかわらず、一たん立案した計画をそのまま達成しようとして美しい国土を傷つけてきたと述べておられます。社会経済状況が変化する中で、また、水需要予測がなかなか明らかにされない中で、八ッ場ダムの必要性について石原知事はどのように認識をされているか、ご見解を伺います。
 八ッ場ダムの事業費は、かねてより二千百十億円では済まないといわれていましたが、これが改めて四千六百億円に膨れ上がると聞いて、国の事業費算定のずさんさに怒りを禁じ得ません。国のずさんなやり方を見れば、四千六百億円の事業費が今後さらにふえることが予想され、これが水道料金の値上げにつながれば、都民の理解は到底得られません。東京都は、現地に職員を派遣するなど、事業費を検証したとしていますが、埼玉県では調査委員会を設けて独自の試算を行うとしています。石原知事は、二倍以上に膨れ上がった事業費に本当に納得し、請求どおり負担するつもりなのか、事業費増加についてご所見を伺います。
 八ッ場ダムでは既に一千五百億円余が費やされていますが、だからといって、事業が正当化されていいわけではありません。私たちは、むだな公共事業は中止するという立場から、どこまで水不足のリスクを背負うことができるのか、建設を中止したことで生じるメリットとデメリットはどの程度かなどを比較考量し、この事業がむだであるのか、むだでないのかを冷静に判断していく必要があると考えています。水不足のリスク以外に、東京都は、八ッ場ダムの事業から撤退した場合のメリット、デメリットをどのように認識しているかをお伺いをいたします。
 今回、八ッ場ダムの事業費変更を議会に提案しているのは、関係する一都五県のうち、東京都と栃木県だけで、他の自治体は提案を見送っています。事業費変更に伴う予算の支出は平成十七年度からであります。ましてや八ッ場ダムの必要性の根幹をなす水需要予測がもうじき公表されるであろうことなどから、東京都がなぜ他の自治体に先駆けて国の事業費増という要求に唯々諾々と応じようとするのか理解ができません。八ッ場ダムに関する国への回答については、水需要予測についての十分な論議を踏まえた上で判断することも一つの選択肢であると考えます。今回提案した理由についてお伺いをいたします。
 平成元年から平成十二年度末までに全国において六十四のダムが中止になっており、東京都においても、今回提案されている八ッ場ダムだけでなく、東京都が参画する水源開発全体について、この際徹底的に見直しをしていくべきと考えます。
 現在東京都が参画しているダム事業は、八ッ場のほかにも、埼玉県の滝沢ダム、群馬県の戸倉ダムがあります。
 このうち、特に戸倉ダムについては、本格的な工事に至っていないばかりか、尾瀬の自然環境に著しい影響を与えるものと危惧するものであります。戸倉ダムの事業予定地は尾瀬の登山口の一つである大清水の間近にあり、また、その一部が日光国立公園内に位置するとともに、豊かな生態系が保たれています。さらに、この地域を流れる片品川上流は、ミズバショウやニッコウキスゲの美しい尾瀬を控えているのです。私は、こうした自然に囲まれる貴重な地域に、高さ百五十八メートルというコンクリートダムをつくることこそ、むだな公共事業であると考えています。既に埼玉県が戸倉ダムの建設費の負担を見送ることを決めましたが、東京都においても、戸倉ダムについては撤退を決断すべきと考えます。知事のご所見をお伺いをいたします。
 次に、物流対策について伺います。
 いうまでもなく、物流対策は東京都の、否、日本の産業を支える重要な政策課題であるにもかかわらず、関連する行政のセクションがばらばらな上、陸海空のそれぞれの事業者や荷主など、さまざまな業態の人たちが関与していることから、十分な連携ができず、効率的で総合的な物流対策に取り組んでこられませんでした。こうした状況を打開すべく、石原知事がさきの所信表明において、総合物流ビジョン(仮称)の策定に向けた検討を来年度から始めると述べられたことは高く評価するものです。
 また、策定に当たっては、首都圏の自治体と十分に連携しながら、効率的な物流ネットワークの構築に取り組んでいただきたいと思います。昨年の予算議会でも伺いましたが、改めまして東京都の物流対策についてのご所見を伺います。
 香港やシンガポールなどのアジア主要港湾のコンテナ取扱量が大幅にふえている中、相対的に地位が低下している東京港は、この間、サービスアップとコストダウンを推進するために、ITを活用した物流システムを構築するとともに、二十四時間三百六十五日フルオープン化に向けた取り組みを進めています。
 こうした中、さきに発表された港湾審議会中間まとめでは、中央防波堤外側埋立地において、コンテナターミナルや高機能倉庫群などを集約させた新たな高機能物流拠点の形成について述べられており、重点事業においても、大井海貨上屋において拠点機能の強化を目指す実証実験を行うとしています。私は、東京港の機能強化を図る観点からも、新たな高機能物流拠点の形成をすることは極めて重要であり、積極的な取り組みを期待します。ご所見を伺います。
 また、首都圏における物流対策としてトラック物流への取り組みが重要です。東京都は現在、京浜、板橋、足立、葛西と、区部に四カ所トラックターミナルが整備され、全国の中継基地として、トラック輸送の合理化、混雑緩和に寄与しています。
 しかし、東京西南部、多摩地域における物流拠点については、整備が期待されていますが、なかなか進展が見られません。今回の重点事業でようやく多摩地域への新たな物流拠点の整備が打ち出され、あわせて既存区部四カ所の流通業務団地の機能更新も検討されています。私は、東京のトラック物流の効率化を図るためにも、積極的に物流拠点を整備すべきと思います。多摩地域の物流整備も含めて、東京都の取り組みについてお伺いをいたします。
 また、東京都は、今年度から、橋梁などの物流ボトルネックの解消に取り組むとともに、駐車違反や、交差点改良などによる総合的な渋滞解消策であるスムーズ東京21拡大作戦に取り組んでいます。先般、同僚である大塚隆朗議員が、一般質問で、駅前にタクシープールを整備するスムーズ東京21作戦Jにおいて、現場で働く人たちの意見を聞くべきと質問をいたしました。前向きな答弁を得ましたが、生活文化局で取り組んでいるスムーズ東京21だけでなく、知事本部で取り組んでいるスムーズ東京21拡大作戦、建設局で取り組んでいる交差点改良事業を初め、東京の物流、交通政策を展開する上で、トラック、バス、タクシーといった、車をじかに運転する人たちの意見を反映させることは極めて重要だと考えます。例えば事業を実施する際の事業箇所の選定などについても、交通量だけではなく、運転手さんたちの現場感覚を反映する、より実感できるのではないでしょうか。私は、こうした物流、交通政策を展開する上で、関係団体とのコミュニケーションを深めることは不可欠であると思いますが、ご所見を伺います。
 次に、福祉施策について伺います。
 まず、高齢者についてですが、少子高齢化の一層の進展とともに、年金や介護問題などについて、今国民は大きな不安を抱いております。とりわけ高齢者の介護問題については、これまでのように介護ニーズに対して施設の増設だけで対応しようとしても、行き詰まりは明らかであります。高齢者が住みなれた地域での生活を継続でき、かつ、高齢期を元気で過ごせる、高齢者介護の将来不安に対する安心を確立するための施策体系の抜本的再構築が今まさに求められているのです。今後の五年間に現在の二十四万人から四十一万人へと、七一%も増加すると予測されるなど、要介護高齢者の急速な増加が見込まれる中、私は、そもそも寝たきりや要介護高齢者とならないような介護予防の取り組みが極めて重要であると思います。また、これら介護予防の取り組みは、将来の介護負担の軽減にもつながるものであります。
 これまでも介護予防については、国や都、そして区市町村においてさまざまな取り組みが行われております。しかし、その成果が十分でなかったのは、都民に取り組みの効果が実感されていないからだと思います。そこで、今後都としてどのように介護予防に取り組んでいくのか、ご所見を伺います。
 次に、障害者施策について伺います。
 東京都はこれまで、施設中心の施策から地域生活を支える施策という観点に立ち、知的障害者生活寮の地域のケアつき住まいの設置促進を図ってきました。しかし、現在、知的障害者生活寮の整備状況について見ると、まだまだ不足しているというのが現実ではないでしょうか。これには東京の地価の高さによるところが大きく、他県と比べて厳しい環境下にあることは理解できますが、今後、さまざまな工夫を凝らして整備を進めていく必要があります。
 このような中、東京都は重点事業で、知的障害者生活寮整備における補助対象の民間企業への拡大や、推進本部の設置など、新たな支援策を講じることを打ち出しました。こうした取り組みについては高く評価いたしますが、できるだけ早期に整備目標を達成するためにも、このような取り組みや諸制度について、区市町村や事業者に対して早急に周知を図っていく必要があると考えます。
 あわせて、知的障害者生活寮の整備、運営事業者に対して、都有地を低廉な価格で貸し付けるような取り組みについても、早期に実現を図っていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
 障害者が地域の中で安心して生活できるようにするためには、安定した収入を確保するという就労支援の取り組みも重要であります。先日、私は、ヤマト福祉財団理事長の小倉昌男さんの「福祉を変える経営」という本を読んで大いに感銘を受けました。小倉さんが、無認可の共同作業所では障害者が月収一万円で働いているという現実を知り、障害者の自立のためにはこうした状況からの脱却が必要であると考え、共同作業所の経営セミナーを開催し、そればかりか、みずからも実践し、障害者に適した仕事としてパンの販売を事業化し、重度の障害者であっても、働きたいという意思を持った方々が高い収入を得られるようにしたということであります。これは本当にすばらしいことだと思います。このような小倉さんの取り組みについて、福祉局長はどのような感想をお持ちでしょうか、所見を伺います。
 次に、特別支援教育について伺います。
 特別支援教育という、過去に例のない新しい体制へと変わるに際して、言葉や文字による説明だけでは、当事者にとって、十分に理解をし、また、実感を持って納得をすることが難しい部分があるかと思います。断片的に流されている情報もあり、障害のある子どもの居場所がなくなるのではないかという不安をかき立てている側面もあります。
 その意味で、現在教育庁が考えている特別支援教育、副籍モデル事業は、関係者に対して、実際のところはどうなるのか、実像をもって示すことができるものであり、不安の解消や特別支援教育への理解に大きく役立つと考えます。
 また、実際にモデル事業を実施する中で明らかとなるであろう留意事項や課題についても、その対処方法や解決に向けた取り組みまでをわかりやすい形で紹介すれば、無用な混乱は避けられるのではないでしょうか。問題意識や情報を共有することが、信頼、安心につながると考えます。
 そこで伺います。目に見える形で数多くの人に特別支援教育の実像を示していくこと、課題についてもわかりやすい説明を付して、積極的に情報を公開していくことについてどのようにお考えか、あわせてお伺いをいたします。
 ところで、障害があっても自立して自分らしい生活ができる社会参加と自立を目指す上で、自立生活指導はもちろんのこと、学力の問題があります。将来就職し社会生活を送る上では、一定の基礎的学力が必要とされますが、ともすると十分な学力をつけることができないまま卒業を迎え、進路は限られたものとなってしまいます。
 そこで、学力の向上に向けて取り組むとともに、就労に結びつくような職業教育を充実して、障害のある子どもの可能性を生かすことができるようにしていくことが必要と考えますが、この点についてはいかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。
 また、今後は、従来心身障害教育の対象となっていなかったLD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー症候群の子どもも含めて、一人一人のニーズに応じ適切な教育を受けることも明らかとなっています。
 こうした新たな教育的支援の提供に向けて、東京都としても、学習面や行動面で著しい困難を示す子どもがどの程度存在するかを調査し、速報値で四・四%の結果が出ています。この調査結果を受け、今後、具体的な検討を進めていかれることと思いますが、支援体制構築や教職員の障害理解、専門的対応ができるための研修など、必要な体制についてはどのようにお考えかをお伺いいたします。
 次に、都立大学改革について伺います。
 八月一日に新構想が発表され、新しい都立の大学の使命や教育の特徴などが明らかになりましたが、都立大学総長がこの構想に疑問を投げかける声明を出すなど、他の三大学とは異なり、都立大学の関係者からは反対の声が上がっています。特に人文学部の学生、院生からの抗議の声があることはご承知のとおりです。
 私たちのところへも、メール、ファクスなどさまざまな手段で要望が寄せられています。こうした特定の思想に基づき改革に反対している教職員に利用された一部の学生による抗議行動で繰り返される、反対のための反対のような不毛な論議とは別に、これまで都立大学で行われてきた研究成果の散逸を危ぶむ声があるのも事実です。
 先日、私たちは、大学院の院生から話を聞く機会がありました。このとき学生たちからは、自分たちの学問の重要性やこれまでの業績、他の大学では行われていない分野に取り組んでいることなどを中心とした話があり、淡々とした口調の中からも、みずからの研究に対する熱意や自負心が感じられ、私たちは認識を新たにいたしました。
 近年、乱れた日本語がはんらんし、文学者である石原知事も、私たちの母国語、日本語の将来に対して強い危惧を感じていることと存じます。英語の話せない英語教師どころか、日本語の使えない国語教師までが存在しかねない危機的状況になっています。日本語の教育方法を学ぶことが、外国人ばかりでなく日本人にとっても現在非常に重要なものとなっていることは、理解いただけることと思います。
 都立大学の国文学専攻では、その名にふさわしく江戸文学の研究でも知られています。また、日本語学、日本語教育学が他の大学にはない特色のある科目であり、アジア留学生の多くが、日本語自体を学ぶ日本語学や日本語の教え方を研究する日本語教育学を専攻しているとのことです。新しい大学においては、アジア留学生との交流による異文化理解ということがうたわれていますが、仮に大学院にこの科目がなくなってしまったとしたら、多くのアジア人留学生の目指す専攻科目がなく、交流どころではなくなってしまうかもしれません。
 また、この国文学専攻では、東京の方言の研究でも業績を上げているようです。ご承知のとおり、東京都内にも、地域独自の方言がかつては存在していました。都市化が進む中で、人口が流入し続け、東京旧来の言葉というものが失われつつあります。江戸開府四百年に当たる本年、改めて東京の文化の源である言葉の研究に着目する意義は大きなものがあると感じます。
 小笠原の言葉の調査や檜原村の方言、根津、西片の敬語調査の報告など、東京都の歴史や文化を考える上で非常に貴重な研究が続けられており、石原知事も楽しめる論文だと思います。ここに研究論文の現物がございますので、後ほど進呈をさせていただければと思います。これは研究のごく一例であると思いますが、私たちは、今回知り得たこの研究は、大変意義深い貴重なものだと思っています。
 私たちは、人文学部をどうしても残さなくてはならないとか、この研究を残さなくてはならないという観点で申し上げているのではありません。伝統ある都立大学がこれまで培ってきた業績や研究成果をしっかりと認識した上で改革を進めるべきとの思いで一例をご紹介いたしました。
 都立大学大学院の研究については、実際にどのような研究がされ、いかなる業績があり、他の大学院と比較してどのようなレベルにあるのか、本当の意味で理解した上で、新しい大学院の構想を具体化していくべきではないかと思います。
 また、大学院については、平成十七年度は、現在の三大学の大学院と同じ研究科構成で新しい大学の大学院として募集し、平成十八年度については、大学の使命を踏まえ、再編成した研究科で募集する予定と聞いていますが、現在の学生、院生、さらには、これから新しい大学を受験しようとする高校生のためにも、一日も早く新しい大学院の構想を提示すべきと考えます。
 今回の構想の中に、社会が求めている人材の輩出、研究成果の社会還元ということがうたわれております。これは産業界にとっての人材、産業界への還元ということだけを目指すのではなく、さまざまな分野で大都市東京にとって有用で必要な人材、重要で希少な研究成果も含むべきです。公立大学として行うべきことは、私立大学も含め多くの大学その他の研究機関で取り組まれている分野以外に、大都市東京の課題を研究するなど、他では行っていない分野を専門科目に取り入れ、人材の育成に努めるべきと考えます。
 公立大学として行うべき研究内容について、さまざまな大学の状況を踏まえて、慎重に吟味して検討を進めるべきと考えますが、知事のご所見を伺います。
 以上で、知事並びに関係局長の誠意ある答弁を求めまして、都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 青木英二議員の代表質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる三位一体改革についてでありますが、本来この改革は、官僚主導の中央集権体制を改め、地方自治体がみずからの財源と責任に基づいて行財政運営を行う地方主権を確立することを目的としているものでなくてはならないと思います。
 そのためには、国と地方の役割分担を明確にして、国庫補助負担金などを通じた国の関与を排し、同時に国から地方への税源移譲を行って、地方自治体の財政基盤を確立することが不可欠であります。
 しかし、現在国で行われている議論は、国の関与を残したまま国庫補助負担金の削減だけを先行させ、しかも基幹税目の移譲を先送りしようとするものでありまして、改革の本来の目的とはかけ離れているものとしか断ぜざるを得ません。国が財政多端であることはよく存じておりますが、その打開の策の一つとしてこれを利用されたのでは、たまったものではないと思います。
 都は、このような事態を打開するために、これまでも八都県市首脳会議の場などを活用しながら、地方税財源の充実強化を求めてまいりました。今後とも、首都圏を初めとする他団体とも連携しながら、国に強く働きかけていくつもりでございます。
 次いで、平成十六年度予算編成についてでありますが、十六年度予算は、都財政を取り巻く環境が引き続き厳しい中で、第二次財政再建推進プランの初年度として、財政再建の取り組みをさらに充実強化する予算とする必要があります。
 このため、内部努力の一層の徹底と、都のすべての施策及びその実施体制について根本的な見直しを行って、積極的に再構築を図るとともに、治安対策や都市再生など、都が直面する緊急課題の解決に向けまして、あらゆる工夫を凝らして財源の確保とその重点的な配分に努めることなどを基本的な方針として編成していくつもりでございます。
 次いで、新銀行の創設についてでありますが、いろいろ揣摩憶測あるようでありますけど、順次、具体的な構想については明かされていくと思います。現にきょうの日経の夕刊にも、信用金庫などとの連携の形についての報道がされておりますが、いずれにしろ、その新銀行は地域に軸足を置いたトランザクションバンクでありまして、既存の金融システムを補完することが重要な役割であると認識しております。
 そして具体的には、信用金庫などの地域金融機関とは、シンジケート型の融資や企業再生ファンドなどさまざまな面で提携し、ともに発展を目指していくつもりでございます。
 また、多様な手法を用いて、地域金融機関が提供できないリスクの高い分野への資金供給を行うほか、資金調達に当たっては、社債を発行するなど預金シフトの抑制を図り、民業圧迫とならないように十分配慮してまいります。
 いずれにしても、既存の銀行のほとんどが、内容が非常に不透明のまま信用を失いつつある中で、しかも積極的な融資というものが渋滞している。東京の場合で申しますと、就任からやってまいりましたあのベンチャー技術を、テクノロジーを造成していくインキュベーターの体制の中で、もし、もっともっと積極的な融資なるものが仰げればもっと早く大成したであろう企業が、ああいう余り恵まれていないという、せいぜい光熱費、事務費をただにして貸してあげるだけですけれども、その中でも、やっぱり有能な会社はもう既に上場にまでこぎつけたという、そういう会社が二つも三つもありまして、本当に零小な企業でありますけれども、こういったものには、やっぱり視点を変えた積極的融資が必要だと思いますが、そういったものをこれからも心がけていくつもりでございます。
 それで、その銀行に関して、税金の再投入の懸念を表明されましたが、新銀行は株式会社でありまして、出資者である都は、その出資額の範囲で株主の責任を負うものであります。
 また、この銀行の運営に当たっては、統合リスク管理委員会を中心とする万全なリスク管理体制を整備しまして、信用リスクを初め市場リスクやシステムリスクなど、さまざまなリスクを適切にコントロールしていくつもりでございます。
 さらに、委員会等設置会社の採用によりまして、銀行業務全般にわたって、開かれた透明度の高い経営を徹底するつもりであります。
 こうした取り組みによって、多面的、複合的に銀行としての健全性を確保していくことによりまして、税を再び投入することは考えておりませんし、また、その可能性がないものと思っております。
 次いで、八ッ場ダムの必要性についてでありますが、先ほど申しましたけれども、水はまさに政の根幹でありまして、水を治め水を安定的に供給することは、国や自治体の重要な責務であると思います。
 都は、水源の大半を地政学的にも他県に依存しておりまして、これまでも水源地の理解と協力を得ながら、必要なダムの水源開発に参画してまいりました。当然のことながら、参画に当たっては、将来の水道需要を適宜見直し、水源開発との整合を図ってまいりました。
 八ッ場ダムについても、将来の水道需要の見直しを織り込んでもなお、渇水に対する安全性を確保する上で不可欠なものと判断をしております。かつて、あの小河内ダムが建設されたときに、完成されて直後は、何か水の事情が非常によかったものですから、あの小河内ダムを読みかえて、「しょうがない」ダムだというようなやゆもありましたが、しかし今になってみれば、やっぱりあれが東京の水需要にとって不可欠なものであるということは自明のことであります。ただ、やはり、繰り返して申しますけれども、将来の水道需要を見直しながら、水源開発との整合をこれからも図ってまいるつもりであります。
 次いで、戸倉ダムについてでありますけれども、都としては、建設中の滝沢ダム、八ッ場ダムの完成により、将来の安定的な給水の確保に一定の見通しが得られますので、現在、都は将来の水需要の見直しを進めておりまして、また、渇水に対する安全性などを総合的に検討しておりますが、その結果、本格的な工事が未着手の戸倉ダムについては、参画を見直し、事業から撤退する方針であります。
 次いで、これまた新しい試みでありますが、都立大学についていろいろ揣摩憶測ありますけれども、いずれにしろ、これからの社会のニーズ、参加してくる学生さんたちのニーズに応じ切れる新しい大学をつくろうと思っているわけであります。人間というのは、非常に本質的に保守的な性格がございますから、特に大学の先生方の間に、保身ということもあるのでしょうけれども、いろんな異論があるようでありますけれども、しかし、やっぱり学者であり教育者である教授たちが現行の大学のありさまを眺めて、果たして今の体制を維持することで、都立大学なるものが本当に社会の需要にこたえ切れるかどうかということを積極的に考えていただきたい。
 そういうことで、大学というものを根本的につくり直す試みをするつもりでございますけれども、これは一朝にして成るものではありませんが、いずれにしろ、学生たちの協力も得て、私は、やっぱり東京にこそ新しい大学が誕生していくものと思っております。
 これからこの新しい大学として行うべき研究内容についてでありますけれども、いろいろご指摘もございましたが、いずれにしろ、大都市の複合的な課題の解決に向けて、旧来の学問分野にとらわれない総合的かつ学際的な研究が必要だと思います。
 役所にも似て学校もまた、特に大学もまた、系列化され過ぎて、学問と学問がまたいで複合的に刺激し合うというようなことがなくなれば、これはまさに学問全体の危機だと思います。これまでのもちろん学問的な蓄積を生かしつつ、社会からの要請に的確にこたえていくことが肝要だと思います。
 改革は、最初から完璧を求めるものではなく、試行錯誤もあるでしょうが、開学後も不断の見直しを行い、旧弊に陥ることのないダイナミックな大学にしていきたいと思っております。
 なお、その他の質問については、出納長、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔出納長大塚俊郎君登壇〕

○出納長(大塚俊郎君) 二点のご質問にお答えを申し上げます。
 まず、新銀行設立の手法としての買収のメリットでございますけれども、これまで、準備会社を設立いたしまして免許を取得する方法を基本としつつ、既存の銀行を買収する方法も視野に加え、検討を進めてまいりました。
 今回、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行の買収という手法を選択いたしましたのは、開業までの手順あるいはコストの面で効率的であること、事業規模が小さく、かつ経営の透明性も高かったこと、新銀行の設立理念を実現するために何ら支障がなかったこと等の理由によるものであります。
 次に、金融検査マニュアルに対する考え方についてでございますが、新銀行は、当然のことながら、現行の金融検査マニュアルを前提として個々の融資を行ってまいります。ただ、厚い自己資本を生かすこと等によりまして、ほかの金融機関よりも幅広いリスクをとるとともに、必要な引き当てを十分行ってまいります。
 また、債務者区分の物差しなどにおきましても、企業の経営実態を総合的にとらえて判断するなど、可能な限り柔軟かつ機動的に融資業務を展開してまいります。
 その上で、現行のマニュアルの不十分な点につきましては、中小企業の実態に即した内容となるよう、金融庁に対して、都としても働きかけを強めてまいります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 特別支援教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、特別支援教育に関するモデル事業の実施に当たっての情報の公開についてでございますが、モデル事業の実施につきましては、関係者の不安を解消し、実施上の課題を明確にするなど、円滑な移行を図る上で重要であると認識をいたしております。
 このため、都教育委員会としましては、モデル事業の実施に当たっては、関係者の意見も聞きながら進めてまいりますとともに、研究の経過も含めまして、その成果をわかりやすくまとめ、区市町村教育委員会や学校関係者を初め、広く都民に情報を提供してまいります。
 次に、障害のある生徒の学力向上と職業教育の充実についてですが、ご指摘のように、障害のある生徒に確かな学力を身につけさせ、望ましい職業観や勤労観を養い、就労に結びつけていくことは、極めて重要でございます。
 現在、盲・ろう・養護学校におきましては、個別指導計画を作成しまして、個に応じた学習指導の改善、工夫を図るとともに、生徒の障害の状態や特性等に応じて、産業現場等での実習を計画的に実施いたしております。
 今後は、学校と企業等との連携のもとに、生徒の就労を支援するため、一人一人につきまして個別移行支援計画を新たに作成し、職業教育の充実を図ってまいります。
 最後に、今後の特別支援教育の体制整備についてですが、東京都心身障害教育改善検討委員会におきまして、特別支援教育への展開に向けて、小中学校の校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの育成、教員の理解促進や専門性の向上などにつきまして、重要な課題として検討しているところでございます。
 今後、改善検討委員会の最終報告や国の動向を踏まえまして、LDやADHD、高機能自閉症、アスペルガー症候群を含めた障害のある児童生徒の教育の充実に向けまして、体制整備などの具体的な対応の方向について検討してまいります。
   〔知事本部長前川燿男君登壇〕

○知事本部長(前川燿男君) 二点のご質問にお答えいたします。
 まず、全国知事会の提言についてでありますが、今回、全国知事会から、廃止すべき国庫補助負担金の内容や国から地方へ移譲する税目など、三位一体改革について具体的な提言が行われました。知事会として初めての具体的、積極的な活動であり、評価されてしかるべきものと考えております。
 しかしながら、その内容につきましては、大都市特有の膨大な行政需要を抱える都の立場から見て、疑義がございます。特に、基幹税による税源移譲により、自治体間の財政力格差が拡大するとの前提に立っていること、また、既に制度的なひずみが生じている地方交付税制度について水平的な財源調整の強化を主張していることは、重大な問題でございます。
 都は、こうした点につきまして、提言の取りまとめ中に強く指摘してまいりましたが、それにもかかわらず知事会の総意として発表されました。極めて遺憾であり、看過できないとして、直ちに申し入れを行った次第でございます。
 今後とも、全国知事会につきましては、三位一体改革の本旨の実現に向けて協力して取り組むとともに、大都市を抱える府県とも連携しながら、都として主張すべきことは強く主張してまいります。
 次に、物流対策についてでありますが、我が国の国際競争力の強化にとって、物流の高コスト構造の改革が喫緊の課題であると考えております。首都圏には、道路、港湾、空港など多くのインフラが集積し、これらが一体となって日本の物流システムのかなめとなっております。したがって、東京の物流の効率化を進めるためには、広域的な視点に立った取り組みが重要でございます。
 そのため、都としても、首都圏を視野に入れながら、来年度、総合物流ビジョンの策定に向けた検討を始めるとともに、当面、東京港の港湾コストの削減や貨物搬出入時間の大幅短縮、多摩地域の物流拠点の整備に取り組むなど、実効性ある施策の推進に努めてまいります。
   〔財務局長櫻井巖君登壇〕

○財務局長(櫻井巖君) 二点の質問にお答えいたします。
 まず、第二次財政再建推進プランの目標達成に向けての取り組みについてであります。
 真の財政再建を達成するためには、財源不足を解消するだけではなく、都民ニーズの変化に対応できる強固で弾力的な財政体質の確立が不可欠でございます。
 そのためには、内部努力を厳しく徹底するとともに、すべての施策及び仕事の進め方につきまして、改めて新しい発想を持って、中長期的な課題も含めて、これまで以上に踏み込んだ見直しを行うなど、財政再建に向けた取り組みを全庁一丸となって進めてまいります。
 このような取り組みが都庁全体に根づくことが、都民サービスの拡充強化、そして、都財政の健全化に向けて着実に歩みを進めることができるものと考えております。引き続き、各局と連携して、財政再建に向け全力を挙げてまいります。
 次に、国の仕組みを変える取り組みについてであります。
 地方主権の時代における今後の都政改革では、都がみずからの判断と責任において、都の実情にふさわしい施策と財政運営を展開していくことが重要であります。
 したがって、国の規制や既存の制度がその障害となる場合には、さまざまな機会をとらえまして、その改正、改革を国に対して求めていくべきであり、第二次財政再建推進プランの基本的視点の一つに国の仕組みを変えるという視点を掲げたのも、そうした考えによるものであります。
 お話の国直轄事業や首都高速道路の整備などは、東京における社会資本の整備に必要な緊急性の高い事業であり、都は、法令や国とのルールに従って応分の負担をしているものでありますが、今後は、これまで以上に、事業の内容や負担割合などにつきまして、都の意向を十分反映して施策が推進される仕組みとなるよう、国に対して強く働きかけてまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、第二次都庁改革アクションプランについてでございますが、プランでは、都民サービスの一層の向上を目指しまして、平成十八年度までに取り組む二百八十九の実施施策を掲げまして、都庁改革の具体的内容と実施年度を明らかにしております。
 これらの施策につきましては、施策ごとに全庁的な観点から厳しく進行管理していくことによりまして、着実な実施を図ってまいります。
 次に、分権計画の推進についてでございますが、都はこれまで、住民に身近な行政は基礎的自治体で行うべきであるという考えに立ちまして、都独自に第二次東京都地方分権推進計画を策定し、区市町村との合意に基づきまして、順次、事務、権限の移譲を行ってまいりました。
 今後、分権改革を抜本的に進め、地方主権を確立するためには、権限の移譲とともに、真に三位一体の趣旨に沿いました国から地方への税財源の移譲を実現し、自治体の行財政基盤を強化することが必要不可欠でございます。
 都といたしましては、こうした観点に立ちまして、地方分権の推進に向け、国に対し、行財政権限の移譲を強く働きかけてまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 八ッ場ダムなど五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、八ッ場ダムの事業費増加についてでございますが、八ッ場ダムは、昭和二十七年の構想発表以来、長年にわたり賛否をめぐる議論がありました。
 この間、事業者である国と地元との間に群馬県が仲介に入ることで、生活再建についての覚書が締結され、ようやく昭和六十一年に現在の基本計画が策定されました。
 それによりまして、測量等の現地調査が初めて可能となり、つけかえ道路等の詳細な検討に入るとともに、生活再建についても本格的な調整が進み、平成十三年に補償基準の妥結に至ったのが増額の一つの要因でございます。
 加えて、その間、十五年以上が経過しておりまして、物価上昇や消費税導入などの社会経済的要因もあり、事業費の大幅な増加となったものでございます。
 次に、八ッ場ダムから撤退するとした場合のメリット、デメリットについてでございますが、八ッ場ダムは、将来にわたり渇水に対する安全性を確保する上で不可欠なダムでございますので、撤退するメリットを挙げることは困難であります。
 他方、仮に撤退した場合には、将来の給水の安定性の確保に大きなリスクを生むことになります。加えて、長年にわたる賛否をめぐる議論を経て生活再建の道を定めた多くの地元住民の生活設計に大きな混乱を来すほか、水源の大半を他県に依存する都として、水源地との関係に多大な影響を及ぼすことが考えられます。
 次に、議会への付議の時期についてでございますが、水需要の現状と見通しや水源確保の状況には、八ッ場ダム関係都県の間でも差があり、対応の違いとなってあらわれていると考えています。しかしながら、八ッ場ダムの必要性については、関係都県が共通して認めております。
 都としては、将来の水需要について見直すとともに、改定された事業費についても可能な限り検証を加え、国に対して徹底したコスト縮減への取り組みを求めました。その結果、今議会に付議することが適当であると判断したものでございます。
 次に、物流拠点の整備に対する都の取り組みについてでございますが、トラック物流は都民の生活を支える東京の物流機能の一翼を担っており、これまで、区部四カ所に流通業務団地を整備し、物流の合理化とともに、都市内の交通渋滞や環境の改善を図ってまいりました。
 これらの流通業務団地の大半は、整備から既に三十余年が経過し、更新の時期を迎えておりますので、今後、都としても、IT化など物流機能の効率化、高度化に向けた検討を進めてまいります。
 また、多摩地域においては、物流量に対しまして相対的に物流施設が少なく、輸送効率が低下しており、圏央道などのインターチェンジ周辺において、東京圏の広域的物流と多摩の地域物流を担う新たな物流拠点の整備手法の検討を進めてまいります。
 最後に、物流、交通政策を展開する上での関係団体等とのコミュニケーションについてでございますが、交通施策の展開に当たりまして関係団体等の意見を聞くことは、ご指摘のように重要と考えており、都ではこれまでも、適宜、意見交換会などを実施してまいりました。
 また、現場の声を聞く具体例といたしまして、本年、池袋駅東口タクシープール整備におきまして、駅東口乗り場を利用しているタクシー運転手の方々に、利用状況等のアンケートを実施いたしました。この結果をタクシープールの整備に反映していくこととしております。
 今後とも、現場で働く方々や関係団体の声を反映する方策について検討してまいります。
   〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) 新たな高機能物流拠点の形成についてでありますが、外貿コンテナ貨物の増加などに対応し、東京港の機能強化を図るには、大型岸壁の整備、ふ頭利用の効率化などの取り組みに加え、港湾地域における物流革新に対応した倉庫機能の向上、ふ頭周辺でのコンテナ車両による渋滞の解消などが必要不可欠でございます。
 このため、中央防波堤外側埋立地に、ITを駆使した自動仕分け、流通加工などができる物流倉庫群やトラックターミナルなどを有機的に集積させた大規模な高機能物流拠点を整備し、隣接する大井、青海両コンテナターミナルと一体的に活用してまいります。
 こうした取り組みによりまして、港湾サービスの向上を図り、東京港の国際競争力の強化に積極的に努めてまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) 福祉施策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、介護予防事業の今後の取り組みについてでございますが、要介護高齢者の急速な増加が見込まれる中で、介護予防は極めて重要な課題であり、都としても、区市町村における効果的な取り組みを促進するため、本年度より介護予防開発普及事業を開始いたしました。
 しかしながら、地域における介護予防への本格的な取り組みはまだ始まったばかりであり、都民がその効果を実感できるまでには至っていないのが現状でございます。
 今後、福祉、保健、医療の連携のもと、要介護となる危険性の高い高齢者の早期発見、個々人の状況に応じた適切な予防プランの作成及びその実施までの総合的なシステムを構築し、身体機能の維持向上や介護保険財政面での具体的な成果などを都民が実感できるよう、区市町村の取り組みをさらに促進してまいります。
 次に、知的障害者生活寮についてでございますが、都は、障害者の地域での自立生活を支援するため、障害者地域生活支援緊急三カ年プランに基づく特別助成や、都独自の運営費の加算などにより、生活寮の設置促進に全力で取り組んでおります。
 さらに、平成十六年度の重点事業として、整備費補助対象の民間企業への拡大やオーナー改修型補助の導入など、新たな設置促進策を創設する予定でございます。
 今後、来年度の着実な事業実施に向けて、早期に区市町村や事業者に対する説明会を開催するほか、ホームページの活用などにより、都の取り組みについて積極的に周知を図ってまいります。
 また、都有地を事業者に対し低廉な価格で貸し付ける取り組みにつきましては、ご指摘のとおり、早期に実現を図ることとし、近く事業者を公募する予定でございます。
 最後に、ヤマト福祉財団の取り組みについてでございますが、先日、障害者支援に関係する方々を広く対象とした福祉局主催のセミナーにおきまして、私も小倉昌男氏の講演を拝聴する機会を得ました。
 障害者の自立とは、障害者みずからが働いて、収入を得て生活する、タックスペイヤーの世界に導くことであるという信念に基づいて、福祉と経営を融合させ、障害者の働く場としてのベーカリー事業を成功させたことは画期的なことだと思っております。障害があっても、適性のある仕事につく機会があれば、働く喜びや収入を得られるということを実証した小倉氏の取り組みには深い感銘を受けました。
 都では、障害者の就労機会の拡大を目指し、身近な地域において就労面と生活面の支援を一体的に行う区市町村障害者就労支援事業を本年度から本格実施しております。現在、十九の区市において事業を実施し、職場開拓や職業相談等の支援を行い、これまでに二百四十人を超える障害者の就労を実現いたしました。
 今後とも、小倉氏の取り組みに代表されるような民間のすぐれた実践例を模範としながら、障害者の就労を支援してまいります。

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