平成十五年東京都議会会議録第十四号

○議長(内田茂君) 九番後藤雄一君。
 〔九番後藤雄一君登壇〕

○九番(後藤雄一君) 中小企業助成事業について質問します。
 七月二十五日、財団法人東京都中小企業振興公社は、中小企業支援のための産学公連携事業の平成十四年度助成金申請に関し、株式会社コンネットを詐欺未遂で警視庁に刑事告訴しました。この事件は、平成十五年三月、助成金交付が確定する一週間ほど前ですが、関係者から、振興公社と行革一一〇番への告発から始まりました。
 コンネットは、レーザー焼結による平滑表面モデルの開発のテーマで、粉の研究開発などを行うとして、一千五百万円の助成金を申請しました。しかし、コンネットが開発した粉でつくったとして提出した製品は、実は外国のメーカーが開発した既製品の粉を使っていることが振興公社の調査で判明し、助成金の支給はストップされました。
 事もあろうに、コンネットの研究開発を評価、技術指導を行ったのは、産業労働局の中にある研究機関、産業技術研究所の研究員です。つまり、産業労働局の職員が、本来助成金が出るはずのない研究開発に対して評価をし、技術指導を行い、お墨つきを与えたのですからお笑いです。告発がなければ一千五百万円が支払われていたのです。
 産業技術研究所は、何を評価し、何を技術指導したのか。また、刑事告訴までの経緯をお尋ねします。
 行革一一〇番は、コンネットが同じく平成十三年度も、新製品、新技術開発助成を申請し、パルプモールド製造システムの研究開発のテーマで、九百六十万八千円の助成金を受けていることを見つけました。行革一一〇番は、情報公開で資料を入手し調査をしたところ、伝票が改ざんされている痕跡を発見しました。
 九月一日、伝票に記載されているコンネットの取引先の会社を訪れました。行革一一〇番は、疑わしい伝票を示しながら、担当者に本当のことを話してくれるようにお願いをしました。すると、担当者は、コンネットから助成金申請書類の改ざんを頼まれ、ダンベルピース、パルプモールドの抄型の商品名などを記入した、うその書類を作成したことを初めて認めました。警視庁には報告をしてあります。
 一方、コンネットは、告訴される二十日ほど前の七月三日、助成金相当額である九百六十万八千円を一方的に振興公社に振り込んできたといいます。振興公社がコンネットに真意を確かめたところ、八月二十六日付の配達証明郵便で、公社との信頼関係を喪失し、公社とこれまでの関係を、過去も将来についても一切破棄したいためとの回答があったといいます。コンネットは、刑事事件になるのを恐れて全額返済したと考えるのが普通でしょう。
 しかし、助成金をたとえ返還しようが、詐欺行為に当たる疑いがある以上、その責任を追及するのが、都民の税金を使って助成金を支出している産業労働局の務めであるはずです。産業労働局はどのような調査をしたのか、お尋ねをします。
 また、複数の助成金を受け取った会社を調べてみました。二年間で、何と六回も申請し、助成金を七千三百万円も受けている会社もあります。
 企業は、もうけるために営業活動をします。利益が出たらば返済してもらいましょう。確かに収益納付という制度もありますが、返済額の増加を図るためにも、改善すべき点があると思います。お考えをお聞かせください。
 助成金の申請書類には、研究のテーマを記入することになっています。行革一一〇番がテーマを情報公開請求すると、産業労働局は非公開としました。何か後ろめたいものでもあったのでしょうか。
 行革一一〇番は、公開すべきと考え、非公開処分の取り消しを求め、東京地裁に提訴しました。すると、産業労働局は、第三者情報の確認を忘れていた、相手の会社に照会をしたところ、ほとんどの会社が公開してもよいというので、今後は公開する方向で検討するので、訴訟を取り下げてほしいと打診してきました。まるで銀行の外形標準課税のように、最初は強気、裁判で不利になれば取り下げてほしい。石原知事も優秀な部下をたくさん持ったものです。
 今後、助成事業のテーマの取り扱いをどうするのか、お尋ねをします。
 産業労働局の関係者は、助成をするのが事業の目的で、不正を摘発するのは目的ではない、また、調査を厳しくして助成金が残れば、議会などから予算の執行率が低いと怒られるといいます。しかし、行革一一〇番の調査で、書類さえ整っていれば助成金は支払われること、チェックが全く機能していないことが明白になりました。
 悪知恵のある経営者は、中小企業支援のための助成金をつかみ金として利用することができるのです。結果的に、産業労働局のチェックの甘さは、助成金をえさにコンネットを悪の道に引きずり込むキャッチセールスを行ったのと変わらないのです。チェックが厳正に行われることがわかれば、このような単純な改ざんは行わなかったでしょう。これが中小企業に対する助成事業の現状です。
 知事が考える中小企業支援とは大分違っているとは思いますが、感想をお聞かせください。
 また、中小企業の活性化、そして、まじめな経営者のためにも、助成事業の手法を根本的に見直すべきではないでしょうか。石原知事が進めている中小企業のための新銀行構想と絡めて、知事の見解をお尋ねします。
 次に、身内に対する補助金です。
 石原知事は、予算編成時に一律一〇%カットを指示してきました。しかし、都教委が、教育関係職員の校長会から栄養士会まで二十四の任意団体に、補助金二千七百万円を支出しています。しかし、これらの補助金は一%もカットされていないのはなぜでしょうか。知事の言葉を、身内の職員は聞く耳を持たないのでしょうか。身内の補助金をカットしないで、これでは都民は怒ります。
 十六年度予算の身内の補助金、全廃したらいかがでしょうか。知事のお考えをお聞かせください。
 身内の補助金の一つに、全国事務長会があります。そして、全国事務長会の会長に、都立武蔵高校の事務室長が就任をしています。七月に都教委が武蔵高校に対し定例の監察を行ったところ、事務、経理関係で十五項目の改善事項が指摘されました。通常は、多くても二項目ぐらいといいます。仕事もしないで、全国事務長会の仕事を一生懸命やっていたのでしょうか。行革一一〇番にはいろいろな情報も入ってきています。事務室長は、経理担当者などにどのような指示をしていたのでしょうか。
 都教委は、教員に対して処分を厳正に行っています。事務のミスを未然に防ぐことは、不正の芽を摘み取ることにもなります。指摘された事項が小さいことでも、十五項目もの改善事項が指摘されるということは、管理が全くなされていなかった証拠です。
 事務、経理の管理責任、結果責任を明確にするためにも処分をすべきと考えますが、教育長の見解をお伺いします。
 また、都教委は、これらの任意団体の機関運営などに年間六日の職免を認めているというが、知事部局は三日です。都教委には何らかの特別事情があったのか、また、改善をするお考えがあるのか、お伺いをします。
 監理団体の指導についてお伺いをします。
 行革一一〇番が、監理団体の非常勤役員、評議員に支払われる費用弁償の聞き取り調査をし、一覧表を作成しました。監理団体の非常勤役員、評議員には報酬を支払うことができないと定められています。しかし、民間の方にお願いしている場合もあり、報酬を払わないわけにはいかず、費用弁償の名目で払っているのが現状です。
 財団法人東京都医学研究機構の寄附行為の二十二条の一項に、役員は無給とする。ただし、常時勤務する役員は有給とすることができる。二項に、役員には費用を弁償することができると書かれています。しかし、医学研究機構は、非常勤役員に、費用弁償の名目で一日五万五千円を支払っています。理由として、偉い先生方にお願いをしているので、このぐらいはと担当者はぼやきます。
 また、医学研究機構の監査を担当する監事、天下りの役人ですが、一日五万円、一月に八日出勤して四十万円の費用弁償が支払われています。これが費用弁償でしょうか。報酬、給与ではないでしょうか。
 医学研究機構は、寄附行為が変更できないので、仕方なく費用弁償で払っているといいます。監理団体の透明性を高め、報酬の額を適正に指導するため、非常勤役員に報酬を払うことができるように、寄附行為の変更を認めるべきと考えます。公益法人を担当する生活文化局として、今までの対応と今後の方針をお尋ねします。
 費用弁償の額の多さにばかり気をとられていたのですが、所得税法百八十三条に違反している監理団体の多さにも驚きました。二十八団体のうち十五の団体が、費用弁償に関して源泉徴収義務を怠り、正しい源泉徴収をしていないのです。
 税務署は、費用弁償の額が源泉徴収の対象の監理団体は、過去五年までさかのぼり、支払い先の個人から日額表乙欄の税額を徴収して税務署に納付をすること、そして、監理団体は、個人に対し新たに源泉徴収票を発行し、個人は所管の税務署で減額請求、修正申告をしなければならないとのことです。
 財団法人東京都駐車場公社は、評議員に支払った費用弁償一万五千円から、費用実費を差し引いた残りに源泉徴収をするというのです。そして、既に支払われた費用弁償にかかる源泉税を、ことし一月一日までさかのぼり、評議員をしている都議会議員などから返済をしてもらうと、行革一一〇番に説明をしています。しかし、駐車場公社は、事務が煩雑になるので面倒くさいのでしょう。過去にさかのぼって納付をするのが嫌なようです。
 駐車場公社を指導する立場の建設局長は、所得税法を遵守し、過去にさかのぼり、源泉税を納付するよう指導すべきと考えますが、見解をお伺いします。
 また、行革一一〇番が指摘するまで、なぜ駐車場公社は源泉徴収義務を怠っていたのか、あわせてお伺いをします。(拍手)
 〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 後藤雄一議員の一般質問にお答えいたします。
 いろいろ気づかなかったというか、盲点をついた有益なアドバイスをいただきましたが、一般論として申しますと、技術に関する評価というんでしょうか、期待度というんでしょうか、それを評価ということでいいますと、非常に難しいものがありまして、私も、友人だった前の興銀の最後の頭取になりました西村なんかにも、やっぱり興銀こそが、技術というものの評価の専門家を育てたらどうだということを再三申しましたが、なかなかそれが実現しないままに、あの銀行もああいう形で消滅しました。
 一方、これは政府の問題ですけれども、宇宙開発公団なんてものは膨大な予算を消費して、上げるたびに失敗しているロケットを上げていますが、山之内君が技術専門家として就任することでロケットは上がるようになりましたけれども、財政の方は非常に不透明でして、何とかロケットは七百億要るというと、これはもうとにかくつかみ金で、原価計算を出したことがない。それに政府も平気で、特殊法人である宇宙開発公団にお金を出している。そういう事例が、実は一種の国営企業といえるあちこちの特殊法人にもあります。
 特に技術に関しては素人にわからないといわれる、わからない節がありますから、つい口を閉ざしてしまうんですが、この中小企業に対する助成金の問題でありますけれども、これは期待は期待で、いつも、つまり技術の開発というものに文明というものは促進されるわけですから、行政側としても期待をせざるを得ませんし、するのは当然でありますけれども、しからば、それをどういうふうに正確にとらえるかということは非常に至難でありまして、今回ご指摘の問題も、その企業がどの種の技術をどういうふうに開発しようとしたのか、私、つまびらかにしませんが、結果として、こういう不祥事に近い形で、大事な限られた予算というものを盗まれ損なったというのは、本当に反省する余地が十分あると思います。
 ただ、といって、すべてこういった政策というものを中止するわけにいきません。こういう苦い経験を踏まえて、やっぱりそういった審査、査定というものにもっともっと厳格に臨むように指導をいたします。
 ついでに申されました新銀行における融資等については、衆知を集めてやっておりますので、余計なご心配をしていただく必要はないと思います。
 その他の質問については、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
 〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に係る三点の質問にお答えします。
 まず、教育関係職員で構成されます任意団体に対する補助金についてですが、都教育委員会では、自主的な調査研究等を行っている教育研究団体に対しまして、その活動が教育行政の推進に寄与するものである、こういった認識から支援を行ってまいりました。
 一方、教育改革を進める中で、都立学校職員の調査研究等にかかわる環境の改善も図ってきましたことから、今後の各教育研究団体に対する公的な支援につきましては、厳しい財政状況も十分踏まえまして見直す必要があると考えておりまして、現在、検討を行っているところでございます。
 次に、都立武蔵高校の事務室長に関する件でございますが、本校におけます業務服務監察の指摘事項につきましては、厳重に注意をしまして、既に改善がなされたところでございます。
 次に、教育関係職員で構成される任意団体の機関運営に対する服務についてでございますが、先ほど述べましたように、任意団体に対する補助金に関する考え方と同様の観点から、任意団体の機関運営等に関する職免基準につきましても、他の任命権者の状況等も踏まえまして見直しを図ってまいります。
 〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 答弁し損ないましたが、ご指摘の幾つかの事例を挙げて指摘されました身内への補助金というのはけしからぬ話でありまして、お話を伺っている最中に、担当の浜渦副知事に早速調べて処置するように命じました。
 〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 東京都駐車場公社にかかわる費用弁償についてでございますが、公社は、これまで評議員に対する費用弁償は、旅費及び旅行雑費相当分であるとして、源泉徴収の対象ではないと判断してまいりました。
 先般、公社が所轄税務署に相談した際、この費用弁償の一部については源泉徴収する必要があるとの見解が示されました。
 都としては、公社に対し、税務署の見解が示されたことから、法令に従って適正に処理するよう指導してまいります。
 〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 五点の質問に順次お答えしますが、最後に、この事業の意義と当局の考え方を述べさせていただきます。
 まず最初でございますが、産業技術研究所の技術指導と財団法人東京都中小企業振興公社が刑事告訴に至った経緯についてでございます。
 株式会社コンネットは、共同開発助成事業の提携先といたしまして、外部の専門家である産学公コーディネーターの指導のもと同研究所と契約いたしまして、技術指導を受けました。
 一方、同公社が実施する助成金の検査では、同研究所の職員が同行し、検査を技術面から補完しておりますけれども、技術指導と完了検査は同研究所の別の職員を当てるなど、適正を十分配慮した対応をしております。
 次に、刑事告訴の経緯でございますが、株式会社コンネットに対する平成十四年度助成事業について完了検査を実施いたしましたところ、他社の既製品をもって新材料を開発したと仮装及び研究用物品を購入していないにもかかわらず支払いを仮装、この二つの不正事実が判明いたしました。また、同株式会社は、公社からの問い合わせに対し資料提供を拒否するなど非協力的な対応に終始いたしました。
 このことから、同株式会社の行為は、助成金を意図的に詐取しようとした極めて悪質な行為であると判断し、六月三十日に交付決定の取り消しに加え、七月二十五日に警察当局へ告訴を行ったものでございます。
 次に、平成十三年度の新製品・新技術開発助成金に関する調査についてであります。
 都は、平成十五年七月八日、公社に対しまして、株式会社コンネットに交付した当該助成金について調査の実施を指示いたしました。
 公社は、この指示によりまして、七月十日から同株式会社への訪問調査を含め、研究開発に伴う機器、資材等の納入企業や外注先企業について、現地調査や電話等による聞き取り調査などを行ったところでございます。
 研究開発の成果品につきましては既に確認されているため、主として事務手続面の調査を行いましたが、八月末までの調査の結果、当該助成につきまして不正の事実は確認されませんでした。
 次に、収益納付についてであります。
 助成を受けた事業者は、助成事業年度の翌年度から五年間、開発した製品の企業化などによって得た収益を、交付を受けた助成金額を上限として、助成主体である公社などに納付することになっております。
 平成十四年度の企業化状況報告では、財団法人東京都中小企業振興公社が行った助成金事業において約半数が製品化され、四分の一の企業で販売されております。技術開発に伴う高いリスクを考慮すれば、助成制度は中小企業の技術開発支援の面で大きな成果を上げていると考えております。
 最後に、研究テーマの開示についてでございます。
 当初の開示決定におきましては、助成事業の研究テーマを開示することにより当該企業の競争上の利益を損なうおそれがあると判断したため、研究テーマ名を非開示としたものでございます。
 しかし、その後、既に研究テーマ名をホームページなどで公開している例が、調査したところ明らかになりましたことから、改めて各企業に意見を照会いたしまして、開示に同意した企業の研究テーマ名を開示することとしたものでございます。
 来年度からは、助成事業につきましては、各企業に対し、申請受付時に研究テーマ名を開示する旨を周知した上で、その開示を行っていく予定でございます。
 最後に一言、この事業の非常にネガティブな面が強調されましたので、改めまして事業の意義について少し述べたいと思います。
 厳しい経済環境の中で生き残りをかける中小企業にとって、新技術にかける競争力の向上は不可欠でございますけれども、同時に技術指導の必要性、開発資金の不足が大きな問題となっています。
 この助成金事業は、こうした企業の開発リスクを軽減するとともに、産学公コーディネート、これは平成十年から設けまして、このコーディネーターのもとで技術や経営面の指導助言をあわせて行うことで製品化を促進するなど、実用化に直結する研究開発のために、極めて効果的な事業でございます。新製品、新技術開発の波及効果も大きくて、当該企業の競争力強化に大変大きな役割をしております。
 それで、不正のことにつきましては断固処置するとともに、これを私どもの今後の事業運営に十分反映し、助成事業による産業振興に一日の後退もないように局を挙げて取り組んでまいります。
 〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 公益法人の非常勤の理事等に対する報酬の支払いについてのご質問にお答えいたします。
 公益法人は、一般に不特定多数の者の利益実現を積極的に目指すということを目的としているために、非常勤の理事等に対しては、原則として無報酬とし、費用弁償を行うように指導しておりますが、非常勤の理事等が担う業務の専門性を考慮するときに報酬支給が妥当である場合も考えられます。
 それぞれの公益法人の意向を踏まえつつ、非常勤の理事等の勤務実態及び報酬額の決定方法などを総合的に勘案し、適切に対応してまいります。

○議長(内田茂君) 以上をもって質問は終わりました。

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