平成十五年東京都議会会議録第十四号

○議長(内田茂君) 七十七番林知二君。
 〔七十七番林知二君登壇〕
 〔議長退席、副議長着席〕

○七十七番(林知二君) 一般質問を行います。
 まず初めに、知事の政治手法について伺います。
 就任以来、知事は多くの政策を打ち出してまいりました。今般決着がつくであろう銀行税、そしてホテル税、カラス対策、お台場でのカジノ、ディーゼル車規制、新銀行など、多くの都民が目を見張るものであります。
 小泉首相が自民党総裁に再選され、内閣改造が行われたところですが、その小泉さんはいつも、民間でできることは民間にやってもらうということをいっています。私も、個人でできることは個人が、民間でできることは民間が、地域で取り組めることは地域が、行政は行政でしかできないことをやるというのが基本であると思っています。
 どこまで税金を使って行政が手を出すかということは難しいところですが、おのずとその枠というものはあるものと思います。そのことが小さな政府につながるものと考えます。
 区議会の時代、これは財調で措置してもらえるからとか、この施設は国から幾ら、都から幾ら、区の財源はこれだけの負担で済むんだからといった説明がよくなされましたが、住民からすれば、国税も都税も区税も同じ税金なんだよなと思ったものです。
 知事のこれまでの政治手法は、どおんと大きくアドバルーンを上げる、華々しく衝撃的でありますので、都民は東京都がそんなことをやってくれるのかと期待する。多くの人たちを巻き込んで、浮かんでいるうちはよいのですが、少しずつ空気が抜けてきて、結実するものが余りない、結局何だったのか、このパターンが多いのではないかと思います。選挙向けといわれてしまえばそれまでですが、行政手法としては他の方法もあると思うのです。
 銀行税についていえば、銀行に公的資金が注入された時期であり、銀行に対する不信感からほとんどの都民が後押しをしたこと、またタイムリーであったことも事実です。他の道府県も東京都同様、財政難でありますので、主要大都市の県知事たちと相談をして、しかる後に同時に提案するという手法をとったのなら、多少局面は変わったのかなとも思います。実際、大阪府が東京都に追随しようとしたのですから。
 国において、今まで経済界の反対で先送りになっていた外形標準課税の導入が来年四月から実施されることになった、そのことの呼び水役を果たしたことは大きな成果だと思います。一方、知事があれほどバッシングしていた大手銀行の収益改善の助け船になったこと、国の外形標準課税導入に吸収されてしまうのは皮肉なものです。
 条例改正、補正予算の審議がこれから行われるわけですが、私たち議会側としては、提案時も、今回の和解合意も、議会は追認機関でしかない立場に置かれていること、結果が先にありきでは、議会そのものの存立にもかかわります。
 返還する税金が二千二百二十一億円、還付加算金が百二十三億円、裁判費用が約九億円、これにかかわった多くの人々の手間暇など考えますと、財政運営上、最善の行政手法であったのか、釈然としない部分が残ります。
 カジノについて申し上げます。
 やはりその打ち出し方は大変華々しく、東京都がカジノ、お台場にラスベガスなど、新聞の見出しに躍ったのを今でも思い出します。その後、第一庁舎での二日にわたる模擬実験、さらには臨海副都心にカジノ体験施設をつくる構想を発表したりしましたが、結局、去る六月上旬、これも法律が変わらない限り無理として、実験を断念してしまいました。
 水面下での働きかけを二年、三年と続け、法改正の見通しがついたところで、土地を初めとする周辺環境を整え、そして安心して事業を任せられる企業を募るというのが、行政としての枠組みなのではないかと思います。
 現在は、法改正に向けて、国に強く働きかけていくということになり、結局、スタートラインに戻ってしまった状況であります。
 さて、去る六月二十四日、第二回都議会定例会で、石原知事は東京ドームでの競輪の再開を明らかにしました。これも同じような手法の滑り出しであると思います。
 六月二十七日、定例記者会見では、知事は、東京都の責任者が文京区長と会っていないみたいだと話しています。続く七月一日の代表質問で、我が党の田中良前幹事長が、文京区長の意思は反対で強く固まっているようだがとただしたところ、具体的にはこれから検討したい、地元文京区の理解を得ることが何よりも必要だと思う、もう少し精査して突っ込んだ話し合いをする必要があるのじゃないかと思う、と答えられております。
 こうした一連の流れを見ますと、この競輪復活の提案がいかに唐突で乱暴であったかがわかります。文京区との事前の話し合いもなく、具体的な検討もない中で、突然、都議会の本会議場で知事が表明したということであります。
 後楽園の競輪は昭和四十八年に廃止されたものでありますが、その際、東京都と株式会社後楽園スタヂアムとの間で、以後、施行者のいかんを問わず、後楽園競輪場を自転車競技の用に供してはならないものとするとの協定書が締結されております。
 文京区では、今回の知事発言に驚き、七月九日に区長を本部長とする後楽園競輪再開反対本部を設置し、翌十日には、区長、区議会の正副議長、全会派の幹事長がそろって、都知事、都議会議長に対し、再開反対の要請活動をしております。その後、各所で反対集会、署名運動が行われ、くしくも本日夕方、二十団体以上と聞いておりますが、文京区内のほとんどの団体が参加して、シビックセンターで競輪再開反対文京区民連合設立総会と総決起集会が開催されるということであります。
 文京区は、その面積十一平方キロの中に百二十五の学校があります。実に一平方キロに十一の学校があるわけで、まさに平成十三年七月に策定された新基本構想でも、「文の京」を標榜しているところであります。
 私が文京区から聞いたところでは、知事発言以降、東京都からのアプローチはないということですが、六月二十四日以降今日まで、東京都はどのような動きをし、具体的な検討をどの程度行っているのか、伺います。
 また、本会議場での知事発言であることから、文京区は大変深刻に受けとめております。知事自身、地元文京区の理解を得ることが何よりも必要であると答弁されておりますので、今夕の集会などの情報をとり、多くの文京区民の反対を認識する中で、六月二十四日の競輪再開の発言を改めて撤回すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、東京の森づくりの推進について伺います。
 六年前、私は都議会民主党の仲間とともに多摩の森林の視察に訪れ、地元の人から日照被害の話を聞き、奥多摩にも日照被害があるのかと愕然としました。林業が成り立たず、間伐が進まないために生じた問題だというのです。
 その後、東京都においては、重要施策で森林再生プロジェクトを立ち上げ、間伐対策の充実などに積極的に取り組んできたところであり、また、地球温暖化対策がいわれる中で、私たちは森林が果たしている環境保全などの公益的な機能に注目して、積極的に森林再生を図るべきだと主張してきたところです。
 このような中、先日、東京都は、森づくり推進プランの中間のまとめを発表し、そのポイントとして、森づくりに環境の視点を新たに加えるとともに、多摩の森を環境保全を中心とした保全型と、木材資源循環を中心とした生産型とに区分したことを挙げています。
 そこで、特に管理が問題となっている杉やヒノキについて、保全型と生産型をどのような視点、考え方に立って区分し、施策を推進していくのか、基本的な考え方について所見を伺います。
 また、森づくり推進プランは、森林資源を生かした新たな産業創出をポイントの一つに掲げています。
 東京都内で森林産業と呼べる具体例として、森林所有者がみずからコテージを経営し、宿泊客に自分の山で林業体験や自然観察をさせ、安定した客数を確保し、結果として森林経営の安定にも結びつけている事例があります。
 また、ドイツのクナイプ療法のように森のフィトンチッドを生かした健康サービスなども、高齢化が進む社会にとって非常に期待される分野であると考えます。
 私は、こうした森林産業の育成に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、森林産業の創出に向けた東京都の取り組みについて、所見を伺います。
 また、森づくり推進プランでは、第一の戦略である、都の取り組みとして森を再生・保全する、の中で、里山林の保全施策の推進を掲げています。里山の保全を森づくり推進プランの中に盛り込んだことは評価するものですが、その具体的な取り組みとなると、厳しい状況があるようです。
 私は、平成十二年九月の都議会の質問で、里山保全地域の創設を質問し、その後、自然保護条例が改正されましたが、厳しい財政状況の中で、保全地域の指定は進んでおりません。また、一昨年の十二月の都議会では、同僚の和田宗春議員が、市民緑地制度を参考に、NPOと連携した緑地保全策を提案し、前向きな答弁をいただきましたが、いまだ里山保全を具体化するような取り組みが見られません。
 東京都においては、引き続き、里山保全地域の指定も視野に入れ、NPOや企業などとも連携した多様な方策も工夫しながら、里山の保全を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、環状八号線の整備に伴う課題について伺います。
 環状八号線は、区部の最も外側を通る環状線として、昭和二十一年に都市計画決定され、昭和三十一年の事業着手以来、五十年近くにわたって整備が進められております。現在では、練馬、板橋の両区を結ぶ区間を残すのみとなり、平成十七年度中の全線開通に向けて鋭意努力していただいております。
 私の地元であります練馬区においては、本年三月、春日町トンネルが完成し、三月十六日より川越街道と目白通り間が暫定利用されております。本格的に利用されているわけではありませんが、私自身、幹線道路が身近に建設されたのを初めて経験しました。町並みの変化、生活動線の変化に驚いております。自動車が思わぬ道路を使い出したり、前はこうだったのに、どうしてこんなふうになってしまうんだといった声をよく耳にします。私自身、現地を頻繁に車で通る者として、全面開通になったときが心配であります。
 そこで、高松一丁目の五差路の交差点について質問します。
 この交差点から北へ向かう道路は、光が丘団地の開発に伴う周辺整備事業の一つとして、両側に二メートルの歩道がある幅員十メートルの道路が整備されております。当然、環八に接続するという住民説明が行われる中で整備されたわけですが、環八との交差点には信号機が設置されず、現在は左折だけの処理で、周辺の住民の皆さんは、大変な不便を強いられております。
 さらに、この問題は近隣の道路にも大きな影響を及ぼしております。練馬中学校東側正門前の道路のうち、環八より南側区間は、幅員は六メートル、両側に電柱が立っております。環八の暫定供用が始まる前も通行車両が多く、危ない道路とされておりました。現在は、さらに車の数がふえたため、練馬中学校の正門を越えて信号待ちしている状況をしばしば見受けます。練馬中学校の生徒、練馬幼稚園の園児、テニスコートヘ来る人たちや自転車が、大変危険な状態にあります。
 そのため、問題の五差路の交差点の交通処理は、この交差点から北へ向う道路と旧目白通りの接続により、練馬中学校正門前の道路の危険性を減少させる意味からも、極めて重要であります。
 そこで、この五差路の交差点の交通処理が、環八の全面開通時にどのようになるのか伺います。
 以上で一般質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
 〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 林知二議員の一般質問にお答えいたします。
 環状八号線の交通処理についてでございますが、幹線道路の整備に際しては、周辺生活道路との整合を図る必要がございます。
 お話しの高松一丁目五差路につきましては、光が丘方面から環状八号線への右折進入の安全性を高めるため、現在、交通管理者や練馬区と交差点の位置の変更について協議を進めております。
 十七年度の全線開通を踏まえ、練馬区と連携を図りながら、地元住民の理解と協力を得て、利用しやすい道路の整備に取り組んでまいります。
 〔知事本部長前川燿男君登壇〕

○知事本部長(前川燿男君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、競輪に関する検討状況でございますが、現在、都市型の新たな娯楽として、若者や女性も楽しめる、現代的でスマートな競輪のイメージについて、内部で検討している段階でございます。
 次に、今後の進め方でございますが、知事もかねてからお話しになっているとおり、地元文京区並びに文京区民、また広く都民の理解が必要であると考えており、今後とも、こうした考えに基づき進めてまいる所存であります。
 なお、この件につきましては、文京区との事前の事務調整が不十分であったものであり、お話しの政治手法の問題とは関係がないと考えております。
 〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 東京の森づくりに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、森づくり推進プランの中間のまとめにおける森林の区分と施策の推進についてでございますが、プランでは、木材生産を重視する生産型と、公益的機能を重視する保全型とに森林を区分いたしました。
 生産型は、林道の整備状況や杉、ヒノキの生育に適した立地を生かし、コスト削減手法の導入により、効率的な木材生産が可能な資源循環の森を目指すものでございます。
 保全型は、木材生産が困難なため、計画的な間伐で針広混交林化を進め、より自然な姿の森林を目指すものでございます。
 今後、学識経験者や市町村、森林所有者等による協議会を立ち上げまして、区分の具体的な基準を設定し、これに応じた施策を推進することとしております。
 次に、森林産業の創出に向けた取り組みについてでございますが、森林は、木材のほか、キノコ等の食材や、医薬品の原料などの豊富な資源とともに、人の心と体をいやす保健レクリエーションの場としての機能などを持っております。
 プランでは、このような森の持つ資源や機能を新たな産業資源としてとらえ直し、観光や健康産業などに活用していくこととしております。
 今後、地元の関係者を初め広く大学や企業などに呼びかけまして、ネットワークづくりを進め、多摩の森林資源を生かした新たな産業を生み出していく考えでございます。
 〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 里山の保全についてお答えいたします。
 里山保全地域の指定につきましては、土地所有者の理解や継続的な保全管理体制づくりなど、検討すべき多くの課題がございます。
 このため、現在、複数の地域で、地元自治体や市民団体等の参加を得まして、里山保全のあり方を共同して検討する場を設置しており、一部の地域では、今年度試行的にボランティアによるササ刈り等の植生復元活動に着手することにしております。
 また、昨年指定いたしました青梅上成木森林環境保全地域におきましては、初めて、企業の協力を得まして、NPOなどと連携した保全活動を開始しております。
 今後、これらの取り組みを踏まえまして、さまざまな主体と連携した里山保全の具体的な方策について検討してまいります。

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