平成十五年東京都議会会議録第十四号

   午後三時五十六分開議

○議長(内田茂君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十七番鈴木一光君。
 〔四十七番鈴木一光君登壇〕

○四十七番(鈴木一光君) 石原知事におかれましては、きのう、きょうと、長時間ご苦労さまでございます。中には、全く間違った質問、意見、批判等があって、さぞかしお疲れでしょうが、あと何名でもありませんので、頑張っていただきたいというふうに思います。
 まず、東京ドームにおける競輪の開催について伺います。
 知事は、先般、都市型の新たなエンターテインメントの試みとして、東京ドームの施設を利用した競輪を開催したいとの意向を表明されました。これに対して、地元文京区では、庁内に後楽園競輪再開反対本部を設置して、区長並びに区議会議長が競輪復活に反対する要請書を都に提出するなど、反対の動きが見られます。
 しかしながら、もう一方では、知事がおっしゃっている新たな競輪のイメージが示されてから判断してもよいのではないかという声が文京区民の中にあるとも仄聞しております。
 このように、さまざまな意見がある中で、私も幾つかの競輪場について調査をいたしました。入場者の増加並びに売り上げの向上が目的であるとは思いますが、各競輪場では、地域社会との対話と親しみやすい競輪場を目指して、積極的な取り組みが行われております。
 例えば、函館競輪場は、これまで競輪専用の施設として利用されてきましたが、既存施設をバリアフリーに改修するとともに、大型映像装置やギャラリースペースを設置し、映画会やカラオケ大会、展示会場など多目的に利用できる場所として広く住民に開放されております。また、京王閣や大宮競輪場では、社会福祉団体及び市民参加による福祉に関する啓蒙活動や地域活性化のためのイベント会場として利用されております。
 この問題の解決に当たっては、以上申し上げましたような住民の交流の場として、また地域活性化の拠点として活用される先例を参考にしつつ、文京区、また文京区民、さらに広く都民が意見を出し合い、それぞれにとって有益な方策を探っていくべきであると私は考えております。
 幸い、知事ご自身も、当初から、議会答弁や定例記者会見などで、斬新でスマートな競輪のメリットを関係者に理解いただく、地元文京区の理解を得ることが何よりも必要だとの認識を示しておられますので、そうした認識に基づいて論議を尽くし、最良の選択をしていただけるよう要望しておきたいと思います。
 さて、こうした流れの中で、文京区内の町会やPTAなどを中心として競輪再開反対文京区民連合会の創立総会と、競輪再開阻止に向けた総決起集会が本日十九時から開催されると聞いております。
 このような地元での動きについて、知事はどう考えているのか、基本的姿勢をお伺いしたいと思います。
 次に、東部地域病院について伺います。
 この三月、東部地域病院で起きた死亡事故については、まだ記憶に新しいところです。五歳のお子さんが腹痛を訴えられ、病院を受診しながらも、容体が急変し、亡くなられたという大変痛ましい事故であると思います。こうした視点から、マスコミからも、医師が迅速に対応しなかったとか、引き継ぎが十分でなかったとか、入院後容体急変に至るまで放置したなどと大きく報じられたため、社会的に厳しく批判されることとなりました。
 その後同院は、原因究明及び信頼回復のために、外部委員を交えた事故調査委員会で検討してきた結果を六月に調査報告書にまとめ、公表いたしました。
 この報告書では、診療経過の検証や、再発防止のための今後の取り組み等について述べられておりますが、受診の際、医師が直ちに対応しなかったことや、引き継ぎが不十分であったこと等、病院の対応に不適切な点があったことを認めています。
 私は専門家ではありませんので、診断の妥当性や死因についての論議に立ち入ることはできませんが、患者さんに対するこのような不適切な対応は、適正な医療を提供する地域の中核病院としてあってはならないことであります。
 しかし、葛飾区の住民の一人である私から見て、同院は開設以来、地域に不足する医療を提供してきており、特に小児救急については、事例後も従来と変わらず患者が詰めかけているなど、地域の住民にとって同院は依然としてなくてはならない存在だということに変わりありません。
 そこで、お伺いします。今まで東部地域病院が地域の医療において果たしてきた役割について、都としてはどのように認識しているのでしょうか。
 調査報告書では、事故の再発防止に向けて、七つの改善項目を掲げております。地域の中核病院として、地域住民に必要不可欠な病院であり続けるため、この改善項目を着実に実践することが、信頼回復への第一歩だと考えます。
 そこで、お伺いをいたします。都が積極的に関与する中で、七つの改善項目への取り組みを着実に実施すべきだと思いますが、その取り組みは現在どうなっているのでしょうか。
 きのうから新聞等でも大きく報道されていますが、慈恵医大附属青戸病院では、三人もの医者が逮捕されるという大変な医療事故が発生しました。東部地域病院のすぐ近隣の病院で起きたこともあり、私は重大な関心を持つと同時に、殊のほか、葛飾区民としてまことに残念な事故であります。これらの医療事故により、都民の医療への信頼が根底から覆されてしまうことを危惧しております。
 都は、東部地域病院はもちろん、全都の医療安全体制について指導を強化し、このような事故が再び起こることがないよう渾身の努力を行っていくことを強く要望いたします。
 次に、北米での大規模停電に関連して、東京の重要な都市基盤の一つである下水道施設の老朽化対策と電源確保についてお尋ねいたします。
 新聞報道によると、わずか十秒程度で巨大都市ニューヨークの都市機能を麻痺させた停電について、アメリカのブッシュ大統領は、今回のことは我々にとり警鐘となった、送電網は老朽化しており、近代化が必要だと述べるなど、電力システムの更新が急務となっていることを強調しました。
 このことは、都市インフラがどのように立派に整備されていても、それ以降の維持管理や更新が適切に行われていなければ、その役割が果たせず、都市活動や都市生活に重大な悪影響を及ぼすということを示すものであります。このような観点から我が東京の下水道を見ると、明治時代から百年以上もの長い歳月をかけて整備してきたこともあり、施設の老朽化が進行しているものと思われます。
 最近、下水道管の老朽化に起因する道路の陥没事故が新聞の紙面で目につくようになりました。先日の新聞報道によれば、下水道局は陥没を減らす努力をしているようでありますが、依然として年間一千件を超えて発生しているとのことであります。下水道管は、地下に埋設されていることから、ふだん目に見えないため、忘れられがちで、何の不安も感じないのが一般的であります。
 そこで、まず、年数が経過した下水道管の老朽化の現状とその対策の取り組みについてお伺いをいたします。
 また、古い下水道管は、道路陥没だけでなく、臭気や浸水被害を引き起こすとともに、雨が降ったときに汚水が処理されないまま河川や海に放流される場合があるという問題もあります。
 これらの現象は、都市構造の変化に適合していないあらわれであります。下水道は、下水処理場、ポンプ所、そして下水道管が一体となって一つのシステムとして機能するものであることから、ポンプや処理施設などの設備の老朽化についても同様に危惧しています。下水道も、都市の発展に伴い、その役割や機能を絶えず見直しながら、都市機能を支えていく必要があります。都財政は依然として厳しい状況にありますが、どのように対処していくのか、局の考えをお伺いいたします。
 次に、電源の確保でありますが、今回のニューヨークのような大規模な停電が発生すれば、動力を電力に頼っている下水道は機能しなくなるのは明らかであります。特に東京の下町は豪雨時の雨水排水をポンプに頼っていることを考えると、ぞっとする話でもあります。
 東京の下水道は、都内全域で使用されている電力量の約一%に相当する膨大な電力を消費すると聞きますが、北米のような大規模な停電に備えるためにも、危機管理体制を強化する必要があります。
 既に、自家用発電機などにより非常用電源を確保し、一時的には下水道機能は確保できるとのことでありますが、特に下水処理場やポンプ所は都内に広く点在していることから、電力会社からの供給だけに頼らない電源の確保に向けた取り組みを、さらに充実していく必要があると考えます。そこで、下水道局でのこれまでの対応状況と今後の取り組みについてお伺いをいたします。
 次に、我が党の代表質問において、治安対策についてただしたところでありますが、私からは、都民の生命、財産を守る基盤となる住宅の防犯対策についてお伺いをいたします。
 この十月一日には、東京都安全・安心まちづくり条例が施行されるとともに、住宅における犯罪の防止に関する指針が公表されると聞いています。
 住宅における犯罪の代表的なものに空き巣がありますが、近年の空き巣の手口は、ピッキング、サムターン回し、ガラス破りなど多様化しており、こうした新たな犯罪の手口やその対応策について、都民に正確な情報を提供していくことが重要ではないかと考えられます。
 住宅の防犯対策について、都は都民に対してどのような普及啓発を行うか、お伺いをいたします。
 また、新たに建設される住宅については、防犯性を備えたものとしていくことが有効であると考えています。そのために、防犯対策を講じた住宅の建設を誘導していく施策を早急に実施すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 最後に、水元公園の活性化について伺います。
 昨年九月の第三回定例会の私の質問に対しまして、知事は、水元公園の景観を絶賛し、その資源の活用をしなければならないとご提案をされました。その一つの方法として、水元公園を代表する水面である小合溜を活用し、レガッタのメッカにしたいといわれました。一大観光名所にしたい、スポンサーも見つける、都に任せていただきたいとおっしゃってくださいました。このことは、水元公園ばかりでなく、水元地域全体の活性化につながり、私たちは胸が躍るようなありがたい答弁であり、私も、実現に向けて地元の理解が得られるよう努力してきたところであります。
 その後一年経過した現在、水元公園の魅力をより高める公園活性化の一環としてのレガッタ開催について、都の取り組み状況をお伺いいたします。
 また、地元では、レガッタの開催を期待する声が上がる一方、ボートの起こす波などで、自然環境に対する影響を懸念する声もあるようですが、(発言する者あり)都は自然環境に対しどのように考えているのか、お伺いをいたします。みんな、おかしいと思うでしょう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
 そして、レガッタの開催は、水元公園や水元地域全体の活性化をにらんで実施すべきであると思いますが、都の今後の進め方について伺います。
 すぐには公式競技は難しいと思いますが、自然の中でボートをこぐ爽快さを多くの都民に経験してもらうと同時に、石原知事にデモンストレーションでもやっていただきたいというふうに考えておりますが、水元公園のすばらしさを大いにアピールし、より多くの都民に利用してもらい、公園並びに水元地域全体の活性化を図るため、ぜひとも都民が主体のレガッタを実現すべきと思いますので、区や、あるいは埼玉県、あるいは八潮市、地元の方々と連携して、ぜひ進めていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
 〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 鈴木一光議員の一般質問にお答えいたします。
 競輪の開催についてでありますが、本日、集会が行われていることは承知をしております。
 現在、都市型の新しい娯楽としての、若者や女性にも楽しめる、現代的でスマートな競輪のイメージについて、内部で検討している段階でありますが、一度昔できた古いイメージというのはなかなか払拭しにくいものでありまして、そこら辺が人間の保守性ということでしょうけども、いずれにしろ、考えておりますことは、従来と異なる新たな競輪が実現すれば、経済波及効果や雇用創出効果なども見込まれるとともに、より深いファン層などが集まる、エンターテインメント性の高い観光スポットとしても期待されるんではないかと思っております。
 また、お話の先例などにも見られますように、これまでの殻を打ち破り、地域社会の中で新たなイメージを構築することができれば、施設が地域に根づきまして、地元の活性化にもつながるものと確信しております。
 いずれにしろ、あれだけのスタジアムが、野球をやっているとき以外がらあきでいるというのも、もったいない話だという気がしますし、競輪がだめなら、私は、都なり国が主催した室内陸上競技大会のようなものをやったらどうかなと思っております。
 いずれにしろ、競輪開催に当たっては、地元文京区並びに文京区民、また広く都民の理解が必要であるということは、今までも議会答弁などで再三申してまいりました。その認識は今も変わっておりません。
 他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
 〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 水元公園でのレガッタ開催に関する三点の質問にお答えいたします。
 まず、取り組み状況についてでございますが、水元公園は、開園面積七十五ヘクタール、区部最大級の公園でございます。特に、広大な水面である小合溜は、メタセコイアの森とともに美しい水郷景観を形成しております。レガッタの実施は、水元公園の魅力をより一層高め、公園の活性化に寄与するものであります。
 都は昨年、地元葛飾区、東京都ボート協会と、小合溜の活性化を図るため、準備会を設置し、本年、三者共同で支障物や水深等の調査を実施いたしました。
 次に、レガッタによる自然環境への影響についてでございますが、これまでも都は、水元公園内の水産試験場跡地などにおいて、地元区や関係団体と話し合いながら、自然環境の保全に十分配慮した公園整備を進めてきております。
 レガッタ開催に当たっては、小合溜の土手の侵食や水質汚濁などはほとんど生じないと考えておりますが、今後、地元区や専門家の意見を聞きながら、環境保全に配慮し、適切に対応してまいります。
 最後に、水元公園の活性化に向けた今後の進め方についてでございますが、これまで都は、メタセコイアのライトアップや、大自然塾、自然観察会などを開催し、水元公園の活性化に努めてまいりました。
 レガッタ開催もそうした取り組みの一つとして位置づけ、現在、地元区及び関係団体と共同して、実際に小合溜にボートを浮かべた状況や景観を広く都民に見ていただくため、ボートの試漕会の準備を進めております。
 今後は、地元区との連絡会を設置するなど連携強化を図り、水元公園の魅力がより一層高まるよう、公園及び周辺地域の活性化に努めてまいります。
 〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 東部地域病院について二点の質問にお答えいたします。
 まず、東部地域病院が地域の医療において果たしてきた役割についてでございます。
 この病院は、平成二年に、医療機関が不足していた区東部地域の中核病院として設置されたものでございます。住民や地域の医療機関からの期待にこたえるために、救急医療や循環器系の医療を中心に、共同診療等の医療連携にも積極的に取り組み、地域の医療において大きな役割を果たしていると認識しております。
 次に、事故の再発防止に向けた改善項目への取り組みについてでございます。
 東部地域病院の調査報告書では、再発防止や信頼回復に向けて、引き継ぎ方法の改善やチーム医療の推進など七つの取り組みが必要であるとし、現在、保健医療公社と病院が一体となって、その改善のための取り組みを進めております。
 都は、都民の病院への信頼回復を早期に実現するため、その取り組みなど今後の病院運営について、積極的に指導、また支援してまいります。
 〔下水道局長二村保宏君登壇〕

○下水道局長(二村保宏君) 下水道施設の老朽化対策と電源確保など、三点のご質問にお答えいたします。
 まず、下水道管の老朽化の現状とその対策についてでございますが、区部の下水道管約一万五千キロメートルのうち、耐用年数でございます五十年を超えているものは約二千キロメートルとなっております。テレビカメラなどを用いた調査によりまして、年数の経過に伴い、道路陥没の原因となるひび割れや損壊等の発生が多くなっていることを確認しております。
 この調査結果をもとに、応急的な措置をしますとともに、緊急性の高い地域から下水道管の更新を進め、平成十四年度末までに、老朽管の一四%に当たります二百七十キロメートルについて実施したところでございます。
 次に、都市構造の変化への対応についてでございますが、下水道施設も、都市の発展に伴い、ご指摘のとおり、システム全体の役割や機能を絶えず見直し、都市型水害への対応や公共用水域の水質改善などを図ることによりまして、都民生活の安全性や快適性を確保していく必要がございます。このため、日常的な維持管理の徹底に加え、老朽化対策に合わせまして、能力不足の解消や機能向上を図る再構築を実施しております。
 今後とも、厳しい財政状況を踏まえ、重要度、緊急度を考慮するとともに、国庫補助金などの財源の確保や、新技術の導入によるコスト抑制を図るなど、計画的かつ効率的に事業を進めてまいります。
 最後に、電源確保の対応状況や今後の取り組みについてでございます。
 都内の処理場やポンプ所には、停電時においても雨水の排除機能などが維持できるように、自家用発電機を設置しているところでございます。また、下水の処理過程で発生します消化ガスや焼却廃熱など、再生可能エネルギーを活用した発電に加えまして、大容量の蓄電が可能なNaS電池を導入するとともに、これらを組み合わせました電力の確保をPFI事業により進めております。
 さらに、国や民間と連携し、バイオマスの一種であります下水汚泥を効率よくガス化し発電する、新技術の研究開発に着手したところであります。
 今後とも、多様なエネルギーの活用に努め、下水道事業の安全性、信頼性をより高めるために取り組んでまいります。
  〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 住宅に関する防犯対策について、二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、住宅の防犯対策の普及啓発についてでございます。
 空き巣犯罪が増加傾向にあり、またその手口も多様化していることから、都民の防犯に関する取り組みを促すための普及啓発を行うことが重要でございます。
 都は、さきに策定いたしました安全・安心まちづくり条例に基づきまして、お話にもありました住宅の防犯に関する指針を現在策定しております。この指針の内容を含め、来月実施いたします東京都住宅月間の展示や講演会などにおきまして、広く都民に住宅の防犯に関する情報提供を行ってまいります。
 また、住宅の防犯に関する留意点とその対策につきまして、早急に取りまとめを行い、パンフレットの作成やホームページへの掲載などによりまして、広く普及啓発を図ってまいります。
 次に、防犯対策を講じた住宅についてでございますが、防犯性を備えた住宅の建設を誘導していくことは、居住の安全性を確保する上で重要でございます。このため、一定の防犯対策を講じた住宅の建設に対する支援策といたしまして、融資上の優遇を行う新たな仕組みにつきまして、現在、住宅金融公庫と鋭意協議を進めております。
 この仕組みは、全国で初めて戸建て住宅も対象とするものでございまして、条例の施行に合わせまして、十月一日から実施できるよう取り組んでおります。

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