平成十五年東京都議会会議録第十四号

○議長(内田茂君) 五十三番大塚隆朗君。
 〔五十三番大塚隆朗君登壇〕
 〔議長退席、副議長着席〕

○五十三番(大塚隆朗君) まず初めに、先週の土曜日の正午過ぎに震度四の地震が発生し、大正十二年九月一日に発生した関東大震災から、ちょうど八十年が経過し、その瞬間、不気味な感じがいたしました。
 また本日、北海道釧路沖で、けさ四時五十分ごろ、マグニチュード八、震度六弱の地震が発生いたしました。今後の被害の拡大が心配されるところですが、まず被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 首都東京の地震発生の予知に関する研究や、地震に対する防災機能の強化が、さらに急がれることはいうまでもありません。そこで、地震の研究の歴史を振り返ってみますと、昭和三十九年に東大地震研究所所長の河角博士が、南関東地域における大規模地震六十九年周期説を発表いたしました。この説によれば、大正十二年から六十九年後の平成四年、さらにこれに偏差の十三年を加えた平成十七年までの間に、南関東において大規模地震が発生するとされております。
 また、平成十年、中央防災会議では、特に南関東地域においては、複雑なプレート構造の上に、首都機能を初め、社会経済活動に関する諸機能や人口が集積していることから、大規模な地震による危険度を十分考慮して対策を講じる必要性が高いと提言が出されております。
 幸いにも、現在のところ、首都東京はこうした大規模な地震には見舞われていませんが、逆に、いつ大きな地震が発生しても不思議はない、まさに切迫した状況にあるといえます。
 都はこれまでに、江東地区防災六拠点の整備など、安全に逃げ込める場所づくりを進めてきましたが、一部を除き、ほとんどの木造密集市街地が未整備のままでした。平成九年には、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、防災都市づくり推進計画を策定し、逃げないで済むまち、安全で安心して住めるまちの実現に向けて、これまで防災都市づくりを進めていますが、木造密集市街地の整備は依然として進んでいるように見えません。
 そこで、密集市街地はいまだに道路が狭く、緑も少なく、日常の憩いの場として地震発災時は一時的な避難場所ともなる公園や、避難路の道路などの公共施設整備は急務と考えます。先般、防災都市づくり推進計画の改定素案が発表されましたが、こうした観点を踏まえて、今後具体的にどのように防災都市づくりを進めていくのか、まず見解をお伺いいたします。
 また、昭和五十五年以前の建物は、木造の戸建て住宅に限らず、老朽マンションについても耐震性が疑問視されております。デパートや劇場などの商業施設や公共施設はほぼ耐震補強が施されておりますが、老朽マンションはほとんど手つかずの状態です。つまり、昭和五十五年以前の分譲マンションは現在約二十万戸ありますから、一世帯当たり平均三人としますと、約六十万人の都民の方々が震災時の被害について不安を抱いているわけでございます。都市防災の観点から、早急に耐震性の向上を図るべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
 知事は、先般の所信表明で、都内には、都営住宅の建てかえなどにより新たに利用が可能になる都有地が相当規模存在しており、こうした土地を活用しながら民間の創意工夫を引き出し、まちづくりを誘導すると述べられました。まさに、防災都市づくりを進めるには、こうした都営住宅などの公有地の有効活用が必要であると考えますし、特に、都内には建てかえ時期を迎えた都営住宅が約三万戸あります。これらの建てかえに当たっては、防災都市づくりを推進する観点から、地域の防災機能向上に寄与するような取り組みが一層必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、去る八月二十七日に一部の新聞で報道されましたが、千代田区と清涼飲料メーカーが協定を結び、地震が発生した緊急時に、電光表示板によります災害情報提供機能と、災害時に自動販売機内の飲料を無料で提供できる機能をあわせ持つ災害対策用自動販売機を同区の正面玄関に設置をいたしました。
 通常時は、行政のイベント案内や標語の広報活動、例えば東京都でいえば、江戸開府四百年事業の案内や、報道機関と提携しタイムリーなニュースの提供など、必要とされる情報提供を行うことができます。そして、いざ東京が大地震の被害をこうむった緊急時に、表示板を通じて、一斉報道機能によりリアルタイムに一度に多数の地震にかかわる情報を送信することができます。また、地域ごとの被害の状況に応じて、公共交通機関、安全な避難経路や地元の復旧状況などの情報提供にも個別情報が瞬時に提供できるとのことです。
 さらに、このシステムは、地震発生時に、ボタン一つで、避難してこられた方々に、都の施設に設置してあります自動販売機から一斉に無料で飲料が提供されます。
 都としては採用には課題が多いと思いますが、都民の方々に少しでも安心感を持っていただくために、防災関連で既に開発されたさまざまな民間のノウハウや技術を積極的に活用していただくよう、要望をいたしておきます。
 次に、都市交通施策についてお伺いをいたします。
 東京都は、交差点すいすいプランやスムーズ東京21拡大作戦など、交通渋滞対策に積極的に取り組んでいるところですが、私は、石原知事がかねがね現場感覚が大切といわれているように、これらの事業を実施するに当たっては、バスやトラック、タクシーなど、実際に車を運転する人たちの現場感覚に基づいた意見を反映できる仕組みができないかと考えております。
 例えば、東京都は、交通渋滞対策のための違法駐車対策であるスムーズ東京21事業の中で、駐車場活用のタクシープールの整備をプランの一つに掲げております。
 そもそも、タクシーの客待ち列による渋滞は、景気の低迷による利用者の減少と規制緩和によるタクシー増により需給バランスが崩れたものと考えるならば、その責任をタクシー業界にだけ求めるのでは、駅周辺の交通混雑の解決にならないと考えております。このため、タクシープールが未整備な駅において、タクシーの待機場所を確保するための取り組みは大変に重要です。スムーズ東京21事業における現段階の進捗状況を伺うとともに、この事業が効果的に進められるためには、実際にプールを利用するタクシー運転手の声を聞いて取り組まれることを望みますが、見解をお伺いいたします。
 近年、二十一世紀の東京の都市の発展を先導する文化、産業など、都市活力あふれるまちが次々とできております。本年四月にオープンしました、民間による国内最大級の市街地再開発プロジェクトであります六本木ヒルズにも、日本だけでなく、世界じゅうからも人が集まっているといっても過言ではありません。
 六本木ヒルズへの来街者数は一日十万人、就業者は約二万人、居住人口は約二千人となっておりますが、これだけ大規模なまちづくりにもかかわらず、観光バスやタクシーのためのスペースが十分確保されていないため、周辺の道路に駐車することにより、交通渋滞の原因ともなっておるわけでございます。
 世界に通用する二十一世紀の新しい都市をつくるに当たり、今後は、観光バス、タクシーのスペースを十分に確保するべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 次に、いよいよ五日後の十月一日に東海道新幹線品川駅が開業します。JR新橋から品川駅東側は、現在、汐留の開発、羽田空港のモノレールの玄関口、浜松町駅、そして品川駅東口の開発により、業務商業、都心居住の推進で注目を浴びるとともに、インフラ整備が進み、人の流れが大きく変わり、大変多くの方々が集中をしてまいりました。知事の所信表明の中でも触れられたように、まさに、今後、新幹線開業に伴って東京の南の拠点になることは間違いないと思います。
 しかし、一方では、港区側の西地区からJRの線路を東側に渡る経路は二本しかなく、大変混雑をしております。また、品川駅高輪口は東側地区よりまだ駅前整備の課題が多く残っており、新幹線開業と時を同じくして、十月一日に、西口で長年活動を続けてまいりました企業・地権者約二十者が集まり、仮称品川駅西口地区まちづくり協議会が設立をされます。京浜急行の羽田空港の玄関口として、東地区との連携を深め、東京の新しい拠点として魅力を高め、今後さらに発展していく地区だと思いますが、東西のアクセス道路の整備、国道一号線の拡幅など、高輪口の発展には東京都の強力なリーダーシップを発揮して、国、港区と一体となって進めていく必要がありますが、今後の品川地区の整備について見解をお伺いいたします。
 次に、去る七月十八日、お台場海浜公園の海域浄化実験が始まり、知事もお台場で通水式典にご出席になりました。その後、知事がいらした効果もあり、話題を呼び、冷夏にもかかわらず、多くの方々がお台場海浜公園で水遊びを楽しんでおりました。
 今回の試みは、貴重な都心部の水辺のオアシスの実現を目的にしたことで、大変評価できるものであります。しかし、一方で、従来から、遊泳禁止であるにもかかわらず泳ぐ人がいたり、夜間に花火やラジカセで高い音を出したり、違法駐車をするなど、ルールを守らない利用者が目立ってまいりました。二年前には、隣接の都営住宅の駐輪場が放火されるという事件も起こりました。
 私は、毎年、港区、そして連合港、そしてまた関係諸団体の方々と、お台場クリーンキャンペーンという海浜の清掃活動に参加をし、都民、そして住民の一人として積極的に、お台場海浜公園の魅力向上に努めております。お台場海浜公園がにぎわうことに異論はありませんが、今後多くの観光客が押し寄せることが十分予想される中で、さらに風紀が乱れるなど、環境の悪化につながっていく懸念もあります。
 そこで、約四千六百人の地域住民の不安を解消するために、今から、交通、治安などの問題解決に向けて、対策や実効性のあるルールづくりが必要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 最後に、私は今でも、あの海域浄化実験の式典で、知事が地元小学生と手を携えてスイッチを押したほほ笑ましい場面を思い起こします。すべての海上公園が、あの子どもたちにとって心から楽しめる公園にすべきだとそのとき思いました。
 そこで、知事があの式典に参加した感想と、お台場海浜公園を初めとする臨海部海上公園のあり方について見解を伺いまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
 〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 大塚隆朗議員の一般質問にお答えいたします。
 記念式典と海上公園についてでありますが、私もあのとき、非常にほほ笑ましい、楽しい思いをさせていただきました。
 私が幼いころ、近くの海で遊んだときのことを思い出しましたが、大分お台場の海とは違いまして、私が住んでいた逗子、葉山の海は、蘆花が「自然と人生」の中に随分描いた、非常に明媚な美しい海でありましたが、それに比べると、お台場の人工海浜は、何というんでしょう、閉鎖水域という、東京湾の奥の奥の院でありますけれども、いずれにしろ、子どもたちがあのなぎさに立って、沖を眺めながら海というものを感じ、思うということは非常に必要だし、結構なことだと思います。
 海上公園は、人々が安心して水や自然と触れ合えるようにするものでありまして、その充実は、都市の風格を高め、臨海地域の発展に寄与するとともに、新たな観光資源を創造することにつながっていくと思います。
 今回の海域浄化実験を契機として、海上公園がより都民に親しまれるように、また、東京の名所になるように期待しておりますし、工夫いたしますが、ただ、そこがいわゆる東京でも代表的なリゾートになればなるほど、集まってくる人が多くなればなるほど、ユーザーとしての規律が乱れて、ご指摘のように勝手なことをするやからがふえるのは当然でありますが、現場の方々の声をしんしゃくしながら、きちっとしたルールのようなものをつくって、本当に都民全体がエンジョイできるような、そういうリゾートにしていきたいと思っております。
 その他の質問については、関係局長から答弁いたします。
 〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 防災都市づくりなどに関します五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、防災都市づくりの進め方についてでございますが、ご指摘のとおり、延焼遮断帯や避難路ともなります道路や、一時的な避難場所となります公園などの都市基盤を整備することが重要でございます。
 そのため、防災都市づくり推進計画におきまして、十一の重点整備地域を選定するとともに、これらの地域ごとに整備すべき具体的な道路、公園を明示いたしました整備プログラムを策定することとしております。
 また、これらの整備に当たりましては、区とも連携し、公共用地を代替地として活用するなどの方策を講じまして推進を図ってまいります。
 次に、老朽マンションの耐震補強についてでございますが、建築物の構造基準は、過去の地震被害の教訓からたびたび強化されておりまして、特に昭和五十五年には大きな改正が行われました。平成七年の阪神・淡路大震災における建築物の被害状況報告では、昭和五十五年以前の建築物で損傷を受けない建築物もあったが、五十六年以降の建築物に比べて被害の程度は大きかったと指摘されております。このため、昭和五十五年以前の建築物はできるだけ耐震診断を実施し、必要があれば耐震補強等を行うことが望ましいと考えられます。
 東京都では、平成十二年に策定をいたしました耐震改修促進実施計画に基づきまして、マンションの所有者等に対しまして、耐震診断、耐震改修の必要性を周知するほか、診断機関の紹介や各種融資、助成制度の紹介を行っております。今後とも、診断、改修等の指導助言等を積極的に行ってまいります。
 次に、スムーズ東京21事業のタクシープール整備についてでございますが、主要駅の周辺ではタクシーが集中いたしまして、道路混雑の原因の一つとなっていることから、タクシー業界を含みます関係機関とともに、既存の道路空間などを活用したタクシープールの検討を行ってまいりました。
 具体的には、平成十四年度に渋谷駅西口におきまして、タクシー乗り場における待機の車の列を一列から二列にする取り組みを行い、あわせて、タクシー進入路となります道路の違法駐車を防止する対策を総合的に実施してまいりました。平成十五年度は、池袋地区においてタクシープールの整備を検討しております。
 また、ご指摘ございました、駅周辺を実際に利用しているタクシー運転手の方々の声の反映につきましては、具体的な方法について今後検討してまいります。
 次に、大規模拠点開発における観光バスなどの駐車スペースについてでございますが、都市再生を先導いたします大規模拠点開発では、これまで、道路、公園、駐車場など各種の都市基盤整備に努めてまいりました。多様な機能が複合し、多くの人が集まる大規模拠点の整備に当たりましては、ご指摘のような観光バスやタクシーのための駐車スペースについても、必要に応じましてその整備が図られるよう、今後、開発事業者とともに検討してまいります。
 最後に、品川地区の整備についてでございますが、当地区は、羽田空港へのアクセスの利便性に加え、新幹線新駅開業を迎え、東京の南の玄関口として重要な交通拠点となっており、東京の新しい都市づくりビジョンにおきましても、東京の都市づくりの重要な拠点として、新拠点に位置づけられております。
 既に、東口では、駅前広場の整備や、業務、商業、住宅などの複合した開発が進んでおり、今後も、JR車両基地の移転による跡地の発生など、さまざまな開発構想がございまして、大きなポテンシャルを持つ地区となっております。しかし、狭小な西口駅前広場や地区東西の分断など、さまざまな課題もございます。このため、都が、国を初め関係機関や地権者と協議、調整をいたしまして、東京の新拠点にふさわしい都市空間の形成を図ってまいります。
 〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 都営住宅の建てかえと防災についてのご質問でございます。
 都営住宅の建てかえに際しまして地域の防災機能を高めていくことは、防災都市づくりの観点から重要であると考えております。このため、都は、地元区市と連携を図りながら、防火水槽の整備や防災上有効な空地の確保などにも努めてまいりました。
 さらに今後は、都営住宅の建てかえにより新たに利用が可能となる土地を有効に活用いたしまして、民間の創意工夫を引き出しながら、木造住宅密集地域整備のための代替住宅の確保など、周辺の防災まちづくりとも連携した取り組みを進めてまいります。
 〔港湾局長成田浩君登壇〕

○港湾局長(成田浩君) お台場海浜公園の利用ルールについてのご質問にお答えいたします。
 現在、海上公園では、都民の利用を促進する観点から、各種規制の緩和を進める一方、遊泳や騒音など、危険あるいは迷惑な行為を禁止するなど、基本的なルールを定めております。
 ご指摘のお台場海浜公園では、こうしたルールが守られるよう昼夜巡回を行っておりますが、ことしの夏は、海域浄化実験の開始等に伴い、多くの来訪者が見込まれたところから、警視庁にも協力を求め、海上警備等を実施したところでございます。
 今後とも、地域の方はもとより、広く都民がより快適に利用できる公園づくりを進め、現行ルールについては、その周知徹底を図るとともに、利用の実態に即し、適宜見直しを図ってまいります。

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