平成十五年東京都議会会議録第十号

○議長(三田敏哉君) 五番北城貞治君。
   〔五番北城貞治君登壇〕

○五番(北城貞治君) まず最初に、優秀な技術を持つ中小工務店を精いっぱい応援する新たな住宅施策の展開についてお伺いをいたします。
 私は、昨年の第二回定例会で、中小企業応援団銀行の創設について質問をいたしました。今回の質問は、それに引き続く中小企業応援の第二弾としてのものでございますので、ぜひとも前向きなご答弁をお願いいたします。
 現在、日本経済は長期にわたりデフレ不況にあえいでおり、失業率が過去最高水準五・五%のあたりで高どまっているなど、雇用情勢は依然として厳しく、先月発表された月例経済報告においても、景気はおおむね横ばいとなっているが、このところ一部に弱い動きが見られると、一向に回復の兆しが見られません。
 一方、東京都内の中小企業の景況においても、六月調査では持ち直しの動きが見られたものの、一進一退の状態にあります。
 このデフレ不況を克服するためには、民間需要を喚起することが極めて重要であり、住宅への投資はそのかぎを握るものと私は考えております。
 住宅は、都民の経済活動や社会活動の基盤であり、だれもが豊かさと質を実感できる住宅を求めております。都の住宅政策の観点から見ても、量的に十分充足している今日、持ち家比率が低い状況の改善など、民間住宅施策に重点を置くべきであります。
 また、住宅投資の経済波及効果は、全産業平均を上回る一・九五倍の生産誘発効果があり、耐久消費財の消費拡大にも貢献をし、さらには十万戸の住宅建設で約二十六・三万人の雇用創出効果があるとされており、都内事業所の九九%を占める中小企業の活性化に大きく貢献することは確実であります。
 都は、デフレ不況対策として、地域を支える中小企業の活性化を図るためにも、経済波及効果の大きい住宅に目を向けるべきであると考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 私は、中小企業応援団の第二弾として、優秀な技術を持つ中小工務店を活用した住まいづくりを提案したいと思います。
 住宅業界は、資本金十億円以上の大手建設業者が八百社に対し、中小の建設業者、いわば工務店が四万五千社という、大変いびつなピラミッド構造になっているそうです。一昔前までは、そのまちに住む腕の立つ棟梁に、家族の思いやきめ細やかな要望を伝えながら、生涯で最大の買い物というべき我が家づくりを託したものです。そこには顔の見える信頼関係がありました。それがいつしか、大手主導の、顔の見えない画一的な住宅ビジネスに席巻をされてしまった感があります。同時に、現在、都民の大半は、あいまいな情報だけで、人生最大の買い物である住宅を購入しているのが現実ではないでしょうか。
 その原因として、流通過程が複雑で、消費者が選択しにくい市場の仕組みや、各地域に存在をする中小工務店が、それぞれ独自の優秀な技術力を持ちながら、大手と比較して、情報量、資金力、宣伝力などにおいて競争力が劣ることなどが考えられますが、私は、かつての顔の見える家づくりの仕組みから、顔の見えない家づくりの仕組みに変わる中で、信頼関係に基づき、自分の思いや夢を具体化させる仕組みが失われてきたことに、その最大かつ根本的な要因があるように思えてなりません。
 私は、これらの問題解決に、伝統的に培った優秀な技術がありながら、画一的な分譲住宅の下請仕事ばかりやらされて、優秀な技術を生かせない中小工務店の力を活用しない手はないと考えるのであります。
 そこで、中小工務店のすぐれた技術力を活用し、顔の見える家づくりを進めるために、どの工務店がどのようなすぐれた技術を持っているかなどの情報が簡単に入手できる仕組みの構築が必要であります。さらに、意欲のある工務店が出展できる共同展示の仕組みづくり、リフォームを含めた中古住宅市場の活性化支援策も有効であると思います。
 私が思いつくだけでも、このようなさまざまな施策の可能性が広がってまいります。当然、中小工務店への資金面での支援を、今準備が進められておりまする新しい中小企業応援団銀行がサポートすることにより、さらに効果は膨らんでいくと考えられます。
 具体的には、都内の中小工務店が住宅の発注を受けた場合には、中小企業応援団銀行がその契約額を限度に無担保で資金を融資するような制度を創設すれば、発注を受けても、優秀な技術を持ちながら運転資金の確保に苦しんでいる中小工務店は再生をされ、その技術は良質な住宅の確保に活用され、同時に地域経済の活性化の起爆剤になると確信をいたします。
 今こそ、中小企業応援団としての役割を果たす上においても、優秀な技術を持つ中小工務店の力を活用する住宅施策が、東京に求められている住宅施策であると確信をいたしますが、ご見解をお伺いいたします。
 次に、集中豪雨や台風シーズンを迎えるに当たり、近年、都市部で頻発している集中豪雨の対策についてお伺いをいたします。
 東京のように地下鉄が縦横に走り、地下空間の利用が目覚ましく、一たん浸水騒ぎが起これば、資産の集中度合いの著しい東京では、その被害は想像を絶するものがあります。特に隅田川や中川などが流れる東京の東部低地帯には、地下鉄が八路線、三十二の駅があり、百七十五万人の都民が生活をしております。そして、この地域の総資産は四十兆円と見積もられていると聞いております。
 東京においても、極めて強い集中豪雨により、河川がはんらんしたり、民間の地下室が浸水をし、生命をなくされた事件が発生するなど、一層の都市型の水害対策が求められております。
 これまで東京都は、都市型水害対策にどのように取り組んでこられたのか、お伺いいたします。
 この五月には、神田川に引き続き、隅田川や石神井川など四河川で浸水予想区域図を公表いたしましたが、流域の都民の避難などの対応に利用してもらうためには、この浸水予想区域図をもとに、避難場所や避難の道筋を明示した、区や市の作成するハザードマップが必要であります。日ごろから極めて強い集中豪雨や台風時における浸水に対しての備えを心がけるためにも、必要な行政サービスであります。
 ここで、今回公表した河川以外の河川の浸水予想区域図の公表予定、及び今後の区や市の作成するハザードマップの支援をどのように行っていくのかをお伺いいたします。
 もちろん、このようないわゆる情報の提供などソフト対策の取り組みとともに、護岸の整備や耐震化、分水路や調整池の整備、さらには老朽した下水道の再構築など、ハード対策を着実に行っていくことが水害の軽減の根幹であることは論をまたないわけであります。
 昨年のヨーロッパや、あるいは中国、韓国の水害に見られるように、世界的に見ても、東京に大きな水害が発生する可能性は極めて高く、首都東京を将来起こり得る水害から守ることは、東京都政に課せられた焦眉の課題ではないでしょうか。そのような観点に立ち、都市の水害対策を実効あるものにしていくため、着実に河川や下水道の整備水準の向上に全力を傾注されますることを強く要望しておきます。
 次に、都立尾久の原公園の整備と、その周辺地域の利活用についてお伺いいたします。
 私の地元である荒川区の隅田川沿いには、約六ヘクタールに及ぶ都立尾久の原公園があります。秋には、暁の空に向かってトンボが飛び立つのを眺めながら、いやしのときを過ごせる空間として多くの方々に大変親しまれております。
 しかしながら、隣接する東尾久浄化センターの一部を覆蓋化して、十ヘクタールにまで拡張する計画が進んでいないため、率直にいって、都立公園というには、設備的にも、植栽等の内容を見ても、余りにも寂しい限りであります。駐車場はありませんし、夏の日差しを遮ってくれるような高木もありません。他の都立公園と比較をすると、余りにもないない尽くしの公園といわざるを得ません。
 平成十九年には、待ちに待った日舎線が開通し、歩いて数分のところに新駅も誕生いたし、まさに東京の顔になるべき立地条件を有する公園であります。確かに、今は小さな木々も、年月を重ねることで成長するでしょう。その過程を大切にしつつ、地域の愛着をはぐくむことも必要だと思います。しかし、物には限度というものがあります。
 そこで、拡張部の公園整備に当たっては、利用する人々にとっても魅力ある公園として本格的な施設整備を行うべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 自転車で三十分も走れば縦断できる小さな荒川区で、この公園は極めて貴重な憩いのスペースです。地元の方々が魅力ある公園にと願うのは、至極当然のことであります。地域では、区や町会、商店街も交えて、その方策について、かんかんがくがくの議論をいたしました。導き出された結論は、皆が親しめる、集えるよう、桜の一大名所にしようということでした。それも、すぐ近くの上野公園を初め、至るところで見られるソメイヨシノではなくて、しだれ桜にしようということになりました。
 尾久の原公園をしだれ桜の名所にと思い立ったのが四年前、それからがまさに「プロジェクトX」でした。当時、私たちは、地元の思いを都に伝えましたが、都の当初の回答は、すぐには対応できないとのつれないものでした。その後、粘り強く接触した結果、都も条件整備に動き出し、これを受け、植栽は自分たちの手でやろうということで、各町会や団体、心ある人々が、桜の木の里親として七万円ずつ出し合い、全部で百四十六本ものしだれ桜の植栽が実現したのであります。
 昨年四月には開花セレモニーが盛大に開かれ、第一歩は踏み出しましたが、名所とするためには、せめて五百本の規模は欲しいところです。そのためには、正面の電化通り側や隣接の東尾久浄化センターなどにも植栽をする必要があります。もちろん、今後も多くの心ある区民の方々に里親をお願いしてもいいでしょうし、また、多くの方々が里親になってくれると確信をしております。立派な公園に育てるために汗をかく、そんな地元の熱意が東京都側に伝わらないわけはないと信じております。
 利用者が公園づくりに参画をする公園が今一番望まれる公園のあり方とするならば、しだれ桜の名所とするための取り組みをある程度、東京都みずからの植栽を含め、支援することこそが東京都の責務であると考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 また、この周辺地域の利活用に関する都区間の協議は、教育文化施設の整備や東尾久浄化センターでの下水処理方式について合意が得られないまま中断をしております。都の財政状況を理由として、積み重ねてきた地元との協議の経緯等を踏まえないのであれば、既に芽生えている都に対する地元の不信感は決定的なものとなります。尾久の原公園周辺地域の利活用策を地元にメリットが見える形で明確に示すこと以外に、この不信感をぬぐい去る方法はないのであります。
 関係局が広くまたがり、局間の総合的な調整力の真価が問われる課題ですが、石原知事のもと、縦割り意識が払拭されつつある今日、地元住民との信頼関係を再構築するためにも、この課題は、従来の枠組みを超えた重大かつ緊急の課題と位置づけ、都庁内できちんと調整を図った上で、速やかに都と区の正式な協議の場を再開し、早期に今後の方向性を打ち出すべきと考えますが、ご見解をお伺いし、私の質問を終わります。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 北城貞治議員の一般質問にお答えいたします。
 デフレ不況対策と住宅施策についてでありますが、これは非常に大事なポイントだと私も思います。住宅は生活の基盤でありまして、良質な住宅を確保していくことは、都市の活力を創出する上でも重要であります。
 また、住宅建設は、建築工事だけではなくて、関連する非常に広範な消費を刺激し、家を新しくつくり、買えば、洗面器まで変わるわけでありまして、そういう点で、非常に波及効果が高く、中小企業の活性化にも大きく寄与するものだと思います。
 私は、これは実はかねてからの持論でありますが、今日、デフレは、供給過剰でありまして、もう新規に買うものはほとんどない。その中で唯一足りないものというと、戸数では足りておりますけれど、日本の住宅は非常に価格の割に貧しくて、例えば五千万なら五千万の価格で、今の一・五倍ぐらいなスペースができれば、これは非常にありがたいと思います。
 そういう意味でも、私は、レーガンがこれをやって成功いたしましたが、セカンドハウスまで、住宅の建築を無税にすると。日本がそこまでできるかどうかわかりませんが、ともかく、より少しぜいたくな足りた住宅、満ち足りた住宅というものを皆さんが欲求しているわけでありまして、そういう点で、リニューアルも含めて、期間を限ってでもいいですが、私は無税にするような政策をすべきだということを、議員のころからいっております。
 今、そのデフレの状況を見ますと、困っている人は非常に困っていますが、お金を持っている人は購買本能のようなのがありまして、買わなくていいようなもの、ブランドを買ったり、私が通勤している途中の中原街道の高級スポーツカーだけを売っているようなチェーン店などは、驚きましたが、この間立ち寄って聞きましたら、月に二、三十台、数百万の車が売れる。全部外国製です。
 こういう状況を見ましても、私はやっぱり、多くの方々が一番欲しているのはゆとりのある住宅でありまして、それを積極的に供給するような施策というものを、税制を含めれば、これは国の問題でありますが、都ができることを考えましたが、これは中小企業の、おっしゃる工務店が非常に数が多い。
 これが実は現場で、このごろはやりの高級プレハブというんでしょうか、ああいうものをつくっておりますけれども、実はそれを提供するのは大手でありまして、例えば積水であるとか、ミサワとか、そういったところが、会社そのものが工務店をじかに抱えているわけじゃなくて、中間搾取をして、自分のところでつくったものを提供しているわけですから、私は、どこかの製造元と都が結託して、どこどこのブランドの展示場がありますけれども、都は都でそこと提携した上で、空き地もありますから、都営の展示場をつくって、そして工務店に、中間搾取なしに、とにかく請け負わせる。
 同時に、お客も、少なくとも今の流通の体系の中ではかなりのお金を払っているわけで、それよりも格安のものが購入できる。そういう措置を都なりに考えたいと思って、先般ちょっと発言しましたら、たちまち、ある大手の社長が何かいいわけに来られましたが、余り筋の通った話ではありませんでした。
 非常に参考になるご意見で、都も具体的な方法を考えたいと思います。
 他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 集中豪雨対策や公園整備についての四点の質問にお答えいたします。
 まず、都市型水害対策の取り組みについてでございますが、近年、都内では、一時間に一〇〇ミリを超える記録的な豪雨を観測し、地下街が浸水するなど、大都市特有の、いわゆる都市型水害が発生しております。
 このため、河川や下水道のより重点的な整備を推進するとともに、インターネットや携帯電話による雨量及び河川水位の情報サービスや浸水予想区域図の公表など、広く都民に役立つ防災情報を提供しております。
 今後とも、関係防災機関、区市町村と連携を図り、都市型水害の軽減に努めてまいります。
 次に、浸水予想区域図やハザードマップについてでございますが、浸水予想区域図やハザードマップは、都民みずからの災害対策への取り組みや、台風などによる大雨の際の迅速かつ的確な避難のために、大変有効でございます。
 既に神田川、隅田川などでは浸水予想区域図を公表し、神田川流域での区において、ハザードマップが作成されております。
 今後、旧中川等の江東内部河川及び目黒川など城南地区の五河川の浸水予想区域図については、十六年の出水期を目途に、さらに多摩地域の野川など五河川についても、十八年度までに順次公表をしてまいります。
 また、区市によるハザードマップの作成に当たりましては、関連する区市や関係防災機関による連絡会を活用し、基礎データの提供や、技術的な助言などの支援を積極的に行ってまいります。
 次に、尾久の原公園の整備についてでございますが、尾久の原公園は、荒川区の北部、旭電化尾久工場跡地に計画された十ヘクタールの都市計画公園でございます。平成二年度から事業を開始し、自然豊かなトンボ池や水遊びのできる流れ、草地広場等の施設の整備を進め、現在、六ヘクタールを開園しております。
 今後、拡張部については、運動施設、駐車場などとともに、尾久の原公園にふさわしい植栽や施設整備を行うなど、地元区と十分協議しながら事業に取り組んでまいります。
 最後に、しだれ桜の名所づくりについてでございますが、尾久の原公園をしだれ桜の名所にするという地元の取り組みは、かつて江戸庶民を楽しませた隅田川の桜をほうふつとさせるものであり、また、都民が支える公園づくりの先駆けでもございます。
 都としても、住民が樹木の里親となる仕組みをつくるとともに、公園と隣接する道路や隅田川の堤防との一体整備を図り、しだれ桜が植栽できる条件を整えてまいりました。
 今後整備する拡張部についても、しだれ桜の名所となるよう地元を支援していくなど、積極的に対応してまいります。
   〔住宅局長高橋功君登壇〕

○住宅局長(高橋功君) 住宅施策に中小工務店の活用をすべきというご質問でございますが、都民の多様なニーズに応じた質の高い住まいづくりに中小工務店の果たす役割は大きいと認識しております。
 このため、都は、昨年九月に、中小工務店の技術力の向上などを目的として、関連事業者の横断的な団体である東京都地域住宅生産者協議会の設立を支援してまいりました。
 ご提案をいただきました、都民が中小工務店の独自のすぐれた技術の情報や実績を容易に入手できることなどは、その潜在的な力を活用する上でも大変重要なことであると考えております。
 今後は、関係団体や区市町村とも十分連携いたしまして、広く都民にこうした生きた情報を提供できる新たな仕組みづくりを行うなど、積極的に取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 都立尾久の原公園周辺地域の利活用についてでございますが、尾久の原公園周辺は、昭和五十七年二月に設置されました旭電化尾久工場跡地等利用都区協議会が策定をいたしました跡地利用計画に基づきまして、公園の整備等が行われてまいりました。
 この計画で、教育文化施設用地として位置づけられた土地の有効活用など、残されました懸案事項につきましては、引き続き都庁内の調整を進めまして、区との協議会が再開できるよう努めてまいります。

○議長(三田敏哉君) 以上をもって質問は終わりました。

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