平成十五年東京都議会会議録第十号

○副議長(橋本辰二郎君) 七十六番青木英二君。
   〔七十六番青木英二君登壇〕

○七十六番(青木英二君) まず冒頭に、知事は、昨日の我が会派の代表質問に対する答弁の中で、金融検査マニュアルに関連し、こういった金融庁の非常にゆがんだ金融政策について、野党第一党である民主党が国会でこれに抗議したという例は聞いたことはございませんと述べられましたが、例えば、昨年十月の第百五十五臨時国会代表質問においても、当時の鳩山代表が、現行の金融検査マニュアルが、中小企業や中小金融機関にとって、どの点が非現実的な内容となっているかをよく洗い出し、的確に修正すべきだと考えますと発言していることを、冒頭、まず述べておきます。
 首都機能移転問題について伺います。
 国会では、衆議院と参議院の国会等の移転に関する特別委員会が、五月二十八日、六月十一日と相次いで中間報告を取りまとめました。特別委員会は平成三年に設置され、十二年間にわたって調査が続けられてきました。その間、衆議院の特別委員会は、平成十二年に、二年を目途に移転先の候補地の絞り込みを行い、結論を得ることができるように早急に検討を進めるべきであるとの決議まで行われました。
 こうした国会の動きに対して、私ども都議会は、首都移転の意義、効果は現実的意味を失っており、我が国と首都圏の活力を失わせる首都機能移転を白紙撤回するように強く求めてきました。特に、昨年五月は、候補地の絞り込みの期限でもあったことから、首都移転に断固反対する総決起集会を、都と、断固反対する会とともに開催し、多くの都民の参加を得て、首都移転反対の声を全国に広げたところです。
 こうした活動の成果もあって、国会は昨年五月の期限になっても候補地の絞り込みを行うことができませんでした。しかし、その後も衆参両院の特別委員会は首都移転に向けた検討を継続してきたわけですが、その結果はまたしても移転候補地選定の断念です。こうした経緯にもかかわらず、国会は引き続き論議を進めるべきとし、さらに両院による協議会が六月十三日に設置されて、検討が開始されました。
 六月二十三日付の朝日新聞は、首都機能移転について、一たん幕を引こうという社説を掲げました。また、過日の知事の所信表明で、知事は、いまだに首都移転の幻想に振り回されており、早く移転論議に終止符を打ち、白紙に戻すべきである、それが歴史の必然であると述べておられます。
 知事は先頭になって強力に反対運動を展開されてこられましたが、この報告とその後の国会の動きについて、どのように受けとめておられるか、所見をまず伺います。
 今回の報告や両院協議会の設置を受けて、今後、都はどのように対応していくのか。特に、首都移転反対の取り組みは、都だけでなく、私ども都議会、区市町村、八都県市などと協力して進めてきたものですが、今後どのような取り組みを進めていくのかを伺います。
 次に、アスペルガー症候群について伺います。
 アスペルガー症候群をご存じの方は、この議場の中に何人いらっしゃるでしょうか。二十年前から研究が進んだ自閉症の一つです。知能は平均かそれ以上ですが、対人関係を結ぶ能力に欠け、原因は、情報をまとめて全体を把握する脳の働きの障害ともいわれます。人と目を合わせられない、聴覚や視覚が敏感で、音程のずれが苦痛で合唱に参加できない。文章を読むと、漢字の形に見入って、内容を理解することに注意が向かない、独特の話し方などで、彼らは変わり者とか反抗的と誤解されがちです。
 日本では、精神科医や小児科医、また学校でも、このアスペルガー症候群が知られておらず、LDやADHDと診断されたり、厳しく叱責される、いじめに遭うなど、本人も親もつらい思いをしています。
 一方で、物事の細部に関心を持つ特性を才能として花開かせる人もいます。例えば、数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を三十八歳の若さで受賞したボーチャーズは、みずからがアスペルガー症候群であることを明らかにしています。
 東京都では、東京都心身障害教育改善検討委員会の中間のまとめで、今まで支援対象外だった障害も、新たに支援を行うという方針を出しました。今後、教員の研修、指導内容の充実で適正な指導がされれば、コミュニケーション能力をつけ、能力を生かす機会を得ることができます。
 教育のほかにもさまざまな分野で、彼らへの理解と支援が求められています。
 そこで、まず最初に、アスペルガー症候群に対する都の福祉施策の現状について伺います。
 アスペルガー症候群は、医療関係者にも余り認知されていません。適切な診断から適切な指導へとつなげるには、障害理解が必要です。多くの医療関係者に障害を理解していただくために、治療や研究の実績がある都立病院から情報を発信するとともに、研修医の積極的受け入れを図るなど、不足している専門医の育成、確保にも取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 この障害による生活の困難が顕著で、福祉サービスが必要な人もいます。サポートを受けるために必要な愛の手帳は、IQの高い自閉症という新たなカテゴリーを想定しない制度であるため、彼らの多くは障害認定を受けられません。
 アスペルガー症候群を障害者と認定し、他の障害者と同様に、福祉サービスの対象とすることについて、国は平成九年に障害認定、範囲の整理が必要とし、問題を認識していますが、対策はいまだにとられていません。都が独自でアスペルガー症候群も愛の手帳の対象とすべきであると考えますが、ご所見を伺います。
 障害による彼ら独特の行動は、同時に強い個性と才能の開花でもあります。医療、教育、福祉に従事する方々が理解を深め、連携して支え、彼らが能力を生かし、安定して生きられるよう、各局連携して取り組んでいただくことを強く要望しておきます。
 また、関係者のみならず私たちも、アスペルガー症候群の方について一層の理解を深め、偏見を持つことなく接していきたいと思います。
 次に、大きな三点目、中央環状新宿線大橋地区の環境対策と都施行の第二種市街地再開発について伺います。
 中央環状新宿線は、外環道等の三環状の一環として、首都圏の再生や道路渋滞の解消を図ることを目的に整備が進められています。
 中でも、この環状線と東名高速道路を結ぶ施設である大橋ジャンクションは、目黒区大橋地区に計画され、平成十八年度の供用開始を目指し、整備が進められています。
 このジャンクション整備に当たっては、これまでこの地域に暮らしてきた人々が今後も長く暮らし続けることのできるよう、隣接する市街地との一体的な整備が不可欠であり、ジャンクションの整備とあわせ、まちづくりを推進することが必要であります。
 こうした状況を踏まえ、地元目黒区では、東京都施行による第二種市街地再開発の可能性について検討を要請してきたところであります。そうした中で、本年一月、東京都において、大橋地区のまちづくりを都施行の第二種市街地再開発事業で実施することを決定いたしました。
 さて、当該地区は、地形的にくぼ地であることに加え、大橋ジャンクションの建設が計画されており、環境をこれ以上悪化させない、いや、むしろ改善するためには、具体的な対策をまちづくりの中で講じる必要があります。このため、本年三月、目黒区議会からは、まちづくりを契機として、効果ある環境対策の実施を求める意見書が提出をされています。
 そこで、まず、都施行の第二種市街地再開発事業の計画において、どのような環境対策が考えられているかを伺います。
 この第二種市街地再開発を進めるため、東京都、目黒区、首都高速道路公団と地元住民との間で、長年にわたって話し合いが行われていると聞いております。今後、第二種市街地再開発事業の具体化に向け、どのような取り組みが行われるのかを伺います。
 再開発事業の実施に当たり、同区域内には高齢者の方も多く住まわれていることから、事業完了が平成二十一年度という長い時間を要することや、それぞれの方々が区域内に所有している土地や建物の財産の評価がどうなるかについて、大きな不安を持っています。今後、こういった地域住民の不安解消に努めるべきと私は考えますが、その対応を最後に伺います。
 知事並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いし、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 青木英二議員の一般質問にお答えいたします。
 首都移転問題に関する国会の動きについてでありますが、特別委員会が十年以上の歳月をかけてもなお、移転先候補地を絞り込めず、移転の是非を含めて、両院による協議にゆだねたのは、首都移転計画の破綻をおのずから示したものといえます。
 これ以上、両院協議会で検討を進めるのは、まさに時間と予算の浪費以外の何物でもないと思います。国会は国会なりのこけんがあるのでしょうが、こういうばかなことを思いついて、踏み込んでしまったということをいっときも早く反省して、幕を引くことが、国会の権威の維持につながるのではないかと思います。
 今、求められているのは、国民にさらなる負担を強いるような首都移転ではなくて、日本の頭脳であり心臓である東京から、我が国の危機的状況を打ち破り、日本再生の活路を切り開くことだと思っております。
 歴代の総理大臣も、また国民の過半はとっくに忘れているにもかかわらず、細々と議論が続けられていること自体が、私には不可解というか、面妖というか、かつ、こっけいでもある気がしてなりません。一刻も早く移転論議に終止符を打って白紙に戻すべきでありまして、それが、この間も申しましたが、歴史の必然であると思っております。
 他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 大橋地区市街地再開発事業についての三点の質問にお答えいたします。
 まず、環境対策についてでございますが、大橋地区は、お話のように、地域住民が住み続けられるまちづくりを実現する必要があり、ジャンクションと一体となった整備が不可欠でございます。
 このため、環境対策として、ジャンクション部の覆蓋化、広場、歩道、屋上の緑化を積極的に進めるなど、環境に配慮したまちづくりを行ってまいります。
 次に、再開発事業への取り組みについてでございますが、大橋地区に関しては、既に本年四月、再開発事務所に担当課を新たに設置するなど、体制の強化を図ってまいりました。
 今後とも、目黒区や首都高速道路公団と十分連携し、地元の意見を聞きながら、早急に都市計画案を策定するなど、事業の推進に努めてまいります。
 最後に、地元住民への対応についてでございますが、再開発事業の実施に当たりましては、地元の理解と協力を得ることが何よりも重要であり、これまでにも各地区で関係者との話し合いを十分行ってきております。
 大橋地区においても、本年四月には地元住民の声を聞くためのアンケート調査を実施したほか、今月末には現地に地区事務所を開設いたします。
 今後、この事務所を活用し、事業に関する情報の提供や説明の機会を十分確保するなど、住民の生活再建に不安のないよう努めてまいります。
   〔知事本部長前川燿男君登壇〕

○知事本部長(前川燿男君) 首都移転反対についての今後の取り組みでありますが、このたび設けられた国会移転に関する政党間両院協議会は、先日、最初の会合が持たれましたが、協議の方向についてはまだ示されておりません。問題がいたずらに先送りされた感が強いのでありますが、もちろんまだ目を離すことはできないわけであります。
 これまで都は、総決起集会の開催、反論パンフレットの作成など、さまざまな活動を積み重ね、首都移転反対に取り組んでまいりました。
 今後とも、この協議会の動きを注視しながら、都民、都議会の皆様を初め、区市町村、八都県市などと連携を密にして、首都移転の白紙撤回に向けて適時適切に対応してまいります。
   〔福祉局長幸田昭一君登壇〕

○福祉局長(幸田昭一君) アスペルガー症候群に関します二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、アスペルガー症候群に対します都の福祉施策についてでございますが、アスペルガー症候群は、知的障害や言語の発達のおくれはありませんが、他の人と社会的関係を持ちにくいこと、コミュニケーションをとりにくいことなどの発達障害があり、社会生活への適応が難しいという特徴を持つといわれております。
 都では、本年一月に開設いたしました自閉症・発達障害支援センターにおきまして、アスペルガー症候群の方々に対しましても、相談、療育などの専門的な支援を行っております。
 次に、アスペルガー症候群を愛の手帳の交付対象とすることについてでございますが、愛の手帳の交付対象とするためには、明確な判定基準などが必要でありますが、アスペルガー症候群はいまだその定義や診断基準が確立していない状況にございます。
 今後、アスペルガー症候群についての研究の進捗状況や、自閉症・発達障害支援センターにおける支援の状況など、実態の把握に努めてまいります。
   〔病院経営本部長碇山幸夫君登壇〕

○病院経営本部長(碇山幸夫君) 都立病院におきますアスペルガー症候群に関します情報発信等についてでございます。
 この疾患につきまして、これまで数多くの治療実績等を有します都立梅ケ丘病院におきまして、毎年、専門家を対象としました公開講座の開催や、あるいは症例等の資料の発行を行ってきたものでございます。
 さらに、今年度からは、自閉症等に関します専門医の育成、確保を図りますため、同病院におきまして、研修医の受け入れを開始いたしました。
 今後とも、都立病院ではこうした施策の充実を図るとともに、府中キャンパスに建設を予定しております小児総合医療センター、仮称ではございますが、ここにおきまして、心と体を総合した小児医療を提供していく考えでございます。

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