平成十五年東京都議会会議録第十号

○議長(三田敏哉君) 十七番小磯善彦君。
   〔十七番小磯善彦君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十七番(小磯善彦君) 初めに、治安対策について伺います。
 石原都知事二期目の公約の中で、東京都民に一番共感を呼んだ政策は、安全・安心のまちづくりでありましょう。早速、竹花豊前広島県警本部長を治安対策専門副知事に起用されたことから、並々ならぬ石原都知事の決意が伝わってまいります。
 さて、そうした東京都の中でも人口急増地域である町田市は、犯罪が増加し、治安に対する市民の不安は年を追うごとに高まっております。町田市は、市街化区域の拡大、駅周辺の商店街への人の集中、都県境ならではの犯罪続発など、治安が悪化しております。刑法犯認知件数を、一九九五年を一〇〇とした場合、東京都全体では二〇〇〇年で一二四となるのに対して、町田市では侵入窃盗が多発し、二〇〇〇年には三〇四となり、犯罪の急増ぶりを示しています。
 しかし、このように人口と犯罪が急増しているにもかかわらず、町田市は、町田警察署一署のみで全市を所管しております。比較的人口規模が近い八王子市、江東区、葛飾区、品川区では二署から六署体制となっており、町田市のように、人口三十万人を超えながら一署体制となっているのは特異なケースといわざるを得ません。
 警察署員数を見ても、警察官一人当たりの人口は、都平均が約四百三十五人、一方、町田署は約八百二十一人と、約二倍。町田における人口当たりの署員数が著しく少ないことが一目瞭然であります。当然のことですが、署員一人当たりの犯罪発生件数が多いほど、実は検挙率が低くなり、治安が悪化します。したがって、警察体制の拡充こそ、安全・安心のまちづくりの基盤です。町田市の人口は間もなく四十万人を超すといわれ、町田警察署一署では限界に達していることは明らかです。
 まず、こうした町田市を初めとする人口急増地域並びに多摩地域の治安対策の強化、安全・安心のまちづくりに対する知事の認識と決意を伺います。
 さらに、町田市の地理的状況、犯罪の増加状況から、警察署をもう一署設置すべきであります。所見を伺います。
 また、警視庁は、十六年度に、八王子警察署管内の南大沢駅付近に新しい警察署用地の買収を行い、十八年度から建設工事に着手する予定と聞いております。そこで、町田市に警察署が増設されるまでの間、八王子市に新設される警察署の管轄区域に、隣接する町田市の相原町、小山町、小山田、小野路町、真光寺町などを含めるべきであります。所見を伺います。
 三十年前、リンゼイ・ニューヨーク市長が後藤田正晴警察庁長官を訪れたとき、同市長は当時、世界の中で最もすぐれていた日本の治安のかぎは何かと尋ねたところ、後藤田長官は、交番制度であると答えたそうです。これは、初代内閣安全保障室長である佐々淳行氏の述懐ですが、まさにそのとおりであり、町田市においても、交番の増設を求める声が数多くあります。警視庁の見解を伺います。
 また、この際、事件、事故などが発生した場合に、周囲に緊急事態発生を知らせるスーパー防犯灯の町田市への設置を強く求めるものであります。
 次に、竹花副知事に伺います。
 副知事は、記者会見の席上、積極的に情報を都民に返したいと述べておりますが、この発言の意味をわかりやすく具体的に説明いただきたいと思います。
 また、副知事の初仕事として、ぜひとも石川警視総監とともに町田市の現状を視察していただきたいと思います。知恵は現場にありとの視点で、新しいまちづくりを進める町田市の治安対策の再構築に取り組んでいただき、東京の新たな治安対策のモデルにしていただきたいのであります。所見を伺います。
 次に、女性専用外来について伺います。
 我が党は、昨年来、都議会での野上じゅん子議員の質問や知事への要望を通じて、都立病院への女性専用外来の設置を働きかけてまいりました。その結果、この七月一日から、都立大塚病院で女性専用外来がスタートいたしました。このことは、患者中心の医療の取り組みとして高く評価するものであります。しかし、多摩地域における女性専用外来については、都の対応は十分とはいえません。都立府中病院で、平成十六年度の開設に向けて準備が進められているものの、例えば、私が住んでいる町田市の住民が女性専用外来を希望しても、片道一時間半以上もかかり、極めて不便であります。
 こうしたことから、我が党は、この三月、南多摩保健医療圏の中核病院として地域の厚い信頼を得ている多摩南部地域病院への女性専用外来設置を知事に要望したところであります。改めて、地域医療支援病院である多摩南部地域病院への女性専用外来設置について所見を伺います。
 次に、受動喫煙防止対策について伺います。
 健康増進法が施行となり、学校、病院その他公共施設等の管理者は、受動喫煙を防止するための措置が義務づけられることとなりました。また、国の諮問機関は、昨日、たばこの箱の注意文に、肺がんなどの病名や受動喫煙の危険性などを記載させることを決めております。
 これまで都は、分煙化計画に基づき、平成十二年度末までに都立施設三千カ所で一〇〇%の分煙化を進めてまいりましたが、今回の健康増進法施行によりさらに厳しくなった分煙基準に十分に対応できているのか、まず伺います。
 また、最近、教育現場における分煙化について、多くの関心が寄せられております。
 学校は、本来、児童生徒の喫煙防止教育を推進する場であり、児童生徒が一日の大半を過ごす場でもあります。また、受動喫煙による健康被害は、成人よりも幼児や学童の方が大きいといわれており、学校における受動喫煙防止はとりわけ重要であることはいうまでもありません。
 これまで我が党が主張してきたシックスクール対策において指摘されている有害物質のホルムアルデヒドまで、たばこの副流煙に含まれているのであります。
 都としても、都立学校における受動喫煙対策について、校舎内禁煙、敷地内禁煙、分煙など、明確に指針を示して早急に取り組むべきであります。教育長の見解を伺います。
 (パネルを示す)この絵は、妊婦の喫煙は胎児の喫煙にほかならないと、鋭く警告を発しているわけでございます。これが妊婦でありまして、妊婦がたばこを吸って、中の胎児が煙を吸っているという、そういうパネルでございます。環境問題に熱心な都知事、いかがでございましょうか。東京都民に対しても受動喫煙防止を徹底すべきであります。見解を伺います。
 次に、三宅島避難の方々への支援策である、げんき農場とゆめ農園について質問いたします。
 都は、八王子市と江東区に農場や農園を設置して、三宅島から避難されている方々が、帰島後速やかに営農が再開できるよう支援しております。これは、農家の皆さんの栽培技術や営農意欲の維持、雇用機会の確保、情報交換の場としても好評を博しております。げんき農場では約百名、ゆめ農園では約六十名の方々が、平成十三年度から、国の緊急雇用特別基金事業によって雇用され、十四年、十五年度でも、国の新たな緊急雇用創出特別基金によって雇用されております。
 この緊急雇用創出特別基金事業では、雇用期間は原則六カ月未満ですが、事業によっては一回更新ができるとされており、三宅の方は、昨年十月に一回更新し、この四月には特例として二回目の更新をしております。
 本年三月の国の厚生労働事務次官名の通知では、特例更新後の雇用・就業期間は本年九月末で終了とされております。このままでは、三宅島支援事業は継続できません。都は国に対して、帰島できずに苦しんでいる避難民の方々の状況を理解させ、帰島までこの事業が継続できるよう、強力に要請すべきです。所見を伺います。
 最後に、地元町田市の境川に関連して伺います。
 境川は、旧河川敷を利用したポケットパークや広場なども整備され、水辺の空間として町田市民に親しまれております。左岸の町田市側には、整備が完了した河川管理用通路を活用した自転車歩行者専用道路、いわゆるサイクリングロードが設置されております。このサイクリングロードは、町田市が河川占用許可を取得して設置しているもので、交通事故の危険や排気ガスの心配もない上、水辺の景観を楽しめ、散策路や通勤通学路として、多くの周辺住民に愛用されております。
 ところが、上流部では、サイクリングロードが途中で分断されており、通行ができなくなっております。これは、共和橋付近の河川改修が終了していないため、サイクリングロードの整備がおくれているからであります。この箇所の整備が進めば、下流部から上流部まで一貫した自転車歩行者専用道路が完成します。
 したがって、ぜひとも都県境河川である境川の改修を進め、専用道路の整備促進を図るべきであります。
 所見を伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 小磯善彦議員の一般質問にお答えいたします。
 安全・安心のまちづくりについてでありますが、町田に限らず、都全体の犯罪認知件数や検挙率は、戦後最悪となりまして、都民も非常に憂慮し、意識調査をしましても、治安の安定を一番望む声が多いわけでありますが、そういう意味で、治安の維持こそ最大の都民福祉であるといっても過言でない状況であります。ご指摘のとおり、その回復は喫緊の課題であります。
 世田谷で親子四人が惨殺された事件が、未解決のまま数年たっているということも、東京の今憂慮すべき状況を象徴しているようなものではないかと思います。
 しかし、治安を回復するには、お話しのように、町田市なら町田市という地域の実情を踏まえた対策が必要でありまして、また、地域が一体となって犯罪抑止に取り組むことが肝要であると思います。
 そのため、今定例会には、地域と自治体、民間企業などが力を合わせて安全なまちを実現するための、安全・安心まちづくり条例を提案いたしました。
 また、新たに就任した治安担当竹花副知事には、警視庁や警察庁、国、首都圏自治体とのコーディネート役となるとともに、都民、事業者、NPOなどと一体となって、犯罪のないまちづくりを進める牽引役として、活躍を期待しております。
 他の質問につきましては、副知事、警視総監、教育長、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。
   〔副知事竹花豊君登壇〕

○副知事(竹花豊君) 治安対策についてでございますけれども、治安悪化に対処するためには、警察を中心に、社会の各層が一体となって犯罪に対向する大きな流れを築くことが必要でございます。
 そのためには、犯罪にかかわる情報が広く提供されて、都民を含めて共有をされるということが必要であると思います。
 このことは、最近、都内の地域別の犯罪発生状況が公表されたことも一因となりまして、区市町村における治安対策の取り組み強化の機運が顕著に高まっているということからも明らかであると思います。
 また、私自身の広島県警における経験でも、犯罪情報をタイムリーに、具体性、個別性を高めて県民に提供することで、県民の犯罪に対する関心を飛躍的に高めることができたという経験を持っておりまして、そういうことも大変大事だというふうに考えているところでございます。
 このようなことから、都といたしましては、やみ金融など、都民からの相談も広く受けておりますので、そこから得られた情報を一層積極的に都民に提供いたしたいというふうに考えておりますし、また、警視庁とも連携いたしまして、犯罪の発生状況、有効な防犯対策等の情報を、都民のニーズにマッチした形で都民に還元したいというふうに考えております。
 また、私は、私の職責を全うする上で、治安実態を現場から把握し、また、都民の意見や要望に耳を傾けながら仕事を進めたいというふうに考えております。
 既に、日本ガーディアン・エンジェルス、日本を美しくする会などの、治安に関心を有する団体から協力の申し出を受けておりまして、このようなボランティア団体はもちろんのこと、地域でいわゆる声かけ運動などをやっておられます住民の方々とも意見を闘わせながら、治安対策を進めてまいりたいと考えております。
 さらに、犯罪の多発地域とされております新宿等の盛り場、あるいは町田のような人口急増地域にも足を運んで、地域における犯罪抑止の動きを促して、大きな広い流れをつくってまいりたいと考えております。
   〔警視総監石川重明君登壇〕

○警視総監(石川重明君) 初めに、町田市内における警察署の増設についてのお尋ねであります。
 現時点では、多摩地区における警察署の新設構想の中に、町田市に警察署を増設する計画はございませんが、町田警察署の業務負担が高いという点については、議員ご指摘のとおりでありまして、私どもも十分承知をしておるつもりでございます。
 例えて申しますと、町田警察署一署で神奈川との都県境を管轄しておりまして、神奈川県警察側には六署があるということもございますし、通常、重大事件が起きたときに緊急配備というのを行いますが、通常の署であれば、二キロ圏配備とか四キロ圏配備で済むところを、町田警察署は常に十キロ圏配備をしなきゃならないというくらい、東西に長い地域を管轄をしているといったようなことで、大変業務が多忙になっているということでございます。
 したがいまして、今後、この町田警察署の警察官の増員、隣接警察署との連携、あるいは本部の応援体制の強化といったようなことを行うほか、警察署の増設につきましても選択肢の一つとして視野に入れるなど、総合的な見地から検討してまいります。
 次に、八王子警察署管内に新設予定の警察署の管轄区域につきまして、議員から、具体的な地域を指定してのご提案がありました。
 警察署の管轄区域につきましては、法令上、警察の任務を能率的に遂行できるように、人口、他の官公署の管轄区域、交通、地理その他の事情をしんしゃくして決定することにされておりますことから、今後、これらの事情を考慮するとともに、関係自治体や地域住民の要望等も伺いながら、慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
 次に、交番の新設要望への対応についてお答えをいたします。
 交番につきましては、ご質問の町田署管内を含めまして、現在、都内全域で八十六カ所の新設要望が警視庁に寄せられております。
 交番の新設は、その地域における事件、事故等の発生状況、人口、管轄区域の面積、それから交番の用地の有無、また、配置する警察官の人員等を総合的に勘案をいたしまして決定をしているところでございまして、必ずしも、直ちにご要望どおりにできていないというのが実情であります。
 今後とも、警察官の適正配置の再検討を行うことなどによりまして、優先順位に従って逐次対応してまいりたいというふうに考えております。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 受動喫煙防止の取り組みについてお答え申し上げます。
 都教育委員会としましては、児童生徒の健康、安全を守るために、これまで全都立学校の分煙化に取り組みまして、平成十二年度までに達成したところでございますが、このたびの健康増進法の施行によりまして、学校等の管理者は、受動喫煙による健康への影響を排除するために、今まで以上の対策を講じることが求められております。
 このため、お話しのように、学校での受動喫煙防止の徹底を図る観点から、現在、平成十六年度当初の実施に向けて、都立学校における禁煙の具体的な方策等につきまして、鋭意検討しているところでございます。
   〔東京都技監小峰良介君登壇〕

○東京都技監(小峰良介君) 都県境を流れる境川の改修についてお答え申し上げます。
 町田市鶴間から上流の相原町に至る区間は、下流部十キロを東京都が、上流部十三キロを神奈川県がそれぞれ分担し、河川改修を進めております。
 ご指摘の共和橋付近の未整備区間は、県施行区間にあり、町田市とも連携をとりながら、早期改修について神奈川県に強く働きかけてまいります。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 三つの質問にお答えいたします。
 まず、多摩南部地域病院における女性専用外来設置についてでございます。
 同性である女性医師がきめ細かな診療を行う女性専用外来は、女性特有の疾病や健康課題に適切に対応していく上で有効な方法でございまして、現在、民間病院を含めてさまざまな取り組みがなされております。
 こうした状況の中、医療連携を前提とする多摩南部地域病院におきましても、都立病院の取り組み状況をも参考にしながら、女性専用外来の実現に向けて、具体的な検討を開始いたします。
 次に、受動喫煙対策に関しまして、都立施設における新たな分煙基準への対応についてでございます。
 本年五月一日の健康増進法の施行に伴い、新たな分煙基準が示されましたが、この基準に適応しない施設があることが想定されたため、法施行前の本年四月、都及び区市町村の施設を対象に、受動喫煙防止のための研修会を開催いたしました。
 今後、都立施設における新たな基準への適応状況を調査するとともに、各施設の管理者が円滑に対応できますよう、効果的な分煙化の事例紹介など、情報提供に努めてまいります。
 最後に、都民に対する受動喫煙防止の徹底についてでございます。
 都は、これまで、リーフレット「分煙のススメ」の配布やホームページの開設などにより、受動喫煙の健康への影響や喫煙マナーの向上などにつきまして、都民への普及啓発を行い、都内施設の分煙化を進めてまいりました。
 今後、新たに、飲食店や各種事務所など、多くの人が利用する施設の管理者を対象とした研修会を開催いたしますとともに、ホームページの内容の刷新や、「広報東京都」ヘの掲載、広報番組の活用などを通じて、受動喫煙防止の徹底に努めてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) げんき農場、ゆめ農園における三宅島島民の方々の雇用についてのご質問にお答えいたします。
 お話しのように、本年三月、げんき農場、ゆめ農園において緊急地域雇用創出特別基金事業の雇用期間が満了した際に、国に対し特例的な扱いを要請し、その結果、六カ月の雇用期間の更新が認められました。
 げんき農場、ゆめ農園は、農家の栽培技術や営農意欲の維持を図るとともに、雇用の確保や情報交換、交流の場となってございます。
 今後、島民の避難生活の実情に配慮し、三宅村を初め関係機関の対応も踏まえながら、雇用期間のさらなる延長を実現するため、国に対し積極的に要請してまいります。