平成十五年東京都議会会議録第十号

○議長(三田敏哉君) 五十七番松村友昭君。
   〔五十七番松村友昭君登壇〕

○五十七番(松村友昭君) まず、小児救急医療について伺います。
 小児救急の量と質の立ちおくれは、深刻な社会問題です。中でも東京では、小児科のある病院の減少率が全国平均を大きく上回り、最近三年間で一三%に及ぶなど、とりわけ緊急の課題であります。
 私の住む練馬区では、人口六十八万人を抱え、子育て世帯もふえているのに、二十四時間三百六十五日いつでも小児救急に対応できるのは、日大光が丘病院しかありません。これを改善しようと、区医師会が開業医に呼びかけて、平日の午後八時から十一時と、土日、祝日の初期救急施設ねりま子どもクリニックを都の補助を受けて開設しました。しかし、昼間だけの診療所がふえ、夜間は無医村に近いことや、働く母親がふえていることなどから、光が丘病院の小児救急患者は減少するどころかふえ続け、年間一万七千人もの患者が集中する事態となっています。
 私は先日、こうした日大光が丘病院の夜間の実態を見、話を聞いてきました。きょうは患者が少ないといわれていましたが、それでも、待合で母親、父親に付き添われ、点滴を受けている子どもがあちらこちらにいました。そして、院長や小児科部長を初め先生方から、一晩で四、五十人もの救急の子どもを診ている。夜はほとんど眠れず、三十六時間の連続勤務。そんな当直が月五、六回ある異常な事態だ。まるで野戦病院。救急車が同時に何台も入ってきたり、子ども二人が続けて引きつけを起こすなど、危険な場面もまれではない。努力に見合う社会的な支援が欲しいと、切々と訴えられていました。
 こうした中で、子どもが頭を打って戻し始めたが、光が丘病院は手いっぱいのため、やむなく板橋の病院まで連れていったなどの事態が生まれています。このような危機打開のためには、二十四時間三百六十五日いつでも小児救急に対応できる拠点病院をもっとふやすことが第一の課題です。
 ところが、都が委託費を出し、二十四時間三百六十五日の小児救急を行う休日・全夜間診療事業に参加している病院は、目標の六十カ所に対し四十七カ所にとどまっています。この目標は、人口二十万人に一カ所に当たりますが、練馬区は日大光が丘の一カ所だけ、杉並区や江東区は一カ所もありません。早急に六十カ所の目標を達成するとともに、人口二十万人に一カ所を目安に、身近な地域に整備していく必要があります。見解を伺います。
 練馬区民にとって、比較的近い都立清瀬小児病院は、いざというときの頼みの綱です。ところが、都は、清瀬小児病院は八王子小児病院と統合し、府中に移す計画です。清瀬がなくなれば、練馬の小児救急の危機は改善するどころか、一層深刻になることは明らかです。そのことをどう認識しているのですか。
 私が話を聞いた区内民間病院の小児科医は、小児医療を統廃合し一極集中させる都の方針は間違いだ、練馬の小児救急は一体どうなるのかと、大変な危機感を訴えていました。地元の清瀬市も八王子市も反対している都立小児病院の統廃合はやめるべきです。答弁を求めます。
 第二の課題は、懸命の努力を続けている小児救急医療機関への支援の強化です。
 休日・全夜間診療事業の都の委託費は、小児科医一名の人件費と空きベッド確保の支援だけで、取扱患者数が年間数百人程度の病院も、一万数千人にも及ぶ病院もほぼ同じ額です。これでは全く実態に合っていません。
 例えば、日大光が丘病院の場合、当直医を毎日二人配置しており、やればやるほど赤字の構造になっているのです。その根底には、都が行っている休日・全夜間診療事業は入院が必要な二次救急で、初期救急は区市町村の役割だという都の考え方があります。こんなしゃくし定規なことをいっているから、危機打開ができないのです。症状が急変しやすい小児救急では初期と二次は区別ができないというのが、小児救急専門家の一致した見解です。親の要求も、初期から二次まで同じ病院で診てほしいというものです。発想を切りかえ、初期救急も含めた取扱患者数の実績に見合って委託費を増額するなど、制度の改善と拡充を求めるものです。
 以上のような支援の強化は、近く練馬で建設が始まる第二拠点の順天堂大学病院を初め、休日・全夜間診療事業に参加する病院を広げるためにも重要な課題であります。
 また、ねりま子どもクリニックのような小児初期救急医療事業の拡充も重要です。練馬区の場合も、区が多額の持ち出しをしており、年間わずか三百六十七万円という都の補助金ではとてもやっていけません。抜本的に拡充すべきです。
 第三の課題は、小児科医師の救急対応の研修の充実です。
 今注目されているのが、通称PALSといわれる世界標準の小児高度救命法の研修です。極めて実践的な内容で、二年ごとの更新など、質の管理が厳格にされており、アメリカやカナダでは、小児科医は原則としてPALSの習得が義務づけられています。
 日本では、日本小児集中治療研究会が国際的な認定を受け、昨年から始まりました。私は、代表の宮坂勝之医師にお会いし、都立病院に普及したいと話したところ、それはインパクトがある、大歓迎だと即答されました。PALSを受ければ、小児救急は必ずレベルアップするといわれています。問題は、都がやる気になるかどうかです。
 小児高度救命法、PALSの有効性についてどう認識しているのですか。都立病院及び公社病院の教育プログラムに位置づけて、小児科医師が身につけていく必要があると考えますが、見解を伺います。
 以上、幾つかの提案を行いましたが、小児救急の危機打開は、少子化対策の上でも国家的な緊急課題です。ところが、国は有効な手だてを講じていません。東京都独自に小児救急の十分な量と質を確保するとともに、大学医学部にも働きかけて、小児科医の不足の打開を図るなど、抜本的な取り組みが必要だと考えますが、知事の答弁を求めるものです。
 次に、商店街振興について伺います。
 長引く不況、大型店の無秩序な出店などで、衰退と苦境に立つ商店街で、さらに頭を痛めている問題の一つに、商店街活動に対する大型店やチェーン店の非協力的な態度があります。
 我が党は、第一回定例都議会でこの問題を取り上げましたが、商店会に加入しない、会費を払わない、イベント事業にも参加しないなど、共存共栄どころか、商道徳にも反する態度に、新たな怒りが広がっています。
 そもそも商店街は、地域経済の核であるとともに、地域社会の柱として、お祭りや町会活動、さらには消防団活動や防犯、交通安全活動などに、知事がいう安全・安心のまちづくりに大切な役割を果たしています。それだけに、商店街を構成するすべての店舗が商店会活動に協力することが欠かせません。そうした中で、商店街の中には、大型店においしいところだけ持っていかれてたまるかと、入会を働きかけ、チェーン店などにすべて加入してもらっているところもないわけではありません。しかし、都内多数の商店街では、商店会の努力にもかかわらず、本店の意向、将来にわたって店舗展開するか未定であるなどの理由を挙げ、協力してもらえないのが実態です。
 練馬区の調査では、商店会がある地域で、株式会社、すなわちチェーン店などの支店の三六%が商店会に未加盟で、未加盟の理由に会社の方針を挙げています。
 我が党都議団は、日本チェーンストア協会、全国スーパーマーケット協会など九団体に対応を申し入れるとともに、経済産業省、中小企業庁に対して、事態の改善に力を尽くすよう申し入れを行いました。
 申し入れに対し、役員会に申し出を伝えます、地域商店街活性化ということで取り組んでいきたいと、前向きな回答も少なからずありました。しかし、対応できない、応じられないという団体もあったことは極めて残念です。こうした非協力の団体は、単位商店会や連合会、または地元自治体だけの力で動かすことは困難です。そこで、広域行政としての都の指導が重要となります。
 知事、都として、コンビニやドラッグストア、ファストフードなどのチェーン店やスーパーマーケットなどの加盟店本部、業界団体に対して、各店の商店会への加入や協力などについて積極的に応じるようさせることが求められています。見解を伺います。
 区市町村商店街振興プランについて伺います。
 都は一昨年、商店街活性化総合支援事業として、都の二十一世紀商店街づくり振興プランを指針として、各区市町村に区市町村商店街振興プランの策定を求めました。そこで、各区市町村は苦労して、商店街振興プランを作成し、昨年度末までに、島を除いてほぼ出そろいました。
 ところが、区市町村側は頑張ってつくったのに、都は、振興プランに基づく包括補助は何も具体化しようとしていません。都は、区市町村の取り組みを包括的に補助するためには、区市町村が作成した振興プランが必要だとしてプランづくりをスタートさせたのですから、これでは、区市町村を二階に上げておいて、はしごを外すようなものではありませんか。工業集積地域活性化事業のように、区市町村が自主的に計画した商店街振興プランを包括的に支援する補助事業を約束どおりつくるべきです。答弁を求めます。
 個別の対策事業も重要です。とりわけ、ことしからスタートした新・元気を出せ商店街事業を、もっと商店街が求めているもの、使いやすいものへの改善です。
 一つは、イベント開催や商店街活性化事業の申込締め切りが六月末ということについて、強い改善要求が出ています。商店会の総会さえ終わっておらず、年間計画も決まっていない時期だからです。商店街の実態に合わせたスケジュールにすることや、追加申請を認めることが必要ですが、どうですか。
 二つは、商店会がせっかく計画したのに、予算がないから認められないということがないように、追加の予算を上乗せするよう求めるものです。
 三つは、商店街の街路灯の維持費も商店街にとっては大きな負担となっています。予算が足りず、やむなく街路灯の本数を減らさざるを得ないという商店街まであります。商店街の街路灯は防犯上も大きな役割を果たしており、電気代を含めた維持費について、何らかの負担軽減措置が必要です。それぞれ答弁を求めます。
 最後に、昨日の我が党の代表質問に対する答弁で、知事は、サンタクロースや救世軍じゃないと、新銀行が融資する対象が一部の優良企業に限られ、そうでない企業には融資することをしないことを事実上表明いたしました。とんでもありません。東京の経済を支えているのは、企業の九九%を占める中小企業であり、しかも、そのほとんどが、お魚屋さんや八百屋さん、製造業を初め建設業など、零細な企業です。こうした業者が貸し渋りや貸しはがしに苦しんでいるときに、自治体がつくる銀行が融資を拒むなど……(発言する者あり)

○議長(三田敏哉君) 発言時間は既に満了しております。速やかにやめてください。

○五十七番(松村友昭君) あってはならないことであることを指摘して、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 松村友昭議員の一般質問にお答えいたします。
 小児医療への取り組みについてでありますが、少子高齢化が進む中で、次代を担う子どもたちを健全に育成することは社会全体の責任であると思います。親の育児不安を解消し、安心して子どもを育てていくためにも、小児医療の充実は重要な課題であると認識しております。東京発医療改革の柱として、引き続き多角的に小児医療体制の充実に取り組むつもりでございます。
 他の質問については関係局長から答弁いたします。
   〔健康局長平井健一君登壇〕

○健康局長(平井健一君) 小児医療についての四問の質問をいただきました。
 まず、小児科の休日・全夜間診療事業の参加施設についてでございます。
 平成十三年度に開始しました小児科の休日・全夜間診療事業は、都全体で六十施設七十床の整備を目指しておりまして、現在、四十七施設七十三床を整備してございます。都全体で必要な病床数は確保しているものの、施設数が目標に達していないため、事業実績の動向や地域の医療機関の実情等を勘案し、引き続き参加施設の確保に努めてまいります。
 次に、小児科の休日・全夜間診療事業の拡充についてでございます。
 平成十四年度において、この事業の患者取扱総数は約三十一万人でございまして、このうち入院を要しない軽症の初期救急患者は約二十九万八千人、全体の約九五%を占めております。入院患者を対象とする二次救急医療機関に軽症の初期救急患者が多数集中しているというのが現状でございます。
 したがいまして、都は、区市町村が実施主体である小児初期救急医療事業の充実が急務であると考えております。
 次に、小児初期救急医療事業の拡充についてでございます。
 この事業では、診療報酬のみでは不足するスタッフの人件費相当分等を補助対象としているものでございます。区市町村での取り組みがおくれている理由としましては、小児科医師の確保が困難であるなど、さまざまな課題が考えられます。
 現在、関係区市に設置している協議会におきまして、小児初期救急医療事業の運営上の諸課題を検討しており、その分析結果も踏まえ、これらの課題について検討を加えてまいります。
 最後に、小児の高度救命蘇生法であるPALSは、米国心臓病協会が推奨している救命技術などでございまして、一定の講習の修了者に協会から認定証が交付されるものでございます。我が国では平成十四年度から講習が開始されまして、これまでに約百五十名が受講したとのことでございます。
 医師等の医療従事者が各種講習会等に参加し、自己研さんを重ねることは、みずからの資質向上のために非常に大切であると考えております。
   〔病院経営本部長碇山幸夫君登壇〕

○病院経営本部長(碇山幸夫君) 都立小児病院、八王子小児病院の移転統合についてでございます。
 都民が安心して利用できる小児医療体制を確保するためには、都と区市町村がそれぞれの役割に基づき、基礎的自治体である区市町村が地域の小児医療の確保に主体的に取り組み、都は、広域自治体として都全域を視野に入れた高度専門的な小児医療を担っていく仕組みを構築していく必要があると考えております。
 今後、都は、小児医療の拠点である小児総合医療センターを新たに整備するとともに、区市町村が取り組む地域の小児医療提供体制の整備を支援していくなど、都立病院改革を着実に進めてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 商店街振興に関する五点のご質問にお答えいたします。
 まず、チェーン店などの商店街への加入や協力についてでございますが、チェーン店などと地元商店街が協調できず、商店街にとって大きな問題の一つとなっていることは認識しております。商店街の振興には、商店街自身の自主的、自立的な課題解決への取り組みが不可欠でございます。
 都といたしましては、チェーン店などと地元商店街が共存共栄できるよう、意欲ある商店街の取り組みを支援してまいります。
 次に、区市町村の商店街振興プランを支援する補助事業についてでございますが、都は、これまでの商店街振興施策を本年度から新・元気を出せ商店街事業などに再構築し、事業規模の拡充を図りました。これにより、区市町村が自主的に策定した振興プランに基づく、商店街の意欲的で多種多様な取り組みに対して積極的に支援してまいります。
 次に、新・元気を出せ商店街事業の実施スケジュールについてでございます。本事業実施に当たり、区市町村に対しまして、本年一月に実施案を、三月には補助要綱を提示いたしまして、事前に事業の周知を図った上で、四月初旬に具体的な事業内容についての説明会を開催いたしました。その後、六月までの申請期限まで、約三カ月の準備期間を設けております。
 次に、今年度の予算についてでありますが、新・元気を出せ商店街事業は、区市町村からの要望や過去の実績を踏まえて、予算を大幅に拡充しております。
 最後に、街路灯の維持費についてであります。
 新・元気を出せ商店街事業は、商店街の自主的、自立的な取り組みを支援していくものでございまして、街路灯の電気代など、通常必要となる経常的な経費は補助対象としておりません。

○議長(三田敏哉君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時四十二分休憩

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