平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 七番柿沢未途君。
   〔七番柿沢未途君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○七番(柿沢未途君) まず、新しい映像コンテンツ、ショートフィルムについて伺います。
 ショートフィルムをご存じでしょうか。長くて三十分、短いものはわずか一分というショートフィルムは、日本では短編映画とよく訳されますけれども、映像文化の先進国のアメリカやヨーロッパでは、通常の映画とは区別され、映像表現のジャンルとして確立しています。映画界最高の賞であるアカデミー賞にもショートフィルム部門が設けられているほどです。
 限られた時間の中に監督やクリエーターのメッセージが凝縮されているショートフィルムは、長編映画と違った魅力と可能性に満ちあふれています。実写によるストーリー物以外にも、アニメーション、ドキュメンタリー、コンピューターグラフィックス(CG)など、表現方法も多彩で、通常の映画にはない強いメッセージが伝わってきます。
 アメリカやヨーロッパでは、ショートフィルムは映画界を担う新しい才能の発掘の手段ともなっています。ミュージシャンが売り込みのためにデモテープをつくるように、若手の監督たちは、まず制作費が安く済むショートフィルムをつくって、世界各地の映画祭で発表します。才能のある若手の監督は、そこでショートフィルムがプロデューサーの目にとまることで大きなチャンスを手に入れるのです。いいかえれば、ショートフィルムの数々の作品には、未来のルーカスやスピルバーグになるような若い才能が隠れているのです。
 そこに目をつけたのがショートショートフィルムフェスティバルです。四年前から東京原宿で開かれています。世界五十カ国から集まったショートフィルムを見るために、若者を中心に計八万人もの観客を集めているだけではなく、今やショートフィルムの世界的な見本市に成長しつつあります。さらに、おととしからは、日本の若手監督の作品を紹介するジャパンショートショートの部門を設けて、日本の次世代のクリエーターを紹介しています。
 通信と放送の融合がいわれる中で、ショートフィルムは新たな映像コンテンツとして注目を集めています。ブロードバンドの時代となり、パソコンや携帯電話で動画を見るようになると、短い時間で手軽に楽しめるショートフィルムの需要はますます高まっていきます。今後、ますます成長するショートフィルムのビジネスで主導権を握るかどうかは、大げさにいえば、一国の経済の浮沈をも左右する重大事といってもいいのではないでしょうか。
 既に民間において、ショートショートフィルムフェスティバルというこれだけの映画祭が立ち上がっているわけですから、これを育て、世界に冠たるショートフィルムの見本市にすべきではないでしょうか。それが文化都市としての東京の地位の向上にもつながり、ひいては東京の新たな産業基盤にもなっていくのではないかと思います。
 そこで、みずからも作家であり、映画にも通じている石原知事に伺いますけれども、新しい映像コンテンツとしてのショートフィルムの可能性を評価して、都の文化、産業戦略として、ショートショートフィルムフェスティバルをさまざまな側面よりバックアップしたらどうかと考えますが、見解を伺います。
 なお、ことしのショートショートフィルムフェスティバルは、六月六日から十一日まで開かれます。ことしは五周年ということで、原宿だけではなくて、オープン直後となるあの六本木六丁目の六本木ヒルズでも開かれます。映像メディアのことですので、百聞は一見にしかずということで、ことしは石原知事もぜひ見に来ていただきますようにお願いをいたしまして、次の質問に移ります。
 次に、公共工事のコスト縮減についてお伺いいたします。
 昨年七月、都が発注した隅田川のテラスの工事において、都内の建設会社八社による連鎖丸投げ事件が発覚しました。元請が四億三千万円で落札した工事を次から次へと丸投げして、八社で合わせて九千万円もの利益を中抜きしたものです。その後も、都の発注工事において、同じ連鎖丸投げの手法で、建設会社が工事もせずに数千万円もの利益を分け合った事実が次々と判明しています。丸投げによる多額のさや抜きがどうして可能になるのでしょうか。
 そもそも公共工事の予定価格は高過ぎるのではないかという指摘があります。これは全国のデータですけれども、内閣府が発表した資料によれば、公共工事は民間工事の一・七倍も高くなっています。二〇〇〇年度の平米当たりの工事単価は、民間工事が十三万円に対して公共工事は二十二万円、十年前の一九九〇年度は二十万円前後と同程度だったことを考えると、バブル崩壊後の景気対策で大量に発注された公共工事がいかに割高な代物であったかということを示していると思います。
 それでは、どうして公共工事は高いのでしょうか。その原因の一つとなっているのが単価計算の甘さです。一般に、公共工事の積算に当たっては二つの資料が使われます。(実物を示す)この経済調査会が発行している「積算資料」、建設物価調査会が発行している「建設物価」、いずれも国土交通省所管の財団法人が発行している月刊誌です。二つの月刊誌に書かれている資材価格は、市場調査を経た上で設定されている相場の価格というふうにされていますけれども、実際には実勢とかけ離れた割高な単価になっているという指摘が絶えません。私が聞いた中でも、生コンは市場価格より二割も三割も高いとか、空調など設備関係は、実に四割以上も高く書かれているというふうに聞きました。市場調査をやっているといいながら、実勢価格とこれだけの乖離が生じてしまっているのです。
 月刊誌を発行する財団法人経済調査会と建設物価調査会は、単価設定に当たって綿密な市場調査を行っているといいますけれども、実際は、建設資材メーカーから聞き取りをした販売希望価格、いわばメーカーのいい値をそのまま掲載しているのではないかといわれています。これでは市場価格より高くなるのも当然です。要するに、それだけ割高な資材単価をもとに積算をしているから、それを積み上げた公共工事の予定価格もそれだけ割高になってしまうというわけなのです。
 しかも、この二つの財団には、所管官庁である国土交通省や会計検査院のOBが多数天下りをしていて、建設資材などの価格市場調査の業務をほぼ独占しています。昨年には、市場調査業務の受注をめぐって落札価格をつり上げた談合の疑いがあるとして、公正取引委員会から立入調査まで受けています。こんな国の天下り財団の割高な積算単価をわざわざ使う必要はありません。発注額の大きい、例えば生コンあるいは鉄筋、こうしたものだけでも都独自で価格調査を行って、資材の単価を市場の実勢に近づければ、それこそ億単位の建設コストの縮減につながるはずです。それによって浮いた分を公共事業の追加発注に回すこともできるのです。
 そこで、建設資材の単価について、全国に先駆けて都が独自に市場調査をしてみることをご提案いたしますけれども、最大のハード部局である建設局長の見解を伺います。(発言する者あり)ありがとうございます。
 当たり前のことですけれども、公共工事はすべて税金で賄われています。最後に、公共工事のコスト縮減に向けた知事のご決意を伺って、次の質問に移ります。
 次に、築地市場の移転について伺います。
 昨年九月、築地市場の豊洲移転を前提とした豊洲・晴海開発整備計画の再改定案が発表されました。これまでの計画では、居住機能に重点を置いたまちづくりになっていましたけれども、対象地域のうち豊洲地区の面積の実に四割を市場が占めることになったことから、今度の再改定案では、業務・商業、居住、市場などがバランスよく配置された複合市街地の形成ということを掲げています。その結果として、居住人口は当初の予定の三万一千人から一万三千人へと激減しています。
 この市場の移転計画に対して、地元となる豊洲地区の住民の間には不安と戸惑いが広がっています。新市場の予定地である、いわゆる豊洲半島は、水辺から、レインボーブリッジを初めベイエリアの町並みが一望できるすばらしい景観を持っている場所です。平成十七年には半島を横断する形で「ゆりかもめ」が延伸し、交通の便も飛躍的によくなります。まさに都心居住のモデルである場所となるべきであったのに、そこになぜ市場が移転をしてくるのか、そんな声が聞かれます。
 また、市場に流入してくるトラックによる影響も心配されています。築地市場には一日一万五千台もの車両が出入りをしています。築地市場の前に、日中のみならず深夜、早朝まで折り重なるトラックの列を見れば、地元の人が心配をするのも当然だと思います。とまっているトラックのほとんどは、エンジンをかけっ放しにしていて、アイドリング中の排ガスがもたらす環境への影響も大きなものがあります。
 しかし、それにも増して問題なのは、一体市場がいつ移転をしてくるのか、どんな計画なのか、地元の人にはほとんど何も知らされていないことです。周辺の町会長さんなんかに話を聞いても、ほとんど何も知らない。もともとあった開発計画をチャラにして、これだけ周辺に大きな影響を与える施設を移転させようという割には、都は地元に対する説明責任を十分果たしていないのではないでしょうか。
 新市場の基本的なイメージについては、既に、学識経験者と市場関係者から成る新市場基本コンセプト懇談会の報告書がつくられています。それを受ける形で、現在、都と市場関係者とでつくる新市場建設協議会で具体的な議論が進められているところですけれども、この際、その内容と新市場の具体像、建設に向けたスケジュールをお聞かせください。
 また、地元住民の合意を得て、すべての人に歓迎されるような市場移転計画とするためにも、外郭環状自動車道について現在行われているようなPI、パブリックインボルブメントの仕組みをつくるべきではないでしょうか。
 所見を伺って私の一般質問を終わりますけれども、二番目の公共コストの縮減については、時間もありますので、答弁によっては再質問を留保して、質問を一たん終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 柿沢未途議員の一般質問にお答えいたします。
 ショートショートフィルムフェスティバルについてでありますが、私もかつて映画の世界といろいろかかわりもございました。映画は、いずれにしろ非常にすばらしいメディアでありまして、幅広く奥深い、言語を超えた国際語でもあると思います。ハリウッドに限らず、むしろ小さな国の無名の監督の作品にもすばらしい感動的なものがありまして、都はこれまで、観光振興の観点からも、東京国際映画祭、これはいま一つ盛り上がりが足りませんが、東京国際アニメフェアを支援してまいりました。
 ショートショートフィルムフェスティバルは、短編の国際映画祭として、お聞きしますと、若手監督の情念や感性の発信の場となっているようでありまして、私もぜひ一度、市場調査を兼ねて見てみたいと思います。
 それから、公共工事のコスト縮減についてでありますが、日本の公共工事というのは見えない部分がたくさんあり過ぎまして、本当に随所にそれが感じられますが、なかなか鮮明に物が見えてこない。先般、いろいろ高速道路について論議がありましたあの委員会でも、一つの収穫は、高速道路公団、いまだに詳細な資料を出さないようでありますけれども、ほとんどが随意契約であるということがわかりまして、随契というものがまかり通っているというか、本当に同族会社が勝手な値段をつけてやっている、そういうていたらくでありますけれども、私の非常に親しい、あのメンバーにも推挽しましたが、東JRの今の松田会長がいっておりましたけれども、国鉄が民営化されて幾つかの会社に分かれて、東JRが新しい路線の工事をやったときに、従来の鉄建公団に比べて、自前の工事をするといかに物が安く、廉価にできるかということを改めて知ったといっておりましたけれども、いずれにしろ、私がかねていってまいりましたスピードの重視とコスト意識の徹底というものからしても、この問題は看過のできないものだと思います。
 公共工事についても、品質確保を図りながら、計画から施工までのあらゆる段階において、民間コストとの比較、民間技術力の活用などによって、今後も全力を挙げてコスト縮減に取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長が答弁します。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 公共工事の資材単価についての質問にお答えいたします。
 都で使用している資材単価は、国の単価や、お話にございました財団法人経済調査会などによる単価のほか、都も独自に調査を行い、市場取引の実態を反映し、設定しております。
 生コンや鉄筋などの独自調査についてのご提案ですが、今後とも、より適切に市場の実態を単価設定に反映できるよう、その方策について関係機関と協議してまいります。
   〔中央卸売市場長碇山幸夫君登壇〕

○中央卸売市場長(碇山幸夫君) 豊洲新市場の地域住民との合意形成などについてのご質問でございます。
 現在の築地市場は老朽化、狭隘化しております。流通構造等の時代の変化に対応できない市場となってございます。新たに豊洲地区に移転いたしまして、これを首都圏の生鮮食料品供給の基幹市場へと再生するという意義ある事業と、かように認識してございます。
 豊洲の新市場は、消費と流通の変化に対応する市場、都民と消費者に開かれた市場、そして、お話にもありました交通対策あるいは排ガス対策、こういうものはもとより、環境負荷の低減に十分意を用いた、地域のまちづくりと環境に配慮した市場を目指しております。
 現在、基本構想の策定作業を進めてございます。この過程で、地元区、区議会、地域住民の方々に新市場についてご説明しておりまして、今後とも、この事業の進捗段階に応じてご説明をしていく考えでございます。
   〔七番柿沢未途君登壇〕

○七番(柿沢未途君) 公共工事のコスト縮減についての建設局長のご答弁をいただきましたけれども、その中で、都独自の調査をかねてから行っているというお言葉がありました。しかしながら、私が調べたところによると、都独自の調査といいましても、結局、そのほとんどすべてが、先ほど二つの、建設物価調査会、経済調査会、二つの財団に外部委託をされる形で、結局、この二つの財団が市場調査をしているという実態でございます。市場の実態を把握する方策について、関係機関と協議を進めていくというご答弁をいただきましたので、それについては歓迎をいたしますけれども、この二つの財団を使わない、本当の意味での都独自の調査をやってみることも含めているのか、この点について、建設局長のご答弁をいただきたいと思います。
 この問題については、公正取引委員会の立入調査も入りまして、これから大きな問題になってくる問題だと思います。必ずこの二つの財団の独占状態を突き崩して独自の調査をやる自治体が、全国でどこか、必ずいずれ出てくる。その先駆けとして、東京都がコスト意識の徹底という意味で独自の調査をすることを私は提案をしているわけでございまして、ぜひとも鋭意その試みを前向きに検討していただくことをお願いをいたしまして、私の再質問を終わります。(拍手)
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 単価の設定につきましては、先ほどもご答弁申し上げましたように、適正に設定してきているというふうに思いますが、より適正に設定する意味から、これから、お話の点も含めまして、協議していきたいというふうに思っております。

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