平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 八十八番古賀俊昭君。
   〔八十八番古賀俊昭君登壇〕

○八十八番(古賀俊昭君) まず、中央線日野駅の改良について伺います。
 現在の日野駅の建物は、昭和十二年に改築されたもので、既に六十六年の風雪を刻んでいます。現在、一日の乗降客数は五万二千人を数えます。これに対応して、これまで改札ゲートを増設したり、昭和六十三年には、国道二〇号線沿いの駅前ガード下の歩道を一・五メートルから三メートルに拡幅するなど、少しずつ手を加えられているものの、古い駅舎のままであることに変わりありません。したがって、日野駅のバリアフリー化もおくれ、駅舎の老朽化や、ホーム、階段が狭隘なことなど、多くの課題を抱えています。
 平成十二年に交通バリアフリー法が施行され、一日五千人以上の利用客で高低差が五メートル以上ある鉄道駅については、エレベーターまたはエスカレーターを設置していくことが基本方針とされ、また、新設や大改良する際には移動円滑化基準への適合が義務づけられ、さらに、既設の駅についても努力義務が課せられています。
 日野駅については、今般、高齢者や障害者の利便性の向上、つまりバリアフリー化が必要であるとの観点から、地元の日野市も負担をして、エレベーターの設置が来年度事業化される見通しとなりましたが、東京都はいかなる支援を行うのか伺います。
 確かにエレベーターの設置は一歩前進でありますが、ホームや階段が狭く、特に混雑時の危険性はつとに利用者から指摘されており、現に昨年七月には、車いすの方がホームから転落する事故が起きています。多くの人々が利用する生活拠点を中心に都市を再生し、だれもが快適で便利な生活が送れるようにすることが重要であり、日野市においても平成十三年十二月に、日野駅改良及び駅周辺地区整備計画を都の補助金を得て策定し、駅前広場など駅周辺の整備に取り組んでいます。
 しかしながら、肝心の駅については、鉄道事業者との交渉協議が進展せず、駅周辺商店会等から要望の強い東西自由通路や中央改札口の設置も、果たして実現を見るのか、膠着状態にあります。こうした事業には、国も今日、関心を持って補助制度を拡充しており、東京都は、それらの導入を含めて、日野市の整備計画を支援すべきと考えますが、見解はいかがでしょうか。
 次に、勤務時間内の組合活動について質問いたします。
 昨年の十二月議会において、都議会は、長年にわたり都庁や学校の職場規律の深刻な乱れの元凶であった、いわゆるながら条例を改正し、職員が勤務時間中に給与を受けながら行うことのできる組合活動は適法な交渉のみとし、「及びその準備」は削除されました。わずか六文字を削除するために、昭和四十一年の条例制定以来、実に三十六年間を要したのです。改正ながら条例は本年四月から施行されますが、その運用は大丈夫なのか、そう懸念を抱かせる事態が、特に勤務中の組合活動が野放し同然であった学校現場にあります。
 ここに、(文書を示す)共産党系の東京都教職員組合、いうところの都教組北多摩東支部が出した会議開催の通知があります。日付はキリスト教暦で二〇〇三年一月十四日、あて先は分会長、支部委員殿とあり、第十四回支部委員会(権利労働安全対策委員会議)の開催について、と表題があります。
 そして案内文には……(発言する者あり)後で説明します。ことしの最大の闘いは、教育基本法の改悪を許さず、逆に生かすことと、都知事選挙で勝利することだと思います。イラクに対するアメリカの先制攻撃をやめさせること、当面する闘いなどについて意思統一を行いたいと思います。特に今回は、都知事選挙がどういう情勢にあるのか、候補者選考はどうなっているのかなど、全都の先頭に立って奮闘している方にお話をしていただくようにしました、と書いてあるのです。
 開催日時は一月二十一日火曜日、午後三時から午後五時まで、平日の勤務時間中です。会場は北多摩東教育会館。主な内容として、一、都知事選、二、研修、学力テスト、教育基本法、三、情勢となっています。これは、適法な交渉の準備に該当する組合活動の範囲を定めたながら条例の機関運営会議が、長年、共産党などの左翼運動の絶好の温床であった何よりの証拠です。しかも、文書には米印で、参加に当たっては、職免、給与減免申請簿に権利労働安全対策委員会議とお書きくださいと、しっかり悪知恵まで授けて指示しています。
 あて名は、先ほど述べたとおり、分会長、支部委員殿とありますから、当然、ながらの対象となる機関ではなく、分会長クラスを招集するための不定期の会議と判断されます。しかも、会議内容の一に都知事選を挙げて、本文でも強調しています。当局との交渉の対象となる勤務条件に関する事項は全くなく、現行ながら条例にある交渉の準備行為に該当しないのは明白です。むしろ公立教員に課せられた政治行為の制限に違反するものであり、都民の教育に対する信頼を損なう行為です。本来なら、おこがましくて、職免、給与減免申請など出せないはずです。
 実際の会議では、革新都政をつくる会の林東京自治労連都庁職執行委員長が講師となり、石原都政の問題点と都知事選勝利への展望と題して話をしています。中身を示す資料には、ここにありますけれども、国民いじめの国政を先取りした最悪の石原都政四年間とか、世界に誇る憲法を持つ首都の知事としての資質、姿勢は失格、あるいは、今こそ私たちの手で石原都政を変えるときなど、空元気なのか、威勢のいい言葉が踊っています。加えて、資料として、共産党の「しんぶん赤旗」や共産党都議団発行の都政FAX情報が使用されたことが書かれています。
 我々都民は、今まで三十七年間も、こんな活動に年間少なく見積もっても二十億円の税金を給与として払っていたのです。都教組などの組合職員は、口を開けば、子どものため、子どもたちのためと叫んでいますが、これがながら条例の実態なのです。しかも、この会議では、主任手当拠出金も提出物として集められています。
 教育長、この会議の内容は、ながら条例に認める勤務条件に当たるのですか。当たらないとすれば、直ちに給与の返納を求めるべきです。また、都教委は、この都教組北多摩東支部の会議内容を含めどのように対応したのか、明確にお答えください。
 今後、本年四月からは、交渉と一体と認められる必要最小限の機関運営のみは行えるわけで、幾ら労使不介入の原則があるにせよ、給与をもらいながら勤務時間内に行われる必要最小限の機関運営、つまり組合活動の参加に当たっては、都民や議会からの指弾を受けることのないよう、手続は厳正に行わなければなりません。でなければ、ながらそのものは生きているわけですから、従来のごとく校長、教頭はただ手をこまねくだけという、改正条例の形骸化も危惧されるのです。
 これまでの教職員組合のあきれた所業を許さない、教育委員会の責任ある姿勢が何よりも必要と考えますが、教育長の所見はいかがでしょうか。
 職員団体の活動について都民の理解を得るためには、今回の教育現場のように、勤務時間内に平然と政治的行為を行うようなことは断じてあってはなりません。このことは、教育現場に限らず、都のあらゆる部署においても同様です。苦心惨たん、せっかく改正された新しい条例の趣旨を逸脱しないよう、その厳格な運用について全庁のすべての管理職に徹底すべきと考えるが、知事の決意を伺います。
 次に、ジェンダーフリーと性教育について伺います。
 我々は、伊能忠敬の「大日本沿海輿地全図」、世にいう伊能図は、江戸時代の我が国の地理学の輝かしい成果であることを知っています。しかし、これに関し、伊能図に関しては、案外世に知られていない話が隠されています。
 伊能忠敬の全国の測量事業は十七年に及び、江戸に帰ったときは六十九歳でした。待っていたのは妻のおえいでしたが、忠敬を驚かせたものを持っていました。それは、三種の測量図の写しでした。これが、今日の我が国が世界に誇るべき伊能図として残っているものです。忠敬はそれまでに、毎日はかり続けた原図を妻のおえいに送っていたのですが、おえいはその地図を受け取ると、大図、中図、小図と三通りの地図にきちんと縮尺していたのです。
 樋口清之氏は著書の中で、「日本人の育ての知恵」において、これは、伊能忠敬の測量が正確であったばかりでなく、その妻おえいの縮尺作業が正確であったからこそ可能となったのである。夫は自分の足と目で各地の海岸線を踏査し、一方、妻は、陰ながらその仕事の完成に力を尽くすという、分業による二人のチームワークが成功したのである。例えば農家などでは、特に農民の婦人は、みずからくわを手にして、夫と一緒に田んぼに立ち、田を耕す。これは立派な夫婦の協力、分業の姿といえる。これが知的分野においては、伊能のおえいのように、夫に匹敵するほどの数学の力や製図技術を身につけることによって、夫の仕事に協力し、成功に導くということになったのだといっています。
 樋口氏は、日本の歴史を見る限り、男女の能力差を分けて考えたりすることはできない。日本文化は女性によって支えられてきたといっても過言ではないというのです。これが男女のあるべき姿ではないでしょうか。
 ところが、ジェンダーフリー論者はこれが不愉快でたまらないのです。ジェンダーフリーは、単純に男らしさ、女らしさを否定する次元の問題ではなく、日本人の人格自体を破壊し、日本や家庭という共同体を敵視した新たな革命運動であるとの、この思想の本質と恐ろしさを認識することが何よりも肝要であります。
 そして、この新しい革命運動のもう一つの顔が、今日、全国各地で問題となっている、常軌を逸した、異常な、露骨な学校での性教育であります。昨年十二月の四定で同僚の川井議員がただした、国立市立第五小学校一年生の授業では、男性や女性の生殖器の名称やインターセックスなどの言葉を教え、父母の強い抗議を受けました。
 昨年、北区の小学校五年生の授業では、父親、母親の性行為を、性交という用語を用いて試験問題を作成し、その内容をお父さん、お母さんに質問したりしないことなど、口どめまでしていました。
 東京ではありませんが、大阪の豊中の中学校では、三年生全員を、男女生徒一緒に体育館などに集めて、コンドームの装着を実際にやらせて、学年便りには、より安全なセックスを心がけてほしいと書かれています。
 成長過程にある子どもたちに性的自己決定権があるかのごとき、学習指導要領を逸脱した内容の不適切な性教育が、人間と性教育研究協議会、性教協などの特異な考えに基づき全国にはびこっています。こうした、保護者の理解や協力を十分に得ない性教育は言語道断です。性教育の改善に向けて、東京都教育委員会が作成している「性教育の手引」を改訂するなどの具体的な対応により、適正な性教育について、東京都教育委員会の姿勢を明確に示す必要があります。学校における過激な、不適切な性教育是正に向けた今後の具体策を伺います。
 なお、先般、都教委が行った調査では、性教育において不適切な副読本が補助教材として使われている実態が明らかになりました。このような副読本の使用を許している校長及び市区教育委員会に対して、適正化に向けた指導を行っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 以上お伺いして、一般質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 古賀俊昭議員の一般質問にお答えいたします。
 いわゆるながら条例の徹底についてでありますが、長い間の懸案でありましたながら条例、条例制定後三十六年の時代の変化を踏まえ、原点に立ち返り、新しい本来あるべき労使関係を構築する目的で改正をいたしました。この改正によって、勤務時間内の職員団体活動は大幅に限定され、今まで野方図に過ぎたわけでありますが、都民の理解が得られるものと考えております。
 都民の正当な利益を守るためにも、今後、条例改正の趣旨を各局に徹底していくとともに、制度の厳格な運用に万全を期していくつもりでございます。
 他の質問については、教育長、関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 時間内組合活動及び性教育に関する四点の質問にお答え申し上げます。
 まず、勤務時間内に行われた職員組合の機関運営についてでございますが、時間内組合活動は、給料や勤務時間等の勤務条件について適法な交渉を行うことを前提に一定の範囲で認めているものでございます。
 ご指摘の都知事選挙や主任手当の拠出については、当然勤務条件には該当せず、時間内組合活動として到底認められるものではございません。
 都教育委員会は、東京都教職員組合北多摩東支部が行った権利労働安全対策委員会の活動内容について、事実を明らかにするよう求めましたが、回答がなかったため、本年二月六日から、北多摩東支部の時間内組合活動を一切認めないことといたしました。
 また、当該機関運営に参加し、給与減額が免除されている教職員については、今後、給与返還を求めてまいります。
 次に、本年四月以降の機関運営への参加手続についてですが、適法な交渉と一体とみなすことができる必要最小限の機関運営は、あくまでも交渉との関連において認められるものでございまして、個別の機関運営の開催に当たっては、事前に議題を確認するにとどまらず、事後に内容等を確認するなど、職務専念義務免除及び給与減額免除の承認について厳正に対処してまいります。
 次に、性教育の是正に向けた今後の対応についてですが、学校における性教育は、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階を踏まえて、組織的、計画的に行われる必要がございます。
 都教育委員会としましては、学校における性教育が適切に行われるよう、区市町村教育委員会及び都立学校長あてに通知文を送付し指導するとともに、実態を把握するための調査を行ってまいりました。
 今後は、今年度中に新たな性教育の指導資料を作成しますとともに、従来の「性教育の手引」を平成十五年末までに全面改訂し、各学校における性教育が適正に行われるよう、指導の徹底を図ってまいります。
 最後に、性教育の副読本についてですが、学校が使用する副読本は、校長がその権限と責任のもとに選定し、区市町村教育委員会に届け出ることとなっております。しかし、一部の学校では、副読本の選定に当たり、その内容や児童生徒の発達段階を十分に踏まえなかったり、年間指導計画に位置づけていないなどの課題もございます。
 そのため、新たに作成する性教育の指導資料に、副読本などの補助教材を使用するための基本的考え方を示し、校長がみずからの権限を発揮できるよう支援しますとともに、区市町村教育委員会に対して、各学校が適切に性教育を実施するよう、さらに指導してまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 日野駅のエレベーター設置についてお答えいたします。
 高齢者、障害者などすべての都民が自由に移動し、社会参加するためには、駅のバリアフリー化は大変重要であります。
 このため、都は従来から、鉄道駅エレベーター等整備事業により、地下鉄を除く都内の全駅にエレベーター等を設置することを目標に、事業者等と協働した区市町村の取り組みに対し財政的支援をしてきております。
 お話の日野駅のエレベーターの整備につきましては、地元市と連携して、十五年度の実現に向け積極的に取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 日野駅の改良についてでございますが、ご指摘のように、ホームや階段が狭いことなど課題が多い駅であることは認識しております。
 エレベーターの設置は、バリアフリー化という面で一歩前進でございますが、さらに市の改良計画案を実現させるためには、なお一層の地元市の主体的な取り組みが不可欠でございます。
 都といたしましては、これまでも地元市に対し必要な支援を行ってまいりましたが、今後も、例えば国の都市再生交通拠点整備事業制度などの活用も含め、市の計画案の実現に向けて取り組んでまいります。

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