平成十五年東京都議会会議録第四号

○副議長(橋本辰二郎君) 二番東村邦浩君。
   〔二番東村邦浩君登壇〕

○二番(東村邦浩君) 初めに、公会計制度の改革について伺います。
 東京都は、公会計制度への複式簿記と発生主義会計を平成十八年度から本格的に導入する方針を発表しました。この知事の英断は、今大きな反響を呼んでおります。私のところにも、昨年の予算特別委員会でこの問題を取り上げた関係で、全国各地の議員から、資料を送ってほしいなどの問い合わせが来ております。
 先般、我が党の代表質問で、公会計制度の実施に当たっての今後の課題及び実施までのスケジュールが明らかにされたところですが、今回の取り組みは、明治以来百年以上にわたって綿々と行われてきた日本の官庁会計のあり方を根本から見直すものであり、実現に当たっては、国の法改正など、なお多くの困難な課題を解決していく必要があります。それには、何よりも、東京から国を変えていこうとされている知事の力強いリーダーシップなしにはなし得ません。改めて、公会計制度に対する知事の意気込みと決意を伺います。
 また、財政改革の観点からは、公会計制度に複式簿記と発生主義会計を導入した上で、最終的に、知事も指摘されていましたが、現行の単年度予算主義のさまざまな弊害をなくすために、行政の予算を複数年度で管理する歳出構造改革が必要であります。国も、東京に刺激され、ようやく重い腰を上げ、複数年度で予算を管理する検討を始めました。
 そこで、予算の単年度主義を改革し複数年度予算を導入することについて、都の見解を伺います。
 次に、首都高速道路公団の民営化問題について伺います。
 東京都は、首都高速道路公団に対して千八百二十二億円の出資を行い、二千六百四十五億円の無利子貸付を行っています。したがって、この問題についても強く物を申すべきであります。
 昨年の十二月六日に道路関係四公団民営化推進委員会が、道路公団の民営化について最終報告を出しました。この最終報告では、現在の四公団を五分割して新会社を設立するとなっています。首都高速道路公団については、拡大首都高速道路として、現在の首都高速のほか、第三京浜、横浜新道、京葉道、東京湾アクアライン等を管轄することになり、中央道の高井戸―八王子間は含まれていません。多摩の住民の税金も首都高速道路公団に対する出資や無利子貸付に使われてきたわけであり、中央道の高井戸―八王子間が除外されることには到底納得ができません。
 また、首都高速と中央道の境界になる永福料金所は、年間約四億円の維持費がかかり、加えて、高速道路上に料金所があるため、渋滞を引き起こす原因にもなっています。
 さらに、拡大首都高速道路は、首都再生と切り離して考えることはできません。首都再生に必要不可欠な三環状道路の一番外側に建設されるのが圏央道です。したがって、圏央道を含め、その内側を拡大首都高速道路とし、首都圏の道路ネットワークを整備することが、首都再生に活力を与えることになると考えます。
 このような認識のもとで、拡大首都高速道路になった場合には、八王子までを統一エリアとして、現在の二重料金徴収を改善すべきであります。首都再生を強く推進されている知事の見解を伺います。
 続いて、悪質な貸金業者対策について伺います。
 我が党の代表質問で、都は悪質な貸金業者対策として、休日、夜間の留守番電話による貸付被害受け付けダイヤルの設置を決定いたしました。これを評価した上で、何点か質問をいたします。
 長引く不況の中、真っ先にあおりを受けるのは中小零細業者です。売り上げが減少していく中で、銀行は、貸し渋りどころか、追い打ちをかけるようにして貸しはがしを行っています。その結果、中小零細業者は貸金業者から融資を受けざるを得ない状況に追い込まれています。そのような中、今最も問題となっているのが、暴力団等が介在するやみ金融の問題です。この問題については、警視庁も、やみ金融の壊滅に向けて対策本部や取り締まり本部を設置するなど、体制を強化しています。
 私の知っているやみ金融の事例に、銀行の貸しはがしに遭った中小零細業者が、最後はやみ金融に手を出し、当初八十万円であった借金が、三カ月で四十二社、五千万円にも膨れ上がってしまったケースがあります。そのからくりは、必ず小切手を発行させ、利息の期日が来ると、元本を超える法外な利息を請求し、払えないなら小切手を銀行に入れて不渡りを発生させてやると脅迫、その上で、仲間のやみ金融を紹介して新たに借りさせ、利息の期日のたびにこれを繰り返していくという手口です。
 このように、やみ金融も裏のネットワークを張りめぐらせています。したがって、やみ金融を壊滅させるためには、関係機関による取り締まりのための緊密なネットワークが不可欠です。四月から設置される貸金業対策室において、取り締まりのためのネットワーク形成に積極的に取り組むべきだと考えますが、都の見解を伺います。
 さらに、貸金業者に関する相談の内容によっては、業者との交渉に弁護士や司法書士の介入を必要とします。現在、多重債務等の解決に関する弁護士会の相談窓口として、神田と四谷に法律相談センターがあります。四谷と立川の司法書士会館では、週二回、クレジット、サラ金の法律相談が行われていますが、いずれも予約制です。このため、相談者は改めて日程の調整をしなければならず、時間がかかった分だけ問題を大きくしています。
 そこで、都と東京三弁護士会及び東京司法書士会と協議をし、都庁の貸金業対策室に隣接をさせて、弁護士や司法書士の相談窓口を設置すべきだと考えます。都の見解を伺います。
 続いて、都立の大学改革について伺います。
 大学の価値は環境や施設設備で決まるものではなく、その大学に集う学生で決まるといっても過言ではないと思います。都も、都立の大学改革においては、何よりも優秀な人材を新たな大学に集結しようと、さまざまな取り組みを行っています。
 その一環として、昨年、学問に対する意欲や進路に関する意識を向上させようと、高校生を大学レベルの教育に触れさせる都立サマーキャンパスを墨田川高校で実施しました。参加者へのアンケートによると、確実に進学の目的意識が深まっています。そこで、本年は全都立高校でこのサマーキャンパスを実施し、順次、都内の私立高校にも広げていくべきであります。私立の大学も人材確保のために全国を飛び回っています。都立の大学も積極的に打って出るべきであります。都の見解を伺います。
 知事は、本定例会の施政方針表明で、いつの時代も、若者たちのユニークな発想や旺盛な好奇心が社会を動かす力の源泉であり、我々の役割は、子どもたちが存分に力を発揮できる土壌を整えることにありますと述べられました。そのような意味で、都立大学が、平成十六年度入試からゼミナール入試の導入や東京未来塾の検討、また、都立大並びに都立科学技術大学でチャレンジ入試を実施することに対し、高く評価いたします。
 先日、ロボット相撲大会で全国三位になった都立町田工業高校の生徒や、高校生でシスアド試験に合格をした都立第二商業高校の生徒にお会いしました。彼らに共通した意識は、高校時代に打ち込んだ分野をさらに大学で伸ばしたいという思いです。しかし、普通科高校でないため、進学にハンディがあります。そこで、学力だけでなく、こうした学生の意欲や実績を評価する人材発掘型入試を、平成十七年四月開設予定の都立の新大学においてこそ実施すべきであると考えます。都の見解を伺います。
 最後に、都立病院改革、とりわけ都立小児病院の改革について伺います。
 一月二十四日、都はいよいよ都立病院改革実行プログラムを発表いたしました。その中で、平成十九年度に多摩メディカル・キャンパス内に小児総合医療センターを開設するスケジュールを明らかにしました。この小児総合医療センターは、八王子小児病院、清瀬小児病院、梅ケ丘病院を統廃合して建設されるものですが、私は、小児総合医療センターの建設そのものに反対しているのではなく、現存する小児病院が統廃合された後の地域医療を危惧しているわけであります。むしろ、小児総合医療センターについては積極的に建設をすべきであると考えています。
 そこで、まず、小児総合医療センターが目指している医療について、具体的な内容を明らかにしていただきたいと思います。
 昨年の十二月、世田谷区にある都立母子保健院が廃止になりました。しかしながら、世田谷区の場合、昨年開設された国立成育医療センターが、三百六十五日二十四時間、だれでも、どのような症状でも受け入れる体制をとっており、廃止された母子保健院を十分に補っています。しかも、この春より、区が東京都の補助を受けて準夜間の小児初期救急センターを開設するという手厚い対策がとられました。
 これに対して、八王子小児病院の場合、都は、八王子市と十分に協議を行い、統廃合後の地域小児医療に責任を持つと、予算特別委員会や厚生委員会での私の質問に答えてくれました。しかし、依然として具体策は示されておりません。このため、地域住民も不安を募らせております。都は、責任ある立場から、八王子市との協議についてもっと積極的に働きかけていくべきであります。都の見解を伺います。
 大事なことは、八王子小児病院が有している機能のうち、地域小児医療に必要な機能を地元に残すことであります。都は、小児の三次医療を小児総合医療センターで行う方針ですが、八王子市と府中市との距離や移動時間を考えたとき、八王子小児病院が有している小児の三次医療であるNICUやドクターカーを、八王子小児病院がカバーをしている現在の地域に残すべきであると強く訴えるものであります。都の見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 東村邦浩議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、公会計制度の改革についてでありますが、官庁会計制度には、資産や負債の全体像や事業の正確なコストが明らかにならないなど、さまざまな弊害が存在するにもかかわらず、日本の役所ではこれまで、これについて何の疑問も抱かずにきました。
 で、私は、「機能するバランスシート」の取り組みを進めてまいりましたが、今回、国に先駆けて、官庁会計制度を根本から改め、都の会計に複式簿記・発生主義会計の導入を決断しまして、その取り組みに着手をいたしました。平成十八年度の本格実施に向け、解決すべき課題はいろいろございますが、また、いろんな混乱もあると思いますけれども、前進のために全庁を挙げて取り組むとともに、東京から新しい行政の公会計のモデルを発信し、法改正の実現など、国を動かしていきたいと思っております。
 今、小泉首相が構造改革を唱え、非常にあいまいな、いわば国営企業のような特殊法人を征伐するために、たまたま私の息子が担当しておりますけれども、一相設けておりますが、やっていることはちまちましていて、私はもっと大きな網をかけるべきだと思います。閣僚の横に存在感のある経済人を置き、下に優秀な数人の公認会計士を配し、そして、会計検査院から二十人ぐらいの役人を連れてきて、ここでまず複式簿記による会計基準をきちっと決めるということで、それに該当しない特殊法人はどんどん征伐していくということでなければ、とてもこの構造改革はおぼつかないと総理にも建言しましたが、なかなか実現しないようであります。
 次いで、拡大首都高を八王子までにすべきとの提案でありますが、絶対的に不足している首都圏の高速道路の整備は、社会経済効果が極めて大きく、また、圏内でのプール制をとれば、健全かつ積極的な事業経営が可能となります。したがって、都としては、民営化それ自体を目的とすべきではありませんが、仮に民営化する場合には、圏央道の内側で首都圏を一体とする経営体も一つの案であると主張しました。
 民営化推進委員会の意見書では、全国を五つの地域に分割して新会社を設立すると。このうち、首都圏においては拡大首都高として提案されておりますけれども、この中にはお話しの中央道の高井戸―八王子間や東名高速などは含まれておりません。
 民営化の今後の推移は不透明でありますが、都としては、首都圏の高速道路の整備と維持が円滑に進むような経営形態になるように、積極的に働きかけていこうと思います。
 私、一時間ほど所信を述べる機会をあの委員会で持ちましたが、ありていにいいますと、道路のことがわかっている委員がほとんどいない。思いつきで何か細々した分割をするということが案に出ていますけれども、私の主張は、この東京を基点として東名、中央、上越、東北道という日本の幹線道路が発進しているわけでありますから、あくまでもこの首都圏を中心にした組織をまずつくって、首都圏から発するいろいろな可能性というものを道路が体現していくという発想で、分割をするならば、そういう案を考えてくれということを申しました。
 なお、他の質問については関係局長から答弁します。
   〔財務局長田原和道君登壇〕

○財務局長(田原和道君) 公会計制度改革に関するご質問でございます。
 東京都は、現在、複式簿記・発生主義会計の十八年度導入に向けた取り組みを開始いたしまして、その準備作業を全力で進めているところでございますけれども、ご指摘の複数年度予算につきましては、公会計制度改革における今後の重要な課題として受けとめております。
 複数年度予算は、三年程度にわたります歳出総額や主要経費別の上限額を事前に定めまして、その範囲内で各年度の予算編成を行うものであります。主に歳出抑制の手段として、イギリスやニュージーランドなど幾つかの国で既に導入をされていると聞いております。
 この制度の導入に当たりましては、景気対策などの臨時財政需要への対応や、毎年の予算審議における議会との関係、それから将来見通しの確実性など、実現するには幾つかの解決すべき課題がございますけれども、今後十分に検討してまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 貸金業対策についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、貸金業対策室におけるネットワーク形成の取り組みについてでございますが、違法・不当な行為をする貸金業者の手口は、巧妙で広域化しておりまして、一つの機関で苦情相談を受けて処理するだけでは限界がございます。
 そこで、悪質な貸金業者を排除するためには、都はもちろんのこと、国、警視庁、関係自治体、弁護士会、司法書士会などが、被害情報を共有化し、それぞれの役割を担いつつ、取り締まり体制の強化や啓発活動の推進に向けて連携していくことが大変重要でございます。
 今後とも、被害防止や被害者救済のため、ネットワーク形成に積極的に取り組んでまいります。
 次に、弁護士や司法書士の窓口の設置についてでございますが、都では、消費者の利益を保護するために、都知事登録の貸金業者に関する苦情相談に応じております。相談によっては、ご指摘のとおり、貸金業者に係る債務整理、自己破産申し立ての相談などもあるため、専門的知識を要するものにつきましては、弁護士会等の相談窓口を紹介しております。
 その場合の対応について、ご提案がございました、相談者のより一層の利便性を図るため、貸金業対策室に隣接した窓口の設置に向けまして、弁護士会、司法書士会などと十分協議をしてまいります。
   〔大学管理本部長鎌形満征君登壇〕

○大学管理本部長(鎌形満征君) 大学改革にかかわる二点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立サマーキャンパスについてでありますが、この事業は、新大学の設立を前に都立四大学と都立高校との連携を強化する一環として実施したものでございまして、大学のレベルの授業を高校生に提供し、大学で学ぶ意欲などの向上を図ることを目的としております。
 今年度が第一回目でございまして、都立墨田川高校を会場に、二十三区内の都立高校生延ベ三百七十名が受講いたしました。受講生の評価も良好でございまして、来年度は、すべての都立高校に拡大するとともに、内容の充実に努めていきたいと考えております。
 また、ご指摘の都内私立高校への拡大につきましては、その成果を踏まえて検討してまいります。
 次に、都立新大学での入試のあり方についてでありますが、都立新大学では、次代のリーダーの育成を目指しており、入試につきましても、これまでのペーパーテストの偏重を排し、受験生の個性や独創性等に着目して選抜するなど、入試の多様化を図っていく考えであります。
 その具体策の一つとして、新たに入試方法を企画、開発、実施する部門を設置いたしまして、大学で必要な基礎学力に加え、小論文やプレゼンテーションなどを通じて、ご提案のありました、高校時代のいろいろな活動や実績など、学力試験でははかれない能力や意欲を総合的に評価して判定する、いわゆる人材発掘型のAO入試を導入し、順次拡大を図ってまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 都立小児病院の統廃合に関するご質問にお答えいたします。
 小児総合医療センターが目指す医療についてですが、同センターは、周産期医療、小児精神医療、小児がんや移植医療など、一般医療機関では対応が困難な高度専門の小児医療に取り組んでいくこととしております。
 診療に当たりましては、妊娠、出生から小児期、思春期、成人に至るまでを一貫してとらえました、心と体の総合的な医療の提供を目指しており、これは我が国で初めての取り組みと考えております。
 また、同センターと同じ敷地内に建設予定の多摩広域基幹病院や、他のさまざまな医療機関等との密接な連携や医師等の交流を通じ、都における小児医療の水準の向上に大きく寄与していける病院を構築してまいります。
   〔健康局長長尾至浩君登壇〕

○健康局長(長尾至浩君) 小児病院の統廃合に関します二点のご質問にお答えいたします。
 まず、八王子小児病院の統廃合後における地域の小児医療についてでございますが、現在、既に設置している八王子市との検討会で、地域特性を踏まえた小児医療の確保策について協議を行っているところでございます。
 八王子小児病院の統廃合後における地域の小児医療の確保につきましては、健康局としても重要な課題と認識しており、病院経営本部とも連携して、八王子市に積極的に働きかけ、具体的な対応を検討していきます。
 次に、NICUやドクターカーについてでありますが、八王子小児病院がカバーしている多摩地域の周産期医療の確保については、地域の医療資源の実態等を踏まえ、病院経営本部と一体となって検討の場を設け、NICUやドクターカーなどの周産期医療体制整備について、検討を具体的に進めてまいります。

○副議長(橋本辰二郎君) この際、議事の都合により、おおむね二十分間休憩いたします。
   午後三時二十五分休憩

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