平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 五十五番真木茂君。
   〔五十五番真木茂君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○五十五番(真木茂君) 石原都知事より昨日お話がございました東京都と神奈川県の境、都県境の町田市から選出されております真木茂でございます。
 まずは、その都県境にかかわる問題から始めさせていただきます。
 昨年の十一月、私の家に来る途中でありました友人が交通事故に遭いました。被害者である私の友人が、みずから携帯電話で一一九番をし、続いて一一〇番をかけてから私に電話をしてまいりました。十分以上してから私が現場に着きましたところ、まだ救急車もパトカーも到着しておらず、加害者と被害者が茫然として現場に立ち尽くしていたのであります。
 この余りにも遅い救急車とパトカーの到着には、二つの問題が内在すると私は考えます。
 まず一つは、町田市における警察と消防の密度の薄さであります。署管轄の人口は東京で一番、犯罪認知件数も警視庁管内で一番、救急出場数は東京消防庁で二番という大きな署になっています。
 一つの署の管轄が大きいということは、それだけ市民からは遠い存在であることを示しており、警察が事件を認知してから現場に着くまでのレスポンスタイムも、東京都平均七分二十八秒であるにもかかわらず、町田市の平均は十二分〇七秒と、大幅に遅い現実があります。実際に私の友人のときも、十八分かかっています。にもかかわらず、町田署に置いてあるパトカーは七台だけ、救急車は六台だけと脆弱感は否めません。町田市における警察体制と消防救急体制の整備は急務であります。
 さらに、町田市には、都県境ならではの問題も存在します。神奈川県内にアジトを設け、町田市内で犯罪を犯すという都道府県警察の盲点をねらった犯罪グループも存在するといいます。麻薬の密売がうわさされたり、都県境に近い住宅地で泥棒が相次いだりもしています。駅から三メートルで神奈川県というJR町田駅においては、繁華街の治安も神奈川県警察との協力が欠かせません。
 警視庁は今議会に国際犯罪対策を提案しておりますが、国をまたがる国際犯罪のみならず、都県をまたがる県際犯罪の対策も必要であります。都において、都県境を有する区市町村は二十四にも及び、何も町田だけの問題ではありません。近隣県警との連携の推進による治安維持と捜査体制の強化に向けた取り組みについて、警視総監に伺うものであります。
 この遅い到着のもう一つの問題は、携帯電話からの一一九番の問題であります。町田市内から携帯電話で一一九番をかけたとき、横浜市消防局に電話がつながる場合があります。その際、全部用件を聞き終えてから、こちらは横浜につながっておりますので東京の方へ連絡しておきますと、何とも心細い対応となるのみならず、私の友人の場合も、東京消防庁であれば、目の前の町内会館の名前をいえば、即座に目の前の画面に地図も出て住所もわかるものが、横浜市消防局であるばかりに、正確に住所をいわなければならず、住所の把握までに数分を要したとのことであります。
 つまり、携帯電話からの一一九番の通報から、横浜市消防局を経由して東京消防庁が事故を認知するまでに、住所の確認の時間と東京に伝言する時間とで三分から五分程度をロスしたと想像されるのです。東京消防庁と近隣の消防本部との間では、一度聞いてから伝言するのか、それとも即座に転送するのかといった共通のルールはできておりません。
 さらに近隣県連携が不十分な実例として、横浜市消防局は、神奈川県内には即座に転送できる電話転送システムを構築しておりますが、都県境を越えた東京消防庁には転送できないことが判明しました。同時に、東京消防庁立川指令本部も、他県の消防本部に転送することができない、さらには消防本部同士をつなぐ回線はアナログ回線という、何ともアナクロなシステムであることが判明いたしました。
 近隣消防本部との早急な共通のルールを構築願うとともに、システムの改善を求めるものであります。前述の救急車の不足問題を含め、消防総監にお伺いいたします。
 続きまして、携帯電話と危機管理の問題につきましてお尋ねいたします。
 私は、この一月十五日に行われました東京都の図上防災訓練を視察いたしました。第一庁舎の防災センターにおいては、東京電力や東京ガスなど民間企業も招集されておりましたが、通信では、国内電話のNTTと国際電話のKDDというかつての流れのままに、NTT東日本とKDDIの二社が招集されておりました。
 しかし、今日の社会において、災害時に威力を発揮するのは、有線電話よりは携帯電話であります。にもかかわらず、災害時に協力を要請する国の指定公共機関にも、また東京都が指定する指定地方公共機関にも、携帯電話会社四社のうち、二社は指定されておりません。
 本来なら、通信事業者は国が指定すべきだとは考えますが、一部事業者はまだ全国展開していない事実を踏まえるならば、東京都だけでも指定地方公共機関に指定すべきであります。また、指定されているNTTドコモにしても、指定公共機関はすべて網羅されているはずの東京都自慢の無線防災連絡システムから漏れているのであります。
 また、都の防災パンフレットにも、家族との連絡には災害伝言ダイヤル一七一を活用してくださいと記されているその災害伝言ダイヤルは、NTTにとって法律上の義務ではなく、独自のサービスとして実施しております。競争政策の進む中で、民間任せのままでは、マイライン契約している人に対してのみ災害伝言ダイヤルが使えますよと、こんなことになりかねません。
 災害対策として携帯電話の位置づけを高め、携帯電話各社との連携を強化し、積極的な活用を図ること、さらには、民間会社に任せ切りにしている家族との安否確認システムの構築に向けて、都としての対策の強化を求めるものであります。
 続きまして、災害時の飲み水の確保についてであります。
 私の住む町田市は、多摩の最南端に位置しますので、北に位置する東村山や朝霞浄水場からの配水系統の末端となります。都が行った多摩直下地震の被害想定では、水道の復旧までに十五日かかるとのことでありますが、その中で最も復旧が遅くなるのは、水道管の末端の方であると思われます。このため、災害に強い地下水源を確保しておくことは非常に重要であります。
 現在、町田市の上水道の三・五%は地下からくみ出した井戸の水でありますが、そのうちの原町田水源が、非常に上質な水であるにもかかわらず、地面からは深くない浅井戸だからということで、将来、クリプトスポリジウムという菌が検出されるかもしれないという厚生労働省の通達一枚により、昨年九月より休止に追い込まれております。
 この原町田水源は、その水質がよいがために、塩素を投入するだけの極めて簡易な浄水処理しか行っていなかったことが休止に至った原因であり、普通の処理施設を設置さえすれば、再開できる水源であります。膜ろ過施設の建設費用は、例えば一日五百トンの場合は四億五千万円、一方、応急給水槽の建設費用は、百トンでも用地費を含めれば二億円程度、町田市内にある千五百トンの応急給水槽は何と九億円の建設費がかかっています。使えば終わってしまう応急給水槽に比べ、既に自家発電を備え持ち、一日に七百トンもの能力を持ち、尽きることのない原町田水源に数億円の投資をすることは、決して高い投資ではないと考えます。
 この原町田水源について、廃止することなく、再開に向けて取り組まれることを強く要望するものです。見解を問います。
 続きまして、障害者福祉についてお尋ねいたします。
 私は、東京都の福祉に誇りを感じています。私の父は若いころに結核を患い、その後の人生を障害者の二級として、晩年は一級の障害者として半生を過ごしました。働けない父にかわり、まさに三百六十五日働き続けた母の収入と父の障害者年金とで育てられた私には、東京都の福祉のありがたさ、都加算のありがたさが身にしみております。その東京都の福祉を守っていきたいという思いは、都政を志した原点の一つであります。
 東京都に在住する身体障害者は約三十七万人、知的障害者は約五万人、障害者福祉は都政の重要課題の一つだと認識しております。しかし、私が当選してから一年と七カ月、この本会議場で、知事の障害者福祉に対する思い、哲学を聞いた覚えはございません。障害者福祉政策は、この四月から国の制度が措置費から支援費制度へと移行し、まさに今、障害者福祉政策は大きな転換点を迎えております。
 この大きな転換点に当たり、石原都知事の障害者福祉に対する考え、東京都の知事としてどのような障害者福祉を目指していくのか、哲学、思い、情念を聞かせていただきたいと思います。
 その上で、今後の具体的な対応が求められる課題として、特に重度障害者の通所施設に対する支援のあり方について申し上げます。
 先進的な福祉を実践している地域では、送迎サービスやボランティアの協力を得ながら、一対一の介護を必要とする重度重複障害を初めとする重度の障害者を受け入れている通所施設が存在します。しかし、これまでの措置制度のもとでは、障害の程度にかかわらず、一律の単価に基づいて措置費が計算されており、施設にとって配慮が必要となる重度障害の方を受け入れても、その分の負担は、受け入れ施設や地元の自治体によって支えられておりました。
 通常なら入所施設に入っている重度の障害者を受け入れられる通所施設があるならば、本人は外の空気を吸い、仲間と働くことの喜びを覚え、家族にとっては二十四時間の介護でもなく、遠くの施設に預けたままということでもなく、地域の中で重度の障害者が家族とともに暮らすことができるのであります。
 この四月から導入される支援費制度においては、通所施設利用者の障害の程度をA、B、Cの三段階としており、措置制度に比べれば、重度者に対して一定の配慮が示されたものと見ることができますが、従来どおり送迎サービスへの補助がないなど、全体として制度設計が、通所施設は一人通所ができる人の施設という前提でつくられたと思われます。
 また、例えば知的障害者の通所授産施設のA区分の単価とC区分との単価を比較すると、月額で約二万円から三万円程度の差であり、これで本当に送迎が必要な重度障害者に対応できるかといえば、大いに疑問であります。さらに、Aの幅が広く、医療的ケアが必要な最重度の障害者への加算がありません。
 通所施設における重度障害者の受け入れ支援策を都が講じることによって、重度障害者の地域での生活が可能となります。東京都の新制度の構築に当たっては、国基準のA、B、Cに応じて、都のサービス推進費も加算していくこととともに、国が想定していない送迎サービスを必要とするような最重度の障害者への加算制度を求めるものであります。
 支援費制度の理念を現実のものとするために、通所施設の基盤整備について都として積極的に取り組むことを求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 真木茂議員の一般質問にお答えいたします。
 障害者福祉についてでありますが、だれしも望んで人生におけるハンディキャップを背負うものではないと思います。ゆえにも、ハンディキャップを背負わない五体健全な人間ほど、障害を持つ方々に人間としての共感をやはり感じるべきだと思っております。
 お話があったように、さまざまな理由で障害を持った方々が都内には約四十二万人おられます。そうした自助の困難な方々が、必要なサービスをみずから選択して、できるだけその地域で、共助という形の中で自立した生活ができるようにしていきたいと考えております。このため、生活寮やホームヘルプサービスなどの施策を積み重ねてまいりました。
 この四月から始まる支援費制度は、障害者がみずからの選択に基づき、サービスを利用するという点では一歩前進でありますが、国は、サービス基盤拡大のための特別な方策を講じていないなど、まだまだ不十分であると思います。都は、独自にサービス基盤の充実を図るとともに、ケアマネジメントの手法を活用した利用者の選択を支える仕組みづくりに取り組んでいきたいと思っております。
 他の質問については、警視総監及び関係局長から答弁します。
   〔警視総監石川重明君登壇〕

○警視総監(石川重明君) 都県境の治安維持についてお答えをいたします。
 お尋ねの町田警察署におきましては、管内の刑法犯の認知件数が都内の全警察署の中で最も多いという状況でありまして、一一〇番の入電件数も、八王子、新宿両署に次いで三番目となっております。このように、警察事象が多いことから、当然業務量も増大をしているという状況にございます。ご指摘のとおりでございます。したがいまして、地域の捜査力等を強化するための措置が必要であると私どもも考えております。
 こうした問題に加えて、ご記憶にあろうかと思いますが、平成四年には、神奈川県下で警察官を殺害した犯人が町田市内の民家に立てこもった事件が発生をしておりますし、また昨年は、神奈川県内で盗んだ工事用の重機を使用して、町田署管内のATMを機械ごと盗む事件といったような都県にまたがる犯罪も発生をしておりまして、境界にある警察署としての特性も有しておるわけであります。
 こうしたことから、町田市等の特定地域において、殺人、強盗あるいは暴力団による対立抗争事件などの特定犯罪が発生した場合に、警視庁と神奈川県警察が共同いたしまして広域捜査隊を編成する、そのことによって、広域初動捜査を行えるように協定を定めておりまして、有事に備えた訓練を実施しているところであります。
 また、町田警察署等と隣接をする神奈川県警察には五署ございますけれども、この隣接署が都県境警察署情報連絡会議というものを開催いたしておりまして、少年犯罪の実態や対策等について意見交換を行うなど、積極的な交流をすることによって意思疎通を図るとともに、機会あるごとに緊急配備の合同訓練を実施するといったようなことで、問題点やその是正方法等について多角的な検討を行っているところであります。
 こうした状況のもとで、来月下旬を予定しておりますが、神奈川県警察との間で、都県境の犯罪対策等を議題として、両都県の隣接する警察署長等の合同会議を行うことにいたしておりまして、神奈川県警本部長と私も出席をいたしまして、都県をまたがる犯罪の検挙対策を中心に情勢認識を共有する、あるいは情報を共有いたしまして、周辺地域の犯罪総量を減少させる対策を推進することを検討いたしております。
 警視庁といたしましては、引き続き、神奈川県警察との間のみならず、順次、近隣の警察とこのような合同会議を開催するなどいたしまして、連携を一層緊密にして、都県境周辺における治安維持に努めてまいりたいというふうに考えているところであります。
   〔消防総監杉村哲也君登壇〕

○消防総監(杉村哲也君) 消防体制についての二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、町田市内への救急車の増強についてでありますが、救急車については、各救急隊の出場件数、救急隊の集結状況及び地域特性などを考慮し、配置しております。町田消防署については、これまでも救急車の増強を計画的に行ってまいりました。
 ご指摘のとおり、町田地域は管内の面積も広く、救急車の現場到着に時間を要する場所もあります。さらに、三方が神奈川県と接していることから、他の救急隊の応援を受けにくいことも考慮し、現在、救急車の増強について具体的な検討を行っております。
 次に、携帯電話からの一一九番通報についてでありますが、都県境付近における携帯電話からの一一九番通報については、他県消防本部に通報されたり、他県消防本部管内の一一九番通報を東京消防庁で受信することがあるため、近隣消防本部と緊密な連絡をとりながら迅速な出場を図っております。
 東京消防庁の管轄区域外で発生した救急事故等の他消防本部への連絡については、平成十二年度から進めている多摩災害救急情報センターの更新に伴い、本年四月から転送機能を付加するとともに、転送回線のデジタル化など、システムの改善を図っております。
 また、町田市に隣接する他県の消防本部は、横浜市消防局、川崎市消防局、相模原市消防本部、大和市消防本部がありますが、横浜市消防局を除き、当庁への転送機能を備えている状況であります。引き続き、横浜市消防局においても当庁への転送機能の整備が図られるよう、協議を進めております。
 ご指摘の点も踏まえ、今後さらに近隣消防本部との緊密な連携を図り、迅速な連絡体制の確保に努めてまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 災害時におけます携帯電話の活用についての質問にお答え申し上げます。
 まず、お答えします前に、指摘されました事実関係に若干誤解がございますので、ご説明させていただきたいと思います。
 今回の一月の図上訓練で、NTT東日本とKDDI社、二社しか呼ばなかったのはなぜかということでございますが、これは、今回の訓練は七都県市の相互応援や国との広域連携を主眼にしたものでございまして、二社は通信部門の主要機関として、今回は、図上訓練のいわゆるコントローラーとして参加していただいたものでございます。
 いま一点でございますが、防災行政無線、NTTドコモになぜつけていないのかということでございますが、これは、指定公共機関にNTTドコモが指定された際、東京都は防災無線接続のための話し合いをNTTドコモに行いました。が、新社屋が完成まで設置を見合わせるように依頼されたものでございます。新社屋が完成いたしましたので、十五年度から実施いたします行政防災無線の再整備計画にあわせて整備することにいたしております。
 それでは、お答え申し上げます。
 災害時に正確な情報を把握するためには、通信手段の確保が不可欠でございます。このため、都では、携帯電話を活用いたしました被害情報の収集伝達訓練の実施や、通信事業者も参加いたしましたライフライン対策連絡協議会の開催などによりまして、情報連絡体制の強化や通信施設の防災性の向上を図ってまいりました。
 今後、携帯電話事業者を含めた通信事業者と連携いたしまして、災害時の安否確認や災害情報の提供の充実に努めてまいります。
   〔水道局長飯嶋宣雄君登壇〕

○水道局長(飯嶋宣雄君) 原町田水源の再開についてお答え申し上げます。
 多摩地区における井戸水源は、平常時はもとより、災害時においても身近に利用できる貴重な水源であることから、水質や地盤沈下などの動向を見ながら活用しております。
 現在、多摩地区には、井戸などを水源とする小規模浄水所が数多くありますが、これらの中で、原水水質の悪化や施設の老朽化などの課題を抱える浄水所につきましては、順次、施設整備を進めております。
 原町田浄水所は、地域に必要な給水量は確保されており、また、震災時に必要な飲料水も当面は確保されておりますが、ご指摘のございました水源にかかわる再開に向けた施設整備につきましては、水質の動向を引き続き監視いたしますとともに、給水の安定性や緊急度などを踏まえて検討してまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 障害者の通所施設についてお答えいたします。
 通所施設は、地域で自立して生活をしている障害者の日中活動の場として、大変重要であります。ご指摘の都のサービス推進費補助の再構築につきましては、現在、さまざまな観点から慎重に検討を進めております。
 また、通所施設の整備につきましては、支援費制度移行に当たり、地域生活を支えるサービス基盤を抜本的に拡充するため、障害者地域生活支援緊急三カ年プランによる特別助成により、区市町村等を強力に支援してまいります。

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