平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 六十八番林田武君。
   〔六十八番林田武君登壇〕

○六十八番(林田武君) 今回は、大きく二点について質問いたします。知事を初め局長の明快なるご答弁をよろしくお願い申し上げます。
 まずエネルギー対策について、特に木質バイオマスエネルギーについて、東京都としての対応について伺います。
 新エネルギーは、平成九年に施行された新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法において、新エネルギー利用等と規定され、石油代替エネルギーの導入を図るため、具体的には太陽光発電、風力発電、バイオマス発電等が指定されました。
 地球温暖化対策の計画的な推進、実行が望まれている中、我が国において排出される温室効果ガスのうち、最近ではエネルギー起源のCO2が約九割を占める状況にあり、環境負荷の低いエネルギーの利用促進が急速に求められていることは、ご承知のとおりであります。
 このような状況のもと、昨年、平成十四年六月に、RPS制度、電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法が公布され、新エネルギー等のさらなる普及のため、電気事業者、すなわち東京都の場合、東京電力に対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務づけることになりました。
 電気事業者等の利用に関する特別措置法は、平成十五年四月一日から施行されますが、一部については、平成十四年十二月六日より先行して施行され、新エネルギー等発電設置の認定を受けることが可能となりました。
 電気事業者、東京電力としては、義務を履行するため、みずから新エネルギー等の電気を発電するか、もしくは外から新エネルギー等電気相当量を購入しなければならないということになりました。まさにRPS制度は、新しい時代に先駆け、新時代を担う重要なエネルギー施策なのです。
 本年、東京都は、東京湾の中央防波堤内埋立地に風車二基を建設予定し、既にその姿を見ることができます。国内では、既に約四百五十基の風車がありますが、大都市では初めてのものです。この新風車を、東京都では、温暖化対策に取り組む東京のシンボルにするということです。
 当然、この風車は風力発電用であり、二基の出力は計千七百キロワット、年間で二百五十万キロワットの発電が予定されております。風車がつくる全発電を新エネルギー発電として東京電力が買い、約八百世帯の電力を賄うということであります。
 風車による新エネルギー発電も結構なことですが、新エネルギー指定の中のバイオマス発電、バイオマス熱利用、バイオマス燃料製造が、今後重要なエネルギーとして利用する時代が必ず来るに違いありません。バイオマスが今後なぜ注目されるのか。太陽のエネルギーを使って生物より生産される資源であり、太陽と生物がある限り枯渇しない再生可能な資源であるからであります。
 海外諸国を見渡すと、国家戦略としてバイオマスの総合的な利活用を推進している国々が目につきます。
 欧州EUでは、バイオマスエネルギーを二〇一〇年までに一九九八年時点から約三倍にする計画であります。アメリカでは、クリントン前大統領が、バイオマス由来のエネルギーや製品の利用を二〇一〇年までに三倍に拡大する大統領令を発表し、ブッシュ政権になってからも引き継がれ、国家エネルギー政策で活用拡大を勧告しております。
 中でも、とりわけ木材生産が盛んで、木質バイオマス利用の先進国といわれるスウェーデンやフィンランドでは、既に一次エネルギーの二〇%がバイオマスエネルギーで賄われております。
 一方、我が国でも、昨年十二月二十七日、バイオマス・ニッポン総合戦略を閣議で決定し、バイオマスを総合的に最大限活用し、早期に持続可能な社会を実現しようという計画を打ち出したところであります。
 石原知事は、先般、風車設置後の定例記者会見で、こういう時代に自然エネルギーを活用することはとても大事である、積極的にこういう手だてを講じていくのが行政の責任とご発言されております。
 そこで、知事に伺います。さきに知事がこういう時代と申されたのは、環境危機の時代という意味と同時に、エネルギーの危機の時代という意味があると思いますが、新エネルギー対策として、バイオマスエネルギーについても重要な柱として取り上げるべきと考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。
 続いて、三多摩地域の豊かな森林資源から得られる木質バイオマスエネルギーの利用について申し上げ、質問したいと思います。
 結論から申し上げますと、今東京都が進めている東京の森再生プロジェクトの施策の中に、積極的に木質バイオマスを利用した発電、熱利用、燃料製造とリンクさせていかなければ、森林の再生、森林の活性化はないということであります。
 東京の森林に関して、それぞれの局で東京の森林を再生するための施策を始めました。特に、環境局では多摩の森林再生計画、産業労働局では、よみがえれ東京の森ということで積極的に取り組み始めました。
 まず第一歩は、荒廃した森林に対しての間伐です。環境局では、平成十四年度三億四千三百万円、十五年度には四億八千万円計上いたしました。産業労働局でも、十四年度二億五千七百万円、十五年度二億三千七百万円を計上しました。主なる事業は、やはり間伐対策であります。それと、花粉の少ない杉の普及、自然と森林を守る大自然塾、森林整備地域活動支援などであります。間伐や、それぞれの事業とも必要なことで、評価いたします。
 しかし、地元の自治体、地元の森林組合、木材業者の方々のお話を伺うと、これだけでは森林は再生できないというのです。東京都として、森林を総合的かつ将来的に希望の持てる施策として対応してもらいたいという声であります。すなわち森林を根本的によみがえらせるには、循環システムにのっとった森林施策を促進していかなければだめということであります。
 荒廃した森林に対して、間伐は大事なことです。しかし、新しい時代の森林をつくるためには、森林資源を木質バイオマスとしてエネルギーに利用できる道筋をつけ、苗木を植え育て、成長した木材を活用し、用材は建築資材に、端材や枝等はエネルギー利用に至る循環システムの構築が必要なのであります。
 そこで質問ですが、東京都では、平成十二年度から木質バイオマスの調査検討を進めていると聞いておりますが、どのような内容になっているのか、お伺いいたします。
 三多摩地域で森林にかかわりを持って生活している人たちは、近年、東京都が環境対策、産業対策として、森林に対し積極的に力を入れていただいていることに感謝をしております。また、東京都が木質バイオマスの利用促進に向けて取り組みを始めたことに対して、大きな期待を持っております。
 そうした中で、奥多摩町では町を中心に、新しい産業として木質バイオマスの検討を始めました。また、日の出町の製材業者たちは、端材、おがくずは、ダイオキシン対策のため従来の焼却炉では処理ができなくなり、バイオマスペレット製造工場設立計画が進められております。今まさに新時代の森林再生のための循環システムを模索し、大きな動きとなってきております。
 そこで質問ですが、東京都として、基礎自治体や森林組合、製材業者など、森林、木材産業の関係者が一丸となって取り組むバイオマス利用の施策を展開していく必要があると思いますが、いかがかをお聞きいたします。
 次に、拝島駅の改修について伺います。
 まず、西多摩がいかに面積が広いか。西多摩は、四市三町一村、面積は五百七十一・七一平方キロ。二十三区全部で六百二十一・四五平方キロですから、その広さがわかると思います。
 この広い西多摩地区の四十万人都民にとって、鉄道は重要な生活の足であることは申し上げるまでもありません。西多摩地区を走る鉄道は、JR青梅線、五日市線、八高線、それに西武拝島線です。そして、その全線が拝島駅に集結することはご承知のとおりであります。拝島駅は、まさに西多摩の鉄道の扇のかなめ、重要な拠点駅となっております。
 しかし、その西多摩にとって極めて必要な拝島駅は、戦後からホームも駅舎もほとんど旧態依然としているというのが現況であります。
 申し上げるまでもなく、鉄道駅とその周辺は、多くの人々が行き交うとともに、大多数の都民が日々の生活に利用している重要なまちの拠点であります。東京の都市再生にとって、ターミナルなど拠点駅の整備は大事なことですが、都民の生活の拠点となる駅と、その周辺を便利で使いやすく魅力ある都市空間としての再整備を図ることは、都市再生につながるものであり、三多摩地域の都民が一方で期待しているのは、このように地域の視点に立ったまちづくりであります。
 しかるに、私の地元の拝島駅の現状はいかなるものか。朝夕を中心に多くの人々が利用し、混雑する主要駅であるにもかかわらず、いまだ南北に渡る自由通路がなく、住民の生活が分断され、住民が駅向こうに行くためには、百三十円の切符を買っていかなければなりません。さらに、駅のホーム、階段、通路も狭く、バリアフリー化もおくれているなど問題を抱え、地域の発展を阻害してきました。一朝有事、震災等、万一起きたとき、全く逃げる道がありません。
 拝島駅は、昭島市と福生市の行政境に位置し、両市では対策協議会を設置し、長年にわたりこの問題に取り組み、拝島駅を改修し、便利な自由通路、橋上駅にというのが地域住民、西多摩住民の念願であります。しかしながら、こうした両市の取り組みにもかかわらず、鉄道業者との調整がなかなか進まなかったのがこれまでの現状でありました。
 このような鉄道駅とその周辺の問題解決に向けて、関係者間の合意を図り、円滑な事業実施に結びつくよう、東京都は推進体制を整えていくべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 また、拝島駅について、具体的に東京都は今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 私は強く申し上げたい。こうした駅を中心としたまちづくりは、地方分権の流れの中、地元自治体や広域自治体が協力して進めていくことは当然であり、市町村も同じ東京都です。東京都として、国に任せるだけでなく、東京都が進んで財源を含めて認識を深め、面倒を見てしかるべきと思います。
 私の西多摩にとって、拝島駅周辺の整備は緊急の課題ですが、大きく三多摩に目を向けますと、区部と三多摩の格差があるように、どうしても思います。
 そこで、三多摩のまちづくりについてお伺いいたします。
 現在、東京都が積極的に取り組みを進めている都市再生では、民間事業者の誘導が脚光を浴び、都心ばかり目が向けられている印象があります。地価の下落によって、都心部でも用地のコストが相対的に下がったことや、大規模な種地が発生していることなど影響もあり、現時点では、三多摩地域よりも都心部にオフィス需要の目が向いていることはわかります。
 しかし、いうまでもなく、三多摩地域は多くの魅力があります。多くの大学の立地、先端技術産業の集積、整備されつつある都市基盤、さらには自然の近接性などです。そして何より、三百九十万の人々が暮らす生活の場であります。駅を中心としたまちづくりは、生活の場を便利で魅力的なものにすることにつながります。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 これらの三多摩地域のポテンシャルを中長期的に生かしながらまちづくりを進めていく、このことが今、三多摩地域に求められている都市の再生ではないでしょうか。今後の三多摩のまちづくりについて、ご所見をお伺いし、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 林田武議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、バイオマスエネルギーについてでありますが、私たちが子どものころ、物質不滅の法則なるものを教わったことがございます。その後、エントロピーなるものがいわれて、必ずしもそういうことは成り立たない。それでまた、循環の中でも、あしき変化をしたまま、もうそれ以上変質せずに堆積する物質が、ダイオキシンなどもそうでありましょうけれども、あるということがいわれて、地球規模の自然環境というものが見直されてきているわけでありますが、東京を持続可能な都市に変革するためには、エネルギーのさらなる有効活用に加え、環境負荷の少ない再生可能エネルギーの導入は必要だと思います。
 間伐材や端材、食物残渣などを資源とするバイオマスエネルギーは、今後の技術開発による実用化が大いに期待されておりまして、再生可能エネルギーの一つとして注目に値するものと認識しております。
 今後、都は、十分活用されていないバイオマスの利用を含め、再生可能エネルギーの利用拡大を幅広く検討していきたいと思っております。
 また、多摩地域における今後のまちづくりについてでありますが、多摩地域は、再三申しておりますように、区部にはない空間的なゆとり、さらに、多くの大学や先端技術産業の立地、また、豊富な人材と恵まれた自然環境などを生かすことによりまして、独自の発展が可能な地域であると思います。
 こうした多摩の特性を生かして、自立性の高い活力のある圏域を形成していくために、八王子、立川、多摩などの業務核都市の育成、骨格的な幹線道路の整備や鉄道の連続立体交差化などによるスムーズな都市交通の確保、さらに、産学公連携による先端技術産業の育成、さらに、横田飛行場の民間航空利用の実現などに取り組んでいきたいと思っております。
 一方、三百九十万人の生活の場として、豊かな自然を生かしながら、良好な居住環境の形成が必要でありまして、ご提案の、地域の生活拠点としての鉄道駅を中心としたまちづくりなどを行っていくことも重要な課題であると心得ております。
 多摩の将来に思いをいたしながら、これらの諸課題に今後も取り組んでいくつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 木質バイオマスに関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、これまで実施してきました木質バイオマスに関する検討内容についてでございますが、環境への負荷が小さく、再生産が可能な木質バイオマスは、地球温暖化の防止と環境循環型社会の形成のために、新たなエネルギー源として活用することが必要であると認識しております。
 このため、都は、平成十二年度には、普及啓発のためのシンポジウムや、先進地の取り組み事例などの調査を実施いたしました。十三年度には、間伐材や製材の端材などの木材を原料とする固形燃料の製造事業について、経済的に成り立つかどうかなどについて調査を行いました。十四年度は、事業化が可能とされたボイラーやストーブ用のペレット型燃料の製造について、森林組合や製材業者と事業化に向けた検討を行ってまいりました。
 次に、今後の施策の展開についてでございます。
 先般、東京都農林漁業振興対策審議会から、二十一世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向についての答申をいただきました。答申では、木質バイオマスは、クリーンなエネルギー源として熱利用や発電などに大きな可能性があるため、行政に対し、実用化に取り組む民間企業への支援や、需要面での先導的な役割を果たすよう提言がございました。
 都といたしましては、答申の趣旨を十分に踏まえるとともに、これまでの調査内容の成果を十分生かしまして、今後策定する森林づくり推進プランに向けまして、関係機関とも協議しながら、木質バイオマスの利活用の方策について検討してまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 駅とその周辺の整備についてでございますが、地域の生活拠点である駅とその周辺については、自由通路の整備により、利便性が高い都市空間とする必要がありますが、これまで、地元区市と鉄道事業者の間では、費用負担などの調整が困難な場合が多いのが実情でございます。
 このため、都は、これら関係者を交えた鉄道駅における交通結節点機能改善連絡調整会を設けまして、事業の推進に向け、支援を行うことといたしました。
 ご指摘の拝島駅につきましても、自由通路の設置やバリアフリー化に向け、地元市と鉄道事業者が協議を行っており、都といたしましても、調整会の場を積極的に活用して、早期に事業化できるよう支援してまいります。

ページ先頭に戻る