平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 十一番執印真智子さん。
   〔十一番執印真智子君登壇〕

○十一番(執印真智子君) 初めに、多摩地域の産業振興、観光振興について伺います。
 ことしは江戸開府四百年で、現在記念行事が開催されています。同時に、玉川上水開削三百五十年、多摩が東京府に移管されてから百十年目でもあります。世界の都市がいずれも、水があってこそ発展したことを考えると、江戸の繁栄は、玉川上水、つまり多摩が支えてきたといっても過言ではありません。
 現在、多摩には、広大な土地や豊かな水を利用した農業や工業、精密機械産業、中小企業があります。これら産業の内在的資源の産業間連携を図れば、NPOを初めとした新たな雇用創出の可能性があります。
 東京都は、今年度末までに、多摩の将来像二〇〇一のアクションプログラムを策定予定ですが、そこで優先されるべきは、地域力、市民力をかなめとした自治体の取り組みであり、それを財政面で裏づけする包括的まちづくり予算や包括補助金の必要性については、これまで私たちが提案してきたとおりです。その上で、創業支援施設の拡充や自治体での取り組みの支援、東京都の施設と地域資源の組み合わせによる、新たな観光資源の開発援助などの積極的な産業振興が東京都の役割だと考えます。
 さて、来年はNHKが新撰組をドラマ化するということで、現在、関係各市が連携し、新たな観光振興を図り、これを呼び水とする産業振興や商業振興が期待されています。知事の施政方針には、上野地域と臨海地域の観光まちづくり事業があります。あわせて、多摩の自立性を尊重した、観光振興を含めた産業振興をぜひ進めていただきたいと考えますが、知事の所見を伺います。
 次に、具体的に二点伺います。
 多摩の資源は、外貨を稼げる観光資源とはすぐにならなくても、近隣自治体の住民や全国民に対して、都心では見られない自然を含めて、その地域の歴史や文化を人々の心に訴えかけることができるはずです。前述したテレビドラマをきっかけとして、一過性に終わらない観光振興のために、自治体、民間団体、NPOが核となり、さらに自治体間連携をしながら新たな観光ルートづくりが進められています。
 東京都も、半日観光ルートなどの紹介を通して自治体支援をしておりますが、さらにこの機会を通して、多摩全体を見渡した観光ルートづくりの推進やPRの役割を担うことが必要と考えますが、対応を伺います。
 無農薬や地産地消、スローフードなど、食べ物への注目や関心が高まっています。豊かな農業資源を使って、都民の新たな憩いの場として多摩が果たす役割は、今後ますます広がると考えます。家族で自然に親しむことは、子どもたちの食や環境への関心喚起にもつながります。多摩という立地を生かした東京の農業を、都民にとって魅力あるものにしていくため、地域ブランドを生かした果樹のもぎ取り園や、加工施設を併設した農園など、いわゆる観光農園の整備について積極的に支援していくことが必要と考えますが、いかがでしょうか。
 次に、中高年男性の健康管理、男性の更年期障害対策について伺います。
 更年期の健康不安を増幅する要因は、人間関係、会社の業績不振、リストラ、倒産などのストレスによるホルモンバランスの微妙な崩れではないかといわれております。日本医師会のホームページを要約すると、更年期障害は、最近では男性にも見られるという学説があり、男性の場合には、女性ほど症状が顕著ではないが、性欲の減退やうつ病状態が見られる、これらの症状は、男性の更年期障害によるといわれ、今後、男性の更年期障害の研究も進み、解明されることが期待されるとあります。
 増加している中高年男性の自殺の原因のトップに挙げられているのも、うつ病などの健康問題といわれ、九八年から自殺者数は毎年三万人を超え、男性の自殺数は女性の二・五倍、自殺により親を亡くした子どもは約九万人に上るといわれております。
 更年期になって症状が出てきたら早目に病院へ行くのが得策ですが、実際には、診療科の中に婦人科はあるものの、紳士科はありません。病院へ足が向きにくい現実があります。加えて、男らしく、男のくせにに縛られ、弱音を吐くことのできない状況がまだあるのではないでしょうか。
 二〇〇一年に、ウィメンズプラザ民間活動助成事業により、メノポーズを考える会が調査したところによれば、七割の男性が更年期の症状を感じていると回答しています。さらに詳しい調査も必要と思いますし、将来的には男性の専門科も必要と考えますが、まずは情報提供や相談体制などを充実させることが、問題解決の第一歩であると考えます。対応を伺います。
 次に、学校におけるセクシュアルハラスメント対策について伺います。
 この問題を取り上げるきっかけは、都立高校の女子生徒の訴えからでした。わいせつ行為はもちろんのこと、セクシュアルハラスメントは、いうまでもなく人権侵害です。特に、学校という、教える側と教えられる側といった力関係の中で行われるセクシュアルハラスメントやわいせつ行為は、子どもに一生消えない傷を残し、大人社会への不信感を植えつけます。
 現在、教育委員会にある要綱では、保護される対象に児童生徒が明記されておりません。要綱の整備と、それに伴う対策の強化が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 その際、都の関連機関との連携を図るとともに、区市町村教育委員会に対する働きかけが必要と考えますが、対応を伺います。
 学校内の対策の強化とともに、学校外にもセクシュアルハラスメントに対応する窓口を置く必要があります。学校内では余りに近過ぎて、逆に相談しにくいという場合が考えられるからです。
 都では、いじめや虐待、体罰など子どもの権利侵害が深刻な社会問題となったことから、第三者機関的要素を持つ子どもの権利擁護委員会を設置し、子どもの権利を擁護する事業を試行的に実施してきております。
 子どもの権利擁護電話を設置し、権利侵害の相談などにも対応していますが、セクシュアルハラスメントに関する相談もあると伺っております。子ども自身が悩みを抱えたとき、親身に相談に乗ってくれる窓口が助けになっていることと思います。
 児童相談センターの「4152(よいこに)電話」も含め、子どものあらゆる相談を受け入れるために今後どのように対応されていくのか、見解を伺います。
 また、ウィメンズプラザでは、スクールセクシュアルハラスメントやキャンパスセクシュアルハラスメントに関する講座が持たれておりますが、これはセクシュアルハラスメントの相談増加による事業展開と伺っております。
 ウィメンズプラザに寄せられたセクシュアルハラスメントの相談を当該の学校につないで、具体的に問題解決するためのルートづくりを進める必要があると考えますが、見解を伺います。
 その上で、学校内外を問わず、セクシュアルハラスメントを引き起こす原因解決の一つとして、性教育への対応を伺います。
 八年前につくられた「性教育の手引」では、性教育は、家庭、学校、地域社会がそれぞれの役割を果たすことが重要であるとしています。学校での性教育は、教員の認識を改めさせ、子ども自身に力をつけさせる意味でも非常に重要です。現状の取り組みを伺います。
 また、昨年四月に策定された新たな性教育プログラムの開発によると、学校における性教育は、人格の完成を目指す人間教育の一環であることが示され、男女共同参画の推進や東京都人権施策推進指針をもとに、HIV感染者、性同一性障害、同性愛者への視点などが盛り込まれたものとなっています。
 新たな取り組みを大いに評価するところであり、教える側の教員にとって、現状の児童生徒に向き合う視点として十分に活用することが望まれますが、今後、どのようにこの新たな性教育プログラムの開発を活用していくのでしょうか。
 最後に、ユースクリニックについて伺います。
 昨年、生活者ネットワークでは、ニュージーランドのユースクリニックであるファミリープランニングアソシエーションを視察いたしました。主に若い人を中心とした、性と健康の問題に取り組んでいるNPOの専門機関です。相談事業のほか、七十二時間以内の緊急避妊、妊娠検査、避妊法、性行為感染症の検査や治療などが行われています。
 日本では、思春期の子どもたちや若者の間に、性感染症や薬物被害が広がっていると聞いております。特に薬物については、二〇〇二年中の覚せい剤事犯、大麻事犯は、ともに全国で中学、高校生の割合が少年の一〇%を超え、低年齢化が進んでいます。
 社会全体で、薬物の不正取引の防止と若者への情報提供をしなければなりません。若者が集まる原宿や渋谷などの繁華街にユースクリニックを整備することにより、薬物使用の害を広報するとともに、子どもたちや若者の体の問題に具体的に対応するクリニックとして機能させることが必要と考えます。
 家庭や学校での対応はもちろん必要ですが、同時に、健康局でも思春期の子どもや若者に対しての相談事業を拡充していく必要があると考えます。見解を伺って質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 執印真智子議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩地域の産業振興についてでありますが、多摩地域は、先端技術産業の集積、多数の大学の立地、独自の歴史、文化、農地や森林など豊かな自然環境など、魅力のある資源を数多く備えております。観光を含めたさまざまな産業の発展の可能性が十分にございます。
 多摩地域の産業振興は、東京全体の再生や、さらに首都圏のバランスのある発展にも寄与するものと思います。
 今後の産業振興には、幹線道路や情報通信などの産業基盤の整備と、大学や研究開発型企業など多様な主体の協働の促進が課題であると思います。
 都は、市町村と連携し、地域の地政学的な特性や独自性を生かした多摩の産業振興を進めていくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 性教育など三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、学校におけるセクシュアルハラスメント防止に関する取り組みについてですが、都教育委員会は、児童生徒に対するセクシュアルハラスメントを防止するとともに、被害を受けた場合の対応等が適切に行われるよう、児童生徒を対象とした新たな要綱を制定し、平成十五年度から施行する予定でございます。
 新しい要綱では、各都立学校に相談窓口の設置を義務づけることとし、同時に、東京都教育相談センターの相談内容として明確に位置づけ、児童生徒や保護者が相談しやすい体制づくりを進めてまいります。
 さらに、都が所管する他の相談機関を児童生徒に周知しますとともに、それらの相談機関相互の情報交換を行うことができる仕組みを導入してまいります。
 なお、小中学校におきましても、セクシュアルハラスメントの防止について徹底が図られるよう、区市町村教育委員会に対して、要綱の整備など必要な措置を講じるよう指導してまいります。
 次に、性教育に関する取り組みの現状についてでございますが、学校における性教育は、児童生徒の発達段階を踏まえ、組織的、計画的に実施することが大切でございます。
 各学校では、体育や理科、生活科などの教科等において性教育を計画的に進めておりますが、都教育委員会が実施した性教育等の調査によりますと、性教育の全体計画や年間指導計画を整備している小学校は五二%でございまして、中学校では一五%になっております。
 このため、都教育委員会としましては、各学校が指導計画を作成し、組織的、計画的に性教育を行えるよう指導助言してまいります。
 次に、新たな性教育プログラムの開発の活用についてですが、東京都人権施策推進指針や東京都男女平等参画基本条例などを踏まえて作成しました新たな性教育プログラムの開発は、新しい学習指導要領に基づき、学校における性教育が児童生徒の発達段階に即して体系的、計画的に実施できるよう今後の方向性を示したものでございます。
 都教育委員会は、区市町村教育委員会担当者との連絡会や学校訪問等の機会を通しまして、このプログラムを活用して各学校が適正な性教育を行うよう指導助言しております。
 今後は、このプログラムに基づき、性教育の指導資料を作成、配布するなどして、人格の完成を目指す人間教育の一環である性教育の充実を図ってまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 多摩地域の観光産業、観光農園についてのご質問にお答えいたします。
 まず、多摩地域の観光ルートづくりの推進やPRの役割についてでございますが、多摩地域に観光客の増加を図るためには、魅力的で広域的な観光ルートを開発することが重要であると考えております。
 このため都は、市町村などと協力いたしまして、多摩が持つ豊かな自然や歴史、文化に加えまして、その時々、テレビドラマや小説などで話題になった観光スポットなどの、いわゆる観光資源を積極的に活用いたしまして、その開発に取り組んでまいります。
 さらに、これらの観光ルートを、ホームページや観光情報センターを活用して積極的にPRいたしまして、多摩地域における観光産業振興に努めてまいります。
 次に、観光農園の整備についてでございますが、観光農園は、豊かな農業資源と観光を結びつけた交流型農業でありまして、都民の憩いの場となるとともに、子どもたちに食と環境への関心を高める場としても大いに期待されております。
 このため都は、これまでも、果樹のもぎ取りや家畜との触れ合いができる観光農園、農作業を学べる体験農園の整備などを、活力ある農業経営育成事業などを通じて促進してまいりました。
 今後とも、多くの都民に潤いと安らぎをもたらす観光農園の整備を支援するなど、交流型農業を積極的に推進してまいります。
   〔健康局長長尾至浩君登壇〕

○健康局長(長尾至浩君) 中高年の男性と思春期の子どもについての二点の質問にお答えいたします。
 まず、中高年男性の健康管理や更年期障害についてでございますが、現在、男性の更年期障害につきましては、医学的に諸説がありまして、研究段階であると聞いております。
 しかし、いずれにせよ、健康で一生を過ごすためには、中高年の男性を含む都民一人一人が、加齢に伴う心身の変化を十分認識し、日ごろから健康的な生活習慣を心がけることが重要であります。
 今後とも、中高年男性の健康を守る観点も加えながら、ホームページなどを活用し、情報提供の充実に努めてまいります。
 次に、思春期の子どもに対する相談事業などについてでございますが、若者の薬物乱用は憂慮すべき状態であり、そのため都は、中学生によるポスター、標語の募集や薬物乱用防止高校生会議の開催など、青少年に重点を置いた対策を推進しております。
 また、思春期の性や心身の悩みなどに対しまして、専門家による助言が必要でありますので、電話による思春期ホットラインを開設し、これまで毎年五、六千件の相談を受けております。
 今後とも、ホームページやポスター等による周知を行うなど、相談事業の充実に努めてまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 子どもからの相談への対応についてお答えいたします。
 ご指摘の学校内でのセクシュアルハラスメントの問題を含め、子どもから相談があった場合、児童相談所などでは、その内容に応じ、子どもとの面談に加え、必要な場合には学校や教育委員会へ調査を依頼するなど、関係機関との連携を図りながら適切に対応しております。
 また、地域の中で発生する子どもや家庭のさまざまな問題について、区市町村が積極的に取り組んでいくため、都では、子ども家庭支援センターを核とする総合的な相談等の仕組みづくりを支援しており、今後とも、その拡充を働きかけてまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 東京ウィメンズプラザに寄せられたセクシュアルハラスメントに関する相談についてお答えいたします。
 東京ウィメンズプラザの相談窓口では、教育の場におけるセクシュアルハラスメントについて、これまでも相談者の意思を尊重しつつ、問題解決のための助言や情報提供を行ってまいりました。
 今後も、教育委員会における新たな取り組みと連携し、教育相談センターの相談窓口等と適切に情報交換を行うなど、これまで培ってまいりましたノウハウを生かし、専門相談機関としての役割を果たしてまいります。

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