平成十五年東京都議会会議録第四号

○議長(三田敏哉君) 七十番樺山卓司君。
   〔七十番樺山卓司君登壇〕

○七十番(樺山卓司君) 初めに、更生保護事業の現状と保護司の果たすべき役割について質問をいたします。
 昨今の犯罪の発生率は急激な上昇を続け、外国人犯罪の異常なまでの増加とも相まって、捕まえても捕まえても収容すべき留置場がない、笑えない現実に直面をいたしております。
 やむことのない少年非行も問題でありますが、過去に罪を犯した人物が再び三たびと犯罪に走る、いわゆる再犯率の上昇がこのことに拍車をかけております。
 したがって、罪を犯し、刑務所、少年院等の矯正施設に収容された人々が、出所した後、再び罪を犯すことのないように指導を図る、いわゆる更生保護事業の重要性が今日ほど強く求められていることも、いまだかつてなかったことであります。
 この更生保護事業に、現場の最前線でまさに体当たりで任務に当たっているのが保護司であります。今日の日本の刑法では、有期刑の場合、刑期の三分の一が経過した時点で、その服役態度等により、収容されている刑務所や少年院等から仮釈放という形で出所を許されることが可能となっており、保護司は、その仮釈放から正規の刑期満了までの間の、いわゆる保護観察期間中、当該刑余者の日常生活の指導監督や補導援護等の保護観察を行うとともに、その社会復帰の手助けをする、法務大臣より委嘱をされた、非常勤、無給の国家公務員であります。
 我が東京都議会でも、松原忠義、三宅茂樹、そして、昨年十二月二十二日に任命されたばかりでありますが、臼井孝、中屋文孝、そして私樺山卓司の五名の保護司がおり、また、我が党の山崎幹事長夫人、松本前幹事長夫人、同じく同志大西英男議員夫人も、それぞれ保護司として、地域にあって誠心誠意の活動を展開中であります。
 しかし、服役をして、その刑期の満了を待たずに出所をする、いわゆる刑余者という大変微妙な立場に置かれた人々との接触は、周辺への気遣いを初め、高い秘密性や機密性を求められる任務のため、一般にはなじみが薄く、その責務の重大さに比べ、国民の間になかなか認知されにくいという歴史的な現実の中、今、東京都内では、四千百二十六名の保護司が、常時六千名ともいわれる保護観察対象者の更生と、犯罪や非行のない社会の実現のために、純粋なボランティアとして日夜必死の戦いを展開中であります。
 知事は、そんな保護司の役割について、どのような認識とご見解をお持ちかをお伺いいたします。
 その一方で、凶悪犯罪の低年齢化を危惧する世論、心の東京革命に代表される、心の復興と復権に寄せる国民的な取り組み等々から、犯罪や非行をその芽のうちに摘み取るための、いわゆる犯罪、非行の抑止力としての保護司に求める役割とその期待も年々重みを増しており、その声にこたえるためにも、いよいよ保護司は従来にも増して社会の表舞台に登場し、積年の学習と経験と知恵とを積極的に活用すべきであり、そのための行政によるバックアップ体制の確立が今、強く求められております。とりわけ、教育の最前線である学校現場と保護司との連携は現在の喫緊の課題であり、いじめや校内暴力、家庭内暴力等の非行に日常的な悩みを抱える教師や学校、そしてPTAにとっても力強い福音となるであろうことは、疑いを持たないところであります。
 ちなみに、我が葛飾区では平成十三年度から、区内全小中学校に学校連携担当保護司を配置し、担当保護司の学校行事への積極的な参加や、子どもたちの生の声を把握するためのはがき作戦、交通安全教室の実施、そして保護司会の恒例行事である社会を明るくする運動の啓蒙等、地道な努力を、試行錯誤を繰り返しながらも展開中であります。しかし、その一方で、保護司が学校に来るようになったらおしまいだ、との勘違いや偏見を持つ校長もまだ存在するやに伺っており、その点も踏まえ、早急に学校と保護司の連携の強化について都として対策を講ずべきと考えますが、所見を伺います。
 また、例年七月に、協力団体である更生保護婦人会やBBS連盟とともに全国的な活動を展開している社会を明るくする運動には、知事みずからが東京都実施委員会の委員長をお務めいただいているわけでありますが、改めてこのことに感謝を申し上げつつ、今後のさらなる取り組みの強化について、知事のご所見をぜひお伺いをしたいと思います。
 次に、首都機能移転問題について伺います。
 知事は、先日の施政方針演説で、現在開会中の通常国会で、国会としてこの問題に一定の結論を出すとの動きに触れ、出すべき結論はただ一つ、計画からの当然の撤退であると述べられ、この問題に対し、怒りを込め、毅然たる姿勢を改めて鮮明にされました。心強い限りであります。
 ご存じのとおり、国会は、昨年五月を目途にして三カ所の移転候補地の一本化をする予定でありましたが、それができませんでした。このことは、都議会、東京都、そして何より、圧倒的な都民の良識と、一致団結した反対運動の成果でもあり、そのため、その後は、マスコミ等でほとんど話題になることもありませんでした。もはや移転の必要性がないということで、首都移転は過去の問題になった感すらあったのであります。
 しかし、この問題、依然として油断ができないのであります。今申し述べたとおり、本来、昨年の通常国会開会中の五月末までに候補地を絞り込むという予定が、実は昨年七月二十九日の与党三党首会談での、次期通常国会において結論を得るように努力するとの合意に単にすりかえられただけでありまして、その根っこはまだまだしぶとく生き残っていると見るべきであります。
 そのことは、現在の衆議院の国会等の移転に関する特別委員会の中井洽委員長、この方は三重県出身の方でありますが、この方の発言、昨年の通常国会では議論がまとまらず、東京都を中心とする移転中止論者に勢いを与えてしまった、首都機能移転は国家百年の大計であり、一時的な混乱のために葬り去られることは断じて許されないなどの、本来、公正と公平を旨とすべき委員長自身の一方的な発言でも明らかであり、さらに、現在議論されている移転コンセプトの見直し、つまり、規模の縮小や分都的形態での移転等については、つまるところ、候補地中心の議員で構成される特別委員会で提案されたものであって、本質は、移転そのものを強行するための便法と目くらましにほかならないと断言せざるを得ません。
 現在、永田町では新しい首相官邸が既に始動し、新首相公邸も整備中であります。加えて、各議員宿舎の建てかえや高層化、そして議員会館の建てかえ計画等々、どう考えてもつじつまの合わない計画がメジロ押しであります。
 繰り返します。しかし、だからといって、絶対に油断は禁物であります。すべてが反対勢力に対するフェイントである可能性を否定できないと考えます。間違っても、東京都はお人よしだった、石原慎太郎をちょろまかすのは簡単だった、などの高笑いを許すわけには断じてまいりません。
 首都移転問題は、今述べたとおり、今通常国会で、移転の是非を含めて一定の結論を出すという新たな段階を迎えていることを踏まえ、この機に、移転論議に完全な終止符を打つ必要があると考えますが、改めて知事の完全白紙撤回に向けた決意について伺います。
 次に、京成電鉄高砂駅付近の踏切対策のその後について伺います。
 平成二十二年に、現行のスカイライナーを二十分以上短縮する、いわゆる弾丸列車が走ることになる京成高砂駅一号、二号踏切を、石原知事には、昨年六月五日にご視察をいただきました。知事に何としても一度でいいから現場を見てもらいたいとの、かねてからの地元の熱望をお聞き入れいただきましたことに心から感謝を申し上げます。このことについては必ず選挙でお返し申し上げたいと、多くの地元住民が意気込んでおりますことをお伝え申し上げます。
 成田空港アクセスのいわゆるB案ルートは、都市再生プロジェクトにも位置づけられ、このプロジェクトを実施する成田高速鉄道アクセス株式会社が昨年四月に発足し、昨年七月には、運営主体となる京成電鉄株式会社とともに鉄道事業の許可を受け、いよいよ実現に向かって始動したとのことであります。
 全国有数のボトルネック踏切である高砂一号、二号踏切は、すぐそばの高砂車庫から入庫、出庫を繰り返す車両を初めとして、京成本線、北総・公団線、金町線の三線が昼夜の区別なく激しく行き交う、地域いじめ、住民泣かせの困った踏切であります。ここを、地元葛飾区にとっては何のメリットもない、成田空港へのアクセスだけを目的とする国策列車、いわゆるウルトラスカイライナーが、そこのけそこのけと我が物顔に通過するさまは、想像するだに身の毛がよだつ思いがいたします。
 昨年八月には、猛暑の中、約六百名もの地元住民が参加して、住民総決起大会が開催されました。昨年末には、踏切解消を求める請願が、二万九千七百六十二人の署名とともに都議会に提出され、過日、都市・環境委員会で趣旨採択されたところであります。
 私は、昨年の第一回定例会でも、この踏切の対策と認識について質問をいたしました。その際、駅周辺のまちづくりと一体となった踏切対策について、関係者とともにさらに議論を重ねていくと、局長より大変積極的な答弁をいただいております。
 既に、おととしより、この問題に危機感を抱いた地元区、葛飾区と江戸川区でありますが、都も含め、京成電鉄とともに検討会を設置しており、検討開始から既に一年以上が経過をいたしております。道路立体や鉄道立体など、立体化の方策について検討が進められているのではないかと思いますが、この際、検討会の検討状況について伺いたいと思います。
 さて、以上で質問を終えるわけでありますが、この際、どうしても申し上げねばならないことがございます。
 私は、ただいま、都議会議員としてこの壇上で、犯罪や非行の防止について発言をさせていただきました。一昨日の民主党の代表質問でも、田中幹事長が同趣旨の発言をしておられます。
 しかるに、まことに残念なことでありますが、都議会議員福島寿一氏が、昨年末、婦女暴行容疑で逮捕されるという異常事態が発生をいたしました。現職の都議会議員の、しかも破廉恥事犯という前代未聞の事件に、多くの都民はもとより、私ども都議会議員全員が色を失ったのであります。そして、議会史上初めてとなる辞職勧告決議案を可決し、議会として一定のけじめをつけたところであります。
 しかし、まことに遺憾なことに、今日ただいまに至るまで、本人からは何の意思表示もされず、依然として都議会議員としてその職にとどまったままの状態が続いております。辞職勧告決議の重みはもとより、折しも予算議会の真っ最中であります。かかる議員に都民の大事な血税が無為に使われているという事実を、私どもは都民にどのように説明してよいか、そのすべを知りません。
 報道によりますと、先月の初公判では、起訴事実をすべて認めたとのことであります。追い打ちをかけるようではありますが、であるとするならば、一刻も早く職を辞し、みずからけじめをつけることが、本人に残された唯一の選択肢であり、公職にある者としての当然の責務であります。
 福島議員が当時所属をしていた民主党都議団におかれては、除名したから我関せずではなく、どうか、かつての同志、同僚として、その出処進退の速やかな実行を進言すべきであり、それこそが武士の情け、仲間としての何よりの友情であろうと思います。
 重ねて福島寿一議員の辞職を求め、質問を閉じます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 樺山卓司議員の一般質問にお答えいたします。
 まず、保護司の役割についてでありますが、大分以前、吉村昭氏の小説で、事実をもとにした非常にすぐれた短編小説でありましたけれども、ある保護司に、非常に犯罪を繰り返し繰り返し、常習のように繰り返し、監獄に頻繁に出入り、出たり入ったりしている人が、その人の担当を受けて、その保護される方の前歴を知っている周りの者は、また今度も非常に厄介なことになるんじゃないかと懸念していたところ、その保護司のおかげで本当に安定した生活を送られて、最後は非常に安心して、高齢だった方ですけれども、亡くなられたという、非常に印象的な小説がございました。
 やはり、犯罪を繰り返す人、犯罪をする人と、その人が刑期を終えて出てきた後、保護司という人と人との出会いというものがいかに大事かなということを痛感させる小説でありましたが、保護司は、犯罪や非行をした人たちに、地域で通常の社会生活を営ませながら、更生に向け、必要な指導や援助を行う、まさに無報酬のボランティアでありまして、世間に余り知られておりませんが、非常に重要かつ厄介な仕事を日ごろ果たしていらっしゃると認識しております。
 お話のように、大変デリケートで機密性の高い仕事を献身的に行っていただいている保護司の方々に、かねがね深い敬意を表しておりますが、皆様の熱意のある活動は、犯罪や非行のない明るい社会づくりに必ず大きく貢献するものと期待をしております。
 もう一つ、社会を明るくする運動の取り組みの強化についてでありますが、これはもうだれもが明るい社会を望むのは当然のことでありますけれども、なかなかそれが成就困難な時代でもあります。
 法務省が主管するこの運動は、昭和二十六年、戦後の戦災孤児がはんらんしていることがきっかけで始まったようでありますけれども、今年度第五十二回を迎えたもので、他の府県知事と同様、私が東京都実施委員会の委員長の職についておりますが、東京も非常にまた時代の変化とともに厄介な状況を迎えておりまして、犯罪や非行の防止と、罪を犯した人たちの更生を進めていく上で、運動自体も大変重要な運動とは認識しておりますが、目的が目的で当たり前過ぎて、実はいささか靴の上から足をかくようなもどかしさも感じないでもございません。
 都としては、保護司会、更生保護婦人会、PTA、さらには小中学生などが参加する、地域社会全体で取り組む運動として展開されるように、引き続き多角的な支援をしていきたいと思っております。
 次いで、首都移転問題でありますけれども、首都移転問題は、バブル時代の負の遺産でありまして、社会経済状況が大きく変わった今日、なお存続しているという意味が不可解というか、笑止千万な話でありまして、国民の大半はもう既に忘れている問題でありながら、実は国政の場では依然として特別の委員会が設けられて、わけのわからぬ議論が、議論にならない形で行われているという実情であります。
 かねては移転論者であったそうでありますけれども、小泉首相自身でさえも、もはや首都移転を政治課題とせずに、今の時点で首都移転を行えば、行財政改革や経済状況への対応に支障が出ると、国会でも総理自身が発言をしております。今通常国会で一定の結論を出すとのことでありますが、繰り返して申しますけれども、結論はただ一つ、首都移転の白紙撤回のみであると思います。
 まあ、政治家といろいろな利権の絡み合いというのは、好ましくないかかわりでありながら根絶されませんが、大体、あの特別委員会なるものの構成委員の九〇%以上が賛成派であり、しかも委員長は、反対派が一人もなったことがない。仄聞すれば、野党対策として――もはやその意義は失っているけれども、この特別委員会は、野党対策として存続せざるを得ないと。うそか本当か知りませんが、そういった駆け引きがあるとするなら、これは本当に国家の命運を左右しかねない委員会を国会の中の取引に使って講じるという、実におぞましい構造だと思います。
 真偽のほどはわかりませんが、この委員会が存続する限り、国民が妥当とする当然の撤回というものを早急に結論するよう、私たちも積極的に働きかけていくつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び都市計画局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 学校と保護司の連携についてお答え申し上げます。
 学校が保護司など地域の方々と連携して、問題行動の未然防止等に努めますことは、児童生徒の健全育成を図る上で極めて重要であると考えております。
 現在、お話のように、学校によりましては、保護司の協力のもとに、高齢者との交流や地域清掃等の奉仕活動を行ったり、総合的な学習の時間や道徳の授業などにゲストティーチャーとして保護司を招いたりするなど、教育指導の充実を図っております。
 都教育委員会といたしましては、今後、各区市町村教育委員会に対しまして普及啓発を行うなど、各学校が保護司との連携を一層深め、児童生徒が地域の中で健やかに成長するよう支援をしてまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 京成高砂駅付近の踏切対策でございますが、平成十三年九月より検討会を八回開催しておりまして、鉄道を立体化するケース、道路を立体化するケースについて、技術的可能性等を検討してまいりました。
 このうち、鉄道を立体化するケースでは、中川橋梁や北総・公団線の既設高架橋との接続、駅直近にございます車庫の取り扱いなどが課題となり、また、交差道路を個別に立体化するケースでは、道路拡幅のための、商店街となっております沿道の用地確保が不可欠となってまいります。
 今後は、まちづくりとの整合や事業手法などの検討を深め、来年度に向けて、こうした課題の整理ができるよう、地元区や鉄道事業者などと協議をしてまいります。

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