午後一時一分開議
○議長(三田敏哉君) これより本日の会議を開きます。
○議長(三田敏哉君) この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。
○議長(三田敏哉君) まず、日程の追加について申し上げます。
知事より、東京都収用委員会委員の任命の同意について外人事案件八件が提出されました。
これらを本日の日程に追加をいたします。
○議長(三田敏哉君) 昨日に引き続き質問を行います。
四十五番近藤やよいさん。
〔四十五番近藤やよい君登壇〕
○四十五番(近藤やよい君) 「本当の授業を見せてほしい」と題した高校生の投書が、一月二十五日、朝日新聞に掲載され、大変な反響を呼びました。次のような内容です。「私は、高校の授業の質の低さに不満を抱いている。」「私たちは、与えられたプリントの空欄をただ埋めていったり、先生が英語の訳を言うのを必死になって書き取ったりする。このような授業では自分の頭で考えないから、当然興味がわかない。」「先生の一番大事な役目というのは、学生の興味を引き出すことであって、知識そのものを説明するのはその次の話だ。」「生徒があいさつをしても無視する。授業の声は小さくて聞こえない。教師の質の悪化はすさまじい。学生本位の教育について、大人はもっとちゃんと考えてほしい。高校生の私にこんなふうに言われる先生たち大人は、恥ずかしいと思わないんですか。」
この投書に対して、二月に入ると、同じ高校生から、もっと興味がわく授業にしたいなら、生徒自身が意見をいい合えばいい、もっと知識を深めたいなら、待っているだけでなく、自分から先生に会いにいくべきだという投書が返されました。また、この翌日には、今度は教員から、投書を読んで胸をえぐられるような思いがした、教員となって三十年たった今でも、わかって楽しい授業を目指してさまざまな工夫を試みているつもりだが、空回りすることが多いとの投書が寄せられたのです。
都はこれまで、都民に信頼される都立高校の創造を目指して、中高一貫教育校の設置や、進学重点校、エンカレッジスクールの指定を行ったり、学校経営計画、人事考課制度、主幹制度の導入など、積極的に取り組んでおられることは評価します。
ただ、今、列挙したことは、学校制度の枠組みなど、いわゆるハードの面の改革であって、これと同時に、教育の中身そのものの充実が最も重要であることは、今さらいうまでもありません。
私は、学校における教育の原点は授業にあると考えておりますが、都教育委員会が平成十三年十月に行った都民に対する意識調査によれば、都立高校で生徒の興味、関心に応じた授業を行っていると肯定的に見ている都民の割合はわずか九・七%であるのに対して、否定的に見ている都民は四二・五%にも上るのです。
生徒が求め、また教師も追求し続ける本当の授業、よい授業とは、どのような授業なのでしょうか。都は、都立高校においてどのような授業が提供されることを理想としていらっしゃるのか、ご所見を伺います。
都の理想とする授業を目指していく上で一つ気がかりなのは、都の教員の、学習に関する指導力は十分なレベルにあるのかということです。
都は、平成十二年度から導入した人事考課制度の中で、教員の指導力をS、A、B、C、Dの五段階に分けて評価していらっしゃるそうですが、最低のDと評価されている、つまり指導力に問題ありとされている教員の学習に関する指導力をどのように向上させていくのでしょうか、伺います。
私は、よい授業とは、単に教員の努力だけで提供されるものではないと思っています。生徒の側からも、こんな授業にしてほしいという真剣で建設的な意見が寄せられれば、教員の単なる自己満足に終わらない、充実した授業が提供される一つのきっかけになるのではないでしょうか。
都は、昨年十月に発表した都立高校改革推進計画・新たな実施計画の中で、新規事業として、生徒による授業評価制度の導入を掲げられておりますが、まず、その導入の目的について伺います。
既に全国に先駆けて、平成十年度までに、すべての公立の小中高等学校で生徒による授業評価を導入している高知県教育委員会は、生徒による授業評価の課題は、取り組みに対して、学校ごと及び教員ごとに温度差が出ることであるとしています。
私個人としても、ただ単に生徒に迎合するような教員は出てこないか、授業もろくに受けないような生徒に授業の評価などできるのか、また、させていいのかなど、導入に当たっては危惧を抱く点もあります。また、実施された授業評価を活用して、授業がどのように改善されたのかという検証も不可欠と考えます。
私は、今申し上げた課題や危惧を払拭した上で、より効果的な、生徒による授業評価を、都でもなるべく早い時期に実施していただきたいと考えます。
そこで、都はいつから、具体的にどのような方法で生徒による授業評価を導入されるおつもりなのでしょうか、伺います。
次に、都の災害対策について伺います。
都の災害に対するあらゆる備えの原資となる災害救助基金が、以前に比べて逼迫しているとお聞きしました。災害救助基金の運用が健全でなければ、都は災害に備えたくとも備えられないという事態を生み、非常に危惧されるところです。
そこで、災害救助基金の逼迫の理由と現在の運用状況及び今後の見通しについてお尋ねします。
都は、購入、廃棄、保管などの経費が大きくかかり基金財政を圧迫する現物による備蓄から、現金保持に、その方針を転換していくおつもりと伺っています。
例えば北海道のように、災害に備えて、一切現物による備蓄を持たず、すべて現金で持っているという自治体もありますが、私は、そこまで極端な現金化には反対です。
被害の規模によっては、交通が遮断され、流通が完全に麻痺することもあり得ます。そのとき、幾ら現金を持っていても、何の役にも立たないということになりはしないでしょうか。また、流通段階の在庫を確保する、いわゆるランニングストックによる備蓄の場合には、都による突然の、また極端な施策の見直しは、相手業界に大きな影響を与えます。
基金の効率的な運用が求められていることはいうまでもありませんが、それを追求する余り、いざというとき、食料の備蓄が不十分で、都民に必要量が行き渡らなかった、現金はあっても物資が手に入らなかったでは済みません。
都は今後、備蓄に関するお金と物とのバランスをどのような割合でとっていくおつもりなのか、伺います。
先日、東京駅周辺の大手民間企業が協力して、予想される帰宅困難者に対処する組織を年内に立ち上げると報じられているのを見て、大変心強く感じました。また、新宿駅周辺でも、新宿区が中心となって新宿区帰宅困難者対策推進協議会が組織されています。
しかしながら、新宿周辺では、いまだに帰宅困難者が一夜を明かせるような避難所が特に定まっていないなど、課題も残されています。優先協議されるべき事項を整理して、一日も早く、さらに実効の上がる協議会となるよう、都も積極的に働きかけてくださることを要望しておきます。
現在のところ、このような協議会は東京駅と新宿駅の二つだけとのことですが、今後は、主なターミナル駅を有する区、市に呼びかけて、主要駅を単位とする帰宅困難者対策協議会の立ち上げを広く進めていくべきと考えますが、ご所見を伺い、次の質問に移ります。
現在では、都の電気の約四割が原子力発電で賄われている状況ですが、東京電力の原子力発電をめぐる一連のトラブル隠しの影響で、原子炉を停止しての保守点検が実施されています。
本日までに、十七基の原子炉のうち十三基の運転が停止し、さらに四月までには、残りすべても停止する予定です。そうなると、三月には電力の予備力がゼロになることも予想され、都民生活に重大な影響を与えるばかりでなく、企業活動まで阻害されるのではと一部で危惧されています。
不必要に都民の不安をあおることは厳に慎まなければなりませんが、知事も初日の所信表明の中で、原子炉の稼働停止による電力不足に懸念を示されたところです。
もちろん、電力の安定供給の責任は国にあることは明確ですが、まだまだ寒さの厳しい東京の三月、さらに電力の消費がピークを迎える夏場を控えて、都は、都民生活と企業活動の安定を図るため、短期間で確固たる危機管理体制を構築する必要に迫られています。
と同時に、今後、飛躍的に増加することが予想される東京の電力需要に対応するため、中長期的な視点から、東京におけるエネルギー供給のあり方を再構築する必要もあるのではないでしょうか。
そこで、知事は、目前の電力危機をどのように認識され、こうしたエネルギー状況を踏まえ、今後、東京をどのように変えていく必要があるとお考えでしょうか、伺います。
都は、厳しい電力需要に対応するため、二月五日より、都庁挙げての省エネルギー運動を展開し、これにより、本庁舎では約一%の消費電力が節約できるとの見通しを明らかにされました。しかしながら、エスカレーターの運行台数の見直しや電気を小まめに消すなどの対策で事足れり、ちりも積もれば山となるだけで満足するわけにはいきません。
都は、例えば病院や下水処理場など、大量に電力を消費する施設を抱えています。都が抜本的なエネルギー対策を講じるおつもりならば、まず、どの施設がどのくらいのエネルギーを消費しているのか、また、そのエネルギーはどの程度まで今後削減可能なのかなどをチェックする、いわゆるエネルギー診断を行い、エネルギー効率の悪い施設を把握することが必要と考えます。ご所見を伺います。
有効なエネルギー診断を行えば、その結果として、エネルギー効率を高めるためには、建物の本格的な改装がどうしても必要であるなどの結論が出ることも予想されます。しかし、大変残念ながら、現在の厳しい都財政のもとでは、幾ら中長期的な危機に備えるとはいっても、当局からは、ないそでは振れないといわれるばかりでありましょう。
そこで、一つ提案させていただきます。
都よりさらに財政が厳しい大阪府が、既に昨年から実施している――知事はこの言葉、余りおもしろくないと思うかもしれませんけれども、実施しているESCO事業を、都でも利用してみてはいかがでしょうか。ESCOとは、エネルギー・サービス・カンパニーの略称で、民間事業者から省エネに必要な技術、資金などの提供を受け、それによって削減された光熱水費分を当該自治体と事業者で分配するという事業です。
大阪府は、府立母子保健センターの省エネを図るため、消費電力を少なくとも二五%以上削減した上で、かつ、その際に大阪府の受け取る分配利益が最大になるような建物の改修プランを、広く民間事業者に募りました。
事業の結果として、予想をはるかに上回る約四六%の消費電力が節電され、大阪府は、本保健センターについて、金額にして年間約七千六百万円の光熱水費の削減に成功したのです。
公共の建物はすべて税金で改修しなければならないということはありません。民間のノウハウや資金を目いっぱい活用したこのESCO事業を導入して、都も、自前でなかなか踏み出すことのできない抜本的な省エネルギー対策に道を開いていくべきと考えますが、ご所見を伺い、質問を終わります。(拍手)
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 近藤やよい議員の一般質問にお答えいたします。
今般の電力危機についてでありますが、東京電力の不祥事がきっかけで、現在の電力需給状況は極めて厳しいものにあります。消費がかさむ春から夏にかけてさらに深刻化することも考えられておりまして、大変憂慮しております。
今後、電力危機を回避するために、東京電力や国の責任ある対応が求められると思いますが、都としても、できる限り省エネに率先して取り組むとともに、都民、事業者に対して省エネを強く呼びかけております。
中長期的には、エネルギーの浪費に痛痒を感じない資源浪費型の社会構造を改める必要があります。
そのためにも、都市活動の各部門においてエネルギーの縮減を徹底して行うとともに、再生可能エネルギーの普及、拡大を促進し、東京を持続可能な省エネルギー型の都市に転換していきたいと思っております。
なお、最後に申されましたESCO事業というのは、私、初めて聞きましたけれども、いいものはどんどんまねしたらよろしいので、東京もそういう意欲をエネルギーに関して示す必要があると思います。
他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
〔教育長横山洋吉君登壇〕
○教育長(横山洋吉君) 授業評価等に関します四点の質問にお答え申し上げます。
まず、都教育委員会が目指す理想の授業についてでございますが、学校教育は、先人が培ってきた知恵を体系的な知識や技能として教えますとともに、生涯にわたって人間として生きるために必要な力をはぐくみ、国家及び社会の形成者としての全人的な人格形成を図る営みでございます。
そうした中で、教員が日常の授業を通して、生徒に学ぶことの意義や喜びを実感させ、興味、関心や意欲を高め、みずから学ぶ力、考える力を育成し、知識、技能を確実に身につけさせることこそが、あるべき授業の姿であると考えております。
今後とも、生徒一人一人の個性や能力の伸長を図り、生きる力を育てるため、教員が常に生徒の関心や理解の状況を的確にとらえ、みずからの授業の改善に努めるよう指導してまいります。
次に、指導力に課題のある教員の指導についてでございますが、多くの教員は、みずからの授業の改善に努め、教員研修等を通して専門性や実践的指導力を高めておりますが、ご指摘のとおり、指導力に課題のある教員がいることもまた事実でございます。
このような教員に対しまして、校長が個別に指導を行っておりますが、特に指導力不足等の教員に対しましては、都教育委員会において指導力ステップアップ研修を行い、実態に応じて計画的に基礎的な資質、能力の向上を図っております。
来年度からは、これまでの一律に行う研修を改めまして、研修レベルを一人一人の能力や課題に応じて基礎から発展まで三段階に再編成しまして受講できるようにしますとともに、教員が個々の育成課題に応じた研修計画をキャリアプランとして策定することを義務づけるなど、教員研修の充実を図ってまいります。
次に、生徒による授業評価の目的についてでございますが、生徒による授業評価は、教員がみずからの授業を客観的に評価するための一つの方法でございまして、指導力の向上や授業の改善を図ることを目的として行うものでございます。
そのためには、活発に行われているとは必ずしもいえない、授業に関する校内研修を活性化させ、組織的、計画的に授業改善に取り組むことが大切ですし、それと同時に、生徒にも授業への取り組み姿勢などの自己評価を行わせ、授業への関心、意欲、態度などの向上を図っていくことが重要でございます。
こうした生徒による授業評価を通しまして、授業が教員と生徒の望ましい信頼感や緊張感のもとに行われ、生徒が自分の学校に愛着や誇りを持ち、生き生きと意欲的に学校生活を送ることができるよう、各学校を指導してまいります。
最後に、授業評価の導入時期や方法等についてでございますが、生徒による授業評価は、生徒の学ぶ力のはぐくみと確かな学力の向上を図る上で大きな意義がありますことから、早期に導入したいと考えております。
今年度は、先進的な取り組みを行っております二十五校で授業評価連絡会を開催し、これらの学校の実践事例を各都立高校に提供しておりますが、平成十五年度は、授業評価の試行校を、百校程度を目途に指定します。またその上で、平成十六年度は都立高校全校で実施してまいります。
なお、円滑な導入を図るため、来年度から授業評価開発委員会を設けまして、授業評価の観点や手法について研究開発を行いますとともに、導入後の各学校の成果と課題等については、校内研修の実施状況調査を通しまして把握し、検証し、解決を図ってまいります。
〔総務局長赤星經昭君登壇〕
○総務局長(赤星經昭君) 災害対策に関します三点の質問にお答え申し上げます。
まず、災害救助基金についてでございますが、基金は、災害救助法に基づきまして、普通税収入額の決算額の一定割合を積み立て、大規模災害時の被災者救助費用に充てるもので、この基金を運用いたしまして、備蓄物資の購入や災害時の物資の調達資金としております。
基金残高でございますけれども、食料品や生活必需品等の災害用備蓄を維持するための管理費用が増大する一方、税収入の大幅な落ち込みによる積立金の減少や超低利の影響などによりまして減少しております。
このため、関係各局や備蓄物資の保管委託先との調整を図りまして、備蓄品の新規購入や追加購入を手控えるなど、保管費用等の低減化を進めまして、基金財政の健全化に取り組んでおります。
今後とも、災害時の救助物資の調達に当たりましては、基金運用に一層の創意工夫を行い、必要な物資は確保してまいります。
次に、基金の運用についてでございますが、災害時の救助物資は、備蓄計画に基づきまして必要量を確保しております。
備蓄に当たりましては、調達物資の特性によりまして、アルファ化米などの主食品、生活必需品は都が直接備蓄し、大量に市場流通しております副食品などは常時一定量の確保を購入業者に委託いたします、いわゆるランニングストック方式によっております。
さらに、その他必要な物資を調達するための現金を基金へ積み立てる方法とあわせまして、今後とも、現金と備蓄品とのバランスをとりながら、非常時に物資の不足を生じないように努めてまいります。
最後に、帰宅困難者対策についてでございますが、都はこれまで、都民、昼間都民や企業に対しまして、リーフレットの配布やホームページの開設などによりまして意識啓発に努めてまいりました。また、ご指摘の有楽町・日比谷・銀座地区におきます帰宅訓練等を通じまして、事業者のマニュアル作成の促進を図るなど、帰宅困難者対策を進めております。
さらに、帰宅困難者への支援といたしまして、郵便局や都立学校などでの飲料水、トイレの提供や、日本赤十字社による帰宅支援ステーションの設置など、関係機関の協力を確保してまいりました。
現在、新宿駅周辺においては、既に、新宿区が中心となりまして、帰宅困難者対策推進協議会を設置いたしまして、推進計画の策定を進めております。都もその支援を行っております。
今後とも、ターミナル駅を有します区や市、企業などとも連携いたしまして、同様の組織の立ち上げを働きかけるなど、帰宅困難者対策の推進に努めてまいります。
〔財務局長田原和道君登壇〕
○財務局長(田原和道君) エネルギーの削減可能性をチェックするいわゆるエネルギー診断について、ご質問にお答えを申し上げます。
本年度から、延べ床面積が一万平方メートル以上あるいは契約電力が二百五十キロワットを超えるなど、規模の大きな施設につきまして、エネルギー消費量等の実態把握を行っております。
これに基づきまして、来年度からは、エネルギー消費が一定量以上の施設に対して、ご指摘のエネルギー診断を実施する予定にしております。
次に、ESCO事業の導入につきましてでございます。ESCO事業は、ご質問の中でご紹介をいただきましたように、民間の資金やノウハウなどを活用して設備機器の更新や維持管理を行う事業でありまして、財政への貢献が期待できるとともに、後々の省エネルギー効果も期待できる、有効な方策であると考えております。
今後、エネルギー診断の結果等を参考にしながら、エネルギーの削減やコスト縮減など効果が見込まれる都有施設への導入につきまして、ただいま知事がご答弁申し上げましたように、積極的に取り組んでまいります。
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