平成十五年東京都議会会議録第三号

○副議長(橋本辰二郎君) 十六番長橋桂一君。
   〔十六番長橋桂一君登壇〕

○十六番(長橋桂一君) 初めに、健康食品対策について伺います。
 本格的な高齢化社会を迎えて、都民は健康に生きることの価値について真剣に考え、行動するようになってきました。その一方で、健康食品についてのさまざまな問題も起きております。
 例えば、昨年七月に中国製ダイエット食品による健康被害が発生し、これ以降も健康被害事例の報告が続いておりますが、被害の多くが肝機能障害で、中には生体肝移植により、辛うじて一命を取りとめた事例や、死に至った例までありました。
 昨年末現在で厚生労働省に報告があった被害者数は、全国で八百六十五人に達し、うち死亡者は四人であります。問題となった食品の多くが、輸入代行業者等を通じて海外から個人輸入されたものであります。
 多くの人たちが、健康食品には医薬品のような副作用がなく、効果が得られると誤解しています。今回の事例のダイエット食品は、医薬品成分の表示が全くなく、効果どころか、逆に危険な製品であったわけであります。
 最近では、インターネットや個人輸入の普及により、広告件数の増加や流通形態の多様化が進んでいます。特に、個人輸入により出回っている健康食品は、何の規制も受けない商品がほとんどであり、野放しに近い状態であります。
 そこで、以下、伺います。
 第一に、都は、健康食品による健康被害の実態について具体的にどのように把握しているのか。
 第二に、事件の特徴は、流通経路が多種多様であったことが挙げられます。これまでも都は、事業者に対して講習会等を開いて指導していると聞いておりますが、従来になくインターネット販売や個人輸入が問題となってきています。都は今後、インターネット販売などが増加している環境の変化に対応した具体的な対策を講ずるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 第三に、健康食品による健康被害を未然に防ぐには、都民が健康食品に関する正しい知識を持つことが重要であります。したがって、健康食品と医薬品の違いなどの周知を図ると同時に、相談体制の強化を図るべきであります。見解を伺います。
 このように、健康食品に対するさまざまな問題が生じている背景には、健康に生きたいという都民の強い願望があります。健康食品問題は、いわば都民の健康問題であるといっても過言ではありません。
 健康に生きていくためには、安易に薬や医療に頼るのではなく、その土地の文化に根差した質のよい食事を楽しむことによって、健康を保持していくことを目指すべきであります。食はまさに文化であり、食を通じた健康づくりについて知事の見解を伺います。
 次に、予防接種について伺います。
 ことしは、A香港型とB型を中心にインフルエンザが大流行いたしました。既に都内では、ほとんどの区市町村の公立学校で学級閉鎖が相次ぎ、その数は千十九校、五千学級を超えています。また、世田谷の小中学校では集団麻疹の発生が伝えられております。
 そこで第一に、これらの感染症の予防と拡大防止には予防接種が効果的です。しかし、予防接種に対して副作用を懸念する人が多く、また、昨年にはBCGなどの予防接種時に事故が発生し、このような事例が接種率の低下を招くことになるのではないかと懸念されています。したがって、接種時の事故を防止し、安心して接種できる体制を整備することが急務であります。これらの事故事例を踏まえて、都として安全確保対策に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 第二に、平成六年の予防接種法の改正により、集団接種から個別接種に切りかわりました。また、接種が努力義務に変更され、よりきめ細かな体制に変更されたものの、努力義務となったことが任意接種になったと誤解され、都民、行政ともに予防接種に対する意識が低下しているのではないかと危惧されています。
 今後、安全な予防接種の推進を図るためには、正しい知識の普及とともに、接種者の利便性に配慮した体制整備を図り、接種率を向上させるべきと考えます。
 そこで、現在、二十三区内では、居住地以外の他区でも予防接種を受けられる体制になっています。今後、接種率を向上させていくためにも、さまざまな困難はあると思いますが、この方式をより広域的に拡大し、環境整備を図るべきと考えます。所見を伺います。
 次に、児童虐待問題について伺います。
 近年、児童虐待に関する相談件数が急増し、相談内容も深刻化しています。平成十三年度の児童虐待の通報件数は、十年前に比べて十五・六倍、二千四百九十一件に増加しております。
 児童虐待は、しつけの行き過ぎといった軽度のものから、死に至る重度のものまで存在します。さらには、大人の子どもに対する不適切な接し方であるマルトリートメントを含めて対応することが、虐待を未然に防ぐ上で重要であります。
 そこで、虐待の予防策について伺います。
 児童虐待には、早期発見と早期対応が何よりも重要であり、そのシステムづくりが急務であります。とりわけ、区市町村を中心とした地域の身近な関係機関との連携が不可欠であります。
 私の地元豊島区では、役所内に子どもの権利担当ポストをつくり、区内の関係機関とのネットワークづくりを推進していくために、子ども虐待防止連絡会議を設置しております。そして、マルトリートメント通報受付票をもとに、二カ所の子ども家庭支援センターと本庁が連携して、区内に相談があった件数の七割を区が中心となって対応しております。
 こうした事例をもとに、以下、伺います。
 第一に、虐待への早期対応に対して、家庭に身近な地域を中心とした取り組みは、都全域でどこまで進んでいるのか、また、積極的に取り組んでいる事例の効果について具体的に伺います。
 第二に、虐待は親の精神的な問題、子育ての悩みや生活環境、経済的な問題など、さまざまな要因が複雑に絡み合って引き起こされます。しかも最近の事例は、親としての自覚に欠ける痛ましい事故が数多く見受けられます。虐待を行った親に対しての指導が急務であります。指導の実態について伺います。
 第三に、虐待により一時的に家庭から分離しても、最終的には家庭へ取り戻す取り組みが必要です。しかし、厚生労働省の研究班が全国調査した結果、子どもを保護する児童福祉施設の約三割で、虐待を加えていた親が施設から強引に子どもを連れ出してしまった事例があると答えています。その中には、家庭で再び虐待を受け、死亡したケースもあります。
 国の虐待防止法では、虐待を行った親は児童相談所の指導を受けなければならないとされていますが、指導を受ける親は四割にも満たない状況であります。子どもが家庭へ復帰するためには、親への対応が課題であり、精神科医などの専門家の協力が必要なケースが多いにもかかわらず、施設の職員が手探りで行っているという状況であります。
 そこで、親を指導し、子どもを安全に家庭へ戻すための具体的な手順を示したプログラムを作成すべきと考えます。所見を伺います。
 次に、地下鉄十三号線に関連して伺います。
 地下鉄十三号線は、山手線、埼京線の混雑緩和のため、また池袋、新宿、渋谷の副都心を結ぶ路線として、平成十九年度の開業を目指して、一昨年夏から営団によって建設工事が始められました。
 地下鉄十三号線は、池袋から先は東武東上線と西武池袋線、渋谷からは東急東横線と相互直通運転を行う計画になっており、平成二十四年度の全線完成後は、埼玉方面から池袋、新宿、渋谷を通って横浜方面に至る広域鉄道路線となります。
 一方、国においては、我が党の主張により、地下鉄整備費の一部に道路整備特別会計、つまり道路特定財源が投入されることが決定しております。地下鉄施設建設の一部を道路整備の一環とみなして財源を投入する道が開かれたことは、大変な前進であり、そこで伺います。
 第一に、今回の国の措置に対して、都としてどのように評価しているのか。
 また、国のこの措置によって、地下鉄整備促進が期待されると考えますが、平成十九年度開業をより確実にする上でも、地下鉄十三号線の整備にこの手法を導入するよう、都は全力で取り組むべきであります。都の見解を伺います。
 第二に、池袋―雑司が谷間の地下鉄十三号線整備では、親道路となる環状五の一号線整備が密接に関連しています。この区間の環状五の一号線の下に地下鉄が建設されるわけですので、地下鉄整備におくれを来さないよう道路整備を行っていく必要があります。道路整備の促進を求めたいのですが、現在の進捗状況と今後の方針を伺います。
 最後に、地域の交通網の整備に関連して、池袋駅前と都電荒川線雑司ヶ谷駅の間に路面電車LRTを導入すると、先般、豊島区が発表いたしました。池袋を明るく、魅力あるまちへ再生するための副都心再生プランの一環として打ち出されたものであり、従来からの私の主張と軌を一にするものであります。また、都電荒川線と池袋をつなぐことによって、利用客の増加など都電の将来の活性化も期待されます。
 今後、豊島区がこの構想を実現するに当たっては、事業手法や運営方法、採算性などのさまざまな課題があります。都は、これをきっかけに豊島区と連携を図り、積極的に支援すべきと考えます。所見を伺い、以上で私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 長橋桂一議員の一般質問にお答えいたします。
 食を通じた健康づくりについてでありますが、人生八十年時代を迎え、すべての都民が健康で生き生き暮らすことがますます重要になってきております。
 我が国には、伝統的な食文化が存在しまして、それがまた家族のきずなを深めてきたという歴史もございます。しかし、今日、飽食の時代といわれる中で、脂肪が多い食事など栄養の偏りや、朝食を抜くなど、食習慣がかなり乱れてまいっております。
 アメリカで内視鏡による大腸の検査の画期的な技術開発をやった新谷先生によりますと、白人に比べて日本人の腸の相といいますか、人相、腸相で非常によかったのが、このごろそれが非常に変わって、白人並みになってきたといういい方もしておりましたが、いずれにしろ食は健康の源でありまして、健康的な長寿を実現するためには、都民一人一人が適切な食習慣を身につけることが大切であると思います。
 今後とも、都もいろいろ努力しまして、食を通じた健康づくりの施策を総合的に推進していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔健康局長長尾至浩君登壇〕

○健康局長(長尾至浩君) 健康食品と予防接種に関します五点の質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる健康食品による健康被害の実態の把握についてでございますが、近年、個人輸入の増加など、流通形態が多様化、複雑化しており、これらによる被害実態の把握が課題となっております。そのため、昨年七月、健康食品による被害と思われる場合は速やかに都に通報するよう、医師会など関係機関に協力を依頼いたしました。また、都や区の保健所におきましても、相談や苦情を受け付け、実態の把握に努めております。さらに、全国の被害情報の迅速な収集にも努めております。
 次に、流通環境の変化に対応した対策についてでありますが、健康食品のインターネット販売などについては、消費者に過大な期待を抱かせるような広告も見られ、個人輸入を助長する一因ともなっております。特に、インターネット上の広告は急速に増加しており、事業者の実態把握が困難であるなど課題も多いことから、現在、これらの広告を対象とした新たな監視指導方法の検討を開始いたしました。
 次に、都民への周知と相談体制の強化についてでありますが、都は、これまでも、ホームページやリーフレットによる情報提供を行うとともに、消費者講習会に講師を派遣するなど、さまざまな機会をとらえて、正しい知識の普及啓発に努めてまいりました。また、日ごろから電話やメールによる相談に応じるほか、都の食品部門と医薬品部門が連携して相談に対応できる体制を整えております。
 今後は、都民にわかりやすく情報提供するために、ホームページに危害に関する情報の項目を新たに設けることや、相談担当職員への研修を実施し、相談体制等の強化に努めていきます。
 次に、予防接種時の安全確保に関する取り組みについてでございますが、都民が安心して予防接種を受けられるよう、接種時の安全を確保することは大変重要でございます。都といたしましても、実施体制を改めて把握、点検し、また、引き続き関連情報を収集、提供するなど、実施主体である区市町村における安全対策の確保について積極的に支援してまいります。
 最後に、予防接種の環境整備についてでございますが、接種率の向上を図るためには、都民に対する普及啓発とともに、接種を受ける方の利便性に配慮した環境整備が重要であります。ご指摘の居住区域外での接種については、区市町村の意向も踏まえ、都としても検討課題としてまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 児童虐待に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、区市町村における虐待への取り組み状況についてでございますが、本年度から新たに、区市町村が中心となって関係機関と連携しながら、虐待への早期対応を行う区市町村虐待防止ネットワーク事業を十五の区市で開始いたしました。来年度は、これをさらに都内の区市町村の半数を超える三十七区市町村に拡充していく予定でございます。
 この事業を実施したことによって、虐待につながる兆候のある家庭の早期の発見が容易となり、その結果、重大な事態に至ることを地域の中で未然に防止することができるようになったほか、軽度の虐待については、親子を引き離すことなく、家庭にいながら支援することが可能となるなど、大きな効果を上げております。
 次に、虐待を行った親への指導の実態についてでありますが、現在、そうした親に対しては、児童福祉司を中心として、心理職員、精神科医などがチームを組んで対応しております。
 しかしながら、虐待事例では、親が同意しない場合でも、親子分離など強制的な対応を行わざるを得ないため、児童相談所と親との関係は対立することも多くあります。また、虐待を行った親は、虐待そのものを認めず、児童相談所の指導に応じないことが多いのが現状であります。このため、こうした親に対し、保健所や医療機関等と連携し、相互の信頼の確立に努めながら、指導に従うよう粘り強く対応しております。
 次に、子どもを家庭に戻すための方策についてでありますが、親子分離は、子どもの健やかな成長を図るという観点からは決して最善の方法ではなく、親子が再び一緒になって暮らせるよう、いわゆる親子再統合に向けて取り組んでいくことが重要であると認識をしております。
 このため、都では、児童相談所において、虐待した親を対象に、個別にカウンセリングや治療を実施してきております。本年度はこれに加えて、親子がグループを形成し、ゲームなどを通じて新たな親子関係の構築を目指すためのグループ療法を全国で初めて実施いたしました。来年度は、この成果を踏まえ、親子再統合のプログラムづくりに取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 地下鉄十三号線の整備についてでございますが、都はこれまで国に対し、道路特定財源の配分対象を、大都市部の交通問題を解決するための基盤整備等に拡大するよう求めてまいりました。今回、国が地下鉄整備に活用する道を開いたことは、渋滞解消や環境問題の解決につながるものと評価しております。
 都といたしましては、この財源が、平成十九年度開業に向けて、地下鉄十三号線の整備に活用されるよう、国に働きかけてまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 地下鉄十三号線の導入空間である環状第五の一号、雑司が谷区間の整備についてでございますが、本路線は、副都心である池袋、新宿、渋谷を結び、都民生活や都市活動を支える重要な幹線道路でございます。特に豊島区雑司が谷区間は、明治通りのバイパスとして、池袋駅周辺の交通渋滞の緩和を図るとともに、防災性の向上に寄与するものでございます。本区間については、地下鉄十三号線の駅舎工事のため、これまで重点的に用地取得を進めてきております。現在の進捗率は約七○%でございます。
 今後とも、帝都高速度交通営団と緊密な連携を図り、地下鉄十三号線の開業に合わせ、事業の推進に努めてまいります。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 豊島区の路面電車、LRT構想への支援についてですが、豊島区では、池袋駅前のグリーン大通りに路面電車、LRTを導入するための調査費を平成十五年度予算に計上すると聞いております。今後、豊島区からの要請があれば、交通事業者の立場から、技術的な協力などについて検討してまいります。

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