平成十五年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 百三番東ひろたか君。
   〔百三番東ひろたか君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○百三番(東ひろたか君) 私は、初めに、商店街振興について伺います。
 長引く不況と大型店の出店ラッシュのもとで、都内の商業、商店街は衰退をたどっています。その商店の数は、ピーク時の六割台に減少しました。私の江東区では、この四年の間に、四つの商店会が解散、商店会の会員数は実に三割も減少してしまいました。
 廃業に追い込まれた商店の多くは、いずれも地域に定着し、消防団や町会など地域社会の中心的役割を担ってきた人々です。私は改めて地域の商店街を訪ね、業者の皆さんからつぶさに話を伺ってきましたが、そこで出された声と要望は、業者の皆さんが本当に解決を必要としている問題に真正面からこたえてほしいというものでありました。
 そこでまず、地域商業に壊滅的な打撃を与えている大型店問題についてです。
 江東区では、この十年間に、ジャスコやイトーヨーカ堂などの大型店が、店舗数で一・六倍、売り場面積では三・八倍にふえ、区内の小売業の総売り場面積の実に八割を占めるに至っています。
 我が党はかねてから、こうした現実を踏まえて、大型店の無秩序な出店を規制するためのルールづくりを提唱してきましたが、まさにこれが、今、喫緊の課題となっているのです。
 現在、江東区では、JRの小名木川貨物ヤードの跡地に、イトーヨーカ堂の出店計画が浮上し、地域挙げての反対運動が広がっています。この上、残された地域商店の売り場面積にほぼ匹敵する六万七千平方メートルもの大型店が出店することになれば、地域の商店は壊滅的な打撃を受けることになるからであります。
 JRは、かつて国有鉄道として経営され、その財産は、本来、国民全体のものともいうべきものです。したがって、その跡地の利用は、地域の活性化に役立たされるべきものであり、JR法でも、その活用について特別の配慮を求めているのです。
 地域経済に深刻な打撃を与えるJR小名木川貨物ヤード跡地へのイトーヨーカ堂進出計画は、明らかにJR法十条に抵触するものです。都として放置すべきではないと思いますが、どうか、伺います。
 大型店の社会的責任を自覚しない乱暴なやり方についても、厳しい批判が寄せられています。それは、大店法廃止後、深夜にわたる時間延長がふえ、地域商店街に打撃を与えていることです。大型店にお客をとられた商店にとっては、大型店閉店後の時間が稼ぎどきになっていました。ところが、大型店は、この時間帯のお客までむしり取っているわけであります。明らかに国の法制度に問題があるわけですから、都は黙視することなく、国に新たなルールづくりを求めるべきではありませんか。また、都として、地域商店街との共存のための独自の調整の仕組みづくりを検討すべきではありませんか。
 商店街活動に対する大型店やチェーン店の非協力的な態度にも怒りが寄せられています。実際に商店街では、新たに出店したチェーン店が、商店街の組合に入らず、街路灯などの共益費の負担や行事への参加を拒否する例がふえています。また、ある大型店では、アメリカ資本の参入後、会費を半分に減額したため、商店街から何とかしてほしいの声も寄せられています。
 共通していることは、本店で決めたことだからと、地元のお店では対応できないことです。大型店やチェーン店の本店に対して、地域コミュニティを守るために、商店街の一員として協力することを強く指導することは、広域行政である都の仕事だと思いますが、どうでしょうか。
 次に、商店街の力だけでは解決が困難な問題です。
 今、商店の皆さんは、駐車場や駐輪場がないために、大型店にみすみすお客をとられて、悔しい思いをしています。大型店と対抗する上でも欠かせない駐車場や駐輪場確保のための用地補助の創設と、施設整備に対する都の思い切った支援が求められていますが、それぞれ答弁を求めます。
 商店街の再生の課題は、振興プランの策定から始まって、プランの遂行まで、時間がかかるものです。失敗や試行錯誤も予想されます。また、差し迫った課題となっている若手経営者や後継者の育成も、一気に進むわけではありません。商店街の振興は、どうしても中長期的視点を持って取り組むことが必要です。
 今回、都は、新たな商店街振興策として、新・元気を出せ商店街支援事業を立ち上げますが、商店街の地域における役割を考えるならば、五年程度の息の長い振興策とすることが求められているのではないでしょうか。知事の中長期的な視点での商店街振興に対する基本的な姿勢を伺います。
 あわせて、イベント事業の通年利用や商店街お迎えバスなど、業者の要望にこたえた拡充を求めるものですが、どうか。
 都が来年度から導入する個店対策については、早急に実施に移し、その成果を踏まえて、年度途中でも追加指定や事業の継続などを行うことも必要ではありませんか。あわせて答弁を求めます。
 江東区では、商店街の衰退と新たな住宅の急増のもとで、商店が全くない地域も生まれています。ある団地では、もともとあったげた履きの商店街が消えてしまい、住民が毎日の買い物にも困っています。
 かつて東京都は、住宅急増地域などで公設市場をつくり、住民に喜ばれました。商店の空白地域対策を進める上で、公設市場はうってつけの仕組みであると思いますが、どうでしょうか。
 次に、まちづくりの問題です。
 今、都心区を中心に、二〇〇三年問題といわれるビルラッシュが進んでいますが、江東区では、それに先行する形で分譲マンションの建設が相次ぎ、社会問題となっています。
 区内でこの五年間に建設されたマンションは二百六棟に及び、居住人口は二万五千人もふえました。そのため、保育園の待機児が急増し、小学校では教室不足が始まり、五年後には千人を超えるマンモス校の出現が予想されています。このため江東区は、マンション開発の凍結を業者に求めるに至りました。
 問題は、マンションの建設がこれから本格化するということです。ことし九月までに、食糧庁の跡地に一千戸の大規模マンションが完成、また近くの東雲では、公団所有地に六千戸のマンションが建設中です。さらに、有明北地区の埋立予定地や豊洲などの大規模開発などによって、今計画されているだけでも三万七千戸を超えるマンションや住宅が予定されています。
 しかも、こうして供給されるマンションのほとんどは分譲マンションであり、高齢者や低所得者などが住むことができる住宅は建設されません。これでは、マンションはふえても、住宅困窮者もふえるばかりです。高齢者、低所得者の住宅対策を十分に行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 高齢者が四割も占める公団住宅の問題も深刻です。私が相談を受けた方は、六十七歳と六十八歳のご夫婦で、公団で暮らしていますが、収入は年金の十七万円だけ。一方、家賃は収入の四割を占め、その上、病気がちで出費も多く、残りの十万円程度で生活するのは大変です。とうとう家賃を三カ月滞納し、立ち退きを迫られて困っています。公団は、この四月から家賃を値上げするとしており、ますます住宅の困窮に拍車をかけることになります。
 現在の公団家賃には、家賃値上げのときと建てかえに伴う家賃減免は一部認められていますが、定年による収入の減少などに対する減免は認められていません。
 そこで、高家賃に苦しむ公団住宅居住者のために、家賃減免制度に収入の減少によるものを加えるよう国に求めること、また、都として、都営住宅への住みかえを促進するとともに、家賃補助に踏み出すなど、温かい手を差し伸べることを求めるものですが、どうですか。
 不況の深まりのもとで、低所得者のための都営住宅への入居希望は急増しています。昨年五月には、千四百三十三戸の募集に対して五万九千人もの都民が殺到し、江東区では、五十五戸の公募に七十七倍もの人が押しかけたのです。その後の十月の募集では、倍率はさらに上がり、全都では平均四十倍、江東区では九十四倍となりました。
 これまで二十回申し込んでいるという七十八歳の女性の方は、日当たりの悪い六畳と四畳半のアパートで、働くことができない娘さんと一緒に住んでいます。収入は、六万円の国民年金と、ご本人がホームヘルパーをして得ている六万円合わせた程度で、そこから九万円の家賃を払わなくてはならないのです。知事、このまま放置してよいのでしょうか。
 都営住宅の建設で、低所得者の住宅不足にこたえるべきではありませんか。江東区大島には都営住宅用地がありますが、放置されています。早急に建設に着手すべきと思いますが、どうですか。
 また、入居者との公平というのであれば、何回も都営住宅に応募しながら、抽せんで外れて入居できない人への家賃補助や、空き住宅を借り上げて低家賃で提供するなどのきめ細かな対策も必要ではありませんか。
 都営住宅の入居者の追い出しは、重大問題です。都が行っている家賃滞納者の明け渡しのための強制執行は、九九年度にはまだ百九十九件であったものが、二〇〇一年度には三倍以上の六百五十件に急増しています。家賃減免を受けていたある人は、ひとり暮らしで入院中に家賃の減額申請が行えず、通常の家賃が課せられたため、退院後、家賃が払えず、滞納を理由に強制退去させられたと聞いております。
 家賃滞納を理由にした機械的な追い出しはやめるとともに、都営住宅家賃の減免制度をもとに戻すことが急がれています。見解を伺います。
 さて、今日では、住宅事情は短期間に大きく変化します。そうしたときに、都民の収入と家賃負担、居住面積、収入階層別住宅の分布を初め、都民の要望など、都民の住宅に関する総合的な調査が欠かせませんが、答弁を求めて質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 東ひろたか議員の一般質問にお答えいたします。
 中長期的な視点での商店街振興に対する基本的な姿勢についてでありますが、商店街の振興には、商店街自身の自主的、自立的な課題解決への取り組みが、まず不可欠だと思います。
 商店街振興に向けた支援策には、中長期的視点に立ち、地域の実情に精通した区市町村の主体的、計画的な取り組みが重要であります。都は、こうした観点から、区市町村と連携して意欲的な商店街の取り組みを支援しております。
 平成十二年度に都が策定した二十一世紀商店街づくり振興プランに基づき、各区市町村がおおむね五カ年の商店街振興プランを十三、十四年度に策定中であります。
 次いで、都市再生と住宅対策についてでありますが、民間の力を最大限に引き出し、魅力と活力のある都市東京の再生を図ることが、地域経済の再生や都民生活の向上につながるわけであります。したがって、都市開発を進めることがまち壊しであり、高齢者や低所得者の住宅対策と相反するという考え方は、いささか見当違いではないかと思います。
 住宅対策については、良質な民間住宅の供給と高齢者のグループホームや都営住宅の整備とを複合的に行う、例えば南青山プロジェクトなどを実施するなど、まちづくりと連携しながら推進していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 商店街振興に関する六点の質問にお答えいたします。
 最初に、JR小名木川貨物駅跡地へのイトーヨーカ堂進出計画についてでございますが、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律に基づく事務は国が所管しておりまして、国土交通省では本件について、JR貨物に対して、同法第十条の規定を踏まえた配慮をするように指導していると伺っております。
 次に、大型店やチェーン店の本店に対する指導についてでございますが、大型店やチェーン店と地元商店街とは共存することが望ましく、今後も、大型店やチェーン店と地元の商店が共存共栄できるように商店街を支援してまいります。
 次に、大型店にかかわる新たな仕組みづくりについてでございますが、大規模小売店舗立地法におきましては、地方公共団体が閉店時刻や店舗面積を調整するなど、商業の需給調整的な運用を行うことは禁止されております。
 都といたしましては、同法の趣旨を踏まえ、周辺の生活環境の調和を図るため、引き続き適正な運用に努めてまいります。
 次に、駐車場と駐輪場の用地補助と施設整備補助についてでございますが、商店街の利用者のための駐車場、駐輪場の施設整備につきましては、これまで、活力ある商店街育成事業によりまして補助対象としてまいりました。
 新・元気を出せ商店街事業におきましても、これまでと同様に、施設整備に対する補助を行うこととしております。
 なお、用地取得につきましては、補助対象として考えておりません。
 次に、イベント事業の通年利用とイベント開催時の商店街お迎えバスについてでございますが、イベント事業について、上限額を定めて開催回数を任意とする通年利用については考えておりません。
 また、商店街がイベント開催時にバスを運行する場合につきましては、既に補助の対象として認めております。
 最後に、個店対策についてでございますが、輝け店舗支援事業として実施する個店対策につきましては、新年度早々から取り組むこととしております。本事業は、事業効果を見ながら取り組むべき新規事業でございまして、状況を見きわめながら実施してまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 公設小売市場についてお答え申し上げます。
 公設小売市場は、地域住民の生活態様と深いかかわりがありますので、基礎的自治体でございます区市町村の業務と位置づけられます。したがいまして、商店の空白地域対策として公設小売市場を設置するかどうかの判断は、地元区市町村においてなされるものと考えております。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) まちづくりに関します四点のご質問にお答えいたします。
 最初に、公団住宅居住者の家賃減免制度等についてでございますが、公団においては、既に家賃改定や建てかえの際に一定要件に該当する場合、家賃を減額する制度がございます。
 また、公営住宅の入居資格があり、収入に比べて家賃負担が大きい場合などは、都営住宅に応募することが可能でございます。
 都として、住みかえや家賃補助の制度については考えておりません。
 次に、都営住宅の建設についてでございますが、将来の人口、世帯の動向を踏まえますと、現在管理している住宅を有効に活用することが重要であり、総戸数は抑制する方針でございます。江東区大島地区につきましても、この方針のもとに検討すべきものと考えております。
 また、今後とも都営住宅の抜本的改革に取り組み、真に住宅に困窮している人に適切に供給することで、都民のニーズにこたえてまいります。したがって、都として、お話のような補助や住宅の借り上げについては考えておりません。
 次に、都営住宅家賃の滞納者対策等でございますが、社会的公平性及び都営住宅管理の適正化の観点から、厳正かつ迅速に対応していくことが必要でございます。
 このため、実情把握の上、再三の督促や指導にもかかわらず滞納が解消しない場合には、速やかに法的措置を講じてまいります。
 また、都営住宅家賃の減免措置、減免制度につきましては、家賃負担能力をより適切に反映することなどを基本的な考え方として見直したものであり、もとに戻すことは考えておりません。
 最後に、住宅に関する調査についてでございますが、住宅政策の基礎として定期的に行われる総合的調査には、住宅・土地統計調査及び住宅需要実態調査がございます。これらの調査を活用することによりまして、都として都民の住宅実態を的確に把握し、住宅政策の立案、推進を行っております。
 なお、平成十五年度は、その調査年に当たっております。

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