平成十五年東京都議会会議録第三号

午後六時三十六分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 四十四番いなば真一君。
   〔四十四番いなば真一君登壇〕

○四十四番(いなば真一君) 地球温暖化あるいはヒートアイランド現象という言語は、今や環境問題にかかわるキーワードとなっております。我々人間は、文明活動のエネルギーとして、石炭、石油等の化石燃料を使用してきたわけであります。また、それが現代社会を築き、支えてきたわけであります。
 その一方で、深刻な環境破壊を引き起こし、人類は今、環境開発サミットの開催を通して、地球温暖防止に世界を挙げて取り組んでおります。
 この東京においては、都市化の進行により、地表面の被覆の変化や都民等のエネルギー使用量の増加によって、熱帯夜の増加をもたらし、睡眠妨害を引き起こすなど、都民への直接的な影響も出てきているところであります。
 このように進行している温暖化を抑えるためには、温室効果ガス、二酸化炭素の排出抑制が欠かせないところであります。温室効果ガスの原因となる二酸化炭素の排出ルートは、工事等の生産部門であり、自動車を初めとする交通運輸部門であり、我々消費者の日常生活にかかわる民生部門であります。日本で二酸化炭素がふえている主たる原因は、この民生部門と運輸部門であることが明らかであります。地球温暖化現象は、人間一人一人が加害者であり、被害者でもあります。
 東京都は、都政の重要施策の一つに、東京が率先する環境重視の都市づくりを掲げ、具体的には、一、大規模事業所に対する二酸化炭素排出量削減の義務化への取り組みの強化、二、屋上緑化、街路樹再生、保水性舗装を内容とする特定地域での集中的なヒートアイランド対策、三、本年十月から実施する条例によるディーゼル車規制等であります。
 住民生活に直結している区市町村においては、いろいろな取り組みが行われています。とりわけ、さまざまな公害に悩まされ、その対策に取り組んできた自治体ほど熱心であります。
 板橋区においては、昭和六十三年から低公害車導入助成を初め、環境の保全によかれと思われることは率先して実施しております。エコポリスセンターにおいては、クリーンエネルギーの使用を実施しております。太陽光発電、コージェネレーションの活用、そして風力によるグリーン電力購入等であります。
 このように、自治体がみずからの姿勢を住民に示しつつ、太陽光発電システム、太陽熱温水器、屋上緑化等の助成を実施しております。東京都は、このような取り組みをさまざまな支援を通して積極的に指導すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 地球温暖化阻止への東京率先行動として、実効性のある取り組みを進めるため、都庁内外にわたる連携を推進するとのことですが、私が提案した取り組みは、まさに自治体との連携や民間技術の活用の典型であります。ぜひ検討の上、実施されるよう求めます。
 次に、廃棄物問題についてお伺いいたします。
 昨年夏に、栃木県宇都宮市で、約四百本のドラム缶に入れられた硫酸ピッチが不法投棄されているのが見つかり、最近では、千葉県内の貸し倉庫に無許可業者が約二千八百本を保管しているという事件も発生しています。また、全国では約七千本もの不法投棄があるともいわれています。いずれも腐食したドラム缶から硫酸ピッチが漏れ出しているため、土壌や水源に多大な悪影響を与えるなど、大きな社会問題となっています。
 不法投棄される硫酸ピッチは、不正軽油の製造者から出されていると聞いています。そこで、不正軽油製造工場において、硫酸ピッチは具体的にどのような過程で発生し、なぜ不法投棄されることになるのか、その原因についてお伺いいたします。
 不正軽油の販売、使用に対して、これまで主税局や環境局の自動車Gメンが取り締まりを行ってきたところですが、これに加えて、硫酸ピッチの不法投棄対策の面からも取り締まりを強化すべきだと考えます。
 環境局の産廃Gメンは、千葉県八街市にある不正軽油製造工場の内偵調査を昨年十二月から行い、これをもとに、先月、廃棄物処理法に基づき、千葉県と合同で立入調査を行ったとのことですが、その結果と、不正軽油製造工場に対して今後どのように対応をとっていくのか、お伺いいたします。
 今や、硫酸ピッチの不法投棄は全国的に広がりを見せており、都県を超えて組織的かつ巧妙に行われている実態があります。これに対処していくためには、なお一層の広域的な取り組みが必要と考えますが、答弁を求めます。
 続いて、都立病院改革における重要な視点についてであります。
 数年来、病院の経営体制や経営戦略などの討議がなされ、都立病院改革路線が実際に走り出しています。これまでの都立病院改革の中で、唯一さらなる取り組みが求められているのが、医療の中心的位置にあります医師の評定と採用時の審査であります。
 都立病院の医師の採用に当たり、出身大学系列に単純に依存するのではなく、都が主体性を持って医師の任用審査に当たり、診療科医長等の人選を行い、採用していくことが必要であります。
 ニューヨーク、ロンドン、パリなどの世界的代表都市と肩を並べる東京が維持していくべき都立病院として、その機能の中で主体を占める医師の人選について、系列大学の方針が押しつけられる場合もあると聞いています。
 一県一医科大学の地方都市と異なり、都内には、医学部あるいは医科大学の附属病院が二十六施設と、実に数多くの人材派遣施設が存在します。同時に、我が国も医師過剰の時代を迎えつつあり、研修医の都市集中化も進んでいるので、選択権は都側にあることも事実です。
 医師法の改正により、平成十六年度から医師の臨床研修が義務化されるなど、医師の育成制度の大きな転換期にある現在、都立病院改革の重要課題として、学閥にとらわれない優秀な医師の獲得システムの確立に取り組むべきだと考えます。
 都立病院において、高水準で専門的な医療を担える医師の育成確保を今後どのように取り組んでいくのか、知事の見解を伺います。
 また、都立病院の一側面として、ハード面としての都立病院自体の内部改革と相まって、ソフト面として、病院の周辺機構を改善する必要性も出てきています。
 最近、入院される方の療養生活を見ますと、まず飲用水が病室の蛇口からの水ではなく、市販のペットボトル入りのミネラルウオーターです。治療薬を内服するときも、この水を用い、蛇口の水は洗面と歯磨きに使う程度です。二人から四人部屋では特に、一人がミネラル水を使用すると、必ず他の人も同様になります。時に、病気である本人が院内の売店までミネラル水を購入しに足を運ばなければなりません。この肉体的負担や体調不良時の困惑、さらに入院中はティッシュペーパーや、時に紙おむつなども購入しなければならず、当人あるいはご家族の気苦労は大変です。
 一方、売店自体も、かさばる品物を大量に在庫することもできませんし、小規模な売店が大半です。また、国際都市東京の中を歯磨きや洗面道具を持って往復したり、休日や夜間には病院の外のコンビニまで飲料水を買いに行ったりすることは、電子化の時代、思い切った発想で改革していくべきだと考えます。
 例えば、都立病院の電子化に伴い、入院中の方も利用できるパソコンを面会室やデイルームへ設置して、ここからインターネットで都が許可あるいは営業している入院必要品ショップへの注文を行えるようにするとか、あるいは院内の特定場所から携帯電話のメールでの注文ができるようにするとかです。
 一方、病院のセキュリティー面からは、指定業者のみが入所可能とし、納入や病棟内配達も一律化し、低コスト化すると同時に、シャトルバスを用いて都立病院全体を巡回しながら配送するシステムを確立すれば、都の収益も、わずかではありますが、向上するのではないでしょうか。
 患者の高齢化、独身者の増加、単身赴任者の多い東京などを考慮すると同時に、入院時の準備やその家族の対応などを、首都たる東京としての機能と、病をいやし治す機能の病院の両面から考える必要があります。
 今後、都立病院の再編整備を進めていく中で、病院の改革等が行われます。こうしたときに、これらの提案は心温まるホットラインとして作用し、国際都市東京としての存在と意義に新たな側面をもたらす好機と考えます。いかがなものでしょうか。
 さらに、都立豊島病院の再編整備について伺います。
 平成十三年十二月に策定された都立病院改革マスタープランでは、豊島病院を老人医療センターと統合し、民営化するとの考え方が打ち出されていますが、一方、板橋区では、豊島病院を区民の日常的な病院、治療を行う総合的な病院として、区立病院化する方向で検討を進めています。
 私はかねてから、このような板橋区の動きは、基礎的自治体としての区が、地域医療に積極的に取り組もうとする試みとして、大いに注目しているところであります。
 本年一月に策定された都立病院改革実行プログラムには、都立病院改革マスタープランに記述のなかった、豊島病院の板橋区への移管案に係る検討協議についてという一項目が新たにつけ加えられています。
 そこで、豊島病院に係る板橋区の取り組みについて、都の考えを伺いたいと思います。
 まず、都は、今回の実行プログラムにおいて、平成十四年九月に、板橋区の中間報告をもって豊島病院の区立病院化について一定の方向性が示されたとしていますが、この板橋区の、区民のための地域医療の中核病院を目指す中間報告をどのように受けとめ、評価しているのか、お伺いいたします。
 次に、実行プログラムでは、今まで、土地、建物等の財産の取り扱いも含め、豊島病院と老人医療センターの統合民営化と、豊島病院の区立病院化に向けた板橋区の動きとの関係をどのようにとらえているのか伺います。
 また、中間報告では、豊島病院を区立病院化した場合の経営収支についての試算を行っていますが、区が直営で病院を運営すると、年間十億円程度の赤字を生ずるとしています。区立病院である以上、ある程度行政的な対応が必要になるので、経営収支面だけですべてを判断するわけにはいきませんが、板橋区の財政規模を考えると、毎年十億円という金額は、区にとって相当な負担を強いられている数字だと思います。
 今後、板橋区との区立病院化の検討、協議に当たっては、病院の運営方法について、区の直営方式だけではなく、公設民営方式や委託方式など幅広く検討する必要があると考えます。いかがなものなのか、お伺いいたします。
 病院経営に関して豊富な経験と情報を有する都が、積極的に協力の手を差し伸べていくことを強く要望し、この項を終わります。
 最後に、豊洲新市場建設に向けた基本構想について伺います。
 都は、築地市場の豊洲移転を正式決定し、昨年五月以来、基本構想の策定に取りかかり、現在まとめの段階に入っていると聞いております。
 一方で、卸売市場業界は、この不況の中にあって、厳しい経営が続いております。消費者の食生活の変化、市場外流通の増加等の流通環境の変化、加えて、金融不安、デフレによる単価の減少など、その取り巻く環境はますます厳しいものとなっております。
 そのような中で、豊洲への移転は、築地市場の将来に道筋をはっきりと示したものであり、市場業界にとっても、新たな地での思い切った躍進を図る機会となるものと考えます。また、臨海部開発の促進や、市場跡地を活用した都心の開発など、都心再生にとっても大きな弾みとなるものであります。
 私は、築地市場の豊洲移転は、今後、総論から各論へとステージを移し、都として大いに力を入れて推進すべき事業であると考えます。このような意味で、現在作業を進めている豊洲新市場基本構想は、市場の将来像を示す第一歩として大変重要であります。
 そこで伺いますが、現在検討されている基本構想の中で、新市場づくりに向けた基本的な考え方と方向性はどのようなものなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) いなば真一議員の一般質問にお答えいたします。
 都立病院の医師の育成確保についてでありますが、その前段として、ご指摘の、採用に当たっての大学閥の系列というものを排するというのは、非常に大事な視点だと思います。
 なお、東京発医療改革の目指す患者中心の医療を実現するためにも、医師の育成、意識改革は極めて重要であります。
 都立病院では、平成十六年度から始まる臨床研修の義務化に対応するべく、国に先駆けて、都立病院総体としてのスケールメリットと、各病院の特色のある医療機能を生かした都独自の臨床研修制度を構築して、十五年度からの実施を目指しております。
 この制度の実施に当たっては、救急、小児、精神等の専門分野の臨床研修を充実するなど、若い医師にとって魅力あるものとして、これからの都立病院を担うにふさわしい、優秀な医師の育成確保を図っていきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 温暖化対策と硫酸ピッチについてのご質問にお答えいたします。
 まず、温暖化対策に対する区市町村への支援についてでございますが、温暖化対策は、一人一人の都民、事業者の地道な取り組みの積み重ねが重要であります。このため、地域により近い区市町村が温暖化対策に果たす役割は、大変大きいと考えております。
 都はこれまで、広域的な立場から、臨海部での風力発電や、都議会の屋上緑化、ヒートアイランド現象の観測網整備など、二つの温暖化対策にかかわる先駆的なプロジェクトを進めてまいりました。
 今後は、そこから得られた知見も含めまして、最新の技術情報や地域情報を積極的に提供いたしますとともに、これらの区市町村への支援を進めますとともに、連携をさらに強化してまいります。
 次に、硫酸ピッチの発生過程と不法投棄の原因についてでございますが、硫酸ピッチは、A重油と灯油とを混和して不正軽油を製造する過程で、識別剤の除去と脱色のために、濃硫酸を加えることにより、副産物として必然的に発生します。
 その性状は、タール状で、極めて酸性が強く、高濃度の亜硫酸ガスが発生するなど、有害であることから、硫酸ピッチは、廃棄物処理法上の特別管理産業廃棄物に該当し、適正な保管と処理が求められます。
 この硫酸ピッチを適正に処理するためには、多額の費用が必要となることから、不法投棄するケースが多発しているものと考えております。
 次に、立入調査結果と不正軽油製造工場に対する今後の対応についてでございますが、今回立ち入った工場の敷地内には、硫酸ピッチ入りのドラム缶百九十一本が野積み保管されており、一部のドラム缶が腐食して、硫酸ピッチが土壌に漏洩している事実を確認いたしました。直ちに工場に対して、廃棄物処理法に基づき、速やかに適正な保管と処理を行うよう、厳重に指導しました。
 現行法では、不正軽油の製造を直接禁止する規定はありませんが、今後、廃棄物処理法に基づき、行政処分に向けた調査を進めますとともに、適正処理に必要な費用を負担させることにより、不正軽油の製造を抑止してまいります。
 最後に、硫酸ピッチの不法投棄に対処するための広域的な取り組みについてでございますが、ご指摘のとおり、不法投棄への効果的な対処には、都県を超えた広域的な取り組みが重要であり、これまで関係する都県が連携し、硫酸ピッチの不法投棄に関与した産業廃棄物処理業者の許可取り消しを行ってまいりました。
 今後、七都県市や関東甲信越などの二十三の自治体で構成する産廃スクラム二十三を通じて、合同調査や情報の共有化等の連携を一層強化し、硫酸ピッチの不法投棄の未然防止と不正軽油の製造抑止に向けて、積極的に取り組んでまいります。
 さらに、他の自治体とも共同して、国に対し、不正軽油を撲滅する抜本的な対策を求めてまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 都立病院に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、都立病院における患者さんのインターネット利用等についてであります。
 患者さんが病院内でインターネットを使用するためには、IT環境の整備や情報セキュリティーの確保など、解決すべき課題はありますが、今後、建物の改築や新築の時期なども勘案しながら、その導入について検討していきます。
 また、ご指摘の、患者さんの利便性に考慮した快適な療養環境の整備につきましても、今後、さまざまな創意工夫を行い、患者サービスの充実向上に努めてまいります。
 次に、都立病院の区立病院化に関する板橋区の中間報告についてであります。
 同報告においては、板橋区は、これまで豊島病院が提供してきた基礎的な医療機能を引き継ぎ、区民のための地域医療の中核病院を目指すとの基本方針に立ち、課題である土地、建物等財産の取り扱いなどについて、さらに都と協議を進めていくとしています。
 このように、板橋区が、豊島病院を区立病院化することについて一定の方向性を示されたことは、基礎的自治体としての特別区が、その役割である住民に身近な地域医療の充実に主体的に取り組む姿勢を示したものとして、高く評価してございます。
 次に、豊島病院と老人医療センターの統合民営化と区立病院化に向けた板橋区の動きについてであります。
 統合民営化は、都立病院改革マスタープランにおける基本的方針であります。しかし、その後、板橋区においては、地域医療を確保する観点から、豊島病院の区立病院化構想が具体性を帯びてきており、この動きについても十分留意する必要があります。このため、豊島病院の再編整備につきましては、統合民営化に向けた検討と並行して、板橋区による区立病院化も、選択肢の一つとして検討すべきものと考えています。
 最後に、都と板橋区との今後の協議についてでありますが、都は、区側の協議を継続したいとの意向を尊重し、土地、建物等財産の取り扱いなどの具体的検討を進め、区としての結論が得られるよう、協力を惜しまない考えでございます。
 また、病院の運営方式に関する協議についてでありますが、病院の運営方式は、区立病院化した場合の経営収支を大きく左右する要因の一つであると考えています。したがって、今後の区との協議に当たりましては、直営方式だけではなく、民間のノウハウの活用も含め、幅広く検討を行うことにより、豊島病院の区立病院化について、できるだけ早期に区としての結論が得られるよう、適切に対応してまいります。
   〔中央卸売市場長碇山幸夫君登壇〕

○中央卸売市場長(碇山幸夫君) 豊洲新市場建設の基本構想についてのご質問にお答え申し上げます。
 近年の流通構造や消費動向など、卸売市場を取り巻く環境の変化に対応していくためには、市場の役割とそのシステムを見直していくことが不可欠であります。
 都は、時代の風にかなった市場システムを構築していくため、現在、市場改革を進めております。
 お話の豊洲新市場は、築地から豊洲への単なる場所のシフトではなく、これら市場改革が結実した、付加価値の高い、千客万来の市場として再生することを目指しております。
 現在、こうした基本的な考え方によりまして、消費と流通の変化への対応、都民と消費者に開かれた市場づくり、地域のまちづくりと環境への配慮、この三つの理念を豊洲新市場の基本コンセプトとして、基本構想の策定作業を進めております。

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