平成十五年東京都議会会議録第三号

○副議長(橋本辰二郎君) 十九番ともとし春久君。
   〔十九番ともとし春久君登壇〕

○十九番(ともとし春久君) 初めに、大気汚染対策について伺います。
 これまで我が党は、一貫してディーゼル車規制の推進を主張してきており、昨年の第四回定例会でも、規制の実施に不可欠な都民、関係業界の協力を得るための具体的提案を行い、都における新たな融資制度の創設などに反映してまいりました。
 一方、国は、去る二月七日に、環境省など関係四省庁による東京都における道路交通環境対策を発表いたしましたが、ここでは、新たな健康被害者救済制度に全く触れていない上、ディーゼル車の使用過程車対策が極めて不十分なものといわざるを得ません。
 大気汚染対策において国をリードする都として、こうした国の姿勢には厳しい要請を行ったところでありますが、今後さらに積極的な対策を進めるよう強く求めるべきと考えますが、昨年の東京大気汚染公害訴訟判決に対し、控訴せずとの英断をされた知事の率直な所見を伺います。
 次に、都市の安全性の確保と浸水対策について伺います。
 下水道の整備により、多少の雨では浸水被害が発生するようなことはなくなり、かつてのような心配は少なくなりました。しかし、近年、都市構造の変化で、降った雨の多くが下水道に流入するようになったり、ヒートアイランド現象に起因したものと見られる局地的な集中豪雨が多発するようになり、たび重なる局地的な浸水被害で都市の安全性が損なわれているのであります。
 下水道局は、この浸水対策として、幹線管渠やポンプ所などの基幹施設の増強を図っていますが、その整備には多くの費用と時間を要します。このため、降雨情報を都民に提供したり、コストや工事期間を削減するための技術開発とその導入を行うなど、ハードとソフトを組み合わせた工夫を凝らしている事業を展開しているのが現状であります。
 厳しい財政下でもあり、効率的に事業を進め、速やかにその効果を発揮させていかなければなりません。そのためには新技術の導入など、新たな発想と創意工夫によって工事費用を縮減し、効果的な事業展開を図るべきと考えますが、所見を伺います。
 次に、雨水整備クイックプランについて伺います。
 浸水被害の早期軽減を目指して、平成十一年度に雨水整備クイックプランが策定され、重点事業として進められています。これまでに約半分が完了し、既に所定の効果を発揮しているところであります。
 しかし、昨年再び多くの浸水被害が発生いたしました。浸水被害をたびたび受ける住民の不安や苦痛を考えると、一刻も早く対策が必要であると考えます。今回大きな浸水被害を受けた地区を見ますと、これまでクイックプランとして位置づけられていない世田谷区や品川区などの地域も含まれております。このような地区についても、積極的に浸水対策を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、降雨情報の提供について伺います。
 東京の降雨状況がリアルタイムに一目でわかるレーダー雨量計システム、東京アメッシュの情報が、昨年四月よりインターネットや携帯電話によって配信されるようになりました。IT技術が身近なものになった、雨の日の心配が軽減したといった声が寄せられるなど、好評を得ております。既に、ホームページへのアクセス件数は百万件を超えたと聞いております。
 このように広く都民に利用されるようになっている降雨情報をさらに利用しやすいものにしていくために、例えば、外国人生活者のための英語版の導入を図るなど、多様な要望を踏まえた改善、改良に努め、精度や利便性を一層高めていくべきと考えますが、下水道局の取り組みをお伺いいたします。
 次に、都施行の区画整理事業についてお伺いいたします。
 土地区画整理事業は、安全で快適な住みやすいまちづくりを進める事業でありますが、一方、そこで生活する地区住民にとっては、その進捗の状況によって生活が大きく左右される死活問題でもあります。都が施行しております十三カ所の区画整理のうち、多摩地域及び汐留、秋葉原地域等においては、都民の目にも大きく進展しているのがわかります。しかしながら、周辺区部における区画整理事業の進捗状況は必ずしも進んでいるとはいえないのであります。
 そこで、都議会としても、周辺区部において行われている都施行区画整理事業の一層の促進を図るために、昨年十月、北、足立、江戸川三区の超党派の都議会議員により、東京都議会土地区画整理事業促進議員連盟が設立され、各区の事業地区を視察するなどし、事業促進に向けた活動を続けているところであります。
 特に、足立区の六町における区画整理事業区域では、十七年秋に開業の見通しということで、常磐新線つくばエクスプレスの新駅が設置されることになっております。しかし、その駅前九十九街区の整備進捗は、開業に間に合わないのではと危惧されているのであります。
 そこで伺います。
 第一に、区画整理の実施に当たっては、その地区に応じて目的や意義はそれぞれ異なっていると思いますが、周辺区部における都施行区画整理事業の意義について明らかにされたいと思います。
 第二に、六町の区画整理事業の現況と常磐新線開業時における六町駅周辺及び関連道路の区画整備の見通しについて伺います。
 第三に、北区の田端地区を初め、周辺区部で展開される五カ所の事業地区では、地権者からも事業促進が強く求められています。現状の厳しい財政の環境のもとで、都が予定どおり事業を執行できるか、地域住民の不安は大きなものになっています。こうした状況を踏まえて、周辺区部の区画整理事業の推進に向けた今後の取り組みの方針をお示しいただきたいと思います。
 次に、用途地域の見直しについて伺います。
 現在、用途地域の指定方針及び指定基準に基づき見直し作業に着手しておりますが、これまで用途地域等の指定に対する問題点については、我が党が本会議で再三指摘しているところであります。
 都心部等においては、都市再生緊急整備地域が指定されている中で前進が見られますが、多摩地域や周辺区部についてはそうした指定もなく、都市再生の動きから取り残されている実態があります。政策誘導型の土地利用施策を策定し、その上で都市活力の維持発展や、木造住宅密集地域での整備、環境や景観を考えるべきであります。
 そこでお伺いいたします。
 第一に、区部において、建ぺい率、容積率が三〇の六〇、四〇の八〇との指定がされているのは、二十三区のうち、周辺の九区だけであります。ゆとりのある居住環境を形成し、東京全体の都市再生を強力に推進していくためにも、こうした低建ぺい率、容積率に指定されている区部周辺部において、基本的に容積率一〇〇%以上に見直すべきであります。所見を伺います。
 第二に、用途地域の見直しは地区計画の策定を原則とするのであれば、コミュニティインフラ等の整備に関して、区市町村に積極的な支援を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
 第三に、今回の用途地域の見直しに当たっては、区市町村の考えが十分反映できるよう考慮すべきですが、所見を伺います。
 第四に、用途地域の見直しとともに、木造住宅密集地域の改善は防災の面からも大変に重要です。木造住宅密集地域を解消するためには、延焼遮断帯の形成や街区内の不燃化の促進及び空き地の確保が不可欠であります。このため、現存する公有地を積極的に活用することが効果的と考えますが、所見を伺います。
 次に、福祉のまちづくりについて伺います。
 我が党の主張を踏まえ、都がノンステップバスの導入計画を策定するとともに、その着実な実施に努力されてきたことは評価いたします。ノンステップバスを利用したい都民の方々は、計画どおり達成されることはもとより、可能であれば計画を超え、一両でも多く導入されることを望んでいます。そうした高齢者や障害者の切実なニーズにこたえて、所見を伺います。
 次に、民間住宅のバリアフリーに関連して、高齢者いきいき事業の住宅バリアフリー化について伺います。
 介護保険制度の住宅改修は、手すりの取りつけなど、本人一割負担で二十万の工事費まで給付されます。また、区市町村事業で設備給付として、浴槽の取りかえ、流し、洗面台の取りかえ、トイレ等、改修ごとに給付されます。高齢者の方に大変に喜ばれている制度であります。この設備給付制度は、高齢者いきいき事業による東京都二分の一の補助事業ですが、区市町村によってその取り組みが異なっています。
 そこでまず、住宅改修の専門家などの紹介、住宅改修アドバイザーの設置が行われていない自治体についても、その実施を図るべきでありますが、いかがでしょうか。
 また、住宅改修費用の助成の手続についても、工事完了後、一たん本人が全額払って後から助成する自治体と、直接自治体から施工業者へ支払う自治体があります。一たん本人が払う方法であると、資金がない世帯はせっかくの制度を利用できません。直接施工業者へ支払う助成方法などを含め、大いにこの制度を普及すべきであります。所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) ともとし春久議員の一般質問にお答えいたします。
 国が発表した、東京都における道路交通環境対策についてでありますが、これはどうもまことに寸足らずというか、現場感覚を欠いた、どうにもならない代物だと思います。今日の深刻な大気汚染を招いた根本的原因は、国の自動車排出ガス規制の怠慢にあります。今回の対策ではこの点についての反省は全くなくて、喫緊の課題であるディーゼル車の使用過程車対策が全く不十分であります。
 また、現に多数の健康被害が発生しているにもかかわらず、被害者救済には全く言及しておりません。これらの点を指摘し、今月十日、環境大臣に、自動車公害対策の早急な抜本的再検討を強く要請いたしました。
 都は都で、都民の生命と健康を守るため、ディーゼル車規制を断固として実施するつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔下水道局長鈴木宏君登壇〕

○下水道局長(鈴木宏君) 浸水対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、浸水対策の効率的な進め方についてでございますが、お話にありましたように、効率的な事業展開を図るためには、コスト縮減や工事期間の短縮は極めて重要なことと考えております。
 このため、これまでも工事工程及び材料を大幅に省略できる工法や、大深度の下水道管を地上から掘削することなく、直接地中で接続できる工法などを開発し、導入してまいりました。また、一部完成した施設を暫定的に貯留施設として活用するなど、事業効果を早期に発現するための創意工夫も行ってまいりました。
 今後とも、地元区や道路管理者とこれまで以上に連携を図り、例えば国道の地下にある工事用の空間を有効活用するなど、新たな取り組みも含めまして、迅速かつ効果的に浸水対策を進めてまいります。
 次に、新たに大きな浸水被害を受けた地区への対応でございますが、昨年八月の集中豪雨で大きな浸水被害が発生しました品川区及び世田谷区の二つの地区につきましては、雨水整備クイックプランの重点地区として位置づけて取り組んでまいります。
 これらの地区につきましては、既に道路管理者と連携し、雨水ますを増設するなど、緊急対応を実施するとともに、現在、地元区などと連絡会を設置し、浸水被害の原因分析や対応策等の検討を行っております。今後とも、道路管理者、地元区などと連携いたしまして、早期に浸水被害を解消するために、実態に即した取り組みを進めてまいります。
 最後に、降雨情報東京アメッシュの改善、改良に向けた今後の取り組みについてでございますが、これまで大変多くのお客様にご利用いただくとともに、お客様のご意見を踏まえた改善、改良を行ってまいりました。具体的には、台風や豪雨の際にアクセスが集中した場合の表示速度の向上を図るなど、利便性を改善してまいりました。
 今後は、関係機関が保有している地上雨量計のデータも活用し、より精度の高い降雨情報の提供や、ただいまご提案をいただきました英語版の追加などの改良も行ってまいります。
 引き続きお客様の利便性を高め、浸水への備えや地域の水防活動にこれまで以上に役立てていただけるよう、一層の充実を図ってまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 土地区画整理についての三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、周辺区部における都施行土地区画整理事業の意義についてでございますが、現在、都が北区、足立区、江戸川区内で実施しております土地区画整理事業は、道路、公園、鉄道などの公共施設と宅地を一体的に整備することにより、地域の防災性の向上、居住環境の改善、地域の活性化などを図るものでございます。
 次に、足立区六町地区の現況と整備の見通しについてでございますが、六町地区土地区画整理事業は、平成九年度に事業に着手し、十七年度の常磐新線開業に向け、現在、駅周辺部の建物移転工事を進めております。引き続き、新駅開業に合わせ、バスターミナルや交番を含む交通広場の整備を行うとともに、駅へのアクセス道路となる補助第一四〇号線の駅北側区間を整備してまいります。今後とも、関係地権者の理解と協力を得て、事業を着実に推進してまいります。
 最後に、周辺区部での事業の推進に向けた今後の考え方についてでございますが、道路、公園、鉄道などの公共施設を整備し、安全、快適で活力あるまちづくりを実現するためには、土地区画整理事業を計画的かつ着実に推進していくことが重要でございます。今後とも、コスト縮減など創意工夫を図るとともに、事業進捗に合わせた財源確保に努め、早期事業完了を目指して取り組んでまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 用途地域等に関する四点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、区部周辺部の低容積率の区域についてでございますが、昨年七月に用途地域の見直しの基本となる指定基準を策定しましたが、ここでは六〇%や八〇%などの低い容積率が指定されている住宅地においては、敷地面積の最低限度を定めるなど、住環境確保などの措置を講じた場合、容積率一〇〇%などへ見直すことを可能としております。今後、道路の整備状況等を勘案し、地元区と連携して適切に用途地域の見直しを行ってまいります。
 次に、地区計画に係る区市町への支援についてでございますが、都は区市町に対し、地区計画を策定するための調査費や、地区施設整備費の一部を補助しております。また、情報提供や計画の策定指針を示すなど、技術的な支援も行っております。
 さらに、地区計画における区画道路や公園の整備に係る土地の譲渡所得について、公共用地取得に係る租税特別措置法の規定を適用し、税の軽減を図るよう国に要請するなど、地区計画の促進に向け、支援に努めてまいります。
 次に、用途地域の見直しに当たっての区市町の考えの反映についてでございますが、用途地域など、土地利用施策の推進に当たっては、地域に密着した区市町の役割が重要であると認識しております。今回の用途地域の見直しにおいても、新たに策定をいたしました指定基準に基づき、地元区市町において原案の策定作業を行っております。今後とも、区市町と十分連携を図ってまいります。
 最後に、木造住宅密集地域における公有地の活用についてでございますが、木造住宅密集地域の安全性を高めるためには、建物の不燃化とともに、事業推進のための代替地や防災空間を確保することが重要でございます。現在、防災都市づくり推進計画を改定作業中であり、未利用となっている公有地なども活用した実効性ある計画を区市とも連携して早期に策定し、地域の防災性の向上が図れるよう取り組んでまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 福祉施策に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、ノンステップバス導入についてでございます。
 高齢者や障害者を初め、だれもが身近な地域で自由に行動し、社会参加するためには、ノンステップバスの導入は大変重要でございます。
 このため、都は平成十年度から、だれにも乗り降りしやすいバス整備事業を計画化し、事業者等との連携により、民間バス路線へのノンステップバスの導入を推進しております。今後、バス事業者等の意向に配慮し、積極的な導入に向け、さまざまな工夫を凝らしていきたいと考えております。
 次に、住宅改修アドバイザーについてでございます。
 高齢者の心身の状況等に応じた住宅改修や事業者とのトラブル防止のために、利用者に対して相談、助言等を行う住宅改修アドバイザーの役割は大変重要と考えております。
 このため、都は、これまでも養成研修の実施や都独自の業務マニュアルの作成等により、区市町村における住宅改修アドバイザーの設置促進に努めてまいりました。今後とも、実施主体である区市町村に対して、事業説明会等の機会を活用し、住宅改修アドバイザー事業の実施について積極的に働きかけてまいります。
 次に、高齢者いきいき事業を活用した住宅改修についてでありますが、ご指摘のように、高齢者の住宅改修に当たって、本人負担分を除いた改修経費を区市町村が直接事業者へ支払う方法は、制度をより利用しやすくするものであり、多くの区市町村で既に取り入れられている方法であります。今後、この支払い方法を実施していない区市町村に対して実例を紹介するなど、さらにその普及に努めてまいります。

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