平成十五年東京都議会会議録第三号

○議長(三田敏哉君) 四十九番遠藤衛君。
   〔四十九番遠藤衛君登壇〕

○四十九番(遠藤衛君) 昨今危惧されている日本の人口推移は、報道によりますと、政府推計では、二〇〇六年ころをピークに坂を転げ落ちるように減少する、その規模とスピードはどこの先進国も経験をしたことのない深刻なものであり、二〇五〇年には高齢世代の多い逆三角形を描き、この傾向は都の資料からもうかがうことができます。それは、若年層の先細りによる総人口の減少、人口構造のゆがみ、社会保障の負担の増大にとどまらず、経済力の減退などに影響を及ぼすことになるといわれております。私もそのとおりだと思うし、危機感さえ感じております。
 それでは、まず、少子化対策について質問をいたします。
 日本の将来を担う子どもたちの健全な育成なくして、活力ある日本経済の維持、発展、また、東京の活性化は考えられないところであります。しかるに、昨年十月に厚生労働省が発表した二〇〇一年の人口動態統計では、東京の合計特殊出生率が一・〇一となっております。全国平均の一・三三、全国で二番目に低い京都府の一・二〇に比べて、飛び抜けて少子化が進んでいる実態にあります。若者や若い夫婦の生き方、価値観等が多様化しており、産み育てることの選択は若い世代の自主性を尊重すべきではありますが、都が取り組むべきは、何よりも安心して子を産み育てられる社会をつくることであり、住宅、教育、労働、保健医療などの面から支援策をより充実していくことが不可欠であります。そこで、これからの少子化対策は、各局に任せる現行の取り組み姿勢ではなく、庁内の連携を強化し、全庁的視点から総合的に取り組む段階に来ていると思います。
 そこで伺いますが、知事、都として今後どのように少子化対策に取り組んでいくのか、基本的な考えをお聞かせいただきたいと思います。
 子育てをする上で保育所が支援の大きな柱の一つとなっております。都では現在、認証保育所の設置を積極的に進めておりますが、この認証保育所もまた少子化の大きな歯どめとなればと思っております。
 しかし、すべての子どもが保育所に通っているわけではなく、在宅で子育てをしている親も大勢います。むしろ在宅で子どもを育てている専業主婦の方が子育てに対する負担感が大きく、また、自信をなくすことが多いと、国の調査で明らかになっております。
 こうしたことを考えると、保育所は、地域の子育て家庭に対する支援への取り組みを強め、地域に開かれた保育所となっていくことが少子化に対する取り組みとして重要と考えます。保育所、保育指針でも、保育所は人間形成の基礎を培う上で極めて重要といっております。開かれた保育所として地域の子育てに対する支援を今後どのように担っていくべきなのか、局長の見解を伺います。
 さて、今日の若者に見られる自由奔放さは、例えば各地で開かれている成人式の式典などにも見られますように、ともすると社会の常識やルールを逸脱するなど、大いに危惧すべき状況が見受けられます。本来、自由とは確固たる自己責任を伴うものであり、自由を享受するためには、それに伴う責任を果たし得る資質と能力を身につけなければなりません。いかなる国家、社会においても、人として最低守るべきルールやマナーがあることは当然であります。それをしっかりと子どもたちに教え、導くことが必要であり、それを果たすのがまさに教育であります。
 ところで、教育の中心的な存在は何といっても学校でありますが、しつけの基本ともいうべきあいさつや我慢をさせること、思いやりの心等を身につけさせるには、家庭教育が極めて重要であると考えます。しかし、今日、家庭には、ややもすると学校任せの風潮があり、本来家庭で行うべきしつけがおろそかとなり、子どもたちに甘えの心を生んでいると思います。少子がゆえに甘えや甘やかしを許しているといえます。中国では、一人っ子政策をとったことにより、子どもの甘えに大変苦慮していると聞いております。これからの日本を考えるとき、今こそ、家庭、学校、地域社会が一体となって子どもの心を耕していく心の教育が極めて重要であると考えます。
 そこで、今日の状況を踏まえ、道徳教育の必要性、重要性について教育長の所見をお聞きいたします。
 次に、地域の活性化についてお伺いいたします。
 地域経済の中心的役割を担ってきた商店街は、今、衰退から、場所によっては滅亡の危機に立っております。町の年齢構成も大きく変わり、売れる商品も随分変わったといわれております。経営努力を怠り、時代の変化に乗りおくれた者が市場から淘汰されるのは経済の自然な成り行きであるかもしれませんが、商店街が有する地域のアイデンティティーや潤い、安らぎ、安心といった、金銭で賄うことのできない無形の価値までが喪失してしまうのをただ見ているだけでは済まされません。私は、行政の基本的姿勢として、やる気がないのであれば支援をしないという原則は理解をしつつも、そのやる気は、社会の期待というものと裏腹の関係にあります。期待されているからこそ発奮することは、私たちの日常にも間々あることであります。社会が大きく期待しているにもかかわらず、それが感じられないために気力がしぼんでいるのだとしたら、期待を形に示すことは行政の役割でもあります。
 そこで、都はこの際、普及啓発をしっかりとやって、商店街に大きな期待が寄せられていることを示すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 今般、商店街振興策がリニューアルされ、進め若手商人育成事業という人材育成にも取り組まれることは、その期待にこたえたものと評価しますが、この事業のポイントは、商人のやる気の喚起から事業を開始するところであります。そして、そのやる気の階段をだんだんと上り、やる気が結果を生み、結果が次のやる気を引き出すという相乗効果を生むことこそ、人材育成事業の目標であると考えます。今後、これに向けてどのような取り組みを考えられているのか、見解をお伺いいたします。
 また、商店街のやる気は、行政の迅速な対応によっても引き出されます。ぜひとも補助金は、申請から支給まで速やかに処理していただきたい。二十や三十という小さな店舗数で構成されている小さな商店街が行うイベント事業に対する経費は、少額といえども、その商店街にとっては、三カ月も四カ月も先にやっと支出されるようでは、大変大きな負担なのであります。施策の再構築をし、要綱を新たにつくるなど、事務手続を変更する絶好の機会です。現在、事務処理時間の短縮のための検討をしているのかどうか、答弁を願います。
 次に、情報公開制度についてお伺いいたします。
 情報公開制度の根幹をなす理念は、都政の都民への説明責任であります。制度発足の昭和六十年以来、この理念のもと、都民へ提供される都政情報は着実に増加し、都民とともにある都政が実現されてまいりました。
 さて、今回提出された条例案によりますと、今後、都民は、インターネットによっても開示請求を行えることになります。このことは、高度情報通信社会の進展の中で、都民が求める必要なサービスであると高く評価するところであります。
 初めに、都政の都民への説明責任の観点から見た場合には、この新たな仕組みはどのような意味を持つのか、お伺いをいたします。
 高度情報通信社会の進展は、確かに私たちの生活を大いに便利にしました。しかし、一方で、個人情報の流出など思わぬ事故を招くこともあります。今回、この仕組みの導入に当たり、都として個人情報保護の観点からどのような措置をとっているのか、お伺いをいたします。
 次に、狛江通りの道路整備についてお伺いいたします。
 多摩地域の各都市の自立と連携を図り、活力と魅力あふれた多摩の創造を進めるためには、調布保谷線など多摩南北主要五路線を重点的に整備し、広域的な幹線道路ネットワークを形成することが重要であります。
 同時に、地域間の連携や利便性、安全性の向上を図り、広域的なネットワークを補完する道路についても着実に整備を進める必要があります。
 その一つに狛江通りがあります。この道路は、町田市へ通ずる世田谷通りと甲州街道を結ぶとともに、小田急線狛江駅と京王線国領駅を結ぶ重要な道路であります。平成十六年秋には、株式会社JUKI跡地にイトーヨーカ堂が出店、来客数が一日約一万人、車台数約三千七百台が予想されております。周辺には小学校、中学校、総合病院、団地等があり、相当の渋滞が発生し、一層危険が増すことは必至であります。また、近くには消防署もあり、消防活動にも大きな影響が心配されるところであります。それでなくとも、歩道のない現道のため、一部慈恵医大病院のご協力をいただいて歩道の確保をしている状態であります。
 また、道路拡張予定となっている皆さんは、生活再建、生活設計がつかず、今日の厳しい経済状況の中で路頭に迷っている状況であります。
 東京における道路整備の投資効果は高く、単に道路築造にとどまらない経済効果を地域にもたらし、ひいては税源の涵養にもつながるものであります。道路整備の投資効果は必ずあらわれ、税として戻ってきます。中途半端な道路では、その効果は出ません。したがって、この道路の果たす役割は大変大きく、早期に整備をする必要があります。
 そこで、狛江通りの整備の状況と今後の見通しについてお伺いいたします。
 最後に、東京外郭環状道路についてお伺いします。
 ことし一月十日に、石原知事と扇国土交通大臣から、外環に関する方針が示されましたが、この方針の中に、インターチェンジについては、インターチェンジなしを検討の基本とし、その設置については地元の意向等を踏まえるとありますが、外環の果たす役割を考えると、幹線道路との接続は、地域の利便性、広域交通処理等の観点からも不可欠と考えます。
 そこで、甲州街道、東八道路は外環を経由して中央道へアクセスさせる必要があると考えますが、所見をお伺いします。
 以上で質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 遠藤衛議員の一般質問にお答えいたします。
 少子化対策についてでありますが、少子化の進展は、未婚率の上昇、晩婚化、そして初産年齢の上昇によるものでありまして、その背景には、一般に、核家族化、教育、住宅費の負担、あるいは女性の社会進出などの要因が考えられます。大変難しい問題でありますけれども、私は、最終的には個人の価値観や人生設計に帰着するものだと思います。
 一方で、ヨーロッパやアメリカの例を見ましても、ある程度社会が豊かになり、高齢化が進んだ先進国においては、長期的に見ますと、少子化はほとんど例外なく進行しております。ある種の社会の成熟といいましょうか、それのもたらす必然であるとの認識も欠かすことができない。余り否定的な面ばかりをとらえることは、この問題に対する正確な対処の、むしろ阻害要因になるのではないかと思います。
 でありますから、行政の関与によって現在の少子化の急速な進展を転換するということは、非常に限界があると考えておりますが、日本や東京の将来に重大な影響を与える問題であることは、もう間違いございません。これから年齢の人口の構造というのが逆三角形になったときに、高齢者をだれがみとるかというようないろいろな問題も出てくると思いますし、私は、少子化というものの対処の一つの方法として、かねてからいっておりましたが、日本のように、民族のルーツが、実は周辺のいろいろな地域から来ているということを踏まえて、今の入国管理の日本の姿勢というのは、やっぱりちょっと時代おくれといいましょうか、私はやはり、政府は思い切った移民政策というものを積極的に考えていく時期に来ているのではないかという気がいたします。
 なお、その他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 道徳教育の重要性についてお答え申し上げます。
 道徳教育は、人間としての生き方を自覚し、社会の変化に主体的に対応して生きていく人間を育成するため、その基盤としての道徳性を養う上で極めて重要であると認識いたしております。都教育委員会としましては、学校で行う道徳の学習が日常生活における実践を通してこそ、より確かなものになるとの考え方に立ちまして、心の東京革命の一環として、都内全公立小中学校で道徳授業地区公開講座を実施しまして、学校、家庭、地域社会が一体となった道徳教育を推進しております。
 今後とも、各学校が家庭、地域社会との連携を深めながら、児童生徒に基本的な生活習慣や善悪の判断、思いやりの心や規範意識などをはぐくむよう、道徳教育の一層の充実を図ってまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 保育所における地域への子育て支援についてお答えいたします。
 ご指摘のとおり、これからの保育所は、入所している児童への保育サービスに限らず、広く地域に開かれた施設として、家庭で子育てをしている親などに対しても支援をしていく必要があると認識しております。現在、保育所では、地域への子育て支援として、家庭で子育てをしている親の病気や出産などに対応する一時保育や育児講座、子育て相談の実施などに取り組んでおります。
 都は、今後とも、より多くの保育所が地域への子育て支援に取り組み、その内容の充実が図られるよう、区市町村に対して働きかけてまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 商店街の振興に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街に対する普及啓発についてでございますが、商店街振興策が効果を上げるには、商店街が地域の活性化に大きな役割を果たしていることについて理解を得ることが前提でございまして、そうした意味で普及啓発は大変重要でございます。そのため、マスメディアを活用した広報に努めるほか、パンフレットやポスターなどの作成を通しまして、さまざまな取り組みをこれまで実施してまいりました。
 今後は、これに加えまして、区市町村との連携を強化しながら、講演会やイベント事業の効果的な実施を通じて、商店街の重要性について積極的な普及啓発に取り組んでまいります。
 次に、人材育成に関する今後の取り組みについてでございますが、商店街の振興には、商店街が自主的、自立的に課題の解決に取り組むことが不可欠であり、その原動力となる人づくりは極めて重要でございます。このため、進め若手商人育成事業においては、まずは商店経営に対する意欲の増進、次に経営能力の向上、さらに、経営能力を向上した後、組織運営を担うことができる商店街のリーダーの養成、こういった対象者の特性に応じたステージごとの支援策を考えているところでございます。
 事業実施に当たっては、区市町村、商工会議所、商工会、さらに中小企業診断協会など各方面の意見も聞きながら、人づくりに取り組んでまいります。
 最後に、事務処理時間の短縮についてでございます。
 お話しの事務処理の時間を短縮することにつきましては、商店街に役立つばかりでなく、申請者の行政に対する理解や協力を得る上でも大変重要でございます。これまで、元気を出せ商店街事業として、イベント事業に対する補助金の支出につきましては、マニュアルの作成などを通じて処理時間短縮に向けた事務改善に努めてまいりましたが、今後は、申請件数の増加も見込まれることから、都と区市町村間における重複事務の簡素化や職員の審査能力の向上などに積極的に取り組みまして、補助金の請求から支出までの時間をさらに短縮できるように努力してまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 情報公開制度に関する二点の質問にお答えいたします。
 まず、インターネットによる公文書の開示請求についてでありますが、この制度は、電子都庁推進計画の電子申請の一つとして実施されるものでございます。今回の条例改正により、いつでも都が保有する公文書を検索し、開示請求を行えることになります。利便性が飛躍的に向上いたします。
 この制度の運用開始を予定しております六月時点では、およそ三十万件の件名が、また、平年度ベースでは、百万件を超える公文書の件名が東京都のホームページで公開されることになりまして、都民が都政の全体像を把握することが容易になります。
 今回の改正は、都民への説明責任を果たす上からも大変意義があるものであり、都政に対する理解が一層深まるものと考えております。
 次に、個人情報の保護の観点からの措置についてであります。
 東京都では、個人情報保護条例に基づきまして、都が保有する個人情報の適正管理に努めてきました。今回、特に検索用として公開される公文書の件名につきましては、個人名など通常非開示となります個人情報がホームページに掲載されることのないよう、全庁的に徹底したチェックを実施いたします。
 また、請求者の氏名、住所などの個人情報につきましても、情報の暗号化などによりまして安全性の確保を図っております。
 今後とも、制度の運用に当たりましては、引き続き研修を実施するなど、個人情報の保護に万全を期してまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 狛江通りの整備についての質問にお答え申し上げます。
 狛江通りは、調布市と狛江市を結び、交通の円滑化や地域の活性化を図る上で重要な路線でございます。国領駅から世田谷通りまでの計画延長は三キロございます。このうち、小田急線から狛江第二小交差点までの一キロにつきましては、既に完成しております。現在、調布市国領及び狛江市東和泉の二カ所、一キロについて、平成十七年度完成を目指し事業を実施しており、本年度末の進捗率は八三%の見込みでございます。残る一キロの整備については、事業中箇所の進捗状況や財政状況を踏まえながら、順次事業化を図ってまいります。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 外環についてのご質問にお答え申し上げます。
 外環の中央道へのアクセスについてでございますが、高速道路を利用する沿道や後背地の交通利便性を確保する上で、幹線道路と接続するインターチェンジは必要であると考えます。
 その設置については、さまざまな観点から検討されるべきものでございまして、甲州街道や東八道路から中央道へのアクセスについても、国とともに地元区市の意見を十分聞いた上で対応してまいります。

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