平成十五年東京都議会会議録第三号

   午後四時六分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十五番臼井孝君。
   〔二十五番臼井孝君登壇〕

○二十五番(臼井孝君) 初めに、道州制について質問をいたします。
 これについては、さきにお二人の方が質問されておりますが、都議会自由民主党にも幅広い意見があるということで、この問題について質問いたしますので、知事の所見をお願いしたいと思います。
 我が国には、浮かんでは消え、消えては浮かんでくる幾つかの幻の構想があります。その一つが首都機能移転構想ですが、これは幻の構想であってほしいと願っています。
 しかし、幻にしてはいけないものがあります。それこそが道州制であります。最近、道州制についての議論が再び日本各地で巻き起こっています。従来の道州制の議論は、国や経済界から提起されたものが多かったのですが、最近は、地方自治体からの発信が目立ちます。日本列島の北から南から、道州制実現に向けた具体的な取り組みが聞こえてきます。まさに地方からの改革であり、地方が中央に先んじて改革に挑む時代が来たということを実感いたします。私は、ここ数年の市町村の合併の進展を踏まえ、この国を地方主権の国家にするためには、道州制の実現が不可欠であると考えています。
 そこで、知事に伺います。知事は以前から道州制について肯定的な発言をなさっておられますが、今までにないほど地方自治体が積極的に取り組んでいることに特徴づけられる、最近の道州制についての議論の高まりをどのようにとらえているか、所見を伺います。
 また、アメリカでは、レーガン、ブッシュなど、州知事として統治能力を実証した者が大統領となる例が多く見受けられます。議院内閣制の我が国では事情が異なるとはいえ、派閥の権力闘争による短期のたらい回しの首相が生まれてきた過去、諸外国から、顔の見えない日本の首相といわれてきたのでありますが、顔の見える日本の国の首相を持ちたいと国民はいっています。中央に人材が払底しているといわれている中で、石原知事に代表される地方で実績を上げた政治リーダーが国政のリーダー、すなわち内閣総理大臣になるような道筋ができれば、そのことが遅々として進まない国の改革を進めることにもなり、また、地方自治を強力なものにすることになると思うのであります。そのためにも、道州制を実現して地方自治の基盤を強化していくことが必要であると思います。
 ところで、国の構造改革を進める小泉首相は、昨年四月、自由民主党国家戦略本部に対し、道州制の検討を指示しています。
 都はこれまで、都の区域を超えた広域行政の必要性を強く認識し、さまざまな調査を行い、それを施策に反映してまいりました。昭和四十二年に、ロンドン大学の名誉教授のウイリアム・ロブソンは、都の行政区域は一都三県にまで広げるべきであり、そのための改革が必要だと分析しています。それからもう既に三十五年がたった今日、一都三県を区域とした首都圏を一つの単位とした施策の展開の必要性が一層高まっているのは自明のことであります。
 七都県市による広域的な取り組みがなされているのは適切な対応だと評価できますが、仮に道州制の実現により、一都三県の枠組みの州が誕生したとするならば、成田、羽田、横田の三空港を有機的、一体的にとらえた首都圏の航空政策の展開が期待できるのを初めとして、港湾整備や産業廃棄物など、多くの首都圏に横たわる危機的な広域課題を、より迅速かつ総合的に解決が図られるのではないでしょうか。東京首都圏州の実現が日本の活力を掘り起こすような存在になると私は確信しております。
 今日、時代は動いています。地方分権の流れの中で、優に一国の規模を有する東京都の動向に全国の注目が集まっています。石原知事がいつもいわれるように、停滞したこの国の政治を根本から立て直して国のあり方を変えていくために、東京都が首都圏州を視野に入れた道州制の実現に向けて積極的な姿勢を打ち出し、具体的に行動することが最も大きな推進力になるはずです。既に石原知事の政策と行動は都の府県行政を超えて行われており、一つの国あるいは州にふさわしいものに見えています。これを妨げるものがあるとするならば、それは国の制度でしかありません。
 そこで、例えば、現在行われている七都県市の共同事業の積み重ねを行うことと並行して、この道州制についての具体的な検討に入ることが必要であると思いますが、知事の所見を伺います。
 次に、東京の三分の一の面積を占める森林の管理の費用負担と森林産業の育成について質問いたします。
 二十一世紀という環境の時代に、森林や木材は重要な資源として大きな役割を担っています。しかし、輸入材に依存した木材消費構造、森林の手入れ不足による公益的機能の低下など、森林をめぐる状況は極めて厳しいものとなっています。私は、日本の顔である首都東京で、日本らしさの象徴である木の文化を積極的に展開すべきであると考えます。大都市東京が木の国日本を再建する大きなダイナモとなってほしいと念願してやみません。
 さて、先月、都農林漁業振興対策審議会から、林業と水産業の振興について知事に答申が出されました。本答申を最大限に尊重していただきたいという思いから質問をいたします。
 第一に、森林管理の費用負担についてであります。
 答申では、森林所有者の責務を明確にした上で、森林の管理を社会全体で行うことが必要だとして、そのためには、受益者である都民が応分の負担をする制度の確立を求めています。また、世論調査では、森林管理の費用について、現状よりも税金を多く充ててもよいと回答している都民が何と七割という結果が出ました。さらに、他の高知県等においては、森林環境税の導入方針を固めるなどの動きも見られるわけであります。
 そこで、森林を健全に育成するためには、森林所有者だけでなく、森林から多くの恩恵を受けている都民が費用面で森林管理をサポートすることが必要です。環境税や宝くじなどの森林管理の費用負担のあり方について、具体的に検討していただきたいと考えますが、局長の所見を伺います。
 第二に、多摩産木材の利用推進についてであります。
 現実として、森を守っていくのは、第一義的には林業をなりわいとする林業家であります。しかし、国産材杉立ち木の価格は十年間で三分の一まで低下をし、彼らの経営はもはやぎりぎりのところまで来ています。このままでは、多摩の森林は崩壊してしまうでしょう。多摩の木材が市場で流通しやすくするために、多摩産の木材のよさを消費者にPRできるように、認証制度を供給者側が確立することが必要だと考えます。認証制度の確立を都として積極的に支援していくべきだと考えますが、所見を伺います。
 また、東京は、木造住宅の着工戸数において全国の七%を占め、木材の大消費地であることを踏まえ、都が率先して多摩産の木材を使うなどの行動を積極的にとるべきであります。
 そこで、具体的には、認証制度の確立と並行して、多摩産の木材を公共事業や学校、公園などの公共施設に使用することが必要だと考えます。実際に木材を利用した事業について伺いますが、建設局西多摩建設事務所では、ガードレールや防護さくを、今、木材のみで設置する試行を始めました。そこで、既に河川の利水や護岸工事に木材などを用いる聖牛工法、木工沈床などの伝統工法を試行しておりますが、これは川の生態系や魚族の成育に効果が上がっていると思われます。その試行の評価をお聞かせいただきたいと思います。
 また、今後は、かんがい用の利水や河川工事に当たっては、木を利用した、環境になじむ伝統工法を採用し、魚族の保護と自然豊かな川づくりを目指すべきと考えます。今後の取り組みについて所見を伺います。
 第三に、森林を支える人材の育成についてであります。
 平成十八年開校予定の青梅地区総合学科高校は、都立農林高校から引き継ぐ、都内で唯一の農林業教育を重視した総合学科高校となるはずです。農業の特性は、現代人が失いかけている自然との触れ合いの心や豊かな感性の涵養にあります。国土の土台となる農業の大切さをこの学校で学んだ子どもたちが、あすの東京の農林業を背負って立つ人材になるために、惜しみない支援をしていくべきだと思います。所見を伺います。
 さて、とかく古いイメージを持たれる農林業の学校でありますが、子どもたちが意気揚々と学校生活を送ることができるために、環境の時代を担うにふさわしい新しいイメージの学校に生まれ変わることが望まれます。都立農林高校の同窓会など、関係者の新制校にかける期待が大きく、校舎の大改修や校門の移動など、施設整備の要望があります。これをかなえてやりたいと考えるのですが、所見を伺います。
 最後に、住宅における環境対策について質問をいたします。
 東京のエネルギー消費の二〇%を占める住宅分野での対策が課題であります。住宅は、建設から廃棄に至るまで多くの資源やエネルギーを消費するものであり、環境に与える影響は大きいのです。今後、住宅面においては、地球環境保護などに向けて一層の対応を図り、環境に配慮した住まいづくりを推進していくことが重要であると考えます。環境対策を今後どのように進めていくのか、具体的な施策を含め、局長の所見を伺います。
 また、二十六万戸という膨大な戸数のある都営住宅における対策も必要でありますが、その際、民間への波及効果が高い取り組みをとるべきと考えますが、具体的にお聞かせください。
 さらに、先ほど多摩産木材の認証制度の必要性について指摘したところでありますが、多摩の貴重な森林再生という目的を持って、環境に配慮した住まいづくりの視点から、多摩産木材の住宅での有効活用について積極的な取り組みが必要と考えておりますが、所見を伺います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 臼井孝議員の一般質問にお答えいたします。
 私は、最近特に道州制についての議論がにぎやかになってきたとも感じませんが、これは本当に前から、戦後何度も何度もいわれて、そのたびに消えて、またあらわれるというような問題のようですけれども、いずれにしろ、新幹線が走り、ジェット機が飛ぶような時代に、世界も狭くなりましたが、日本も非常に狭小になりまして、こういうときに、前にも申し上げましたけれども、徳川幕府が倒れ、大名を追い出すために、もとの領地にかわりに勅選の県知事を送り込むという、それででき上がった今日の四十八都道府県というものは、全く歴史的にも信憑性を欠いた、リアリティーのない行政区分だと思います。
 ちなみに、関東知事会などもありますし、東北には東北の知事会、九州なり四国なりの知事会もあるようでありまして、それが持たれるゆえんは、やはりきちっとした行政区分としてでき上がっていなくても、その地域地域の広域行政というもののニーズがあってのことだと思いますが、いずれにしろ、既存の四十八都道府県の行政区分というのはまことに陳腐で、しかも非能率的で、やたらに細かい区分だけで、本当に国土の狭い日本にとって有害無益な区割りだと私はかねて思っております。
 首都圏というコンセプトもあいまいでありますけれども、私はやっぱり、首都というのは、東京に限らず、これを囲んだ神奈川、埼玉、千葉県というものが構成してくれていると思いますし、そういう点で、首都ということを踏まえて一種の広域行政というものを七都県市の首長さんたちと諮って行いつつありますが、これが、しかし、一つの行政単位として構えられる一種の道州制の実現につながっていくには、なかなか難しい、時間のかかる問題だと思います。これはやっぱり国会がよほどしゃんとして、自分たちの選挙区に対するインタレストを超えて国家全体の将来を考えませんと、なかなか、地方が幾ら声を上げても実現できる問題ではないと思います。
 これからもいろいろな声をかけ合って、国も突き上げていきたいと思いますが、いずれにしろ、首都圏に限って申しましても、例えば東京湾という非常に貴重な閉鎖水域――私、視察に行きますと、東京の海岸線というのはわずかでございまして、隅田川の河口のどちら側か、入り口から南へ線を引いて、この右側は東京の海ですが、左は千葉だという、そういう水面に関してもつまらぬ行政区分がばっこしていて、私はやっぱり、東京湾は、海を持たない埼玉県の海でもあるということで、きちっとしたポートオーソリティーを構えて、東京湾全体の再生といいましょうか、合理的な運営を考えるべきだと思いますけれども、総理にもこの間、その話をしまして、まあ、いいなということでしたけれども、その後が続かないようであります。いずれにしろ、おっしゃるとおり、この問題は、やはり国の将来の効率的な運営ということを考えますと、地方からも中央からも諮り合って、国民の合意の上に実現すべき大事な大事な問題だと心得ております。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 青梅地区総合学科高校に関します二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、青梅地区総合学科高校における農林業を支える人材の育成についてでございますが、青梅地区総合学科高校が、ご指摘のように、自然との触れ合いの心や豊かな感性の涵養といった意義を有する農業教育を重視した総合学科高校として、この学校で学んだ生徒が地域の要望にこたえる人材となるよう育成していくことは、重要なことと認識しております。
 また、社会人を対象として、関係団体との連携による公開講座を実施するなど、学校の教育機能を地域、社会に提供できるよう、具体的なあり方について今後検討し、実現を図ってまいります。
 次に、青梅地区総合学科高校の施設整備についてでございますが、現在の農林高校の校舎につきましては、建物の内装、外装を全面的に改修するほか、電気や給排水などの設備も更新するなど、大規模改修を行う計画でございます。
 改修に当たりましては、新しい総合学科高校に必要な実習室の確保や福祉のまちづくり条例に基づくバリアフリー化を図りますとともに、内装の一部に木材を取り入れるなどの工夫もしまして、新しい学校にふさわしい校舎となるよう整備をしてまいります。
 なお、校門の位置につきましては、移動の必要性も含めまして十分検討してまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 木の国日本の再建に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、森林の管理の費用負担のあり方についてでございますが、先般の農林漁業振興対策審議会の答申では、森林について所有者の管理責務を明確にするとともに、社会全体で支える必要があるといたしまして、税のあり方や基金の創設など、費用負担の検討を進めるようにとご提言をいただきました。森林は大気浄化や水源涵養など多くの機能を持ちまして、すべての都民がその恵みを受けていることから、健全な森林の育成に都民全体で取り組む必要があると思っております。
 今後、この答申の趣旨を十分踏まえまして、森林に関する所有者の責務や費用負担のあり方について、局内にプロジェクトチームを設置いたしまして、学識経験者や関係者などの意見も聞きながら、具体的な検討を進めてまいりたいと思います。
 次に、多摩産木材の利用推進と木材の認証制度についてでございますが、木材に関する認証制度は、地域材を利用し、地域の森林の健全な育成を図ることを目的として木材の産地などを証明するもので、群馬県や静岡県などで森林組合や製材業界が中心となって取り組まれております。
 都において認証制度を導入するには、多摩地域の森林から伐採されたことが確認できることや、消費者が安心して使える品質を確保することが必要であると考えております。
 今後は、都民に信頼される認証制度の確立に向けまして、消費者や学識経験者なども幅広く参画する協議会の設置を林業、木材関係者に強く働きかけ、多摩産木材の利用推進を図ってまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 多摩産木材の利用に関する二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、河川で試行してきた木材などの自然素材を用いる伝統工法についてでございますが、平成十三年度に、秋川の東京サマーランド付近に聖牛工を、武蔵五日市駅付近に木工沈床を試行的に設置いたしました。これら工法は、洪水時には水の勢いを弱める効果を発揮し、平常時には、周辺の自然環境とも調和するとともに、魚がすみつき、子どもたちの水遊びの場となるなど、地域の方々や訪れる人々に親しまれております。このように、伝統工法は、堤防を守るとともに、生物の生息、河川環境の向上、都民が自然と触れ合える川づくりに有効な工法でございます。
 次に、伝統工法を用いた今後の川づくりについてでございますが、これまでも都は、河川の整備に際して、水害の軽減など治水に加えて、河川が本来有している自然を生かした、安全で親しみのある水辺環境の創出にも取り組んでおります。
 十三年度に引き続き本年度も、秋川、多摩川など四河川で、木工沈床や蛇かごなど、伝統工法を用いた護岸工事を実施してまいります。
 今後も試行を重ね、間伐材など地場産の材料の活用や技術者の育成を図り、それぞれの河川の特性に合わせた伝統工法を普及していくなど、自然豊かな川づくりに努めてまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 住宅における環境対策についての三点のご質問にお答えいたします。
 最初に、住宅における環境対策の取り組みについてでございますが、現在、屋上緑化や太陽光発電などにつきまして、国や都などのさまざまな誘導策もあり、普及への動きが見られるものの、今後さらにこうした取り組みを進めていく必要がございます。
 今後の対策といたしましては、住宅の大部分を占める民間住宅での取り組みがポイントであり、住宅を使う消費者と供給する生産者の双方に向けて、普及の促進につながるよう的確な情報の提供を進めることが重要と考えております。そのため、先進的な事例などを含め、住宅における多様な環境配慮の取り組みや手法を総合的なガイドとして取りまとめまして、インターネットなどにより普及啓発してまいります。
 次に、都営住宅における環境対策の取り組みについてでございますが、これまでも敷地の緑化や透水性舗装、建物解体時に発生するコンクリート塊のリサイクルなどに努めてまいりました。現在、葛飾区の都営新宿六丁目団地の建てかえにおきまして、民間事業者への普及を目指し、建設廃材のほぼ全量をリサイクルするモデルプロジェクトに取り組んでおります。
 来年度からは、新たな取り組みといたしまして、区部の既存都営住宅のうち、可能なところで屋上緑化を実施してまいります。
 また、都営住宅の建てかえに際しましては、太陽光発電設備の設置を検討いたします。
 今後とも、こうした環境対策の推進に努めるとともに、その成果を広く民間に積極的に普及啓発してまいります。
 最後に、多摩産材の住宅における活用でございますが、都は、多摩産材を活用した木造住宅の普及のため、木材供給者、住宅生産事業者及び関係行政機関などで構成する東京の木・いえづくり協議会の設立や運営への支援を行ってまいりました。この協議会では、普及のためのパンフレットの発行や、広く都民の参加を得たシンポジウムの開催などを行っております。
 多摩産材の活用には、継続的に普及を図っていくことが重要と考えており、今後とも協議会の活動を支援してまいります。

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