平成十五年東京都議会会議録第三号

   午後一時開議

○議長(三田敏哉君) これより本日の会議を開きます。

○議長(三田敏哉君)この際、あらかじめ会議時間の延長をいたしておきます。

○議長(三田敏哉君)昨日に引き続き質問を行います。
 四十六番高島なおき君。
   〔四十六番高島なおき君登壇〕

○四十六番(高島なおき君) 私は、都議会自由民主党の一員として、都政の課題について何点か質問いたします。知事を初め理事者の明快な答弁を期待するものであります。
 都民の大きな期待の中に、つくばエクスプレスの建設が行われております。
 過日、首都圏新都市鉄道株式会社と関係一都三県は、秋葉原―つくば間、五十八キロのこの鉄道が平成十七年秋に全線同時に開業の予定であると発表いたしました。これまで、一部の用地買収のおくれなどで、平成十七年度の開業目標の達成すら危ぶまれた時期もありましたが、今回、開業時期を明確にしたその根拠について、まず伺いたい。
 そもそも、つくばエクスプレスは、常磐線の混雑緩和や、つくば研究学園都市への足、さらには、宅地の大量供給を目的に、国家的プロジェクトとして計画されたものであり、いわゆる宅鉄法も国会で制定されました。
 しかし、それが構想された平成元年当時と比べ、現在は、国の社会経済情勢も大きく変貌しました。実際、今回の発表では、輸送需要を一日三十万人以下に下方修正しています。当初計画では約六十万人だったのですから、その半分と見積もらざるを得なくなったわけで、開業後は厳しい事業経営を迫られると見込まれます。
 しかしながら、この鉄道の意義を失ったのかというと、そうではないと考えます。交通不便地域であった東京の東北部を初め、沿線地域の利便性、東京からつくばまでの所要時間の短縮など、こうした面を取り出しても、少なからず、もたらす効果は高いはずです。
 つくばエクスプレス関連の開発、まちづくりについても、例えば、秋葉原においては、平成十八年二月、全面開設を目途に仮称秋葉原ITセンター建設が進められており、まさに沿線を中心に新たなまちづくりが進められております。
 そこで、一兆円近くに及ぶ事業費を投じてつくられるこの鉄道の経済効果をどのように見積もっているのか伺いたい。
 最近の新聞報道によりますと、つくばエクスプレスを東京駅付近まで延伸する構想が浮上してきたとのことであります。新幹線や地下鉄丸ノ内線などの乗りかえを便利にし、利用者増を見込み、秋葉原―東京間、約二キロを地下四十メートル以上の大深度地下にトンネルを建設することで用地買収が不要となり、約一千億円の事業費とのことで、大幅に削減できるそうです。
 さらには、平成十二年の運輸政策審議会の第十八号答申において、東京―秋葉原間の延伸を検討すると位置づけられましたが、都として、今回の延伸についてどのように考えているのか伺いたい。
 次に、日暮里・舎人新線について質問いたします。
 都は、一昨年秋に、開業時期をそれまでより四年延伸して平成十九年度と定めました。そこでまず、現在の建設工事の進捗状況を用地取得も含めてどのようになっているのか、開業に向けた今後の事業の進め方について伺いたい。
 開業目標達成のためには、十五年度中にも舎人公園内に半地下構造で計画されている車庫工事に取りかかることが不可欠と考えるが、工事着手時期と今後の工事スケジュールについて伺いたい。
 次に、まちづくりについて質問いたします。
 先ほど質問をいたしましたつくばエクスプレス、日暮里・舎人新線はもとより、東京都周辺における鉄道の開業は、将来の経営を考え、いかに需要を確保していくか、さらに沿線のまちづくりがどう進められていくかが重要となっております。鉄道整備とあわせてバス路線の再編や鉄道相互の乗りかえ改善により、ネットワーク効果が発揮されるようにしたり、駅に駐輪場を確保していくことがぜひとも必要と考えます。そうした取り組みに東京都の総合的な調整能力が問われるのであります。
 また、東京都は、沿線の開発については、今日まで区市町村と積極的に進めてまいりました。しかし、同じ東京都でありながら、一方では需要増大を叫び、他方ではまちづくりに規制をかけるというのです。果たしてこのようなことですべてが解決するでしょうか。
 そこで、新線建設に連動したまちづくりについて質問をいたします。
 沿線の土地利用を高めていくことなしには、根本的な鉄道の需要獲得につながらないことは、先ほど申し上げたとおりです。しかしながら、例えば、つくばエクスプレス、日暮里・舎人新線の沿線地域の大部分は、区画整理を施行すべき区域に指定されたままとなっており、土地利用を図るには、区画整理がまず必要というわけです。
 しかし、現下の財政状況のもとでは、公共による区画整理の実施は難しく、組合による区画整理も時間とコストがかかり困難であります。そのため、時間とコストをかけずに土地利用を増進される取り組みが不可欠と考えます。
 そこで提案ですが、都市計画法五十三条の適用を受ける区画整理を施行すべき区域において、全区域を地区計画の指定をし、道路率、公園率を確保しながら、建ぺい率、容積率を緩和してはどうか。このことにより、住宅建設や宅地供給が促進され、結果として区画整理に頼らず、すばらしいまちづくりが進み、さらには、鉄道利用者の需要獲得の増大につながると考えます。
 そこで、区画整理を施行すべき区域の見直しについて、東京都の考え方を伺いたい。
 また、現在、用途地域の一斉見直しの作業が進められており、区市町村は本年夏までに原案を作成することになっています。新線建設を踏まえ、当該地域が動きやすい条件づくりをぜひこの機会をとらえて実行すべきと考えるが、東京都の基本的な考え方を伺いたい。
 ところで、こうした新線の開通という交通インフラの整備は、地域開発の起爆剤でもあります。とりわけ、東京の北東部は多くの人口を擁しつつも、経済の疲労が色濃く露呈している地域であり、これを機に、地域経済の振興を図るべきことはいうまでもありません。
 地域経済の中心的存在の一つである商店街は、価格破壊、大型店の進出、経営者の高齢化など、商店経営の先行きは、不安から活力低下の一途をたどっており、地域アイデンティティー喪失の危機にあるといっても過言ではありません。
 昨日の我が党の代表質問でも、商店街振興については言及したところですが、この大幅な増額予算をいかに効果的に使っていくかは、大きな関心の的でもあります。とりわけ、新・元気を出せ商店街事業は、イベント、ソフト、ハード事業を統合した総合的商店街振興策であると説明を受けていますが、事業内容の説明だけでは、商店街を構成する商店主の皆さんがこの事業を活用するアイデアを生み出すのは難しいのではないでしょうか。
 行政が何から何まで用意するのではなく、みずからが創意と工夫を生み出す意欲ある商店街を支援するという基本的な支援の姿勢は理解しますが、白紙のままで、さあ考えろといわれても、困惑してしまう商店街は数多くあるはずです。予算をつけたのだから、今度は商店街の番だと突き放してしまっては、仏つくって魂入れずです。この新・元気を出せ商店街事業を商店街振興に本当に役立つすばらしい施策に育てていくよう、企画立案力の養成にぜひきめ細かく取り組んでいただきたい。
 そうした観点から、今後、どのような取り組みを展開しようとしているのか伺いたい。
 また、地域商業とともに地域工業も重要です。ものづくり立国を支えてきたのは、大企業の大工場というよりは、むしろ中小企業の町工場だったのではないでしょうか。しかし、東京において、その町工場の立地は都市計画上の規制を大きく受け、活動が制限されてきました。しかし、長期の景気低迷を余儀なくされている今日、高度成長期の規制をそのままにしておいてよいのでしょうか。
 私は、昨年の第三回定例会で、規制改革について質問をし、産業力強化会議では、まず、地方への工場等の移転を促す国の産業立地政策や既成市街地における工場の建てかえ、増改築に係る都市計画に関する規制を検討する旨の答弁を得ました。規制を産業振興の面から見直す契機になるものと大いに期待を抱いたところです。
 そこで、知事は、過日の施政方針において、工場の立地規制については早期に撤廃すべきであるとして、特別工業地区建築条例の廃止を含めた見直しについて言及しましたが、知事は、廃止に向けてどのような考え方で臨むのか伺いたい。
 また、昨年七月には、工業等制限法が廃止され、社会的にもそうした機運が盛り上がってきました。そこで東京都は、昨年十二月、関係自治体に特別工業地区建築条例について、廃止することが可能か、廃止条例の施行時期について、廃止の考えを踏まえ各地域の特性に合った対応などについて意見照会をし、その回答がなされたと聞いていますが、どのような考え方が寄せられたのか伺いたい。
 また、関係自治体との連携調整は必要不可欠であると考えるが、今後、どのような作業を行っていくのか伺いたい。
 ところで、昨年、中小企業振興対策審議会から、都におけるものづくり振興のあり方についての答申がありました。地域工業の振興に直接結びつく評価の高いものですが、これに基づき、局を横断する産業力強化会議が設けられました。規制は、知事が申されたように、社会経済活動の変化に対応して弾力的に見直すべきものです。先ほどの都市計画に関するものは、緩和の方向を考えるべきものですが、一方で、規制の強化を志向する分野もあるはずです。その意味で、規制改革全体の取り組み状況についても大きな関心を持たざるを得ません。
 産業力強化会議が発足して五カ月が経過しました。その成果というものも、そろそろお示しいただいてもよい時期に来ていると思います。途中経過も含めて、取り組み状況、さらには東京都の取り組み意欲について伺いたい。
 以上で、私の質問を終了させていただきます。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 高島なおき議員の一般質問にお答えいたします。
 特別工業地区建築条例の廃止に向けての考え方でございますが、東京のものづくりなどの産業力の強化のためには、工場の建てかえや拡張が、できる限り自由に行える環境の整備が必要だと思います。
 国におきましても、都の要請を受けて、昨年七月に、都市部での工場立地を規制する工業等制限法を撤廃いたしました。
 都におきましても、工場の立地規制について早期に撤廃した上で、さまざまな支援を講じて、産業力の強化を図っていきたいと思っております。
 特別工業地区建築条例の廃止に向けて、区市町村との調整を進めてまいるつもりでございます。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 常磐新線などに関する五点の質問にお答え申し上げます。
 まず、常磐新線の開業時期でございますが、昨年末までに、工事工程上の課題となっておりました総武流山電鉄との交差部の協議が調うなど、必要な鉄道用地がほぼ確保されました。
 これを踏まえまして、関係者間で調整した結果、年度内には主要な土木工事が完了する見込みとなっております。
 さらに、駅舎の建築、設備工事の進捗状況や車両の走行試験などの工程を勘案いたしまして、今般、平成十七年秋の開業の見通しを得るに至ったものでございます。
 次に、常磐新線の経済効果についてでございますが、平成九年度に民間企業を中心に組織されております常磐新線のプロジェクト推進協議会が行った調査によりますと、常磐新線プロジェクトの直接効果は、平成八年からの三十年間に、鉄道建設やその運営として約一兆円、沿線地域における住宅整備や公共投資等として約六兆円、合計で約七兆円と試算しております。
 このほか、IT拠点として整備が進みます秋葉原と研究機関が集積するつくばが結ばれまして、また、柏など沿線地域におけるIT産業の立地が促進されることで、新産業、新技術の創出と育成につながるものと考えております。
 また、都内におきましても、北千住を初めとした沿線のまちづくりが、常磐新線の建設を機に、これまで以上に進展するものと考えております。
 次に、常磐新線の東京駅方面への延伸についてでございますが、常磐新線は、現在建設中の秋葉原―つくば間を確実に開業させること、開業後は、需要の確保に努め、会社の経営基盤を整えていくことが何よりも必要であることから、この問題を議論する段階にはないと考えております。
 次に、土地区画整理事業を施行すべき区域についてでございますが、区部周辺部においては、都市計画決定した区域のうち、三十年以上事業化に至らない区域が約六千三百ヘクタールございまして、その多くが宅地の細分化などによりまして事業の実施が難しくなっております。
 このため、昨年四月、土地区画整理事業に限定せず、地域の特性に応じたまちづくり手法の活用が可能となるようガイドラインを作成し、公表をいたしました。現在、関係区において、ガイドラインに沿って整備手法を検討しております。
 ご提案の地区計画と用途地域の見直しによるまちづくりについては、その一つの有効な事業手法と考えます。
 都といたしましては、地元区の意向を踏まえ、道路や公園の確保などに留意しつつ、早期にまちづくりが進むよう柔軟に対応してまいります。
 最後に、常磐新線、日暮里・舎人線、沿線のまちづくりについてでございますが、新線開通を契機とした新駅周辺のまちづくりを推進していくことは重要でございます。現在行っている用途地域の見直しにおいては、指定基準で、鉄道駅周辺などの生活中心地につきまして、土地の有効利用を促進する観点から、商業系用途地域の指定を可能としております。
 都といたしましては、地元区と連携し、新駅周辺について、それにふさわしい用途地域への見直しなどを行い、ポテンシャルを高め、沿線のまちづくりの推進に努めてまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 日暮里・舎人線の進捗状況と今後の事業の進め方についてお答え申し上げます。
 本年一月末の進捗状況は、用地は八八%が取得済みであり、工事は支柱の七七%、けたの四一%が完成または施工中でございます。
 残る用地につきましては、関係権利者の協力を得るよう精力的に折衝を進め、十五年度に本体工事に必要な用地を取得してまいります。
 これにより、十五年度には、残りの支柱工事に着手するほか、足立区内で駅舎工事を開始するなど、全線にわたって工事を実施してまいります。
 今後とも、地元住民及び関係機関の理解と協力を得て、用地の確保、工程、安全の管理に万全を期し、十九年度開業を目指して事業の推進に努めてまいります。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 日暮里・舎人線の車庫工事についてお答えいたします。
 日暮里・舎人線の車庫整備や車両製作など、インフラ外部事業につきましては、東京都地下鉄建設株式会社が行うこととなっております。
 このうち、車庫の建設工事につきましては、平成十九年度の開業に向け、平成十五年度に設計を行い、平成十六年度当初に工事着手する予定であります。
 交通局といたしましても、今後とも、東京都地下鉄建設株式会社と緊密な連携を図りながら的確に対応してまいります。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 中小企業対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、商店街の企画立案力養成への支援についてでございますが、商店街の振興には、商店街が自主的に、自立的に課題の解決に取り組むことが不可欠でございますし、商店街自身の企画立案力が極めて重要である、ご指摘のとおりでございます。
 企画立案力を高めるためには、広範な情報の収集力と分析力、柔軟な発想力などを養う必要があり、専門家などによる指導の効果が高いと考えております。
 そこで、商店街が取り組んだ成功事例の紹介や新事業創出をテーマとした商店街リーダー養成のための研究会の開催のほか、商店街の要請に応じたデザイナーやコンサルタントを交えた専門家チームの派遣など、商店街の企画立案力養成の支援に積極的に取り組んでまいります。
 次に、産業力強化会議での規制の見直しについてでございますが、特別工業地区建築条例は、都内一律の規制を行ってきましたが、急速な技術革新による製造業における業種の多様化や操業環境の変化を踏まえまして、地域特性に即した対応が必要と考えられます。
 このため、昨年末、関係区市町に対しまして廃止の方向を示し、意見照会を行ったところでございます。寄せられた回答は、住工調和を図るため条例の存続を求めるもの、産業振興の視点で廃止に賛同を示すものなど、さまざまでございました。
 今後、条例廃止に向け、区市町において都市計画の変更が必要となり、また、地域の実情に応じて条例の制定などが考えられますので、円滑に手続が進むよう、引き続き関係区市町と十分な調整を図っていくことになります。
 最後に、産業力強化会議の取り組み状況についてでございます。
 この会議は、東京の産業力強化を目的として、幅広い課題について全庁的な検討を行い、政策の方向を定めるものでございます。
 現在、都市計画規制や知的財産の活用、技術力のある中小企業が参加しやすい入札制度など、六つの課題について、関連局による五つの作業チームを編成して検討を進めております。現時点で、特別工業地区建築条例や産学公連携の推進、知的財産の活用の方策などについて、一定の方向性を定めたところでございます。
 今後とも、さまざまな課題について、東京の産業実態を踏まえまして、規制のあり方などを含めて検討を進め、実効性のある施策を実現してまいりたいと考えております。

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