平成十四年東京都議会会議録第十九号

○議長(三田敏哉君) 八番後藤雄一君。
   〔八番後藤雄一君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○八番(後藤雄一君) 西東京市にあります社会福祉法人西原樹林会に関する補助金適正化法違反の事件で、東京都の元福祉局長神藤被告は、懲役二年六カ月、執行猶予四年の判決が確定しております。
 この執行猶予がついた理由として、平成十四年十月十五日のさいたま地裁の判決の中で、神藤元福祉局長は福祉政策の見直し作業の責任者として、西原樹林会が特別養護老人ホームを設立する際、補助金交付が不正な手段であることを十分に認識していたが、現職の都議会議員や有力元都議会議員が口ききをしている西原樹林会への補助金交付を拒絶して西原樹林会をつぶすことになれば、福祉政策見直しに反対する都議会の勢力を勢いづかせ、結局福祉政策の見直しがとんざしてしまうと考えたと書かれています。
 現職の都議会議員や有力元都議会議員が口ききをしているというゆゆしき事実です。
 私は、元福祉局長の逮捕に関心を持って調べていました。行革一一〇番は、判決の中で証拠採用されている検察調書のコピーとされるものを三枚、目黒区議が区役所で行った記者会見を通じて入手しました。
 また、きのうですが、さいたま地検の検事より、行革一一〇番が所持している検察調書をさいたま地検に提出してほしいという要請がありましたので、本物と確信しました。
 この検察調書の中には、都議会、目黒区議会の議員などに関する多くの記述があり、現金が一億円から二百万円までの配布先の議員などの氏名、おのおのの金額までが明記されているものであり、驚かされました。
 議員に関する記述の中の一つは、供述人が元都議会議員に五百万円を渡したときの状況です。金がないのでまけてほしいと頼んだところ、元都議会議員が、人に物を頼んでおいて、そういうことはないだろう。おれが残高証明をつくらなかったらば、樹林会なんてできなかったんだぞとどなったのでしたと書かれています。
 二つ目は、供述人が現職都議に西原樹林会の資金計画を見せ、富士銀行の残高証明書はにせものです、青梅市農協の残高証明書は、見せ金ですなどと説明し、東京都の役人に働きかけるように依頼しました。すると、現職都議は、その場で電話をかけ、話しておいたから、この件はこれでいいなどといい、と書かれています。
 福祉局長にお尋ねします。福祉局は、都議会議員から口ききがそんなにも多いところなのか。議員からの口ききは、そんなにも威力があるのか、お答えください。
 警視総監にお尋ねします。
 議員が口ききをして、その謝礼として現金を受け取った事実で、少なくとも収賄容疑が明らかになっているはずです。
 きのう、さいたま地検の検事から、行革一一〇番に圧力とも思われる電話までありましたが、警視庁の管轄区域で起きた事件です。警視庁は、速やかに捜査を行うべきだと思いますが、見解をお尋ねします。
 また、今回のように都会議員が関与するケースで思い悩んでいる職員は、警視庁に刑事告発をしようと考えるでしょう。
 私も、オンブズマン活動を行っていたとき、世田谷区の不正を警視庁に告発しましたが、犯罪として立件しにくいなどと難癖をつけられ、なかなか受け取ってくれませんでした。
 公務員の不正に対する刑事告発は、面倒くさがらず、積極的に対応すべきだと思いますが、警視総監の見解をお伺いします。
 次に、都庁の内部ではどうなっていたのか、職員の検察調書を私なりにまとめてみました。
 この事件は、西原樹林会の特別養護老人ホーム建設用地に抵当権を設定していた生命保険会社から、補助金はいつ執行されるのかの問い合わせから始まります。
 この電話を受けた高齢者施策推進室の職員は不自然さを感じ、当時大蔵省から出向していた谷川保健福祉部長に相談します。谷川部長は、即座に疑問点を指摘します。そして、担当課長、係長などと連携して、法人設立の際の見せ金や偽造した残高証明書などを次々に見破っていきます。しかし、神藤室長は違法を知りつつ補助金を出そうとします。
 担当者は、そもそもだれがこんな法人を許可したのかと抵抗します。谷川部長は、担当者らに事実関係と今後のやりとりのメモをしっかりとるように指示し、刑事告発の検討をも指示します。
 そして、谷川部長は補助金の執行を停止し、刑事告発をするか、法人解散を命ずるかを神藤室長に迫ります。神藤室長は、渋々、法人解散を承諾します。ただし、刑事告発をしないことでの条件つきです。神藤室長は、このとき、刑事告発の文書は残さないようにと指示しています。
 しかし、谷川部長が大蔵省に戻られ、新たに金内部長が着任するや、形勢は一変します。法人解散どころか補助金の交付が決定され、なされてしまうのです。
 元福祉局長神藤被告と金内部長は、平成元年当時、行政監察室で監察官と副監察官の関係にありました。そして、金内部長は現在、福祉局の理事として指定職の給与を受けるまで出世しています。
 ここでお尋ねします。
 この違法な補助金交付に関して、福祉局はいかなる調査を行っているのか。また、違法行為に関与した職員には、公務員として処罰があってしかるべきではないかと思いますが、見解をお伺いします。
 内部告発についてお伺いします。
 総務局行政監察室は、職員を汚職から守るとして、サポートダイヤルという電話を設置していますが、電話番号すら外部には知らせていないものでした。
 また、サポートダイヤルによる内部告発は、三年間で成果が出たのが一件だけと聞きます。
 補助金を違法に支出した元福祉局長神藤被告が行政監察室の監察官だったのですから、信頼されていないのは当たり前です。
 職員は、内部告発に関し、亡霊のようなものに縛られています。というのは、都庁内部の不正に気がついて内部告発しても、上役にいえばもみ消され、マスコミ、議員に内部情報を流してもその場限り、同僚職員、組合から白い目で見られ、その上、いじめに遭うのが関の山、だれにも話せない、告発なんかできっこないと考えている職員が多くいることです。
 このような状況が続く限り、都内庁では不正はやみからやみへと葬られ、決して改善されないでしょう。以上の状況から考えると、行政監察室は全く機能していないといってもおかしくないでしょう。
 そこで、質問です。
 行革一一〇番は、内部告発に関連して、都庁の不正などを一年半で二十件以上を摘発し、成果を上げています。行政監察室に内部告発が何件あったのか、どのような成果があったのか、教えてください。
 ところで、石原知事は、平成十三年九月十九日に行われた都議会第三回定例会で、都庁の本質の改革として、職員一人一人が経営者の視点を持ち、スピード感覚、コスト感覚、チャレンジ精神を発揮しながら果敢に実行する必要がありますと所信表明で述べられております。納税者の視点に立たれた、すばらしいお考えだと思います。
 行革一一〇番も、税金のむだ遣いをなくすために、都庁の不正摘発を続けておりますが、職員が自発的に、公務員としてプライドを持ち、行政改革、意識改革に取り組まなければならないと考えております。
 しかし、以上のように不正は後を絶たず、内部告発の受け皿も不十分です。
 そこで、知事と職員のパイプをつくることによって、不正に対し内部告発をする環境をつくり、行政改革をすることが、知事の考える改革の早道ではないでしょうか。
 石原知事への提案ですが、知事直轄の内部告発ホットライン、石原ホットラインを開設してはいかがでしょうか。
 内部告発情報は、調査に入る前に知事に報告すること、そして、調査終了後に速やかに知事に報告し、調査結果は情報公開の対象にする。内部告発する職員の秘密、身分を守ることは当たり前です。知事のお考えをお聞かせください。
 話は変わりますが、池袋サンシャインビルにあるパスポートの窓口で、業務委託をしていた会社のスタッフが、ことしの六月から十月にかけて、窓口に収入印紙を張らないで持参したお客様から十五件、十九万円の現金を着服し、引きかえ証とはがきを持ち去った事件がありました。
 現場では、九月に引きかえ証とはがきの紛失に気づき、十月には事件として調査を始めました。しかし、十一月二十日に行革一一〇番が事件を指摘するまで、都は隠ぺいしていたのです。
 石原知事のメッセージは、管理職にすら浸透していなかったのです。
 事件の問題点を調査するために、旅券課に対し、行革一一〇番は情報公開請求をしました。その結果、民間委託に対する都の対応のお粗末さが露呈されました。
 パスポート申請、交付の業務は、すべて民間委託されています。この民間委託された業務内容は、申請者の戸籍などのプライバシー、そしてことしの八月から住基ネットを扱うというものです。
 都は、この住基ネットを担当するスタッフについて、氏名だけしか把握していないのです。スタッフの住所は、委託業者が知っているので、都は知らなくてもよいというのです。
 その上、スタッフに対する個人情報保護に関する研修は、口頭で一度しか行われていないという信じられないような状況です。パスポートの申請者がこのありさまを知ったら、何というでしょう。
 これらの問題は、民間委託がいいかげんなのではなくて、都の契約内容、そして職員の管理能力がいいかげんだったのです。
 以前の正規職員だけのときよりも、現在の民間スタッフの方が、接客サービス、待たされる時間は改善されているはずです。
 親方日の丸の役人よりも、民間の方がサービス感覚はよいのは決まっています。
 そこで、窓口に委託先の業者名、委託業務の内容を掲示し、利用者に民間委託をしていることを明らかにすること、個人情報保護について研修を徹底すること、スタッフの住民票などを委託業者から提出させること、スタッフに写真入りのネームプレートを着用させること、この四点の改善を大至急行っていただきたい。
 さもなければ、民間に業務委託をするのを根本的に見直しをしていただきたい。見解をお伺いします。
 質問は以上です。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 後藤雄一議員の一般質問にお答えいたします。
 小さなことのようで、私はこれ、とても大事な問題で、それが積み上げられていくと、都内の治安についての質問が先ほどございましたが、軽犯罪、微罪を手が回らず見逃していくことで、結局それが大きな犯罪につながって、東京の治安全体が非常に不安にさらされている現況でありますが、ご指摘の問題も、ちりも積もれば山となるでありまして、看過できない問題だと思います。
 ただ、ホットラインについてでありますが、職員の不正行為を未然に防ぐためにサポートダイヤルというものがありまして、私も初めて知ったんですけれども、あなたの汚職度を今すぐチェックしますと。あなたのご質問があるということを聞いて、総務局からこの資料が回ってまいりましたが、これは一体年間どれぐらいかかってくるかといったら、三十五、六だというんで、余り機能を発揮していないなという気がいたしました。
 たまたまそのときに陪席しておりました、私の腹心といえば腹心の浜渦副知事が、私のところには大体その十倍ぐらいの告発電話がかかってきますということでありまして、それは重要なものは私に報告もされておりますが、ということでありまして、ことさら余り、何というんでしょう、密告といえば密告、内部告発は、内部告発のラインを仰々しく申しますと、スターリンのころのベーリヤみたいなことになっちゃうんで、私はいろいろ功罪半ばすると思いますが、いずれにしろ、まず、ここにあるサポートダイヤルなるものを都の職員も堂々と使ってもらいたいし、それから、なお、それで非常に反応が鈍い場合には、副知事も三人おりますし、私もおりますから、じかにそういう通報をしてもらいたいと思います。
 その段階で先のことは考えますが、いずれにしろ、ご指摘のような小さな瑕瑾というものが、実は積もり積もって行政に対する大きな不信を招くわけでありまして、ご質問を多として、これからの対応を考えさせていただきます。ありがとうございました。
   〔警視総監石川重明君登壇〕

○警視総監(石川重明君) ご質問の二点についてお答えいたします。
 初めに、捜査に関するご質問でありますが、一般論といたしまして、警視庁におきましては、犯罪に該当する事実を把握すれば、速やかに捜査を行うことは当然であります。また、これまでそのように対応してきたと思います。
 しかしながら、お尋ねのような個々の事案につきまして、今後事件として捜査を行うかとか、現在捜査を行っているかというようなことに関しましては、答弁を差し控えさせていただきます。
 それから、次に、公務員の不正に関する刑事告発に対する対応についてのご質問でありますけれども、その告発の内容が公務員の不正であると否とにかかわりませず、当該告発に係る事実関係が刑事事件として成立するものなのかどうか。あるいは、その疎明資料は十分か否かといったような点につきまして十分に吟味して、要件が整った告発につきましては、これを受理するとともに、速やかに捜査を遂げて、検察官に送付することといたしております。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 補助金適正化法違反事件に関します二点にお答えいたします。
 まず、都議会議員の皆様からの要望についてでございますが、福祉局は幅広い事業を所管しており、広範な方々から多く提言や要望などを受けております。これらについては、福祉事業の運営や新たな施策の立案に当たっての意見として受けとめさせていただいております。
 次に、判決後に福祉局で行っている調査についてでございますが、判決のあった平成十四年十月十五日に、福祉局内に社会福祉法人西原樹林会に係る対策検討委員会を設置し、現在、同法人の施設整備費補助金の取り扱い及び同法人の運営の適正化について検討をしております。
 答弁はここまでですけれども、先生方にお許しをいただいて、一言話をさせていただきます。
 先ほど職員の名前が出ていたことで、私はちょっといいたくなったわけでございますけれども、本来、供述調書というのは、弁護士以外は持っていないものだと私は理解をしております。持っている弁護士は、目的以外には使えないはずだと私は思います。これは、もう少し突っ込んで、検察なりへ相談しなくちゃいけないことかもしれませんけれども。しかも、プライバシーの侵害に当たるような使い方は、絶対あってはならないというふうに思っております。
 大変申しわけございませんけれども、一言つけ加えさせていただきました。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 特別養護老人ホームの補助金にかかわる事件についての職員の処罰についてのご質問にお答え申し上げます。
 さいたま地方裁判所での判決が本年十月三十日に確定いたしましたので、本件事件に関係する職員について、現在調査を行っております。
 なお、今、福祉局長が申し上げましたように、本来あるべき調書でございますが、その調査が目的外に使用されることについては、私からも抗議を申し上げたいと思います。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) 旅券窓口業務に関するご質問にお答えいたします。
 旅券窓口業務に係る委託会社従業員によります旅券手数料着服という不祥事が起きまして、この件につきましては、私どもとして大変重く受けとめております。その再発防止と個人情報保護を一層徹底するため、委託業務の適正な執行を図っていきたいと思っております。事件後、直ちに、交付窓口における人員の複数配置の徹底と、旅券の在庫チェックの強化などの対策を実施いたしました。
 今後、さらに委託業務の責任体制を明確にするために、委託会社名、委託業務内容を窓口に提示し、委託従業員には写真入りネームプレートを着用させること、住所等を証明する書類により従業員の名簿の確認を行うことなどを含め、対策を検討してまいります。
 また、従業員に対する個人情報の保護についての研修も徹底してまいります。

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