平成十四年東京都議会会議録第十九号

   午後六時四十七分開議

○議長(三田敏哉君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 二十三番吉原修君。
   〔二十三番吉原修君登壇〕

○二十三番(吉原修君) 吉原修でございます。
 第四回定例会に当たり、数項目につきまして質問をさせていただきます。
 まず、多摩地域の振興という観点からお尋ねをいたします。
 東京都民の三分の一、約四百万人を有する多摩地域は、森林はもちろん、農地や樹林地など豊かな緑に囲まれ、温暖化防止など環境保全にも大きな役割を果たしております。
 石原知事は、今定例会の所信表明において、東京は、世界で最も集中、集積が進んだ大都市となり、多くの欲求を満たしてきた場所になると同時に、多くのものを失ってきた場所にもなった。その一つが自然環境であり、特に大気は、ここで歯どめをかけなければ回復不可能になってしまうと、環境問題に対する警鐘を強く示されております。
 このことは、多摩地域においても全く同様の事態となっております。この原因は、無秩序な開発や相続による緑地への宅地化が年々進んでおり、一向に歯どめがかかっていないことにあるわけであります。
 しかし、多摩地域に居住する者の生活の繁栄と地域の振興を図るには、多摩都市モノレールの延伸や南北道路の整備など、都市基盤整備のさらなる充実もこれまた必要であり、この対策をおろそかにすれば、区部との格差はますます大きくなるものであります。現在の区部と比べた多摩地域を見れば、繁栄と緑を保ちながらの自然との共存は可能であり、今ここで対応を怠れば、知事のいわれるように取り返しのつかないことになります。
 そこで伺いますが、快適な生活環境の整備と緑豊かな多摩都市の繁栄に考慮した、多摩の自然環境への保全への取り組みとこれを活用した施策を、今後どのように取り組んでいくのか、知事に所見をお伺いをいたします。
 次に、多摩地域における公園緑地について伺います。
 多摩地域等で都市計画決定されている公園緑地の状況を見ると、丘陵地を中心に、国から都市開発資金の貸し付けを受けて、都市計画局で先行取得されたままの土地が十カ所、約八十九ヘクタールあります。そのうち、平成十三年度までに国への定期償還が完了している面積は約十六ヘクタールとなっています。既に先行取得されたままの土地を事業化するためには、都市計画局から建設局への有償所管がえが、東京都の基本的ルールになっております。しかしながら、厳しい財政状況の中では有償所管がえが難しく、公園緑地としての整備が進まず、都民に使われない状況となっていることは、まことに残念でなりません。
 先行取得した土地は、都有地となっていることに何ら変わりはないわけであります。都有地となっている土地をいつまでも遊ばせておくことなく、都民のために有効活用する観点から、東京都のルールを変更すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 具体的には、私が住んでいる町田市にも昭和三十九年に都市計画決定されました百二十四ヘクタールの大戸緑地があります。この緑地は、地域の大切な緑である雑木林が生い茂る自然の豊かなところであり、既に将来的に公園としての位置づけもされているところでもございます。
 この大戸緑地には、都市開発資金の貸し付けを受けて、既に三十二ヘクタール先行取得した土地があります。この先行取得用地には、隣接して約二十二ヘクタールの敷地を有した町田市の社会教育施設である大地沢青少年センターがあります。この大地沢青少年センターと連携するなどして、幅広くこの土地を有効活用することができないのか、その方策についてお伺いをいたします。
 続きまして、都民に対する大震災時の飲料水の確保についてお伺いをいたします。
 総務局は、昭和五十一年度から、都民の居住地域から直線で約二キロメートル以内に少なくとも一カ所の給水拠点を確保する目的で、応急給水槽の建設を進めてまいりました。十三年度まで建設した応急給水槽は千五百トン槽が五十四基、百トン槽が十七基であり、充足率は九六%までに達しています。
 東京都地域防災計画によれば、震災時における飲料水の確保は、被害者の生命維持を図る上から極めて重要であるとされ、今後も、応急給水槽の不足地域の早期解消を目指して、応急給水槽の整備を進めていく計画であると記述されているとおり、整備を進めた結果、応急給水槽の不足地域である空白区域は、都内には約五十六平方キロメートルであり、そのうち、私の住む町田には三カ所で合計十六平方キロメートルあるわけであります。
 阪神・淡路大震災では、飲料水と生活用水の不足が住民の避難生活に重大な影響を与えました。南関東直下型地震の発生を想定すると、残り四%の空白地域にも早期に応急給水槽を建設し、空白区域の解消を図ることが急務と考えます。
 そこで、三十九万を超える町田市民は、三カ所の空白区域に応急給水槽の建設を要望しております。都は、この要望に対しどのように対応するのか、お伺いをいたします。
 次に、介護保険についてお尋ねいたします。
 去る十二月五日、東京都は、平成十五年度から十九年度までの五年間を計画期間とする第二期東京都介護保険事業支援計画の素案を、中間まとめという形で公表をいたしました。この介護保険事業支援計画とは、都が、保険者として介護保険事業を運営する区市町村を支援するとともに、事業運営が円滑に行われるような広域な立場から調整することを目的として、三年ごとに作成する重要な計画であります。介護保険制度施行後三年目に当たることし、初めて改定時期を迎えているものであります。介護保険制度も、第一期の三年間が導入期間とすれば、来年度から第二期は、制度の普及と定着のための三年間とも位置づけられます。
 そこでまず、今回の計画改定に当たっての都の基本的な考え方についてお伺いをいたします。
 また、昨日の代表質問で、我が党の宮崎章政調会長は、介護予防の重要性を指摘いたしましたところ、前向きな答弁をいただきました。今後の高齢化の進展を考えたとき、こうした介護を必要とする状態にならないための取り組みを積極的に展開していくとともに、その一方で、いざ寝たきりなどの状態になったときに、安心して介護が受けられるよう、在宅や施設の介護サービスもまた、量的にも質的にもますます充実していくことが求められております。
 なお、その際、社会保険制度として創設された介護保険の趣旨にかんがみ、サービスの充実に対応して保険料負担がふえるのはやむを得ない面もありますが、かといって、高齢者にとって過大な負担となっても困るわけであります。
 そこで、お尋ねいたしますが、今回の計画では、介護サービスの量はどれくらいふえて、また、それに伴って保険料の負担はどれくらいになるのか、お伺いをいたします。
 さらに、今後の高齢者人口の増加と、それに伴う寝たきりや痴呆などの要介護者の一層の増加が見込まれるなど、介護保険を取り巻く状況も、これからますます困難が予想されます。今回の中間まとめの中では、平成十二年四月の介護保険制度の導入以来、要介護認定者数の推移を初め、在宅、施設の各サービスの利用実績、さらには苦情の状況に至るまで、幅広くかつ詳細な分析が行われています。
 そこで、制度開始以来のこの二年半の実績を踏まえ、二期目に向けた介護保険の課題とはどういうものがあるのか、また、その対応について所見をお伺いいたします。
 次に、交通局の電気事業について伺います。
 交通局は、西多摩地域に三つの発電所を所有し、直営で運営しております。小河内ダム直下の多摩川第一発電所、白丸調整池ダムの放流水を使った白丸発電所、白丸調整池ダムから水を導入して発電している多摩川第三発電所であります。第一発電所が昭和三十二年、第三発電所が昭和三十八年、そして、白丸発電所は一昨年の平成十二年に建設をされました。交通局における現在の電気事業の歴史は、何と四十年を超えているのであります。
 これらの発電所から送電された電力は、東京電力の送電網を介して広く西多摩地域に供給され、都民の福祉の増進に寄与していると思います。
 しかしながら、電気事業は今日、自由化の時代を迎えており、多くの民間事業者が電気事業に参入しているところであります。こういう状況の中で、費用対効果が最も重要な時代に、十二億円ものお金をかけながら、平成十二年になぜ白丸発電所を建設する必要があったのか、その経緯と意義について見解をお尋ねいたします。
 次に、現在交通局では、発電電力を東京電力に売却する一方、都営地下鉄などの動力源として東京電力から電気を購入しているわけであります。しかも、その購入価格は販売価格よりも割高になっており、こうした状況を踏まえれば、東京電力に送電経費を払って、自己発電、自己消費という方式をとる、あるいは全庁的な見地に立って、交通局以外の事業所などに安価な発電電力を供給する、さらには、都立病院が公社化や民営化を含めた組織の再編を進めているように、発電所の民間への売却であるとか、あるいは全面的な委託化といったものも含め、幅広く検討をする必要があると思っております。
 このような方法を直ちに採用することが困難であることは十分承知しておりますが、今後の電力が自由化に向かい、規制緩和や行政改革が進展する中、交通局の電気事業は今、大きな転換期に来ていると思っています。交通局は、これらの方策の実現に向けて積極的に検討を進めるべきではないでしょうか。
 以上、交通局における電気事業の今後のあり方をどう考えているのか、見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 吉原修議員の一般質問にお答えいたします。
 多摩の自然環境の保全とその活用についてでありますが、多摩地域は、自然と市街地が融合しながら独特の魅力を醸し出しておりまして、区部とは歴然と違う特質、いい意味での三多摩格差も構えているわけでありまして、特に奥多摩から他県に広がる山岳地帯は、アメリカのアパラチア山脈によく似ていまして、都会に近接していながら、都民の憩いの場となって、非常に美しい豊かな自然を残しております。
 また、身近なところに起伏に富んだ丘陵がありまして、湧水や崖線、温泉などの貴重な自然が存在しております。こうした貴重な自然資源を保全して、もっと積極的に活用することによって、多摩地域の発展の可能性を引き出し、多くの人々にとって魅力的な個性のある地域として育てていきたいと思っております。
 特に、大分先のことになるかもしれませんが、環状線が完成しますと、はるかに三多摩に対するアプローチが容易になりまして、あの地域の新しい開発、発展の大きなよすがになると思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁します。
   〔都市計画局長勝田三良君登壇〕

○都市計画局長(勝田三良君) 先行取得した土地の有効活用についてのご質問にお答え申し上げます。
 先生ご指摘のように、都市開発資金会計で先行取得した用地を、事業着手のために一般会計へ所管がえを行う場合には、東京都公有財産規則によりまして、原則として有償で整理することが定められております。
 しかしながら、所管がえ以前であっても、先行取得用地をできる限り有効活用することが望ましいと考えられますので、具体的な活用方法等について関係部署と検討するとともに、都市開発資金償還前の用地については、国と協議をしてまいります。
 なお、お尋ねの公園緑地用地として先行取得した用地につきましては、雑木林の手入れ等、維持管理の目的に即した都民利用であれば可能であると考えております。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 大戸緑地内の先行取得した土地の有効活用についてでございますが、多摩丘陵の西の端にあります大戸緑地は、神奈川県との都県境を流れる境川の源流域に位置し、豊かな雑木林に覆われた面積百二十四ヘクタールの都市計画緑地でございます。都では、これまで全体の二六%、三十二ヘクタールの用地を都市開発資金により先行取得してまいりました。
 今後、計画緑地内にございます大地沢青少年センターを所管する町田市と連携し、ボランティアの協力を得て、雑木林の手入れや自然観察を行うなど、貴重な緑の保全と都民の利用に積極的に取り組んでまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 応急給水槽に関します質問にお答え申し上げます。
 震災時の飲料水の確保は極めて重要であります。これまで浄水場、給水所の活用や応急給水槽の設置などによりまして、応急給水体制の充実に努めてまいりました。その結果、充足率は、ご指摘のとおり都全域で九六%となっております。
 空白区域におけます効率的な応急給水体制を検討するため、早期に、東京都の応急給水のあり方に関する調査を実施し、実態の把握に努めてまいります。
 今後、この調査結果を踏まえまして、町田市を初め、残された空白区域の状況に応じまして、応急給水槽を含め、効率的な手法により解消に努めてまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 介護保険に関します三点のご質問にお答えいたします。
 まず、介護保険事業支援計画改定の基本的な考え方についてでございますが、第一に、地域、選択、競い合い、この三つをキーワードとした利用者本位の新しい福祉を介護サービスの分野においても実現すること、第二に、都民が主体的に介護に取り組み、できる限り自宅で自立した日常生活を営めるように、真に必要な介護サービスを総合的、一体的に提供する仕組みを実現すること、この二点を基本理念として、中長期的に安定した制度となることを目指して計画を改定するものでございます。
 次に、介護サービス量と保険料の見込みについてでございますが、平成十四年十月時点における保険者である区市町村の推計によりますと、平成十三年度と平成十九年度の比較において、東京都全体で在宅サービス利用者は、約十三万人が二十四万人となり、八五%増加します。施設サービス利用者は、約四万七千人が約六万九千人となり、四八%増加するなど、在宅サービスの大幅な増加を見込んでおります。
 一方、平成十五年度から平成十七年度までの次期三カ年の保険料については、都の平均で、現行の三千五十六円が三千三百五十七円となり、九・八%増額するものと試算をしております。
 次に、介護保険の第二期に向けた課題と対応についてでございますが、第一に、介護支援専門員によるケアマネジメントが不十分であること、第二に、基盤整備が不足しているサービスがあること、第三に、利用者が安心してサービスを利用できる仕組みが十分機能してないこと、この三点などが大きな課題であると認識をしております。
 これらの課題に対して、都としては、地域における保健、医療、福祉の連携の核となる介護支援専門員への研修の充実、痴呆性高齢者グループホームなど不足しているサービス基盤整備の促進、利用者がサービスを安心して選択できるよう、第三者評価システムの普及、定着などの取り組みを積極的に進めてまいります。
   〔交通局長松尾均君登壇〕

○交通局長(松尾均君) 電気事業に関するご質問にお答えいたします。
 まず、白丸発電所についてですが、同発電所に隣接している白丸調整池ダムの貯水は、多摩川第三発電所の発電用として利用するとともに、下流の景観や環境を保つために、最大毎秒五トンを放流しております。この流水を有効活用し、クリーンエネルギーの供給に寄与するため、平成五年に建設計画を策定し、同十二年に完成したものでありまして、一千世帯相当分の発電をしております。
 次に、電気事業の今後のあり方についてですが、現在の電気事業は、昭和二十九年に都議会におきまして議決をいただいた東京都電気事業基本計画に基づき発足したもので、以来、西多摩地域の電力の安定供給に寄与してきております。
 一方、ご指摘のような電力の自由化に伴いまして、平成二十二年以降は、現行制度の変更が予定されております。今後ともその動向を踏まえながら、一層の経営の効率化はもちろん、将来の方向性について多面的に検討してまいります。

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