平成十四年東京都議会会議録第十四号

平成十四年九月三十日(月曜日)
 出席議員(百二十三名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番秋田 一郎君
四番矢島 千秋君
五番北城 貞治君
六番山加 朱美君
八番後藤 雄一君
九番福士 敬子君
十番伊沢けい子君
十一番執印真智子君
十二番馬場 裕子君
十三番初鹿 明博君
十四番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
十九番ともとし春久君
二十番萩生田光一君
二十一番串田 克巳君
二十二番小美濃安弘君
二十三番吉原  修君
二十四番山田 忠昭君
二十五番臼井  孝君
二十六番野島 善司君
二十七番服部ゆくお君
二十八番中西 一善君
二十九番山口 文江君
三十番真木  茂君
三十一番花輪ともふみ君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番織田 拓郎君
三十七番藤井  一君
三十八番東野 秀平君
三十九番中嶋 義雄君
四十番松原 忠義君
四十一番田代ひろし君
四十二番三宅 茂樹君
四十三番川井しげお君
四十四番いなば真一君
四十五番近藤やよい君
四十六番高島なおき君
四十七番吉野 利明君
四十八番倉林 辰雄君
四十九番遠藤  衛君
五十番新井美沙子君
五十一番相川  博君
五十二番樋口ゆうこ君
五十三番富田 俊正君
五十四番福島 寿一君
五十五番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番鈴木貫太郎君
六十番森田 安孝君
六十一番曽雌 久義君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番野田 和男君
六十五番三原 將嗣君
六十六番中屋 文孝君
六十七番真鍋よしゆき君
六十八番林田  武君
六十九番高橋かずみ君
七十番樺山 卓司君
七十一番大西 英男君
七十二番田島 和明君
七十三番野村 有信君
七十四番大河原雅子君
七十五番林  知二君
七十六番土屋たかゆき君
七十七番青木 英二君
七十八番河西のぶみ君
七十九番中村 明彦君
八十番大山とも子君
八十一番吉田 信夫君
八十二番曽根はじめ君
八十三番橋本辰二郎君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番比留間敏夫君
八十八番古賀 俊昭君
八十九番鈴木 一光君
九十番こいそ 明君
九十一番星野 篤功君
九十二番山本賢太郎君
九十三番花川与惣太君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十八番藤田 愛子君
九十九番坂口こうじ君
百一番藤川 隆則君
百二番小林 正則君
百三番東ひろたか君
百四番池田 梅夫君
百五番渡辺 康信君
百六番木内 良明君
百七番石井 義修君
百八番中山 秀雄君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番新藤 義彦君
百十二番宮崎  章君
百十三番山崎 孝明君
百十四番松本 文明君
百十五番佐藤 裕彦君
百十六番川島 忠一君
百十七番矢部  一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番大西由紀子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番田中  良君
百二十四番和田 宗春君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(三名)
七番   柿沢 未途君
九十七番 大山  均君
百番   名取 憲彦君
 欠員
百二十五番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山 やすし君
副知事濱渦 武生君
出納長大塚 俊郎君
教育長横山 洋吉君
知事本部長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長田原 和道君
警視総監石川 重明君
主税局長安間 謙臣君
生活文化局長三宅 広人君
都市計画局長勝田 三良君
環境局長小池 正臣君
福祉局長川崎 裕康君
健康局長長尾 至浩君
産業労働局長有手  勉君
住宅局長橋本  勲君
建設局長小峰 良介君
消防総監杉村 哲也君
港湾局長高橋 信行君
交通局長松尾  均君
水道局長飯嶋 宣雄君
下水道局長鈴木  宏君
大学管理本部長鎌形 満征君
病院経営本部長櫻井  巖君
中央卸売市場長碇山 幸夫君
選挙管理委員会事務局長押切 重洋君
人事委員会事務局長高橋  功君
地方労働委員会事務局長立花 壯介君
監査事務局長中山 弘子君
収用委員会事務局長平井 健一君

九月三十日議事日程第四号
第一 第二百三号議案
  心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第二 第二百二号議案
  老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例

   午後一時一分開議

○議長(三田敏哉君) これより本日の会議を開きます。

○議長(三田敏哉君) まず、東京都議会海外調査団について申し上げます。
 本議会において、去る九月二日から十一日まで、ロンドン、ウィンダミア、コペンハーゲン及びミュンヘンへ海外調査団を派遣いたしました。
 海外調査団を代表いたしまして、報告のため、発言の申し出がありますので、これを許します。
 三十六番織田拓郎君。
   〔三十六番織田拓郎君登壇〕

○三十六番(織田拓郎君) 平成十四年度の都議会海外調査団の報告をさせていただきます。
 平成十四年九月二日から十一日までの十日間の日程で、イギリスのロンドン、ウィンダミア、デンマークのコペンハーゲン、ドイツのミュンヘンの各都市を訪問いたしました。調査団は、森田安孝団長を中心に、中嶋義雄議員、そして私、織田拓郎の三名でございます。
 以下、調査内容についてご報告いたします。
 ロンドンでは、まず、市南西部にあるサトンのショップモビリティーを視察いたしました。
 ここは、約六十店舗のショッピングモールを中心に、三百店舗から成る商業地域でありますが、ハード面では、出入り口の自動ドア化、段差解消、サインボードの設置など、ソフト面では、電動カートや電動車いすの貸し出しやボランティアスタッフの常駐化など、エリアの完全バリアフリー化を図り、体の不自由な方々でも自由に移動し、買い物を楽しめる空間を創出しております。通路や店内も電動カートが動きやすいように広くとられ、エリアの中心道路であるハイストリートも、一キロメートルにわたり車両通行どめとなっております。
 電動カートの利用は、二ポンド、約四百円の保証料を払って登録をいたしますと、いつでも自由に利用でき、登録会員は六千人に達しております。人口十七万人のサトンには、七千七百人の障害者と三千八百人の八十五歳以上のお年寄りが暮らしており、その半数近くが登録者という数字は、ショップモビリティーがこの町に深く定着をしていることを示しています。
 運営に当たるショップモビリティーリミテッドは、会員登録料を初めとするチャリティーを中心に、自治体の助成、宝くじの売上助成などで資金を賄っておりますが、高齢者、障害者が気楽に町に出かけられるという福祉面の効果のみならず、商店街が活性化されるという効果、さらには福祉予算の軽減にも貢献するという効果もあらわれております。
 次に、一九八〇年代から再開発が行われてきたドックランドの現状を視察するために、ワッピング、アイルオブドッグス、カナリーワーフ、ロイヤルドックなどを訪れました。
 ロンドンの金融街に隣接するこれらのドックランドは、古くは古い荷受け港で、倉庫街でありましたが、今では高層ビルが立ち並ぶ町へと変貌しつつあり、イギリス経済の活性化に一役買っております。
 しかしながら、開発の歴史は単調ではなく、行政機関による官製開発がとんざし、後を引き受けた第三者機関が企業誘致に取り組むなど、民間的手法を駆使して、ようやく軌道に乗せたところでありました。その間、約二十年以上の歳月がかかっており、都市再開発の効果を享受するには、時間をかけた息の長い取り組みの必要性を痛感いたしました。
 次いで、英国のナショナルトラスト発祥の地の一つであるウィンダミアを訪問いたしました。
 一八九五年に設立されたザ・ナショナルトラストは、野方図な開発や工業化を憂い、開発の危険にさらされた田園地帯や建造物を取得し、保護する事業を展開しております。百年以上を経た今日、ナショナルトラストは、二百以上の歴史的建造物、二十五万ヘクタールの自然景観、千キロメートルの海岸線などを保有しており、世界遺産に指定されているものも五件あります。英国の人口の五%に当たる約三百万人の会員を擁し、日常的にボランティアで業務に当たっている人は四万人を数えます。各保存物への有料入場者数は年間一千百万人、無料となっている子どもたちや会員の入場者をカウントすると、合計五千万人にも及ぶといわれます。
 訪れたウィンダミアでも、あちこちにナショナルトラストの保有物であることを示すマークが見られ、そこでは建物の手入れや切符切り、お土産の売り子など、多くのボランティアが働いておりました。本来、自然保護や歴史的建造物の保全といった事業は公共機関が行うものと思いますが、民間慈善団体であるナショナルトラストは、公共的業務を代行しているわけであります。そして、その活動を支えるのが、会員や一般国民からの寄附であり、奉仕の精神であるところに、英国の奥深さを感じました。
 今後、我が国においても、人々の善意をきちんとした形として活用することが大きな課題であるとの思いを深くしたところであります。
 続いて、デンマークのコペンハーゲンでは、市の担当者から社会保障分野の施策を聴取いたしました。
 デンマークでは、医療はすべて無料、在宅介護など高齢者のケアも無償、教育も、義務教育、高等教育を通じて無料で行われているほど、公的扶助が手厚い国でありますが、一方、税負担も、直接税が平均五〇%程度、これに消費税二三%が加わり、負担も大きい。
 こうした中で、コペンハーゲンでは、二十八万戸の住宅のうち、半数が二部屋以下という住宅事情から、貸し庭ともいうべきクラインガルテンが大人気でありました。この貸し庭には、短期滞在できる小屋が立ち並び、週末などに家族団らんの場として重宝されているようであります。すべてが核家族を中心に組み立てられてきた制度の隘路をかいま見る思いでありました。
 最後の訪問地であるミュンヘンでは、アウグスブルグ廃棄物処理会社を訪問、欧州で最も近代的施設といわれる廃棄物処理工場を視察いたしました。
 同社は、アウグスブルグ市など一市六県において、ごみ収集から処理、処分まで請け負っております。その業務の中核となる処理施設は、廃棄物の選別工場、コンポスト製造工場、ごみ焼却工場から成り、年間約三十二万トンの処理能力を持っています。選別段階では、紙、金属、プラスチック、その他を機械でえり分け、生ごみや枯れ葉などはバイオ処理で堆肥化し、残りの廃棄物は焼却し、同時に生じる熱エネルギーも活用するシステムで、一九九四年、約四億ユーロをかけて建設をされました。
 建設費用が高額になったのは、燃焼温度を九百度から九百五十度と高く設定したことと、ハイレベルの排気ガス浄化装置を設置したからといわれます。このため、ダイオキシンなど、ドイツ国内の厳しい基準をはるかに超える良好な数値の排ガスとなっています。
 ごみの分別収集を行わず、処理工場で選別する方式や、焼却後のスラグを岩塩層へ埋設するため、最終処分場の心配が要らないなど、我が国との差異は小さくありませんが、地球環境という点では、有意義な視点が多々ありました。
 ただ、近い将来、瓶、缶など容器のデポジット制が導入されることから、採算性の問題が浮上しておりました。廃棄物処理を含め、環境対策においては、多くの施策が講じられますが、全体に目配りした整合性ある施策展開が不可欠との印象を持ちました。
 今回、各都市を訪問して感じたことは、共通して観光に力を入れているということでありました。いずれの都市でも、町並みや建造物、文化など、町そのものを観光資源として十分に活用していることであります。交通規制やバスの停留所一つをとっても、非日常的な訪問者を意識して工夫されています。EC域内の交流が促進され、人の往来がふえると、それに付随して金も物も動きます。二十一世紀の最大の産業は観光といわれますが、我が国にも必要な視点であることを痛感した次第であります。
 今回の調査の詳細につきましては、後日、海外調査報告書として取りまとめ、配布をさせていただきたいと存じます。
 以上、概略の報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。

○議長(三田敏哉君) これより日程に入ります。
 日程第一及び第二、第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例外議案一件を一括議題といたします。
 本案に関する委員会審査報告書は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。

   厚生委員会議案審査報告書
 第二百二号議案
  老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
 第二百三号議案
  心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
 本委員会は、九月二十六日付託された右議案を審査の結果、原案を可決すべきものと決定したので報告します。
  平成十四年九月二十七日
         厚生委員長 曽雌 久義
 東京都議会議長 三田 敏哉殿

○議長(三田敏哉君) これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、順次発言を許します。
 十五番河野百合恵さん。
   〔十五番河野百合恵君登壇〕

○十五番(河野百合恵君) 私は、日本共産党を代表して、第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例並びに第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例に、反対の立場から討論を行います。
 先行きの見えない厳しい不況のもとで、国民の暮らしが大変な事態になっているときに、小泉内閣は、高齢者の医療費の負担を大幅に引き上げる老人保健法の改悪を行いました。その上さらに、介護保険料の値上げや、年金支給額の切り下げなど、三兆円を超える社会保障の負担増を計画しています。このようなときに、国の悪政から住民の暮らし、福祉を守るのが、地方自治体の果たすべき役割ではないでしょうか。
 ところが、今回提案された第二百二号議案、二百三号議案はいずれも、老人保健法の改悪に連動して、患者負担上限額を大幅に引き上げるものでした。高額所得者への二割負担を導入しないのは当然のことであり、それにとどまらず、患者負担をふやさないための根本的な対応こそ、東京都に求められていたのです。
 老人保健法をめぐる参議院の参考人質疑で、与党から推薦を受けた日本医師会の常任理事の方は、高額所得者への二割負担導入だけでなく、一割定率負担にも、患者負担上限額の引き上げにも、断固として反対をしたいと表明されました。その理由として、入院以外の、特に在宅の医療における高齢者の負担は極めて重い負担になり、高齢者が安心して医療の提供を受けられなくなる可能性があると述べています。
 第二百二号議案は、このように高齢者に重い負担増となり、そのことが診療抑制につながるものであり、我が党は反対するものです。
 都の老人医療費助成、マル福は、これ以上の負担増をやめると同時に、段階的廃止という決定そのものの是非にさかのぼって再検討し、もとどおりの制度で存続させてほしいという多数の都民の率直な願いにこたえるべきことを申し述べておきます。
 次に、第二百三号議案ですが、生きるために医療がどうしても欠かせない、文字どおりの命綱である障害者の医療費まで、老人保健法の改悪に連動して引き上げるという、全く道理がないものであり、認めることはできません。
 住民税非課税の方は、引き続き入院食事代のみとされていますが、それでも今回の制度改定の影響を受ける障害者は二万人以上に及びます。
 そもそも、石原都政のもとで、障害者福祉と全く趣旨が違うのに、老人保健法に準拠すると自己負担を持ち込んだことが、根本的な間違いです。しかも、我が党が明らかにしたように、全国の三十四府県が医療費も入院食事代も無料であり、障害者医療費助成は、無料制度こそが全国的な大きな流れです。東京は全国で一番患者負担が重い制度となっている上、国が老人保健法を改定するたびに、障害者の医療費まで連動して負担がどんどんふえる仕組みになっているのは東京都だけであり、本当に異常なことといわざるを得ません。
 障害者と家族の方々から、子どもが生まれて十一年、何度も肺炎にかかり入院し、病院なしの生活は考えられません。私たちの生活をよくご理解いただいて、何事も決定してください。通院は生活の一部です。医療費の負担は重くのしかかるばかりです。医療費助成について考え直してください、などの切実な訴えと要望が寄せられています。
 福祉局は、患者負担の平均値で見ると、今回の改定による影響は少ないとの認識を示しましたが、それは、こうした障害者と家族の方々の実感といかにかけ離れた冷たい姿勢かを示すものです。
 切実な願いにこたえる最低限の第一歩として、障害者と家族の生活実態と医療費の実態調査を直ちに行うことを求めておきます。
 また、今定例会の質疑を通し我が党が提案したように、障害者医療費助成は、これ以上の負担増をやめ、無料制度に戻す必要性がいよいよ浮き彫りになりました。全国三十四府県が無料制度であるだけでなく、給付対象や所得制限を見ても、都が対象としていない身体障害三級に対象を広げているのが十四県、所得制限なしが十三県と少なくありません。このような努力に目を向け、無料制度に戻すと同時に、制度の一層の拡充に取り組むことこそ重要です。
 質疑の中で、他の県に比べ、都の制度の優位性は、市町村への補助事業ではなく、都が直接実施していることだとの福祉局の答弁もありましたが、これは重要なことです。そうであるなら、他の福祉分野にも、都が直接実施する事業をもっとふやしていく必要があることを指摘しておくものです。
 最後に、国が社会保障の大幅な負担増や庶民増税を進めようとしているときに、東京都政が、都民の福祉、暮らしを守り抜く姿勢に立って、自治体本来の役割を発揮することを強く求めて、討論を終わります。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 二十一番串田克巳君。
   〔二十一番串田克巳君登壇〕

○二十一番(串田克巳君) 私は、東京都議会自由民主党を代表して、今回、知事より提案されている二件の条例案、第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例と第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例について、賛成の立場から討論を行います。
 本格的な少子高齢社会を迎え、国民の医療に対するコスト意識を高めるとともに、高齢者を一律、弱者とみなすのではなく、年齢にかかわらず、負担能力のある者が制度を支えるという仕組みに転換することが重要な課題であります。
 ところで、今回の老人保健法の改正のうち、特に自己負担限度額については、従来の定額制だと、窓口負担は一回が八百五十円で、一カ月分の上限は四回の計三千四百円という仕組みでした。それが今回の改正では、かかった医療費の一割負担、高所得者は二割で、一般の場合だと限度額が一万二千円になります。改正に反対する会派は、その金額だけを見て、改悪だといい張っております。
 従来、自己負担限度額は外来、入院別に医療機関等ごとに、また世帯の限度額は、入院費用のみを対象としたものから、今回の改正では、外来は医療機関等を通じた個人ごとの限度額、さらに世帯における負担の限度額が、入院費用に加えて外来における負担も含めたものとして設定されたものであります。
 つまり、定額制が廃止されたものの、一カ月の支払い限度額が個人ごとに設定されたことにより、複数の医療機関にかかっても、外来は一般の方で一万二千円で済むのです。また、同一月に、配偶者等の同一世帯の高齢者も含めてでありますが、従来合算できなかった外来と入院にかかった自己負担額を、改正後は世帯で合算して、一般の高齢者世帯で四万二百円の負担でよくなりました。これなども、故意に金額だけの比較を取り上げて誇張しており、判断を誤らせるもとです。
 さて、心身障害者の医療費の助成に関する条例の改正については、この制度の対象者は、現在、十一万四千人といわれております。そのうち、所得の関係から、八二%に当たる約九万四千人の方に対して都が医療費全額を助成、所得の高い残る二万人の方が、老人保健法に準じた自己負担をするわけです。
 この自己負担の問題について、共産党は、二年前の制度の見直しの議論を蒸し返すような形で、制度をもとに戻せとばかり、条例の一部改正案を提案しました。だれでも、負担をするのとしないのと、どちらをとるかと問われれば、負担をしない方がよいに決まっているわけです。
 一方、障害者の方の医療費は、月平均すると二万五千二百円、本人の負担額はその一割の二千五百二十円ということであります。従来は、月平均二・九回の外来受診で一回八百五十円なので、合計すると二千四百六十五円であり、現行とほぼ同程度で、平均すると自己負担は変わらないということになります。
 さらに、他県と比較していますが、これも内容をきちんと把握して物をいうべきだと思います。幾ら本人の自己負担がなしといっても、所得制限が東京よりも厳しい県が、青森、福島など十二県もあります。これでは、幾ら自己負担がなくても、制度の対象になれないのであります。
 また、他県では市町村への補助事業であるのに対し、東京の場合は全額都の負担で、都が責任を持って全区市町村で実施しているということであります。
 このように、自己負担の有無など、ある特定の事項だけで制度の優劣を議論するのは間違いであり、こうした制度の仕組みをも考慮すべきであります。こうした点からすれば、都の制度は、他県に比べてまさっているといえるのではないでしょうか。
 次に、老人の医療費の助成に関する条例の改正についてですが、今回の改正のポイントは、老人保健法で導入された一定以上の所得者の自己負担を二割にすることについて、この条例に適用するかどうかという点であります。
 先ほども述べましたように、これからは、高齢者を一律弱者とみなすのではなく、負担能力のある高齢者には相応の負担をお願いすべきであると考えます。しかし、よく考えてみると、この条例は二年前に見直しの論議がされ、既に廃止が決定されたものであり、現在、経過措置中なのであります。そのような状況の中で条例改正であるので、最低限にとどめることが必要であると考えます。
 以上、我が党は、今回の提案の二つの条例改正案に賛成するものであり、今後も引き続き福祉改革への取り組みを一層推進していくことを申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 二十九番山口文江さん。
   〔二十九番山口文江君登壇〕

○二十九番(山口文江君) 私は、都議会生活者ネットワークを代表して、本定例会に付託された第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例に反対、第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例に賛成の立場から討論します。
 いうまでもなく、今回の案は、政府の医療制度の改定に伴うものであり、第一の論点は、この点にあります。日本の医療制度は、実効ある改革がほとんどなされず、少子化と経済の低成長化により、年金を含む社会保障制度の安定を図るという理由で場当たり的な対策が繰り返され、給付は軽く、負担は重くなってきています。国民、患者は、一方的に負担を押しつけられ、患者の利便に資するような抜本的な制度改革がなされぬまま、国民の負担感ばかりが高まっています。
 私たちは患者の一定程度の負担増を全く認めない立場ではありませんが、納得のいく将来ビジョンと合意のプロセスは、厳しく問われるものと考えます。そうでなければ、社会保障制度に対する国民の信頼は望めず、加入者が保険料を払う気がなくなれば、制度はすぐに崩壊してしまいます。今回の健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う自己負担増の先行きは、この納得のいく将来ビジョンと合意のプロセスという条件を無視したものといわざるを得ません。
 第二の論点は、この制度改定に伴う都の姿勢の問題です。
 都では、一九七四年、心身障害者医療費助成制度は、障害者が安心して医療を受けられるようにと、自己負担分の全額を都が負担する制度としてスタートしましたが、それは、国の福祉制度に問題があるからにほかなりません。二〇〇〇年には、負担の公平を図るとして自己負担が導入され、さらに今回は、一般の通院自己負担限度額の上限を三千四百円から一万二千円と約三倍とするものです。
 しかし、根拠は国の横引きで、障害を持つ人、特に高度医療を要する重度、重症の人にとっては、さまざまな経済的負担が予測される現在の社会状況にあって、大変厳しい状況に置かれることになります。増額の対象は一部の人であるとしていますが、障害を持つ人にとっては極めて厳しい制度改正であるといえます。少なくとも自治体として、障害者の自己負担の上限に配慮するなど、さらに政治決断すべき課題はあったはずです。
 最大の問題は、プロセスと説明責任の問題です。制度改定は、当事者も含めて合意を目指すべきで、その医療費負担と生活実態をリンクした総合的な調査のもとに障害者のニーズを把握し、当該団体との十分な協議を確保しつつ改定を提案すべきです。
 各種の調査はありますが、多様な生活スタイルが可能な現代では、従来の実態を把握するだけの手法では、説明責任は果たせないとともに、行政に旧態依然として残っている施しとしての福祉から脱却できないということを強く申し上げて、都議会生活者ネットワークを代表しての討論とさせていただきます。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 二番東村邦浩君。
   〔二番東村邦浩君登壇〕

○二番(東村邦浩君) 私は、都議会公明党を代表して、知事提出の第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例及び第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例について、賛成の立場から討論を行います。
 明十月一日からの医療制度改革の実施により、老人保健法については、この法に基づく医療の対象年齢を七十歳から七十五歳に引き上げ、一定以上の所得者に対する負担を一割から二割に引き上げるとともに、自己負担限度額にかかわる所得区分を現行の三区分から四区分へと変更されることになっております。
 そこでまず、第二百二号議案についてでありますが、現在、老人医療費助成制度により、都は、老人保健法の適用を受けない六十五歳以上七十歳未満の高齢者に対して、医療費自己負担を一割にとどめるため、差額助成の措置を講じておりますが、今回の条例改正のポイントは、老人保健法で導入された一定以上の所得者の自己負担を二割にすることについて、当条例に適用するかどうかという点であります。
 当条例は、二年前に見直しの論議がされ、既に廃止の決定がされたものであり、現在、経過措置中であることにかんがみ、現行の一割負担で維持するための改正となっているもので、賛成いたします。
 第二百三号議案については、心身障害者の医療費助成に関して同様の改正を行い、自己負担限度額の所得区分の見直しを行わず、低所得者の負担増に配慮したものとなっており、改正案に賛成いたします。
 現在、心身障害者医療費助成制度の対象者は十一万四千人でありますが、そのうちの八二%を占める住民税非課税の九万四千人に対して、医療費の自己負担分の全額を都が助成しています。残る二万人の方についても、その所得状況に応じて、医療保険制度の中で最も負担の軽い老人保健法に準じて、高齢者と同程度の自己負担になっています。
 自己負担についても、障害者の方の医療費は、平成十三年度実績では一カ月に二万五千二百円であり、多くの医療機関が一回当たり八百五十円の定額制を採用しているため、平均月二・九回の外来受診で自己負担額は二千四百六十五円となっており、今回の改正により、定額制が廃止されて、定率一割の負担となって一カ月の限度額が一万二千円になるとしても、平均で二千五百二十円であり、その負担額はほとんど変わらないこととなります。さまざまな受診形態があるにしても、自己負担限度額やその算定方法が改正されても、平均の自己負担額は変わらない結果となります。
 昭和四十年代に開始された本制度を、その後の社会経済情勢の変化の中で、都として引き続き維持していくために、制度の対象者の八割の方の自己負担をなくし、所得が一定以上の方のみを無理のない負担の対象とする施策に理解を示すものであります。
 一方、共産党は、こうした事実を直視することなく、いたずらに都民に不安をあおる主張を繰り返しています。例えば同党からは、制度をもとに戻せとする内容の条例改正案が提案されましたが、このことは、二年前の制度改正見直しの際に議論し尽くされたものであり、単なる議論の蒸し返しにすぎません。
 すなわち、二年前の福祉改革の論議の中で、我が党はこれを先導する形で福祉改革推進プランとしてまとめ上げ、五年間で五千二百億円を投入するとする同推進プランを策定したのであります。さまざまな子育て施策の拡充、そして、高齢者については、元気高齢者倍増作戦の展開、障害者については、親亡き後の不安解消のために、三年で二百カ所の障害者施設をつくることになったのであります。
 共産党の主張は、こうした都の福祉改革努力を全く無視した暴論としかいいようがないのであります。
 また、自己負担額増についても、先ほど明快に指摘した事実を全く無視するものであります。
 さらに共産党は、他の県との比較を挙げますが、各県における事業の実態を抜きにした引用であります。すなわち、他の四十六道府県における心身障害者医療費助成制度がすべて市町村事業に対する補助制度であるのに対し、東京都だけが、直接実施主体として助成経費の全額を都費で賄い、都の責任で実施しているのであります。このことは、障害者や家族にとっての大きな安心感となっています。他の県で幾ら本人の自己負担がないとしても、所得制限が東京都よりも厳しいところがあり、自己負担がないというのも、入り口が狭ければそもそも制度の対象者にはなれないという厳しい現実もあるのであります。
 さらにいえば、ちなみに、対象者の範囲についても、身体障害者に関しては、一級、二級を対象としている自治体が大勢を占める中、都は、医療ニーズの高い内部障害者の三級までをも対象としている特徴があります。
 共産党提案による改正案は、さきの二十六日、本会議で否決されましたが、重ねて申し上げます。誤った認識に基づき、著しく政策的整合性を欠く共産党の主張は、到底実態に即したものとはいえず、いたずらに都民の不安を助長するものであり、断じて認めるわけにはいきません。
 我が党は、より豊かな福祉社会を築くため、さらに都民の期待にこたえていく決意を表明し、賛成討論を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 五十五番大塚隆朗君。
   〔五十五番大塚隆朗君登壇〕

○五十五番(大塚隆朗君) 私は、都議会民主党を代表して、第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例、第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例について、原案に賛成の立場から討論を行います。
 まず、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例について申し上げます。
 法改正により、本年十月一日から、老人保健法による医療の対象年齢が七十五歳以上の方へと段階的に引き上げられることとなり、一定以上所得者に対する負担も二割へ増加など、高齢者に負担増を求めるものとなっております。
 しかしながら、東京都が独自に行っている老人の医療費助成制度においては、一定以上所得者の一割から二割への負担増については適用しない、対象年齢を七十歳未満の方とするなど、負担の軽減を図るものとなっております。こうしたことからこの条例案に賛成するものです。
 次に、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例について申し上げます。
 条例改正では、現行制度において医療費助成を受けている十一万四千人の障害者のうち、九万四千人の方々は引き続き入院時の食事代を除いた無料制度は維持されます。老人保健法に準じた高齢者と同様の負担をしている二万人の障害者のうち、法改正により影響があるのは、定額届け出制の診療所に通院している方と、自己負担限度額を超える医療サービスを受けている方です。
 定額届け出制の診療所は、月四回を限度に一回八百五十円の負担から定率一割負担と変わりますが、十三年度の障害者に係る医療費の実績で平均額を見てみると、障害者の負担額はほとんど変わりません。もちろん平均額ですので、複雑で高度な医療を要する重症な障害者の負担がふえるとの指摘もありますが、むしろ重症な障害者は、届け出制の診療所ではなく、一般病院や大病院に通院しているのではないでしょうか。
 また、自己負担限度額を超えるような医療サービスを必要とする障害者については、大病院で五千三百円の限度額が一万二千円となりますが、これまで病院ごとに設定されていた限度額が、世帯ごとの上限額となることで、複数の医療機関に通っている障害者にとっては、デメリットとばかりはいえません。
 老人保健法では、収入に応じて自己負担限度額を定めており、年金生活者も負担増をします。障害者であっても、一定の所得のある世帯は、これに準じた負担額が設定されることは適切ではないでしょうか。
 もちろん、障害者の医療費負担が、高齢者と同じでいいかという疑問もありますが、それは医療面も含めた障害者の生活実態調査を実施し、その上で全体的な制度設計の中で検討していかなければならないと考えています。
 今回の条例改正に当たって、殊さら障害者の方々の不安をあおるような宣伝を一部の人たちが恣意的に行っております。そうした行為が、時代に即した福祉改革の足を引っ張る、何の益もない、ためにするものであることを指摘しておきます。
 私は、支援費制度の導入を前に、障害者の不安を解消することが東京都に課せられた最大の課題であると認識しております。そのためには、心身障害者施設緊急整備三カ年計画を着実に実行するとともに、生活寮や通所施設など、地域で生活できる基盤整備の充実に向け、新たな施策を展開していくことが必要であり、その実行を改めて東京都に求め、私の意見を終わります。
 以上で東京都議会民主党を代表しての討論を終わります。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって討論を終了いたします。

○議長(三田敏哉君) これより採決に入ります。
 まず、日程第一、第二百三号議案、心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例を採決いたします。
 本案に関する委員会の報告は、可決であります。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、委員会の報告のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(三田敏哉君) 起立多数と認めます。よって、本案は、委員会の報告のとおり決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) 次に、日程第二、第二百二号議案、老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例を採決いたします。
 本案に関する委員会の報告は、可決でございます。
 本案は、起立により採決いたします。
 本案は、委員会の報告のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

○議長(三田敏哉君) 起立多数と認めます。よって、本案は、委員会の報告のとおり決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 本日は、皆様のご理解とご協力をいただきたく、来週に予定している訪米について一言申し上げます。
 訪問の目的は、横田基地の問題を含めた日米関係の基軸について、何人かの政府要人と意見を交換することであります。濱渦副知事ほかを随行に、来月の六日から十二日までの日程を考えております。
 横田基地の問題は、本来の交渉当事者である国が全く動かない中で、現況を打開するために直接交渉に臨むもので、多くの都民が東京都の行動に期待を寄せております。もともとは昨年予定していたものでありますが、同時多発テロの発生により、中断を余儀なくされ、以来懸案として残っているものであります。
 今回、私にとりましては、訪米の日程が都議会と重なることが最も頭を悩ませた問題でありました。都政の重要課題を審議しているさなかであり、本来であれば、当然都議会の日程を優先すべきでありますが、相手方との事前の折衝状況等をもとに、熟慮を重ねた末、この時期に設定せざるを得ないと判断したものであります。
 異例の対応であることは重々承知しており、皆様にもご迷惑をおかけいたしますが、六日からの訪米にぜひともご理解、ご協力をお願いいたします。よろしくお願いします。

○議長(三田敏哉君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 明十月一日から十日まで十日間、委員会審査のため休会いたしたいと思います。これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、明十月一日から十日まで十日間、委員会審査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、十月十一日午後一時に開きます。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時四十四分散会

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