平成十四年東京都議会会議録第十三号

○議長(三田敏哉君) 二十番萩生田光一君。
   〔二十番萩生田光一君登壇〕

○二十番(萩生田光一君) 私は、昨年、病院改革会議の報告に対し、都立八王子小児病院の廃院に伴う問題点についてただし、知事も真摯に受けとめ、検討を約束いただき、その後マスタープランの公表がなされました。あくまで病院の廃止は前提ですが、それでも地元自治体や関係機関と協議を重ねる都の姿勢には、私も信頼を取り戻し、前向きな議論を続けてきたところです。
 根本的な解決のためには、不採算であっても、行政的医療といえる小児科医の確保など、国が基幹的に取り組むべきという都議会の意見書も後押しして、今般、厚生労働省は、小児科医の確保策に乗り出しました。
 八王子市の関係者も、不安や不信感はぬぐい切れないながらも、病院の存続の可否に終始するのではなく、地域でできることは都と協力して解決しようという機運が高まり、市が医師会へ委託している夜間診療所では、長年、小児科標榜医が七名だったのに加えて、四十二名が協力の申し出をいただき、充実することができましたし、四月にオープンした東海大学の附属病院にも、当初計画になかった産科、小児科について大学側と協議を重ね、四十三床の小児科病床と夜間の救急診療を開設することができました。
 しかしながら、小児医療は、そのすべてが地域医療として整理ができるものではなく、取り巻く危機的状況を考えると、役割分担に基づき地元自治体に任せればよいというものではありません。
 母子保健院の場合は、世田谷区が小児救急事業を実施し、都がそれを支援することで合意を得たと聞きます。十分な協議と地元合意は当然のことでありますが、今回の世田谷区には、五百床から成る国立成育医療センターのオープンという背景もあり、それぞれの地域によって、医療に関する実情が異なるのも事実であります。
 都はこの間、委員会の質疑を通じ、また、八王子市にもたびたび出向き、地域事情をつぶさに調査をし、五十万都市にもかかわらず公立病院を持たないことが、あたかも地域医療に不熱心かのような当時の衛生局の認識も、今日では地域事情に即した先進的取り組みとの評価に変わってきましたし、交通網の不備や若年層の増加など、さまざまな課題も浮き彫りとなってきたはずです。
 そこで、改めてこれらを踏まえて、都は、八王子小児病院がこれまで地域で果たしてきた役割や、八王子市における地域の小児医療についてどのように認識されたのかお答えください。
 また、都は、八王子市とも協議を始めたとのことですが、その際には、単に小児病院のみならず、地域の特性を踏まえた医療機能の確保をいかに図るかが重要と考えますが、市とは今後どのような検討を行い、いつまでに結論を出していこうとしているのかお答えください。
 最後に、地域の小児医療の確保に当たり、都の支援が必要なことはいうまでもありませんが、仮に八王子小児病院が移転する場合には、既存の施策にとらわれることなく、地域の特性を十分に踏まえた支援策を検討すべきと考えますが、ご所見をお示しください。
 学校週五日制が施行され、初めての夏休みが終わりました。文部科学省の考えるゆとり教育が果たして期待どおりの成果を生むか、わずか数カ月ですべてを評価、検証するには余りにも時期尚早とは存じますが、東京の子どもたちが充実した教育が受けられるよう、何点かお伺いしてまいります。
 まず初めに、長期休業中の勤務体制の見直しについてであります。
 児童、生徒には長期休業でも、教職員は当然勤務することが義務づけられておりますが、週五日制を実施される以前は、土曜日の代替をまとめどりしたり、自宅研修と称して、事実上勤務を免除される実態がありました。本年より認めないはずの自宅研修も、長い慣習に校長一人では太刀打ちできず、問題も多かったとお聞きしております。
 私は、本来、こういった長期休業中こそ、基礎学力不振や不登校など山積する教育課題を抱えている子に対して、時には家庭を訪問したり、子どもや保護者と真剣に時間をかけて対応していく、またとない勤務、研修期間であるべきと考えますし、教員自身の指導力不足の解消や見識を広げるためのさまざまな勉強の機会と考えます。
 そこでまず、この夏の研修実態はどのようなものなのかお伺いします。
 私たちの小学生時代、夏休みといえば、学校のプールがまさに大イベントであり、一夏を通じて合格した黒線を、母親に帽子に縫いつけてもらうのが大きな喜びでした。時代は変わったとはいえ、夏場のプールは子どもたちの関心事であるはずですが、残念ながら、実施日数の減少や、指導を拒む教員の代替に外部指導員に頼らざるを得ないのが実態です。
 夏季プールについては、法令等の根拠がないことを理由に社会教育の一環に位置づけたり、慣習に頼り実施したりと、びくびくした対応の自治体もあるようですが、もとよりこの夏のプールは、健康増進上も教育上も極めて重要なもので、やりたいようにやればいいものではないはずです。東京の子どもたちがひとしく機会を与えられるよう、都教委は明確な指導をすべきと考えますが、認識をお答えください。
 私の地元八王子市では、平成八年、それまで教員に支払っていた夏季プールの不当な手当を打ち切り、外部指導員に頼らない自校教職員での対応を促してまいりました。翌年、わずか二九・六%だった教員の従事率は、本年、八八・一%まで上がり、外部指導員への謝礼も十分の一まで減少してまいりました。唯一残念なのは、開始時間を八時三十分からとし、午前中に終わろうという教員の都合が優先していることです。
 国立市や狛江市では、相変わらず五千円以上の日当を支払っていると聞きますし、中学校のクラブ等では、謝金を暗に要求する実態もあるようですが、もとより勤務時間中に不当な手当を受け取ることを見過ごしてきた都教委の責任も重大です。
 都職員である教員が、勤務先の自治体からいかなる名目でも手当を受け取ることはあるまじき行為と思いますが、都内の実態と認識をお示しください。
 また、週五日制に伴う学力の低下を多くの関係者が危惧しております。教科内容を三割削減した一方で、国は習熟度別授業を奨励し、発展的学習を促し始めました。指導要領はあくまで最低基準で、できる子はさらにその機会を与え、できない子は引き上げ、全体を底上げするとのことですが、国のふらつきは否めません。
 そこで、都は、一人一人の力を伸ばすことができるような明確な指導指針や副教材の開発に力を入れ、学力低下の懸念を払拭すべきと考えますが、状況をどのようにとらえているのか。あわせて国の発展的学習に対する見解と取り組みを伺います。
 加えて、学校間の格差をなくすため、どこの学校へ通っても、安心して客観的な習熟度や授業の進捗が把握できるよう、全都統一の試験の実施を提案しますが、ご所見を伺います。
 次に、教員の定期異動と情報公開について伺います。
 学校教育に対する保護者のニーズが多様化する中で、校長がリーダーシップを発揮し、学校経営方針に基づいて、それぞれの地域に応じた学校の個性化、特色化に取り組んでいくことが重要になっております。しかし、教員の中には、このような校長の方針を理解しようとせず、地域とのかかわりを嫌い、学校としての組織的な対応に背を向ける問題教員が多くいるのも現実です。
 校長が人事考課制度に基づいてさまざまな努力をしても、結果として指示を無視し、しかも長期勤務の年配教員が意欲ある若い教員の足を引っ張り、学校経営の妨げになったり、思想的に偏ったグループが居心地のよい場所に集結し、活動の拠点としている点も由々しき事態です。
 教員の特性をきめ細かく把握し、適正な指導と適材適所の人事配置を行うことにより、質の高い教員を育てていくことが今急務と感じます。そのためには、校長の具申を最大限に尊重した人事異動を行うことが求められておりますが、現状は、既得権化した異動要綱に縛られており、校長が異動させたいと考えても、本人が希望を出さない限り、異動させることができないという、民間では到底考えられない制度が続いています。このようなゆがんだ異動要綱は、ながら条例と同様、直ちに改善すべきと考えますが、都教委の決意を伺います。
 次いで、私たち保護者は、勤務先から緊急時の携帯電話まで、家庭内のすべての情報を学校側に提示します。一方、多くの学校で、教員はその素性を明らかにせず、学校だよりなどに載るのは姓名のみ、写真の掲載すら拒む者もいます。子どもたちが年賀状を出したいといえば、平気で学校の住所をいう、父兄が緊急の連絡をとりたくても、自宅の電話もわからないという場合もあります。教員歴が何年なのか、前任校はどこなのか、保護者にも当然知る権利があると思います。
 私自身、中学二年時の教員は、成田紛争で逮捕された過激派のリーダーでしたが、紛れもなく都が採用した教員です。そういった処分を受けた教員さえも、異動さえすればオールリセットでやり直しができる。何も知らずに子どもたちを預ける父兄にとっては、たまらない話です。
 情報公開条例の保護規定はありますが、教員は一般の行政職より二等級も給与体系が高く、年四%の調整額も支給される、ある意味では特別な公務員です。すなわち、教員は、二十四時間いつでも教員であり、真夏のプール指導も、放課後の残り勉強やクラブの顧問も、たとえ夜中でも、子どもたちに何かあれば家を飛び出してでも対応する、そういった責任あるとうとい仕事だからこそ給与も異なるのだと思います。児童、生徒や保護者と真正面から向き合い、信頼関係を高めるためにも、たとえ個人情報であっても公開するのが筋だと思いますが、都教委の考えをお示しください。
 あわせて、教員が事故や不祥事を起こしても、その処分権限が校長や各教育長にないのも、こういった社会性に欠如した教員を生み出してきたシステム上の欠陥です。地元では新聞をにぎわす大事件でも、都教委の処分が決まるまでは、各自治体の教育長は対応ができず、結果として、その間、現場の指導を無視して教壇に立ち続け、みずからの保身のために、洗脳ともいえる弁明を子どもたちや親に声高に主張し、組織を挙げて処分を免れようとする行為が全都で繰り返し行われてきました。
 平成十八年度には公務員制度改革が予定されていると聞きますが、特に教育公務員については抜本的な見直しを行い、こういった問題教員が教壇に居座ることができない仕組みを確立するよう、都教委としても積極的に国に働きかけることを強く求めます。
 最後に、不登校児対策についてお伺いします。
 今般、八王子市では、不登校児童、生徒のための小中一貫教育と称して、仮称ジュニアマイスタースクールの開校を検討し、そのユニークな試みに全国から注目が集まっております。
 激動する社会の中、その変化に対応できない何らかの心理的、情緒的、あるいは社会的要因、背景により登校しない、あるいはできない子どもたちの増加は、昨年、全国で十三万八千人、都全体でも九千九百人を超えており、まさに大きな社会的問題であります。
 都は、これまでもスクールカウンセラーの配置や適応指導教室の開設支援、都教育相談センターにおいては、心理病法の専門的な相談体制の充実を図るなど、未曾有の事態に果敢に取り組んでいることは評価しますが、さらなる解決には区市町村教育委員会との連携強化と自治体独自の努力は否めません。
 そこで、今回、八王子の取り組みは、学年の枠を外した習熟度別ステップ学習というやり直しのできる授業内容や、地の利を生かした自然体験学習や農業体験、老人施設の介護体験や職場体験、さらに演劇やデザイン、ヘアメークや調理などをカリキュラムに加え、地元の多くの大学が専門講師の派遣などで協力し、午前は教科、午後は体験により、子どもたちの興味を引き出す新しい学校を模索していこうというものであります。
 都教育委員会は、市の相談段階から、教育課程の編成に問題があるとか、恒常的な児童生徒の在籍に疑問という理由で、開設に後ろ向きな対応と聞いているが、もちろん公立の小中学校である以上、妥当な教育内容を検討する必要があるのは当然です。
 私自身、身近な学校へ通えない子どもたちが遠く離れた学校へ通うことができるのだろうか、あるいは通えたとしても、不登校児学校の卒業が将来へマイナスの影響を与えないかと疑問を投げかけてきました。
 しかしながら、卒業証書だけを届けて終わりにする、あるいは問題の本質を掘り下げて調査したり対策を講じることのなかった今までを振り返れば、問題を直視した一歩も二歩も踏み込んだ市の姿勢は高く評価したいと思いますし、既に国も柔軟な対応を認める方針です。
 市の独自の調査結果でも、そういう学校ができれば行きたいという確かな数値も確認しており、また近隣自治体からも大きな反響があり、開設に踏み切りたいという強い決意がうかがえます。
 そこで、市の構想に若干の危惧があるならば、都は例えば新設校ではなく、適応指導教室の拡大解釈による分校や分学級などで前向きに検討し、さらに国の研究開発校の指定を求め、市との明確な協議をもって、ともに一つのモデルケースとして新たな取り組みをすることが、全都の問題を解決する試みにもなると考えます。八王子市の構想について見解をお示しください。
 戦後、我が国は豊かさと引きかえに、日本人が大切にしてきた心、神仏への尊厳や道徳、あいさつに始まる礼儀といった当たり前のものを失い、社会のあちらこちらにひずみやゆがみが生じ、命の大切ささえも忘れ去られた信じられない悲惨な事件が後を絶たなくなりました。
 コンビニの駐車場で地べたに座り、カップラーメンをすする女子高生、電車の中で恥じらいもなく化粧をする女子大生、小学生の子どもに美容整形を勧め、化粧品を買い与える、無知ともいえる親たち、メンズエステに駆け込み、全身脱毛の肌を競う男子高校生。
 本来、家庭や地域で身につけるべきしつけや社会教育を怠り、ほとんどを学校教育に依存してきたツケも、不登校を生み出した一つの要因と思われます。
 知事は、就任以来、スピードを信条に数々の実績を挙げてきました。もちろん、道路行政や税制度と異なり、教育改革がその成果をあらわすのは時間がかかると思います。しかし、家庭の教育力や社会の教育力が失われた今、行政がそれを補うだけの強力な力を発揮しなければ、問題の解決はできないと思います。
 知事の提唱した心の東京革命に、多くの都民がそのとおりとうなずきながらも、なすすべがわからず迷っているのが現状です。
 知事、「老いてこそ」だけでなく、子育てに迷う若い親たちにも、勇気を失った地域の大人たちにも、知事の言葉でもっと強烈なメッセージを送るべきと思います。
 北朝鮮の拉致事件がどんなに悲惨な出来事で、異国へ連れ去れた家族の苦しみはどんなだったか。教科書から削除された、こういった事実から、一つの命の大切さ、国家の主権や人権を、たとえ石原慎太郎に印税が入らなくとも、知事はペンをとり、横田めぐみさんと同世代の東京の中学生の副読本として教育現場に与えるべきです。
 心の東京革命のリーダーとして、思想をしっかり持った新しい教員の育成をすべく、くだらない縦割りにこだわらず、都が採用した教員の研修を知事みずからが務め、東京から日本を変える新しい教育の発信を願うものですが、知事のご所見をお伺いし、質問を終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 萩生田光一議員の一般質問にお答えいたします。
 非常に現況に鋭い分析を加えた、ありがたい質問だったと思います。
 東京は、心の東京革命と称して、現況というものを何とか内面からも変えていこうという努力をしておりますが、やはり不幸なのは、そういう学校に預けられている子ども、それから子どもを顧みない親のもとで育てられる子どもだと思います。
 そういった子どもたちに、いささか人生の先輩である私たち年齢者が、たとえ血のつながっていない相手であろうと、年長者の責任として子どもをしかることも含めて、やはり心を配るということが、私は今の日本の社会から失われつつあるものを取り戻す大事なよすがだと思います。
 ということで、私も折々にあちこちに出かけて、私の体験を踏まえたいろいろな話をしておりますが、大切なことは、やはり教育の主体者というのは学校の先生よりも親でありまして、特にこのごろの若い親は、相手によっては、もう本当に無知に近い人が子どもを産んで、育てる気もせずに、子どもを人生の中、親として預かっているというのが現況で、非常に子どもにとってむごい状況であります。
 例えば、ある学校で、親との触れ合いというものを子どもに伝えさせるよすがとして、週に一回ですか、お弁当を持ってきてくださいという、先生がそういう注文を生徒に出して、それが親に伝わったら、ある親は、子どもに昼の弁当としてカロリーメイトを渡したという。これは、本当に親の資格を疑わざるを得ないような現況でありまして、親には親の理屈があるかもしれませんが、こういったものをどうやって克服し、取り戻していくかということは、これはもう社会全体の責任で、行政がひとりばたばたしても及ぶことではございませんが、答えにならないことかもしれません。
 東京は東京で、行政という限られた領域での努力を存分にしてまいりますが、やはり大事なことは、経験もない、発想力もない、ただ結果として子どもを産んでしまった未熟な親たちを、やはり周りの人間がその子どもの将来、この社会の将来と考えながら、多少差し出がましくても、やはり年配者の責任として口を添えるということが、私は大切だと思います。
 これからも行政を通じて、そういったムーブメントというものを東京に普遍させていく努力をしたいと思います。
 他の質問については、教育長及び病院経営本部長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します九点の質問にお答え申し上げます。
 まず、教員の長期休業期間中の研修の実態についてでございますが、都教育委員会は本年六月に区市町村教育委員会に対しまして、長期休業中において、学校に出勤せず自宅等で研修を行うことは認められない旨通知し、指導いたしました。
 その結果、丸一日のいわゆる自宅研修は、多くの区市町村において認めないこととなりましたが、一部の区市町村において認めている実態がございました。
 長期休業中の研修の扱いにつきましては、今後とも適正に行われるよう趣旨の徹底を図りまして、指導を行ってまいります。
 次に、夏季プールの重要性についてでございますが、夏季休業中に学校プールを活用しまして、教育活動として水泳指導を行うことは、児童生徒の学習の成果を確かなものにしますとともに、健康や体力の向上を図り、水泳の楽しさをより深めるなどの効果も期待できまして、その意義は極めて大きいものと認識いたしております。
 今後とも、各学校が教育活動として行う夏季休業中のプール指導が充実するよう支援してまいります。
 次に、プール指導にかかわる謝礼支給の実態と認識についてでございますが、学校の教育活動として実施しておりますのは五十九区市町村ですが、これは当然のことながら、教員に謝礼は支給しておりません。
 社会教育として実施しておりますのは十四区市町村でございますが、九つの区市町村で教員が指導にかかわっておりますが、そのうち教員に謝礼を支給しているのは七区市でございました。
 都教育委員会は、本年六月、教員が勤務時間内において社会教育活動に従事する場合でも、報償費の支給対象とならないことを各都立学校に通知しますとともに、各区市町村教育委員会に対しましても同様の通知をし、指導してきましたが、今後とも適正な運用がなされるよう強く指導してまいります。
 次に、子どもの学力低下の懸念についてでございますが、実は私は昨今論議されております、いわゆる学力低下論の多くは、従前の知識の量を尺度とします学力観と新しい学習指導要領がねらいとする学力観が基本的に異なる、こういう認識が希薄であるような気がいたしております。
 なぜかといいますと、学力は単に知識の量のみではなく、みずから学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などを含めたものとしてとらえることが重要でございますし、これらの能力などを育成することによって、真の学力が身につくものであると考えております。
 新学習指導要領では、基礎的、基本的な内容の確実な定着や、みずから学び、みずから考える力などの生きる力をはぐくむことをねらいとしておりまして、このねらいに基づき教育課程を編成して、児童生徒の習熟の程度に応じたきめ細やかな指導を行うことにより、確かな学力を身につけさせることができるものと考えております。
 次に、発展的な学習についてでございますが、発展的な学習のねらいは、児童生徒の学習の到達度や学ぶ意欲に応じて、伸びる力をより一層伸ばしていくものでございまして、新学習指導要領では、選択学習や個に応じた指導などにより、発展的な学習を行うことが示されております。
 都教育委員会としましては、少人数指導のための定数改善を図りましたり、大学生等をティーチングアシスタントとして学習指導の補助に活用したりしておりますが、今後とも、各学校が発展的な学習を効果的に実施できるよう支援してまいります。
 次に、全都統一の学力試験についてでございますが、都教育委員会としましては、新しい学習指導要領に基づき、児童生徒一人一人の学習状況を適正に評価し、学習指導の改善充実を図っていくことが重要であると考えております。
 現在、基礎的、基本的な内容の定着に関する調査として、抽出ではございますが、学力調査を実施しておりますが、今後知識の量のみならず、思考力や判断力、表現力などを含めました新たな学力調査の実施について検討していく必要があると考えております。
 お話の全都統一の学力試験の提案につきましては、確かな学力を身につけさせるため、その具体的方策について研究してまいります。
 次に、教員の異動についてでございますが、現行の異動要綱では、現任校における勤務が一定期間を超える者を異動対象者としております。
 異動対象者につきましては、本人の希望を優先させることなく、校長の具申に基づき異動を実施しております。
 これに対しまして、異動対象者でない者につきましては、本人が異動を希望しない場合、校長の異動具申が円滑に行われがたいというのが実態でございます。
 このため、校長の人事配置計画に基づく学校経営を支援し、適材適所の人事異動を徹底するよう、異動要綱の改定を含め、教員異動のあり方を見直しをしてまいります。
 次に、教員の個人情報の公開についてですが、これは個人のプライバシーに関する情報は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の観点から、最大限に尊重されるべきものであると考えております。
 ただ、お話のような教員がまれに存在していることは承知しておりますが、教員が児童生徒、保護者と信頼関係を築きまして、円滑な教育活動を進めるためには、相応の個人情報を提供することが教育上必要な場合もあるのではないかと考えております。
 最後に、八王子市における不登校児童生徒を対象とした学校の構想についてでございますが、都教育委員会は、不登校の解消のためにさまざまな角度から検討した上での判断であると評価いたしております。
 しかしながら、現行の学校教育制度上では、児童生徒の恒常的な在籍が見込めないこと、あるいは不登校状態が解消しても引き続き在籍すること、また学習指導要領に基づく教育課程の編成、実施がなされないことなど、多くの課題もございます。
 都教育委員会は、不登校対策を重要な課題としておりますこと、また昨日の新聞報道によりますと、国においても不登校児童生徒のための公立学校を認める動きがございますので、こうした動向を注視しつつ、今後お話の趣旨を踏まえながら、八王子市とともに幅広い観点から現実に即した対応を研究、協議してまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 都立病院改革と地域医療の確保に関する三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、移転統合を予定している八王子小児病院の果たしてきた役割及び八王子市における小児医療の実態についてであります。
 八王子市内には、小児科を標榜する医療機関として、八王子小児病院を初め、八王子市が誘致に取り組んだ、ご指摘の東海大学八王子病院など四病院、診療所が九十七カ所あり、各医療機関が相互に連携して小児医療に対応してまいりました。
 こうした状況の中で、八王子小児病院は、小児の心臓病医療、新生児医療等の高度医療を重点として担うとともに、八王子市における地域の小児医療についても、実態として大きな役割を果たしてきたと認識しております。
 次に、都と八王子市との協議についてでありますが、八王子小児病院の移転統合に当たっては、同院が実態として提供している地域における小児医療を確保していくため、都と八王子市との間で相互の役割分担を踏まえ、十分協議していくことが重要であります。
 こうした考え方に基づき、市との協議に当たっては、地域の小児医療の現状等の特性を踏まえ、住民が安心できるような地域における小児医療確保のあり方について、年内には基本的な合意が得られるよう取り組んでまいります。
 次に、八王子小児病院が移転する場合の支援策の検討についてであります。
 住民に身近な地域医療の確保につきましては、基礎的自治体である市区町村が主体的に取り組むことが基本であります。地域における小児医療の確保に当たりましては、こうした都と市の役割分担に基づき、地域における小児医療の実態や、八王子市の具体的な考え方を踏まえ、必要な支援策を幅広い視点から検討してまいります。

○議長(三田敏哉君) 以上をもって質問は終わりました。

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