平成十四年東京都議会会議録第十三号

○議長(三田敏哉君) 十四番山下太郎君。
   〔十四番山下太郎君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○十四番(山下太郎君) 初めて一般質問 の機会をちょうだいしました民主党の山下太郎でございます。諸先輩方におかれましては、今後ともご指導いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 まず初めに、教育について伺います。
 私たちが迎えたこの二十一世紀は、未曾有の不況、信じられないようなテロ、互いの不信感ばかり募る社会など、全く先が見通せない時代に突入しています。
 また、今回の小泉総理大臣の北朝鮮訪問にも見ることができるように、国内外において、二十世紀のつらく、悲しいやみの部分を乗り越えていかなければならない時代でもあります。
 それでは、二十一世紀、私たちはどのような人材を育成していくべきでしょうか。私は、これからの時代は、テレビや新聞などのマスコミや、時に自分の考えと違う周りの人々に安易に流されることなく、しっかりと自分の頭で物事を考え、論理的に話を展開し、相手を説得できる人材育成が急務であると考えます。
 例えばアメリカやカナダでは、早い段階からマスメディアについて勉強を始めます。彼らがまず教わるのは、メディアからの情報をただうのみにするのではなく、その情報の裏に何が隠されているのか、また、その情報をどう自分の中で消化していくのかなどということです。その上では、大人は子どもが自分の意見を述べるということがよいこととし、スピーチのクラスなどで、人前で話す機会を多く与え、どのような態度、姿勢で話せば、説得力のある話ができるかを学びます。
 また、アメリカのテレビ番組の中には、メディアリテラシーを実践しているものもあります。そこでは、すべてのマスメディアの流す情報には意図があり、その意図を読み取り、情報を自分の道具として使うことこそが重要であると、メディア自身が告白している例もあります。
 このような世界の流れの中で、これからの社会に生きる子どもたちは、メディアを十分活用するとともに、冷静に分析、評価し、主体的に情報にかかわり、これを活用することができる力、メディアリテラシーの獲得を目指す教育が重要と考えています。また、スピーチやディベートなどを通じて、みずから表現力を磨くことも重要だと考えます。
 このような資質、能力をはぐくむ教育は、生徒たちの関心や学ぶ意欲をさらに高めるものであり、都立高校改革の中で、新しくそれらの科目を新設するなどし、実現していくことが大切だと考えますが、ご所見を伺います。
 都立高校改革を拝見していますと、確かに、以前の学校教育に比べれば、現在の都立高校は、普通科高校に通う生徒が総合学科高校に、あるいは定時制に通っている生徒が全日制高校に転入するといった、多様な学習機会を与える取り組みを進めており、大変すばらしいことだと私も率直に評価をいたします。
 しかしながら、私もそうであるように、若者は迷ったり、失敗したりするものです。今後は、一度ある高校に入学したら、その学校で教えている教科のみ学ぶということだけでなく、もっといろんなことを学びたいという生徒の気持ちを受けとめる、さらなる努力が必要だと考えます。
 そこで、伺います。生徒が転学することなく、他校の特色ある科目を学べるようにすることは、多様な生徒の実態に対応し、学習の機会を一層拡大する上で重要であると考えますが、このことについての現状と今後の取り組みについて伺います。
 本年三月の予算特別委員会において、私は、日本の高校では障害のある生徒と健常な生徒との交流する機会が少ないと感じ、都立高校の生徒と盲・聾・養護学校の生徒が互いの学校の授業に参加し、それを単位として認定することができれば、交流がさらに進み、人に対する思いやりの気持ちや互いを尊敬し合うことを学ぶことができ、健常者にとっても非常にプラスになるという趣旨の質問をいたしました。
 これを受けて、知事からは、障害を一つの個性としてとらえ、健常者と障害者はもともと一緒の人間であるという観点はよいサジェスチョンだというお言葉をいただき、教育長からも、今後、単位認定を含めた交流の推進に向けて前向きに検討していくという、東京都教育委員会としては、初めて踏み込んだ答弁をされました。
 これを小さな一歩として終わらせるのではなく、今後も、すべての生徒に等しくチョイスとチャンスを与えられるよう、さらなる努力を強く要望いたします。
 そこで、都立高校と、都立盲・聾・養護学校との連携の進捗状況と今後の取り組みについて伺います。
 次に、都立病院改革について伺います。
 予算特別委員会で、私は都立病院改革についても質問をいたしました。小児医療の危機が叫ばれる今日、未来を担う子どもを安心して産み、育てられる地域環境の整備こそが行政の重要な役割であり、都立病院改革、とりわけ都立小児病院の再編整備に関しては、こうした視点からのアプローチも必要であるからと考えたからです。
 都立病院改革マスタープランでは、清瀬小児病院は、府中キャンパスに新設される小児総合医療センターへと移転、統合され、それに合わせて多摩老人医療センターを地域病院化し、同病院に小児科を新設する構想が示されています。しかし、多摩老人医療センターが地域病院化され、小児科が新設されたとしても、年間約一万四千人の救急患者を受け入れ、地域住民が安心して子どもを育てるためのよりどころとなっている清瀬小児病院の機能をカバーできるのか。まして、清瀬小児病院と地域の医療機関との連携が全くとれていない現状では、地域住民から移転、統合に対して、不安の声が上がるのは当然ではないかという予算特別委員会における私のこうした質問に対して、返ってきた答えは、将来的に検討するとか、配慮するといったものがほとんどでした。しかし、移転は五年後であり、まだ時間があるから、それまでに検討すればいいという姿勢では、住民の不安は高まるばかりであります。
 そこで、伺います。私の質問後、半年近く経過しましたが、清瀬小児病院の移転、統合問題に新たな進展はあったのかどうか、お聞かせください。
 私はやみくもに都立病院改革に反対するものではありません。小児科の専門医が不足する中、小児総合医療センターを新設して、医療機関を集約し、高度専門的な医療を広く都民に提供していくという趣旨には大いに賛同できます。また、地方分権の潮流の中で、住民に身近な医療の確保については、基礎的自治体としての市区町村が主体的に取り組み、広域自治体としての都は、都全体を対象とする医療に責任を持つという考えも十分に理解できます。
 しかしながら、私は、清瀬小児病院を移転、統合するという話の前に、清瀬小児病院がなくなると、地域の小児医療はどうなるのかという住民の声に真摯に耳を傾け、その不安をまず払拭することが先決であると考えます。
 特に、清瀬、八王子など、多摩地域の小児医療人口は、区部に比べ、一病院当たり約二千五百人も多く抱えており、手薄であるといわざるを得ません。その多摩地域の小児病院を移転、統合しようというのですから、住民が不安に思うのも当然です。
 そこで、都は、今後どのようにして住民の不安を払拭していくつもりなのかを伺います。
 東京発医療改革のキャッチフレーズに、二十四時間三百六十五日の安心とあります。私は、地域の安心なくして、都立病院の移転計画はあり得ないと考えます。今後改革を進めるに当たっては、清瀬小児病院を初め、これまで多摩地域の都立小児病院が実態として地域で提供してきた医療を認識し、十分に検討していただき、地域住民との合意を図りながら、その確保を図るべきであることを強く主張して、この関連の質問を終わります。
 最後に、危機管理について伺います。
 去る九月十一日、あの信じられないような米国同時多発テロから一年が経過し、ニューヨークにおいて犠牲者追悼式が行われました。お一人お一人のお名前が読み上げられるたび、犠牲者各人の思い、ご家族の悲しみや怒りを考えると、涙があふれてとまりませんでした。この場をおかりして、私からこの大惨事に遭遇されたすべての方々に哀悼の意を表します。このグラウンド・ゼロをニュースで見るたび、同じような大惨事が東京で起こったら、それが都庁舎であったら、どうなってしまうのかと考えてしまいます。
 我が国においても、平成七年にオウム真理教による地下鉄サリン事件や、新宿の青酸ガス発生未遂事件といったような、それまで想定することもできなかった無差別テロ事件が発生したことは記憶に新しいところです。こうしたテロへの対策は十分であるのか、対応するマニュアルはあるのか、警備員をスペシャリストとして育成する必要があるのではないか、炭疽菌のような郵便物に対する対策はどうなっているのかなど、さまざまな思いが浮かんできます。もはやこうしたテロを想像できなかったでは済まされない状況であると考えます。
 現在の都庁舎は、各種相談窓口、パスポートセンターなどの施設や、観光名所にもなっている展望室、防災センター、都議会議事堂などを持つ、都民が自由に訪れることができるシティ・ホールとして親しまれています。そのため毎日二万人もの都民が訪れており、職員と合わせると三万人以上が集まっていることになります。こうした、東京のみならず、日本のシンボルともいえる都庁舎の安全と秩序が保たれていることは最低限の要請であると考えます。
 そこで、都庁舎における安全管理をどのように考えているのか、また、今後どのように取り組んでいくのかを伺います。
 次に、アメリカで起こったような多大な被害が発生する大規模テロが今東京で起こった場合、国が素早く適切に対処できるか疑問があります。本来国が主導で対処していかなければならないこととは思いますが、東京都としても、災害対策のみならず、多様な危機に対応できる体制を充実強化していく必要があると考えます。
 最後に、これについての国に対して太いパイプを持つ知事のご所見を伺って、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 山下太郎議員の一般質問にお答えいたします。
 危機管理体制の充実強化についてでありますが、危機、クライシスの原典であるラテン語の意味は、何か突然、全く今までと違う事態が出現するという意味だそうでありまして、まさにそれゆえに、災害も含めた、テロもそうでありますが、予期しない出来事の突発といえると思います。この危機に対してどういう形で取り組むかということの日本における最大の障害は、どうも国全体に他力本願の姿勢がしみついてしまったところにあるのではないかと思います。
 さきの、典型的にはNBCテロの一つでありましたオウム真理教によるサリン事件や、昨年のアメリカの九月十一日のテロなどを見ましても、それが日本に想定された場合に、どういうふうに日本がこれに対処するかということを考えると、いささか慄然とせざるを得ない。その最大の原因は、政治家にあると思います。その政治家の責任は、特に国の政治家であります、私も含めてかつてそうでしたが、官僚に政治を任せてしまったというところに原因があるという気がいたします。
 たまたま九月十一日、私はワシントンにおりました。前日、ウォルフォヴィッツと会ったペンタゴンが目の前で炎上するのを朝見て、愕然といたしましたが、その後も私の招き手の一人でありましたハドソン・インスティチュートの幹部と、あの混乱の中で話をしたときに、こういうときこそ、まさに日本の体験を聞きたいが、かつてのオウムの事件のときに、その後日本はどういう反省で何をしてきたか具体的にということを聞かれましたが、聞かれて答えることでできなかった。日本がやったことというと、合同慰霊祭と裁判ぐらいでありまして、こういうものの再発にほとんど有効な手だてを講じてきたとはいえないと思います。
 そういう反省にも立ちまして、東京都では何より行動を起こすことが課題解決の早道であると考えまして、さまざまな困難を乗り越える努力を続けているつもりでございます。
 危機管理の面では、先般のワールドカップの際に、いろんな騒擾事件にも備えて、警備、医療面での危機管理体制を強化しましたし、首都圏として、県をまたいで情報連絡体制も整えました。
 また、従来から自衛隊の参加を得た総合防災訓練を実施してまいりましたが、来年一月には、さらに大規模地震を想定した七都県市合同の図上訓練を初めて実施するなど、危機に対する迅速な対処のために取り組みを進めております。
 さらに、来月には国際テロに対応するために警視庁にテロ対策専門の組織を新設する予定でもありまして、今後とも、さまざまな行動の中から危機管理体制の強化を図り、多様な危機に備えていきたいと思います。
 さらに、この本会議が開催される直前、昼に、先般九月十一日の悲劇の弔問にニューヨークに代表して参られました三田議長と樺山議員から詳細な報告書をいただきましたが、そのときに非常に啓発される指摘がございました。それはニューヨークのあの事件が起こったときに、最前線で活動している消防と警察との間に連絡がとれなかった。機能的にそういう音波がなかったということで、非常に要らざる犠牲も、特に消防から出たということで、これは非常に大事な盲点でありまして、早速、会議が始まる前に警視総監とも話しまして、警視庁のイニシアチブでこういった緊急時の消防、警察の連絡の音波というものの確保をしかとお願いした次第でございます。
 その他この他、ご指摘のとおりです。あり得る危機に備えての都自身でかなうだけの努力を重ねていきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、マスメディアに関する教育や表現力を磨く教育についてでございますが、情報化社会の中で、生徒が情報を主体的に選び、適切に活用できる能力あるいは思考力、判断力、表現力などを身につけることは大切なことであると考えております。このため、実は来年度から新たに教科としての情報科という教科が新設されますが、こうした教科「情報」等を通しまして、全都立高校においてメディアリテラシーなどの育成を図ることはもとより、都立高校改革の新たな実施計画の中で、指定を検討しておりますITを活用した教育推進校におきましても、実現していきたいと考えております。
 また、国際理解教育を重視する中等教育学校におきましては、日本語による論理的思考力、表現力などを伸ばします言語技術に関する新しい科目の設定を検討していきますとともに、今後これらの学校の先駆的な取り組みの成果を他の都立高校にも広めてまいります。
 次に、生徒の学習の機会を一層拡大することについてですが、生徒が他校の科目を学習できるようにする、いわゆる学校間連携を推進していきますことは、生徒の多様な学習機会を確保するだけではなくて、開かれた学校づくりを推進する上でも重要でございます。
 都教育委員会は、今年度から新たに学校間連携に関する実践的な研究を行う推進校を指定しておりまして、今後その成果を他校にも広め、生徒の多様な学習希望にこたえてまいります。
 さらに、インターネット等の情報通信技術や都立高校間のネットワークを活用して、生徒の学習支援を積極的に行うトライネットスクールの設置を検討するなど、学校間連携を一層推進してまいります。
 最後に、都立高校と都立盲・聾・養護学校との連携についてですが、都立高校と都立盲・聾・養護学校との連携は、学習の機会を拡大するだけでなく、生徒が互いのよさを認め、よりよい人間関係を築く上でも重要な意義がございます。
 こうした連携に当たりましては、授業内容あるいは通学方法、保護者の協力、さらに学校の受け入れ体制など、解決すべき課題が多くございましたが、今年度から初めて、これは一部ではございますが、都立養護学校の生徒が、単位認定を前提に、都立高校の世界史の授業を受けております。
 今後は、都立高校の生徒が都立盲・聾・養護学校で行っております家庭科等の介護体験学習を充実するなど、学校間相互の連携推進に一層努めてまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、清瀬小児病院の移転、統合についてであります。都立病院の移転、統合に当たりましては、地域医療の確保等について、都と地元自治体や関係機関との間で相互の役割分担を踏まえ、十分協議していくことが重要であります。こうした考え方に基づき、都は清瀬市との間で検討の場を設け、地域の小児医療の確保に向けて協議を開始しました。
 今後とも、都民が安心して身近な地域で適切な医療を受けられるよう、清瀬市や関係機関との間で、精力的に協議を進めてまいります。
 次に、都立病院の移転、統合にかかわる地元への対応についてであります。都立病院の再編整備に当たっては、都と地元自治体等がそれぞれの役割のもとで、地域住民が安心できる医療提供体制を構築することが不可欠であることはお話のとおりであります。
 このため、住民に身近な地元自治体や関係機関との間で地域医療の確保等について、地域の実態を踏まえ、引き続き協議を進めるとともに、その具体的な方策等について、さまざまな機会をとらえ、都民の皆様に周知することにより不安を払拭するよう、適切に対応してまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 都庁舎におけます安全管理についての質問にお答え申し上げます。
 都庁舎は、ご指摘のように、開かれた都政の象徴として多くの都民が訪れ、都政を身近に感じることができる施設でございます。一方、来庁者の安全と庁内の秩序を保持する必要がございますので、不審者、不審物のチェックを行うために、監視カメラやエックス線の透過装置を設置いたしますとともに、出入り口等に警備員を重点的に配置するなど、安全管理にこれまでも努めてきたところでございます。
 今後とも、都庁舎が都民に広く開かれ、安全性が確保された施設となるよう、一層の安全管理に取り組んでまいります。

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