平成十四年東京都議会会議録第十三号

○議長(三田敏哉君) 三十番真木茂君。
   〔三十番真木茂君登壇〕
   〔議長退席、副議長着席〕

○三十番(真木茂君) 東京におけるフロンティア問題、つまり東京都と近隣県との境、都県境の問題につきまして、幾つか問題を提起させていただきます。
 都県境の問題の第一は、下流が他県に流れていく河川の治水についてであります。
 私の住む町田市は、神奈川県との境に境川が流れています。境川は、都県境を二十四キロにわたって流れ、都県境の下流部分は東京都が管理し、さらにその下流の神奈川県内の地域は、当然のこととして神奈川県が管理しながら、一時間に五〇ミリの降雨に対応し得る治水を目標としています。
 問題は、神奈川県の財政難などの理由から神奈川県部分の治水工事が一向に進まず、東京都はいわゆる五〇ミリ対応の河川整備が完全に完成できるにもかかわらず、東京都は神奈川県をおもんぱかり、五カ所にわたり、あえて三〇ミリ対応のまま整備をストップしていることであります。つまり、整備の進まない神奈川県に五〇ミリ対応分の水量を流したら神奈川県がはんらんすることをおもんぱかって、東京の整備を放置しているのです。
 大雨が発生した場合、この五カ所が最も危険な地域となります。下流から河川整備を進めていくことは河川管理の常識ではありますが、下流の神奈川県の整備が進まないからといって、できる工事をしないで残されているこの五カ所が、もし浸水でもした場合、東京都民の被害は一体だれが責任をとるのでありましょうか。極論すれば、東京都は神奈川県民と東京都民のどちらが大切なのかともいいたくなります。
 さらに問題は、この都民の生命と財産にかかわる重大問題が、町田市民には全く知らされていないことであります。この質問も、近くを歩いていて川幅が狭まっていることを疑問に思った私が、地元の建設事務所に問い合わせて初めて教えてもらったことで、流域の住民も知らない事実であります。
 東京都は既に平成十三年三月、神奈川県に対し要請書を提出し、早急な対応を求めているところではありますが、一向に神奈川県における努力は見られません。このままでは、いつ計画が策定されるのかすら全く見えてまいりません。もし仮に計画が決定しても、工事が完成するまで十数年の月日を要するものと思われます。神奈川県の怠慢によって、いつまでも東京都民の生命と財産を危険にさらし続けるわけにはならないと考えます。
 今、東京都に求められていることは、神奈川県に対し毅然として、早急に整備計画を策定せよ、さもなければ五〇ミリ対応を完成せざるを得ないと、この旨を宣言することではないでしょうか。
 神奈川県の状況と、東京都として今日までどのような取り組みを神奈川に対し行ってきたのか、そしてこれからどのような取り組みを行っていくのか、具体的にお伺いします。
 同時に、神奈川県の工事が完成するまでめどが立たない以上、都としても流域住民の安全を守るために必要な措置をとることを強く求めるものであります。
 都県境の問題の二点目として、救急医療体制とその連携についてお尋ねします。
 特殊診療科目である眼科、耳鼻科における夜間・休日の診療体制の整備は、国、都、市の役割分担の中では、当面、東京都の仕事となっております。例えば町田市からですと、三鷹市の杏林病院しかない日が多くあるのであります。町田市から三鷹市へのアクセスは、電車に乗って一回新宿まで出て三鷹に戻るという、電車の乗車時間だけでも一時間かかります。これは町田から御茶ノ水に行くのと同じであり、ましてや三鷹駅からバスで二十分という杏林病院では、町田からは電車でも自家用車でも二時間かかり、病人にとっては行く先がないのと同じであります。
 しかしながら、町田市の隣の相模原市には、町田駅の隣の駅の相模大野の駅前に、相模原南メディカルセンターという救急医療施設があり、ここで耳鼻科、眼科の救急対応をしているのであります。
 問題は、この隣接している施設を東京都民が知り得る手段がほとんどないということであります。東京都では健康局が主宰している「ひまわり」という医療情報システムがあり、三百六十五日二十四時間でのテレホンサービスと、パソコン通信による検索サービスが行われていますが、ホームページで掲載されているのは東京都の施設だけであり、電話でもパソコンでも町田市民は三鷹の杏林病院等を知り得るだけであります。
 また、消防庁でも東京消防庁テレホンサービスという情報サービスをしておりますが、そこでもやはり同じであります。私も何回となく実際に電話をし、もっと近いところはございませんかと食い下がりましたが、ありませんとだけいわれて電話を切られてしまいました。つまり、東京都のサービスからは、近隣の他県にすばらしい施設があることを知り得ることができないのが実情です。
 そこで提案でありますが、都県境に住む都民に対しては、近隣県の施設についても知り得るように、東京都としてサービスすることはできないのでありましょうか。町田の方ですか、そうしますと三鷹しかありませんが、隣の相模原にも施設がありますので、こちらの神奈川県のテレホンサービスに聞いてみてください、こういっていただけるだけでいいのであります。そのことによって、家から二時間かかると思ってあきらめていた診察が、何だ、お隣か、車で十五分だということになるのであります。都県境に住む都民にとって飛躍的に安心と安全が高まります、難しいことではありません。前提である医療体制の連携を強く求めるとともに、情報提供の早急な連携を求めます。健康局並びに消防庁に伺います。
 都県境をめぐる三つ目の問題として、神奈川県の厚木基地による騒音問題があります。
 米軍基地の爆音に対する救済措置として、住宅への防音工事の助成がありますが、その地域指定が、厚木基地の滑走路の延長線上において、東京都側は都県境でとまってしまっており、飛び地のように飛び出した町田市の本当に、本当に本当の一部を除き、指定は神奈川県内だけであります。滑走路からの指定の範囲を東京都側と神奈川県側、その反対側とで比較したとき、東京の方が短く設定されていることからも、都県境で指定を区切ったことは明白だと思われます。都県境に防音壁があるわけでもないのに、その指定が都県境で終わってしまうのは、何らの合理性もございません。これは、神奈川県の所管が横浜防衛施設局であり、東京都町田市の所管は東京防衛施設局であること、さらに、東京都と国とのやりとりが東京防衛施設局だけであり、横浜防衛施設局への働きかけがなかったことによるものと推察されます。
 東京都として、東京防衛施設局へは当然のこと、横浜防衛施設局に対し、厚木基地の住宅防音工事助成対象区域の東京都内への指定の拡大を迫ることを強く求めるものであります。
 また、東京都として厚木基地対策が不十分であった一つの証拠として、都立町田高校があります。町田高校は厚木基地の滑走路の延長線上にあり、そのうるささは、町田高校の屋上に東京都が設置した騒音計測器により、うるささ指数の環境基準値を超えていることが東京都の調査によって報告されているところであります。
 教育施設への防音工事は国の予算で全額が保障されているにもかかわらず、東京都はこの都立高校への防音工事をいまだに請求しておりません。ところが、横田基地周辺の都立高校では、既に幾つかの学校で防音工事が施されております。町田市内の都立高校は大なり小なり厚木基地の騒音の影響を受けておりますが、とりわけ、東京都がみずからうるさいことを証明している町田高校に対する早急な対策を強く求めるものであります。
 このほかにも、都県境をめぐる問題はまだまだ指摘ができます。今後東京都がこうした都県境の問題に積極的に取り組んでいただくために、同時に、都県境を越えた当該の市同士で、各種協議をしているその努力を都としても応援する姿勢を明確にするために、私は、都庁の中でどこのセクションが近隣県との連携推進を担当するのかを明確にすることを求めるものであります。石原知事のご答弁を求めます。
 と申しますのも、現在都内の各市間の横の連携は、総務局市町村課が担当しております。しかしこれが、都県境を越えるところでは、その仲介役がおりません。また、都県境を越えた市同士の協議は、具体的になれば各セクションごとの横の連携で十分なのですが、最初にどういった点で連携できるかの議論は企画部門同士で協議することになります。この各市の企画部門をサポートする体制が、現在の都の体制にはないのであります。
 知事本部の広域連携課は七都県市を担当しておりますが、その業務はディーゼル車規制や産業廃棄物問題など、首都圏全体で取り組むテーマが仕事であります。また広域行政課は、主に広域的自治体、道州制の調査研究を仕事とするものであり、都県境の諸問題に取り組むものではありません。つまり、都県境を挟む東京都の市と近隣県の市との協議に同席をする担当者、相談を受ける担当がいないのであります。
 一部には、連携の窓口をつくっても、実務は建設局とかが行うものであり、連携や調整の窓口をつくっても意味がないといわれる方もいらっしゃいます。しかし、総務局の市町村課には、市町村との連格調整という仕事が、都庁の組織規程に明記されています。東京都内の市同士だと連絡調整が必要で、都県境を越える市同士だと連絡調整は必要ない、こういうことにはならないのではないでしょうか。担当局同士でやるからいいのだとするなら、市町村課の業務から連絡調整という文言を削除すべきではありませんか。
 かつて厚生省でエイズ薬害が問題となったとき、担当部局に幾ら資料提出を命じても資料が出てこなかったものが、厚生大臣がかわり、疑惑解明プロジェクトを厚生省内に設置した途端に資料が出てくるという事例がありました。
 東京都でも、多摩地域の電話局番問題は長年の課題であり、議会でも何度となく問題となったと聞いております。しかしながら、長いこと放置されておりました。しかし、昨年九月、議会での質問を受けた途端に、突如として東京都が音頭をとって動き出しました。これは、今までは都庁内にこの問題の受け皿がなかったのですが、昨年四月に総務局内に、大きな組織であるIT推進室が発足し、この問題の受け皿ができたことにより動き出したものだと担当から聞きました。事ほどさように、お役所というものは、役割と権限が与えられれば動くのでありますが、役割が明確でないと動かない、いや、動けないのであります。
 知事は所信表明の中で、これからの時代、行政にはラインの垣根を越えた複合的、重層的な力を発揮することが求められていますといわれました。まさにこのことは行政の垣根を越えることにも通じることだと考えます。ここはひとつ庁内の横の連携のみならず、都庁の際である庁際の横の連携も図っていただき、フロンティアである都県境を、境であることのデメリットから、境であることのメリットに変えていく、そうした石原知事の積極的な取り組みを強く期待申し上げ、近隣県連携を担当する部局を明確にすることを求めるものであります。
 最後に、都有地の売却と緑地保全についてお伺いします。
 東京都は財政再建の一環として、都有地の積極的販売活動を展開し、財務局の中に売却促進課を設け、昨年度に至っては八百七十億円もの売却収入を計上し、都収入の一・三八%もの収益を上げたことは、関係部局の大変な努力の結果として大いに評価されていいものだと考えます。しかしその一方で、長期的に見て緑地として保全することが望ましいと思われる土地まで、売却を急ぐことがあるのではないかと強く懸念するものです。
 事実、町田市には、図師小野路歴史環境保全地域という貴重な緑が存在します。これは東京都環境局が保全すべき緑地として指定し、その指定を受けた地区は、民有地であっても以降の開発が事実上禁止されるものであります。東京都は民有地には開発を規制しておきながら、この広大な緑地に隣接する、事実上一体となっている三万四千平方メートルもの広大な都有地を、現在も売却予定地としてホームページに出しております。
 売り急ぐばかりに、こうした貴重な緑地を開発の危機にさらすのでなく、しっかりとした長期的展望を持ち、東京都として保全すべきものは保全する、こういう態度で対応されることを強く希望し、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 真木茂議員の一般質問にお答えいたします。
 日本そのものが時間的、空間的に非常に狭小になってきますと、町田に限らず、日本の行政区分というのは細々し過ぎて、非常に現実にそぐわないものがあります。
 先般も、ある会議で神奈川県の岡崎知事と町田の話をしました。町田の生活圏が隣の相模原へ重なっているということで、まあ半分本気、半分冗談でしょうけれども、岡崎さんは、町田を神奈川県にくれませんかねというから(笑声)、いや、そうなったらあなたの方が困るだろうから、相模原を私たち東京の方で引き受けましょうといって笑ったのですけれども……。
 いずれにしろ、行政区域は、地域サービス、行政サービスの提供単位を画した非常に人為的なものであります。このため、行政区域を越えた広域的な問題や、お話しの行政区域をまたがる課題が生じることはもう避けられないと思います。
 こうした課題に限らず、おっしゃるとおり、行政組織は往々にしてライン化が進みまして、いろんな問題の解決に向けた機動的な、機能的な対応ができなくなってくる傾向がございますが、特に現代のように変化の激しい時代には、行政組織の欠陥の克服は非常に重要な問題になっております。
 これまでも、首都圏を構成している七都県市などとの広域連携や、組織間の垣根を解消して、柔軟な、また早い対応を行おうということで、いろいろ呼びかけてもまいりましたし、庁内の横断的な協力体制の強化にも努めております。広域連携を専門的に担当する部長も既に配置しております。
 今後も、お話しの点も含めた視点から、辺境とはいいませんけど、行政区分の境にひっかかっていろいろ問題のある地域が多いと思いますが、そういったものに関する都政運営に努力していきたいと思っております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 都立町田高校の防音対策についてのお尋ねでございますが、町田高校は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づきます住宅防音工事の助成区域には該当しておりませんけれども、国では、指定区域の外側に所在する学校につきましても、国が騒音測定を実施して、一定の基準に該当する場合には防音工事の補助対象にすることとされております。
 町田高校は、厚木基地滑走路の延長線上にございまして、騒音レベルが高いことから、既に国と測定の実施について協議を開始しておりますが、ご指摘の点も踏まえまして、早期に補助対象として防音工事が実施できますよう、最大限努めてまいります。
   〔建設局長小峰良介君登壇〕

○建設局長(小峰良介君) 境川の改修についての二点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、改修に関する取り組みについてでございますが、東京都と神奈川県は、昭和四十二年、境川の管理区分に関する協定を結び、一時間三〇ミリの降雨に対応する河川改修を実施してまいりました。
 その後、都は昭和五十五年から、一時間五〇ミリの改修を進め、現在までに、都管理区間十・五キロのうち九・三キロ、約九〇%を完成いたしました。
 一方、神奈川県は、五〇ミリ改修の方策として、遊水地と分水路の設置を計画し、平成六年、遊水地工事に着手いたしました。しかしながら、分水路計画については、財政事情から、十一年二月、見直しを表明し、現在、代替案について検討中でございます。
 都といたしましては、これまでも再三にわたり、県管理区間の改修促進について要請してまいりました。今後も、早期改修を働きかけてまいります。
 次に、流域住民の安全を守るための対応についてでございますが、神奈川県は、横浜市と藤沢市にまたがる貯水量九十万立方メートルの境川遊水地などの工事を進めております。
 都といたしましては、これら下流部の改修工事の進捗状況を勘案しながら、未改修箇所の解消を目指してまいります。
   〔健康局長長尾至浩君登壇〕

○健康局長(長尾至浩君) 近隣県市との医療機関情報提供等の連携についてでございますが、都の保健医療情報センター「ひまわり」では、都内の医療機関や医療関係団体の協力を得て情報を収集し、東京消防庁のテレホンサービスとも連携して、都民への医療機関案内を行っております。
 この「ひまわり」での情報提供に関しましては、都と他県との境の都民からの問い合わせに対し、他県の医療機関情報提供窓口の案内が必ずしも十分でないなど、改善すべき点があるのはご指摘のとおりでございます。
 今後、都に隣接する自治体との連携を強化し、各自治体における医療機関情報の提供窓口やシステムの整備状況、これらを踏まえながら、都民の安心と安全を向上させるため、きめ細かな情報提供ができるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔消防総監杉村哲也君登壇〕

○消防総監(杉村哲也君) 近隣県市が実施している医療機関案内との連携についてですが、東京消防庁では、都民等からの医療機関情報の問い合わせに対して、特別区は大手町、多摩地区は立川の消防テレホンサービスで案内業務を実施しております。
 このテレホンサービスは、東京消防庁で収集した救急医療機関の情報と、健康局から提供された休日診療・準夜診療を行っている医療機関の情報に基づいて案内を実施しておりますが、近隣県の医療機関情報については保有していない状況にあります。
 ご指摘のとおり、近隣県の医療機関情報については、都県境の方々に有用であり、今後、主管局である健康局と連携しながら、近隣の医療情報センター等を案内できるよう努めてまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 厚木基地に係る住宅防音工事助成事業の対象区域の東京都内への拡大についてお答えいたします。
 対象区域は、法に基づき、騒音レベルが七五WECPNLを超える区域につきまして、国が指定し、防音工事の助成措置を講じることになっております。
 町田市につきましては、昭和五十九年に市の一部が区域指定されていますが、これまでの騒音測定結果によりますと、区域外の幾つかの地点でこの基準を超えております。
 このため、東京都は、これまでも国に対しまして、対象区域の拡大や補助対象施設の拡大を求めてまいりましたが、実現に至っておりません。今後とも、町田市内の航空機騒音の実態を踏まえ、国に対し、対象区域の見直しを引き続き強く要請してまいります。
   〔財務局長田原和道君登壇〕

○財務局長(田原和道君) 都有地の売却と緑地保全についてでございます。
 ご指摘の町田市図師町の土地につきましては、現在売却予定地の一つとしております。この土地の形状や周辺環境を精査いたしまして、緑地保全の視点も含め、今後、関係局、地元市等と協議をいたしまして、活用策を検討してまいります。

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