平成十四年東京都議会会議録第十三号

○議長(三田敏哉君) 四十二番三宅茂樹君。
   〔四十二番三宅茂樹君登壇〕

○四十二番(三宅茂樹君) 平成十五年は、江戸に幕府が開かれてからちょうど四百年目に当たります。この佳節を迎えるに当たり、東京商工会議所が中心となって、江戸幕府四百年記念事業が都内で開催されることになっております。
 東京という都市の歴史は、江戸の昔から我が国の経済活動発展の歴史でもあり、その四百年の発展は、日常生活に密着した商業や商店街の存在によって支えられてきたのです。その意味で、記念事業の一つに予定されている、東京都商店街連合会及び振興組合連合会による仮称史上最大の江戸・東京商店街まつりは、大変大きな意義を有していると思います。
 趣意書によれば、先代より現在に受け継がれてきた商店街の果たす役割の再認識と、地域の活性化による東京のさらなる発展を目途に、江戸から培われてきた東京の商人の心意気を全国、全世界にアピールするとあり、大いに共感を覚えるものであります。商店街が連合して、東京のにぎわいの創出、地域コミュニティとの連携強化等を目的とする本事業を全面的に支援すべきであると思いますが、見解を伺います。
 さて、地域の伝統行事の担い手である商店街が、最近の不況や大型店の進出により疲弊している惨状に対し、地域社会の崩壊防止をも視野に入れ、私ども自民党の提言によって平成十年度に創設されたのが、元気を出せ商店街事業であります。
 地域社会と一体となった商店街が行うイベント活動に東京都が助成するこの事業は、商店街振興施策としては画期的なものであり、商店街に元気のもとになる自負をよみがえらせ、地域社会に対しても、その活性化に多大な貢献があったと認識するものです。
 元気を出せ商店街事業が、ばらまきである、また、死を待つばかりの商店街の痛みを一時的に和らげる麻薬のようなものという、この事業に対する極めて不勉強な主張があります。元気を出せ商店街事業が、商店街の組織力の強化や若手の参加を促し、地域コミュニティの核としての役割を増大させ、地域のアイデンティティーの醸成を図ることができたという声を正面から受けとめようとしない、地域社会の実態から目を背ける、まことに浅薄な姿勢が目に浮かんでまいります。この事業を廃止しないでという痛切な叫びに、今こそ目を向け耳をそばだてねばなりません。
 しかしながら、この事業は単年度の事業であり、年度ごとにその是非が検討され、予算化されております。よりよい施策のために、常に事業の見直しを図っていくことは重要でありますが、元気を出せ商店街事業ほど、商店街からその存続を切望されている商店街施策はほかに例がありません。また、地域社会の活性化にとって極めて重要であり、その効果も一過性のものではありません。その継続性が保証されないのは、いかにも理不尽であります。元気を出せ商店街事業について、今後は継続を保証すべきであると考えますが、見解を伺います。
 次に、商店街にとって活性化策の一つとして、情報技術、すなわちITの活用があります。
 先日、知事のご発案により、超党派の都議会議員がイトーヨーカ堂を訪問し、事業経営における最先端のIT運用法と活用の目的を鈴木社長からお聞きすることができ、認識を新たにしたところです。ところが、帰りの車中で、大手流通業者のITシステムを目の当たりにして、かなうわけはない、商店街のIT化を推進することは税金のむだ遣いであるといった暴言を吐く諸氏もおられました。ITの持つ大きな効能の真髄を理解していないことに驚き、苦笑を禁じ得ませんでした。顧客のニーズの把握と情報発信が商業活動の重要なポイントであり、それに対してITが有効な手段になることは、大型店舗であろうと小さな商店であろうと変わりはないのです。
 IT化なくして商店街は生き残れないという信念から、東京都商店街振興組合連合会と連携した効果的なITの活用法と、情報の収集にITを用いたモニター商店街の立ち上げについて再三提案し、その実現について検討する旨の回答を得ているところであります。現在の進捗状況はどうなっているのか、また、たびたび知事より批判されている東京都商店街振興組合連合会の対応についてもお伺いします。
 ところで、商店街のホームページの作成は補助金の対象になりますが、更新までは含まれません。商店街活動の基本は自主的、自立的な取り組みにあり、補助金はIT化促進の呼び水と位置づけられているからです。ホームページの更新は商店街がみずから行うことが期待されているのです。
 IT研修が各地で開催されるようになっていますが、パソコンセンターで行う研修では、家族経営の商店にしてみれば、店を閉めなければ参加することができません。今求められているのは、個々の商店街に出向いて行う実践的な指導なのです。そのことによって、商店街の内部にIT化に対応できる人材を育成し、IT能力を蓄積できるものです。商店街IT化研修を派遣にて行う施策を展開すべきであると考えますが、見解を伺います。
 先月、都のものづくり振興のあり方について、中小企業振興対策審議会から答申が出されました。知事の所信表明にもありましたが、零細企業のパテント保護などを目的とした、産業力強化会議の設置は高く評価するものです。しかし、審議会委員として参加し、痛感いたしましたことは、腹が減っては戦ができぬということわざにもあるように、武器となる技術以上に、兵糧ともいうべき資金の確保がいかに大切かということです。
 地方自治体として初の、しかも日銀がその商品価値を認定した証券発行による都の債券市場の取り組みが進展することは、中小企業にとって資金調達の手法が多様化することであり、最大限の評価をいたします。しかし、一方で、この仕組みにより資金を調達できるのは専ら優秀な中小企業のみであり、大半の企業はメリットを受けられないという問題があります。
 将来性のある優秀な中小企業を伸ばす政策は必要ですが、既存中小企業の蓄積の厚みを守ることを忘れてはなりません。知事も新聞のコラムにて、零細企業の金融対策に対する国の冷酷な対応を批判されておりました。銀行と信用保証協会は残ったが、中小企業は姿を消したというようなことは、決して許されることではありません。金融対策を考える上では、まさに、債券市場のスキームに乗らないような中小企業への目配りを忘れず、円滑な資金供給を図ることが重要であると考えます。知事の見解を伺います。
 次に、母子保健院廃止に伴う、地域における小児医療の確保について伺います。
 本年十二月に廃止が予定されている世田谷区桜の母子保健院をめぐり、一部の政党や団体が、都立病院の役割や地域医療の実態などに関する正確な情報を伝えることなく、いたずらに住民の不安をあおるような活動を行っております。
 ことし三月に世田谷区内に開設された国立成育医療センターの現状を見ると、既に母子保健院の実績をはるかに上回る数の世田谷区民を救急患者として受け入れております。しかしながら、国立成育医療センターが、世田谷区の小児医療に対し、このように大きく貢献しているという事実は、最近の一部の新聞報道などをきっかけとして、ようやく知られるような状況であります。
 この間、私のところにも、多くの住民の方々から母子保健院の廃止について不安の声が寄せられていましたが、こうした事実をきちんと説明することで、皆さんに納得、安心していただいております。住民の不安をいたずらに募らせるような活動を決して許すことがあってはなりません。
 我が党の山崎幹事長が行った昨日の代表質問 で明らかにされたように、世田谷区は、地域における小児医療を確保するため、小児初期救急医療に主体的に取り組む姿勢を明確にしております。東京都は、母子保健院廃止をめぐる不適切な情報によって世田谷区民がこれ以上振り回されることのないよう、一刻も早く無用な不安を払拭するために、正しい情報をどのように周知していくのか伺います。
 また、世田谷区内には、入院が必要な小児の救急患者を受け入れてくれる二次医療機関がないと心配する声があります。このことについてどのように考えているのか伺います。
 ところで、少子化が進行する中で、小児科医の減少が進むなど、地域における小児医療の確保は、これまで以上に困難になってきております。地域の小児医療確保のために頑張っている自治体に対して、積極的に支援することこそ都の重要な役割であると考えます。母子保健院の廃止に当たり、地域における小児医療の確保のため、東京都は地元世田谷区への支援策をさらに充実していくべきと考えますが、見解を伺います。
 東京都は、今後とも世田谷区の地域医療の充実について広範な視点から検討され、区を支援することを強く要望しておきます。
 いつ大地震が来てもおかしくない現在、木造住宅密集地域の整備は、都民の生命を守る上で喫緊の課題であるといわれ続けてきましたが、これまでの事業手法ではスピーディーな進展が期待できないのが現状であります。私の地元である世田谷においても、太子堂地区を初めとした木造住宅密集地域が広がっており、これまで整備事業を進めてきましたが、なかなか成果が上がっていないのが実態であります。これまでの事業の取り組み状況と事業成果を上げるための課題をどう把握しているのかお伺いします。
 現状を打破していくためには、これまでの枠にとらわれない、新しい発想による迅速な事業展開が望まれます。一口に木造住宅密集地域の整備といっても、そこに住む方々の思いは千差万別であります。分譲マンションや賃貸住宅など居住形態に対するさまざまなニーズがあり、また、住みなれた地域に住み続けるという願いがあります。こういった思いにきめ細かく対応することが求められます。また、民間活力を活用して、民間事業者の長所を最大限に生かすことが大切であると思います。
 先般、新聞報道されたように、都営池尻団地を全面建てかえし、その敷地を活用して太子堂・三宿地区の木造住宅密集地域を整備していくとのことですが、具体的な種地を用意することで、地域のさまざまなニーズへの対応が可能となることから画期的な取り組みであり、先駆的モデルケースとして、大胆かつ細心な事業実施が求められていると思います。具体的にどのように取り組んでいくのか、スケジュールなども含め、お伺いします。
 最後に、駒沢オリンピック公園総合運動場は、東京都を代表する総合型のスポーツ施設の一つとして、多くの都民に利用されております。しかし、約四十年前、昭和三十九年のオリンピック東京大会開催後、改修が行われないまま現在も使用されている施設もあり、老朽化が著しく進み、本年六月には陸上競技場の電光掲示板が試合当日に故障し、全く使用できないというていたらくまで発生しているほどであります。担当部局に説明を求めたところ、老朽化と予算不足を訴えるのみであり、抜本的な改修策など思いも及ばないというありさまです。
 カジノも夢はありますが、やはり健全な都民にとって身近な夢はスポーツの振興です。東京都は、建設局、教育庁、港湾局に分かれて管理されているスポーツ施設の運営を統合し、スポーツ局の新設を視野に入れ、スポーツ振興を最重点施策の一つとして、一元的、計画的に行うべきと考えます。スポーツ振興についての知事の所見をお伺いします。
 以上で終わります。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 三宅茂樹議員の一般質問にお答えいたします。
 債券市場のスキームに乗らない零細な企業への金融対策についてでありますが、中小企業の振興にとって金融対策は不可欠なものであります。ゆえに、東京都は、本来これは国がすべきことでありますけれども、この三年間でCLO、CBOという債券の実現を総額二千億、対象五千社にやってまいりましたが、ご指摘のように、これは、ある能力、ある可能性を持って、そういう評価、審査にたえる企業でありますけれども、これに該当し得ない零細企業がやっぱり非常に悲惨な状況にあるのは、本当に厳しい現実であります。
 これにどう対処するかということは、非常に、自助努力が何よりも肝要でありますけれども、しかし、やはり都としましても、企業の経営実態に合った、もう少し多様な資金調達が可能になるように、制度融資の充実も含めて取り組めということを、その検討をさきに指令いたしまして、後に局長からも報告があると思いますが、今、検討中であり、作業中でありまして、できるだけ近い将来、何らか独特の手だてを講じたいと思っております。
 次いで、スポーツの振興についてでありますけれども、ご指摘のように、特に、若い子弟にとってスポーツというのは、何を選ぼうと、健全な肉体をつくるだけではなしに、そこに健全な精神を培養していくということで、非常に大事な、人間にとっての方法だと思います。
 ノーベル賞をとった動物行動学のコンラッド・ローレンツも、やはり若いときに肉体的な試練、難儀、苦痛というものを味わったことのない人間は、長じて非常に不幸な人間になるといっておりますが、何も肉体的な苦痛というのは、たたいたりいじめたりすることではありませんで、スポーツのトレーニングというものが、やっぱりそれに耐えるということで人間の強固な脳幹を養っていくわけでありまして、ゆえにも、駒沢の例を挙げられましたが、できる限りスポーツの振興のためのインフラであります施設というものに、東京都もその実現に努力していきたいと思っております。
 他の質問については、関係局長から答弁いたします。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 商店街振興に関する四点のご質問にお答えいたします。
 まず、仮称史上最大、江戸・東京商店街まつりについてでございます。
 この事業は、江戸開府四百年を記念し、活力ある、元気な多くの商店街が参加し、その中には、地域と一体となって商店街が行う防災や環境、福祉の先進的モデルを示す商店街もあると伺っておりますが、商店街の魅力と発展の可能性を内外にアピールする、大変意義のある催しであると認識しております。
 史上最大、江戸・東京商店街まつりを通じて、広く都内商店街の活力ある取り組みなども大いに期待できることから、商店街再生の契機となるよう協力してまいります。
 次に、元気を出せ商店街事業の継続についてでございます。
 この事業については、既に多くの意欲的な取り組みが行われており、お話しのとおり大きな成果を上げ、また、継続を望む声も多数寄せられております。今後、元気を出せ商店街事業を核としまして、商店街振興施策の一層の充実を図るため、施策の再構築を検討してまいりたいと考えております。
 次に、商店街のIT活用策の進捗状況等についてでございます。
 都は、東京都商店街振興組合連合会と連携をとりながら、商店街のIT活用の推進を図ってきました。同連合会は、本年九月、商店街IT推進検討委員会を設置し、来年一月末を目途に商店街IT推進マニュアルを策定する予定と聞いております。また、ITを用いて、都内商店街の実態、動向に関する情報収集を行うモニター商店街の実現に向けても検討を進めておられるところでございます。
 どちらも、同連合会が中心となって取り組んでいるものであり、今後ともIT活用の推進に向け、同連合会と一層密接な連携を図ってまいります。
 最後に、商店街IT化研修における講師派遣についてでございますが、これまで取り組んできた商店街のIT化を一層定着させるためには、IT技術の進展に応じて、それを積極的に活用できる人材を商店街の中に育成することが重要であります。
 都はこれまでも、地域情報リーダー養成講座を実施するなど、商店街のIT技術の向上について支援してきております。今後は、商店街への講師の派遣等、商店街のニーズに、より一層きめ細かく対応できるように支援策を検討してまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 母子保健院の廃止に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、母子保健院廃止に当たっての世田谷区民への情報の周知についてであります。
 地元世田谷区の、都と基礎的自治体である区市町村との役割分担を基本とした小児初期救急医療への新たな取り組みや、国立成育医療センターにおける診療実績など、世田谷区における地域の小児医療に関する的確な情報を、区民、都民に広く周知していくことが重要であることは、ご指摘のとおりであります。
 都としても、これらの情報につきまして、世田谷区と協力しながら、都のホームページを初め、ポスターの掲示、パンフレットの配布等、多様な手段を活用して周知を行うなど、区民、都民の方々に安心していただけるよう、積極的に取り組んでまいります。
 次に、世田谷区内の小児の二次救急医療機関についてでありますが、都は、二次保健医療圏を単位として、小児の二次救急医療の充実を図ってきており、世田谷区が属する区西南部保健医療圏においては、都立広尾病院を初め三カ所の病院で、三百六十五日二十四時間、小児科の専門医が診療できる体制を整えております。
 さらに、区内にある国立成育医療センターにおいても、実態として、母子保健院の実績を大きく上回る救急患者に対応していただいており、世田谷区における小児の二次救急医療体制は確保されているものと考えています。
 最後に、母子保健院廃止に当たっての世田谷区への支援策の充実についてであります。
 世田谷区が実施する小児初期救急医療事業については、都としても、都有地の貸し付けや、施設整備及び運営に対する補助など、必要な支援を行っていくこととしています。現在、世田谷区と最終的な協議を進めていますが、ご指摘の趣旨を踏まえ、地域の小児医療の確保に向けて万全を期してまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 木造住宅密集地域における事業の取り組み状況等でございますが、現在、環状七号線沿線地域を中心に、六十四地区、約二千八百ヘクタールという広い地域を一様に対象として事業を実施しておりますことから、成果が見えにくい状況となっております。
 今後一層事業成果を上げるためには、これらの地域における事業を重点化するとともに、民間事業者の機動力や創意工夫を活用していくこと、事業用地を確保することなどが必要と考えております。
 次に、都営池尻団地の用地を活用した具体的な取り組みについてでございますが、団地敷地の高度利用により生み出される用地を、民間事業者が活用し、密集地域内の転居者に住宅を提供する方策や、不動産の証券化による資金調達、さらには、いわゆるエス・ピー・シーなど新しい民間事業主体の活用など、これまでにない新たな整備手法の構築を進めております。
 今後、都営住宅全体の再編整備や周辺のまちづくりとの連携に配慮しつつ、土地所有者等のニーズの的確な把握、地元区との協議、連携を進め、民間事業者の参入条件の整備など、早期の事業化を目指してまいります。

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