平成十四年東京都議会会議録第十二号

○副議長(橋本辰二郎君) 七十六番土屋たかゆき君。
   〔七十六番土屋たかゆき君登壇〕

○七十六番(土屋たかゆき君) 私は、都議会民主党を代表して、当面する都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 冒頭に、北朝鮮に拉致され、残忍な国家テロの犠牲となった拉致被害者の方々に心より哀悼の意を表するとともに、これらの事件を引き起こした者たちに強い憤りを表明します。二十有余年にわたり、生存を信じて一日も早い帰国を待ちわびてきた横田めぐみさんのご両親を初めとした拉致被害者の家族の方々のやり場のない怒りと悲痛な胸中に触れるとき、私もまた胸が張り裂ける思いがするのであります。
 北朝鮮は、速やかに国家の犯罪であったことを認め、死亡の日時、場所、死亡に至る正確な経緯や事情を明らかにし、拉致被害者の家族、日本政府と国民に正式に謝罪すべきであります。一方で、拉致被害者生存の情報もあり、政府は真相究明を早急に実施する必要があります。いずれにしても、これらの点が解決することなくして、国交の正常化はあり得ません。
 鳩山民主党代表も、小泉総理の訪朝報告に対して、第一に、国交正常化交渉に入るには拉致問題の解決が最優先課題であったにもかかわらず、北朝鮮側の報告は解決とはいいがたい内容であり、死亡者に関する調査や責任者の処罰、補償問題など、北朝鮮側に求めていかなければいけない案件が山積していること、第二に、ミサイル実験、核兵器開発疑惑、不審船事件など、日本の安全を脅かす問題に対して確たる解決の糸口を見出すことが国交正常化交渉再開の条件だったにもかかわらず、その条件が満たされていないことなどから、小泉総理が国交正常化交渉の再開を柱とする日朝平壌宣言に署名したことは時期尚早だったと、厳しく抗議しております。
 知事も、さきの所信表明において、北朝鮮に対し、都民を代表して強く抗議されるとともに、小泉総理に対しても、毅然とした態度を貫くことを強く建言したいと述べられましたが、このたびの小泉総理の日朝平壌宣言署名についてはどのようにお考えか、見解を伺います。
 さて、九月の政府月例経済報告は、景気は一部に持ち直しの動きとしているものの、先行きについては、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の下落など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつあるとしています。個人消費は横ばい、住宅建設は弱含み、公共投資は総じて低調等々、長期にわたって低迷を続ける我が国経済は、小泉内閣のもとにおいても依然脱却のめどは立っていません。
 デフレスパイラルの危機が迫る中で、日銀は十八日、大手銀行などが大量に保有している株式を直接買い取るというリスクの高い方針を決めており、政府にも改めて強力かつ総合的なデフレ対策が求められています。
 しかし、その一方で、法改正等による医療、雇用、介護の社会保険料引き上げや公的年金の物価連動性適用に伴う給付削減が予定されており、その結果、二兆五千億円もの資金が民間企業や家計から政府に吸い上げられることになります。今、議論されている先行減税も、サラリーマンを初めとした一般国民の増税を原資とした法人減税で、かつ結果として増税となることが予想されています。
 市場への資金供給を拡大して個人消費や民間投資を刺激し、活性化させることが求められる中で、それに逆行する政策が進行している現状は、理解に苦しむものであります。知事は、このような政府の経済政策についてどのようにお考えか、見解を伺います。
 こうした世界経済の先行き不透明感と政府の矛盾した政策展開の中で、東京都は七月、財政再建の取り組み状況について冊子を発表し、十五年度予算では三千六百億円という巨額な財源不足が生じる見込みであるとしています。
 この間の財政構造改革の結果、かつて七兆円を超えた東京都の一般会計予算も、平成十四年度予算では六兆円を割り込んでいます。実質的な都税収入が減少する中で、扶助費、補助費等が趨勢的に伸びざるを得ない都財政の構造改革の必要性は理解しますし、財政再建の重要性は十二分に認識するものではありますが、このような厳しい条件の中にあっても、東京再生のために持てる力のすべてを出し切るべきであります。
 幸い、さきの日本政策投資銀行調査による本年度設備投資計画では、全国的には二年連続の減少となっていますが、東京都内においては、製造業、非製造業ともに増加に転じるため、全産業でも四兆八千百七十七億円、前年度比七・二%増と、増加に転じるとされています。
 二〇〇三年問題という不安要因もありますが、こうした民間の動向を後押しし、東京再生を着実に進めるためにも、規制緩和などの制度的改革とともに、都債も最大限活用し、かつ財源の優先的配分を行い、必要な事業を行うべきであると考えますが、見解を伺います。
 また、現在、策定作業が進められている重要施策においても、都民の安心を確保し、東京の経済を活性化させる施策にこそ焦点を当てるべきと考えますが、見解を伺います。
 一方で、東京都の既存の施策についても、その事業の意義や費用対効果を適宜適切に見直し、より有効なものに仕立て直していくことが必要です。
 東京都は、五月に事業別バランスシート作成マニュアルを作成し、まず、行政評価対象事業から事業別バランスシートを作成するとしています。私たちも、これまで再三、行政コストを明らかにするよう求めてきましたが、この事業別バランスシートの作成と行政評価との連携によって、私たちの主張が大きく前進することになります。
 また、このような取り組みの一環として、これも私たちが再三主張してきた都立高校別のバランスシート作成作業も進められていると思いますが、都立高校別バランスシートについては今後どのように取り組まれるのか、見解を伺います。
 さらに、今後の予算編成に当たって、これらの行政評価の結果をどのように反映させるのか、見解を伺います。
 さて、今、株価の低迷が大きな問題となっていますが、都民は社会的に意義のある投資には、決して無関心であるわけではありません。環境対策が進んだ企業を選んでポートフォリオに組み込んだ投資信託であるエコファンドも、昨年初めて市場に登場した際には、当初予想の五十億円を大幅に上回る二百億円以上がわずか数週間で売れたといいます。
 私たちが前回の都知事選で提唱した都民個人向けの都債である市民ボンドも、本年三月に群馬県で十億円の愛県債として発行され、わずか十八分で完売し、東京都の二百億円の東京再生都債もわずか八十分で完売しました。都民の東京都に対する安心感と都政への積極的な参加意欲の表明であります。
 福祉、教育、環境などの分野で社会的に意義のある活動を進めているNPO法人に対しても、一定のインセンティブが働くならば、都民の積極的な貢献が期待できます。NPO法人の活性化は公益の増進につながるとともに、新しい雇用の場にもなります。
 こうしたNPO法人への資金供給が円滑に進むよう、寄附者の意図が十分反映される新たな寄附の受け皿となる仕組みをつくるべきと考えますが、見解を伺います。
 一方で、失業率が史上最も高水準となる六・一%に達しているという現実は、最も貴重な資源である労働力を活用し切れていないということでもあります。東京都は、年間七千九百四十三人規模の職業訓練を実施し、就職率も七一%に達していますが、いまだ求人、求職のミスマッチが解消されたとは到底いえないのが現状です。
 また、民間企業のリストラ、相次ぐ倒産などによって、労働組合に組織された勤労者も、平成五年の二百三十八万人から、平成十三年には二百十一万人に減少し、一方、この傾向に反比例して個別労使紛争が激増しています。
 東京都の労働相談も、毎年五万人前後という高水準で推移しています。平成十年度から十二年度にかけて減少していますが、これは労政事務所を一所廃止したことによるものです。すなわち、需要が減少したのではなく、供給を減らした結果として件数が減少したにすぎません。
 現下の厳しい雇用情勢に対応し、解雇等の労使間のトラブルを解決するとともに、一人でも多くの失業者を解消することが東京都の重要な課題であり、万全を尽くす必要があると考えますが、見解を伺います。
 次に、地球環境問題について伺います。
 ヨハネスブルクで開かれた持続可能な開発に関する世界首脳会議、いわゆる環境開発サミットが九月五日に閉幕しました。この会議に対する期待が大きかっただけに、実施計画をまとめるにとどまった結果に対して多くの不満が残りました。
 特に日本は、五百人という最大の政府代表団を送ったにもかかわらず、十分なリーダーシップを発揮できず、また、CO2削減のために二〇一〇年までに風力や太陽光などの再生可能エネルギーの割合を一五%とするEUの提案に対して、アメリカや産油国とともに反対したことに対し、疑問の声が上がりました。
 石原知事は、地球環境の保全のために日本がとるべき姿勢についてどのようにお考えか、今回のヨハネスブルクサミットの結果も含めて伺います。
 東京都は、国に先駆けてことし二月二十日に地球温暖化阻止東京作戦を打ち出し、オフィスなどの大規模事業所へのCO2排出削減義務など、五つの提案を行っています。
 東京都では、ことし四月から、環境確保条例に基づき、みずからの事業活動による温室効果ガスの排出量の把握とその排出抑制策等を求める地球温暖化対策計画書制度をスタートさせています。しかし、八月二十三日に環境局がまとめた集計結果では、CO2排出削減率は平均で約二%と、環境基本計画で示している削減目標の達成は困難な状況となっています。
 東京都は、この秋にも地球温暖化対策基本方針を策定する予定ですが、削減量の義務化を含め、事業所への対策をさらに強化すべきと考えますが、見解を伺います。
 東京都におけるCO2排出量のうち、二割以上が家庭部門から排出されています。地球温暖化対策を実効性のあるものとするためには、この家庭部門対策を抜きには考えられません。
 東京都は、地球温暖化阻止東京作戦の一環として、ことしの七月から八月の二カ月間、省エネ商品拡大キャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、家電製品の省エネ水準を四段階に示した独自のラベルを店頭表示するという新しい試みがなされ、大きな反響を呼びました。しかし、今回の取り組みは期間も限られ、また、対象の家電製品もエアコンと冷蔵庫の二つに限られ、実施された店舗も協力販売店だけに限られていました。
 私は、消費者が省エネ商品を選択できるように、こうした取り組みをさらに拡大、充実し、家庭部門における温暖化対策を推進すべきと考えますが、見解を伺います。
 環境省のヒートアイランド実態解析調査検討委員会では、二十三区の気温が二十年前と変わらなければ、七月から九月の期間で約二十九・五万トンのCO2排出量が節約できると指摘されています。
 石原知事は、所信表明において、来年早々に今後の取り組み方針を策定すると述べておりますが、その内容につきましては、風の道を初め、私たちが提案してきた施策についても確実に盛り込まれることを期待します。
 ヒートアイランド対策の今後の取り組み方針を策定するに当たっては、都市計画や施設建設など、都市づくり部門での施策のあり方にも言及するような積極的な取り組みが必要と考えますが、見解を伺います。
 次に、森林再生について伺います。
 平成九年に合意された京都議定書において、我が国は、数値目標として温室効果ガス六%削減を設定していますが、このうち三・九%が国内森林による吸収量分として期待されています。この目標の達成のために森林再生は極めて重要です。
 東京都は、今年度から多摩地域の人工林一万八千ヘクタールに対し、五十年をかけて順次間伐を行い、広葉樹を育成し、針広混交林としていくという、多摩の森林再生事業を開始しました。
 石原知事は、あす地球が滅びるとも、君はきょうリンゴの木を植えるという言葉をよく引用されますが、私たちもこうした遠大な事業を、関係者の理解と協力を得ながら積極的に推進すべきと考えます。現在の進捗状況も含め、見解を伺います。
 また、温暖化対策と森林再生とを進める上で、私たちは自然エネルギーとしてのバイオマスの活用に注目しています。
 EUでは、地球温暖化対策として、自然エネルギーの割合を二〇一〇年までに一二%に倍増する計画がありますが、自然エネルギーのうち八割はバイオマスだそうです。また、あのアメリカでさえも、エネルギー消費量に占めるバイオマスエネルギーの割合を、二〇一〇年までに三倍に増加させるための施策が講じられています。日本は、この点でまだまだおくれておりますが、間伐材などを原料とする木質バイオマスは、地球温暖化対策としても有効なだけでなく、林業を活性化する上でも極めて重要です。
 東京都も、今年度の重要施策に木質バイオマスの利用促進を掲げたところでありますが、私は、さらに木質バイオマスの利用に向け、積極的に取り組むべきと考えます。見解を伺います。
 また、森林に手を入れて、間伐をより着実に実施していくためには、木材の利用を推進していく必要があります。石原知事は、所信表明の中で、森林から伐採した間伐材を道路でのガードレールとして活用すると述べており、新たな木材利用の促進策を打ち出されたことは歓迎するものです。
 しかし、例えば、ガードレール以外でも、学校などの公共施設の木造化、あるいは壁や床などの内装部について木質化を図ることができるのではないでしょうか。また、建物本体だけでなく、学校の教室内の机やいす、公園のさくや遊具など、利用可能と思われるものは多々あるように思われます。
 私は、多摩産材の利用をさらに推進していくために、公的な分野で積極的に多摩の木材を活用していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、木材利用を推進していく上で、民間の市場において有望と見られるのは、住宅建設における多摩産材の使用です。東京都では、昨年十一月に東京の木・いえづくり協議会を発足させ、パンフレットの作成やシンポジウムの開催を通じて、東京の木を使った家づくりの普及啓発に努めているところです。しかしながら、他県においては、地元産の木材を活用して建設される住宅に対して、木材を無償で提供したり、建設費を一部補助したり、低利融資を実施したりしており、これらに比べると、東京都の取り組みは物足りなさを感じます。
 もちろん財政状況の厳しいことは承知しておりますが、木材利用の促進を図る上でのトータルコストを勘案し、多摩の木材を使って住宅を建てたいと思っている都民へのインセンティブを検討することも必要です。多摩の木材を活用した住宅供給の仕組みづくりについて積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 多摩産材の利用を推進するとともに、多摩の森林を適正に管理していくための仕組みづくりも重要です。
 国においては、今年度、森林の持つ公的機能を評価して、森林一ヘクタール当たり一万円を交付する森林整備地域活動支援交付金制度を創設しています。この制度は、高齢化しつつある個人や所有者不在の森林などを、経営意欲のある人たちなどに集約を図り、森林の適正な管理を支援するというものです。しかし、東京都では、こうした視点からの取り組みがまだ実施されていません。
 私は、東京都の森林の適正な管理に向けて、森林整備地域活動支援交付金制度を導入すべきと考えますが、見解を伺います。
 さて、森林再生は、多摩地域だけの課題ではありません。私たちが提案していた臨海部の中央防波堤内側における森林構想は、ことし二月の海上公園審議会答申などを踏まえ、行政ベースでも着実に取り組みが進みつつあります。この場所は、平成八年五月十九日開催の第四十七回全国植樹祭において、天皇陛下がイチョウ、スダジイを、そして皇后陛下がイチョウ、オオシマザクラをそれぞれお手植えされた場所でもあり、まさに森と人との新たな共生関係を築いていくための拠点でもあります。
 都市再生本部の決定などを受け、七月十八日には、国土交通省が臨海部の森づくり研究会を立ち上げましたが、いうまでもなく、この土地は都有地であり、都民の貴重な財産です。国が研究会を立ち上げたとはいえ、東京都みずからがリーダーシップを発揮して、臨海部の森林再生に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、大気汚染対策について伺います。
 私の地元、板橋区大和町は、自動車の排出ガスによる大気汚染で有名で、平成十三年度の二酸化窒素の測定結果は〇・〇五五ppmと、都内ワーストワンを記録しました。また、大和町に限らず、都内の汚染状況は、前年度よりさらに悪化しています。
 このような中、来月二十九日には、ぜんそく患者らが国や東京都、首都高速道路公団、自動車メーカー七社を訴えた東京大気汚染公害訴訟の第一審の判決が下される予定となっています。石原知事は、今回の所信表明で、この裁判は一種の文明批判であり、真摯に受けとめる必要があるとの認識を示しました。
 また、一昨年一月には、尼崎公害訴訟判決を受けて、東京で起きている裁判も、尼崎と本質的には同じとし、行政の責任は間違いなくあると述べておりました。
 私は、東京都の大気汚染が悪化した責任は、間違いなく行政にあり、その根本的な責任は国にあると思いますが、東京都にも一端の責任があることは否定できません。法的な責任については裁判所の判断にゆだねるとしても、それ以上に被害を拡大させないための対応が必要であると考えますが、見解を伺います。
 大気汚染に苦しむぜんそく患者団体などは、自動車メーカーの責任も追及した上で、東京都の医療費助成における年齢制限を見直すべきだと主張しています。
 自動車メーカーの責任については、昨年十二月、東京都税制調査会の答申でメーカー課税を打ち出すに当たり、国内自動車メーカーが、環境負荷の小さい低公害の自動車の生産のために、ぎりぎりの努力をしているとはいいがたいとの認識を示しています。
 また、平成十二年第一回定例会では、大気汚染健康障害者医療費助成制度に関する条例の改正に当たり、都議会は、原因者の責任と負担のあり方、対象者の範囲や認定方法など、制度全般にわたる総合的な検討を行うことといった付帯決議を付しました。この付帯決議に基づき、認定方法を改善してきていますが、それは付帯決議のほんの一部にしかすぎません。浮遊粒子状物質などによる健康影響調査をなるべく早く取りまとめ、制度全般の見直しに早期に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 このような大気汚染状況を解決すべく、石原知事が打ち出したディーゼル車NO作戦も、いよいよ環境確保条例として、来年十月からスタートになります。条例施行まで、あとちょうど一年となり、石原知事が所信表明で述べられた違反ディーゼル車一掃作戦は、まさに時宜を得たものであると考えます。
 東京都は、その作戦の第一に、二十台以上の自動車を使用する事業者に対して、自動車Gメンによる立入指導を行うとともに、二十台未満の小規模事業者には、ダイレクトメールにより規制内容を個別に周知することを挙げています。しかし、都内で規制される車二十万二千台のうち、二十台未満の事業者で使用されている車は十三万一千台と、六五%もあり、これら事業者の中には、条例に従うだけの体力がない零細な事業者も多いものと思われます。
 私は、こうした事業者に対しては、周知だけにとどまらず、立ち入りや適切な支援を講じることで、ディーゼル車規制が円滑に実施されることを求めるものですが、見解を伺います。
 次に、福祉改革について伺います。
 福祉分野においては、国の社会福祉基礎構造改革が進み、措置から契約への大改革が進行しています。東京都も、障害があっても可能な限り自立して、地域で当たり前の生活を送るノーマライゼーションを基本とし、行政は必要な支援を行うべきものへ変えていくというシステムづくりを進めています。
 しかしながら、施設入所偏重の実態は相変わらずで、施設待機者の解消は進んでおりません。その原因として、障害者の地域生活を支えるケアマネジメントや権利擁護、また生活寮など、利用者本位に欠かせない基盤整備のおくれがあります。このような現状において改革を推進していくためには、まず基盤整備を進めることが必要と考えますが、見解を伺います。
 地域での自立生活への移行に際しては、来年度から障害分野において導入される支援費制度において、利用者の自己決定、自己選択を支える仕組み、その他の区市町村の果たす役割が大きくなります。東京都として必要な支援を行うべきと考えますが、見解を伺います。
 また、TOKYO福祉改革STEP2において、多様な主体の参入を図り、競い合いを通じた質の高いサービスを実現といった表現を繰り返し用い、市場原理の導入によるサービス向上を強調しています。確かに多様な民間事業者の参入により、不足している基盤整備が進むことが期待されますし、その必要性は、私たちもまた指摘してきたところです。
 しかし、NPOや株式会社の参入に際しては、まず適切な支援制度の確立と、事業の安定性、継続性が約束されない等のデメリットへの対応策としてセーフティーネットを確保するなどの条件整備を行うことが必要です。
 また、民間社会福祉法人に対するサービス推進費制度は、全国一律の国基準である措置費制度に対し、東京都特有の事情にかんがみ、独自に加算を行って、東京の福祉サービス水準を維持、向上するために実施してきたものです。このようなサービス推進費の役割からして、措置制度から契約制度に移行することで、都加算補助の必要性が減ずるとは考えられません。
 再構築は、自立支援へと、大きくあり方を転換している福祉の基本方針に合わせ、利用者ニーズにこたえ、質の高いサービスを提供するなど、福祉の向上に取り組むものに報いるものとして、都民の税金が福祉向上に最大限の効果を生むようにすべきと考えますが、見解を伺います。
 なお、この間、検討委員会の提言による都立施設廃止、補助金廃止というニュースだけが流れる一方、東京都側による十分な説明がないために、利用者はもちろんのこと、サービスを支える職員にも多大な不安と混乱を与えています。利用者本位という理念を掲げるのであれば、もっと真摯な対応が必要であるということを申し添えておきます。
 次に、都立病院改革について伺います。
 平成十三年十二月に発表された都立病院改革マスタープランに示されている各都立病院の統廃合に関して、本年度中に基本構想の詳細を検討するというスケジュールとなっております。また、都立病院を統廃合して整備する医療センターについては、マスタープランで開設予定時期をそれぞれ明確に示しております。
 しかし、統廃合の対象となる病院を持つ地域の住民にとっては、深刻な問題であります。開設予定初めにありきで統廃合を急ぐのではなく、当該地域、関係者との合意形成にじっくりと取り組むべきと考えます。
 基本構想の詳細を詰めるに当たっては、地域住民への説明や医療機能の代替措置の確保についてどのように進めているのか伺います。
 マスタープランにおいて示された統廃合計画の中で、いち早く廃止が実施される都立母子保健院について申し上げます。
 先般、都議会民主党は、母子保健院を訪れ、現地をつぶさに見、現地の声を、現場の声を聞いてきました。建物の老朽化は想像を超えた激しさであり、敷地の狭隘さ、診療体制の不十分さをスタッフの熱意でカバーしてきたことを理解しつつも、同時に、その限界をも感じたところです。
 都立母子保健院の廃止については、他の都立病院にその機能を移し、サービス提供を続けるとのことですが、当該地域から母子保健院が担っていた医療機能が消滅するという事実にはかわりはありません。母子保健院は、世田谷区民の占める割合は、外来で八割、入院で六割と非常に高く、世田谷の小児、周産期の地域医療に大きな役割を果たしてきたという実態があります。
 一方で、少子化や、身近に子育て経験者がいないなどの理由から、ぐあいが悪くなればいつでも診てほしいというコンビニ医療の需要が高まって、深夜に救急外来を受診する小児の軽症患者がふえています。こうした事態に対応するためにも、親の不安を解消し、救急外来を受診すべきか、あるいは、翌朝、小児科を受診しても大丈夫なのかといった相談に対応するサービスが求められています。
 こうしたことからも、母子保健院の廃止に伴う地域医療の確保に当たっては、当該病院が地域医療に果たしてきた役割を総合的に勘案して、代替措置を講ずる必要があると考えますが、見解を伺います。
 なお、小児科医の不足が全国的に深刻化しており、東京都においても、小児医療体制の整備について早急に対策を講じられるよう求めておきます。
 次に、産業振興について伺います。
 ことし八月に、東京都中小企業振興対策審議会から、都のものづくり振興のあり方についてとする答申がなされました。多くの方々の意見の集大成として、ものづくり産業を振興するための処方せんともいうべき多くの施策が提言されており、それらの施策が早期に実現されることを期待するものです。
 ところで、デフレ不況とも形容される現下の経済状況にあっては、ものづくり産業の中核である製造業のみならず、広範囲な業種で厳しい経営が余儀なくされています。そこで、この答申に示された環境整備や企業の体力アップ、そして、何よりも人材の育成についての処方せんを活用し、ものづくり産業はもとより、東京の他の産業振興にも役立てていくべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 答申は、工場等の再配置政策の見直しなど国の制度転換を求める事項が多く、気にかかるところですが、東京都の主体的な取り組みとして、全庁的な組織として産業力強化会議の設置が打ち出されています。産業力強化会議は、産業労働局だけでなく、都市計画局や教育庁などの関係する複数の局が全庁的な立場から参加する組織であり、先日、早速この会議が開催されたことは、率直に評価するものです。
 私は、今後、この会議で検討されるであろう事項には、時間が要するものもあると思われますが、実現できる事項については、早期に実現していくべきと考えます。産業力強化会議での今後の取り組みについて伺います。
 また、答申では、知的財産で戦う、マーケティング力を高めるなど魅力的な戦略が述べられており、大いに推進していただきたいと思います。
 ところで、ものづくり産業の中核ともいうべき東京の製造業は、従業者数が三名以下の小規模工場が半数以上を占めています。中小企業施策の軸足を競争力の強化にシフトしていくことは、私たちの主張するところですが、このような家族で経営しているような非常に零細な製造業には、特許やブランドといった知的財産権と呼べるツールや、マーケティングを行う手間暇を確保するのは非常に困難なのが現状です。
 私は、必死に頑張っている零細な製造業に対しても、この困難を克服するよう支援策を構築していくべきと考えますが、見解を伺います。
 また、ものづくりは人づくりであるともいわれるように、次代を担う技術者、技能者の育成を抜きにしては、今後のものづくりの振興はあり得ません。答申にあるように、技術者、技能者の評価を高めたり、学校教育において、ものづくり教育を行うことも重要であると考えます。しかし、生徒が就職後に初めて企業での研修を受け、一から実践的技術、技能を習得するような状況では、戦力となるまでに時間を要するばかりでなく、就職する前に適正を見出す機会もないために、せっかく就職したにもかかわらず、短期間に離職する者が多くなります。
 これらを解決するため、九月十一日に出された東京都産業教育審議会答申では、ドイツのデュアルシステムを参考にした、学校教育と企業の現場が連携して人材の育成を図る、東京版デュアルシステムが提唱されました。この東京版デュアルシステムは、まさに時宜を得た提唱であり、積極的に取り組むべきと考えます。
 そこで、教育長は、この東京版デュアルシステムを具体的にどのような内容で実施するのか伺います。
 また、東京都中小企業振興対策審議会の答申では、産業労働局が東京版デュアルシステムの導入に協力することが必要であると述べております。教育庁と産業労働局が協力することは、ものづくり人材の育成に必要不可欠なことであります。そこで、産業労働局としても、東京版デュアルシステムに対して積極的に協力していくべきと考えますが、見解を伺います。
 さらに、答申では、高度な技術、技能を継承していく必要があるとしています。私も、今ある技術、技能を若年者へ伝えていくことが、あすの日本を支え、あすのものづくり産業を支えるものであると考えます。ものづくりを担う人材の育成を、学校や企業と連携して積極的に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、観光産業の振興について伺います。
 東京の観光産業の振興を図るためには、例えば、日光や鎌倉、箱根、そして京都や奈良も、東京都と連なる観光地だとの発想に立つ施策転換を図ったり、東京都が主催あるいは後援をしているイベントについても、各局間の連携を強め、集客力の大きなイベントに仕立て上げていくなど、従来の発想を超えた施策展開が求められています。
 石原知事の提唱する千客万来の世界都市東京、絶えず年間六百万人を超す外国人が訪れる東京を現実のものとするためには、少なくとも、現在示されている東京都観光振興プランをよりダイナミックに展開していくことが欠かせない要件であると思います。知事も、そうした考えのもとに、観光部門を生活文化局から産業労働局に移すとともに、それまでの課を観光部に格上げし、体制を倍増させたものだと思います。
 しかし、これから展開しようとしている事業の大きさ、そして、その幅の広さを考えるならば、一層のこと産業労働局からも独立させ、より戦略的な、そして攻撃的ともいえる事業展開をさせるべきと考えます。知事の見解を伺います。
 さて、東京都では、欧米の主要都市に対して三年間シティーセールスを続け、その後は個人契約の観光レップを置き、そこを拠点に五年間シティーセールスを続けるとの計画を発表しています。新たな手法の導入であり、一定の評価はしますが、執行体制としては不十分ではないでしょうか。
 本腰を入れて外国人旅行者を誘致する各種コンベンション、また海外エージェントの招聘に確実なる成果を求めるならば、やはり、ここと目した都市には正式な現地事務所を置き、東京都の職員を配置し、PR活動はもとより、マーケティング調査から誘致活動までしっかりと行える執行体制をつくるべきと考えますが、見解を伺います。
 次に、治安対策について伺います。
 私は、石原知事が所信表明において、来日外国人や暴力団の組織犯罪の対策強化に向け、専門の組織を新たに設け、取り締まりの強化を図る方針を明らかにしたことを大いに評価するものであります。
 あわせて、都民生活の安全を守るため、昼夜を問わず防犯、治安対策の最前線で努力を重ねている警視庁職員の労を心からねぎらうものであります。
 ことし九月に発表された警視庁の統計によると、都内における来日外国人検挙状況は、ことし六月までの半年の実績で四千七百二十五件と、昨年の実績より百六十二件もふえており、外国人犯罪の増加が顕著となっています。中でも、凶悪犯罪を起こした者の大半が不法滞在者あるいは不法入国者であるという事実は、見過ごすことができません。
 こうした都民の日常生活の隣にある危機を防ぐこと、それは、いうまでもなく犯罪発生の抑止力を上げるということであります。新警視総監の防犯、治安維持にかける決意のほどを伺います。
 さて、今申し上げましたとおり、来日外国人による犯罪の現況は看過できるものではありません。犯罪発生の温床となっている不法滞在の来日外国人への対処姿勢を、より強固にする必要があります。
 不法滞在者問題は、東京都だけの問題ではありません。国を挙げて取り組まない限り、事の進捗は図れないと思います。場合によっては、国に法改正を求めることも考える必要があると思います。東京都としては、不法滞在者問題をどのように認識しているのか、見解を伺います。
 以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。知事並びに関係局長の誠意ある答弁をお願いいたします。
 ご清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 土屋たかゆき議員の代表質問 にお答えいたします。
 まず、日朝平壌宣言についての見解でありますが、実は私、この夏前に何度か、直接間接、総理にあることを申しました。それは、いろんな人事の問題なんかのつまずきもありまして、要らざる、何というんでしょうか、損失として支持率を失っていたころでありましたけれども、政治に対するその信頼性というものを取り戻すのに、たまたまあの頃、「よど号」のハイジャック犯人の元妻が、自分が働いて有本さんを誘拐したということを日本の当局に告白しました。前後して、不審船がああいう形で自沈して、これを引き揚げるという作業が準備されている。
 私は、私たちの国家社会の安危にかかわる、さまざまなけしからぬ行動を重ねてきた北朝鮮に対する総理の姿勢がきちっとすれば、これは格好の政治に対する信頼を取り戻す引き金になるということを申しました。その結果かどうか知りませんけれども、あの時点で総理が拉致問題というものの黒白つけるために、北朝鮮にみずから赴くということは大変結構なことだと、私は支持いたしましたし、期待もしております。
 ただ、あそこで出された宣言を見ますと、私にとっては、いささか不本意な感じがいたします。多分、あの宣言は、外務省の例のやり口で、事前に作成されていたものを、せっついて当日、調印させたんだと思いますが、あの内容は非常に偏ったものでありまして、日本側は、過去の植民地支配について痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明云々と書いてありますが、日韓の併合というのは、欧米がアフリカやアジアや中東でやってきた植民地支配と、かなり質的に違うものだと私は思います。これは、それぞれ歴史観の問題でしょうけど、私は違うと思う。
 ただ、やっぱり歴代の官房長官が、日本の歴史の規定をしたがる韓国なり北朝鮮なり中国に、いいなりになって、内閣のスポークスマンとしてそれを受け入れざるを得ないようなコメントをしたことに、私は自民党の国会議員として非常に強く反発しましたし、反対でありましたが、今回のこの平壌宣言の根底にある外務省の歴史観というのは、これ、一部のものであり、偏ったものであって、私はこれは決して妥当なものだと思わない。
 これは、例えば、ごらんになった方がいらっしゃるかどうか知りませんけど、過日、この問題が起こったときに記者会見で問われましてね、私は日韓の併合、日朝の併合について、一番冷静な、柔軟な物のいい方をしていたのは、二代目の大統領であった朴大統領だと思います。ここでそれをつまびらかにいたしませんけれども。
 一方、北朝鮮が繰り返してきた、状況証拠だけでいえば、七十人、八十人、百人に及ぶという日本人の拉致の被害者がある。しかも、片方では、あの工作船がみだりに何度も入ってきて、日本の暴力団も使って、警視総監はご存じでしょうけれども、十数トンの覚せい剤を日本に輸入して、あちこちで二キロ、三キロの覚せい剤を押収したって末端価格が上がらないぐらい、こういう危険な薬がはんらんしている。
 こういった事実、あるいは殺人につながる膨大な数の拉致というものを、向こうの指導者が事実としてそれを認めたならば、何であの文言の中に具体的に列挙しなかったんでしょうか。これは――ただ、この文言は、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、北朝鮮側は、日朝が不正常な関係の中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないように適切な処置をとることを確認した。遺憾な問題が何と何と何かということを列挙するのは、私は、向こうの責任だと思いますし、それを書かしめることも日本の外務省の責任だと思います。
 これは、こういう形で終わったということは、私はやはりいささか不本意でありますが、いずれにしろ、これから、調印した宣言にのっとって日朝の国交正常化へのステップが刻まれていくんでしょうが、その過程でやはりこの問題を、国民の声を背景にして政府にきちっとしてもらいたいということを、私は、都民を代表し、国民を代表して、ここでも申し上げますし、また、折あれば総理にも外務省にもいっていくつもりでございます。
 次いで、政府の経済政策についてでありますが、ご指摘のあった事例にかかわらず、国は、どうも複合的な視点で政策を論じ、相対的な優劣を比較する、能力とまではいいませんけれども、姿勢が積極的でない。ですから、なかなかものを決断することができない。同時に、一たん決めても、それを徹底して行えないという、非常にもどかしさを私感じております。
 総理の公約であります不良債権の処理についても、国は、その入り口となる金融情勢の認識をめぐって統一見解を示すことができませんし、したがって、具体的な政策を発動する様子が余りうかがえない。先般も、東京が最大の預金者であります、かつての富士銀行が合併してできたみずほ銀行の実態について、出納長の責任でくまなく調べましたが、内容を聞いて、こちらは唖然とせざるを得ない。しからば、これに対して一種の危機というものを東京が予測して果断な措置をとれば、これは単に、みずほの問題だけじゃなしに、日本の金融界そのものについて瓦解につながりかねない問題ですから、担当の大臣の柳沢君に私会って、聞きました。確かめました。ほとんど現状の認識がない。
 その後、金融庁はみずほ銀行に、もっと本当のことを話せ云々のいろいろ働きかけがあったようでありますが、日本の金融機関というものを監督する最高責任者である金融庁が日本最大の、あるいは彼らにいわせれば、三社合併して世界最大といっていますが、この銀行が、あのコンピューターのシステムの不祥事であれだけの迷惑を預金者にかけていながら、その実態というものを把握していないということは、つまり、有力な銀行というものの態様、これは銀行プロパーの問題ですけれども、それすら把握していなければ、そういうものを束ねた形での日本の金融界のための正当な政策というものが出てき得ないのじゃないかという気がいたしますし、つい最近も、日銀は、銀行の保有する株式を買い取るという思い切った政策を示しました。私は、これは一種の禁手だと思いますね。それをあえてやったことで、あるべき議論が一向に政府の中にない。肝心の政府が非常にこのやり口に対して冷淡ですし、反応があるような、ないような……。
 これは、私はやはり、国の経済政策の不一致を露呈する一つの証左だと思います。これで、かつての社会党、共産党が、国鉄を悪くすることが日本をよくする唯一のすべだといって、黒表紙で、ばかげた小冊子で、幹部の養成して……(発言する者あり)読んでみろ、それを。そして、ああいう破綻を来した。それを民営化することで立ち直りつつありますけれども、しかし、あの不良――何というんでしょうかね、要するに一種の不良債権、債務でしょう。とにかく国鉄の清算事業団が努力していますけれども、皆さん忘れてしまっているけれども、あれを抱えたまま一向にらちの明かない二十数兆の赤字というのは、あのとき、民営化するときに決めた法律によると、これから何年か先、国民の税金で負担されることになるんですよ。
 この日銀の、要するに原資を食いかねない不良の債権である株式を日銀が買い入れるということも、結局は最後は、うまくいかなければ国民の税金の負担になるということは自明なので、そこら辺が、どれだけのタイムスパンで政府が今後いろいろな努力をして、日銀のそういう努力が実るような諸策を講じるかということはまだまだわかりませんが、しかし、やはり、そういうリスクも想定した正当な討論が国政のレベルでいまだにないということが、私は非常に心もとない感じがいたします。東京はその巻き添えにだけはなりたくないと思います。
 次いで、東京再生の取り組みと十五年度予算編成についてでありますが、繰り返して申しましたけれども、都財政を取り巻く環境は極めて厳しく、来年度予算編成に当たっては、何よりもまず、全体として歳出総額を厳しく抑制するなど、財政構造改革をさらに進めていく必要がございます。
 しかし、こうした中においても、首都東京の再生を初め、東京が直面する課題に対しては的確に対応していくことが不可欠でありまして、ご指摘のように、規制緩和によって民間活力を積極的に活用するなど、創意工夫を図りつつ、限りある財源を重点的、効率的に配分し、必要な事業を着実に進めていきたいと考えております。
 次いで、地球環境の保全についてでありますが、たびたび私言及しておりますけれども、十数年前に日本で講演を行ったときに私が聞きました。あのブラックホールの発見者である天才的な宇宙物理学者のホーキングがその講演の中で質問を受けまして、答えの中に、地球のようなかなり高度な生物が生息し、高度な文明を保有した惑星は、我々が視認し得る太陽系以外の宇宙を含めれば二百万ほどあるだろう、しかし、それが割と簡単に消滅していくのは、これぐらいの文明を持った惑星というのは、非常にいろいろな形で不安定になって、宇宙時間の総体からすれば瞬間的に消滅する。そして、彼の暗示では、地球というか、地球に生息するいろいろなものを意識し、認識する動物である人間の寿命というのは百年足らずだろうということをいいましたが、私は、それは恐ろしい予言であると同時に、それを明かすような事態が、今、地球全体に進行しているわけでありまして、かつてのヨハネスブルグサミットを見ましても、危機意識のある国は集まりはしました。アメリカはやってきませんでしたが、しかし、結局、その主張はそれぞれ、国のエゴティズムというものを踏まえておりまして、確たる総意というものが一つのアイデンティティーとして確認されることはなしに、非常に不満な形で会議は終わった。
 こうした状況にあっても国が動かないなら、我々はやはり、子孫に対する私たちの志として、東京都は東京都でさまざまな行動を起こし、できればそれが国を動かすきっかけになりたいなと思っております。
 また、中小企業振興対策審議会の答申で示された振興策の活用についてでありますが、一々もっともの答申でありまして、非常に参考にもなりましたが、実はこれは自明なことでもあります。いずれにしろ、この供給過剰なデフレ現象の中で、先ほど申しましたが、何をいかにつくるかということを、私たちは真剣に考えなくちゃいけないと思います。
 先般、あるところで、イトーヨーカ堂の鈴木さんですか、社長に会って話をしたときに、自分たちは日本で有数の流通機構というものを抱えていて、現況のデフレといわれているこの経済状況の中で痛感することは、よいもの、新しいもの、新しくてよいものは必ず売れます、それがないんですということをいっていましたが、これは非常に示唆に富む言葉じゃないかと思います。
 次いで、観光産業の振興の事業展開についてでありますが、ご指摘のように、私は、観光というのは非常に有力な、現代的な産業だと思いますから、生活文化局から産業労働局にこれを移しました。また、スタッフもふやしまして今やっておりますけれども、やがてこれが実ってくれば観光局も誕生するかもしれませんが、いずれにしろ、まず新しいステージとして、都なりの努力をしておりますけれども、たまたま運輸相のときに私の秘書官をしておりました優秀な人材が、今度の国交省で観光部長になりまして、いろいろな話をまたしておりますけれども、国もようやく、産業としての観光というものを意識し出したようであります。
 大事なことは、さまざまなニーズがありながら、それに微妙にこたえていく情報の整備がないんです。この間ワールドカップで東京にイギリスチームのサポーターがたくさん来ました。これは、ありていにいうと、生活水準のそう高くない、つまりそれほど裕福でない、しかし熱狂的なサッカーのファンでして、日本でワールドカップがなければ一生に一度も日本に来ることもないような人たちですが、この人たちが、下町で一番安い宿を選んで、そこで住んで、イギリスというのは驚くほど物のまずい国ですから、彼らからすれば、下町で食べるそこらの焼き鳥屋だっておでん屋だって物すごくおいしくて、みんな感心して、いい国だ、いい国だという話を聞きましたが、次のイギリスの試合まで四日間あるんで、どこかへ旅行にいこうと。みんな一種のバックパッカーですから。それでいろいろ情報を取ると、全然ない。あるのは旅行社が組んだツアーばかりでありまして、それは日本人は好きかもしれないけれども、相手は個性のある個人主義というものを体得しているヨーロッパの人間には向かないというような形で、そういう情報というのは非常に未整備だということを改めて痛感しました。
 実は先般、区市町村の首長さんの会議がありましたときに、東京が責任持って編集しますから、それぞれ預かっていらっしゃる区市町村での売り物、観光の対象物があったら、ぜひ教えてください、それを東京がとにかくうまく束ねて、東京という魅力を、外国人だけでなしに、東京は何といったって日本一の観光地でありますから、そこで日本の同胞に知らせますという話をしましたが、余り反応がないですな。結構だ、ありがたいといいながら、全然答えが来ないね。
 この間、水元公園に私は念願かなって参りました。私はびっくりしたんですけれども、あれね、樺山さん、何であそこでボートのレガッタやらないんですか。昔は、隅田川の曲がりくねったところで、コックスやかじを微妙に引きながらやったんだ。あそこでやったら、もう大名所になりますよ。いっちゃ悪いけれども、戸田の水路みたいな真っすぐな退屈なところじゃなしに、あそこでやるということは私はすばらしいと思うんだけれども、資源がありながら、それを活用する発想がないということは、日本の観光産業の限界ではないかという気がいたします。
 最後に、不法滞在者の問題でありますけれども、これは非常にやっかいきわまりない話でありまして、そもそも不法入国する限り、正当な合法的な就労ができないわけですから、不法入国した瞬間から、つまりはこれは一種の犯罪要因でありまして、後ろ暗い生活をせざるを得ない。また、日本では、そういう努力が、何がしかのお金を獲得すれば、本国へ持って帰るとべらぼうなもののようでありまして、後を絶たない。
 これは国の問題ですけれども、私はかねがね建言しているんですが、もとは外国人の入国管理というのは、国は内務省がやっていたんです。ところが、戦後これが法務省に切りかわりまして、いっちゃ悪いけれども、法務省の省としての限界があって、私はやはり、これは警察庁が管轄することで、こういったものを積極的に防いでいく一つの手だてになると思うんです。
 いずれにしろ、今度、警視庁も新しい組織をつくって、こういったものを抑制し、撲滅していく努力を開始いたしますが、いずれにしろ、先ほどの質問にもありましたけれども、日本に今までなかった非常に異常な性格の犯罪が頻発しているということは、私たち、相当深刻に受けとめませんと、特にスネークヘッドですか、蛇頭のような強力な組織が、全然北京のコントロールのきかないままに組織的にこういう不法入国というものを助長する。下手をすると、これが日本の暴力団と相まって、今までなかった、ちょうどアメリカの、シチリアやナポリをベースにしたマフィアができたように、日本にそういう犯罪組織が確固として定着しかねないと私は懸念しております。
 いずれにしろ、国にも働きかけまして、こういう事態が進行する中で最大の被害者は東京都民でありますから、これを食いとめる努力をこれからも都なりにしていきたいと思います。
 他の質問については担当の局長が返事します。
   〔警視総監石川重明君登壇〕

○警視総監(石川重明君) 治安対策についてお答えをいたします。
 都内の治安情勢でありますが、犯罪の凶悪化、国際化、組織化等が一段と進展をしている中で、大変厳しいものがございます。
 この治安悪化をしております要因はいろいろございますが、その最大なものが、来日外国人の組織犯罪であるということについては、私どもも同じ認識を持っているわけでございます。特に、最近では、外国人の犯罪組織、暴力団、さらには銃器、薬物の密輸、密売グループが相互にさまざまな形態で結びつきを強めて犯罪を敢行しているという実態になってきております。
 こうした状況に対応するために、警視庁におきましては、入国管理局等の関係機関と緊密な連携をとりまして、不法滞在を行っておる者、あるいは不法入国をした者についての取り締まりを初めといたしまして、最近再び増加傾向に転じてきておりますピッキング用具を使用した侵入窃盗対策を一層強化をする。あるいは、新宿地区における街頭防犯カメラの設置などなど、犯罪の抑止、検挙の両面から各種対策を強力に推進をしております。
 また、来春には、犯罪組織の解体、壊滅ということに向けまして、新たに組織犯罪対策部を設置をする予定でございまして、来る十月一日には、これに先立ちまして、警視庁本部に銃器と薬物の捜査部門を統合した銃器薬物対策課を、また、警察署には、第一線でこうした対策を専門的に推進をする組織犯罪対策課等を新設をいたしまして、取り組み体制をさらに強化をいたします。
 今後も、治安情勢の変化を迅速、的確に把握をいたしまして、都民の皆様の体感治安に大きな影響がある街頭における犯罪を初めといたしまして、犯罪発生を効果的に抑止するさまざまな対策を講じて、いわれるところの犯罪の抑止に努めたいと思いますし、また、警視庁の職員の力を結集をして犯罪捜査等に取り組みまして、首都東京の治安維持、都民生活の安全、安心の確保に全力を尽くしていく所存であります。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) まず、都立高校別のバランスシート作成の取り組みについてのお尋ねでございますが、都立高校ごとに、教育活動に要するコストや資産の状況を都民に明らかにしますとともに、教職員にコスト意識を持たせた学校経営を進めていくため、平成十六年度に全都立高校でバランスシートを作成する予定でございます。
 そのため、本年度五校でバランスシートを試行的に作成しまして、平成十五年度には四十校程度に拡大しまして、その精度を高め、経営改善に活用するよう、さらに検討を進めてまいります。
 また、このバランスシートは、自律的な改革を進めるため、学校が主体的に作成します学校経営計画とあわせまして、ホームページに掲載し、広く都民に公表してまいります。
 次に、都立高校改革にかかわる東京版デュアルシステムについてですが、東京版デュアルシステムにつきましては、先般、東京都産業教育審議会から、都立高校における早期導入について答申されたところでございます。
 その主な特色は、インターンシップよりも長期の就業訓練を通した教育を行いまして、それを学校の単位として認定すること、また、生徒の意欲、責任感の醸成のために、企業から何らかの報酬の支給も可能とすること、さらに、就業訓練先の企業への就職も可能としていくことなどでございまして、産業界と学校とのパートナーシップに基づく新しい職業教育システムでございます。
 都教育委員会では、この答申を受けまして、十月に作成する都立高校改革推進計画の新たな実施計画におきまして、東京版デュアルシステムの導入について具体化をし、早期の実現を図ってまいりたいと考えております。
   〔知事本部長前川燿男君登壇〕

○知事本部長(前川燿男君) 二点のご質問にお答えをいたします。
 まず、重要施策についてでありますが、重要施策は、東京が直面する危機を克服するため、これまでの発想にとらわれず、また、各行政分野の垣根を越えた総合的な取り組みにより、都政の構造改革を進めていこうとするものでございます。
 取り組むべき課題は、まちづくり、環境、福祉などから行財政改革に至るまで多岐にわたりますが、いずれも、中長期的な改革の推進と当面の課題への取り組みという両面から複合的な対応を図る必要がございます。
 こうした観点に立ちまして、お話のありました都民の安全の確保、東京の経済の活性化についても十分に検討してまいります。
 次に、大気汚染被害への対応についてでありますが、ディーゼル車の排気ガスなどにより、大都市を中心に深刻な大気汚染がもたらされているわけでありますが、本来、これに対しては、国が、自動車排出ガス規制や広域的な道路整備による渋滞解消等に積極的に取り組むべきでありますが、その取り組みは大きくおくれているわけであります。
 加えて、国が来年度に予定していたNOx・PM法の適用開始を延期したことは、この問題に対する消極的な姿勢のあらわれであるといわざるを得ないわけであります。
 都は、これまで独自に、粒子状物質減少装置費補助や不正軽油取り締まりなどのディーゼル車対策、鉄道の連続立体交差などによる渋滞解消策に積極的に取り組んでまいりました。
 今後とも、七都県市などの場も活用しながら、総合的な対策を推進するとともに、国に対し実効性ある対策の実施を強く求めてまいります。
   〔財務局長田原和道君登壇〕

○財務局長(田原和道君) 行政評価の予算への反映についてのお尋ねでございます。
 限られた財源を有効に活用し、より効率的に施策を推進していくためには、ご指摘のように、コスト意識に基づいて、すべての既存施策を不断に見直していく取り組みが不可欠であると考えております。行政評価はそのための重要な手段であります。
 都におきまして行政評価につきましては、十一年度から二年間の試行を経まして、十三年度に本格実施をしたところであります。これまで、例えば各種文化施設、試験研究機関の存廃や運営方法の見直しなど、その評価結果を予算に反映をしてきております。
 今後、予算編成に当たりましては、施策の見直しの観点に立って、それぞれの事業が十分な成果を上げているか、実施手法は適切か、費用対効果は妥当なものかなどの視点からこれまで以上に評価結果を反映させてまいります。
   〔生活文化局長三宅広人君登壇〕

○生活文化局長(三宅広人君) NPO法人への資金供給の円滑化についてのご質問にお答えいたします。
 NPOがその能力を十分発揮していくためには、活動資金の安定的な確保など財政基盤の確立が極めて重要であると考えます。
 都はこれまでも、NPO法人にかかる税制上の優遇措置の拡大を国に働きかけてきたほか、今年度からNPOの資金調達力の向上を図るセミナーの開催等の取り組みを始めております。
 一方、都民や企業等から資金援助を受けやすくするため、寄附者の意図が反映され、寄附への誘引が高まるような新しい受け皿づくりに向けて、現在、東京ボランティア・市民活動センターなどの関係機関と協議を進めております。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 雇用就労対策など九点のご質問にお答えいたします。
 まず、雇用就労対策についてでございますが、東京都の完全失業率が六%を超え、労働相談件数が五万件を突破し、相談内容も深刻さを増すなど、これまでにない厳しい雇用情勢が続いております。
 このため、都は、緊急雇用対策として、年間を通じ、求職活動支援セミナーや再就職面接会などを実施するとともに、緊急地域雇用創出特別基金の活用により、区市町村と連携して、全都的な雇用創出に努めているところであります。
 また、本年四月から、平日夜間や土曜日における労働相談も実施し、労働問題に係る紛争の解決を図っているところでございます。
 今後とも、一層効果的な雇用就労対策を推進できるように努めてまいります。
 次に、木質バイオマスの利用促進についてでございますが、地球温暖化対策や森林の整備、林業の活性化の観点から、未利用となっている間伐材などをエネルギー利用することは重要であると考えております。
 このため都は、調査委員会を設け、間伐材などを原料とした木質燃料の製造と利用について検討してまいりました。また、八月に発表された農林漁業振興対策審議会の中間のまとめにおいても、木材をエネルギー資源として有効活用するため、持続的なクリーンエネルギー供給体制を実現することが提言されております。
 今後、審議会の最終答申を踏まえ、木質バイオマス利用の事業化の促進に向け、さらに検討を進めてまいります。
 次に、公的な分野での木材の活用についてであります。
 都ではこれまでも、森林保全や資源活用の観点から、多摩の間伐材について、治山、林道などの山間部の土木工事に積極的に利用してきたところでございます。このたび、さらに市街地で、道路のガードレールにかわる木製フェンスにも利用の範囲を広げたところでございます。
 また、多摩産材については、林業試験場で強度や耐久性について試験研究をしておりまして、強度については、全国平均を上回っているとの結果を得ているところでございます。
 今後とも、間伐材の活用にとどまらず、多摩産材の利用について積極的にPRを行うとともに、公的な分野での多摩産材の利用促進に取り組んでまいりたいと思います。
 次に、森林整備地域活動支援交付金制度の導入についてであります。
 現在、民有林では、木材価格の低落を背景として、手入れ不足の森林が増加し、その適切な管理が課題となっております。本制度は、小規模所有者や不在地主などの森林を意欲のある経営体に集約することで、計画的かつ一体的に森林の管理を推進するため、国において平成十四年度に創設されたものであります。
 都といたしましては、多摩の森林整備や林業の活性化を図るため、地元市町村の意向を踏まえた上で、本制度の導入について検討してまいります。
 次に、産業力強化会議の今後の取り組みについてでございますが、この会議では、東京の産業力強化を目的として、企業体力の強化、立地環境の整備、産業を支える人材育成などを図るため、各局にわたる幅広い課題について、必要に応じて民間有識者などの意見も聞きながら、全庁的な検討を行い、政策の方向を定めていくこととしております。
 具体的には、規制改革や知的財産の保護など、課題ごとに論点の整理や政策の方向性の検討を進めまして、実効性のある施策や国への要望など、実施できるものから速やかに具体化してまいりたいと考えております。
 次に、零細な製造業に対する支援についてでございますが、東京の産業活力の中核であるものづくり産業は、現在、危機的な状況にあり、小規模企業を含め、積極的に施策を展開していかなければならないと認識しております。
 都はこれまで、小規模企業への配慮を加えつつ、意欲ある企業に対し、技術や経営、資金面でのさまざまな支援を行ってきたところでございます。販路開拓の支援や人材育成など、中小企業振興対策審議会答申の提案も踏まえ、今後とも施策の充実に努めてまいります。
 次に、東京版デュアルシステムへの協力についてでございます。
 ものづくり企業は、ものづくりを支える人材の高齢化や人材確保及び技術、技能の継承の難しさなど、さまざまな課題を抱えております。そうした状況の中で、東京版デュアルシステムの実現は、ものづくり企業にとっても大変意義深い施策であると認識しております。
 産業振興を所管する産業労働局としても、協力企業のあっせんなど、学校と企業との連携推進に積極的に協力してまいりたいと考えます。
 次に、ものづくりを担う人材の育成についてでございます。
 ものづくりの振興にとって、次代を担う若者に対して、さまざまなものづくりとの出会いの場を設け、高度な技術、技能の継承を図ることは重要でございます。このため、昨年度、民間企業の協力を得て、東京ものづくり名工塾を開設し、今年度、これをさらに拡充して、若者を対象に高度な技能の継承を図ってまいる所存でございます。
 また、技術専門校指導員の小中学校への派遣のほか、今年度新たに、子ども技能塾や、工業高校生向け実習講座を開催し、学校と連携したものづくり教育を行っているところでございます。
 今後とも、学校や企業とも連携して、人材の育成に一層努めてまいりたいと考えております。
 最後に、観光振興のための現地事務所の設置についてでございますが、外国人旅行者を広く世界から集客していくためには、ご指摘のとおり、マーケティング調査や誘致活動をしっかり行っていくことが重要であると考えております。
 そのための執行方法といたしまして、現地事務所の設置も一つの手法でございますが、国内外の関係機関や民間事業者との連携、職員の派遣、観光の海外代表者である観光レップの設置の検討など、さまざまな手法を多面的に、機動的に展開し、観光産業の振興に努めてまいりたいと考えております。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 地球温暖化対策など五点のご質問にお答えいたします。
 まず、事業所に対する温暖化対策の強化についてでございますが、都は今年四月から、環境確保条例に基づき、地球温暖化対策計画書制度をスタートさせたところでございます。八月末の集計結果では、大規模事業所における二酸化炭素の今後三年間の削減目標は平均二%にとどまっており、このまま推移すると仮定いたしますと、二〇一〇年度に一九九〇年度比六%の削減目標を達成することは、大変困難な状況が見込まれます。
 今回提出された計画書の中には、二〇%以上削減するとした優秀事例もあり、今後、これらの分析を通じて、現行制度のレベルアップを図るなど、事業所対策の強化を検討してまいります。
 次に、少エネ商品拡大キャンペーンについてでございますが、エアコンと冷蔵庫を対象にして行った今回の取り組みでは、省エネ水準と電気料金を組み合わせた都独自のラベルを店頭表示し、省エネ情報を消費者に提供いたしました。
 その結果、本キャンペーンには、都の呼びかけに応じて、全国百四十九店舗の家電量販店やデパートなどが参加し、消費者、NPO、販売店からは、省エネ情報が一目でわかると評価する声が多数寄せられました。
 今回の成果を踏まえ、今後は、少エネラベル制度を家庭部門対策の一つとして位置づけ、よりわかりやすいラベル表示や対象商品の拡大など、消費者への適切な情報提供のあり方について積極的に検討してまいります。
 次に、ヒートアイランド対策の取り組み方針についてでございますが、ヒートアイランド現象を緩和するためには、屋上緑化の推進や人口排熱の抑制に加えて、海風や川沿いの風など自然の冷却機能の活用、連続した緑の軸の形成など、都市づくりの視点が不可欠であると認識しております。
 都といたしましては、各局の施策を一体的に進めていく必要がありますことから、先月、東京都ヒートアイランド対策推進会議を設置したところでございます。
 来年早々には、各局の施策を一定の方針のもとに総合化した、実効性の高い取り組み方針を策定し、各局連携してヒートアイランド対策に取り組んでまいります。
 次に、多摩の森林再生事業についてでございますが、この事業は、森林の持つ二酸化炭素の吸収や、水源涵養等の公益的機能を回復させるため、五十年間の長期にわたり計画的に間伐を行う事業であり、関係者の理解と協力を得ることが重要であると認識しております。
 このため、事業を予定している奥多摩町等六市町村及び森林組合と事業の運営方法等について協議を重ねてまいりました。現在、関係市町村は、この協議を踏まえ、森林所有者の意向調査等を実施しております。
 都は今後、準備の整った市町村から順次委託契約を締結し、本年十一月から間伐作業に着手する予定でございます。
 最後に、ディーゼル車規制についてでございますが、条例の実効性を高めるためには、規制内容と規制への対応策の周知徹底が不可欠ではございます。このため、二十台未満の自動車を使用する事業者に対しましては、今後、ダイレクトメールのほか、関係業界団体などと連携した周知、指導を行ってまいります。
 また、都におきましては、規制の早期対応を促すため、粒子状物質減少装置の装着への補助や、最新規制適合車への買いかえに対する融資あっせんを行っており、事業者の方々に対しては、これらの制度の活用を働きかけているところでございます。
 事業者の方の規制への対応が進むよう、さまざまな検討を行っており、今後、支援策の充実を図ってまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) 多摩産材を活用した住宅供給の仕組みづくりについてでございますが、住宅建設における多摩産材の活用の意義につきましては、都としても十分に認識しております。
 この立場から、昨年十一月に、木材供給者、住宅生産事業者及び関係行政機関などで構成いたします東京の木・いえづくり協議会を設立いたしまして、多摩産材を活用した木造住宅の普及に取り組んでまいりました。
 来年二月には、住宅生産事業者のほか、広く消費者の参加を求めまして、その普及のためのシンポジウムを開催する予定でございます。
 今後とも、協議会におきまして、消費者、住宅生産事業者、木材供給者の連携を図り、多摩産材を活用した住宅供給のための普及啓発を積極的に進めてまいります。
   〔港湾局長高橋信行君登壇〕

○港湾局長(高橋信行君) 中央防波堤内側埋立地の森づくりについてでありますが、東京都区部から出たごみにより埋め立てましたこの土地を、都民との協働で緑の島によみがえらせることは、自然再生の大きなシンボルともなります。
 ご指摘のとおり、国も昨年、都市再生プロジェクトとして取り上げたところでございますが、この森は、都民の貴重な財産として将来の世代に引き継がれるものであり、都のリーダーシップのもとに整備を進めてまいります。
 本年度は植物の生育条件などの調査を行い、来年度以降は、都民協働の仕組みづくり、事業展開のあり方の検討などを進めてまいります。
   〔健康局長長尾至浩君登壇〕

○健康局長(長尾至浩君) 大気汚染医療費助成に係る調査や制度の検討についてでございますが、浮遊粒子状物質などによる健康影響調査につきましては、平成十二年度から三カ年計画で、大気中微小粒子等に係る健康影響調査として実施しており、平成十五年度に総合解析を行う予定でございます。
 また、大気汚染医療費助成制度につきましては、認定方法など運用上の課題から改善に着手しているところでありますが、この健康影響調査の総合解析結果も踏まえ、制度全般にわたる総合的な検討を行ってまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 福祉改革についてのご質問にお答えいたします。
 まず、障害者の地域生活を支える基盤整備についてであります。
 都は、心身障害者施設緊急整備三カ年計画により、施設整備費の特別助成を行うなど、知的障害者生活寮や通所施設の増設に努めております。しかし、生活寮につきましては、地価の高い地域などにおいて設置が進みにくい状況がございます。
 今後は、自立を目指す障害者が地域で生活できるよう、さらに設置を促進する方策について検討し、地域生活を支えるサービス基盤の整備を強力に推進してまいります。
 次に、障害分野に導入されます支援費制度のもとでの区市町村に対する都の支援についてであります。
 行政による措置から、利用者と事業者の対等な契約へとサービス利用の方法が変わることから、利用者の自己選択を支える相談体制の確立など、実施主体である区市町村の取り組みが重要になってきます。
 都としては、円滑な制度の導入に向けて、適正に支給決定がなされるよう、独自にマニュアルを作成し、研修を実施するなど、区市町村を支援してきたところでございますが、今後も、区市町村に対し、専門的な助言を行うとともに、利用者の選択を支える新たな仕組みなどについて検討してまいります。
 次に、民間社会福祉施設サービス推進費補助についてでございます。
 都が進める福祉改革の目指すものは、行政が広範囲にわたってコントロールする既存の仕組みを根本から改め、利用者本位を徹底する新しいシステムを構築することにございます。それには、社会福祉法人も、社会経済状況等の変化に対応し、利用者本位の新しい福祉を担っていくため、自己改革を実行する必要があります。東京都はこれを支援してまいります。
 この観点に立って、税金を財源とする民間社会福祉施設サービス推進費補助について、サービス向上に向けた努力が真に報われる仕組みとするよう、施設の代表者の意見などを聞きながら検討してまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 都立病院改革についてのご質問にお答えいたします。
 まず、都立病院の廃止・移転統合に当たっての地域住民への説明や医療機能の代替措置の確保についてであります。
 都立病院の廃止・移転統合に当たっては、地域医療の確保について、都と地元自治体及び関係機関との間で、相互の役割分担を踏まえ、十分協議していくことが重要であります。
 こうした考え方に基づきまして、先月、世田谷区と小児初期救急医療体制の充実について合意をしたところであります。また、八王子市、清瀬市ともそれぞれ検討の場を設け、地域の小児医療の確保に向けて協議を開始しました。
 住民に身近な地元自治体や関係機関との間で、引き続き協議を進めるとともに、地域医療の確保策について、さまざまな機会をとらえ、都民の方々に周知をしてまいります。
 次に、母子保健院の廃止に伴う地域医療の代替措置についてであります。
 母子保健院がこれまで実態として提供してきた小児の地域医療につきましては、地元世田谷区が設置する小児の初期救急医療施設で患者を受け入れるとともに、この施設と国立成育医療センター、都立広尾病院など、近隣の医療機関との連携を強化することにより、住民が身近な地域で適切な医療を受けられる体制を確保してまいります。

○副議長(橋本辰二郎君) この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後六時二十五分休憩

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