平成十四年東京都議会会議録第十二号

   午後三時三十六分開議

○副議長(橋本辰二郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質問を続行いたします。
 六十番森田安孝君。
   〔六十番森田安孝君登壇〕

○六十番(森田安孝君) 私は、都議会公明党を代表して都政の重要課題について、知事並びに関係局長に質問をいたします。
 我が国経済を取り巻く環境は、株価の低迷、高失業率に加え、若年無就職者の増大、中小企業の倒産などが相次いでおり、実質GDPは伸びているものの、外需によるところが大であり、設備投資などの内需の勢いは相変わらず芳しくないのが現状であります。その上、高級官僚や大企業における倫理観の欠如による不祥事の続出が、日本全体を覆っている閉塞感にさらに拍車をかけております。今こそこうした状況を打破し、日本を何としても変革させ、デフレや閉塞感から脱却していかなければなりません。そのためには、地方からの改革が何よりも重要であり、各自治体が互いにその活性化を競い合いながらも、連携協力しつつ、日本全体の底上げを図ることが急務であります。この意味で、日本をリードする東京の役割は極めて大きいものがあります。
 こうした観点に立ち、以下、質問をいたします。
 まず、質問の冒頭に当たって、この十七日に行われた日朝首脳会談については、両国の新たな歴史を開く会談でありましたが、しかし、拉致問題に関しては断じて許すことのできない衝撃的な事実が公表されました。我が党は、関係者の処罰はもとより、十月の国交正常化交渉に先立っての生存者の早期帰国、亡くなられた方々の拉致から死に至るまでの事実関係の公表、責任問題の追及などを強く求めるものでございます。
 次に、財政再建推進プランの最終年度となる平成十五年度予算編成について伺います。
 都のこれまでの財政再建に向けた取り組みを見ると、歳出面では内部努力、施策の見直しの達成が十四年度までで、それぞれ八〇%、八三%、歳入面を含めた全体の達成率を見ても八〇・六%となっており、この点は一定の評価をするものであります。残り二〇%弱を残すだけとはいえ、これからが正念場といえます。
 一方、都税収入の動向を見ても、法人二税は、八月末時点で既に対前年比千九百億円以上もの減収です。正確な推計はなお時間を要するにしても、下期に向けた税収確保に懸念を抱かざるを得ません。さらに、ことしに入ってからの一段の景気低迷によって、来年度の税収は本年をさらに下回ることも十分予想されるところであります。
 ここで、こうした厳しい経済情勢下で、財政再建推進プランの最終年度である平成十五年度の予算編成に取り組む都の基本姿勢をまず伺います。
 また、財政再建推進プランの期間は平成十五年度までですが、都はその一方で、平成十八年度までの収支見通しを発表しており、厳しい財政不足の見込みを指摘しています。確かに今日的な経済構造、財政状況からは厳しい予測しか生まれません。しかし、だからといって、すべてを縮小均衡にゆだねていては懸念解消への出口は見出せません。平成十五年度予算は、厳しい財政状況の中でも、都政の重要課題、例えば首都圏の再生、福祉を初めとする都民の安心、安全の確保策、未来を豊かにする教育投資などについては、万難を排して財源を確保し、文字どおり未来を切り開く予算を編成することが都政の使命であると思うのであります。より一層の行政改革と財政再建推進プランの目標達成、そして都政の重要課題への対応の三点が来年度予算編成に当たっての不可欠な要素であると思います。知事の決意を伺います。
 次に、地方税財政制度改革について伺います。
 都の財政再建に重大な関連を持つこの議論は、五月の片山総務大臣の試案発表を契機に本格化しようとしています。我が党はこの試案を受け、いち早く、片山総務大臣に、地方分権に向けた税源移譲の速やかな実現に関する申し入れを行ったところであります。
 一方、国は六月に、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇二、いわゆる骨太の方針第二弾を閣議決定し、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲の三位一体で改革を進めるという基本方針を示したのであります。今後の本格的な議論が期待されるところでありますが、この際、基本的理念としてとらえるべきは、この問題を国と地方自治体の関係という縦軸の発想から地方団体間の横軸の関係という、横軸の発想に転換する必要であります。今後、交付税の基礎となる税収が大幅にふえる見込みは薄いのですから、地方自治体の将来を考えるとき、今こそ新しい地方財政のあり方が求められなくてはなりません。交付税をめぐっては、不交付団体である都と、他の交付団体との意見が一致しないと考えられがちですが、地方自治体は交付税という移転財源ではなく、自主財源を獲得すべきであるという点で、主張を共にすることが可能です。
 また、都の、交付税算定により不利益をこうむっているといういい分だけでは、他の自治体との協調を図ることは困難です。それぞれの地方自治体みずからが、交付税を中核とした現在の地方税財政制度が危機的状況であることをまず認識することが必要です。その上で、国にこの認識を任せることではなく、地方自治体同士のいわゆる横軸の議論を積極的に進め、地方から新しい税財政制度のあり方を発信することが極めて重要であります。そうした議論を活性化させる場づくりのために、都がリーダーシップを発揮すべきであります。知事の所見を伺います。
 次に、構造改革特区及び経済特区構想についてであります。
 今回の国の構造改革特区構想は、限られた地域の規制緩和であり、これらを突破口として、成果を全国レベルに普及させようとするものであります。このことに一定の評価はするものの、これまで我が党が主張してきたように、この特区を実効あるものとしていくためには、税財政措置と組み合わせて実施することが必要であります。このことを国に強く要望すべきと考えますが、いかがでしょうか。構造改革特区への認識とあわせて伺います。
 また、我が党は東京湾岸地域を、東京再生、首都圏再生への戦略的拠点の一つとして重視しています。今回、都は、国際港湾特区及び東京湾岸地域における経済特区の二件を提案しています。この際、その内容と目的について伺います。
 また、これらの実現のため、都として庁内における横断的な推進体制をさらに整えるとともに、首都圏自治体とも連携して推進に当たるべきことを主張します。所見を伺います。
 次に、中小企業に対する金融支援についてであります。
 ことしになって金融機関から企業への貸出金利の引き上げ要求が本格化するなど、中小企業を取り巻く金融環境は一段と悪化しております。資金調達を銀行などの金融機関に頼らざるを得ない中小企業にとって、頼るべき銀行などが貸しはがしを前提とした利上げを行うことなどで、企業は廃業、倒産という負の選択を余儀なくされることになります。長期化する不況の中で、この負の連鎖を断ち切るなど、中小企業蘇生への行政努力が懸命に重ねられなければなりません。
 昨年の第四回定例会において、都議会は、中小零細商工業者への緊急特別支援に関する決議を採択し、また、我が党は、都に対して、緊急特別支援策の早期実施に関する要請を行うなどによって、都民生活の現場からの切実な声を施策に反映してきました。中小企業を取り巻く金融環境がさらに悪化している今日、都においてはこうした事態を打開するため、年末に向け再び積極的な金融支援を打ち出すことを強く主張します。所見を伺います。
 次に、敗者復活が可能な社会システムの構築についてであります。
 事業者が一たび破綻しても、再起への意欲と情熱さえあれば、再チャレンジの道が開けるという社会システムの必要性を我が党はこれまで再三主張してまいりました。都は、我が党の主張を受けて、この四月、いわゆる再チャレンジ研究会をスタートさせました。そこでまず、その後の研究会における検討内容及び今後の日程についてお尋ねします。
 都政が発信する再チャレンジシステムの議論に呼応する形で、国においても、再生中小企業への支援策が来年度の実施を前提に検討されています。すなわち、再生計画中の企業を対象とした事業再生保証制度の創設や、整理回収機構に債権が譲渡された企業への保証の拡充策などであり、これらはいわば信用保証制度全体を弱者保護型から挑戦者支援型へと転換する側面をあわせ持つものであります。これらの施策の実現に向けて、都は改めて国に強く要請すべきであります。明快な答弁を求めます。
 次に、福祉改革について伺います。
 都は、本年二月、福祉改革STEP2を策定し、福祉改革を新たなステージへと推し進める基本コンセプトとして、地域のケアつき住まいの重視と、公立・社会福祉法人中心の供給体制の改革を掲げています。供給体制の改革について、六月、七月と相次いで、都立福祉施設改革推進委員会の報告書で、福祉サービス提供主体者経営改革に関する提言委員会の中間提言が発表されました。これらの報告を受けた福祉局は、七月二十六日、「福祉サービス提供主体の改革への取組について」を発表したところであります。
 我が党は、福祉改革に当たっては、施設利用の当事者である高齢者、児童、障害者及びその関係者から幅広い意見、要望を聴取するとともに、いささかも福祉後退となるところがあってはならないと、直ちに申し入れを行いました。
 また、二つの改革について検討を加え、都民のコンセンサスが得られる改革となるよう、党内に、調査研究を行うため福祉改革問題検討委員会を設置し、都の都立施設改革や社会福祉法人の改革が利用者本位の改革になるよう、調査研究を続けているところであります。
 そこで伺います。
 第一は、福祉入所施設の運営からの撤退問題についてであります。
 都が、高齢者、児童、障害者の入所型施設について、すべて廃止または民間へ移譲するとした報告書を受けて、都が当面の対応方針を決定したことに、大きな不安の声が上がっています。例えば、障害者施設について、中、軽度だけでなく重度障害者を受け入れる民間施設もあるとして、都立施設として運営する意義は終了したといいますが、本当にそうなのか。また、都立だから、本人、ご家族は安心して施設入所しているのではないのか。あるいは、重度入所者が多いまま民間が担えば、現在のサービス維持は困難になるのではないか等々の声があります。こうした懸念に対し、都はどうこたえるのでしょうか、明らかにしていただきたいと思います。
 また、最低限、都民サービスが後退することのないよう、地域で安心して暮らせる仕組みづくりやサービスのチェック体制の確立が不可欠であります。所見を伺います。
 第二は、民間移譲等の基本的考え方についてであります。
 都が直接施設運営を行うのではなく、民間の多様なサービスを都が支援する形に転換する時期が来ているとの説明にしても、それだけで、どれほどの都民が理解するでしょうか。とりわけ、都立施設に入所している本人、ご家族の不安と驚きは、私たちの想像を超えるものがあります。
 確かに財政面からいえば、諮問委員会が改革対象とした三十六施設に係る年間予算は三百六十億円。知的障害者施設を見ると、利用者一人に係る年間経費は、都立が約千八百万円に対し、民間は約七百万円であります。民間は、若手や非常勤職員を雇い、効率的な運営を行っているとはいえ、公私では大きな格差があります。すべてを民間で受け入れることが不可能ならば、初めに民間移譲ありきではなく、都立と民間の役割分担を明確にすべきであります。
 民間移譲については、運営形態など検討すべき課題も多く、利用者本位という福祉本来の理念のもとでの、慎重の上にも慎重な検討が必要であります。所見を伺います。
 第三は、経営改革に関する提言委員会中間提言についてであります。
 民間社会福祉施設サービス推進費補助の、いわゆるB経費を廃止し、A経費を全面的に見直すとの提言では、民間福祉施設に対する運営費補助について補助効果が検証できない、職員の職務経験が利用者サービスの向上につながっていることを確認するすべがないなどを理由としています。しかし、補助金の廃止、削減という形で財政面でのリストラが先行することは、利用者を置き去りにした経費削減だけの経営改革となるのではないかと危惧するものであります。
 社会福祉法人改革に当たっては、施設の代表者と十分話し合い、理解を得ることが重要であり、そのためには、関係者の理解と協力のもと、将来の制度設計をも視野に入れた慎重な協議が必要と考えます。
 以上、所見を伺います。
 次に、地域のケアつき住まいについて伺います。
 福祉改革STEP2では、地域生活の基盤となる生活寮等を大幅に増設するとしています。生活寮が福祉改革によりどこまで整備されたのか、また、今後どのように整備充実されていくのかなど、障害者の自立を支援する施設充実への道筋を明らかにすべきであります。所見を伺います。
 また、障害者福祉の分野は、十五年度から、措置制度から支援費制度に移行します。利用者がサービスを選択する制度になるわけですから、選択できるだけのサービス量がなければ、その実現は困難であります。都はこれまでも、心身障害者施設緊急整備三カ年計画により、入所施設や通所施設、生活寮などを重点的に整備しており、我が党は高く評価しているところですが、それでもまだ十分とはいえません。入所施設の待機者を解消し、支援費制度が円滑に運用されるためにも、さらに新たな施策の展開が必要と考えます。所見を伺います。
 さらに、地域での自立を支える新しい福祉を目指すとする都の福祉改革の理念の展開に当たり、これまで、どう福祉改革が進み、どう都民のサービスが充実したのか、都の福祉の実態を明らかにするとともに、今後、都の福祉を充実させていく上での福祉改革の全面展開への具体的な姿を明らかにしていただきたいのであります。知事の見解を伺います。
 次に、高齢施策の一環として、都営住宅のバリアフリー化について伺います。
 都営住宅のエレベーター設置については、これまで年度別に設置が図られてきましたが、いわゆる階段室型住宅については、昨年、世田谷区船橋四丁目アパートにおいて初めて小型エレベーターが試行設置され、現在、その試行結果を検証中と聞いております。これまで設置が困難とされてきた階段室型住宅でのバリアフリー化を一層促進することは、高齢社会での重要な施策であります。改めて設置推進について所見を伺います。
 また、廊下型住宅のエレベーター設置については、同じ団地に居住していながら、エレベーターが設置された号棟と、設置スペースや日影規制がネックになり設置できない号棟があるケースが見受けられます。これらについては、現在の福祉対応型の規模のエレベーターの設置推進をすべきでありますが、同一団地内で取り残されたように未設置の号棟に居住する高齢者にとって、日々の生活の困難さは想像を絶するものがあり、不便が続くことになります。現在のものは無理でも、小型エレベーターなら設置可能な号棟については、廊下型であっても小型エレベーターを設置すべきであります。所見を伺います。
 次に、都立病院改革の一環として提案されている、母子保健院の廃止について伺います。
 同院は、都立病院改革マスタープランにもあるとおり、単体の病院であるため、母体管理上のさまざまな診療科との連携が困難、夜間緊急時の検査体制が不十分、施設の老朽化、敷地の狭隘化など、多くの問題を抱えています。
 我が党が視察した際も、玄関から建物を見上げると、壁のところどころにパッチワークのように補修した跡が見え、聞くと、老朽化で壁が剥離した跡であるとのことでした。しかし、取りつけ道路の関係で、大規模補修や建てかえは望めません。したがって、ここで重要なことは、母子保健院そのものの存廃ではなく、地域小児医療の確保であります。その意味で、本年三月に開設した国立成育医療センターの果たす役割と、世田谷区が都の支援を受け、初期小児救急医療体制の整備を進めていることは注目されます。
 ところが、母子保健院をめぐる最近の状況は、一部の団体がいたずらに住民不安をあおって問題を政治化し、反対のための反対に終始しているといわざるを得ないのであります。こうした状況にさらに不安を増幅させている住民の声にこたえる意味でも、事実と実態を明らかにすべきであります。
 そこで、第一に、母子保健院の医療機能について確認いたします。
 母子保健院は、歴史が古いだけに、地域への密着度が高く、住民から親しみを持たれています。小児科、産婦人科の二科のみの規模が小さな病院ですが、医療機能からすると、ハイリスク分娩、未熟児医療、夜尿症等の専門医療に対応してきた病院であり、地域のみならず広く都民の共有財産たるべき病院であります。
 したがって、母子保健院が果たしてきたこれらの医療機能については、引き続き東京都として確保し、広範な都民に提供されるべきサービスであります。所見を伺います。
 第二は、国立成育医療センターについてであります。
 今回の条例に反対する団体、政党は、同病院は国のナショナルセンターであり、地域小児医療は提供できず、母子保健院の代替機能は果たせないと盛んに宣伝いたしました。公明党は、本年第一回定例会においても、予算委員会においても、小児救急医療という性質上、必然的に地域医療を引き受けるはずであると主張し、当時の衛生局からも同趣旨の答弁を得ております。
 そこで、まず、国立成育医療センターの現在の診療状況はどうなっているのか、特に小児救急医療についての対応状況を報告していただきたいと思います。
 第三に、母子保健院に併設されている乳児院についてであります。
 乳児院は、保護者のいない乳児や、保護者による療育が困難な乳児を受け入れる施設であります。第一回定例会でも指摘しましたが、こうした子どもたちに対しては十分な配慮が必要であり、行政としての責任ある対応が求められます。
 母子保健院の乳児院が廃止された後、都は、他の乳児院で十分に対応できるとしていますが、具体的に、どこでどのように対応が可能なのか、また、それは個々の子どもたちの状況に適合したものであるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
 次に、都立高校改革について伺います。
 我が党は、さきに高校改革問題検討委員会を設置し、高校進学を目指す子どもたちの期待にこたえられる改革を目指すとの視点で、統廃合計画の対象校の視察を初め、学識経験者、関係者との意見交換を行うなど、調査研究を進めてまいりました。
 計画策定から五年が経過し、生徒もかつての予想ほどは減少しない傾向が明らかな状況の中で、都教育委員会は、都立高校改革推進計画の新たな実施計画を策定しようとしています。都教育委員会の教育目標の改定や学区制の撤廃など、都立高校を取り巻く環境が変化する中で、今推進されている都立高校改革が目指すものは何か、知事の基本的な考えを明らかにされたいと思います。
 第二に、墨田地区と八王子地区への設置が提案されている、新しい産業高校についてであります。
 専門高校検討委員会の報告によると、商業科、工業科双方の専門知識や技術を身につけた、幅広い知識を持った職業人の育成を目指すとしていますが、従来の専門学科と比較してどのような特徴があるのか、また、墨田地区と八王子地区に特定された理由を明らかにしていただきたい。
 さらに、先日、東京都産業教育審議会から、高校におけるデュアルシステムの実現に向けて、を副題とする、新しい職業教育のあり方についての答申がありました。このデュアルシステムとは、ドイツにおける職業教育制度ですが、答申では、東京の社会実態に即応した東京版デュアルシステムとして示されています。
 私は、この東京版デュアルシステムを、若者のものづくり離れを防ぐとともに、職業観や勤労観の育成のため、都立高校に早期に導入すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、答申では、工業科への導入が中心であり、商業科や農業科への導入についての具体的な考えが示されておりません。工業科以外の専門学科への導入検討もすべきであります。あわせてお答え願います。
 第三に、中高一貫教育校についてであります。
 中高一貫教育は、これまでも私学において顕著な実績を上げています。公立学校においても、子どもや保護者から希望の多い中高一貫教育を選択できるよう、中等教育の複線化を図ることは重要なことと考えます。
 一方、各都立高校が、個性化、特色化を進める中、中高一貫教育校設置の理念を改めて明確にすべきであります。
 第四に、昼夜間定時制独立校についてであります。
 生徒の多様化に対応し、全日制課程と定時制課程の併設による課題等を解決していくため、昼夜間定時制高校の整備拡充を図ることは重要であります。しかし、今回の計画では、その配置が地域的なバランスを担保しているとはいえません。例えば、不登校傾向の生徒の教育の場であるチャレンジスクールが多摩地区に設置されていない事実、これは、多くの不登校の児童生徒が存在する多摩地区の実態を考えると、問題であります。このことを我が党は指摘してまいりました。地域配置のバランスに関する課題の解決を図るべきであります。明快な答弁を求めます。
 また、昼夜間定時制独立校の整備に伴う周辺の夜間定時制高校の閉校により、生徒の通学上の負担が増大することが予測され、この点の真摯な再検討が求められています。所見を伺います。
 第五に、通信制高校についてであります。
 通信制高校も、平日には通学できない勤労青少年への教育機会の提供の場であったものの、現在は、不登校経験のある生徒や他の高校の中途退学者など、その構成が多様化しており、通信制高校は、定時制高校にも通えない生徒の最後のよりどころになっている現実があります。
 他方、スクーリングの実施方法など、通信制教育の現状は必ずしも生徒の生活に即したものとはなっておりません。平日スクーリングの実施等、通信制教育についても一層弾力的な措置を講ずることを要望します。所見を伺います。
 第六に、都立高校改革を成功させるためにも、関係者の理解と協力を得ることが最大の前提条件となります。関係者の理解を得るためには、これまでとは異なった創意工夫により、十二分の協議を行っていくことが必要と考えます。見解を伺います。
 次に、公立小中学校の耐震対策について伺います。
 このたび都教委がまとめた都内公立小中学校の耐震改修状況調査によれば、都における耐震診断の実施率は六四%で、全国平均の三〇%を大きく上回っているものの、区市町村によっては、実施率が全国平均を下回っているところもあります。大規模地震の切迫性が叫ばれている今日、一次避難場所となる小中学校の耐震対策は都政の大きな課題であります。
 都教委は、区市町村へ、耐震診断を実施すべき学校に対し、平成十七年度までにすべて完了することを目標に、耐震診断計画の策定を求めていますが、耐震診断を本格的に実施する場合、一校当たり数百万円が必要です。現在、国で計画している耐震診断は、十数万円程度の費用で、図面や目視に基づく予備診断的なものであり、果たしてこれで個別の学校の実態に即した万全の診断が可能なのか、疑問です。見解をお聞きします。
 また、耐震診断した後の耐震補強、耐震改修についても、一校当たり数千万円から数億円が必要であり、国の補助はその半分から三分の一程度であることから、区市町村にとってはその財源負担が重く、耐震計画を立てられないとの率直な声も出ているのであります。
 そうした状況を踏まえ、我が党は、連立政権の中で、全国公立小中学校の建物の耐震化を強力に促進させるため、来年度予算編成の概算要求で文部科学省に対し、約三百億円増額の千七百億円を要求しているところであります。
 現在、都が区市町村に対し耐震診断計画の提出を求めているところでもあり、予備的診断に続き本格的な耐震診断を実施し、そしてさらに、耐震診断後の耐震補強、耐震改修についても都の支援体制を整備して、実現性のある計画の策定を期すべきであります。
 そのために、都として、都内の小中学校、高校も対象とした、耐震診断から耐震改修までの一連の耐震対策を、耐震戦略プログラムとして策定することを提案します。所見を伺います。
 次に、環境問題について伺います。
 まず、さきに開催された環境開発サミットに関連してですが、次の新たな十年に向けて、どう地球環境を維持可能なものにするかとのテーマのもと、世界実施計画には、我が国の提案である、持続可能な開発のための教育の十年が盛り込まれるなど、時代を画するものとなりました。
 都においても、このことを踏まえて、サミットで示された地球憲章の重要性も視野に入れ、環境教育の充実を図るなど、具体的な理念の普及啓発に取り組むべきと考えます。その方針を明らかにされたいと思います。
 次に、ディーゼル車規制について伺います。
 我が党は、都民を大気汚染から守るため、一貫してこのディーゼル車規制の必要性を訴えてきたところであります。ところが、国のNOx・PM法の適用開始が延期されたため、都の条例が先行する形になり、都における規制対象の車両が当初より倍増するなど、新たな厳しい状況が生じております。
 今月、都議会公明党は、二十三人の全議員で、関係業界の皆さんに、この問題についてのヒアリング調査を行いました。この規制の実施には、広く都民の理解が必要であり、とりわけ関係業界の協力が不可欠であるからです。この調査結果に基づいて、以下お尋ねします。
 まず、DPF、酸化触媒装置の信頼性についてで、評価できない、または余り評価できないとしたものが八三%もありました。低い評価の理由は、耐久性やメンテナンスの費用負担に対する懸念であります。これには、DPF指定の申請の際、実走距離が一万キロでは短過ぎる、一万キロは一カ月で走ってしまう、装着後数日で故障したではないかなど、具体的な不安の声が寄せられております。
 都は、DPFの信頼性と、それに関連するメンテナンス負担について具体的な対応策を明らかにするとともに、関係業界の不安にこたえるべきであります。答弁を求めます。
 次に、一、二台のトラックで仕事をしている零細事業者にとっては、NOx・PM法と条例の関係が理解しづらく、装置の選定に戸惑っているという回答が多く寄せられ、また、日ごろ車検整備を依頼している整備業者に相談したという声もありました。
 今回都が発表した、違反ディーゼル車一掃作戦の中でも、整備事業者の方々の位置づけはありますが、従来型の行政広報や、硬直的になりがちな指導といったやり方ではなく、車に詳しく、運送事業者の身になってアドバイスできる整備事業者の協力を得るなど、民間の知恵を積極的に活用した実効性のある対策を展開すべきであると思います。所見を伺います。
 次に、DPF装着への補助拡大、新車買いかえの融資制度の拡充を求める声は大変強く、また、切実な要望が寄せられました。規制開始までの一年間に、DPF装置か新車への買いかえを迫られている業者にとって、資金繰りは頭の痛い問題です。DPFに補助金を受けても、自己負担額が手当てできない、融資制度を活用しようにも、信用保証枠を使い切っているため利用できない、このままでは大幅な減車か廃業などとの悲痛な叫び声も聞かれました。このため、別枠の信用保証システムの早急な検討が必要と考えます。見解を求めます。
 さらに、DPF、酸化触媒の装着を予定している時期は、来年十月の規制開始前の夏もしくは直前という回答が七割を占めました。DPF等に対する補助期間を一年間延長して、十五年度も継続すべきであり、また、融資あっせん制度についても大幅な拡充を図るべきであります。あわせてお答え願います。
 最後に、三宅島災害についてであります。
 三宅島の全島民が島外での避難生活を始めてから丸二年が経過しました。しかし、現在もなお、雄山からは二酸化硫黄を含む有害な火山ガスの大量放出が続いており、住民の本格帰島のめどは立っておりません。
 こうした中、三宅村では、帰島を前提に、復興計画や帰島計画の策定に取り組み、精力的にインフラ整備が進められています。九月二日、三宅村長は、全島避難から二年が経過して、とするメッセージを発しましたが、この中で、これからも苦しい日々が続くと思いますが、今こそ三宅村民が一丸となって、ふるさと三宅島をよみがえらせ、後世に引き継ぐことが、私たちに課せられた大きな使命ではないでしょうかとの呼びかけは、三宅村民を初め私たちにも改めて、帰島そして復興、再生への大きな決意を促すものとなりました。
 そこで伺います。
 第一は、帰島時期の予測に向けての取り組みについてであります。
 さきに都は、三宅島帰島に向けての火山ガス濃度及び安全確保に関する検討会を発足させると発表しましたが、発足時期、目的、構成メンバー、検討状況の報告など、具体的方針を明らかにしていただきたい。また、この報告を受けた段階での都としての具体的な対応策を明らかにしていただきたい。
 第二に、三宅島支援の特別立法の制定についてであります。
 帰島に向けて、特に深刻なのは住宅の問題であります。島内の住宅二千世帯のうち、土砂に埋まったのは約四十軒程度ですが、約三百軒で火山ガスによる屋根の腐敗がひどく、このためネズミやシロアリによる被害が拡大し、職工組合の応急措置では間に合わない状況があると報告されております。対策が急務であります。
 また、いざ我が家に戻るとなると、準備や仕事の再建に相当の資金が必要となることは明らかであります。帰島時における総合的支援なくして島民生活が維持できないことを考えれば、特別立法の制定などを含め、特別の支援措置が必要となります。都は三宅村とともに、国に対して強く働きかけるべきであります。
 第三に、三宅村の介護保険次期事業計画策定への支援についてであります。
 三宅村の介護保険財政は、噴火災害による全島避難により、保険料収納率の悪化と施設入所増に伴う給付増額により、財政不足が深刻になっています。このままでは大幅な保険料上昇が見込まれ、避難島民にとって極めて重い負担となることが予測されます。
 このような状況のもと、要介護高齢者が安心して介護サービスを受けるには、何よりも島民の負担となる保険料について適正化を図る必要があります。都は国との協議を早急に進め、そうした状況を回避するために支援策を講じるべきであります。
 以上、三点について所見を伺います。
 以上で私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 森田安孝議員の代表質問にお答えいたします。
 平成十五年度予算編成と財政再建推進プランの達成についてでありますが、都はこれまで、財政再建推進プランに基づく取り組みによりまして、財政再建団体への転落を免れるとともに、十四年度予算までに財源確保目標額の八割を達成いたしましたし、それなりに成果を上げてきたと思います。しかし、その一方では、景気の先行きが予断を許さない状況でありまして、都税収入がプランの見込みを下回る見通しであること、また、税源移譲が全く進んでいないことや、高どまりする経常経費が存在しまして、越えなくちゃいけないハードルが非常に多うございます。歳入歳出の両面においても、そういったハードルがかなり残されております。
 こうしたことから、財政再建の達成には困難な道のりが今後も予想されておりますが、平成十五年度予算は、プランの最終年度としまして、ご指摘のとおり正念場でありまして、今後の予算編成において、目標達成に向けて全力を挙げて取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、平成十五年度予算編成に対する基本的な考え方でありますが、都財政を取り巻く環境は極めて厳しくなってきておりまして、来年度予算では、このままでは巨額の財源不足が生じる見込みでありまして、何よりもまず、全体として歳出総額を厳しく抑制していくことが不可欠だと思います。
 このため、職員定数の削減や監理団体への財政支出の見直しなど、内部努力に今後一層徹底して取り組むとともに、引き続き経常経費、投資的経費を問わずに、聖域のない施策の見直しを行うなど、財政構造改革をさらに積極的に進めていかなければならないと思っております。
 また、その一方で、首都東京の再生や都民の安全あるいは安心を確保するための都政の重要課題に対しては、限りのある財源でありますけれども、これを重点的に、効率的に配分して、的確に対応していきたいと思っております。
 次いで、地方税財政制度改革における東京都のリーダーシップについてでありますけれども、現在、国では、税源移譲、地方交付税の見直し、そして、国庫補助負担金の削減を合わせた、いわゆる三位一体の改革の議論がようやく本格化してきておりますが、その動きを見ますと、地方主体ではなく、依然としてあくまで国の主導で進められている感が強くあります。
 一方、地方自治体の多くは、地方交付税や国庫支出金に大きく依存しております現況から、いまだに改革に向けた足並みがそろっていない面がありまして、ご指摘のとおり、今後、地方の自主財源強化という共通の土俵に立って、おっしゃるとおり横軸の連携をとりながら、団結して、真の地方税財政制度の改革を速やかに進めていかなくてはならないと思っております。
 都としても、これまで税源移譲などによる改革の実現に向けて、都独自の要望に加え、全国知事会や首都圏を構成している七都県市という場を通じまして、国に対して働きかけをしてまいりましたが、今後も全国の地方自治体の連携がさらに図られるよう、その先頭に立って取り組んでいきたいと思っております。
 次いで、福祉改革の全面展開に向けた姿についてでありますが、いかなる社会的な方法も、その目的がいかに正しく善的なものであろうと、やはり時代の変化、社会の変化に応じた改革が問われるべきだと思います。そういう観点からも、都の福祉改革が目指すものは、これまで基本的に見直されることのなかった全国一律の画一的な福祉システムを改め、利用者本位の新しい福祉を実現すること、第二は、都独自の取り組みである認証保育所や民間企業に対する痴呆性高齢者グループホーム整備費の補助の創設などによりまして、福祉改革は着実に成果を上げてきたと思っております。
 今後も、これまでの成果を含め、さらなる改革に向けまして全面展開していく福祉の全体像を都民にわかりやすく示していきたいと思っております。
 次いで、都立高校改革が目指すものについてでありますが、ご承知のように、かつては、都立高校は私立に比べて授業料も安く、非常に信頼もされ、高い評価を得ていましたが、これが、結果として今日逆転いたしまして、非常に残念な状況にあります。意をもってこの都立高校を、時代のニーズに合った形で改革していきたいと思っております。
 学校の統合、改編による新しい学校づくりを中心に進めてきましたが、学校の経営面の改革が必要であるとも思います。都立高校が都民の信頼を得るためには、学校経営に関する改革なくして高校改革はあり得ないと思っております。明治の近代化以来、社会的な方法として近代教育が行われてきました。しかし、振り返ってみますと、西欧に早く追いつき追い越そうというために、非常に限られた人材を画一的に育てる教育でしかなかったと思いますし、その基本的な姿勢というか、カリキュラムを含めて、依然として続いているために、公立の学校というものの魅力がなくなってきた。
 いずれにしろ、今日の価値観が多様化している時代にありまして、その多様な価値観にのっとっていろいろな期待、希望を持っている子どもたちに、こうした学校がそういった期待にこたえ切れないのが現況であります。ゆえに、各高校が特色を持って切磋琢磨して、多様な子どもたちの受け皿となっていく必要があると思います。学校が特色のある教育を行うことによって初めて、生徒一人一人の個性を伸ばすことができるようになります。それがあすの日本を支える多岐にわたる人材の育成につながっていくものと考えております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。
   〔教育長横山洋吉君登壇〕

○教育長(横山洋吉君) 教育に関します九点の質問にお答え申し上げます。
 まず、都立高校改革にかかわります産業高校についてですが、産業高校は、商品の生産から流通、消費に至るビジネスの過程全般について広く学びますとともに、社会的マナーや勤労観を身につけまして、さらに高度情報社会に対応した情報活用能力など、職業人としてより幅広い分野に対応できる基礎を身につけることを目指す専門高校でございます。
 設置場所としましては、商業高校と工業高校が近接しまして、地域の産業界との連携を期待できます墨田地区及び八王子地区が適切と考えております。
 次に、東京版デュアルシステムの導入についてでございますが、東京版デュアルシステムは、産業界と学校とのパートナーシップに基づきまして、企業での長期就業訓練を通した教育を学校の単位として認定する新しい職業教育システムでございまして、先般、東京都産業教育審議会から、都立高校における早期導入について答申されたところでございます。
 都教育委員会は、この答申を受けまして、十月に策定する予定の都立高校改革推進計画の新たな実施計画におきまして、東京版デュアルシステムの工業科への導入について、早ければ十六年度にもその実現を図ってまいりたいと考えております。
 また、お話しの商業、農業等の工業科以外の専門学科への展開につきましては、工業科での実践を踏まえまして検討してまいります。
 次に、中高一貫教育校の目的についてですが、六年間を通した一貫教育という特質の中で教養教育を継続的に行うことによりまして、使命感、倫理観、社会貢献の心や日本人としてのアイデンティティーを身につけまして、さまざまな場面、分野でリーダーとして人々の信頼を得られるような人間を育成していくことを設置の目的としているところでございます。
 次に、チャレンジスクールについてでございますが、多摩地区における夜間定時制課程の配置状況などから、新配置計画案では、多摩地区にチャレンジスクールの設置を予定しておりません。しかしながら、多摩地区における不登校傾向の生徒への対応は重要なことと考えておりまして、ご指摘のとおり、八王子地区昼夜間定時制高校におきまして、チャレンジクラスの設置など、弾力的なクラス編制を行うことなどによりまして、不登校傾向の生徒の学ぶ場を確保してまいります。
 次に、定時制高校の閉校による生徒の通学上の負担増についてでございますが、都の交通事情を考慮しますと、定時制高校は、全都的な地域バランスに配慮した上で設置された昼夜間定時制高校と既存の夜間定時制高校によりまして、通学可能な範囲に配置されているものと考えておりますが、一方で、高校教育のセーフティーネットの役割を果たす新たな通信制高校、いわゆるトライネットスクールの整備を行うことによりまして、不登校傾向の生徒など、さまざまな理由で学校への通学が困難な生徒への対応も充実させてまいります。
 次に、通信制教育の弾力化についてですが、通信制高校につきましては、生徒の多様化と情報通信技術の進展等を踏まえまして、新たな通信制高校であるトライネットスクールを多摩地区単位制高校の通信制課程として設置する予定でございます。
 さらに、千代田地区昼夜間定時制高校に上野高校の通信制課程を移転して併設する予定でございますが、こうした通信制高校においては、ご提案の趣旨を踏まえまして、平日スクーリングなど多様な形態によるスクーリングが必要でありますことから、実施の方向で検討してまいります。
 次に、新たな実施計画の決定についてですが、都立高校改革推進計画の実施計画につきましては、これまでも計画決定に先立って改革の対象となる学校名を公表し、保護者、同窓会等、学校関係者への説明を行う中で、計画に対する理解を得られるように努めてきたところでございます。今回の配置計画案につきましても、六月の発表以降、保護者、同窓会、教職員等の学校関係者や地元自治体等への説明を積極的に行ってまいりましたし、今後とも関係者の理解を得られるよう努めてまいります。
 また、新たな実施計画の推進に当たっては、新しく設置する個別の学校ごとに教育課程等について検討します委員会を設置しまして、広く学校関係者の意見を反映できるようにしてまいりますとともに、学識経験者や地域の商工関係者等、高校教育に関して識見を持つ方々の意見を聞く機会の設定についても積極的に対応してまいります。
 次に、耐震関係ですが、国で計画している学校施設の耐震診断についてですが、現在、小中学校の耐震診断に係る経費につきましては、補強工事を伴わないものは国庫補助の対象となってはおりません。
 今回、国では、学校施設の耐震診断の促進を図るために、区市町村が実施をする耐震診断の経費のうち、一次診断に係る経費について新たに補助対象とするよう検討しているとのことでございます。
 この国の補助制度の拡大につきましては、区市町村の要望にこたえての一定の改善ではございますが、一次診断では必ずしも十分とは考えておりません。このため、耐震対策がより一層推進されるよう、引き続き助成制度の拡充を国に求めてまいります。
 最後に、都教育委員会としての耐震戦略プログラムの策定についてですが、都立学校については、耐震性に問題のある学校の補強工事を計画的に進めまして、平成十八年度までに完了することを目指しております。
 一方、小中学校の耐震対策につきましては、設置者である区市町村が対応することとなっておりまして、国の助成制度を十分に活用して適切に対応すべきものと考えております。
 ご提案の耐震戦略プログラムを策定する場合には、その実効性を確保する観点から、区市町村に対する国の助成制度の拡充が不可欠でございます。そのため、国に対し一層強力に働きかけてまいります。
 また、小中学校の耐震対策を計画的に推進するために、区市町村の実態を総合的に把握しますとともに、耐震工事等に対する情報提供や技術的支援を学校施設耐震化支援策として実施してまいります。
   〔知事本部長前川燿男君登壇〕

○知事本部長(前川燿男君) 構造改革特区につきまして、二点のご質問にお答えいたします。
 まず、特区への認識等でありますが、今回の国の構造改革特区は、特定の地域の規制緩和を突破口として、これを全国に広げていこうとするものであり、お話がありましたとおり、現状改革を進めようとする意図は評価できるものであります。しかし、全国から提出された案を見ると、特区という手法が必ずしもなじまないものも見受けられ、また、ご指摘のとおり、提案内容によっては税財政措置を組み合わせないと実効性を確保できないものもあるわけであります。都といたしましては、東京湾岸地域に関する二つの特区を国に提案しておりますが、この実現に向け、税財政措置を含め、国に強く働きかけてまいります。
 次に、特区の推進体制、特区の実現のための取り組み体制についてでありますが、今回、都が提案した特区の内容は、国際競争力強化のための規制緩和を基本としながら、税制面の優遇措置や融資制度の拡充、さらには広域的な連携など、多岐にわたるものでございます。二つの提案とも、都がかねてから庁内各局で協力し、関係自治体との連携を図りながら取り組みを進めてきたところでございます。
 今後、庁内の横断的な推進体制をこれまで以上に充実強化するとともに、首都圏自治体との積極的な連携を図り、特区の実現に向けて取り組んでまいります。
   〔港湾局長高橋信行君登壇〕

○港湾局長(高橋信行君) 提案しました特区の目的と内容についてでありますが、まず、国際港湾特区は、港湾の規制や商慣行を官民一体となって変革することにより、サービス面の向上やコスト削減などを実現し、東京港の国際競争力を強化することをねらいとしたものであります。
 また、経済特区は、税の減免や財政措置、法規制の緩和等により、投資促進や創業及び新産業の創出の支援などを通じて産業の集積を進め、東京湾岸地域の経済の再生を図ろうとするものであります。
 これらは、首都圏、ひいては我が国経済の活性化に必要不可欠のものであり、ぜひとも実現すべきものと考えております。
   〔産業労働局長有手勉君登壇〕

○産業労働局長(有手勉君) 景気、中小企業対策に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、年末に向けた金融支援策についてでございますが、中小企業を取り巻く極めて厳しい経済状況が依然と続いておりまして、さらなる金融支援策の必要性については認識しているところでございます。このため、現行制度の改善や新たな融資制度の創設について検討を進めております。
 今後、金融機関や東京信用保証協会とも連携を図りながら、できるだけ速やかに具体策を取りまとめていきたいと考えております。
 次に、意欲ある人が再挑戦できる社会システムの構築研究会についてでございます。
 事業に失敗した人が意欲を持って再起していくための仕組みをつくることは、重要なことであります。研究会ではこれまで、企業の再建と倒産法制、起業、創業のための資金支援、経営支援と人材育成などにつきまして、幅広い議論がなされてきております。今後も月一回程度開催し、年度末を目途に議論を進めていく考えでございます。
 これまでの議論を振り返りますと、国に対応を求めるものが非常に多い状況になってございます。それらにつきましては、国に積極的に提案、要求をしていきたいと考えております。
 また、今後、都としてもできることがあれば、前向きに対応してまいります。
 最後に、再生を図ろうとする中小企業者への支援策についてでございますが、企業の再生を支援する融資は、中小企業者に再チャレンジの機会を提供するため、大きな役割を果たすものと考えております。
 現在、民事再生法等に基づいて再生過程にある中小企業への融資制度は、政府系金融機関によるものに限られていることから、その拡充のために、国において新たな保証制度を検討中と聞いておりまして、ご指摘の趣旨も踏まえまして、その実現を国に強く要望してまいります。
   〔福祉局長川崎裕康君登壇〕

○福祉局長(川崎裕康君) 福祉改革などのご質問にお答えいたします。
 まず、都立福祉施設の改革についてであります。
 都は、七月二十六日に「福祉サービス提供主体の改革への取組について」を策定し、当面、五年後の平成十九年度に向けた改革の方針を明らかにしました。
 改革の実施に当たりましては、適切な移譲先法人の選定等により、入所者のサービス水準を確保いたします。とりわけ障害者施設については、重度の障害者を多く受け入れてきた経緯を踏まえ、入所者の状況に即して十分な配慮を行ってまいります。
 また、改革の具体化に際しましては、入所者を初め都民に不安が生じないよう十分な説明を行うなど、適切に対処してまいります。
 次に、都立福祉施設改革と都民サービスの確保についてでございます。
 改革を進めるに当たりましては、サービス基盤の整備はもとより、だれもが地域で安心して暮らせる仕組みづくりやサービスの質の向上を図るための利用者支援の仕組みづくりが大変重要になってきます。そのため、都は、区市町村が利用者の相談、苦情、権利侵害などにワンストップでこたえる仕組みづくりを支援するとともに、来年度から、利用者の選択とサービスの質の向上に資するため、第三者サービス評価や総合的な福祉情報の提供を本格実施する予定でございます。
 今後、こうした取り組みを進めつつ、指導監督の充実を図り、福祉サービスの一層の向上に努めてまいります。
 次に、民間移譲等の基本的考え方についてでございます。
 都立福祉施設改革は、民間移譲等を進めていくことを基本に、七月に策定した方針について、利用者のサービス水準の確保など、環境を整えながら、今後、具体化をしていくものでございます。
 この方針では、当面、五年後に向け、既に民間法人委託により運営されている施設や比較的規模の小さい施設等について、民間移譲等を行うことといたしました。
 民間移譲に当たりましては、ご指摘のとおり、利用者本位の理念のもとに、施設の運営形態を含め、十分検討の上、進めてまいります。
 次に、社会福祉法人改革についてでございます。
 都が進める福祉改革の目指すものは、行政が広範囲にわたってコントロールする既存の仕組みを根本から改め、利用者本位を徹底する新しいシステムを構築することにございます。それには、社会福祉法人も社会経済状況等の変化に対応し、利用者本位の新しい福祉を担っていくため、自己改革を実行する必要があり、東京都はこれを支援してまいります。
 民間社会福祉施設サービス推進費補助の検討に当たっては、これまでの一律に補助する仕組みを、サービス向上に向けた努力が真に報われるものとするよう、施設の代表者の意見などを聞きながら慎重に進めてまいります。
 次に、障害者の自立を支援する施策についてであります。
 生活寮については、平成九年度から十三年度末までの五年間で、五百五十九人から九百六十四人へと二倍弱の定員増を図るとともに、体験型や重度知的障害者など、多様なニーズに対応した生活寮を整備してまいりましたが、地価の高い地域などでは設置が進みにくい状況がございます。
 今後は、自立を目指す障害者が地域で生活できるよう、さらに設置を促進する方策について検討し、地域生活を支えるサービス基盤の整備を強力に推進してまいります。
 次に、障害福祉に関する新たな施策の展開についてでございます。
 今年度は心身障害者施設緊急整備三カ年計画の二年目であり、東京都は区市町村などと連携して、生活寮や知的障害者入所更生施設などの整備促進に全力で取り組んでいるところでございます。
 支援費制度のもとでは、行政による措置から、利用者と事業者との対等な契約へとサービス利用の方法が変わることから、利用者の選択を支援する新たな仕組みや地域生活を支えるサービス基盤の一層の拡充などが必要であると認識をしております。
 今後、ご指摘の点を踏まえ、新たに必要な施策について、具体的に検討を進めてまいります。
 最後に、三宅村の介護保険料についてでございます。
 三宅村では、全島避難という状況の中で、保険料収納率の低下と施設入所者増による給付費の増加が見込まれることから、次期の保険料につきましては配慮をしていく必要があると考えております。
 都としては、三宅村の意向も踏まえ、島民の過大な負担とならないよう、現在国と協議をしているところでありますが、できる限り早期に調整をしてまいります。
   〔住宅局長橋本勲君登壇〕

○住宅局長(橋本勲君) バリアフリー化の一環としての既設階段室型都営住宅へのエレベーターの設置についてでございますが、現在、昨年の試行結果をもとに、建築物の構造、地盤条件や費用対効果、さらには居住者の合意形成などの課題を検討しております。
 今後、財政状況も踏まえながら、計画的な整備に向けて、速やかに実施条件を整理してまいります。
 次に、既設の廊下型都営住宅への小型エレベーターの設置についてでございますが、廊下型におきましては、福祉対応型の規模のエレベーターを原則として設置しております。ご質問のような場合につきましても、技術的な工夫などにより設置に努めてまいりましたが、今後とも団地状況など諸条件を考慮し、適切な対応を検討してまいります。
   〔病院経営本部長櫻井巖君登壇〕

○病院経営本部長(櫻井巖君) 母子保健院に関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、母子保健院が果たしてきました医療機能の確保についてであります。
 母子保健院がこれまで実態として提供してきた地域の小児医療につきましては、地元世田谷区が設置する小児の初期救急医療施設で患者を受け入れるとともに、この施設と国立成育医療センター、都立広尾病院など、近隣の医療機関との連携を強化することにより、地域住民が必要とする医療提供体制を確保してまいります。
 さらに、新生児に対する集中治療を行うNICUや夜尿症外来などの専門的医療につきましては、都立大塚病院などに機能を移転し、引き続きすべての都民を対象に医療を提供できるよう万全を期していきます。
 次に、国立成育医療センターにおける現在の診療状況についてでありますが、一日当たりの診療実績を見ますと、入院が約三百名、外来が約七百名となっています。特に休日、夜間の小児等の救急患者実績は、本年七月において一日当たり四十四人に達しており、母子保健院の昨年度実績である一日当たり五人を大きく上回っています。さらに、これら救急患者の七五%以上が世田谷区民であります。
 このように、国立成育医療センターは、実態として地域の小児医療にも大きく貢献していただいており、母子保健院の廃止を心配されている一部の方々の不安は払拭できるものと認識しています。
 最後に、母子保健院の乳児院廃止後の対応についてであります。
 母子保健院を除く都内の乳児院の施設数は十カ所で、定員が五百六十七人であり、七月一日時点での入所率は六四%となっています。したがって、母子保健院の乳児院が廃止されても、入所枠には相当の余裕があり、これら十カ所の乳児院で十分対応が可能であります。
 なお、医療的ケアが必要な乳児の場合には、その症状に応じて病院に併設された乳児院に入所させるなど、それぞれの子どもたちの状況に十分配慮して、適切に対応してまいります。
   〔環境局長小池正臣君登壇〕

○環境局長(小池正臣君) 環境問題についての五点のご質問にお答えいたします。
 まず、環境教育の充実についてでございますが、ヨハネスブルクサミットでは、持続可能な開発を進めるための指針として、世界実施計画が採択されました。その中では、持続可能な開発を促進するためには、教育が極めて重要であると明示されております。
 地球規模での環境問題に対応していくためには、都民一人一人が幅広く環境問題について学び、考えることが必要であり、特に次世代を担う子どもたちへの環境教育は重要であると認識しております。
 今後とも、家庭、学校、地域、企業等のさまざまな場で環境教育のための適切な場と機会が確保されるよう、取り組みを進めてまいります。
 次に、粒子状物質減少装置の信頼性などについてでございますが、DPFなどの装置の指定に際しましては、性能を示す粒子状物質の減少率のほか、信頼性、耐久性、安全性等について、専門家で組織する指定審査会で十分な検討を行い、その上で指定しております。
 また、装置メーカーは三年ないし一年の保証期間を設けて、装置の信頼性の確保に努めております。
 都といたしましては、装置メーカーや装着した事業者から情報を収集し、指定した装置の稼働状況について把握するとともに、装置メーカーに対しては、装置の使用条件、定期点検に要するメンテナンス費用などの情報提供の徹底を指導してまいります。
 次に、民間を活用したディーゼル車対策についてでございますが、都では、違反ディーゼル車一掃作戦の中で、自動車Gメンによる立入指導のほか、荷主に当たる業界団体等との連携により、条例への早期対応を働きかけることとしております。
 とりわけ事業者にとって身近な自動車整備事業者には、個々のディーゼル車に対応した装置の選定や買いかえを具体的に助言する役割を期待しております。この観点から、十月中に都内約五千三百の自動車整備事業者を対象に、支部別説明会や講習会を開催し、協力を要請することとしており、今後、民間との連携強化を図りながら、ディーゼル車規制を円滑に進めてまいります。
 次に、新車買いかえの融資あっせん制度の検討についてでございますが、都は、最新規制に適合したディーゼル車や低公害車への買いかえを促進するため、融資あっせん制度を設けております。
 都といたしましては、この制度の活用を事業者に働きかけますとともに、ご指摘の状況を踏まえ、ディーゼル車規制に係る融資あっせん制度を利用しやすいものとなるよう、さまざまな検討を行っているところであり、今後、低公害な車への買いかえが促進されるよう努めてまいります。
 最後に、ディーゼル車規制に係る支援策についてでございますが、都は規制への早期対応を促進するため、平成十三、十四年度の二カ年について、粒子状物質減少装置の装着に対する補助制度を設けており、現在、事業者に対しまして、融資あっせん制度を含め、積極的な活用を働きかけているところでございます。
 平成十五年十月の規制開始に向け、条例への対応が進むよう、さまざまな検討を行っており、今後、支援策の充実を図ってまいります。
   〔総務局長赤星經昭君登壇〕

○総務局長(赤星經昭君) 三宅島災害対策に関します二点の質問についてお答え申し上げます。
 まず、三宅島の火山ガスに関する検討会についてですが、この検討会は、三宅島の火山ガスの状況につきまして科学的な面や安全確保の面から検討するために、都と国が共同して設置するものでございます。
 検討会は、火山ガスや公衆衛生、労働衛生、呼吸器系疾患などを専門といたします学識経験者と、都を初め国や三宅村の行政機関の参加を得まして、九月三十日に第一回の検討会を開催し、年内に中間のまとめを行い、今年度末までに最終報告を取りまとめる予定でございます。
 検討結果につきましては、都及び国、三宅村が島民の帰島を判断する際の判断材料として活用してまいります。
 次に、特別立法などを含む特別の支援措置についてですが、避難生活が長期にわたっていることから、帰島後の生活再建には、これまでの支援に加えまして特別の支援が必要であると認識しております。このため、島民が円滑に生活再建ができるように、国に対し特段の措置を講ずるよう、提案要求してきたところでございます。
 都といたしましては、現在三宅村が策定しております復興計画の動向も踏まえまして、帰島に際してどのような措置が有効か検討を進めますとともに、必要な支援策について、引き続き国に強く働きかけてまいります。

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