平成十四年東京都議会会議録第十一号

平成十四年九月十八日(水曜日)
 出席議員(百二十五名)
一番谷村 孝彦君
二番東村 邦浩君
三番秋田 一郎君
四番矢島 千秋君
五番北城 貞治君
六番山加 朱美君
七番柿沢 未途君
八番後藤 雄一君
九番福士 敬子君
十番伊沢けい子君
十一番執印真智子君
十二番馬場 裕子君
十三番初鹿 明博君
十四番山下 太郎君
十五番河野百合恵君
十六番長橋 桂一君
十七番小磯 善彦君
十八番野上じゅん子君
十九番ともとし春久君
二十番萩生田光一君
二十一番串田 克巳君
二十二番小美濃安弘君
二十三番吉原  修君
二十四番山田 忠昭君
二十五番臼井  孝君
二十六番野島 善司君
二十七番服部ゆくお君
二十八番中西 一善君
二十九番山口 文江君
三十番真木  茂君
三十一番花輪ともふみ君
三十二番酒井 大史君
三十三番清水ひで子君
三十四番かち佳代子君
三十五番小松 恭子君
三十六番織田 拓郎君
三十七番藤井  一君
三十八番東野 秀平君
三十九番中嶋 義雄君
四十番松原 忠義君
四十一番田代ひろし君
四十二番三宅 茂樹君
四十三番川井しげお君
四十四番いなば真一君
四十五番近藤やよい君
四十六番高島なおき君
四十七番吉野 利明君
四十八番倉林 辰雄君
四十九番遠藤  衛君
五十番新井美沙子君
五十一番相川  博君
五十二番樋口ゆうこ君
五十三番富田 俊正君
五十四番福島 寿一君
五十五番大塚 隆朗君
五十六番古館 和憲君
五十七番松村 友昭君
五十八番丸茂 勇夫君
五十九番鈴木貫太郎君
六十番森田 安孝君
六十一番曽雌 久義君
六十二番石川 芳昭君
六十三番土持 正豊君
六十四番野田 和男君
六十五番三原 將嗣君
六十六番中屋 文孝君
六十七番真鍋よしゆき君
六十八番林田  武君
六十九番高橋かずみ君
七十番樺山 卓司君
七十一番大西 英男君
七十二番田島 和明君
七十三番野村 有信君
七十四番大河原雅子君
七十五番林  知二君
七十六番土屋たかゆき君
七十七番青木 英二君
七十八番河西のぶみ君
七十九番中村 明彦君
八十番大山とも子君
八十一番吉田 信夫君
八十二番曽根はじめ君
八十三番橋本辰二郎君
八十四番大木田 守君
八十五番前島信次郎君
八十六番桜井良之助君
八十七番比留間敏夫君
八十八番古賀 俊昭君
八十九番鈴木 一光君
九十番こいそ 明君
九十一番星野 篤功君
九十二番山本賢太郎君
九十三番花川与惣太君
九十四番立石 晴康君
九十五番清原錬太郎君
九十六番小山 敏雄君
九十八番藤田 愛子君
九十九番坂口こうじ君
百番名取 憲彦君
百一番藤川 隆則君
百二番小林 正則君
百三番東ひろたか君
百四番池田 梅夫君
百五番渡辺 康信君
百六番木内 良明君
百七番石井 義修君
百八番中山 秀雄君
百九番藤井 富雄君
百十番桜井  武君
百十一番新藤 義彦君
百十二番宮崎  章君
百十三番山崎 孝明君
百十四番松本 文明君
百十五番佐藤 裕彦君
百十六番川島 忠一君
百十七番矢部  一君
百十八番内田  茂君
百十九番三田 敏哉君
百二十番田中 晃三君
百二十一番大西由紀子君
百二十二番尾崎 正一君
百二十三番田中  良君
百二十四番和田 宗春君
百二十六番木村 陽治君
百二十七番秋田かくお君

 欠席議員(一名)
九十七番 大山  均君
 欠員
百二十五番

 出席説明員
知事石原慎太郎君
副知事福永 正通君
副知事青山 やすし君
副知事濱渦 武生君
出納長大塚 俊郎君
教育長横山 洋吉君
知事本部長前川 燿男君
総務局長赤星 經昭君
財務局長田原 和道君
警視総監石川 重明君
主税局長安間 謙臣君
生活文化局長三宅 広人君
都市計画局長勝田 三良君
環境局長小池 正臣君
福祉局長川崎 裕康君
健康局長長尾 至浩君
産業労働局長有手  勉君
住宅局長橋本  勲君
建設局長小峰 良介君
消防総監杉村 哲也君
港湾局長高橋 信行君
交通局長松尾  均君
水道局長飯嶋 宣雄君
下水道局長鈴木  宏君
大学管理本部長鎌形 満征君
病院経営本部長櫻井  巖君
中央卸売市場長碇山 幸夫君
選挙管理委員会事務局長押切 重洋君
人事委員会事務局長高橋  功君
地方労働委員会事務局長立花 壯介君
監査事務局長中山 弘子君
収用委員会事務局長平井 健一君

九月十八日議事日程第一号
第一 第百九十二号議案
  特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第二 第百九十三号議案
  市町村における東京都の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
第三 第百九十四号議案
  東京都地震災害警戒本部条例
第四 第百九十五号議案
  東京都基金管理条例の一部を改正する条例
第五 第百九十六号議案
  東京都情報公開条例の一部を改正する条例
第六 第百九十七号議案
  東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
第七 第百九十八号議案
  東京都都市計画局関係手数料条例の一部を改正する条例
第八 第百九十九号議案
  東京都建築安全条例の一部を改正する条例
第九 第二百号議案
  東京都特別工業地区建築条例の一部を改正する条例
第十 第二百一号議案
  東京都立老人医療センター条例の一部を改正する条例
第十一 第二百二号議案
  老人の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第十二 第二百三号議案
  心身障害者の医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例
第十三 第二百四号議案
  東京都看護師等修学資金貸与条例の一部を改正する条例
第十四 第二百五号議案
  東京都リハビリテーション病院条例の一部を改正する条例
第十五 第二百六号議案
  東京都立母子保健院条例を廃止する条例
第十六 第二百七号議案
  東京都立病院条例の一部を改正する条例
第十七 第二百八号議案
  東京都立小児病院条例の一部を改正する条例
第十八 第二百九号議案
  東京都営空港条例の一部を改正する条例
第十九 第二百十号議案
  警視庁の設置に関する条例の一部を改正する条例
第二十 第二百十一号議案
  火災予防条例の一部を改正する条例
第二十一 第二百十二号議案
  警視庁北沢警察署庁舎改築工事請負契約
第二十二 第二百十三号議案
  東雲一号橋(仮称)下部工事(その二)請負契約
第二十三 第二百十四号議案
  日暮里・舎人線下部工事(その二十)請負契約
第二十四 第二百十五号議案
  地盤改良工事及び擁壁工事(十四・四―六)(環八若木)請負契約
第二十五 第二百十六号議案
  日暮里・舎人線荒川横断橋りょう鋼けた製作・架設工事(その二)請負契約
第二十六 第二百十七号議案
  多摩川原橋(Ⅱ期線)鋼けた製作・架設工事請負契約
第二十七 第二百十八号議案
  晴豊一号橋(仮称)鋼けた製作・架設工事(その一)請負契約
第二十八 第二百十九号議案
  晴豊一号橋(仮称)鋼けた製作・架設工事(その二)請負契約
議事日程第一号追加の一
第一 東京都名誉都民の選定の同意について(一四財主議第二八〇号)

   午後一時一分開会・開議

○議長(三田敏哉君) ただいまから平成十四年第三回東京都議会定例会を開会いたします。
 これより本日の会議を開きます。

○議長(三田敏哉君) まず、議席の変更を行います。
 議席変更の申し出がありますので、会議規則第二条第三項の規定により、お手元配布の議席変更表のとおり、議席の一部を変更いたします。
(別冊参照)

○議長(三田敏哉君) 次に、会議録署名議員の指名を行います。
 会議録署名議員は、会議規則第百二十四条の規定により、議長において
   五番   北城 貞治君 及び
   六十四番 野田 和男君
を指名いたします。

○議長(三田敏哉君) この際、議会局の局部長に異動がありましたので、紹介いたします。
 議会局長岡田重信君、管理部長長野宏君、参事議案調査担当花田貢市郎君。
   〔局部長あいさつ〕

○議長(三田敏哉君) 以上で紹介を終わります。

○議長(三田敏哉君) 次に、議事部長をして諸般の報告をいたさせます。

○議事部長(稲熊明孝君) 平成十四年九月十一日付東京都告示第千七十四号をもって、知事より、本定例会を招集したとの通知がありました。
 また、同日付で、本定例会に提出するため、議案二十八件の送付がありました。
 次に、知事より、平成十四年第二回定例会の会議において同意を得た東京都公安委員会委員及び東京都人事委員会委員の任命について、発令したとの通知がありました。
 次に、知事及び四行政委員会より、先般の人事異動に伴う東京都議会説明員の変更及び説明員の委任の変更について、地方自治法第百二十一条及び会議規則第四十二条の規定に基づき、それぞれ通知がありました。
 次に、地方自治法第百八十条第一項の規定による議会の指定議決に基づき専決処分した訴えの提起、損害賠償額の決定及び和解に関する報告がありました。
 次に、監査委員より、平成十四年度随時監査及び例月出納検査の結果について、それぞれ報告がありました。
 また、監査結果に基づき知事等が講じた措置に関する報告がありました。
(別冊参照)

○議長(三田敏哉君) 次に、文書質問に対する答弁書について申し上げます。
 第二回定例会に提出されました文書質問に対する答弁書は、質問趣意書とともに送付いたしておきました。ご了承願います。
   〔文書質問趣意書及び答弁書は本号末尾(一一ページに掲載)〕

○議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の議員の失職について申し上げます。
 去る七月六日、文京区選出西条庄治君は、裁判が確定したことにより、公職選挙法第二百五十一条の規定に基づき当選無効となり、失職いたしました。

○議長(三田敏哉君) 次に、警視総監野田健君の退任に伴い、新たに石川重明君が警視総監に就任いたしましたので、ご紹介いたします。
 警視総監石川重明君。
   〔警視総監石川重明君登壇〕

○警視総監(石川重明君) 去る八月二日付をもちまして警視総監に命じられました石川重明でございます。
 東京都議会の皆様方には、警視庁の運営につきまして、平素大変なご高配、ご理解をいただいておりますことにつきまして、この機会に厚くお礼を申し上げたいというふうに存じます。
 犯罪の国際化、グローバル化というようなこともございまして、さまざまな統計指標が示しておりますように、現在の治安情勢にはまことに厳しいものがございますが、私は、東京都民の安全と安心を確保するという観点から、警察に課せられた責務というものを全力で果たしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 どうか、引き続き警視庁に対しますご指導、ご支援のほどをよろしくお願い申し上げまして、就任のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって紹介は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 次に、先般の人事異動に伴い、異動のありました説明員の方々をご紹介いたします。
 知事本部長前川燿男君、総務局長赤星經昭君、財務局長田原和道君、生活文化局長三宅広人君、都市計画局長勝田三良君、環境局長小池正臣君、福祉局長川崎裕康君、健康局長長尾至浩君、産業労働局長有手勉君、建設局長小峰良介君、港湾局長高橋信行君、交通局長松尾均君、選挙管理委員会事務局長押切重洋君、地方労働委員会事務局長立花壯介君、収用委員会事務局長平井健一君。
   〔理事者あいさつ〕

○議長(三田敏哉君) 以上をもって説明員の紹介は終わりました。

○議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の常任委員の所属変更について申し上げます。
 去る八月十九日付をもって、公営企業委員尾崎正一君から、建設・住宅委員へ、常任委員の所属変更の申し出がありましたので、委員会条例第五条第三項ただし書きの規定により、議長において、同日付をもってこれを許可いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、議長の許可のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、議長許可のとおり承認することに決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の議会運営委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。
   議会運営委員辞任・選任名簿

○辞任
 松本 文明君(自)  比留間敏夫君(自)
 野村 有信君(自)  古賀 俊昭君(自)
 樺山 卓司君(自)  服部ゆくお君(自)
 田島 和明君(自)  臼井  孝君(自)
 北城 貞治君(自)  秋田 一郎君(自)
     〔以上 平成十四年八月一日付〕
 藤田 愛子君(ネ)
     〔以上 平成十四年八月二日付〕
 林  知二君(民)  河西のぶみ君(民)
 真木  茂君(民)
    〔以上 平成十四年九月十一日付〕

○選任
 山崎 孝明君(自)  宮崎  章君(自)
 新藤 義彦君(自)  星野 篤功君(自)
 小礒  明君(自)  鈴木 一光君(自)
 真鍋よしゆき君(自)  林田  武君(自)
 高橋かずみ君(自)  中屋 文孝君(自)
     〔以上 平成十四年八月一日付〕
 大西由紀子君(ネ)
     〔以上 平成十四年八月二日付〕
 森田 安孝君(公)
    〔以上 平成十四年九月十一日付〕
 土屋たかゆき君(民)  中村 明彦君(民)
    〔以上 平成十四年九月十一日付〕

○議長(三田敏哉君) 次に、閉会中の行財政改革基本問題特別委員の辞任及び選任について申し上げます。
 お手元配布の名簿のとおり、各委員よりそれぞれ辞任願が提出されましたので、委員会条例第十一条第一項ただし書きの規定により、議長において、それぞれこれを許可いたしましたので、ご報告いたします。
 なお、ただいまご報告いたしました特別委員の辞任に伴い、欠員を補充する必要が生じましたので、委員会条例第五条第四項の規定により、議長において、お手元配布の名簿のとおり指名いたしました。
 お諮りいたします。
 本件は、それぞれ議長の指名のとおり承認することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、それぞれ議長指名のとおり承認することに決定いたしました。
   行財政改革基本問題特別委員辞任・選任名簿

○辞任
 川島 忠一君(自)  古賀 俊昭君(自)
 樺山 卓司君(自)  真鍋よしゆき君(自)
 松原 忠義君(自)  新藤 義彦君(自)
 田島 和明君(自)
    〔以上 平成十四年九月十二日付〕

○選任
 立石 晴康君(自)  鈴木 一光君(自)
 小礒  明君(自)  近藤やよい君(自)
 大西 英男君(自)  星野 篤功君(自)
 松本 文明君(自)
    〔以上 平成十四年九月十二日付〕

○議長(三田敏哉君) この際、日程の追加について申し上げます。
 知事より、東京都名誉都民の選定の同意についてが提出されました。
 これを本日の日程に追加いたします。

○議長(三田敏哉君) 会期についてお諮りいたします。
 今回の定例会の会期は、本日から十月十一日までの二十四日間といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、会期は二十四日間と決定いたしました。

○議長(三田敏哉君) この際、永年在職議員の表彰についてお諮りいたします。
 百十番桜井武君には、東京都議会議員として、多年にわたり地方自治の確立と都政の進展のために貢献せられ、その功績はまことに顕著であります。
 本議会は、その功労を多とし、表彰することにいたしたいと存じますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本議会は、桜井武君を表彰することに決定いたしました。
 お諮りいたします。
 表彰文は議長に一任せられたいと存じますが、これにご異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認め、さよう決定いたしました。
 これより、議長において起草いたしました表彰文により表彰いたします。
    表彰状
             桜井  武殿
 あなたは東京都議会議員として
 在職二十五年以上に及び
 都政の発展に努力された功績は
 まことに顕著であります。
 ここに永年の功労を多とし表彰します。
   平成十四年九月十八日
               東京都議会
 以上でございます。
 おめでとうございます。
   〔拍手〕
 なお、表彰状の贈呈につきましては、議長において取り計らいたいと存じますので、ご了承願います。
 ただいま表彰を受けられました桜井武君より、ごあいさつがございます。
 百十番桜井武君。
   〔百十番桜井武君登壇〕

○百十番(桜井武君) ただいま表彰をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。
 多くの先輩、同僚の方々のご協力をいただきまして、今日まで何とか東京都議会議員として職務を尽くしてこられました。心から厚く御礼を申し上げます。
 多々申し述べたいわけでございますが、きょうは、自民党の総会で、小泉さんの訪朝について大分つるし上げを食ったものでございますので、頭の中が……(「会長の責任じゃないよ」と呼ぶ者あり)ということでございますので、これからも初心を忘れず、一生懸命に頑張ってまいりますので、変わらぬご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の御礼の言葉にかえさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもってあいさつは終わりました。

○議長(三田敏哉君) この際、知事より発言の申し出がありますので、これを許します。
 知事石原慎太郎君。
   〔知事石原慎太郎君登壇〕

○知事(石原慎太郎君) 平成十四年第三回都議会定例会の開会に当たり、都政運営に対する所信の一端を申し述べ、都議会の皆様、都民の皆様のご理解とご協力を得たいと思います。
 ただいま、桜井武議員は、はえある永年在職議員表彰をお受けになりました。都政の発展に尽くされた二十五年のご功績に対して深く敬意を表し、心からお喜びを申し上げます。
 冒頭、名誉都民の選定について申し上げます。
 このたび、名誉都民の候補者として、山下八百子さんを選定いたしました。
 山下八百子さんは、八丈島に古くから伝わる染織工芸、黄八丈の職人として、伝統文化の保存と継承に力を尽くされており、多くの都民が敬愛し、誇りとするにふさわしい方であります。都議会の皆様の同意をいただき、来月一日、都民の日に名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは次に、首都圏の骨格を形成するこれからの交通ネットワークについて申し上げます。
 陸・海・空を問わず、さまざまな経路を通じて、人、物あるいは情報が交流し、そこから生まれる刺激が文明を発展させてまいりました。よろず運輸の手段は、文明のバロメーターであります。
 わけても道路は、その国の社会資本の豊かさ、成熟の度合いを映し出す鏡であると思います。経済活動に見合って道路が過不足なく整備されていることが、バランスのとれた姿であり、道路だけが立派であったり、逆に道路整備が追いつかない状態は、その国がひずみや矛盾を抱えている証左であります。
 日本では、地域間の不均衡が非常に大きく、ここ首都圏では、経済の規模に比べ、明らかに道路整備が立ちおくれております。特に、環状方向の高速道路は計画の二割しか完成していないため、通過車両までもが都心に集中し、首都高速道路は慢性的な渋滞に悩まされております。交通渋滞は、余計な排気ガスを充満させ、環境面にも大きな影響があります。
 高速道路に関しては、現在、道路関係四公団民営化推進委員会で議論が行われており、新規路線の扱いが一つの論点となっております。新規路線には地方負担を求めるようでありますが、例えば外環道の関越道から東名高速道路を結ぶ区間は、一日十万台、全国平均の九倍の利用が見込まれており、所要時間を五分の一に短縮いたします。
 都内では、高速道路に限らず、短い路線の開通や部分的な改良であっても、顕著な改善効果を生み出します。例えば環状八号線井荻地区は、立体交差が完成したことで、通過交通量は二倍に近く増加しながらも、渋滞時の走行時間は一時間以上短縮いたしました。また、東京港臨海道路の部分開通により、臨海トンネルを挟んだ両岸では、往来に要する時間が半分以下に縮まり、レインボーブリッジの交通量も二割減少しております。
 全国でも有数の交通需要と大きな整備効果が見込まれる首都圏の道路整備を、他の地域と一くくりにブレーキをかけてしまうのは、日本の再生にとって自殺行為であり、極めて粗雑な考えであります。
 首都圏を網羅するネットワークが完成すれば、人の流れ、物の流れからむだが消え、首都圏が抱える空港や港湾の機能も格段に向上いたします。国益を考えた場合、首都圏につくる三本の環状道路は、あくまで国が責任を持つべきであり、相当の覚悟を持ってこれからも整備の促進を働きかけていきたいと思います。
 羽田空港の再拡張もまた、国家戦略としてとらえるべき問題であります。
 羽田空港は、各地から乗り入れの要望が多数ありながら、この夏の増便を最後に、空港容量は限界に達してしまいました。再拡張しない限り、今以上の増便はほとんど不可能な状態となっております。
 国でも、羽田空港の再拡張を重要課題と位置づけてはいるものの、肝心の工法を絞ることができないまま、いたずらに時間が経過し、地方負担を求める動きだけが強まっております。国は、地域への利益が生じることを根拠に負担を求めるようでありますが、それでは、国全体に利益をもたらす羽田空港の役割を矮小化しており、説得力に欠けるといわざるを得ません。国家財政だけを優先させた近視眼的な発想でしかなく、首都圏の環状道路と同様、国益に対する認識が抜け落ちております。
 今、国がなすべきことは、再拡張の道筋を早急に固め、あわせて、羽田空港一帯を空の玄関口としてふさわしい姿に整えていくことであります。国の責任ある対応を強く要求してまいります。
 我が国が食料の四割、エネルギー資源の八割を海外に依存する中で、東京港は、横浜港などとともに、首都圏の生活や産業を支える重要な拠点であります。しかし、この十年間で、欧米からアジアに向かうコンテナ船の多くは日本に寄港しなくなり、東京港を初め日本の港湾は、相対的な地位を著しく低下させております。日本の港湾が世界の物流の幹線ルートから外れることになれば、輸送コストや輸送時間が増加し、国民生活に大きな影響が及ぶようになります。消費物資を安定的に輸入し、輸出産業の競争力を確保するには、日本の港湾は、大型のコンテナ船が寄港する魅力を持つ必要があります。
 そのためにも、港湾物流のIT化は大きな懸案であり、去る七月、東京都が主導して、国内主要九港の港湾管理者が集まる検討委員会を立ち上げました。今後協議を重ねながら、早期に官民の情報を共有化できるシステムを構築し、物流の効率化と顧客へのサービス改善につなげていきたいと思います。
 また、港湾区域では、さまざまな規制が必要以上に行動を束縛し、効率的な運営を妨げていることから、東京港を国際港湾特区とし、規制緩和を進めることを国に提案いたしました。
 さらに、この秋からは、港湾計画の改訂に着手し、国際競争力の強化に向けた総合戦略を早急に構築いたします。ハード面では、コンテナ貨物量の増加とコンテナ船の大型化に対応したふ頭の整備について、ソフト面では、コストの削減、荷さばき時間の短縮といったサービスの向上策について、具体策を示したいと思います。
 都心から臨海副都心に係る地域では、十一月から十二月にかけて新駅、新線が相次いで開業し、交通の便が一段と向上いたします。
 大規模な開発が進む汐留地区では、まちの活動の開始に時期を合わせ、十一月二日、大江戸線と新交通「ゆりかもめ」の汐留駅を開業いたします。りんかい線では、十二月一日、大崎から天王洲アイルの区間が開業し、いよいよ全線開通となります。JR埼京線との直通運転も始まり、臨海副都心と渋谷、新宿、池袋や埼玉方面が太い線で結ばれます。
 三千三百万の人口を擁する首都圏は、イギリス一国やフランス一国と並ぶGDPを持ち、世界でも有数の生産活動、消費活動を営んでおります。その活動を支えるのが交通ネットワークであり、整備のおくれは、能率性の低下、競争力の弱体化となって、首都圏ばかりでなく、日本全体の致命傷となります。国を動かしながら、新しい交通基盤を整備し、首都圏の再生、日本の再生につなげていきたいと思います。
 一方で、モータリゼーション社会のあしき副産物である公害に対しては、時代認識、将来展望を持ち得なかったため、未解決の問題が数多く残されております。まず、この点について、東京都を含め、関係者は謙虚に反省すべきであります。
 とりわけ国は、環境問題の最終的な責任者でありながら必要な策を講じることができず、そのため、大気汚染がここまで拡大いたしました。不作為に対する国の責任は極めて重大であります。しかも、ディーゼル車に対する規制を強化するNOX・PM法の適用開始を、一たん決めた後また大幅におくらせるなど、この問題を真剣に解決しようとする姿勢がいまだに感じられません。ディーゼル車の排気ガスが肺がんの原因となっていることについては、これまでたびたび訴えてきましたが、アメリカ政府も、先般、公式見解として同様の指摘をいたしました。
 国の無責任な延期により、東京都の規制対象となるディーゼル車は、九万台から二十万台へと、にわかに二倍以上に膨らむことになります。しかし、都民、国民の生命と健康を守るため、東京都は、当初の予定を変えることなく、来年十月から、基準を満たさないディーゼル車の走行を規制いたします。規制を効果的かつ円滑に実施するには、これからの一年間、周到な準備が不可欠であり、全庁的な連携体制のもと、本日より、違反ディーゼル車一掃作戦を開始いたします。
 何よりも必要なことは使用者の理解と協力であり、自動車Gメンが四千社の企業に直接立ち入り、内容の周知や協力の要請、指導等を行ってまいります。そのほか、自動車会社や装置メーカーには、新しい基準に合った自動車や装置の供給を拡大することを要請し、同時に、使用者への支援も充実していきたいと思います。都庁は、都内最大の荷主としても、配送や工事の現場から違反ディーゼル車を排除し、さらに他の事業主へも、違反した車を使わないように働きかけることで、作戦の実効性を高めたいと考えております。
 来年からの規制に先立ち、都内一部のガソリンスタンドでは、今月より、従来の軽油にかえて、排気ガスの軽減に効果の高い低硫黄軽油の供給を開始いたしました。既に百四十を超えるスタンドで供給が始まっており、来年の四月までには、首都圏全域の軽油が低硫黄軽油となる予定であります。
 東京都の取り組みを理解し、迅速に協力をしていただいた石油連盟の皆様には、改めて感謝を申し上げます。しかし、これはあくまでも通過点でありまして、石油連盟には、本日、次の措置として、あくまでも全国で速やかに低硫黄軽油を供給するよう要請いたしました。
 違反したディーゼル車をなくし、大気汚染を軽減するため、七都県市での連携も強めながら、さまざまな施策を展開していきたいと考えております。
 ところで、来月には、大気汚染公害訴訟に対する第一審の判決が予定されております。この裁判は一種の文明批判であり、真摯に受けとめる必要がありますが、文明社会の中で生きる我々にとって、裁判を超えて必要なことは、自動車や道路がもたらす功罪にひとしく目を向けることであります。東京都は、実行すべきことは速やかに実行し、また、主張すべきことは声を大にして主張することで、今後とも、都民、国民に対する責任を果たしていきたいと思います。
 殊さら暑苦しい日々が続いたことしの夏もようやく峠を越しました。それにしても、東京は、異常なほどねっとりとした、濃密な熱気に包まれていたような気がいたします。多くの方々がヒートアイランド現象の深刻化を実感した夏であったと思います。
 ヒートアイランド現象については、人工排熱の増加やアスファルトからの照り返し、緑の減少など、原因の大部分が解明できながら、これまで有効な策を講じることができませんでした。ヒートアイランド対策は重要な都市政策であり、都市づくり、道路整備など、多岐にわたる取り組みが必要であります。来年早々に、今後の取り組み方針を策定したいと考えております。
 環境問題には、規制ばかりでなく、資源の有効活用の観点からも向き合っております。
 森林からは、育成の過程で伐採した間伐材が数多く発生いたしますが、その大半が、何ら活用されないまま放置されております。間伐材については、環境の保全、産業の活性化などの観点から活用方法を検討しており、まずは、道路でガードレールにかえて使用することにいたしました。
 今年度は、最初のモデルとして、国、千代田区との連携の上、麹町付近の内堀通りに木製のフェンスを設置いたします。今後、多くの方々の意見を伺いながら順次拡大し、潤いとぬくもりを感じる町並みをつくり出していきたいと考えております。
 また、先般、下水処理の過程で発生する汚泥を、土木用建設資材の新たな原料とすることに成功いたしました。既存の商品と比べてもすぐれた品質を確保しており、今年度中には商品化できる見通しであります。汚泥の減量とコスト節減との両面で効果があるものと考えております。
 今後ともこうした取り組みを通じて、環境に配慮した社会を目指していきたいと思っております。
 次に、停滞している産業の活性化に向けた取り組みについて申し上げます。
いつの時代、どのような分野においても、新しい勢力が社会を変える原動力となります。しかし、最近の東京では、元気のある企業が満足に育たず、活力の低下が続いております。
 その原因の一つは、すぐれた発想力や高い技術力を持ちながらも、実績が少ないために、必要な資金を入手できない企業が多いことであります。東京都では、こうした状況を変えていくため、新しい資金調達の手段として、これまで三回にわたりローン担保証券を発行しております。今年度は、新しい仕組みとして、中小企業の社債を束ねて証券化するCBO、社債担保証券を加えた上で、来年三月を目途に四回目の債券を発行する予定にしております。行政の主導による社債担保証券の発行は我が国で初めてのことでありまして、東京の中小企業に対して、直接金融の道を開くことができたと思います。
 東京の産業を活性化させるには、総生産の二割を占め、貿易黒字の大半を生み出しているものづくり産業の再生もまた、大きな課題であります。
 中小企業振興対策審議会からは、先月末、競争力のあるものづくり産業の構築に向け、示唆に富んだ答申をいただきました。中でも、規制改革や知的財産の保護、育成はこれまで取り組みがおくれていた分野であり、答申の意を酌んだ早急な対応が必要であります。可能なものは、今年度中にも施策を具体化させたいと考えております。そのためにも、庁内の実行体制を整えることが重要であり、直ちに実務担当者を集めた横断的な会議を組織いたしました。
 ものづくりは、経済活動の基本であります。その重要性を多くの人々が再認識するよう、社会風土の醸成にも努めながら、世界に通用するものづくり産業の振興に取り組んでいきたいと思います。
 さきのワールドカップでは、世界各地から多くの観光客が集まり、サッカーの祭典を楽しんで帰りました。この一大イベントは、日本の魅力を世界に伝える場にもなったと思います。しかし、日本を訪問する外国人はまだまだ少なく、国際旅行収支は三兆円もの大幅な赤字となっております。
 特に、日本から欧米には毎年八百万人が出かけていきながら、逆に、欧米からは百五十万人しか日本を訪れておりません。こうした状況を改善するため、東京都では、来月施行となる宿泊税を新たな財源として、観光振興に本格的に取り組んでいきたいと考えております。
 まずは、潜在的な需要が見込まれ、観光客がふえる余地の多い欧米の都市へ直接ミッションを送り、セミナーや商談会などを通じて、東京の魅力を宣伝したいと思います。また、観光客が東京で快適に滞在できるよう、目的に応じて選べる多様な観光ルートを開発するほか、観光案内機能の充実、宿泊施設のバリアフリー化など、受け入れ体制を整備いたします。
 一方、アジアの都市とは、内外からの観光客を誘致するため、共同してキャンペーンを展開しております。先月には八都市が東京に集まり、第一回目の観光促進協議会を開催いたしました。活発な議論を通じて、お互いに連携の重要性を改めて確認することができました。当面はロゴマークの設定などを行い、一体感を高めながら、アジアの魅力を世界に訴えてまいります。
 東京が持つ観光名所は、都会の中ばかりでなく、奥多摩や島しょ地域にも数多くあります。とりわけ、小笠原諸島には、多くの人を魅了してやまない美しい自然が豊富に残り、非常にめずらしい動植物が生息しております。しかし、観光客が十分な知識を持たないまま、気ままに出入りするうちに自然が荒れ果て、一部では見るにたえない無惨な状況となってしまいました。このままでは自然は失われる一方であり、それはまた、島の魅力を低下させることになります。
 そのため、七月、小笠原村との間で協定を結び、自然保護と観光の両立を目指すことにいたしました。当面、無人島である南島外一カ所を自然環境保全促進地域に指定し、一定のルールのもとに観光客を受け入れてまいります。地元と連携して、来月から観光客に同行するガイドの養成を初め、来年の四月から環境と調和した観光、エコツーリズムを実施する予定であります。
 産業の振興には、ひとり東京の力だけでは限界がある場合は、共同して取り組むことが必要であります。ただいま申し上げた観光ばかりでなく、カジノや航空機の開発についても、地域を超えて積極的に連携しております。
 カジノは、有力な観光資源であると同時に、雇用面で大きな効果があり、それだけで一つの産業と呼べるほどの存在であります。しかし、我が国では法律が壁となって、カジノを実施することがなかなかできません。一部には反対する意見もありますが、百万都市を抱える先進国では、日本を除き、すべての国がカジノを認めております。我々も固定観念に引きずられ、かたくなに拒絶するのではなく、建設的な議論を行うべきであると思います。
 東京都は、来月、東京商工会議所と共同してイベントを開催し、積極的にカジノの魅力を宣伝いたします。五百名程度の関係者を都庁展望台にお招きして、疑似体験などを楽しんでもらう予定であります。今後は、大人の知的な娯楽であるカジノの実現に向け、同じ意見を持つ自治体などと協力しながら、幅広い運動を展開し、国民への理解を広めていきたいと思います。
 また、ジャカルタなどアジアの五都市とは、航空機の開発について連携を始めております。本来、航空機は国家が主体となって開発すべきものでありますが、国が責任を果たさない状況を前に、東京都は独自に行動を開始いたしました。アジアの大都市と連携することは、技術の補完、市場の拡大などの点から高い意義があるものと考えております。
 今世紀、アジアの航空需要は、欧米と比べ高い伸びを見込むことができます。特に、アジアの地域内では、短距離の路線の新規開設も数多く見込めることから、中小型のジェット旅客機を開発促進することを基本に、協議を重ねております。
 来月には、国際会議、アジア旅客機フォーラムを開催し、開発の機運を高めていく予定であります。さらに十一月、デリーで開催されるアジア大都市ネットワーク21第二回総会でも、環境、教育、観光などとともに、議題として取り上げることになっております。
 こうした東京都の行動は、ようやく国を動かしまして、経済産業省は、来年度の予算要求に小型ジェット機の開発経費を盛り込みました。おくればせながら、国にもようやく問題意識が芽生えてきたようであります。我が国の将来のため、アジアの将来のため、国とも連携をとりながら、取り組みをさらに強化していきたいと思います。
 次いで、都政の緊急課題について、何点か申し上げます。
 三宅島の噴火により、島民全員が島を離れてから三度目の秋が訪れております。火山ガスはいまだに終息の兆しを見せず、帰島の願いを拒み続けておりますが、島の復旧は着実に進んでおります。
 悪天候、有毒ガスなどの厳しい条件を抱えながらも、寸断されていた道路は島内を一周できるまでに回復し、泥流対策のための砂防ダムは、年末までに二十八基が完成する予定であります。来年三月には、島民の滞在用としては初めて、脱硫装置を備えたクリーンハウスが整備でき、島は、一度に三百人の島民を受け入れることが可能になります。
 また、これから先、島の安全性を検証し、帰島時期の判断材料としていくために、専門家を交えた検討会を、国と共同で立ち上げることにいたしております。今後も、国や三宅村とともに、島の復旧、島民への支援など、できる限りの対策を講じていきたいと考えております。
 今月一日、直下型の大地震に備えて実施した総合防災訓練では、高層ビルからの救出訓練やITを活用した安否確認など、実践的な内容を取り入れ、防災関係機関との連携強化に大きな成果を上げました。横田基地では、昨年に引き続き、米軍の協力のもと、負傷者や救援物資などの輸送訓練を行いました。ことしは新たに基地周辺の五市一町も参加し、地元自治体と一体となって充実した訓練ができたと思います。
 全世界を震撼させたアメリカでの同時多発テロから一年が経過しましたが、テロの脅威はいまだに続いております。国際テロから都民を守るため、来月、全国で初めて、テロ対策専門の組織を警視庁に新設いたします。
 また、大都市の治安を致命的に悪化させている来日外国人や暴力団の組織犯罪に対しては、都内九十六の警察署に専門の組織を設け、覚せい剤や銃器などの取り締まりを強化いたします。来年度は、警視庁に組織犯罪対策部を新設する予定であり、首都東京の治安の向上、都民生活の安心、安全の確保のため、努力を続けるつもりでございます。
 福祉と医療は、日々の生活と非常に密着しており、都民が安心して社会活動を行うには、福祉、医療の供給体制を整えておくことが不可欠な要件であります。行政には、今の時代に必要とされるサービスを適切に提供することが求められます。
 これからの福祉は、多くの事業者が競い合いの中から多様なサービスを提供し、利用者は、自分に最も合ったサービスを選択できる仕組みとすべきであります。その中で、東京都は、直接サービスを供給することではなく、新しい福祉の枠組みを整え、その実現に向け、区市町村や民間事業者を支援していくことに比重を移す必要があります。都立の福祉施設は、民間移譲などを進めていくことを基本に、七月に示した改革案について、利用者のサービス水準の確保など環境を整えながら、今後、具体化していきたいと思います。
 一方で、東京は、用地の確保が困難であるなど特有の問題を抱えているため、地域での暮らしを支える施設が依然として不足しております。こうした現況を改善するため、今年度、用地取得に対する独自の補助制度を構築しており、このたび、その最初の事例として、品川区で痴呆性高齢者向けのグループホームの整備に着手する運びになりました。心身障害者施設の緊急整備も着実に進んでおり、高齢者や障害者が住みなれた地域で安心して生活できるよう、今後、さらに支援を充実したいと考えております。
 小さな子どもを抱える親にとっては、夜間突然の発病にも対応できる救急医療機関を確保しておくことが切実な願いとなっております。地域における小児医療を強化するため、今月、内科などの開業医に対し、臨床研修を開始いたしました。
 小児医療ばかりでなく、三百六十五日二十四時間、患者中心の医療を実現していくため、東京都はさまざまな対策を講じております。中でも、都立病院改革は、東京の医療を総体として向上させるために不可欠な取り組みであります。今定例会には、都立病院改革マスタープランで示したスケジュールのとおり、母子保健院の廃止条例を提案しております。
 なお、地域の小児初期救急医療の充実を求めていた地元世田谷区とは、今後の取り組みについて、先月、基本的な合意が形成されました。また、今年三月には、世田谷区内に五百床のベッドを持つ国立成育医療センターも開設し、入院患者への対応も進んでいることから、母子保健院については、十二月を目途に閉院したいと考えております。
 今後とも、福祉改革、医療改革を着実に推進し、都民が希求するサービスを実現していきたいと思います。
 かつて国が金融機関を手厚く保護していた時代には、資金運用の際、商品の違いによるリスクの差はあっても、預託先金融機関の違いによるリスクの差は、ほとんど存在しませんでした。しかし、ペイオフが解禁となり、金融機関に対しても、また金融商品に対しても、自己責任による厳格な選別が必要となっております。
 このたび策定した資金管理計画は、最小限のリスクの中で効率的な運用を追求することを基本に、公金の具体的な配分基準を定めたものであります。
 まず、取引先については、一部の金融機関に偏っていた閉鎖的な枠組みを改め、健全な金融機関であれば、広く外国銀行、地方銀行、信用金庫も対象に加えていきたいと考えております。
 また、金融商品については、元本保証のある商品とすることを前提に分散を進め、銀行預金ばかりでなく、債券の購入を大幅にふやす予定であります。今後、さらに実績を積み重ねていきながら、公金の管理、運用に万全を期していきたいと思います。
 ようやく夏が終わり、これから本格的な秋を迎えますが、我が国の現況は、既に秋を通り越し、冬、それも春の到来をなかなか予測できない長い冬に迷い込んでしまったように思えてなりません。
 スイスに本部を置く国際経営開発研究所、IMDが毎年発表している国際競争力のランキングによれば、十年前、世界のトップにあった日本は、その後毎年順位を下げ、ことしは三十位にまで転落いたしました。最近では、日本の将来を見限ったのか、商機に敏感な外国資本が日本の市場から撤退したり、アジアの拠点を他に移すなど、動きが目立っております。ほかにも国債の格下げなど、世界から聞こえてくるのは、日本の地位の低下に関する話題ばかりであります。
 情けないことに、このような状況を前にしても、国は、ひとりよがりのいいわけに終始し、現況を打ち破る具体的な行動をほとんど起こそうといたしません。だれもが非常に歯がゆい思いをしていることと思います。
 国内経済を眺めても、急遽、策定に着手した国のデフレ対策、緊急対応戦略は、減税、金融など柱となる政策をめぐって内部対立が激しく、国民の信頼を得ることは難しいように思えます。国の機関には、みずからの立場を正当化しようとする動きばかりが目につき、ライン化の弊害だけが際立った、皮肉な様相を呈しております。また、千四百兆円ともいわれる個人金融資産を活用する戦術も、一向に持ち合わせがなく、最近の金融政策は、ペイオフの解禁をめぐり、迷走状態にあります。
 東京都は、このありさまの国に引きずられ、ともに朽ち果てていくことを甘受するのではなく、逆に、国をも立て直す起点となるような、さまざまな行動を起こそうとしております。
 その一つが横田基地の返還問題であり、国は、はなから交渉をあきらめておりますが、東京都は返還を最終的な目標に、当面は軍民共用化に向け、さまざまな運動を展開してまいりました。この秋は、できるだけ早い時期に直接アメリカに出向き、横田基地の問題を含めた今後の日米関係の基軸について、多数の政府要人と意見交換したいと考えております。
 また、今月四日には個人向け地方債、東京再生都債を募集いたしました。皆様から高い評価をいただき、個人向け地方債としては我が国最大の規模であったにもかかわらず、受け付け開始からわずか八十分で完売となりました。追加の発行を求める声が多数寄せられていることから、十一月に二回目の募集を行う予定であります。
 これからの時代、行政にはラインの垣根を越えた複合的、重層的な力を発揮することが求められております。現在策定中の重要施策は、それを実践する場であり、そこから都政を活性化していきたいと考えております。
 もちろん財政状況は予断を許さず、来年度予算は一般歳出をマイナスとせざるを得ないほど、極めて厳しい環境にありますが、こうした創意工夫により、今日の危機を乗り越えたいと思っております。
 最後に、小泉総理の北朝鮮訪問について一言申し上げます。
 昨日、小泉総理が金正日総書記・国防委員長と会談し、その過程で、拉致された方々について非常に痛ましい、衝撃的な内容が伝えられました。死亡を通告された方々、並びにその家族の皆様には、心よりお悔やみを申し上げます。
 北朝鮮は、卑劣極まりない蛮行を繰り返し、我が国にはかり知れない被害を与えたことをみずから認めました。欺瞞に満ちた対応を続け、このような事態を招いたことについて、北朝鮮に対し、都民を代表して強く抗議いたします。一方、何の手だても講じることのないまま同胞を見殺しにしてきた日本の政府の対応には、猛省を促すと同時に、遺憾の意をあらわすものであります。
 政府は、今後、国交正常化に向けた交渉を始めるようでありますが、その前に、拉致問題について得心のできる結論が得られるべきと思います。拉致事件当時、都内に在住しており、昨日の段階では安否が確認されなかった久米裕さんの消息についても、当然、全力を挙げて解明すべきであります。
 拉致問題以外にも、北朝鮮には不審船による侵入、覚せい剤の密売、核兵器の開発など、数多くの疑惑が残されております。せめてこの先、小泉総理には、北朝鮮なる国の本質をしっかりと見極め、国民の生命と財産を守ることを第一に、毅然とした態度を貫くことを、強く建言したいと思っております。
 なお、本定例会には、今まで申し上げたものを含め、条例案二十件など、合わせて二十八件の議案を提出しております。そのうち、老人医療費の助成などに関する条例改正二件につきましては、老人保健法の改正に合わせ、十月一日から施行したいと考えております。よろしくご審議をお願いいたします。
 以上をもちまして、所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○議長(三田敏哉君) 以上をもって知事の発言は終わりました。

○六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日は、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一を先議されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、質問に先立ち議事に入り、日程の順序を変更し、追加日程第一を先議することに決定いたしました。
 追加日程第一を議題といたします。
   〔稲熊議事部長朗読〕
一、東京都名誉都民の選定の同意について一件
一四財主議第二八〇号
平成十四年九月十八日
         東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 三田 敏哉殿
   東京都名誉都民の選定の同意について
 このことについて、左記の者を東京都名誉都民に選定いたしたいので、東京都名誉都民条例第三条の規定により、東京都議会の同意についてよろしくお取り計らい願います。
       記
     山下八百子
      略歴
          現住所 東京都八丈町
               山下八百子
         大正九年三月二十一日生
大正九年   東京府八丈島中之郷村(現東京都八丈町)に生まれる。
昭和六年   曾祖父山下與惣右衛門より黄八丈の染色の手ほどきをうける。
昭和九年   中之郷小学校高等科を卒業。母め由ゆの指導のもとで黄八丈を製造する。
昭和十三年  中之郷青年学級を卒業
昭和三十年  日本民芸展で初入選。昭和六十三年まで毎年入選となる。
昭和四十四年 「め由工房」を開く。
昭和五十三年 第十五回日本伝統工芸染織展初入選
昭和五十六年 第二十八回日本伝統工芸展初入選
昭和五十九年 日本民藝館賞を受賞
昭和六十一年 東京都指定無形文化財(工芸技術)保持者に認定される。娘と共に「黄八丈二人展」を東京で開催する。
昭和六十三年 江戸時代の黄八丈の貢絹見本帳である「永鑑帳」の反物五十種、帯地六種を復元し、「江戸黄八丈展」を東京で開催する。
平成三年   「山下八百子天蚕展」を東京で開催
平成四年   「山下八百子の世界展」を東京で開催。展覧会「染織道の探求―この人この作品」を京都で開催
平成十一年  「平成永鑑帳」を完成させる。「黄八丈二人展」を京都で開催
平成十三年  「黄八丈ふたり展」を東京で開催
      事績
              山下八百子氏
 大正九年三月二十一日、東京府八丈島中之郷村(現東京都八丈町)に生まれる。
 昭和六年から四年間、曾祖父の山下與惣右衛門に黄八丈の染色の手ほどきを受ける。
 昭和九年、中之郷小学校高等科を卒業。母め由ゆの指導のもと、黄八丈の製造に携わる。
 昭和十三年、中之郷青年学級を卒業
 昭和三十年、日本民芸展に初入選する。この年から昭和六十三年まで連続して入選となる。
 昭和四十四年、「め由工房」を開く。
 昭和五十三年、第十五回日本伝統工芸染織展に初入選する。以後、昭和五十五年、五十七年、平成二年にも入選となる。
 昭和五十六年、第二十八回日本伝統工芸展に初入選となる。以後、昭和五十九年にも入選となる。
 昭和五十九年、日本民藝館賞受賞
 昭和六十一年、東京都指定無形文化財(工芸技術)保持者に認定される。東京で「黄八丈二人展」を娘芙美子と共に開く。
 昭和六十三年、江戸時代の黄八丈の貢絹見本帳である「永鑑帳」の反物五十種、帯地六種を復元し、「江戸黄八丈展」を開催する。
 平成三年、「山下八百子天蚕展」を東京で開催
 平成四年、「山下八百子の世界展」を東京で開催。また、展覧会「染織道の探求―この人この作品」を京都で開催
 平成十一年、「平成永鑑帳」を完成させる。「黄八丈二人展」を京都で開催
 平成十三年、「黄八丈ふたり展」を東京で開催
 室町時代、黄八丈は京の都でも珍重され、江戸時代になると幕府への年貢として貢納された。黄、樺、黒の三色で染めた絹糸で織られたもので、その染色技法に特色がある。
 山下八百子氏は古くからの染色技術や織りを伝承し、若い人々に伝えてきた。
 氏は、江戸時代に貢納された八丈絹の美しさに感銘し、昔の糸を再現するため「小石丸」という蚕種を飼育し、手作業にて糸織りを重ね、貢絹の見本帳を再現した「平成永鑑帳」を完成させた。
 東京の伝統工芸である黄八丈の保存と継承に尽力した氏の功績は、多くの都民が敬愛し、誇りとするところである。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 本件は、知事の選定に同意することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本件は、知事の選定に同意することに決定いたしました。

○六十七番(真鍋よしゆき君) この際、議事進行の動議を提出いたします。
 本日の会議はこれをもって散会し、明十九日から二十四日まで六日間、議案調査のため休会されることを望みます。

○議長(三田敏哉君) お諮りいたします。
 ただいまの動議のとおり決定することにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(三田敏哉君) ご異議なしと認めます。よって、本日の会議はこれをもって散会し、明十九日から二十四日まで六日間、議案調査のため休会することに決定いたしました。
 なお、次回の会議は、九月二十五日午後一時に開きます。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後一時五十分散会


文書質問趣意書及び答弁書

一四財主議第二七五号
平成十四年九月九日
         東京都知事 石原慎太郎
 東京都議会議長 三田 敏哉殿
   文書質問に対する答弁書の送付について
 平成十四年第二回東京都議会定例会における左記議員の文書質問に対する答弁書を別紙のとおり送付します。
     記
   後藤雄一議員
   福士敬子議員
   小松恭子議員
   曽根はじめ議員
   花川与惣太議員
   大河原雅子議員

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 後藤雄一

質問事項
 一 耐震補強工事について
  1 耐震補強工事の予算と、要耐震補強建物の一元管理について
  2 夜間の消防署のシャッター・扉について
  3 病院の耐震補強と入院患者について
  4 産業労働局「東京都日雇労働者簡易宿泊所」について
 二 納税者感覚を植え付けるための研修を行え
 三 都道二三七号線の見直しについて
 四 交通局の管理責任について
 五 庭園美術館のホールの利用方法について
一 耐震補強工事について
 1 耐震補強工事の予算と、要耐震補強建物の一元管理について
   都には、耐震補強工事が未了の施設が数多くある。
   初動の災害対策上、絶対に必要とされる、警察・消防・学校、そして、病院も例外ではない。
   教育庁所管の都立学校・盲・ろう・養護学校では、六十九校。警視庁は、二十二警察署。消防庁は、五十四消防署・出張所。そして、病院に至っては、十二月に閉院が予定されている母子保健院が、平成七年度に耐震診断結果が、IS値〇・一七と最悪の値が示しているにもかかわらず、七年間も補強工事もせず十二月の閉院まで「だんまり」を決め込んでいるのが現状だ。
   行革一一〇番が、警視庁・消防庁の補強工事の予算獲得について調査したところ、警視庁は「財源がない」と言い、予算を担当する財務局予算課は「警視庁・消防庁からの予算計上、例年通りで多くはされていない」という。
   都民が聞いたら呆れるような、責任のなすり合いだ。
  ア 東京を直撃する直下型、又は、東海地震も懸念されており、耐震補強工事は急務である。
    予算の配分も、特別枠としてトップダウンで付けなければ、役人体質から「耐震補強工事」を早期に完了させることは不可能とおもわれる。
    緊急に補正予算、及び、来年度予算等で特別枠をつけるべきだと考えるが、知事の見解を求める。
  イ また、各局のバラバラ、そして、局間のなわばり意識が原因で耐震対策が進まないことも一因と考えられる。
    公共施設の耐震補強工事を一元管理する担当を決め、責任を明確にすべきだと考えるが、見解をお伺いする。
 2 夜間の消防署のシャッター・扉について
   行革一一〇番の調査で、都全域で足立区が五つ、港区と杉並区が四つ、千代田区・渋谷区・葛飾区が三つ、等々で合計五十四消防署が耐震補強工事が未完成と言うことがわかった。
   耐震診断指標IS値の低い施設の耐震補強工事は当然、急がなければならない。
   IS値の低い消防署の緊急車両用車庫は、間口が広く・耐震壁等が不足しIS値が低いのが現状であり、一階天井部分が変形・倒壊等の危険があることが、阪神淡路大震災の消防署の被災状況から証明されている。
   消防署は夜間、防犯のためにシャッターを閉める。
   仮に、夜間に地震が起った場合、IS値の低い消防署は、一階天井部分が地震で被害に遭い、シャッター・扉が開かなくなる危険性がある。阪神淡路大震災でも、行革一一〇番が危倶する「シャッターが開閉不能」になった消防署が四件報告されている。
   行革一一〇番が指摘すると、消防庁の答えは、「地震により開放不能になった場合は、エンジンカッター等で切断して開放する。」と楽観的に答える始末だ。
   例を挙げると、渋谷消防署代々木出張所のシャッター方式である。IS値が一階部分が〇・二二、二階が〇・三一、三階が〇・二四、四階が〇・二八、と耐震診断結果が最悪の数値を示している。そして、開口部の間にシャッターの棒がなく、一枚のシャッター。つまり、長さが「十メートル」の大きさである。
   また、芝消防署は、十一階建て(四階以上は消防職員住宅)、車庫は鉄製の二十枚の扉で閉められる。IS値は、一階が〇・二九八、二階が〇・三六七、三階が〇・三三三等と値を示している。
   消防庁の見解では「消防自動車等の備品の盗難を避けるため、夜間は閉める。」と言うが、消防署は都民の生命・財産を守ることを責務としているはずである。消防署の入り口の脇に受付があり隊員が二十四時間詰めている。すべての消防署の耐震補強工事が完了するまで三年間かかるという。ならば、「IS値の低い消防署は、耐震補強工事が終わるまで、夜間の隊員に不寝番で見張らせ、シャッターを開けておく」。危機管理からこのぐらいのことは、当然のことだと思う。
   代々木出張所のように車庫の開口部がシャッター方式は、九消防署。扉方式は、三十四消防署。そして、耐震補強工事が終わっていない署は「五十四消防署」とある。
   消防署の補強工事の順番も、建築年数によっているのではないかと推測される。耐震補強工事の順番も、耐震診断の結果を重視すべきである。
  ア IS値が低く、耐震補強工事を予定している消防署で、車庫の開口部がシャッター、又は、扉の施設は、耐震補強工事が終わるまで、地震で被災しても、緊急車両がすぐに出動できるように、夜間にシャッターまたは扉を開けておくべきと考えるが、見解を求める。
  イ 耐震補強工事は、代々木出張所は十六年度、芝消防署は十五年度を予定している。補強工事の順番も、耐震診断結果を考慮に入れるべきだと考えるが、見解をお尋ねする。
 3 病院の耐震補強と入院患者について
   世田谷区にある母子保健院は、平成七年に実施された耐震診断結果に、「母子保健院 X方向 IS値〇・一七 望ましい耐震性能を有していない」と書かれている。
   母子保健院とは字のごとく、妊婦、乳幼児が入院・治療している。
   また、母子保健院は今年十二月に閉院されることが予定されている。
   耐震診断指標が異常に低く、耐震補強工事が必要と指摘されているにもかかわらず、耐震補強工事の予定もなくも、閉院が予定されているのに、妊婦・乳幼児を入院させている事は患者の命をいい加減に扱っているとしか思えない。
   また、IS値〇・一七という数字がでているにもかかわらず、東京都は「老朽化」という説明だけで、関係者等に耐震診断結果を説明していない。
  ア 患者の生命を守るべき都が、母子保健院が耐震改修促進法で「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊の危険が高い」と書かれているにもかかわらず、現在まで七年以上も放置し、患者を入院させておいたことは、どのような理由からか、お尋ねする。
  イ 耐震診断結果を入院患者・病院関係者等に周知し対策を講じるべきだと考えるが、見解をお伺いする。
  ウ IS値〇・一七という異常に低い数字にもかかわらず、なんの対策とらず、大地震がおこり入院患者に被害があったとき都に賠償責任があると考える。責任の所在を明確にするべきと考えるが、見解をお伺いする。
  エ 耐震補強設計を行なっていると考えるが、補強設計がどのようなものかお尋ねする。又、母子保健院の存続を求める住民の意見が多くある。耐震補強工事、又は、改築・改修し、存続すべきと考えるが、見解をお伺いする。
  オ 都立病院のIS値が〇・六以下の施設はいくつあるのか、リストを作り、公表すべきだと考えるが見解をお伺いする。
 4 産業労働局「東京都日雇労働者簡易宿泊所」について
   当宿泊所は、昭和三十八年、失業対策事業の宿泊施設としてスタートした。
   平成四年失業対策事業が終了した。その後、平成九年まで任意就労事業として役目を果たしてきた。しかし、現在、失業対策事業が終了しているにもかかわらず、十五人が入居している。生活保護を受けて生活している人もいると言うことだ。
   一方、当宿泊所のX方向の最小IS値は二階で〇・三四、Y方向では最小IS値は〇・二三という低い値を示している。
   当宿泊所は役目が終了しており、今のままでは耐震補強工事は費用対効果から言っても補強工事は考えにくい。しかし、施設を存続していくのであれば、公共施設なので耐震補強工事を行わなければならない。
   右事実を踏まえ、現在入居している方々に耐震診断結果を知らせ、速やかに安全な場所に転居してもらうべきだと考えるが、見解を伺う。
二 納税者感覚を植え付けるための研修を行え
  行革一一〇番が議会対応職員の宿泊先について情報公開請求したところ、財務局主計部は、管理職はヒルトン東京で税込み一万三千八百六十円(税抜き一万二千円)、係長以下はワシントンホテルで税込み一万二百円という文書が公開された。
  教育庁にも聞き取り調査したところ、管理職・係長以下ともにヒルトンホテルに宿泊しているということだった。
  納税者感覚から言うと、ビジネスホテルで十分と考える。
  ヒルトンホテル・京王プラザホテルの宿泊料一万二千円は、総務局作成の文書が根拠になっているようだが、利用については、いろいろな制限があり、違反しているケースも含まれているという。
  また、一万二千円は限度であり、限度額を通常のケースにすること自体、役人のノー天気に呆れる。
  本件ホテル代支払いは資金前渡で行われている。そして、請求書が添付されず領収金額のみ記入されている「領収書」のみで出納長室で決済を受けている。
  以前、議会対応職員の宿泊代も資金前渡で支払われ、本件同様「請求書なしの領収書」添付だけで精算が行われ、裏金作りに利用されていた経緯があり、信頼回復・疑惑をもたれない為にも、資金前渡の精算にも、請求書が付けられるものは「原則添付」と変更すべきだと考える。
  また、タクシー券についても、行革一一〇番に違法使用しているとの内部告発が多く寄せられている。そこで、行革一一〇番がタクシー券に「使用時間」を記入することを要望したところ、八月からタクシー券についても改善がなされると聞いている。
 1 外部からの指摘なしに、「納税者感覚の解る役人・納税者の立場に立てる役人」を育てるための研修が必要だと考える。どのような研修・指導を行なっているか教えて頂きたい。
 2 資金前渡の精算時に、請求書を原則添付すべきだと考えるが、見解をお伺いする。
 3 都民から「お役人天国」との指摘を受けないようにオール都庁に議会対応ホテル・タクシー券と同様な見直し事項がないか再度調査をする必要があると思うが見解をお伺いする。
三 都道二三七号線の見直しについて
  式根島は、周囲十二キロメートル、面積三・六九キロ平方メートル、人口五百八十七人、民宿七十一軒、レンタカー五台の自然豊かで素晴らしい島である。
  現在、式根島に都道二三七号線の西廻り部分が、平成七年より平成十八年を目途に一期工事、一千四十メートルが行われており、立体交差の橋・函渠が各一つ建設され、その他の道路部分を建設中である。現在まで、三億一千百七十六万六千四百五十円が投入されている。
  都道二三七号線は、本来、一つの道路が災害の為に塞がれた時に対応するための「二つの港を結ぶ二本の道路」としての循環道路の性格を有するものである。
  しかし、西廻り部分の一期工事の完了予定も平成十八年度、二期工事は財政事情からみても予定すらたたない状況と関係者はいう。
  また、式根島村の担当者は、観光・島西部の開発に必要であると言うが、都道二三七号線は、道路からは海も見えず、村道へのアクセスは始点と終点だけで他にない。一期工事の一千四十メートルに橋・函渠が各一つ、工事に十年。二期工事のスケッチを見ると、橋が二つ描かれている。周囲十二キロの島に橋が三つ、函渠が一つの計四カ所の立体交差道路という典型的な無駄な公共工事としか言い様がない。
  計画当初、建設局が計画したものが本来の循環道路の目的に沿った、最短距離で経費も少なく工事期間も最短であり、最良の計画と考える。
  大島、三宅島、新島等で地震が頻発しており、大地震がおこる可能性は否定できない。
  都道二三七号線の本来の目的である「災害時の、二つの港を結ぶ道路(循環道路整備)」の目的に立ち返り、早期に完成する事が重要である。
  バブル期の計画であり、撤退も含む勇気ある大幅な見直しを求めるものである。
  都道二三七号線は上記の理由、特に伊豆諸島で地震が頻発しているので、現在の計画を早急に見直し、一日も速く災害に強い島にするべきと考える。よって、本来の災害に備えた循環道路の目的に沿った、最短距離で経費も少なく工事期間も最短である以前建設局が計画したルートに計画を変更すべきと考えるが、見解を伺う。
四 交通局の管理責任について
  行革一一〇番は、交通局が管轄する大江戸線「若松河田駅」で、放置された残額カードを使い、違法な方法で、現金化を行なっていた事実をつかんだ。
  事件の概要は左記の通りである。
 <事実>
  ア 現金の換金方法
   a 乗客が改札口で、パスネット等のカードの残額が少なく改札を通れない場合、カードの利用をあきらめ自販機で乗車券を購入する。
   b 本来なら、残額のあるカードを自動販売機に入れ、そして、不足額に現金を使い、乗車券を購入することが可能なのだが、知ってか知らずか現金のみで購入し、「残額が残っているカード等」を自販機前等の使用済みカード入れに入れる乗客もいる。(使用済みカード入れがない駅もある。)
   c 本件若松河田の本件駅職員は使用済みカード入れからカードを回収し、残額があるカードだけを別に保存する。(カードの残額は当然の事だが、一区間「百七十円以下」である。)
   d そして、本件駅職員は残額が残っているカード二枚を組み合わせて、自販機に入れて乗車券を買う。
     残額がある二枚のカードでも、最低料金(大人百七十円、子供九十円)に満たない場合は、不足額を現金で投入し、乗車券を購入する。
     乗車券は主に最短区間の「大人百七十円、又は子供九十円」を購入する。
     自販機は、カードは二枚まで投入できる。
   e 本件駅職員は右dの方法で購入した切符を、本件駅職員自身で払戻(廃札)し現金に換金する。
  イ 事件の概要
   a 三月十八日、本件駅職員は、朝四時五十八分から五時三分の間に、右アの現金換金方法テクニックを使い、百七十円を六枚、百十円を一枚、九十円を四枚の合計十一枚、一千四百九十円の乗車券を購入し、廃札し現金に換金している。
   b 同様に、四月十七日には、朝の四時五十九分から五時三分まで、残額カードを使い百七十円を四枚、九十円を七枚、合計十一枚、一千三百十円の乗車券を購入し、廃札し現金に換金している。
   c 交通局は、「右a、bの換金後、本件駅職員は各一千円のカードを購入した。」と説明している。そして、そのカードは現在局が保管しており、差額については「記載忘れ」を主張し、着服を否定しているが、その差額、三月十八日は四百九十円、四月十七日は三百十円は窓口引き継ぎ簿に記載されておらず到底認められるものではない。
 1 本件は管理体制のズサンさからおこった事件であり、管理者の管理責任を明確にし、厳正な処分を行い、そして、公表すべきと考えるが、見解をお伺いする。
 2 これ程までに、管理がズサン・デタラメということは、各管理者が責任を果たしていなかった事の証しであり、今後の対応についてお伺いする。
五 庭園美術館のホールの利用方法について
  庭園美術館のホールは、現在多目的に使われているのが現状である。しかし、当ホールは消防法に基づくスプリンクラー等が設置されていない。
  以前から行革一一〇番が右事実を指摘しているにもかかわらず、消防庁は積極的な対応を取っていない。生活文化局も対応に苦慮しているようである。
  一方、十三年度の利用状況を調べてみると、パーティー・レセプションは大ホール・小ホール合わせて、四十三件、演奏会・発表会で七十九件等、合計三百九件の利用がある。
 1 庭園美術館の素晴らしい環境のもとでのレセプション等は都民からも評判がよい。スプリンクラー等を設置し、積極的に貸しホール事業を行なうべきと考えるが、見解を伺う。
 2 消防庁は、同じ東京都ということで、積極的な対応を取っていないようである。都の公共施設に対する厳格な指導を取るべきと考えるが、見解をお伺いする。
 3 現在、都の公共施設で消防法を満たしていない施設があったらお示し願いたい。

平成十四年第二回都議会定例会
後藤雄一議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 耐震補強工事について
  1 耐震補強工事の予算と要耐震補強建物の一元管理について
   ア 耐震補強工事は急務である。緊急に補正予算及び、来年度予算等で特別枠をつけるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  都はこれまで、災害時に重要な役割を果たす警察・消防施設や、病院、学校など、指定重要建築物をはじめとする公共施設について耐震診断を行い、その結果を踏まえた耐震対策を、緊急性や優先度の高いものから進めています。
  今後耐震対策を講じるに当たっては、当該施設の運用を休止して全面的な補強工事を実施したり、改築を行わなくてはならないケースも多くあるので、所管局の改築計画等に基づいて順次対応を図ってまいります。

質問事項
 一の1のイ 公共施設の耐震補強工事を一元管理する担当を決め、責任を明確にすべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  公共建築物の耐震診断や耐震改修は、建築物の老朽度や将来の利用計画、震災時における重要度などを勘案する必要から、原則として建築物の所管部局で実施しております。
  財務局としては、これまで、耐震判定基準、耐震補強目標値及び耐震診断と改修の仕様等を定めるなどの対応を行ってきましたが、今後とも、建築物の安全性を確保するため、耐震に関する情報の一元化や技術支援など、全庁的な立場から対応してまいります。

質問事項
 一の2 夜間の消防署のシャッター・扉について
    ア Is値が低く耐震補強工事を予定している消防署で、車庫の開口部がシャッター又は扉の施設は、耐震補強工事が終わるまで、地震で被災しても、緊急車両がすぐに出動できるように、夜間にシャッターまたは扉を開けておくべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  東京消防庁では、従前より、防犯や庁舎防護上の観点から、消防署所の車庫に設置している扉やシャッターについては、夜間には閉めることとしています。
  夜間に地震が発生した場合には、職員が扉やシャッターの開放、車両の安全確保等の初動措置を実施することとしています。万一に備え、車庫の扉・シャッターの機能維持を図るため、平素から点検に努めるとともに、地震時において車庫の扉等が開放できない状態となった場合には、各種資機材等を活用して出場路を確保します。
  とりわけIs値の低い〇・三未満の消防庁舎にあっては、車庫扉の一部又は全部を軽量で開放かつ破壊容易なものへの改善に努めていくことにしています。

質問事項
 一の2のイ 耐震補強工事は、代々木出張所は十六年度、芝消防署は十五年度を予定している。補強工事の順番も、耐震診断結果を考慮に入れるべきだと考えるが、見解を伺う。

回答
  東京消防庁では、消防庁舎の耐震診断結果を基に、構造耐震指標(Is値)〇・六未満の庁舎を対象に緊急三か年計画を策定し、平成十四年度から改築を含めた耐震補強工事を計画的に実施しています。
  工事の優先度については、耐震診断結果を基本として狭隘度、老朽度などを総合的に勘案して計画しています。
  その結果、代々木出張所は平成十六年度に改修する予定であり、また、芝消防署は平成十五年度に改築に着手する予定ですが、本署としての機能を更に充実させるには敷地が極めて狭あいであることから、現在、改築のための用地確保に努めています。
  今後とも、耐震時における消防活動拠点である消防庁舎の耐震補強工事については、積極的に推進していきます。

質問事項
 一の3 病院の耐震補強と入院患者について
    ア 母子保健院が耐震改修促進法で「地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊の危険が高い」と書かれているにもかかわらず、現在まで七年以上も放置し、患者を入院させておいたことは、どのような理由からか、伺う。

回答
  都では、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」の施行に先がけ、「公共建築物耐震診断」を実施してきており、母子保健院については、平成五年度に乳児棟、平成七年度に本館の耐震診断を実施しました。平成八年度には本館の耐震診断結果が出され、それを受けて、平成九年度に耐震補強工事の設計委託を行ったところです。
  その後、平成十年度に「東京都既存建築物耐震改修促進計画」が策定され、この計画に沿って改修の検討を進めるとともに、平成十一年度には耐震診断の結果等を踏まえ、患者の安全と医療機能の確保を図るため未熟児病棟移転工事等を実施しました。
  さらに、平成十二年七月には、「東京都既存建築物耐震改修促進実施計画」が策定され、改修計画を概ね十か年で達成することとされましたが、都立病院に関しては、同年九月に知事の諮問機関である「都立病院改革会議」が都立病院の再編整備等の検討を開始したため、その動向を見守る必要がありました。
  平成十三年七月に知事に提出された「都立病院改革会議」報告では、母子保健院の廃止が提言され、その報告に基づいて策定した「都立病院改革マスタープラン」において同院を平成十四年十二月末をもって廃止することとしています。

質問事項
 一の3のイ 耐震診断結果を入院患者・病院関係者等に周知し対策を講じるべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  改修工事や病棟の移設工事等を行う際には、院内掲示等により、患者や利用者並びに周辺住民等に工事の趣旨などを周知してきたところです。
  母子保健院については、本年十二月末の廃止を盛り込んだ予算案が、平成十四年第一回定例都議会で承認されています。
  これを受け、本年四月以降に、同院の廃止に向けて患者等への周知を進めるとともに、患者の治療に支障が生じないよう十分配慮しながら段階的に機能を縮小するなど、必要な措置をとっております。

質問事項
 一の3のウ Is値〇・一七という異常に低い数値にもかかわらず、何の対策も取らず、大地震が起こり入院患者に被害があったとき、都に賠償責任があると考える。責任の所在を明確にすべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  都は、厳しい財政状況の中でも様々な創意工夫を凝らしながら、患者の安全と医療機能の確保を図るため、都立病院の建物の維持管理に努めています。母子保健院においても、施設の維持補修はもとより、手術・分娩室等の改修工事や未熟児病棟の移設工事などを順次行ってきました。
  今後は、本年十二月末の廃止に向けて、患者の治療に支障が生じないよう十分配慮しながら、段階的に機能を縮小するなど、必要な措置をとっていきます。

質問事項
 一の3のエ 耐震補強設計を行っていると考えるが、耐震補強設計がどのようなものか、伺う。また、母子保健院の存続を求める意見が多くある。耐震補強工事又は改築・改修し、存続すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  耐震補強設計は、耐震強度を向上させて耐震性を確保するために行うものであり、設計に基づく工事の施工は、外壁の補強や新たな耐震壁の設置など建物の全面的な補強を行う大規模なものとなり、多額の資金を必要とするほか、病院の診療機能の長期にわたる縮小や休止を伴うものとなります。
  母子保健院については、総合診療基盤を有しておらず、母体管理に必要な様々な診療科との連携や夜間緊急時の検査体制が十分でないこと、加えて施設の老朽化が著しく、敷地が狭あいであることにより、今後、都立病院の新たな役割に対応し得る十分な医療機能を持った施設として事業展開することが困難であることから、「都立病院改革マスタープラン」に基づき、平成十四年十二月末で廃止する予定です。

質問事項
 一の3のオ 都立病院のIs値が、〇・六以下の施設はいくつあるのか、リストを作り公表すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  都立病院では、母子保健院を含めた四病院の一部施設においてIs値が〇・六以下になっています。
  平成十二年度に策定された「東京都既存建築物耐震改修促進実施計画」では、おおむね十か年で改修計画を達成することになっていますが、「都立病院改革マスタープラン」の中で、母子保健院については、平成十四年十二月末に廃止とし、その他の施設についても再編整備のスケジュールを明確にしており、今後、患者の安全と医療機能の確保に配慮しつつ、必要な維持補修を行いながら、計画的に整備していく予定です。

質問事項
 一の4 東京都日雇労働者簡易宿泊所に現在入居している方々に耐震診断結果を知らせ、速やかに安全な場所へ転居してもらうべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  東京都日雇労働者簡易宿泊所につきましては、平成九年の任意就労事業の終了を受け、管理運営にあたる財団法人山谷労働センターが、利用者に対し、退所するよう積極的に説得しているところです。
  都としては、今後とも、利用者の退所について、財団法人山谷労働センターに対し指導を継続してまいります。

質問事項
 二 納税者感覚を植え付けるための研修の実施について
  1 外部からの指摘なしに「納税感覚のわかる役人、納税者の立場に立てる役人」を育てるための研修が必要と考える。どのような研修・指導を行っているのか、伺う。

回答
  都は、現在、全庁を挙げて都政改革への取組を続けています。職員一人ひとりにコスト意識やスピード感覚を身につけさせ、常に良質なサービスを都民に提供するという意識を醸成することが重要と考えています。
  こうした認識の基に、都の研修基本方針の中では、「コスト意識や経営感覚を持って、積極果敢に改革に挑戦する意識を涵養すること」を定めています。
  この方針を踏まえ、職員研修所及び各局が研修実施計画を作成し、研修を実施しています。その具体的な実践例としては、職員研修所の基本研修である新任研修、係長研修、課長研修等の中の「都職員としての使命感・倫理観」や「監督者の役割」等において、コスト意識や税金の重みを自覚させる研修を実施しております。

質問事項
 二の2 資金前渡の精算時に、請求書を原則添付すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  資金前渡で支出する場合は、一般的には、サービスの提供等と同時に支払いが行われるので、通常、請求書は受領せず、領収書により精算しております。
  資金前渡による議会対応職員の宿泊代の精算についても、これと同様に、領収書を宿泊先から受領して精算を行ってまいりましたが、今後、宿泊先から出される請求書を添付するなど、より明確な処理を行ってまいります。

質問事項
 二の3 オール都庁に議会対応ホテル・タクシー券と同様な見直し事項がないか、再度調査する必要があると思うが、見解を伺う。

回答
  都は、事務事業の執行にあたり、これまでも都民から見て公正・効率的であるか、との視点に立ち、見直しを行ってきております。
  見直しに当たっては、都民にどのように役に立っているのか、無駄なことはないかなど、常に納税者であり、サービスの受け手でもある都民の目線で物事を見ていくことが重要であると考えております。
  今後とも、常に都民の立場に立った見直しに努めてまいります。

質問事項
 三 都道二三七号線の見直しについて
   式根島の都道二三七号線は、本来の災害に備えた循環道路の目的に沿った、最短距離で経費も少なく工期も最短である以前計画したルートに計画を変更すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  本事業は、野伏港と式根島港を結ぶ循環線として整備するものであり、災害時の避難ルートの複数化による防災性の向上と、観光・産業の発展など地域の活性化を図ることを目的としています。
  計画にあたっては、新島村の「新島本村総合計画基本計画」を踏まえ、地元自治体と島の土地利用等も含め協議し、島民の意見を聴きながら、全長約二千八百メートルのルートを決定しました。
  現在、大浦スポーツ広場付近を起点としカンビキ展望台に通じる村道までの一千四十メートルを第Ⅰ期区間として事業を進めており、平成十三年度末において、用地の八四%を取得し、三百十五メートルの工事が完了しています。今後とも、国費など財源確保に努め、早期完成を目指してまいります。
  残る第Ⅱ期区間の整備については、財政状況等を考慮し、地元新島村と調整してまいります。

質問事項
 四 交通局の管理責任について
  1 使用済みカードの残金で切符を買い払い戻して現金化したことについて、管理者の管理責任を明確にし、厳正な処分を行い、そして、公表すべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  調査の結果、個人的に現金を着服した事実はありませんでしたが、お客様に対する貸出しの目的とはいえ、残額のある使用済みカードを利用して新たなカードを購入した一連の行為は、事務処理上、適正さを欠いておりました。
  早速、再発を防止するため、一連の行為の発端となった使用済みカードの取扱いについて、適正に廃棄処分するよう指導したところです。

質問事項
 四の2 管理がズサン・デタラメということは、各管理者が責任を果たしていなかったことの証であり、今後の対応について、伺う。

回答
  再度このようなことのないよう、今後とも事務処理の適正を期してまいります。

質問事項
 五 庭園美術館のホールの利用方法について
  1 庭園美術館の素晴らしい環境のもとでのレセプション等は都民からも評判がよい。スプリンクラー等を設置し、積極的に貸しホール事業を行うべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  庭園美術館の新館のホールは、現在、美術館の付属施設として、美術館観覧者のためのレセプションやコンサート、講演会などに利用しており、平成十三年度には大ホール百四十八日、小ホールは百六十一日の利用実績があります。
  今後、ホールの利用を積極的に促進するため、屋内消火栓用の非常電源など消防法上、必要な設備の改善を早急に実施し、より多くの都民の皆様に親しまれる施設になるよう努めてまいります。

質問事項
 五の2 消防庁は、同じ東京都ということで、積極的な対応を取っていないようである。都の公共施設に対する厳正な指導を取るべきと考えるが、見解を伺う。

回答
  庭園美術館をはじめ都の公共施設に対しては、他の一般の建物と同様に、建築時や改装時における検査のほかに、定期的に立入検査を実施しており、指摘事項がある場合は、すべて早期の改修を指導しています。庭園美術館については、ほぼ毎年立入検査を行っており、指摘をしたものに対しては、直ちに是正されています。
  なお、ホール部分が集会場として、恒常的に貸出しされている事実が認められたことから、当該用途に応じた消防用設備等の設置指導を行っています。

質問事項
 五の3 現在、都の公共施設で消防法を満たしていない施設があったらお示し願いたい。

回答
  美術館や博物館などの都の公共施設に対する立入検査では、防火管理に関する指摘一件について未是正のものがありますが、現在改修が進められています。

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 福士敬子

質問事項
 一 東京都環境影響評価条例の実効性について
一 東京都環境影響評価条例の実効性について
  全国初といわれる計画段階での環境影響評価を行うことが提案された。巨大都市東京は深刻な大気汚染を抱え、さらに地球規模の温暖化やヒートアイランド現象など、早期に解決できない課題も次々と表れている。
  これらの危機的現状に対処するために、条例改正を行い、新たな計画アセスが行われることになったはずである。条例改正を行うにあたり、知事から諮問された審議会の答申でも「基本計画の段階から必要な配慮手続きを確保することにより、環境悪化の未然防止につとめることが極めて重要」と書かれている。
  しかし、提案された条例改正の部分、および新聞で報道されるまで我々議員すら知り得なかった従前の事業アセスの緩和について、大きな疑問を持つ。
  計画アセスについては、複数の計画案を「比較検討するため」に必要な予測・評価を行うことが原則であるが、平行して「事業が及ぼす環境影響を把握する」ことも「原則」である。それらは「環境悪化の未然防止」を目的として行うのであり、ただ数字を出し、複数計画の比較をすれば良いというものではないはずである。
  しかし、審議会の答申および条例審議の委員会の質疑に対する答弁の中で、途中から計画に対する社会経済的要素、それも経済的効率が大きな比重を占めるようになった。今までの地球的環境破壊は経済優先によるものであることは誰もが認めているはずである。
  従って計画策定にあたっては、社会経済的要素を無視することは出来ないが、計画アセスはその中でも環境悪化をくい止めるために調査をし、計画を策定しようというものではなかったのだろうか。その意味では、あまりにも今条例改正の意味は不明確であり、以下について伺う。
 1 計画アセスについて
  ア 計画アセスの対象として、計画主体が都であるものに限定して手続きを行うとしており、民間業者や第三セクターなどについては当分の間実施を義務づけないとしている。運用実績の積み重ねや、制度の一層の改善が必要であるということが理由とされているが、どの程度の運用実績の積み重ねが必要と考えているのか、期間あるいは実施された件数という形で具体的な数字を示していただきたい。
  イ 計画アセスは採用可能な複数の計画案について、環境影響を比較評価し行うものとなっているが、やむを得ない事由により複数案が作成できないものについては、計画アセス手続きの免除を申請し、事業アセスから手続きを開始するとしている。
    この計画アセス手続き免除申請は、市民参加のオンブズパーソン的な審査機関によって免除の妥当性を保証すべきと思うが、お考えを伺う。
  ウ 全く異なる複数案を作成できない場合、計画案を部分的に実施した場合を複数案の一つとして選定することも可能であると考える。事業の一部、あるいは全てを凍結した案を複数案の候補とすることについて、見解を伺う。
  エ 計画アセス段階で、事業アセスレベルの調査計画書を作成したり、予測評価を行ったりした場合においては、その結果を事業アセス段階で活用することが可能となっている。条例案では、計画アセス段階での詳細な検討は例外的と位置づけられているが、事業によっては複数案において同一内容の検討が行われる場合や、計画段階において詳細な検討を行わないと計画案の選択が困難な場合もあると考えられる。計画アセス段階で特例環境配慮書の作成を原則とすることにより実効性の高い計画アセスを行うことができると考えるが、見解を伺う。
 2 都市再生緊急整備地域について
  ア 都市再生緊急整備地域を「特定の地域」に指定しているが、今回指定される七地域(以下「七地域」)がどのような経緯で選定されたか、根拠を伺う。
    また、「七地域」以外に都市再生緊急整備地域の候補として検討された地域があれば、その地域が選定からはずれた理由を伺う。
  イ 都市再生緊急整備地域の指定要件が明確に決められていない場合、地域が恣意的に決定されることにもなりかねない。指定要件を明示していただきたい。
  ウ 都市再生緊急整備地域が増える場合、また現在の「予定地域」の指定条項が増える場合など、「特定の地域」の指定が際限なく増加していくと、アセス制度の実効性が低下することも考えられる。こうした事態を防ぐためには、地域指定に一定の歯止めをかける必要があると考えるが、考えを伺う。
 3 事業アセス規模要件の緩和について
  ア 事業アセスの要件緩和においてIT化による階高の増加も根拠の一つとしてしめされているようだが、階高の増加は同一の階数での建物高さの増加を意味するだけで、無意味である。規則の改訂にあたって、経験則といった表現ではなく、環境におよぼす影響に関して正当な理由、算出の根拠を数値で示されたい。
  イ 規模要件の緩和にあたっては、東京都以外の他の自治体の条例を参考にしたか、今回の規模緩和にあたってどの程度の調査を行ったか伺う。また、調査を行った場合、他の自治体の条例における規模要件の平均値などが算出されていれば、おおまかな値等を示していただきたい。
  ウ 事業アセスの規模要件を緩和した場合には、電波障害では建築紛争予防条例が対応できるなど、他の条例等で対応するとしているが、現在の事業アセスで評価を行っている十九項目と他の条例等との対応関係を表等で明示し、さらに事前の対応が可能であるかどうかを示されたい。また、他の条例等で対応できない項目がある場合、その項目を明示されたい。
 4 計画アセスの意義を高めるために
   計画アセスの意義を市民に浸透させ、評価結果を正しく市民に理解してもらうためには、市民に対する環境への意識改革が必要であると考える。海外の一部地域などでは意識の高い市民が行政に対して的確な提案を行うことにより、実効性の高いアセスが行われている例もみられる。都においてもアセスの実施と平行して、市民の環境意識を高めるための活動が必要と考えるが、現在どのような活動を行っており、どのような成果をあげているか、伺う。

平成十四年第二回都議会定例会
福士敬子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 東京都環境影響評価条例の実効性について
  1 計画アセスについて
   ア 計画アセスの対象を計画主体が都であるものに限定しており、運用実績の積み重ねや制度の一層の改善が必要なことを理由としているが、どの程度の運用実績の積み重ねが必要と考えているのか、期間あるいは実施された件数という形で具体的な数字について、伺う。

回答
  計画段階環境影響評価制度につきましては、計画の早い段階から複数の案を環境の観点から比較検討を加えるもので、わが国において初めての制度であります。
  まず、東京都の事業計画において制度運用の実績を積み重ね、どのような事業や計画に、どのようなアセスメント制度がふさわしいか、研究してまいります。

質問事項
 一の1のイ 計画アセス手続の免除申請は、市民参加のオンブスパーソン的な審査機関によって、免除の妥当性を保証すべきと思うが、見解を伺う。

回答
  採用可能な複数の計画案は、実施主体において、社会経済的要素を踏まえ、採用可能な案として策定されるものであります。やむを得ない事由により複数案が策定できない場合、事業者は、その理由を記載した書面を知事に提出し、知事は、学識経験者で構成された環境影響評価審議会の意見を聴いたうえ、意見書を作成し、意見書への事業者の回答を求め、事業者の対応が相当か否か判断するものです。また、これら一連の手続の公表を行います。
  これにより、計画段階アセスメントの免除申請に対する判断は適切に行われます。

質問事項
 一の1のウ 事業の一部、あるいは全てを凍結した案を複数案の候補とすることについて、見解を伺う。

回答
  計画段階環境影響評価制度は、採用可能な複数案を環境面から予測評価し、計画段階から環境に配慮するシステムであり、事業そのものをアセスメント(評価)するものではありません。
  計画案を部分的に実施した場合を複数案の一つとすることにつきましては、事業者が採用可能なものとして環境配慮書を作成することは、あり得ると考えます。

質問事項
 一の1のエ 計画アセス段階で特例環境配慮書の作成を原則とすることにより、より実効性の高い計画アセスを行うことができると考えるが、見解を伺う。

回答
  計画段階アセスメントは、計画熟度にさまざまな段階があり、それぞれの熟度に応じた予測評価が行われることを前提としております。
  特例環境配慮書は、計画段階において特例として事業段階の評価書案の作成に相当する環境影響評価を行うことが可能な場合の規定を設けたものです。

質問事項
 一の2 都市再生緊急整備地域について
    ア 七地域の都市再生緊急整備地域は、どのような経緯で選定されたのか、根拠を伺う。また、七地域以外に候補として検討された地域があれば、その地域が選定からはずれた理由を伺う。

回答
  都市再生緊急整備地域は、熟度の高い優良な民間プロジェクトが地域に内在し、そのプロジェクトを促進することにより緊急かつ重点的に市街地の整備を図り、国際競争力の強化や都市の魅力づくりを通じて都市再生に資することができる都内七つの地域を選定し、国に提案しました。
  国においては、都の提案に基づき、これらの地域を、政令に基づき指定したものです。

質問事項
 一の2のイ 都市再生緊急整備地域の指定要件を明示すべきだ。所見を伺う。

回答
  都市再生緊急整備地域の指定の要件は、都市再生特別措置法に基づき定められた都市再生基本方針に示されています。
  その概要は、早期に実施が見込まれる都市開発事業等の区域に加え、その周辺で都市開発事業等の気運が存在する地域や、都市全体への波及効果を有することにより、都市再生の拠点となる的確な土地利用の転換が見込まれる地域など、市街地の整備を緊急かつ重点的に推進する必要があると判断された地域を都市再生緊急整備地域として指定するというものです。

質問事項
 一の2のウ 「特定の地域」の指定が増加していくと、アセス制度の実効性が低下することも考えられる。指定地域に一定の歯止めをかける必要があると考えるが、見解を伺う。

回答
  特定の地域とは、良好な環境を確保しつつ都市機能の高度化を推進する地域として規則で定める地域であり、具体的には、都心、副都心、都市計画法に規定する高層住居誘導地区及び七箇所の都市再生緊急整備地域を指定しています。
  今後については、条例の定義に照らし、適切に対応してまいります。

質問事項
 一の3 事業アセス規模要件の緩和について
    ア 事業アセスの要件緩和において、IT化による階高の増加も示されているが、建物の高さの増加を意味するだけで、無意味である。規則の改定にあたって、経験則ではなく、環境に及ぼす影響に関しての正当な理由、算出の根拠値を伺う。

回答
  環境影響評価制度が発足した二十年前と比較し、
  〔1〕高層建築物が大幅に増加したこと、
  〔2〕特定の地域の土地利用の実態と過去二十年間の実績から得られた知見、
  〔3〕最近のIT化対応ビルの各階の階高増への配慮、
  等を総合的に勘案し、決定しました。

質問事項
 一の3のイ 規模要件の緩和にあたっては、他の自治体の条例を参考にしたのか、どの程度の調査を行ったのか伺う。また、調査を行った場合、他の自治体の規模要件の平均値などが算出されていれば、示して頂きたい。

回答
  特定の地域における高層建築物の規模要件の見直しに際しては、
  高層建築物を環境影響評価の対象としている政令指定都市について調査しました。その結果は大阪市が、高さ百五十メートル以上かつ延床面積十万平方メートル以上であり、札幌市、広島市、北九州市が、高さ百メートル以上かつ(又は)延床面積十万平方メートル以上となっています。

質問事項
 一の3のウ 事業アセスの規模要件を緩和した場合には、他の条例等で対応するとしている。現在の事業アセスで評価を行っている十九項目と他の条例等との対応関係を表等で示し、事前の対応が可能かどうかを示されたい。また、他の条例等で対応ができない項目がある場合、その項目を明示されたい。

回答
  特定の地域における高層建築物に係る主要な環境影響項目としては、大気汚染、騒音・振動、日影、電波障害、風環境、景観、史跡・文化財があります。
  それぞれの項目と、規制や指導の根拠となる関連法令等の関係は次のとおりです。
 〇大気汚染  ・都民の健康と安全を確保する環境に関する条例
 〇騷音・振動 ・都民の健康と安全を確保する環境に関する条例
 〇日影    ・中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例
        ・日影による中高層建築物の高さの制限に関する条例
        ・再開発地区計画等の各運用基準
 〇電波障害  ・中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例
 〇風環境   ・中高層建築物の建築に係る紛争の予防と調整に関する条例
        ・再開発地区計画等の各運用基準
 〇景観    ・景観条例
        ・再開発地区計画等の各運用基準
 〇史跡・文化財・文化財保護法
        ・文化財保護条例

質問事項
 一の4 計画アセスの意義を高めるためについて
    市民の環境意識を高めるための活動が必要だが、現在どのような活動を行っており、どのような成果をあげているか所見を伺う。

回答
  今日の環境問題は、通常の経済活動や日常生活に起因していることが多いため、その解決には都民の理解と協力が欠かせません。
  そこで、都民の環境意識を高めることにつきましては、
  まず、新聞・雑誌などのマスコミはもとより、専門・業界新聞などを通したパブリシティ活動により東京都が展開している施策を広く紹介しています。
  また、東京の環境の現状と都の取組を平易に解説した「東京の環境」を発行しているほか、「広報東京都」や東京都提供のテレビ・ラジオ番組により、事業内容に関する情報提供を積極的に行っています。
  このほか、環境局のホームページにおいて、東京の環境に関する様々な情報を、迅速かつ適切に、都民が利用しやすい形で提供しています。
  このように様々な媒体を通して、都民の環境に対する意識の向上に貢献していると考えています。

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 小松恭子

質問事項
 一 障害者福祉について
一 障害者福祉について
  障害者福祉への支援費制度実施にかかわり、文書質問します。
  国は来年四月より、障害者福祉に支援費制度を新しく導入する。しかも、その申請は今年の十月から始まる。申請開始まで、わずか三カ月余しかない。支援費制度は、これまでの措置制度から契約制度に移行しようとするもので、高齢者福祉への介護保険導入と同様、障害者福祉制度の抜本的ともいえる大幅な見直しとなる。ところが介護保険導入とくらべても、もっぱら国の責任とはいえ、準備が大きくたちおくれており、議論もあまりにも不足している。
  私は、第一回定例会の厚生委員会でも、支援費制度実施について質疑させていただいたが、その後、国は政省令等を出し、これにもとづき東京都も区市町村の支援費制度担当課長会議を今年度になってからも二度開催していることは承知している。しかし依然として、支援費の額や、利用料の水準など、重要な部分が明示されていない。
  支援費制度実施により、これまでのサービス水準が低下したり、利用者の負担増となるような事態を絶対にまねいてはならない。こんにちの時点にたち、障害者や家族など関係者の意見を十分取り入れ、障害者と家族の方々の権利が保障され、安心して自立した生活がおくれる制度となることを求めて、いくつかの緊急課題に限定して改めて質問する。
 1 準備のすすめ方について
  アa 支援費制度実施は、大幅な制度見直しにもかかわらず、あまりにも具体化が遅れ、情報不足、議論も不足しており、障害者と家族の不安は高まっている。国の責任が大きいことは言うまでもないが、このような事態について都はどう認識しているのか。国にたいして強力な働きかけが必要だが、今日までどのような内容について要望し、今後どう働きかけようとしているか伺う。
   b また、たとえば支援費の額や利用料などについて、国は来年度予算の内示の中で明らかにするやに聞いている。これではことしの十二月まで明示されないことになり、都や区市町村にとっては、支援費関連経費を来年度予算に計上することすら困難になると思うが、どう認識しているのか、そして、どう対応するのか伺う。少なくとも、せめて仮単価を早急に明示するよう国に緊急に要請すべきと思うがどうか。
  イ 障害者と家族、関係者の不安にこたえるため、実施主体である区市町村だけでなく、都としての努力も求められている。当事者である障害者と家族、障害者団体の声をよく聞きながら、都としての支援費制度の準備をすすめる必要があると思うがどうか。
    たんに「決まったことをお知らせする」というかたちの周知徹底ではなく、よりよい制度をつくりあげるため、障害者と家族、障害者団体など関係者、区市町村と「ともに考え、ともにつくる」という姿勢が重要だと思うが、見解を伺う。
  ウ 介護保険のときは、実施一年前の一九九九年四月から、当時の高齢者施策推進室が、「介護保険ニュース」の発行を開始した。創刊号のあいさつで、高齢者施策推進室介護保険対策室長は、「(介護保険の)準備にあたっては、庁内や区市町村をはじめ、関係者の皆様に介護保険の動向を理解していただき、連携して取り組むことが重要です。そこで、介護保険制度の内容や、課題、都の取り組み状況等について、知っていただくために」同紙を発行したと述べている。また都として制度紹介のリーフレットも発行された。支援費制度についても、同様の区市町村と都民向け広報紙「支援費制度ニュース」や制度紹介のリーフレット、パンフレットなどをただちに発行し、福祉局のホームページにも掲載するよう提案する。答弁を求める。
  エ コミュニケーション障害がある視覚、聴覚、盲ろう、知的障害者などへの支援費制度についての広報、周知徹底は、具体的にどのようにおこなうのか。
 2 サービス水準の維持、利用者負担について
   介護保険実施のときも、介護保険の対象事業だけでなく、対象外の事業、都単独事業をはじめ、多くの事業の見直しがおこなわれた。介護保険対象外の事業で、介護予防、生活支援事業として存続されたものもあるが、一方で、特別養護老人ホームへの都独自の補助や老人福祉手当の段階的廃止も、介護保険制度の実施にともなうものであった。今回の障害者福祉への支援費制度実施にあたっても、制度の対象事業にとどまらず、小規模授産施設や全身性障害者介護人派遣事業など対象外の事業、民間社会福祉施設サービス推進費補助など都単独事業をはじめ多くの事業に、さまざまな見直しがおよぶことが心配される。
  ア 新しい制度の実施にともない、さまざまな検討すべき課題はうまれてくるが、私は、在宅、施設とも従来の障害者福祉のサービス水準が低下しないようにすること、そして利用者の負担増をまねかないこと、重度障害者や低所得者も現行以上のサービスを安心して利用できるようにすることが、不可欠だと考える。そして、そのことが障害者と家族をはじめ関係者の共通した切実な願いである。こうした願いにこたえる万全の対応が必要だと思うが、都の認識を伺う。
  イ 支援費制度導入にともない、直接、間接に見直しの対象となる事業と、その検討課題、どういう方向で見直そうとするのかについて、具体的に答弁を求める。
  ウ 利用者負担について、とりわけ家族、扶養義務者からの徴収が大きな問題となっている。この制度実施で障害者の「自立支援」というなら、家族などの負担は撤廃すべきだ。所見を伺う。
 3 基盤整備の推進――緊急三カ年計画について
   支援費制度が障害者や家族にとり、より良いものとしてスタートし、サービスが本当に選択できるようにするためには、受け皿としての基盤整備を充実しなければならない。三月の厚生委員会での質疑で福祉局は、「障害者施設整備緊急三カ年計画を策定して実行しているところだ」と答弁したが、実態はどうか。
   一年目である昨年度の実績は、地域デイサービス以外はすべて計画が未達成にとどまり、療護施設や小規模授産施設は実績ゼロという現状だ。またわが党は、都の議会局を通じ、この三カ年計画に関して全区市町村の実態調査を行ったが、その結果によれば、多摩二十六市では、都の緊急三カ年計画に対応した計画があるのは、四つの市にすぎず、二十の市は、「対応した計画はない」と回答している。そして多くの区市町村が、計画期間の延長を要望している。
  ア 障害者施設緊急三カ年計画の初年度の到達点について、どう認識しているのか。このままでは、「障害者がサービスを選択できる」どころか、施設の不足により「障害者が選別される」という逆選別の事態さえうまれかねないのではないか。答弁を求める。
  イ 私は、区市町村事業である障害者施設の整備を本格的に推進するために、計画期間の延長を、いまの段階からはっきりうちだすよう提案するが、所見を伺う。
 4 相談支援体制の整備について
   障害者が身近な地域で適切なサービスを選択できるように支援する相談体制の整備も重要である。その実施体制は区市町村の責務とされているが、これを区市町村まかせにすることなく、区市町村で格差がおきないようにするための具体策が求められている。
   都はすでに「障害者ケアマネジメント体制整備推進事業」にとりくんでおり、今年度で障害者ケアマネジメント従事者養成を延べ一千人、ケアマネジメント試行を延べ十七カ所でおこなうとしている。こうしたとりくみをさらに発展させて、各地域で障害者の相談支援体制を確立し、支援費制度にも対応できるようにするため、障害者ケアマネジメント事業を制度化してはどうか。見解を伺う。
 5 高次脳機能障害への対応について
   過日の政省令で、障害者程度区分が三段階と発表されたが、ABC各段階の障害の程度は明らかにされていない。一方、高次脳機能障害など障害者手帳の取得が困難な障害者が対象外とされている。生活における困難性という観点からも、高次脳機能障害にも支援費の支給を求めるべきと思うがどうか。さらに都として独自の対応も検討してはどうか。答弁を求める。
   以上で質問を終わります。

平成十四年第二回都議会定例会
小松恭子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 障害者福祉について
  1 障害者福祉への支援費制度実施の準備の進め方について
   ア 都の認識と予算計上について
    a 制度の大幅な見直しにもかかわらず、具体化が遅れ、情報不足等で障害者と家族の不安が高まっているが、どう認識しているのか。国に対して強力な働きかけが必要だが、今日まで、どのような内容について要望し、今後、どう働きかけようとしているのか伺う。

回答
  支援費制度に円滑に移行するためには、利用者に対して支援費制度の趣旨や仕組みに関する十分な情報提供が必要であり、早急に国が具体的内容を示すべきと考えます。
  都は、これまでも国に対して、速やかな通知や説明会などの情報提供により、実施主体である区市町村や事業者などの移行準備業務に混乱の生じないようにすることを要望しています。
  今後とも、国に対して、必要な提案等を行うとともに、制度の詳細な内容を速やかに明らかにするよう強く要望していきます。

質問事項
 一の1のアのb 支援費の額や使用料などについては、国が予算内示を行う十二月まで明示されないため都や区市町村の来年度予算への計上が困難になると思うが、どう認識しているのか、そして、どう対応するのか。せめて仮単価を早急に明示するよう、国に緊急に要請すべきだが、所見を伺う。

回答
  都は、これまでも支援費制度の具体的な内容を示すように国に求めてきたところですが、国においては、本年九月中を目途に支援費基準及び利用者負担についての基本的枠組みを示すと聞いております。引き続き、より具体的な内容を速やかに示すよう、国に対して強く働きかけていきます。

質問事項
 一の1のイ 当事者である障害者と家族、障害者団体の声をよく聞きながら支援費制度の準備を進めるとともに、よりよい制度を作り上げるため、関係者や区市町村と「ともに考え、ともにつくる」という姿勢が重要だと思うが、見解を伺う。

回答
  都は、これまでも障害者団体連絡協議会や区市町村の障害福祉主管課長会などを通じ、幅広く意見を伺ってきています。
  今後とも、機会をとらえ、関係者の意見の把握に努めるとともに、実施主体である区市町村とも連携して、支援費制度への円滑な移行に向けて準備を進めていきます。

質問事項
 一の1のウ 支援費制度についても、介護保険導入時と同様に区市町村と都民向け広報紙等を直ちに発行し、ホームページにも掲載するよう提案するが、見解を伺う。

回答
  都は、これまでも広報東京都、ホームページ及びリーフレット等を通じ、支援費制度に関する情報提供に努めてきました。
  今後とも、実施主体である区市町村と協力しながら、分かりやすい広報活動を行っていきます。

質問事項
 一の1のエ コミュニケーション障害がある、視覚、聴覚、盲ろう、知的障害者などへの支援費制度についての広報、周知徹底は、具体的にどのように行うのか、伺う。

回答
  コミュニケーション障害がある方への支援費制度の周知については、これまでも点字版・テープ版の広報東京都の発行など、きめ細かな広報活動に努めてきました。支援費制度への移行に向けて、今後とも、障害の特性に配慮した分かりやすい情報提供を行っていきます。

質問事項
 一の2 支援費制度実施にあたってのサービス水準の維持、利用者負担について
    ア 在宅、施設とも従来の障害者福祉サービス水準が低下しないようにすること、利用者の負担増を招かないこと、重度障害者や低所得者も現行以上のサービスを安心して利用できるようにすることが、障害者、家族及び関係者の願いである。こうした願いに応える万全の対応が必要と思うが、認識を伺う。

回答
  都は、「TOKYO福祉改革STEP2」に基づき、障害者が地域の中で必要なサービスを選択し、自立した生活を送ることができるよう、真に都民ニーズに応えられる福祉の実現を目指して、サービス提供基盤の整備及びサービスの質の向上に努めています。
  また、支援費制度における利用者負担については、サービスの利用にあたり、負担能力に応じた適正な負担を利用者に求めることが必要であると考えています。

質問事項
 一の2のイ 支援費制度導入にともない、見直しの対象となる事業と、その検討課題、見直しの方向性について、具体的に伺う。

回答
  支援費制度への移行に伴って事業の再構築が必要となった場合においても、現在取り組んでいる「TOKYO福祉改革STEP2」に基づく利用者本位の新しい福祉を実現する視点に立って検討していきます。

質問事項
 一の2のウ 利用者負担について、とりわけ家族、扶養義務者からの徴収が問題となっている。障害者の自立支援というなら、家族などの負担は撤廃すべきだが、所見を伺う。

回答
  国は、支援費制度においても、現行の措置制度と同様に本人及び一定の扶養義務者に負担を求めることとしており、現在、扶養義務者の範囲については具体的に明らかにされていませんが、都としては、負担能力の範囲内で適切な水準が示されるものと考えています。

質問事項
 一の3 基盤整備について
    ア 障害者施設緊急三ヵ年計画の初年度の到達点について、どう認識しているのか。このままでは、「障害者がサービスを選択できる」どころか、施設の不足により「障害者が選別される」という事態さえうまれるのではないか。見解を伺う。

回答
  心身障害者施設緊急整備三ヵ年計画は、障害者のニーズに的確に応えるため、障害者の生活と活動の場の拡大を目指して、平成十三年度から三年間で重点的に実施するもので、現在は、この計画期間内での整備目標の達成に向けて最大限の努力を行っているところです。

質問事項
 一の3のイ 区市町村事業である障害者施設の整備を本格的に推進するために、計画期間の延長を提案するが、所見を伺う。

回答
  心身障害者施設緊急整備三ヵ年計画は、平成十三年度から十五年度までの三年間を計画期間としています。現在はまだ初年度が終了したばかりであり、計画期間の延長等について判断できる時期ではないと考えます。

質問事項
 一の4 「障害者ケアマネジメント体制整備推進事業」による取り組みをさらに発展させ、各地域で障害者の相談支援体制を確立し、支援費制度にも対応できるようにするため、障害者ケアマネジメント事業を制度化してはどうか。見解を伺う。

回答
  都は、これまでも、支援費制度の円滑な実施に向けて、実施主体である区市町村と協議してきたところであり、その中で障害者に対する支援・相談のあり方についても検討しています。

質問事項
 一の5 高次脳機能障害にも支援費の支給を求めるべきと思うが、所見を伺う。さらに、都独自の対応も検討してはどうか。所見を伺う。

回答
  高次脳機能障害については、現在、国において「高次脳機能障害支援モデル事業」を行うなど検討・研究中の段階であり、必要な支援の判断が困難な状況です。都としては、その推移を見守っていきます。

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 曽根はじめ

質問事項
 一 教育について
一 教育について
  私は東京都の教育行政に関連して質問します。
  知事は所信表明で「来年度から学区制が撤廃され、都立高校は選択と競争の時代を迎える」と述べています。また都教委は、来年の受験生から自己PRカードを提出させることを決定しました。私は、これによって十五の春を泣かせる事態がいっそうすすむ危険があることを率直に指摘したいと思います。
 1 第一に、来年からの学区全廃ですが、以前から専門高校や新しいタイプの高校は学区がありませんし普通科高校も一定割合で他学区からの受験を受け入れています。
   その中で、普通科高校の他学区からの受験人数は、ほとんど受け入れ枠の範囲内で収まっており、大多数の都立校では学区制を撤廃する理由はないのです。影響があるとすれば、ごく一部の進学校が成績優秀な生徒を東京中から集めやすくなることです。
   しかしその一方では、家庭の事情でどうしても都立高校に進学しなければならない生徒が重大な影響をうけるのです。学区廃止で二十三区に偏っている進学校に多摩からより多く受験するようになれば、二十三区の中卒生が、逆に多摩の高校を受験せざるを得なくなります。
   その背景として、かつてグループ選抜方式を採用していた当時は、第一志望校に合格できなくても、同じ学区の中で別の都立校に入学できる道があったにもかかわらず、単独選抜に切り替えて以後は、一次募集で不合格なら二次募集では島部を含めて千人ほどの募集定員に、都内全域から二千人以上が集中するというしくみになり、都立高校を志望する生徒にとっては、深刻な不安と動揺をかかえざるをえない状況があります。
   すでに今年の入試では、統廃合対象で募集停止が近い水元高校や稲城高校に受験生が集中して高倍率になるという現象も起きています。
   学区制撤廃は、こうした混乱に拍車をかけ、ひとにぎりのエリート校の進学競争のために、地元の都立高校を希望する大多数の受験生に不安と動揺を与えるだけです。
   来年度からの学区制撤廃は凍結し、専門家や都民参加による公開の検討の場を設けて、これまでの単独選抜や他学区受験の経過とその受験生への影響を十分調査しながら学区廃止路線を再検討すべきと考えますが、どうか。答弁を求めます。
 2 第二に、都教委が来年から導入しようとしている、自己PRカードについてですが、このカードは「その高校に入学したい理由と入学してしたいこと」、「中学の学習活動で自分が特にPRしたいこと」「中学生活で学級や生徒会や学校行事、部活動、ボランティア、資格検定など自分が特にPRしたいこと」の三つの自己推薦を書き込むようになっています。
   都教委は、これで受験者の意欲や活動を多面的に評価するとしていますが、十五歳といえば自己を客観的に評価し表現すること自体が困難な年代です。しかもその生徒を知らない高校側が、本人の自己評価の文章を学科テスト並みに採点するというのは、まさに主観的なものを主観的に点数化するもので、およそ客観的な評価にほど遠いと言わねばなりません。そしてこれが結果として合否を分けることになりかねないのです。
   ある中学校の受験指導の先生は、「このカードが、百点もしくは、それ以上の点数が配点されるとなれば、受験生本人まかせには絶対できない。とりわけはっきり差がつく生徒会やクラブ活動の役員歴については、役員の任期を短くして可能な限り多くの生徒に経験させることも検討しなければならない。しかしこれで生徒に何を競わせようとしているの…」と、疑問の声を上げています。
   何人かの中学生に自己PRカードの感想を聞くと、みな一様に「正直に書いたら合格しそうにないけど、うそは書きたくないし、親か先生に言われたとおり書くしかない」などと話していました。これで本当に子ども自身の自己PRとして機能するのかは甚だ疑問です。
   自己PRカードは撤回して、中学校の受験指導教員や、子ども達自身の意見も反映させて、選抜方式のあり方全体を抜本的に再検討すべきです。答弁願います。
 3 今、都が本腰を入れて取り組むべきは、小・中・高校の学級定数を三十人に改善する課題です。文部科学省が、国が行うべき学級定数の改善を、地方自治体に責任を押しつけてきたのに対して、全国の多くの道府県では、政府に対し引き続き要望を行うことはもちろん、それにとどまらず厳しい地方財政のもとでも三十人学級など、独自の学級定数の改善に踏み出す動きが広がり、全国で二十一道府県、二政令市に及び、いまや都道府県の半数を越えていく勢いです。
   都内でも、「三十人学級を一日も早く」と、あらゆる地域で運動が進められ、百四十七万人以上の署名が都議会に寄せられています。
   こうした中で、都内二十一の区市町村議会が都に対して、国が実施するまでの間、都が独自に三十人学級に踏み出すこと、もしくは区市町村が実施しようとする時、それを承認するとともに財政支援することを決断するよう強く求める意見書を採択しています。
   都は来年度から、小・中・高校における三十人学級の実現へ、年次計画を立て独自に踏み出すこと。また当面、区市町村が都に先行して実施に踏み切る場合、都として財政支援を行うべきですが、答弁を求めます。

平成十四年第二回都議会定例会
曽根はじめ議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 教育について
  1 来年度からの学区制撤廃は凍結し、専門家や都民参加による公開の討論の場を設けて、これまでの単独選抜や他学区受験の経過とその受験生への影響を十分調査しながら、学区制廃止路線を再検討すベきだが、見解を伺う。

回答
  都教育委員会は、学区制度について見直しを行うため、平成十一年度に学識経験者、PTA代表等外部委員を含めた「都立高等学校学区制度検討委員会」を設置し、平成十三年度に同検討委員会から、生徒の学校選択幅の拡大や学校の個性化・特色化を推進するため、学区を廃止すべきとの答申を受けました。
  この答申を踏まえ、都教育委員会は、平成十三年九月に平成十五年度入学者選抜から学区を廃止することを決定し、区市町村教育委員会、中学校及び高等学校をはじめ広く都民へ周知してきたところです。

質問事項
 一の2 来年度から導入しようとしている自己PRカードは、客観的な評価にほど遠いと言わねばならない。自己PRカードは撤回し、中学校の受験指導教員や子ども達の意見も反映させて、選抜方式のあり方全体を抜本的に再検討すべきだが、見解を伺う。

回答
  本年度から実施されている中学校学習指導要領では、選択教科の拡充や総合的な学習の時間の実施とともに、自己を表現する力などの生きる力をはぐくむことが重視されています。
  都教育委員会は、学習指導要領のこうした改訂に対応するとともに、受験者が中学校での努力や成果を自ら志望校に伝え、それらを都立高等学校が多面的に評価できるようにするため、自己PRカードを平成十五年度入学者選抜から導入することを決定しました。
  自己PRカードの導入の趣旨や記入の方法、都立高等学校での評価の仕方等については、区市町村教育委員会、中学校及び高等学校にリーフレットを配布するなどして、その周知に努めているところです。

質問事項
 一の3 都内二十一の区市町村議会が、都に対し、学級改善についての意見書を採択している。都は来年度から、小・中・高等学校における三十人学級の実現へ、年次計画を立て独自に踏み出すこと。また、当面、区市町村が実施に踏み切る場合、財政支援を行うべきだが、見解を伺う。

回答
  都教育委員会への意見書採択状況は承知していますが、都教育委員会としては、児童・生徒が社会性を養うための教育効果の観点から、生活集団としての学級には一定の規模が必要と考えています。
  一方、基礎学力などの向上に配慮し、きめこまやかな指導を行っていくには、学級とは異なる少人数の学習集団を編制し指導していくことが、より効果的であると考えており、教科等の特性に応じた少人数による指導の拡充に努めています。
  なお、区市町村が自らの責任で独自の学級編制を実施したいとする場合でも、全都的な視点で検討する必要があると考えております。

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 花川与惣太

質問事項
 一 北区における東京都関連の重要事業と課題について
  1 埼京線の立体化事業の促進について
  2 都市計画道路補助八三号線の早期事業化について
  3 浮間地区新河岸川遊歩道の有効活用について
一 北区における東京都関連の重要事業と課題について
 1 埼京線の立体化事業の促進について
   私は、十条地区のことについては今まで何度となく質問をしてきました。
   現在、十条高台地区での最大の課題は、JR埼京線の立体化であります。
   特に十条駅のラッシュ時間には、ほとんど毎日乗車できない状態です。
   この混雑緩和を解消するためには、住民の永年の悲願である埼京線の輸送力増強(現在十両編成を十五両編成に)と、立体化の早期着手しかありません。
   従来の立体交差事業の採択条件では、幹線道路が二本以上あること、遮断交通量、周辺のまちづくり等が条件でしたが、平成十二年国は幹線道路一本でも採択する緩和策を示しました。
   東京圏を中心とした鉄道のネットワークとしては、北からの鉄道軸は、赤羽駅→上野駅→東京駅→羽田空港軸。さらに、二〇〇八年からは東北・高崎線の東海道線相互乗り入れする湘南軸。また、埼京線は赤羽駅→池袋駅→新宿駅→渋谷駅→大崎駅(臨海線と相互乗り入れ)→羽田空港軸。及び大崎から横浜・小田原・横須賀・大船軸の大きな二本の鉄道軸となっております。
   これらの鉄道軸のなかでもとりわけJR埼京線のラッシュ時の混雑率は二〇〇%を超えています。このためJRは昨年秋から新宿湘南ライナーの運転を開始し、また、池袋駅構内のホーム改良工事を現在実施しており、これにより混雑率の一番高い池袋駅・新宿駅間は確かに緩和されるでしょうが、埼玉県南部(武蔵浦和駅)から池袋駅間の混雑は緩和されません。
   東京都の鉄道の立体化事業計画の中で積み残しになっているのは、JR埼京線だけであります。都市経営の面からも埼京線の輸送力増強と立体化事業は急務であり早期着手が必要と思うが、今後の取り組みを伺います。
 2 都市計画道路補助八三号線の早期事業化について
   都市計画道路補助八三号線は北区内のほぼ中央を南北に通り、南は飛鳥山公園前で放射一〇号線と、北は環状七号線と立体交差をし、さらに北上し、埼京線のガードを通過した地点で補助七三号線と結ばれた都市計画道路であります。昭和二十一年に都市計画決定され、飛鳥山公園前から補助八五号線と交差する南橋の間は整備が終わっています。
   しかし、南橋以北は未整備であり、この計画線は古くから開かれていた岩槻街道を拡幅する計画になっています。しかし、道路整備の見通しが示されず、また、計画線に掛かる地区は建築制限があり沿道の関係権利者は建替え計画が立たず建物の老朽化が進んでおります。
   また狭隘な道路に毎日多くの自動車が通過し、十分な歩道の確保もままならず、自転車や徒歩の人たちは常に交通事故の危険に身をさらしながらの生活を強いられています。こうしたことから沿道の商店も商売が成り立たず衰退の一途をたどっているのが実態です。
   さらに、この補助八三号線の未整備地域は木造住宅密集地域であり、平成九年三月に東京都が策定した『防災都市づくり推進計画』の中で重点地区に指定され、「地区内の災害危険性の軽減にあわせ、広域的な防災性の向上に寄与すること目指し、緊急に整備を図る地区」とされています。
   補助八三号線の未整備部分はこの重点地域を貫通しており、この道路を整備することは交通ネット・ワークは勿論、交通安全、地域商店街の活性化、さらには、災害時の避難道路や延焼遮断帯としても大きな役割を果たすことが期待されています。
   都が平成三年に策定した都市計画道路の第二次事業化計画にも、南橋から環状七号線の間は前期事業化路線として決定されており、その上、地元住民の多くが早期の事業化を切望しています。今後の取り組みについて伺います。
 3 浮間地区新河岸川遊歩道の有効活用について
   浮間地区はその名のとおり荒川、新河岸川に囲まれた立地で、交通の便は路線バスのみが頼りであったが、近年、都市計画道路・河川・下水道・鉄道などの都市基盤が相次いで整備され、また整備されつつあり、生活環境が向上してきました。これらの都市基盤整備に支えられ、浮間地区は北区全体の人口が減少している中で、現在も唯一人口が増加している状況となっています。
   ところで、河川に囲まれた浮間地区は、その地形を活用し、河川沿いを憩いとレクリエーションの拠点として、遊歩道や緑道などの環境整備を推進していくことが各種の構想計画などに位置づけられております。
   河川本来の防災性の確保と同時に、河川環境整備を進めることは防災性の向上と散歩や憩いの拠点として、高齢者が外出する意欲を高め、歩くことにより健康を確保していくことにもつながります。
   当面、新河岸大橋左岸と新河岸川遊歩道が接続されていませんので、バリアフリー法の趣旨を考えるとスロープで繋げるのが望ましいのですが、現地の状況は稼働している工場用地の買収や、建物の補償など困難な面も多々あります。そのため、既存の道路用地を活用した階段の設置により、地域住民が安心して安全に快適に歩行できるような環境作りを要望するものです。
   なお、可能であれば遊歩道を夜間にも安全に散策できるよう、照明設備設置の検討をお願いいたします。
   上流側には新河岸橋の整備が進められるとも聞いており、荒川とのつながり、新河岸処理場の上部整備などとあわせると、浮間地区のみならず、東京都北部の自然、レクリエーションの一大拠点となります。今後どう取り組むのか伺います。

平成十四年第二回都議会定例会
花川与惣太議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 北区における東京都関連の重要事業と課題について
  1 埼京線の立体化事業の促進について
    都の鉄道の立体化事業計画の中で積み残しになっているのは、JR埼京線だけである。都市経営の面からも、埼京線の輸送力増強と立体化事業は、急務であり、早期着手が必要と思うが、今後の取り組みについて伺う。

回答
  連続立体交差事業は、まちづくりと総合的に進めることによって、事業効果を高めることが重要です。
  JR埼京線十条駅付近のまちづくりについては地元北区で検討が進められており、都としては、これらまちづくりの進捗、都財政、地元区やJR東日本の状況などを踏まえながら、立体交差化について総合的に検討してまいります。

質問事項
 一の2 都市計画道路補助八三号線の早期事業化について
    都市計画道路補助八三号線の南橋から環状七号線の間は、平成三年に都市計画道路第二次事業化計画で前期事業化路線として決定されている。地元住民の多くが早期の事業化を切望している。今後の取り組みについて伺う。

回答
  都市計画道路補助八三号線は、第二次前期事業化計画及び防災都市づくり推進計画において事業推進を図るものとして位置付けられております。
  現在、地元区が八三号線について住民と話合いを行っています。
  都としては、地元区と連携を図りながら整備手法などの検討を進めてまいります。

質問事項
 一の3 浮間地区新河岸川遊歩道の有効活用について
    新河岸大橋左岸と新河岸川遊歩道の接続について、また、夜間、遊歩道を安全に歩行できるようにするための照明設備の設置について、伺う。さらに、新河岸橋の整備とあわせ、今後、河川環境整備等にどのように取り組むのか、伺う。

回答
  河川の管理用通路は、日常の維持管理や非常時の水防活動に必要なものですが、普段は地域住民の方々の遊歩道として利用されています。
  北区が検討中である、新河岸大橋左岸と新河岸川管理用通路の接続については、北区と協議を進めてまいります。
  また、新河岸橋付近から新河岸大橋付近に至る管理用通路については、北区の「浮間地区のまちづくり方針」の中で、散策のネットワークの一部として位置付けております。このため、照明施設については、今後、北区と協議いたします。
  さらに、護岸整備と併せて、新河岸橋の架替え工事を平成十五年度から実施する予定であり、上下流の管理用通路の連続的な利用を図ってまいります。
  今後とも、北区と連携を図りながら、新河岸川の整備に取り組んでまいります。

平成十四年第二回都議会定例会
文書質問趣意書

 提出者 大河原雅子

質問事項
 一 水道事業について
一 水道事業について
  まず、都民に安心でおいしい水を供給するため、日夜献身しておられるご当局の皆様に敬意を表します。
  平成十五年度から水道水の水質基準のうち、鉛の基準が一リットルあたり〇・〇五ミリグラムから一リットルあたり〇・〇一ミリグラムに強化される予定です。これに対応するため、水道局では水道原水の浄水方法を変更してpHとランゲリア指数の改善をはかる計画があると聞きます。技術的な選択については、事実上、水道局に任されているのが現状ですが、今後の浄水方法の変更に伴い、水質面やコスト負担の面からも水道利用者である都民への影響があるとすれば、単なる変更として看過すことはできません。以下質問します。
 1 水道原水の状態も浄水所ごとに異なると思われますが、現状とその対策はどうなっているのでしょうか。
 2 今回計画されている浄水方法の変更は、どのような理由から計画されたものでしょうか。
 3 今回モデル実施する砧上および砧下浄水場の原水にはどのような問題があるのでしょうか、水質上の特徴を列記して下さい。
 4 消石灰を選択した理由は。
 5 複数の代替案があったものと思いますが、これまでの実験にもとづく知見など、どんなものと比較して選定したのでしょうか。
 6 消石灰の注入により、浄水の総硬度があがり快適項目の基準を超えるおそれがあると思いますが、それでもおいしい水といえるのでしょうか。(たとえば、砧の原水の状態では、消石灰をどのくらい投入することになるのでしょうか。)
 7 消石灰の過注入が起こったときは、pHの水質基準を超える可能性があると思いますがどうでしょうか。
 8 pHの改善はばっ気によって改善されると聞いていますが、そのデータを示し、消石灰投入によるものとの比較データをわかりやすく示してください。
 9 コストの比較はどうなるのでしょうか。
 10 また、浄水場職員の労働にどの様な負担がかかるのでしょうか。あるいは、かからないのか。
 11 今後、この方法をすべての浄水場に拡大するつもりでしょうか。予算を含めて計画スケジュールを示してください。
 12 消石灰による改善策決定までのプロセスを明らかにしてください。
 13 消石灰の投入による水質改善は、小規模な浄水場では行われていると聞いていますが、東京水道のような大規模なところでは例がないと聞いています。導入している事例があれば示して下さい。
 14 多摩地区では、「蛇口から固形物が混入した水が出ている」との苦情が出されており、総硬度の高い水が供給されているのではないかとの声もある。多摩水道改革推進本部で、それを集計しているのであれば、それを示して下さい。
 15 良い結果が得られないときの見直しのプロセスはどのようなものでしょうか。
 16 今回の浄水方法の変更のような水道利用者に影響を与える技術的な変更について、当該浄水場の給水地域の都民および自治体にはどのように連絡し合意されるのか伺います。
 以上、誠意をもって速やかにお答えください。

平成十四年第二回都議会定例会
大河原雅子議員の文書質問に対する答弁書

質問事項
 一 水道事業について
  1 平成十五年度から水道水の水質基準のうち、鉛の基準が強化されるため、水道原水の浄水方法を変更すると聞いている。水道原水の状態も浄水場ごとに異なると思われるが、現状と対策について、伺う。

回答
  各浄水場の原水の状態を一概に言うことはできませんが、原水のペーハー値の現状は六・一から八・二の範囲にあります。これを浄水処理後、これまでは、ペーハー値七・〇を目標に管理し、給水してまいりました。

質問事項
 一の2 今回計画されている浄水方法の変更は、どのような理由から計画されたのか、伺う。

回答
  今回のペーハー目標値の変更は、平成十五年四月に施行予定の鉛に関する水質基準の強化への対応が主な理由となっています。基準の強化に先立ち、平成十三年七月に厚生労働省から、鉛製給水管からの鉛の溶出を抑制するために、ペーハー調整の実施に努めるよう通知されています。これを受けて、当局では、鉛溶出抑制のためペーハー調整を行うこととし、具体的には浄水ペーハー値を水道管等の腐食抑制の観点から定められている快適水質項目の目標値である七・五程度となるように水道水の水質改善を行うことといたしました。

質問事項
 一の3 今回モデル実施する砧浄水場及び砧下浄水所の原水には、どのような問題があるのか、水質上の特徴を伺う。

回答
  砧浄水場及び砧下浄水所の原水は伏流水で、ペーハー値が六・三から六・七と低い状況にあります。

質問事項
 一の4 浄水方法に消石灰を選択した理由について、伺う。

回答
  水酸化カルシウム、いわゆる消石灰を注入する手法は、他の手法に比べて鉛溶出抑制効果や管路の腐食抑制効果などが高いことから選定いたしました。

質問事項
 一の5 複数の代替案があったと思うが、これまでの実験に基づく知見など、どのようなものと比較して選択したのか、伺う。

回答
  水酸化カルシウム注入の他には、水酸化ナトリウム、いわゆるカセイソーダ注入、ばっ気処理、シェルビーズ処理等があります。これらについて、ペーハー値の改善効果や水道管からの鉛や鉄などの溶出抑制効果など過去に行った実験の結果や最新の技術情報、ばっ気に伴う騒音及び震動など周辺環境への影響、さらにコストなどをもとに、総合的に検討して水酸化カルシウム注入を選択いたしました。

質問事項
 一の6 消石灰の注入により、浄水の総硬度が上がり、快適項目の基準を超えるおそれがあると思うが、それでもおいしい水といえるのか、伺う。また、砧の原水の状態では、消石灰をどのくらい投入することになるのか、伺う。

回答
  カルシウム、マグネシウム等硬度の水質基準値は、水道水一リットルあたり三〇〇ミリグラム以下とされています。また、より質の高い水道を目指した快適水質項目としての目標値は、水道水一リットルあたり一〇ミリグラムから一〇〇ミリグラムと規定されています。
  砧浄水場及び砧下浄水所では、浄水一リットルあたり一〇ミリグラムから一五ミリグラム程度の水酸化カルシウムを注入する予定で、年間の使用量は、二箇所の合計で約三百トン程度と試算しております。
  これにより、硬度は現在より増加しますが、水道水のおいしさは変わらないと考えております。(平成十三年度における砧浄水場の総硬度の平均値は八三・四)

質問事項
 一の7 消石灰の過注入が起こったときは、ペーハーの水質基準を超える可能性があると思うが、所見を伺う。

回答
  水酸化カルシウムの過剰注入を起こさないようにするため、注入設備はペーハー調整に必要とされる最小限の規模とし、さらに十分な安全対策を備えた設備とします。

質問事項
 一の8 ペーハーは、ばっ気により改善されると聞くが、そのデータと、消石灰投入によるものとの比較データについて伺う。

回答
  ばっ気によってもペーハー値を七・五に改善できます。
  砧浄水場でばっ気処理を実施する場合の実験結果では、水深三・五メートルの水槽中に、水の十倍量の空気を吹き込むことで、処理水のペーハー値を七・五程度とすることができます。
  一方、水酸化カルシウム注入を実施する場合の実験結果では、浄水一リットルあたり水酸化カルシウム分として一〇ミリグラムから一五ミリグラム注入することで、処理水のペーハー値を七・五程度とすることができます。

質問事項
 一の9 消石灰利用による改善とばっ気による改善とのコスト比較について伺う。

回答
  砧浄水場における設置コスト及び二十年間のランニングコストで比較した場合、水酸化カルシウム注入設備を導入すると、設置コストが三億円、ランニングコストが三・七億円、合計で約七億円、また、ばっ気処理設備を導入すると、設置コストが五・七億円、ランニングコストが五・四億円、合計で約十一億円の費用が必要であると試算しております。

質問事項
 一の10 消石灰利用による改善で、浄水場職員の労働にどのような負担がかかるのか、伺う。

回答
  水酸化カルシウム注入によるペーハー調整は、自動運転で行うこととなりますが、消石灰の受入れや設備の点検等の維持管理業務が必要となります。

質問事項
 一の11 今後、消石灰による浄水方法を全ての浄水場に拡大するのか。予算を含めて、計画スケジュールを伺う。

回答
  浄水ペーハー値の調整に用いるアルカリ剤は、水酸化カルシウムを基本としますが、水酸化ナトリウム注入設備を現有する浄水場においては、当面、水酸化ナトリウムを使用し、設備の更新に合わせて水酸化カルシウムに変更したいと考えています。
  その更新計画につきましては、今後、策定することとしております。

質問事項
 一の12 消石灰による改善策決定までのプロセスについて伺う。

回答
  水酸化カルシウム注入を導入することとしたのは、以下の経緯によります。
 一 平成十五年四月から鉛に関する水質基準の強化が予定されるとともに、平成十三年七月に厚生労働省から、鉛管対策を目的としたペーハー調整の実施に努めるよう通知があった。
 二 当局の実験により、ペーハー調整による鉛溶出低減効果が確認できた。
 三 ペーハー調整にはいくつかの手法があるが、当局の実験や最新の技術動向から、水酸化カルシウム注入は他の手法に比べて、鉛溶出抑制や管路の腐食抑制等の効果が大きいことが明らかになった。
 四 他都市においても水酸化カルシウムの効果及び自動注入設備の信頼性が確認され、導入事例が増加している。
  これらに加え、騒音や震動の問題及びコスト面でも有利なことから、水酸化カルシウムの注入方式を採用することとしました。

質問事項
 一の13 消石灰投入による水質改善は、東京水道のような大規模なところでは例が無いと聞くが、導入している事例について、伺う。

回答
  水酸化カルシウム注入は、以前から全国の浄水場で実施されており、現在、その数は百箇所を超えています。
  砧浄水場及び砧下浄水所の一日当たりの配水量は、あわせて約七万立方メートルですが、これと同規模で同じ注入手法を採用している浄水場として、一日当たりの配水量が十四万立方メートルの和歌山市加納浄水場が挙げられます。
  砧浄水場とは異なる手法で水酸化カルシウムを使用している浄水場として、一日当たりの配水量が六十五万立方メートルと規模が大きい札幌市白川浄水場が挙げられます。

質問事項
 一の14 多摩地区では、「蛇口からカルシウムに起因する固形物が混入した水が出ている」との苦情が出されており、総硬度の高い水が供給されているのではないかとの声もある。それらの苦情の集計結果について伺う。

回答
  このような問い合わせは、平成十三年度に六件受け付けています。問い合わせ先それぞれについて調査を実施しましたが、問い合わせ内容は水の総硬度との関係はありませんでした。
  なお、多摩地区における水道水の総硬度の平均値は、区部と同程度です。

質問事項
 一の15 消石灰による浄水方法により、良い結果が得られない場合の見直しのプロセスについて伺う。

回答
  水酸化カルシウム注入は、すでに多くの実績があり、問題はないものと考えています。

質問事項
 一の16 今回の浄水方法の変更のような、水道利用者に影響を与える技術的な変更について、給水地域の都民及び自治体にはどのように連絡し、合意されるのか、伺う。

回答
  今回の浄水ペーハー値の調整は、当局水道水の水質を国の定めた快適水質項目の目標値に近づけることにより、水道水質の改善を図るものです。
  水道水を水質基準値等に適合させるためにはいろいろな手法がありますが、今回のペーハー調整については、報道機関や当局ホームページを通じて公表するなど、都民への情報公開に努めております。

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