○副議長(橋本辰二郎君) 二番東村邦浩君。
〔二番東村邦浩君登壇〕
○二番(東村邦浩君) 初めに、公会計における複式簿記と発生主義会計の導入についてお伺いします。
第一回定例会の予算特別委員会で、私は石原知事並びに財務局長に対して、公会計においても複式簿記と発生主義会計を導入すべきであると強く主張いたしました。これに対して知事は、必要性を認め、とにかく会計の発想、方法というものを絶対に変えていくことが急務だと認識していると強調されました。
そして、この五月三十一日の定例記者会見で、知事は公会計に複式簿記と発生主義会計を導入する方針を明らかにされました。私は、会計の専門家として、知事、よくぞ決断をされたと高く評価するものであります。
そこで、改めて複式簿記と発生主義会計を東京都に導入した場合の効果と意義、そして導入時期と手順について、石原知事の見解を伺います。
また、公会計に複式簿記と発生主義会計を導入するに当たっての手続上の問題点として、新しい会計制度を導入しても、結局のところ総務省基準の決算書を作成しなければならないため、二度手間になるという実務担当者の声があります。確かに、企業会計をそのまま導入するのでは、行政コスト計算書と貸借対照表しか作成されず、改めてキャッシュフロー計算書、つまり従来の決算書を同時に作成しなければなりません。
ところが、この二度手間を防ぐ新しい会計処理が基準として制定され、システム、ソフトも開発されて、既に公益法人等で活用されています。それは、公益法人会計基準と呼ばれ、一つの取引が発生した場合、この基準を適用すれば、行政コスト、資産並びに負債、そしてキャッシュフローが同時に会計処理することが可能になります。一度この会計基準をシステム化すれば、従来の決算書を含め、すべての書類が同時に作成されます。つまり、二度手間は生じません。財団法人等で活用されている公益法人会計基準のソフトの中には、企業会計の会計処理を行うだけで、公益法人会計の会計処理までできてしまうというすぐれたソフトもあります。
したがって、東京都が複式簿記、そして発生主義会計を導入する場合、公益法人会計基準のフロー式のソフトを活用して会計処理をシステム化すべきであると考えます。見解を伺います。
次に、都立高校改革、なかんずく専門高校の改革についてお伺いします。
平成十四年五月に東京都が公表した専門高校検討委員会報告書では、産業界が大きな変化を遂げている中で、その変化の早さに専門高校の対応はまだ十分でないとし、改善に向けての方策を確立する必要があるとしております。
確かに、報告書にもあるとおり、問題を抱えた専門高校も多く、改革が必要であることは認めます。しかしながら、専門高校検討委員会報告書で取り上げられている問題点は、必ずしもすべての専門高校に当てはまるとは限りません。
例えば、私の地元にある八王子市の都立第二商業高等学校は、数年前までの生徒応募状況の低迷や中途退学者の増加に対する危機感をばねにして学校改革計画を策定し、国家試験などの高度の資格取得の推進や中学生に対する広報活動の強化など、積極的な学校改革に取り組んできました。現在では、経済産業省主催の国家試験である初級システムアドミニストレーターの合格者では、都内の高校生合格者の約半数を都立第二商業高等学校の生徒が占めるほどの実績を上げています。都内ではトップ、全国的に見てもトップレベルの成果であります。
専門高校検討委員会報告書においても、各専門高校の在学生徒の実態は多様であり、すべての高校で画一的な学習内容を実施するのでは効果が上がらないとして、さまざまな状況に対応した、質の高い、特色ある教育活動の展開が求められると指摘しています。都立第二商業高等学校は、まさにその模範例を示していると思います。
さらに、このような成果が広まる中、特にこの二年間では、毎年一月に発表される中学校校長会発表の志望校調査や推薦入試、そして二月の一般入試における実質的な受験者数においても、都立第二商業高等学校は都内有数の競争倍率が記録されています。いわば、都立商業高校の雄としての存在を確固としています。
したがって、都はこうした同校の努力と成果、ひいては社会貢献性を高く評価すべきであるとともに、同校の特性をさらに発展拡大させるべきと考えます。所見を伺います。
また、第二次高校改革においては、各地でさまざまな反響を呼び、賛否の議論が交錯いたしました。新たな高校改革の計画に当たっては、関係者の理解を得ることと、手続のより一層の丁寧さが求められます。第二次高校改革までの教訓を生かし、幅広い都民の理解を得られるような新たな高校改革案にすべきでありますが、見解を伺います。
小児医療の充実についてお伺いします。
第一回定例会の予算特別委員会で、都立八王子小児病院の統廃合問題の質問の最後に、保健医療計画の改定に当たっては、小児医療の充実を最優先課題として取り組むべきであると申し上げました。これに対して衛生局長は、改定に当たっては最重要事項の一つとして、検討の場である推進協議会で議論を深め、関係機関の意見も聞き、小児医療の一層の充実に向けた具体的な施策を盛り込み、その実現に努めてまいりたいと前向きな答弁をいただきました。
五月二十八日に開かれた東京都保健医療計画推進協議会では、現実に診療に当たっている小児科医師を招き、東京都における小児医療の現状及び課題について聴取し、検討審議されたことは高く評価するものであります。
その中で、小児初期救急の現実的な対応策の一つとして、三重県でことしから始まった小児科医のテレホンサービスが取り上げられていました。緊急時には、保護者が素早く相談することが可能なテレホンサービスの実施により、保護者の安心感が高まり、小児救急医療機関の過剰な負担が軽減されることが期待されます。
一方、都においては、二次救急医療機関の過剰な負担を軽減させるための一つの方策として、小児の初期救急医療の充実に取り組んでおり、今年度から新たに、平日夜間に固定施設で小児初期救急医療事業を実施する区市町村に対して運営費の補助をすることとしています。
私は、身近な地域で、救急に関する相談を含む診療の拠点として、こうした施設を早急に拡充することが重要と考えています。都では、区市町村の実情に即し、平成十四年度予算では十四区市町村で実施する予定となっていますが、これまでの成果と今後の取り組みについて見解を伺います。
また、小児科医師が不足しているという困難な状況の中で、地域において継続的に医療サービスを受けることができる小児科医がやはり不可欠であります。したがって、開業医を支援して、地域における小児科診療の基盤を強化するなど、国や区市町村、医師会等と協議し、本格的な検討を開始すべきであります。見解を伺います。
最後に、八王子、西多摩地域の観光産業政策を促進する温泉療法等の普及対策について伺います。
今や温泉技術が進歩し、八王子の駅前にも温泉がわき出る時代になりました。健康局発刊の「東京の温泉 利用施設一覧」によると、八王子市には温泉施設が四カ所、西多摩地域には三十九カ所の温泉施設があります。
温泉には、本来、リハビリテーションやリラクゼーションなど心身両面で健康を増進させる効果があることが指摘されています。都民の健康増進、疾病予防と医療費抑制の必要性が同時に要求されている今日、温泉資源を都民の健康増進、疾病予防に幅広く、かつ有効に活用すべきであります。
そこで、お伺いします。
第一に、温泉療法は、温泉に含まれている成分の化学的な効果や温泉地の自然環境、気候要素などを総合的に含めて医療に利用するものであります。ドイツなど一部の欧州諸国では、既に温泉地に温泉の専門医を常駐し、その指導のもとに温泉療法が行われております。
長野県の北御牧村では、シルバー温泉プール浴教室という温泉を生かした健康づくりを進めましたが、実に七十歳以上の方の一人当たり医療費は、平成六年から九年にかけて一七・四%も減少いたしました。都においても、健康増進計画の策定に当たっては、温泉療法等の活用をぜひ組み入れるべきであります。見解を伺います。
第二に、高齢者や障害を持つ人が健康増進、疾病予防のために温泉施設を利用する場合に、一番苦労するのは階段や段差等であります。そこで、高齢者や障害を持つ人が安心して利用できるよう、温泉施設、特に宿泊施設のバリアフリー化に対する支援を都はぜひとも行うべきであります。見解を伺います。
第三に、温泉を活用した健康のまちとして、観光振興を図ることについてであります。
八王子や西多摩地域にあるこれらの温泉施設に対する整備を進めながら、温泉療法を活用し、八王子、西多摩地域の観光を促進すべきであります。そこで、温泉療養等を組み込んだ各種ツアー、例えばグリーンツーリズムやアウトドアスポーツと組み合わせ、宿泊を伴った参加型、体験型のメニューをつくるなど、来訪者のニーズに合わせた観光資源の開発を行い、民間事業者や地元観光団体等との取り組みを積極的に支援していくべきであります。都市再生も大事でありますが、人の命の再生も大事であります。
知事、ぜひとも一度、東京の奥座敷、八王子、西多摩地域の温泉に入りに来てください。
千客万来の都市づくりを標榜し、平素から多摩地域の自然環境は世界的な観光資源であることを強調されている石原知事の見解を伺い、私の質問を終わります。
〔知事石原慎太郎君登壇〕
○知事(石原慎太郎君) 東村邦浩議員の一般質問にお答えいたします。
まず、官庁会計への複式簿記の導入についてでありますが、その結果、どういうメリットがあるかって、これはもうあなたご自身が公認会計士でいらっしゃるから、私よりもよく知っていらっしゃることと思いますけど、議会全体に共通の認識を持っていただくためにお答えいたします。
いずれにしろ、現行の官庁会計制度のもとでは、資産と負債の関係や、減価償却費や金利といったコストについての情報が欠落しておりまして、民間企業であれば当然行われるような評価検証ができませんでした。複式簿記と発生主義会計の導入は、こうした問題を解決し、マネジメントを強化するために有効な手段であり、都政改革の道具として期待もできると思います。
早い話、今の会計方式ですと、繰り越しがなかなかできませんで、二月、三月になるとやたらにそこらじゅうに工事がしょうけつするというのはおかしな現象でありまして、こういう弊害も、私は会計方式を変えますと淘汰されていくと思っております。こうした観点から、都はこれまでも「機能するバランスシート」の作成などに積極的に取り組んでまいりました。
今回、さらに一歩進めて、都の財政会計制度への複式簿記方式の導入に向けて本格的な検討を行うことにいたしました。
国に先駆けて、東京から公会計制度の改革を目指していきたいと思います。どこの国でもやっていることを、なぜこの日本のような先進国がしないのか、理解に苦しむわけでありますが、とにかく東京が先んじてこういった問題にも手を染めていきたいと思っております。
次いで、多摩地域の観光振興でありますが、今、温泉を踏まえておっしゃいましたけど、実は温泉はもうそこらじゅうに出るんですね。日本は大火山列島の上にありまして、早い話が、私の住んでいる大田区の外れの二子玉川でも、地下水を利用しようと思って掘ったら温泉が出ちゃって、そっちが大はやりしていますし、私が昔住んでおりました逗子でマンションのためのボーリングをしましたら温泉が出まして、市長が、そうするとまちが混乱するんで閉めてくれというんで封じちゃいましたが。
いずれにしろ、西多摩の、多摩地域の温泉というのは、またちょっとそういったものと意味が違いまして、周りにすばらしい自然環境があるわけでありまして、私、何度かもう既に行って温泉に入った経験もございます。
繰り返して申しますが、東京の環境資源としての盲点というのは、伊豆七島の方がまだ西多摩よりも少しは人に知られておりますけども、案外あの多摩地域の自然というものが知られていない。例えば鎌倉のような東京から近い、日本の三大古都の一つでありますけど、ここの休日のにぎわいというのはもうびっくりするぐらいのものです。あれは、歴史の中でクローズアップされたまちでありますけども、しかし、多摩地域にもそういう史跡はいっぱいありますし、今、時間と、可処分所得と可処分時間をたくさん持った新しい高齢者が鎌倉なんかもはんらんしておりますけども、もうちょっと東京もそういう方々を観光の目的で、温泉も含めて誘致する努力を、多摩の地域の自治体とで一緒になって宣伝、開発したいと思っております。
次いで、ちょっと訂正させていただきますが、さきの公明党の小磯議員の厚木基地関連の質問に関する答弁の中で、横田では、NLPはこれから強く要請して今後行わないということになりましたと申し上げましたが、ちょっと事情が違いまして……。
実は、私が会った空軍の司令官が、横田は空軍の基地なんですね、それで、ここで海軍のNLPをやるのはけしからぬと。あんなものは要するに厚木が決まっているんだから、厚木でやるか硫黄島でやるべきだということをいっておりました。そういうものを踏まえて、私、交渉しまして、できる限りの多くのNLPを硫黄島で実施することになりましたという答えでございました。訂正させていただきます。
〔教育長横山洋吉君登壇〕
○教育長(横山洋吉君) 教育に関します二点の質問にお答え申し上げます。
まず、都立第二商業高等学校についてでございますが、この学校は商業科と情報処理科を設置しておりますが、ビジネスに関します基礎知識の習得と資格取得を目標に、教育成果を上げるよう努めていると認識いたしております。
同校を含みます専門高等学校の今後のあり方につきましては、お話のように、本年五月に専門高等学校検討委員会報告書におきまして、専門高校の活性化の方向性について考え方を示したところでございますが、この報告の具体化に向けまして、現在、鋭意検討を進めているところでございます。
次に、都立高校改革に対して都民の理解を得ることについてでございますが、これまでの計画の策定におきましても、学校関係者や地域の関係者等に説明を行いまして理解を求めてきたところではございますが、新たな実施計画の策定に際しましても、ただいまご指摘いただきました点を十分踏まえまして、教職員であるとか保護者、同窓会等を含めた学校関係者、そして地域の関係者等に対する説明を十分行うなど、関係者及び地元の皆さんの理解が得られるよう十分努力してまいります。
〔財務局長安樂進君登壇〕
○財務局長(安樂進君) 公益法人会計基準のソフトを活用した会計処理のシステム化についてでありますが、東京都は資産と負債の関係や事業に関するコストを正確かつ速やかに把握するため、複式簿記の導入に向けて本格的に検討を開始いたします。
導入に当たりましては、ご指摘の決算書の作成手続を含めまして、単式簿記を前提とした現行予算制度のあり方や財産の増減との連動、借方、貸方への仕訳が伴うこととなります日々の会計処理など、数多くの課題を解決していく必要がございます。
今後、制度面や実務面から詳しく検討を行ってまいりますが、お話の公益法人は、いわば公共団体と営利団体との中間に位置しておりまして、その会計システムは行政に類似した面が多いと考えられます。
公益法人が複式簿記を採用して処理している実例といたしまして、例えば補助金や引当金、減価償却費の会計処理などは大変参考になる点が多いのではないかというふうに思われます。
貴重なご提言と受けとめまして、研究してまいりたいと存じます。
〔健康局長今村皓一君登壇〕
○健康局長(今村皓一君) 保健医療に関連して三点のご質問にお答え申し上げます。
まず、小児初期救急医療事業の取り組みについてでありますが、ご指摘のとおり、身近な地域に救急に対応する診療拠点を整備することは重要な課題であります。
都内では、杉並区、練馬区及び葛飾区が区または地区医師会の休日夜間救急センターで、また中野区では中核となる病院を利用し、地域の小児科医が診療を行うなど、さまざまな固定施設を活用し、地域の実情に即した形態で小児初期救急医療事業に取り組んでいるところであります。
今後、こうした創意工夫による取り組み事例や運営ノウハウ等を有効に活用し、地域の実情と意向を踏まえながら区市町村に積極的に働きかけ、小児初期救急医療のより一層の充実強化に努めてまいります。
次に、地域における小児科診療の基盤の強化についてでありますが、都はこれまでも小児医療に係る診療報酬制度の改善や小児科医の養成、確保について国に提案してきたところでございます。
また、今年度から、地域で小児医療を担う医師を確保し、小児科診療の基盤を強化するため、区市町村、医師会等、関係機関の協力のもとに、開業医に対する小児医療研修事業を開始いたします。
小児医療の充実は、都の重要施策の一つであり、今後ともその拡充に努めてまいります。
次に、温泉を活用した健康づくりについてでございますが、健康づくりは個人の主体的な取り組みが基本となるものでございますが、社会全体として個人の健康づくりを支援していくことも必要であり、地域の特性に応じて温泉等の地域資源を有効に活用した健康づくり施策を進めていくことは有意義なことでございます。
現在、健康増進法案は国会で審議中でありますが、同法案によれば、国が基本指針を定め、都道府県及び市町村は健康増進計画を策定することとなっております。
今後、温泉を活用した健康づくりに関する情報収集や普及啓発に努めてまいります。
〔産業労働局長浪越勝海君登壇〕
○産業労働局長(浪越勝海君) 宿泊施設のバリアフリー化に対する支援についてでございますが、お話の滞在型の温泉施設を利用する高齢者や障害者の方々が、安心かつ快適な旅行を楽しむためにも宿泊施設のバリアフリー化を進めることが必要であります。
このため、本年度から、都内のホテルや旅館等における通路の段差解消や廊下の手すり設置など、バリアフリー化のための施設改修に対する支援事業を実施することとしています。
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